鳥越
2016年07月26日
「インテリンチ」の衰退、そして国民が自らの声を取り戻すとき
メディアが大衆を罵倒する「インテリンチ」の横行、マスメディアは自己崩壊過程に突入中
「インテリンチ」は筆者の造語であり、簡単に言うと「大学教授やジャーナリストなどのインテリの人々が大衆自身及び大衆が支持する政治家・政策をメディアの紙面を使って罵倒(啓発)する行為」を指します。
一昔前まではこれらの有識者を僭称する人々とマスメディアの力が結託することを通じて大衆向けの印象操作を実施し、それらによって情報力が相対的に不足している人々が妄信させられるという傾向がありました。
しかし、現代社会ではもはや現実から遊離したメディア上の権威による言葉は人々には届かなくなっている・信用されなくなっている状況が生まれています。
そして、マスメディアは自らが報道している内容が大衆から信用を失っているにもかかわらず、大衆を啓発するつもりで罵倒を続けています。インテリンチの無意味さ・陳腐さに気が付かないマスメディアは崩壊過程の中にあると言っても過言ではありません。
米国の大統領選挙・英国のEU離脱国民投票もインテリンチとは真逆の結果に・・・
たとえば、米国ではトランプ氏に対するメディアの罵倒は日々繰り返されているわけですが、共和党大会後のトランプ氏の実際の世論調査の数字は跳ね上がり、ほぼ全ての世論調査の数字でヒラリーを上回る状況が生まれています。
日本に入ってくる米国大統領選挙の報道内容は米国の報道または権威を経由した情報を垂れ流しているため、実際の米国の大統領選挙の支持率とはほとんど関係がないインテリンチ系の情報ばかりです。
筆者は昨年の予備選挙段階から筆者は一貫してトランプ勝利を予測してきましたが、日本国内に入ってくる情報は常にトランプ敗北予測という一面的で誤った情報ばかりでした。
また、英国でもEU離脱に関する国民投票について、離脱派に対するインテリンチは英国民の行動に影響を与えず、順当な結果としてEU離脱派が勝利することになりました。現在も離脱派に対するインテリンチは継続中であり、英国大衆の世論とは遊離した偏った報道を日本でも目にすることが多いことを残念に思っています。
(最新の米国大統領選挙の世論調査、メディアのインテリンチ下でもトランプ圧勝の構図に)
これらの現象は象牙の塔に閉じこもった学者の発言やイデオロギーで目が曇ったジャーナリストの報道などへの信頼が崩壊し、まさに人々が自分の生活実感に基づいた政治行動を行うようになっていると言えるでしょう。少なくとも政局同行を捉えるにあたって、それらのインテリンチ報道の情報価値は極めて減退している状況となっています。
参議院議員選挙・東京都知事選挙を通じて「インテリンチ」の無力化が進みつつある
日本でも、参議院選挙における改憲3分の2の阻止、ジャーナリスト鳥越氏による空疎な非核宣言、学者による反知性主義批判など、戦後民主主義を形成してきた左派メディアの言葉は有権者に全く届かなくなっています。それらの言論の支持世代を見てもノスタルジアの世界に生きる高齢男性と現実を知らない一部の若者らが支持しているにすぎません。
インテリを僭称してきた人々の言葉が実は生活実感とはかけ離れたママゴトのようなものであり、人々の生活の改善とは結びついていないことが明らかになったことで、権威的な大手マスメディアの影響力は下がる一方という有様です。
東京都知事選挙でもマスメディアには主要3候補者という絞り込みを行う力はあっても、その三者の戦局を左右するだけの影響力はもはや持ち合わせていない状況となっています。また、多くの人々からはそれらの絞り込みすら懐疑的に見られており、上杉隆氏のような論客がネット上では静かに注目を浴びる状況も生まれています。
「インテリンチ」によるマスメディア衰退は「国民が自らの政治的な言葉を取り戻す」ことにつながる
長年インテリンチに従事してきた鳥越俊太郎氏の週刊文春に対する二重基準の対応を受けて、日本でもメディアによるインテリンチは急速に更なる信頼を失うことになるでしょう。
筆者はインテリンチが信用を失うこと、マスメディアが影響力を失うことは良いことだと考えています。なぜなら、その結果として、国民が自分の政治的な言葉を取り戻すようになるからです。
インテリンチの無意味化によって、メディアや有識者らが設定したポリティカルコレクトネス(政治的に正しいこと)を述べることが求められる政治から自分が思ったことを率直に述べることが許される政治に変化していくことになります。
つまり、単なる儀礼的な作法と化していた政治的な議論が生命を取り戻し、国民が自らの声で国の方向性を決める力を得ることができるのです。日本の政治も長い政治的な言論の不毛な状況から抜け出すきっかけを掴むところまできています。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
yuyawatase at 07:00|Permalink│Comments(0)
2016年07月23日
増田寛也氏への「言われなき批判」回答についての反論
(増田寛也氏のFB記事に掲載されている回答書)
増田寛也さんの疑問に対する丁寧な回答姿勢について感謝を示したい
ネット上で提起された様々な問題点について、増田寛也氏が丁寧な回答文書を発表されました。そのこと自体については非常に真摯な姿勢であることを評価したいと思います。
ただし、「いわれなき批判におこたえします」と題された文章の内容を拝読しても、その内容が「本当にいわれがないのか」ということは別問題です。
回答文書は①「都議会との関係は?」、②「都有地を韓国人学校に貸し出す?」、③東京への集中は悪いこと?、④外国人参政権に賛成?、⑤東京電力の役員だった?、⑥出張はファーストクラス?、⑦岩手県で1.4兆円も借金した?の全部で7項目です。
筆者は①、②、⑤については全く関心がありません。増田氏の過去の言動などを見ても特段問題があるとは思えず、それを問題視したい人は問題視すれば良いのではないかと思います。
筆者が関心がある項目は③、④、⑥、⑦ですが、③については増田氏の過去の発言等に見ても東京・地方が切磋琢磨することになるかは見解が分かれるところですが、エビデンスも見解も分かれるところなので今回は検証しません。
しかし、岩手県の借金問題、ファーストクラス利用問題、外国人参政権問題については、増田氏の弁明内容に疑問が見受けられたので「いわれなき」とは言うには無理があります。そこで、本記事では各弁明の論点を改めて確認しておきたいと思います。
岩手県知事時代の借金増加の原因は本当に「新幹線と県立大学」だけではないのでは?
