2016年01月21日

サウジアラビア・一面銀世界、「中東の冬」に突入へ

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https://twitter.com/Globe_Pics/status/688017056424407041/photo/1

サウジアラビアに85年ぶりに大規模な「雪」が降ったとのこと

サウジアラビアの報道Press Digitalでサウジアラビアに85年ぶりに雪が降ったそうで
す。http://www.pressdigitaljapan.es/texto-diario/mostrar/395676/85

実際には、サウジアラビアでは雪が局地的には降ることがあるので、今回の「雪が降った」という報道は記録的な大雪がサウジアラビア全域で降ったという意味なのかなーと思っています。

砂漠の国が一面銀世界に染まる幻想的な光景は、中東地域に迫る大きな変革の予兆とも言えるでしょう。

原油価格下落でサウジアラビアの懐が寒くなっている?

サウジアラビアは軍事費の拡大と原油価格の低迷のダブルパンチで財政がグロッキー寸前です。

年明けからイランの原油が市場に流れ込んできた影響もあり、頼みの原油価格は更に下落の一報を続けています。そのため、IMFによると、サウジアラビアの歳出に必要な金融資産は5年以内に枯渇すると言われています。

厳しい環境変化を受けて、サウジアラビアの副皇太子はエコノミストとのインタビューの中で、5%の付加価値税(甘いもの・たばこへの悪行税)、空地への課税強化、ガソリン・電気水道の値上げ、民営化(国民の3分の2を雇用する国営企業解体、20以上の基幹国営産業の民営化)という対策を語っています。GDPの半分・歳入80%を生み出す石油産業が低迷はサウジアラビアの政治経済体制に大きな変更を及ぼすものと推測されます。
 
なお、IMFは湾岸協力会議加盟のバーレーンとオマーンも財政的に危機的な状況に陥ると予測しており、原油価格の下落は中東全域に大きなインパクトを与えることになるでしょう。

果たして「中東の冬」が明けて「中東の春」は訪れるのか

サウジアラビアでは、国内のシーア派指導者を処刑したことから、年明けにカティーフなどの東部の石油地帯において大規模な暴動が発生しました。これらのその後の顛末は承知していませんが、国内に不満が鬱積していることは間違いないでしょう。

アラブの春では多くの民主主義政権が誕生することになりました(その後失敗したものも多かったですが・・・)が、原油価格下落による「中東の冬」の時代は民主化という「中東の春」への道なのかもしれません。

ただし、上記のようなサウジアラビアの急進的な改革が本当に実行された場合、それらは旧ソ連がロシアへの移行過程で経験したような一部の新興財閥による腐敗、汚職、経済混乱をもたらすことになるでしょう。そのため、中東の民が歩む中東の春への道のりは厳しいものになることが予想されます。

日本は原油の大部分を中東に依存している危機的状況を回避し、今後は対外輸出を開始する米国や中東以外の産油国であるロシア・カナダなどとのエネルギー面での関係強化が必要となると思います。



スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19




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yuyawatase at 13:04|PermalinkComments(0)