野党
2016年07月20日
7月13日・日米左派の対応に「大人と子どもの差」があった
(AFP:ヒラリー・サンダース、予備選で激戦を繰り広げた末に両者を認めて和解)
7月13日米国・ヒラリーとサンダースが抱き合って協力を誓い合った
7月13日米国ニューハンプシャー州、クリントンとサンダースは壇上で抱き合って協力を誓い合いました。
サンダースは「彼女が大統領選の民主党候補者になる。自分は何でもするつもりだ。」と述べ、ヒラリークリントンが圧倒的に最適な候補だと強調しました。
さらに、サンダースは「二人の間に意見の相違があるために予備選挙を戦ってきたが、それが民主主義というものだ」という言葉を続けて、「そのおかげで両陣営は歩み寄りができ、民主党の歴史で最も進歩的な公約をまとめることができた」と民主主義を讃えました。
サンダース支持者が会場からブーイングすると、サンダースはそれらの人々を手で制し、返礼としてクリントン氏はサンダースの存在に謝辞を述べ、彼が掲げた政策を取り入れていく決意を語りました。
【米大統領選2016】 サンダース氏、クリントン氏支持を正式表明
7月13日日本・鳥越擁立で宇都宮健児は野党に引きずり降ろされる形で苦渋の選択
一方、日本では公示日直前から野党側の候補者として内定していたと見られる宇都宮氏に代わって鳥越氏を擁立する動きが活発になりました。
宇都宮健児氏は7月12日にメディアに対して「(鳥越氏は)大変知名度のある方だとは思うが、(野党の対応に)違和感を持っている。候補者のことをなんだと思っているのか」。野党が鳥越氏を担いだ経緯についても「不透明だ。どういう議論がされているのか伝わってこない」(産経ニュースから引用)と怒りをぶちまけています。
その上で、宇都宮氏は鳥越氏と面談し、「都政のことはこれから」という鳥越氏に自らの政策集を渡し、その実現を託しました。会談終了後、宇都宮氏は「掲げた政策を実現するためには選挙で勝つ必要がある。その前提となるのは政策であって、なんでも勝てばいいという立場ではない」と囲み取材で語っています。
しかし、テレビで追及されてようやく言及した築地市場の移転反対の可能性を含めて宇都宮市の政策が十分に反映されたとは言えない状況です。
宇都宮健児氏のTwitterは7月13日の撤退表明以来沈黙していましたが、7月20日現在イベント紹介の案内の配信が再開されましたが、東京都知事選挙については一切触れられていません。
宇都宮健児氏のTwitterアカウント
政治的意思決定プロセスの成熟度に差、米国も問題があるが日本よりも上だと思う
筆者は公開討論会の様子などを見ていた限りでは、宇都宮健児氏の政策は非常に練りこまれたものであり、弁護士としての現場の匂いがする地に足の着いたものだったと感じています。
東証一部上場会社(鳥越製粉)創業家でエリートジャーナリストの鳥越氏と弁護士として貧困と戦ってきた宇都宮氏はちょうどヒラリーとサンダースを模したような存在です。日米において両者の対応が正反対のものになったことは両国の民主主義の成熟度の差を表す典型的な出来事と言えるでしょう。
今回、野党側は知名度ばかりを気にして、石田純一氏、古賀茂明氏、宇都宮健児氏らに声をかけては取り換えるという極めてご都合主義の対応を繰り返してきました。
このような無様な状況になった理由は明白です。それは党幹部支配によって党員の声が完全に無視されているからです。つまり、民進党をはじめとした国政政党は党員・サポーターを抱えているにも関わらず、彼らの声を全く無視して一部の議員だけで集まって物事を決める閉鎖的な党体質を抱えているのです。
与党側でも多くの東京都民の有権者が「増田って誰?」というところからスタートし、そのまま選挙戦に突入するという極めて都民を馬鹿にした対応がなされています。
予算規模13兆円の都庁のリーダーを決める選挙戦を通じて、日本の民主主義の未熟さが露呈したことが今回の東京都知事選挙の最大の成果と言えるでしょう。
政策論争や過去の実績を問われる候補者選定プロセスを実施すべきだろう
舛添氏の辞任は参議院議員選挙直前ではありましたが、それは東京都民がいい加減なプロセスで東京都知事を選ばされる理由にはなりません。参議院議員選挙が忙しいなんて言い訳は東京都民には全く関係ありません。
国政は国政、都政は都政であって、今回の酷い擁立劇は東京都議会の各政党会派の怠慢だと言えるでしょう。国政選挙があるから東京都知事選挙が蔑ろになるなら、国会があれば東京都議会も要らないということで良いのでしょうか。
少なくとも今後は東京都知事選挙については任期終了の半年程度前から各政党が候補者選考プロセスを東京都民に公開する形で実施していくことが必要です。今回の東京都知事選挙を反省材料とし、日本にも当たり前の民主主義のプロセスが定着していくことが望まれます。
とりあえず、日米で民主主義の成熟度が「大人と子どもの差」がある状況はみっともないので、日本の政治家には早急に是正してほしいと思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
yuyawatase at 11:09|Permalink│Comments(0)
2016年06月22日
参議院議員選挙は「野党統一名簿不成立」で事実上終了した。
参議院議員選挙の最大のポイントは「野党統一名簿」だったということ
本日から参議院議員選挙に突入したわけですが、この参議院議員選挙は結果を見るまでもなく終わった、ということができます。原因は、小沢一郎代表が構想していた「オリーブの木」構想、つまり「野党統一名簿」が頓挫したことです。
なぜ、野党統一名簿が頓挫したことで、参議院議員選挙が終わったと言えるのでしょうか。下記、その理由についてまとめていきたいと思います。