少し長いのですが、重要なことだと思うので下記に増田氏の弁明文書を丸写しにさせて頂きました。
「岩手県知事在任中、新幹線の誘致によって整備費の地元負担が発生しました。また岩手県立大学の4学部一斉開学の実施によって負担額が増加しました。このどちらも将来へ向けた経済の発展と人材育成のための投資でした。」
「その結果、新幹線の整備により観光客数は増加し、地域経済が発展しました。県立大学の開学により地域の発展に不可欠な人材育成が行われ、高専の充実、技術力の高い人材供給と企業誘致につながっており、実際に卒業生約6,000人のうち約2,000人が地元企業に就職しています。 」
「また、その後は行財政構造改革プログラムを策定し、財政健全化に道筋をつけ、最終年度でプライマリーバランス(基礎的財政収支)を均衡させました。決して無駄な投資をしたわけではありません。」
「岩手県知事時代には、切るべき公共事業を切ってきたことで、現在の岩手県のメリハリのある発展に貢献したと自負しております。財政投資には時代と地域の特性があります。知事と総務大臣経験者として地域に必要な政策の見極めが私にはできます。東京都の財政運営に役立つ投資と削減を実施して参ります。」
以上、引用終わり。
自分が問題だと感じる点は、回答に見られる積み上げた借金の一部のみを誇張して報告し、自らの間違いを一切認めようとしない姿勢です。特に財政のことは素人には分からないだろうという回答態度は頂けません。
まず最初に増田県政時代に借金は(臨時財政対策債を除いても)平成6年度5940億円から平成19年度・約1.2兆円にまで増加しています。(臨財債を含むと約1.4兆円)
県立大学負担は約450億円超、整備新幹線の県負担は約950億円であり、合計で約1400億円です。つまり、増田県政で積み上げられた借金を約6000億円とした場合、その2事業の負担は全体の約23%に過ぎません。したがって、増田県政の借金の約77%は別の公共事業などで積み上げられたことになります。
たとえば、岩手県の財政事情を勘案すれば、非常に豪華な建造物である、県立美術館108億円、県民情報交流センター245億円を初めとした大型の公共事業を次々と行ったことについてはどのように考えているのでしょうか。それらも未来への投資なのでしょうか?これらは毎年の維持コスト(場合によっては1施設数億円)もかかるため、これらは未来への投資ではなく未来への負債と捉えられるべきかと思います。
また、公共事業・整備新幹線については地元紙・岩手日報が戦後70年特集として振り返りの記事を掲載しています。読者の皆様にはこちらも併せてお読みいただければと思います。
岩手日報企画「自立への壁」
(3)補助金ハコモノだけ残った
(6)整備新幹線「祭りの後」の駅閑散
そもそも企画のタイトルが「自立への壁」ってのが振るってますね。つまり、増田県政を含めた過去の県政が残した負の遺産が「岩手県の自立に向けた壁」になっているという特集です。
最初の記事中の総合交流ターミナル施設は平成10年議会で約4.7億円の建設費が農家のためにならないバラマキであると批判されても、岩手県側が無視して建設した施設です。
また、後者の記事にあるように、整備新幹線については地元負担が伴う「整備新幹線」の盛岡-八戸間は、約950億円を岩手県が負担、岩手町は7億3千万円で、駅ビルや駐車場などの周辺整備にはさらに40億円が投じられました。そして、これらの建設投資は失敗することも多く、岩手日報の記事を読む限り成功からは程遠い現状のようです。
ただし、整備新幹線の建設決定については増田氏の責任によるだけでなく前知事時代からの引き継いだものでもあります。しかし、それであれば尚のこと整備新幹線以外の借金の積み上げについて議論されるべきです。
また、後者の記事にあるように、整備新幹線については地元負担が伴う「整備新幹線」の盛岡-八戸間は、約950億円を岩手県が負担、岩手町は7億3千万円で、駅ビルや駐車場などの周辺整備にはさらに40億円が投じられました。そして、これらの建設投資は失敗することも多く、岩手日報の記事を読む限り成功からは程遠い現状のようです。
ただし、整備新幹線の建設決定については増田氏の責任によるだけでなく前知事時代からの引き継いだものでもあります。しかし、それであれば尚のこと整備新幹線以外の借金の積み上げについて議論されるべきです。
県立大学は数少ない増田県政の成功事例と言えるものであり、それ以外の大量に積み上げられた失敗の山について触れないことには強い疑問があります。プライマリーバランスの黒字化は増田氏自身が急激に積み上げた借金で首が回らなくなった結果として進められた改革に過ぎず、無計画な県政運営は決して実務家として褒められたものではないと思います。
蛇足ですが、増田県政3期目の最後に行われた競馬組合への融資330億円(市貸付含)は全く回収ができておらず、 県民の貴重な財産がギャンブル事業を維持するために塩漬けになっている状況でもあります。
以上の観点から、増田氏が主張する地域に必要な事業の見極めができるどうか、増田氏の弁明に上記の内容を付記した上で有権者が最終的に判断すれば良いと思います。
「ファーストクラス使用はルールに基づいたもの」で片づけられて良いのか?
