ISD

2016年02月19日

TPPを平成の不平等条約と信じている人達への手紙

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現在、筆者は東南アジアで行われている自由経済に関するシンポジウムに参加しています。同会議ではTPPは非常に好意的にとらえられており、日本のTPP反対派の皆さんに、陰謀論への反論を含めて東南アジアからお手紙を出したいと思い筆を執りました。

TPPを「平成の不平等条約」として信じている人達へ

TPPはしばしば反対派の陰謀論者の識者?から平成の不平等条約であるという指摘がなされています。幕末時代に日本が諸外国と結んだ不平等条約の再来であり、TPPを結ぶとまるで日本が滅ぶかのような言論が実しやかに語られています。

しかし、このような言論は日本・アジア太平洋の経済的な現状についての理解が乏しく、まるで幕末日本の中で騒いでいた「攘夷論者」のような現実感覚が欠落したものと同類のものです。明治政府も政権奪取後には無意味な攘夷論から開国論に一気に舵を切って、日本を資本主義国化させることでアジアの強国に育て上げました。

当時も開国派は売国奴扱いされたものですが、歴史はどちらが正しかったかを証明していると思いますし、日本の歴史と現在の状況を正しくとらえれば何が必要かは自ずと理解できると思います。

現在の日本の問題は一部の陰謀論者によって愛国心を持った方々が煽られて、TPPを平成の不平等条約だと思い込まされていることにあります。

そもそも不平等条約はどうして結ばれることになるのか

幕末に不平等条約が結ばれた理由として、欧米列強のエゴが無かったということは言い過ぎだと思いますが、その主たる理由は日本の政治体制が前近代的な田舎国家だったことがあります。

欧米人から見た当時の日本は、立法・行政・司法のシステムも滅茶苦茶、当然に三権も分立しておらず、刀を持った侍に突然襲われて切り殺される国でした。日本との貿易修好関係を構築するに際して、欧米が治外法権や関税権に対して厳しい条件を日本に求めることは道理にかなったものでした。

欧米から見れば極東の300年間も一家系(徳川家)の独裁者が支配する島国・日本であり、最低限の身体と事業の安全を確保するための取引は妥当であったと思います。たとえば、現代日本人で、北朝鮮、トルクメニスタン、エリトリアなどで治外法権などが無く居住・滞在や仕事をしたい人などいないでしょう。

したがって、明治時代となって、日本の政治行政の近代的な仕組みが整備されるとともに列強の一員となることで、それらの不平等条約は改正されていくことになります。このような取り組みを真摯に行ってきた明治時代の先達の努力は素晴らしいものがありました。

ISD条項で訴えられることが意味することについて

TPPについて陰謀論者が引き合いに出す事例としてISD条項が取り上げられることが多い印象を受けています。

しかし、そもそもISD条項とは政府による民間投資への不当な接収行為に対する司法手段です。

政府による接収行為に対する司法紛争となるため、当然のことして同行為を実施する政府が存在する地域での司法システムに任せるわけにはいきません。したがって、ISD条項を設けることによって、条約締結国間での投資を安全に行うことができるようになるわけです。

つまり、日本のような先発資本主義国にとって、海外の低・中開発国に対して投資を安全に行うためには、ISD条項が担保として必要となります。そのため、日本が海外と結んでいるFTAやEPAもISD条項は当然に含まれるものとなっています。ISD条項で訴訟対象になるものは、主に資源投資などの政治問題化しやすい案件となります。

仮にISD条項で日本政府が訴えられる場合、それは日本政府が近代国家として問題がある不当な接収を海外からの投資に行ったことになるため、先進国として極めて不名誉なことであると認識するべきです。最終的には全てのTPP参加国にISD条項を適用しなくても済むことが理想ですが、政治の現実問題としては難しいものでしょう。

そのため、最初からISD条項で訴えられることを前提にした議論とは、日本の国際的な地位を自ら貶める言論であり、誇りある日本人として受け入れるべきものではありません。まして、日本の国会議員がそのような発言を行うことは先進国・日本を未開国扱いするものであって真面目に聞くに値しないものです。

ということで、日本でTPPに参加することは当然のことであり、この流れに参加せずに行きたい人はベトナムあたりに日系企業が投資をして共産党独裁政権下の裁判で投資を全て接収されたときに目が覚めると思います。

東南アジアの国々にとってのTPPの捉え方とは

東南アジアの国にとってのTPPについての議論を聞いていると、TPPに加入することは、腐敗の抑制、癒着の改善、政府の説明責任と予見性の向上、政府調達の透明性と説明責任の向上、などの開発国における深刻な政治問題を解決する契機となるという見方をされているようです。

自国の腐敗状況については当事者が最も良く理解しているわけであり、それらを改善する契機としてTPPによる外圧は絶好の機会の一つとして認識されているようです。まあ、そもそもTPP自体は東南アジアの国々で始まった話なので外圧というのも若干語弊がありますが・・・。

せっかくアジア・大洋州諸国が先進国ルールに合わせた取り組みを実施しようとしてくれているのに、それに乗っからない理由は全く理解できず、むしろ日本はTPPを積極的に推進する立場を取り続けるべきでしょう。現代では昔のように軍事力を背景とした開国・条約締結は不可能であり、これだけ広範囲の国が合意した取り組みは日本にとっては千載一遇のチャンス到来といったところです。

今後はTPPによるアジア経済の健全な成長に歩調を合わせて、日本もそれら国々の成長を取り込む施策を充実させていくことが重要です。



TPPで日本は世界一の農業大国になる
浅川 芳裕
ベストセラーズ
2012-03-16





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yuyawatase at 12:52|PermalinkComments(0)