NHK
2016年02月16日
中山俊宏教授のための共和党保守派入門(前篇)
米国大統領選挙の解説で有名な中山俊宏教授とのTwitterでのやり取り
時節柄、米国大統領選挙の最新動向についての新聞やテレビ等でのコメンテーターによる解説が増えてきました。しかし、それらは、非常に偏った視点に基づく解説であることが多いのです。
その典型例は、NHK国際報道でお馴染みの慶応義塾大学教授の中山俊宏氏によるものです。彼の共和党保守派に対する分析は具体的な根拠に基づかない偏見や思い込みであり、しかも予想は連戦連敗しているのです。
中山氏は言います。
「今日のアイオワ党員集会にかんする短評を書き上げました。共同通信を介して明日配信されるはず。「共和党はこれでルビオでしょう」という雰囲気をかすかに漂わせせた。」
(2月2日、twitter)
→その後、ルビオ候補はニューハンプシャー予備選挙で5位と没落し、彼のtwitterはしばし沈黙し、その上でケーシックが善戦すると予想していたと言い始める始末。(ルビオ候補が有力であることは認めますし、NHの世論調査を見ていればケーシック善戦は誰でも分かる話ですが・・・)
「ジェブ・ブッシュがFB上で事実上の出馬表明。ブッシュとクリスティが競って、ブッシュが勝って、最終的に二人が組んでみたいなことになると、かなり強そう。」(2014年12月17日、twitter)
「ジェブ・ブッシュ氏(中略)の動向が要注目」(NHKBS国際報道、2014年10月28日)
→その後の展開を思えば的外れもよいところの予測です
「(米国における)茶会運動は政治運動としての保守主義が死んだ兆候だ」
(2010年12月17日)
→その後、茶会運動が滅亡することなく、政治運動としての保守主義が盛んになっていることを思えば失笑です
その他にも、テッド・クルーズは原理主義的で危険、ティーパーティ運動の参加者には陰謀論を持っている等の極端な言説が多く、共和党保守派やTea Party運動の方々と親交がある筆者としては以前より違和感・不快感を覚えてきました。
どうして、専門家を称しているのに、いつも的外れの予測と解説ばかりしてしまうのか。
しかし、中山教授の最近の以下の呟きを見て、私の疑問は一気に解決しました。
専門家ではなく、米国共和党保守派のビギナーだったのだから、これは仕方がないと。
この発言は、何を意味するのでしょうか。
CPACとは、米国保守派の入門的な一大イベントであり、そこで次期大統領候補が事実上決定される極めて重要な大会です。しかも、誰でも参加できるものであり、筆者も何度も参加して大統領予備選挙候補者を始めとした多くのVIPとの面談も行ってきました。CPACは共和党保守派を知る上では欠かすことができないイベントです。
筆者は中山教授に、この点を聞いてみました。
すると、中山教授からは、
というお返事をいただきました。ACUとはCPACの主催団体ですが、中山教授が名前を挙げているキーン会長は5年前に退任した方です。現在はアル・カーディナス前会長、マット・シュラップ現会長と二代も会長職が交代しています。しかも、ソルトレイクシティ―の話も2011年のことです。
2016年の大統領選挙はおろか、2012年大統領選挙の時でも現職でなかった方(立派な方ですが)の名前を挙げて、「俺は共和党保守派を知っているんだぞ」アピールされても、ますます「???」と思った次第です。米国のことは分からないだろうとタカをくくった態度が不誠実すぎますね。ちなみに、その後中山教授からはお返事ありません。CPAC初参加についての釈明もありません
ちなみに、筆者はフリーダムワークスから来賓として過去にダラスの大集会に招かれたことがありますが、直近4年以内の話なので中山氏に米国でお会いしたことはありませんね。
そもそも、中山教授の博士論文は、「米国共産党研究」ですから、共和党保守派をご存知ないのも無理はありません。
中山氏は2016年の予備選挙はセオリー通りではないことを予想が難しい理由に挙げていますが、トランプが全米支持率トップであることは一貫しており、トランプ台頭をあえて無視してきたか、そもそも世論調査すら見てないのか、どちらでしょうか?ちなみに、米国共和党に詳しくない人向けに解説すると、中山氏のセオリー通りではないという意味は中山氏が好きな共和党主流派の候補者らが苦戦しているというだけの話でしかありません。
次回は、そもそも、CPACとは何かについて、共和党保守派についてビギナーの中山教授の為にも解説したいと存じます。
中山俊宏教授のための共和党保守派入門(後編)に続く
2016年01月21日
2016年1月21日・首相動静ウォッチ
本ブログでは、時事通信社の首相動静について追加情報を加えながら首相の行動の意図を推測しています。少しでも皆様のお役に立つ情報が提供できれば幸いです。
・午前7時38分、公邸発。同39分、官邸着。
<1月21日の見どころ>
本日は経済財政諮問会議が開催されました。 (1) 経済財政諮問会議の今後の検討課題について、(2) 「成長と分配の好循環」の基本的考え方と供給サイド強化について、の2テーマが議論されました。
そして、本日の夜は、メディア界の重鎮である渡辺会長、NHKエンタープライズ社長(元NHK報道局編集主幹)、保守系評論家らとの会食。諸外国におけるメディアの在り方とは違うと揶揄される日本ですが、日本としては平常運転のマスコミ対策ということでしょう。つまるところ、読売本社ビルに、首相とNHK元編集主幹、が呼びつけられた形となっており、渡辺会長の権力の大きさが如実に表れています。
2015年12月24日
キニピアック大学世論調査、日本メディアのワシントン病を斬る!