増田氏はファーストクラス使用について下記のとおり弁明しています。
「ビジネスクラスを利用します。なお、当時のファーストクラス使用も適正なルールに基づいておりましたが、都民の皆様のご負担を少しでも減らすのは公務を行う上での大前提であると考えております。」
筆者がファーストクラスを借金を積み重ねている知事が使用することは道義上問題があると思いますし、その人物が舛添知事の後任として政党から推薦されていることに違和感があることは事実です。
しかし、この問題について自分が問題視している点は最初から増田氏の説明責任に対する姿勢です。上記の適正なルールとは知事自身が決定するルールであって、自分で作ったルールで自分が適正に利用するのだから良いというトンデモ理論を振りかざしているに過ぎません。
実際、岩手県議会では、平成13年12月4日に、ファーストクラス使用などを問題視する岩手県議会議員の質問と岩手県人事課長の質問に対する答弁が残っています。
下記のやり取りは長いので簡単に要約すると、県議会議員が「不況なのでファーストクラスを使うのをやめてほしい」と懇願したが、増田知事は自ら答弁することもなく人事課長の答弁でNOを突き付けたというわけです。
つまり、議事録でも県議が指摘したように、自分でファーストクラス使用を自粛するか、もしくは自分でルールを変えることでファーストクラス使用は取りやめることができたのです。そして、増田氏は県議会がファーストクラス使用停止を求めてくれたにもかかわらず、知事として経費節減の率先垂範を果たさず、己自身のルール変更もせずに「現状維持したルール」に基づいて使用したと東京都民に回答することには違和感があります。
岩手県知事時代のやり取りを東京の有権者が知らないと思って、上記のような回答を行うことは東京都の有権者に対する誠実さが欠けているものと思います。下記は議事録からの引用。
<議員>
「言いたいことは、今この不況時代です。民間だったらボーナスはなくなって、給料は7割ぐらいになっているんです。たしか7割ぐらいになっているところもあります、ゼネコンとか大きいところは。そういう時代に、大きい会社で、自分の力で役職員がグリーン車とかファーストクラスに乗るのだったらいいんですけれども、県民の税金で、私も含めてですが、グリーン車とかファーストクラスに乗るのは、来年度からは何とかやめてもらいたいような感じがして今話をしているんですが、見解をお願いします。」
<答弁者>
「今、資料が届きましたのでお答えいたします。いわゆるグリーン料金につきましては、知事、副知事、出納長並びに議員の皆様及び議会選出の監査委員の内国旅行、国内旅行に支給されております。それからファーストクラス料金につきましては、知事並びに議長が外国旅行に際して航空機を利用した場合に支給されている実態でございます。」
<議員>
「知事は公選で岩手県から1人しか出ないわけですので仕方ないとしても、以下の人は全員普通車でいいと思うんですが、その見解をよろしくお願いします。」
<答弁者>
「特別職の職員の方々のグリーン料金とファーストクラス料金の支給につきましては、この旅費制度全体が職務とか職責に応じた旅費を支給するという基本的な考え方で構成されておりますので、国あるいは東北各県の状況もおおむね同様でございますので、現行の制度で運用してまいりたいと考えております。」
外国人参政権の容認に関して島嶼の有無が影響という珍理論?について
増田氏は外国人参政権に関する姿勢も都道府県によって異なるという回答をされています。
「岩手県知事時代の発言は見直します。当時、地域の声をくみ上げるために賛意を表しましたが、現在の国際関係は大きく変化しております。島嶼部を持たない岩手県と東京都とは違います。地方といえども参政権付与を安易に認めるべきではないと考えます。」
しかし、島嶼を持つか持たないか、で外国人参政権を認めるか否かの判断要素の一部とする、という考え方は全く納得できるものではありません。これでは内陸県は外国人参政権を認める可能性があると読めると思うのですが、それは違うのでしょうか?
また、岩手県知事時代の公式発言は、納税・地域貢献を理由にあげていたことが完全に捨象されており、2011年まで日韓グリッド構想を提唱されていた人物が急速に日韓関係が変化した、と判断したのは何年何月からの判断でしょうか。
岩手県知事代は「容認」→出馬記者会見時は「コミュニティへの参加の有無」→選挙期間中は安易に認めない(島嶼の有無を条件に含む)という判断の急速な変化について、国際関係ではなく増田氏の立場が変化しただけではないかと思います。
また、同対応の変化は推薦政党である自民党の党是である外国人参政権反対に歩調を合わせた修正だと思います。しかし、仮に自民党対応とした場合、もう一つの推薦政党である公明党は多民族多文化の共生社会をめざす立場から、一貫して参政権付与法案を提出してきた事実とは矛盾します。
自民党の主張を重視して公明党の主張を簡単に捨てる政治姿勢も納得できかねます。筆者は公明党の党是が一貫している姿勢も評価しているため、増田氏は公明党ではなく自民党を選んだことについて、一体どちらの住民の声を優先させるのかを明確にしてほしいと感じています。
増田寛也氏の丁寧な回答には賛同したい、ただし更なる疑問が湧いてきたことも事実
増田氏が様々な疑問に対して真摯に回答しようとしている姿勢については非常に好感が持てますが、その上で回答内容について更なる疑問が沸いてくることも事実です。
筆者は都議会との関係、韓国人学校、東京電力の話などは納得しましたが、自分の関心がある分野では少なくとも増田氏の回答は依然として極めて説明不足であるように感じます。
岩手時代に借金を積み重ねて失敗していたとしても、それを反省して東京都では失敗を繰り返さないと言えば良いだけではないですか。ファーストクラスも外国人参政権も一緒です。間違いを認めてもう一度挑戦する真摯な姿勢を見せるほうが都民の好感度も上がると思います。
なぜなら、現在の都知事選挙は「誰も本当のことを言っている気がしない」雰囲気なので、失敗を素直に認められる人への支持が集まる可能性が高いからです。
このような発表を選挙期間中に行う誠実な対応については一定の評価をさせていだき、増田氏の回答文書への反論とさせていただきます。ご対応ありがとうございました。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
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2016年07月22日
超高齢化社会で政治家が二枚舌になる理由
何故、政治家の言動の「二重基準」が横行してしまうのか?
