2015

2016年01月04日

ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(2)

ヘリテージ財団アジア情勢2015

昨日の「ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(1)」に続いて、本日は後半部分、移民、政治体制、テロ、軍事などに関するヘリテージのアジア情勢評価を見ていきます。

アジア圏から米国への合法的な移民は「中国」「インド」「フィリピン」がトップ3

直近10年間のアジアから米国への合法的な移民は中国、インド、フィリピンが圧倒的に多い状況です。これに続いて、ベトナムや韓国などが人口数に比べて多くの移民を輩出しています。

特に中国はインドを抜かしてアジア圏からの移民シェアで第1位となりました。これは米国国内での中国系移民・インド系移民の政治的な発言力が強まっていくことを意味しており、中長期的には米国の対アジア政策に影響を与えていくことになるでしょう。2016年の大統領選挙の共和党予備選挙候補者にインド系の州知事が名前を連ねていたことは米国の変化の象徴とも言えるでしょう。

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海外の移民からの本国への送金によって経済を支えている国の存在
 
海外の移民からの送金が自国における経済に大きな役割を占めているアジアの国は意外と多い状況にあります。その中で特に米国からの送金割合が多い国は、トンガ、フィリピン、キリバス、ベトナムなどであり、米国に移民を比較的多く輩出しているフィリピンやベトナムは米国に移民を輩出することで自国への送金経済を作り上げていることが分かります。

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政治的な自由や報道の自由に関して著しい格差を抱えるアジア
 
豪州や日本のような自由度が高い国々が存在している一方、中国、ラオス、北朝鮮のような自由を抑圧する国が同時に存在している点がアジア圏の特徴です。

政治的な自由に関しては確実にモンゴル、自由が進展している国も存在している国もあれば、スリランカやタイのように大幅な後退を見る国など非常に様々です。しかし、全体的には自由が拡大していることが分かります。一方、報道の自由に関しては年々悪化している国も多く、政権によるメディアへの介入が常態化している国が少なくありません。

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イスラム諸国で信教の自由が抑圧される傾向があり、中国では政府の弾圧が厳しい状況あり
 
信教の自由に関してはイスラム教が強い国々では政府による規制や社会的な敵視が強い傾向があります。マレーシアのみが政府規制が強いものの、社会的な敵視が弱い地域ということ言えるでしょう。一方で共産主義国である中国は政府による信教の自由への規制が非常に強く深刻な事態を引き起こしていること分かります。

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国家の脆弱性が高まりつつあり、政治的な不安定化が引き起こされる可能性が高い
 
アジア圏には失敗国家と堅牢な国家の2つが同時に存在していることが特徴です。アフガニスタンやパキスタンンのような非常に危機的な国家もあれば、日本やアングロサクソン諸国のような安定性の高い国家も存在しています。

国家の脆弱性が高まっている国々は北朝鮮を除けば基本的に南アジアの国々であり、何らかの拍子に国家が崩壊して政府機能がマヒする事態になる可能性が高い状況があります。ちなみに、日本も経済的な失策はここでも叩かれています。

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パキスタンはアフガニスタンよりも頻繁にテロリズムが発生している状態に
 
パキスタン、アフガニスタン、インドなどの南アジアを中心にテロが活発化している状況にあり、特に域内大国であるインドの役割が極めて大きくなってきていることが分かります。インドはテロ対策についても実績がある国であり、2015年末にインド首相がパキスタンを電撃訪問したことは非常に重要な意味があったと思われます。

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中国の軍事的な膨張に対して高まる警戒感、インドの軍事的な存在感の高まりも
 
南シナ海における中国の海洋進出が注目されていますが、それらは南シナ海の領海の主張に関して複数国が異なる意見を主張していることを確認し、その上で中国の岩礁開発や艦船の動向について注目しています。また、アジア地域を俯瞰する米軍の配置状況を確認した上で、日本と韓国の軍事基地について重要性を指摘しています。

軍拡については中国の軍事的な膨張を注目するとともに、同時にインドの軍事拡大についても注目しています。米国はアジア地域の安全保障に関する意識は危機が明確化している対ロシア・対中東などの他地域と比べて劣りがちであり、域内の軍事バランスを保つために日本側から米国のコミットメントを積極的に求めていくことが望まれます。
 
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ランド 世界を支配した研究所 (文春文庫)
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文藝春秋
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南シナ海: アジアの覇権をめぐる闘争史
ビル ヘイトン
河出書房新社
2015-12-25




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2016年01月03日

ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(1)

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自分たちの国を取り巻く内外の情勢というものは自分たちの目から分かりづらいものです。そこで、米国有数のシンクタンクであるヘリテージ財団が2015年12月31日大晦日にアジア情勢についての客観的なレポートを出していたので引用しながら解説していきたいと思います。(本レポートはこちら、*グラフも全て引用)