日本メディアの「ワシントン病」は深刻、世論調査の分析結果に異常な偏りが見られる
NHKが12月22日に発表したキニピアック大学の世論調査で、トランプ氏が大統領になった場合に「恥ずかしいと思う人」の割合が50%超えた、という報道を行いました。
トランプ氏が大統領は「恥ずかしい」 調査で半数に(NHKワシントン支局)
これだけ見ていると、トランプ氏が共和党大統領候補になることが問題であり、なおかつ民主党の大統領候補者にも勝てないかのような印象を与えます。しかし、後述の通り、この報道はNHKによる完全な印象操作でしかありません。
そもそも、22日のキニピアック大学の世論調査は予備選挙の数字でトランプ28%、クルーズ24%で1位・2位の差が4%として報告されていますが、最新のCNNの調査ではトランプ39%、クルーズ18%として21%も差がついています。そして、キニピアックの調査以外はトランプ氏と他候補者に概ね20%以上の差がついているものが大半です。世論調査で信頼度が高い同大学の調査でも鵜呑みにして良い雰囲気ではありません。
そのため、NHKがキニピアック大学の同世論調査結果のみを報道することは極めて不可解であり、どうせワシントンで他メディアが流している同世論調査に関する記事をそのまま垂れ流しているのだろうということが想像されます。(ワシントン政治関係者は反トランプであり、そこからしか情報が取れない「ワシントン病」にかかった日本メディアの報道は少なくとも大統領選挙に関しては信用に値しません)
NHKの報道が疑わしいので実際のキニピアック大学の世論調査結果を読んでみることにした
下記が実際の公表されたキニピアック大学の世論調査結果です。
キニピアック大学世論調査(12月22日公開)
問題の設問は、世論調査結果の一番最後に設定されており、トランプ氏とヒラリーだけに同じ設問が設定されていることが分かります。
トランプ氏 誇らしい23% 恥ずかしい50% どちらでもない24% 無回答3%
ヒラリー氏 誇らしい33% 恥ずかしい35% どちらでもない29% 無回答3%
ということで、トランプ氏については、たしかに50%を超えるものの、ヒラリーも「恥ずかしい」が「誇らしい」を上回っている状況にあるわけです。そのため、トランプ氏のみを殊更取り上げることは強調し過ぎだと思います。
さらに、年代別に見ると、トランプ氏を恥ずかしいと思っている人々は若年世代18-34歳の73%に集中しています。しかし、2012年大統領選挙における投票率、65歳以上72.0%、45〜64歳67.9%、25〜44歳59.5%、18〜29歳45.0%、という数字であり、若年世代の有権者登録(米国は投票権取得は登録制)の低さも際立っています。
つまり、現時点ではNHKが大々的に取り上げた数字「トランプ氏=恥ずかしい50%」は大統領選挙全体の決定的な要素にはなりづらいものと推測されます。また、上記の若年層の民主党支持は圧倒的に高く、同世論調査サンプルを対象に他の共和党候補者(クルーズなど)を同じような世論調査にかけても40%台後半の数字が出てくる可能性が濃厚です。
NHKは大して影響もないような数字を日本国民に重要な数字であるかのように垂れ流しているのであり、NHKの米国大統領選挙に関する分析能力について極めて疑問符がつくと言って良いでしょう。
同世論調査で「本当に重要な数字」は「トランプの予備選挙で優勢維持」を示す数字
「予備選挙の前に自らの現在の支持先が変わることはあるか?」という問いに対して、
トランプ支持者 固まっている63% 変わるかもしれない36% 無回答1%
クルーズ支持者 固まっている36% 変わるかもしれない64%
というものです。1位爆走中のトランプ支持層は極めて強固であるのに対し、2位のクルーズ支持者はイマイチ支持が固まっていない、ということが上記の数字から分かります。そのため、現状のままであれば予備選挙に関してはトランプ氏が伸ばしてくる可能性が高いということが分かるわけです。(実際の他の調査でトランプ氏が2位い以下を大きく突き放しています。)
また、トランプ氏ら共和党候補者とヒラリーら民主党支持者を比べた場合に、民主党候補者が優勢という数字が出ています。しかし、上記に触れたとおり民主党の支持は若年層で極めて高い状況となっており、若年世代の投票率と有権者登録率の関係を考慮すると、同世論調査結果のみから民主党が有利と分析することも困難です。
来年は年明け早々から予備選挙から撤退していく候補者が続出していくことが予測
上記の世論調査結果から導出できる分析は、来年初頭から共和党の予備選挙候補者が撤退していく中で、トランプの支持が一定程度の高水準で推移するということ、テッド・クルーズ氏の支持は他の候補者に流れる可能性が高いこと(おそらくマルコ・ルビオ氏であろうと予測)ということでしょうか。
今後、留学経験者などが増加していく中で、ワシントン支局への腰掛のような形で赴任している人々の付加価値は著しく減少していきます。NHKは公共放送として「ワシントン病」からいい加減に卒業して、情報の出元の影響を受け過ぎずにもう少し客観的な報道ができるようになってほしいものです。
従来までは、米国研究や米国報道は「翻訳ができる」だけで良かったのかもしれませんが、これからは専門性をもって米国の政治動向を分析する時代になるでしょう。日本の国際報道を担う人材の質の向上はますます重要になるものと思います。