インターネットが普及して政治家やジャーナリストの過去と現在の言動の整合性が簡単に取れる時代になりました。そのため、その場しのぎのポリティカルコレクトネス(政治的に正しい発言)を繰り返してきた、ポリコレ人間が政治家を続けることは極めて困難な状況になってきています。
筆者は上記のようなネット社会の進展とともに、超高齢化社会も政治家の言動の二重基準が発覚する原因だと思っています。
人生は非常に複雑怪奇であって誰もが聖人君主のような生活を送れるわけではありません。したがって、叩けばホコリが出ない人物など一人もいないと思います。
しかし、超高齢化社会では「政治家が極めて長期間在職することが可能になる」、または「著名な有識者とされている人の賞味期限が長くなる」という現象が起きてきます。これらの人々も若い頃は純粋な気持ちで活動していたかもしれませんが、酸いも甘いも知る大人になるプロセスで様々な誘惑にさらされることになります。
そして、彼らが高齢者の年齢に達する頃には何らかの人生の失敗を抱えることになるのは当然なのです。しかし、問題は超高齢化社会においては「高齢」の域に達したとしても、現役と同じように「社会的・政治的に正しい発言を求め続けられるようになる」ということです。人生はそんな単純じゃないよーと腹で思っていても、表では清廉潔白な人物を演じ続ける必要があります。
これはある意味拷問のような作業ですが、若い頃にそれで飯を食べてきた人が高齢になった場合に今更止められるわけもありません。ご愁傷さまとしか言いようが無いのですが、それこそ自己責任ということですね。
そのため、自分の人生を振り返れば自分自身の過去に刺さってしまうような発言であったとしても、相変わらず表舞台で発言を続ける必要があり、その人物が「公人」として活動しようものなら一気に自己矛盾が表出化することになります。
政治家の「期間制限」を社会的に導入していく取り組みが必要である
公人、つまり政治家の過去の発言との整合性が簡単に取れてしまうことは、有権者にとっても良い面と悪い面があります。
良い面は言動の整合性がある信頼できる人物を選べるようになるということ、悪い面は投票で選ばれたはずの政治家が言動の二重基準を突かれて簡単に辞任するようになること、です。悪い面は良い面の裏返しと考えることもできるのですが、せっかく選んだ人間にコロコロ辞められても有権者も困ってしまいます。
そこで、最低限のこととして、政治家が多選を繰り返して長期間の在職が出来ない文化を作っていくことが必要だと思います。超高齢化社会では、政治家が何十年も議席にしがみ付くことが常態化して腐敗が生まれるとともに、当人の人生や社会の進展に合わせて言動に矛盾が生まれてしまうからです。
米国においては、The Term Limitsと呼ばれる草の根団体が存在しています。同団体は議員の多選による腐敗の蔓延を防止するための措置として始まった市民運動です。「政治屋ではなく市民のリーダーを!」が彼らのキャッチフレーズです。
具体的には議会議員選挙に出馬する候補者に最長2期で辞任することを署名で約束させて、WEBでその模様を公開するということが行われています。政治家自らから在職期間についての言質を取ることを通じて有権者との間で約束事を決めるのです。
一方、見方によってはThe Term Limitsは腐敗に塗れて何期もやりたいという議員を除けば、議員から見ても8年以内に議員を公に辞める口実を作ってくれる都合が良い仕組みとなっています。つまり、政治家にとっても職を辞めるタイミングを逸して延々と自己矛盾を抱えながら生活していく辛い人生から解放してくれるメリットがあるわけです。
首長などでも多選自粛を口にする人々がいても、日本では平気で約束を破る人も多い悲しい現状がありますが、米国ではこの約束を違えると同取り組みを信頼している人々からの支持が失われた上にネガキャンなどの社会的制裁が下されることになります。
そもそも政治家は若い人がやっていく仕事になるかもしれない?
情報化社会は過去の言動のログを簡単に取ることができること、そして人間は聖人君子のような暮らしを続けることは極めて難しいことを考えると、これからの高齢政治家は極めて難しい立場に置かれることになっていくでしょう。
少し前までならインターネットで過去ログも溜まっていないので、高齢政治家も過去の発言との整合性をしつこく問われることはありませんでした。自分の過去を棚に上げて言いたい放題していても、過去との矛盾を突かれて老醜をさらすことはなかったのです。
しかし、現代社会で活躍してる人々は既に過去ログの山を公文書その他を問わず積み上げている現状です。この人たちが高齢者になったあとに選挙に出よう・政治家を続けようと思っても過去の言動の記録がそれを許さないケースが増えると思います。
そのため、政治家という極めてクリーンさが求められる仕事に関しては、薄汚れた要素が相対的に少なく、二重基準で攻撃されにくい若い人が担っていくことになるかもしれません。もちろん本人次第のところがあるので不倫育休議員のようにあっさりと二重基準でペケがつく人もいるわけですが・・・。
いずれにせよ、政治家がどのような人物になるべきか、ということについて、候補者本人や政党が勝手に決めて有権者に提示する流れではなく、もう少し社会の側からコントロールできるようにしていかなくては、現在の不安定な政治状況は改善されることは無いでしょう。
政治家を批判することは当然のこととして、私たち自身の政治へのアプローチも変えていくことが必要です。
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2016年07月21日
鳥越俊太郎氏が「焼き鳥」になった日
(文春砲が炸裂、ただしイマイチ生煮え感が拭えないが・・・)
鳥越俊太郎氏に文春砲が炸裂、橋下氏ら過去に揶揄した人物に反撃されて炎上中
選挙期間中に週刊誌が第三者の証言を基にすっぱ抜き記事をデカデカと載せてきました。
筆者は政治家は第三者でも検証できる内容(統計、公文書、メディア発言等)で追及されるべきだと考えています。したがって、週刊文春の報道内容は信憑性も含めてあまり褒められたものではないと感じています。
しかし、一度燃え広がった炎はなかなか消えないものです。
橋下徹氏など従来まで鳥越氏らのマスメディアと侃侃諤諤してきた方々から意趣返しとして、「今回の文春なんてチョロい記事。ちゃんと釈明しなさい」と逆に言われている始末です。
鳥越氏は過去に橋下氏の出自に関する報道で「週刊誌はきわどいことを狙う以上は覚悟を決めてやるものだ。問題を指摘されたから連載を打ち切るというのは腑に落ちない。朝日本体からプレッシャーもあったんだろうが、よくやるなと思っていたのに、がっかりした」(週刊朝日2012年10月)と自論を展開しており、直ぐに訴訟対応の準備に入った今回の対応との整合性が問われる状況となっています。
たしかに、今回の文春報道は、かなり具体性があるので事実なら言い逃れは困難ですが、被害女性の夫とされる人物の伝聞情報で構成されているため、鳥越氏が事実無根の可能性も十分にあり得ると思います。
しかし、鳥越氏も本当に事実無根なら「記事のどこが事実と異なるのか」を検証記事にし、鳥越氏自身のHP上や他紙に発表するなりしたほうが良いでしょう。文春は無理でも他雑誌なら今なら喜んで記事掲載してくれるものと思います。
今回否定していない他の週刊誌報道の不倫報道はどうなのかも含めて、ジャーナリスト出身の都知事選挙の候補者として詳細な検証記事での反論を有権者は待っています。
不倫問題で辞職した「育休」宮崎謙介元議員を「表舞台では先進的なことを言っているように見せかけて、何でこんなことを平気でできるのか、まったくわからない。政治家以前に、人間としてまさに“ゲスの極み”ですね」(週刊女性2016年2月)と罵倒していた以上、自らが資質を問われる状況となっているからです。
現在の生煮え感が漂う状況で期日前投票が始まっている東京都民の気持ちになってほしいものです。
日本の政治ジャーナリズムもそろそろ変わるべき時が来ているのではないか?