ちなみに、本文解説中で日本に文章で触れた個所は

「Japan, while underperforming for many years in terms of economic growth, also invests heavily both in the government services the U.S. provides its citizens and the private American economy.」(日本は経済成長が長年全然ダメだけれども、それでも米国の政府や民間経済に非常に投資してくれています)

しかないため、他の部分についてはグラフや地図に本ブログが注釈を入れながら「米国から見るとこう見える」ということを補足説明していきます。

日本は「ドルに対するデノミでGDP(ドルベース)は激減し、実質的な成長は貧血レベルである」という評価

まず初っ端から非常に辛口の評価を日本は頂いています。世界で最も経済成長が速いアジアにおいて、「日本はドルに対するデノミを実施した結果ドルベースのGDPは激減し、実質経済成長はしているが依然として貧血レベル」という米国から見れば当たり前の結果となりました。完全に一人負け状態です。

日本の経済失政に比べて中国の経済成長は異常なスピードで進んでおり、中国の台頭が顕著である旨が報告されています。域内大国としての中国の存在を意識せざるを得ないという米国の認識が強く現われたグラフです。

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経済的な自由度に関しては「アジアで中位程度」の評価を受けている日本

ヘリテージ財団はThe Index of Economic Freedom (経済自由度ランキング)を毎年発表しており、世界中の全ての国の経済自由度について公表しています。アジアはシンガポールや香港が圧倒的なトップを形成しており、ニュージーランド、オーストラリアが続き、台湾・日本・韓国などは第3グループに位置しています。一人当たりGDPが非常に高い国と経済自由度が高い国はほぼ一致しており、人口減少が続く日本では経済自由度を高めて高付加価値化を図っていくことが望まれます。(ちなみに、経済自由度ランキングの詳細を参照すると、日本の低位の理由は政府部門のダントツの非効率さにあり、肥大化した政府が成長の足かせになっています。)

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アジアの中で突出した日本の対米投資額、米国における日本企業の投資額の大きさに注目

次にアジア企業の対米投資の状況について解説されています。グラフを見ると、アジアからの対米投資の大半が日本企業からであることが分かります。特に直近10年間で1.5倍にまで投資額が増加しており、円安・円高に関係なく日本企業による買収が積極的に実施されていることが分かります。金融、IT、エネルギーなどの投資も大きくなものがありますが、人口が伸びて市場が成長している&カントリーリスクが低い米国は日本の内需系産業の進出先としても有望視されているということでしょう。

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中国が世界中に投資を実行して影響力を強めつつあることへの注目

一方、アジアのもう一つの雄である中国についてはグローバルな投資戦略、その分散的な構造が注目されています。おひざ元であるASEANだけでなく、米国・ロシア・ナイジェリア・イギリス・ブラジル・サウジなどのポイントに合わせて、世界各地にまんべんなく投資を実行しています。主に道路やプラントなどのインフラ建設に向けた投資であり、国策的な投資が盛んである印象を受けます。

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米国債保有残高で米国への影響度を競い合う日本と中国

米国債の保有残高は中国が日本を追い越してアジア第一位となっています。香港、台湾、シンガポールなどの華僑系の国債保有額も含めると日本は大幅に引き離された状況です。特にアジアにおける米国債保有割合シェアを中国が直近10年間で2倍にしたことは、米中関係が切っても切れないものであることを如実に示しています。

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東アジア各国の合計特殊出生率の低さが際立つ状況に

日本だけではなく中国(香港&マカオ)、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの合計特殊出生率が低いということが一目瞭然となっています。

特に中国と韓国の合計特殊出生率の低下は著しく、今後の経済成長や財政問題などが深刻化していくことが目に見えている状況です。(ちなみに、日本は晩産化の影響で直近10年で合計特殊出生率が微増している状況です。)

上記以外の国々でも東南アジア各国では出生率が2を割っている国もあり、アジア全体としても出生率が低下している傾向があることから、「アジアの老い」は中長期的に問題になっていくことになると想定されます。

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顕著な従属人口指数の増加を見せる日本の異常な状況について

(年少人口+高齢人口)/生産年齢人口で算出する従属人口比率について、日本だけが顕著な右肩上がりの状況になってきたことが分かります。これは価値観の変化や低成長による雇用の不安定化、団塊の世代の引退によって大幅な従属人口比率の増加が起きたことを示しています。

その他のアジア各国は直近10年が生産年齢人口が増加するボーナスステージであったことを示していますが、上記の合計特殊出生率の低下の観点から中長期的には「アジアの老い」による問題に日本と同じように直面していくものと思われます。

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以上、本日はレポート前半部分の経済と人口に関する部分を取り上げました。明日(1月4日)は後半部分の、圧制、移民、軍事情勢、テロなどの政治状況に関する認識を取り上げていきます。

ランド 世界を支配した研究所 (文春文庫)
アレックス アベラ
文藝春秋
2011-06-10














 

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