少し前からネット上では「官邸が鳥越氏の女性問題を調べさせている」という噂が流れていたこともあってなのか、鳥越氏は民進党会議で「何か政治的な力が働いた」と明言していますが、かつて政権党であった民進党の公式な見解として同発言を認めるのでしょうか。
そのような陰謀論は有権者にとってどうでも良い話であり、この状況下で陰謀論を堂々と語る人物の政治家としての資質を疑わざるを得ません。週刊誌はその記事が儲かるから書いているだけのことで、その記事が売れないなら記事にしないことでしょう。
いずれにせよ、今回のように第三者によって検証不可能なくだらないゴシップについては、選挙期間中に当事者が詳細な釈明を提示してさっさとケリをつける類の話です。有権者は限られた時間内に投票のための意思決定を行う必要があり、東京都民の投票対象となる候補者として当然の務めだと思います。
文春側も選挙期間中に第三者が検証不能な記事を掲載することは健全な政治文化を育てる上で極めて問題があるものと思います。筆者は日本の政治報道・選挙報道もそろそろ変わっていくべきだと考えます。
日本の政治・選挙報道も「エビデンスに基づいて『政治家』『ジャーナリスト』としての資質を厳しく問う」という民主主義の文化を育てる方向に舵を切るべきです。
鳥越氏については上記の発言なども含めてジャーナリストとして資質を問われる発言をされてきた方です。その内容について子細に検討されることで、都知事として相応しいのか、ということを多くの人から検討されるべき人物だと思います。
また、選挙は候補者の心技体の一つ一つの要素が検証されるプロセスです。特に今回は鳥越氏の健康問題に関する懸念は何度もメディアで取り上げられていることもあり、筆者は女性問題疑惑以前に自分自身の健康状態を証明するために医師の診断書の提出などを行うことが重要だと思います。
今回、鳥越氏という候補者が週刊誌の女性問題疑惑報道によって「丸焼き」にされたことは一都民として非常に残念です。本来であれば客観的なエビデンスに基づいて「黒焦げ」になるまで各候補者が試練にさらされることが望まれます。
なぜ、今回の東京都知事選挙ではスキャンダル報道が重要になっているのか?
では、なぜ鳥越氏のように女性問題疑惑が話題を呼んで炎上し続ける状況は起きるのでしょうか?政府の陰謀やら、人々の性の問題やら、敵対陣営の口コミと言ってしまえばそれまでですが、筆者は大きな理由として「政策論争が行われていないこと」が挙げられると考えています。
たとえば、鳥越氏が立候補に先立つ記者会見の段階で何ら都政に関する政策を準備していなかったことは余りにも象徴的な出来事でした。候補者が政策を語ることが出来ない場合、その候補者の「人物」を見るという流れに行くことは必然的なものです。多くの都民から思い付きと捉えられた「がん検診100%」という政策のみで真面目な政策論争をしろ、というのは都民の知性に対する冒涜です。
まして、舛添知事が「人物」の問題で辞任した後の都知事選挙に関して脛に傷がある可能性を持つ人物が「政策を何も掲げずに選挙に出る行為」は自殺行為に等しいものと思います。
残念ながら今回の東京都知事選挙では鳥越氏が文春砲の犠牲となりましたが、自分自身の大義を守れる価値がある政策プログラムが発表されていない状態では殴られ放題のままになるでしょう。
蛇足ですが、政策論争が行われないもう一つの大きな理由は、都議会議員各会派が何ら自分たちの政策を示さないからです。議員報酬と政務活動費で年間2000万円以上を受け取りながら、都知事選挙に対して自分たちの包括的な政策集を提示して推薦候補者を支援することは当たり前じゃないかと思います。働かない都議会議員に税金を支払う意味があると思えません。
候補者にとって理念がある確固たる政策集を発表していることは、苦難の時に攻めにも守りにも使える重要なセーフティーネットに成りえます。今回、「鳥越氏には政策が無かった」、そのことが現在の炎上が止まらない原因の一つだと思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
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2016年07月20日
7月13日・日米左派の対応に「大人と子どもの差」があった
(AFP:ヒラリー・サンダース、予備選で激戦を繰り広げた末に両者を認めて和解)
7月13日米国・ヒラリーとサンダースが抱き合って協力を誓い合った
7月13日米国ニューハンプシャー州、クリントンとサンダースは壇上で抱き合って協力を誓い合いました。
サンダースは「彼女が大統領選の民主党候補者になる。自分は何でもするつもりだ。」と述べ、ヒラリークリントンが圧倒的に最適な候補だと強調しました。
さらに、サンダースは「二人の間に意見の相違があるために予備選挙を戦ってきたが、それが民主主義というものだ」という言葉を続けて、「そのおかげで両陣営は歩み寄りができ、民主党の歴史で最も進歩的な公約をまとめることができた」と民主主義を讃えました。
サンダース支持者が会場からブーイングすると、サンダースはそれらの人々を手で制し、返礼としてクリントン氏はサンダースの存在に謝辞を述べ、彼が掲げた政策を取り入れていく決意を語りました。
【米大統領選2016】 サンダース氏、クリントン氏支持を正式表明
7月13日日本・鳥越擁立で宇都宮健児は野党に引きずり降ろされる形で苦渋の選択
一方、日本では公示日直前から野党側の候補者として内定していたと見られる宇都宮氏に代わって鳥越氏を擁立する動きが活発になりました。
宇都宮健児氏は7月12日にメディアに対して「(鳥越氏は)大変知名度のある方だとは思うが、(野党の対応に)違和感を持っている。候補者のことをなんだと思っているのか」。野党が鳥越氏を担いだ経緯についても「不透明だ。どういう議論がされているのか伝わってこない」(産経ニュースから引用)と怒りをぶちまけています。
その上で、宇都宮氏は鳥越氏と面談し、「都政のことはこれから」という鳥越氏に自らの政策集を渡し、その実現を託しました。会談終了後、宇都宮氏は「掲げた政策を実現するためには選挙で勝つ必要がある。その前提となるのは政策であって、なんでも勝てばいいという立場ではない」と囲み取材で語っています。
しかし、テレビで追及されてようやく言及した築地市場の移転反対の可能性を含めて宇都宮市の政策が十分に反映されたとは言えない状況です。
宇都宮健児氏のTwitterは7月13日の撤退表明以来沈黙していましたが、7月20日現在イベント紹介の案内の配信が再開されましたが、東京都知事選挙については一切触れられていません。
宇都宮健児氏のTwitterアカウント
政治的意思決定プロセスの成熟度に差、米国も問題があるが日本よりも上だと思う
筆者は公開討論会の様子などを見ていた限りでは、宇都宮健児氏の政策は非常に練りこまれたものであり、弁護士としての現場の匂いがする地に足の着いたものだったと感じています。
東証一部上場会社(鳥越製粉)創業家でエリートジャーナリストの鳥越氏と弁護士として貧困と戦ってきた宇都宮氏はちょうどヒラリーとサンダースを模したような存在です。日米において両者の対応が正反対のものになったことは両国の民主主義の成熟度の差を表す典型的な出来事と言えるでしょう。
今回、野党側は知名度ばかりを気にして、石田純一氏、古賀茂明氏、宇都宮健児氏らに声をかけては取り換えるという極めてご都合主義の対応を繰り返してきました。
このような無様な状況になった理由は明白です。それは党幹部支配によって党員の声が完全に無視されているからです。つまり、民進党をはじめとした国政政党は党員・サポーターを抱えているにも関わらず、彼らの声を全く無視して一部の議員だけで集まって物事を決める閉鎖的な党体質を抱えているのです。
与党側でも多くの東京都民の有権者が「増田って誰?」というところからスタートし、そのまま選挙戦に突入するという極めて都民を馬鹿にした対応がなされています。
予算規模13兆円の都庁のリーダーを決める選挙戦を通じて、日本の民主主義の未熟さが露呈したことが今回の東京都知事選挙の最大の成果と言えるでしょう。
政策論争や過去の実績を問われる候補者選定プロセスを実施すべきだろう
舛添氏の辞任は参議院議員選挙直前ではありましたが、それは東京都民がいい加減なプロセスで東京都知事を選ばされる理由にはなりません。参議院議員選挙が忙しいなんて言い訳は東京都民には全く関係ありません。
国政は国政、都政は都政であって、今回の酷い擁立劇は東京都議会の各政党会派の怠慢だと言えるでしょう。国政選挙があるから東京都知事選挙が蔑ろになるなら、国会があれば東京都議会も要らないということで良いのでしょうか。
少なくとも今後は東京都知事選挙については任期終了の半年程度前から各政党が候補者選考プロセスを東京都民に公開する形で実施していくことが必要です。今回の東京都知事選挙を反省材料とし、日本にも当たり前の民主主義のプロセスが定着していくことが望まれます。
とりあえず、日米で民主主義の成熟度が「大人と子どもの差」がある状況はみっともないので、日本の政治家には早急に是正してほしいと思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
yuyawatase at 11:09|Permalink│Comments(0)
2016年07月19日
鳥越俊太郎氏は今すぐ認知症及びがん検診診断書を提出せよ
(鳥越氏は他人の「がん検診100%ではなく、自分の診断書を提示すべきだった)
鳥越俊太郎氏及び民進党は「都民に健康問題騒動を謝罪をするべき」だ
鳥越俊太郎氏の健康問題がリアル・ネットを問わず都知事選挙の議論の対象となっています。
筆者は担当医ではない人が他者に対して認知症・末期がんであると断定することは避けるべきだと思っています。ただし、そのための大前提として「本人が本当に健康であること」が証明されることが重要です。
東京都庁は約13兆円の予算を扱う巨大組織です。経営者のヘッドハンティングを行う場合でも常識ですが、この規模の経営者を調達する場合、医師の診断書を確認することは必須と言えるでしょう。
鳥越氏の健康問題は立候補以前から周知の事実であり、鳥越氏の推薦政党である民進党等は都民に対して鳥越氏の健康状態について良好であることを証明する重要性を認識するべきでした。
鳥越氏が共同記者会見で提示すべきものは「がん検診100%」ではなく「医師の診断書」だったことは間違いありません。
東京都政の担い手を選択する都知事選挙において、特定の候補者の健康問題が重要な争点になって徒に議論の時間が費やされている不毛な状況を生み出していること自体が失態です。
「病み上がり」「がんサバイバーへの侮辱」と罵り合うのは勝手ですが、自分のプライドのために都知事選挙の貴重な時間を費やすのを止めていただきたいものです。鳥越氏及び民進党ら推薦政党は低レベルの騒動が起きていること自体について陳謝することが当然だと思います。
超高齢化社会「ポスターに並ぶ高齢候補者たち」は本当に大丈夫なのか?
米国でも大統領職を争うヒラリー・クリントンは健康問題が懸念されており、対抗馬であるドナルド・トランプは自らの健康診断書をメディアに対して公開しました。外国でも高齢の政治家の立候補に伴う健康問題は投票に際して重要な判断要素になると思います。
選挙と言えば「掲示板のポスター」ですが、鳥越氏に限らず高齢者の顔ばかりが並んでいる現状があります。超高齢化社会においては必然的に立候補者の年齢も上がっていくものです。
つまり、今回の鳥越氏の健康問題のような事例は珍しいことではなくなる可能性が高く、有権者が立候補者の健康状態について事前に知ることの重要性は増していくものと思われます。
たとえ健康状態に問題があったとしても、それでも投票したい人物がいるなら有権者がその人物を選択することは構わないと思いますが、自分自身の深刻な健康状態を公開することなく投票させる行為は善意の有権者を騙すことと同様だと考えられます。
政党は「医師診断書」の提出を義務化し、有権者に対して品質保証してください
政党は自分たちが推薦する候補者の健康問題という非常に低レベルな議論が起きる状況を回避するべきです。推薦候補者という有権者に提示する商品の品質保証を当たり前にクリアしてから立候補させることが常識でしょう。
今後、超高齢化社会における選挙で政党として候補者を推薦する場合、候補者自らが有権者に対して認知症・がん検診などの一通りの診断書を提示するか、政党の公認・推薦段階でそれらの書類を揃えて事前チェックすることを義務化することが重要です。
鳥越氏に関しては一日の演説回数なども少ない状態であり、テレビ番組などをキャンセルされているケースもあるようですから、明日にでも医師の診断を受けてください。そして、有権者に対して医師の診断書を提示して「健康であること」を証明するのはいかがでしょうか。
yuyawatase at 21:48|Permalink│Comments(0)
なぜ「今回の都知事選は政策の議論が行われない」のか
<FBでの塩村都議の小池百合子不支持表明、だが・・・>
なぜ、東京都知事選挙のマニフェストのレベルは低くなるのか?
最初に断っておきますが、筆者は東京都知事選挙の主要3候補者をいずれも支持していません。その理由は各候補者が検討する価値もない政策集を発表しているからです。
それぞれのHPを見てもらえればわかりますが、小池氏は国会議員時代からの持論をほぼそのまま、鳥越氏は急ごしらえ感丸出しの代物、増田氏は総花的な政策をちょっと書いてみただけ、という感じです。
小池百合子
鳥越俊太郎
増田寛也
主要3氏ともに気が利いた大学生なら1時間程度で作れるレベルの内容を発表しています。「これで都庁13兆円組織のトップ?いい加減にしろ」というのが都民としての正直な感想ですね。
そのため、今回の選挙は「政策」ではなく「各候補者の過去の履歴」を追うことが有権者にとって重要な要素となってくるわけです。
小池氏の国会議員時代の言動、増田氏の岩手県知事・総務大臣時代の実績、鳥越氏のジャーナリストとしての見識や現在の健康問題などが厳しく問われています。
政策の話ができる状況ではないのだから仕方がないですよね。
都知事選候補者の「政策が腐っている」理由は「都議会議員が働いてない」から
各都知事候補者の政策が「大学生の作文」になっている理由は明白であり、それは彼らを推薦した都議会議員が仕事をしていないからです。
都議会議員は年間・年間1500万円の議員報酬を受け取っています。この他に政策の企画・立案を行うために政務活動費も月額60万円・年間720万円も受け取っています。つ手当なども入れると年間・約2300万円、議会出席拘束日数は100日、つまり政策立案をじっくり行うための報酬も時間も用意されているわけです。
本来であれば、東京都知事選挙に際して、都議会各会派が党推薦候補者の政策集を「極めて高い水準で常備できる」レベルで活動していることが当たり前です。
これは大会派であろうが一人会派であろうが一緒であり、東京都知事選挙に対して自会派の包括的な政策提言集をまとめて、それに基づいて支持・不支持を決定することが常識なのではないかと思います。
この一点だけを見ても東京都議会が機能不全に陥っていることが明らかであり、現状の都議会を解散して、そのメンバーを入れ替えることが望ましいことが分かります。
「ファクトベースの議論」という最低限のレベルをクリアできる都議会議員が必要
今回の東京都知事選挙に対して、都議会議員さんたちも様々な情報発信を行っている状況です。しかし、候補者の過去の実績検証とは公文書やメディアでの「本人の発言」を引用する形で行われることが最低限の作法ではないかと思います。その上で自らの見解を添えて嫌みの一つでもつけるべきでしょう。
筆者も色々情報収集していますが、下記に都議会議員による情報発信として、ダメな事例として一つ取り上げたいと思います。それは塩村あやか都議会議員が小池百合子氏の不支持を表明した際のFB記事です。
「私が小池百合子候補を応援できない理由」と題されたFB記事(全体公開)ですが、明らかに事実混同された内容が含まれたものとなっています。(本人は事実誤認ではないと主張している点は触れておきます。)
塩村都議が小池氏を問題視している証拠は、13年前にVOICEという雑誌で小池氏が現代コリア研究所主任研究員・西岡力氏と杏林大学教授・田久保忠衛氏と対談した記事内容として小池氏のHP上に転載された際の記事文言です。
この記事中で塩村都議が不支持理由として指摘している「東京に米国の核ミサイルを」という文言は、小池氏の発言ではなく西岡氏の発言です。このことは読めば誰でもわかることであり、この小見出しも雑誌編集部による編集をそのまま転載したものであることは一目瞭然です。
この点について、上田令子都議の支持者の方が「小池氏の発言ではない」と指摘したところ、塩村都議は
「ホームページに掲げていること、彼女のこれまでの思想と違わないことを書いたものですが、小池氏を応援する議員関係者よりご意見頂きましたので「言動」→「思想」に変更します。思想については「日本の核武装構想について」の候補者アンケートに「国際情勢によっては検討すべきだ」と小池氏は過去の衆院選時の新聞アンケートに回答しています。」
と自らの見解についての弁明をされています。
正直言って、政治敵に対立されている方々の話なので、主張の内容としてはどっちもどっちだと思います。
ただし、雑誌の転載記事上の他人の発言がHPに掲載されていること、過去の直接的な関係が薄いアンケート結果の引用だけ、では小池氏の政治姿勢を断定するだけのファクトとしては弱いと思います。大学生のレポートなら単位がこないレベルです。
この程度の根拠で東京都議会議員という重要な立場での支持・不支持を表明するようでは、現状の都議会のレベルも与野党問わず知れていると思わざるをえません。現役の都議なら小池氏に「東京に米国の核ミサイルを入れるおつもりですか」と直接聞いて報告するくらいの責任感と行動力が必要です。
各候補者の過去履歴をガンガン詰める投稿を行うことは良いことですが、高額の議員報酬と活動費を使いながら、都議会議員の言動がこの程度のレベルかと思うと呆れざるを得ません。
東京都議会議員は「東京都知事選挙の候補者に対する政策集」を発表するくらいしてほしい
東京都議会議員の皆様が自らの理念を持たれて活動されていることは理解しています。前述の塩村都議も動物愛護について熱心に活動されていることは普段の情報発信からわかる次第です。
しかし、東京都議会議員を務める方々は「最低限・会派として」東京都知事選挙に対する政策集を提出し、それらに対する主要候補者からのコミットを発表するくらいのことは、東京都民に対する都議会議員としての義務だと思います。一人会派でもそれができるように十分な報酬と活動費を東京都民は負担しています。
東京都知事選挙について政策的な情報発信がほとんど行われない原因は「都議会議員が働いていないから」に他なりません。
ファクトに基づかないくだらない主張に時間とお金を費やすのではなく、日常的に取りまとめた政策集を掲げて都知事候補者と交渉する姿を見せれば、自らの主張が今なら大々的にメディアにも取り上げられるチャンスにもなったはずです。
なぜなら、候補者の政策はスカスカなので、ほかに政策的な話題のネタなんてほとんど無い状況だからです。
以上、都知事選挙で政策議論が行われない理由は「東京都議会議員が何も仕事をしていないから」だと思います。選挙結果次第で今年か来年の東京都議会議員選挙ではこのことを忘れずに投票に当たってほしいと思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
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2016年07月13日
<続報>増田寛也氏「ファーストクラスの座り心地」を熱弁
(共同記者会見でファーストクラスのシートの角度について熱弁する増田氏)
増田寛也氏「ファーストクラス使いながら、他人の使用は批判」続報・提供
前回のエントリー「増田寛也氏『ファーストクラス使いながら、他人の使用は批判』」はネット上で大きな反響を頂きました。しかし、同時に「お前の記事は虚構だから取り下げろ」「この記事の信ぴょう性が疑わしい」などのネガティブな声が筆者に対して寄せられたことも事実です。
しかし、2016年7月13日日本記者クラブ主催の共同記者会見で、一人の勇気ある記者の方が増田寛也氏に対して「岩手県知事時代のファーストクラス利用」について問いただしたことで、増田氏本人の口から改めて言質を取る形で調査内容の正しさが証明されることになりました。
ご興味がある方は上記の前回エントリーもご覧いただき、増田氏の言動の矛盾点および都議会自民党の推薦方針への疑問などを共有していただければと思います。
岩手県知事時代のファーストクラス使用を認めるも「反省の弁」は一切無し
今回の共同記者会見では、宇都宮・小池・鳥越・増田4氏が自らの政見及び政治姿勢について熱弁を振るいました。その中でTBS NEWS23の記者が増田寛也氏に対して政治とカネの文脈から岩手県知事時代のファーストクラス使用について問いただしました。
<記者>
「政治とカネの問題について、都民の批判を受け止める仕組みが足りないとおっしゃられましたが、岩手県知事時代にファーストクラスを利用した反省点を踏まえて、東京都知事になられた場合にご自身と都議会の税金の使途の公開方法について教えてください。」
<増田>
「岩手県知事時代にファーストクラスを利用しておりました。最近の航空機事情ではビジネスクラスでも横になれるようになりましたが、私が利用していた当時はファーストクラスでも斜めぐらいにまでしかなりませんでした。常にどのような利用方法をしているかを公開します。シートの状況が良くなってきたので、公職にある人でもビジネスクラスで対応できるのではないか。」
なお、増田寛也氏は上記の回答に続けて「当選した場合にはビジネスクラスを使いたい」とニヤケ顔で回答されていました。そして、「税金の使い方について都民の皆様に分かる仕組み、情報公開の仕組みをきちんと作りたい」と続けられています。
岩手県庁の借金を約2倍にしながらファーストクラスの豪華海外出張を恥じ入ることなく、ファーストクラスのシートの角度について熱弁する姿は筆者の軟な想像力を軽く上回るものでした。
共同記者会見における記者と増田氏のやり取りはこちら
「舛添・湯河原通い」の理由とほぼ一致、「舛添2号」の汚名を返上する気があるのか?
今回の東京都知事選挙が行われる元凶は、舛添都知事のファーストクラスを用いた豪華海外出張と週末の湯河原通いなどの「都知事として不適切な仕事ぶり」が都議会で追及されたことにあります。
そして、読者の皆様に思い出してほしいのですが、舛添・前知事「湯河原通い」の理由は、
「たまたま湯河原のお風呂は足を伸ばせるのです、広いですから」(2016年4月28日定例記者会見)
というものでした。この際、舛添・前知事の場合はユニットバスを利用した場合、人工関節の利用者には不便があるため、という理由が伴っていました。つまり、公用車で通うか否かは別として、身体の健康管理の面という意味では一定の理屈が立つものでした。
しかし、上記の通り増田寛也氏はファーストクラスの利用理由について、「シートが横にならなかったから」ということのみを述べており、自らが膨大な金額を積み上げた岩手県の借金を尻目に、岩手県知事自身はファーストクラスで「快適な」海外視察を続けていたことになります。
当初、舛添・前知事も「ファーストクラスの利用理由」は「到着後、すぐに仕事をするのに備え、完璧に寝て体調を整えるためだった」と述べていました。しかし、結局は舛添・前知事は都議会において「節減意識が足りなかった」と弁明させられており、彼には東京都知事という重責を担うに値しないという判断が下されることになりました。
筆者は、東京都という潤沢な資金を持つ自治体の長ですら節減意識を問われて辞職している状況で、その辞職に伴う選挙で岩手県の財政を赤字の底に突き落としながらファーストクラスを利用していた人物を推薦する都議会自民党の胆力には驚きを禁じえません。
増田氏が岩手県知事時代のファーストクラスの利用について何ら反省の弁を述べなかったように、都議会自民党は自らが推薦する候補者の身体検査(少なくとも過去のトラックレコード)の不十分さを何も反省していなかったということでしょう。
東京都知事選挙の事実上の争点は「信頼できる人間性」を有しているのか
筆者は「ファーストクラスに乗っていたか否か」ということ自体は、全体予算の中における金額から決定的に重要な問題ではないものと考えています。
しかし、一連の経緯に鑑み、今回の東京都知事選挙では「都民が納めた税金に対する姿勢」や「政治家としての言動の一致」などの「都民との信頼関係」を築いていける人物かということが問われていることは明白です。
東京都知事選挙に関して。与野党の極めて適当な候補者推薦の有様は目を疑うばかりであり、都政に関わる方々には政治姿勢を根本的に改めて頂くとともに、我々都民も東京都政などの地方自治についてもう少し関心を持って臨むべきだと痛感しています。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
yuyawatase at 20:26|Permalink│Comments(0)