自公お維無で参議院3分の2は確実な情勢、したがって与野党対決は選挙争点にすらならない
今回の参議院議員選挙は、2010年の野党が当選者数が比較的多かった改選選挙であり、2013年の直近の参議院議員選挙の実績を見る限りは野党の惨敗は免れ得ないと思います。
非改選組の数字を加味すると、改選議席数のうち約60%を改憲に賛成する勢力で勝つことで3分の2を達成することは、現状の与野党の勢力関係に鑑み、与党側にとってはかなり低いハードルということが言えます。
また、個別の政党の比例得票数では自民党が圧倒的な状況になることは予想に難くなく、共産党と協力した民進党の総得票数に大きなブレーキがかかることは間違いありません。
民進党の岡田代表が多大な批判にあった「3分の2阻止ポスター」を発表するほどに、非常に低い目標設定を行ったことも現実の数字として妥当だと思います。
真の対立は「野党内の主導権争い」、民進党と共産党の勢力バランス変化による地殻変動
今回の選挙にとって、野党側の生命線は「対与党」ではなく「選挙後の崩壊」を事前に防止することにあったと思われます。「選挙後の崩壊」とは言うまでもなく、「民進党の崩壊」のことを意味しています。
今回の参議院議員選挙の真の争点は「民進党と共産党がどこまで拮抗するのか」ということにあります。
つまり、万が一、参議院比例票で共産党が民進党を上回るか・拮抗した場合、野党における主導権争いで共産党が台頭することが予測されます。
戦後の労働組合の主導権争いで共産系は主流派を追放されており、民進党を支える連合が労組界の覇者として君臨してきましたが、参議院議員選挙の結果は労組内での勢力構造にも地殻変動を与えていくことになるでしょう。
民進党の比例票下位の労組代表は軒並み落選し、特に共産党系と対立関係にある同盟系の労働組合から民進党への不満は相当なものになるだろうと予測されます。
「野党統一名簿」不成立、参議院選挙後に野党は空中分解へ
野党統一名簿とは、各政党の比例得票数をアヤフヤにし、民進党・共産党の勢力バランスの逆転に蓋をする妙案だったと思うのですが、同方式が民進党指導部に受け入れられることはありませんでした。
野党統一名簿は民進党・共産党の関係強化だけでなく、民進党からの離脱を防止するための最後の切り札であったと言っても過言ではありません。共産党による乗っ取りを飲み込むくらいの度量が無くなった民進党指導部は自らの政党自体を崩壊させることになるでしょう。
野党の主導権争いでの民進党の事実上の敗北という事態を受けて、参議院議員選挙後に民進党解体による与野党の再編が進むことになるものと思われます。民進党議員らは参議院選挙後の解党を念頭に生き残りに向けた行動に既に走り始めていると推測されます。
そして、憲法改正に反対する勢力は「共産党」と「左派の一部」となることは明白となり、日本から自民党に代わる政権交代可能な野党は事実上消滅することになるでしょう。
参議院選挙後、憲法改正に向けた3分の2を大きく上回る勢力が衆参両院で形成されることになり、日本の政治シーンは現状の冷戦時代の名残りのような対立構造から次の段階に進んでいくことになります。
yuyawatase at 18:23|Permalink│Comments(0)
2016年04月22日
TPP交渉「聖域を守れ!」という亡国の国会審議で滅びる日本
TPP国会審議、「聖域を守れ!」最低のやり取りに明け暮れる与野党の有様
TPP国会審議が始まっているわけですが、極めて不毛かつ絶望的な国会審議の有様に溜息しか出ません。TPPの聖域5品目とされる農産品について、野党が「聖域を何も守れていないではないか」と声を荒げているからです。
まず、現状認識の根本的な問題として、日本政府は聖域5品目に対して成功裡に交渉をしたと思います。しかし、その頑張りは日本の農業、納税者、そして未来にとっては、まさに亡国の頑張りでしかないことが問題です。
今回のTPP交渉における主要農産品の交渉結果について、一言で表現すると、「日本の農業は甘やかされた聖域を守ることで未来を失った」ということです。
野党はガタガタとくだらないことを述べていますが、実際に起きていることは「米などの高い関税を維持した代わりに、国家管理貿易で他国の米・麦を納税者負担で強制輸入する量が増加し、更には加工食品の関税引き下げで食品加工業の海外流出は加速していく」ということです。その結果として、産業としての農業の衰退に拍車がかかることになるでしょう。
現在の与党はTPPの農業自由化を骨抜きにして聖域を守る(農水省・農業関係者の既得権を守る)ことに成功しており、本来であればTPP交渉への参加を表明した民主党や一貫して賛成してきた第三極に所属していた国会議員らは怒りを表すべきです。
しかし、現実には彼らは「聖域が守れていない」の大合唱。これらの人々が我が国でそもそもTPPを推進しようとしていた人々であるかと思うと、自論の変節ぶりと政策論のレベルの低さに呆れるしかありません。そんなことを求めるなら野党など辞めてしまって、自民党と一緒に既得権保護にまい進すれば良いのです。
TPPには自由貿易・自由投資以外にも安全保障コスト削減のメリットがある
TPPは参加国に高度な自由貿易・自由投資へのコミットを要請するものであり、先進国である日本にとっては経済的なメリットが多い協定です。そのため、上記のような農業に関する本末転倒な議論を論外であるとともに、様々な分野の市場での経済的価値は極めて大きいものと思われます。
また、TPPは米国のアジア回帰戦略の主軸となる側面もあり、オバマ大統領が度々言及している通り、安全保障上の意味合いも重要なポイントとなってきます。つまり、TPP参加国によって自由市場の権益が共有されることで、同地域での安全保障上のコストを共有・削減していくことが可能になるからです。
特に日本の場合は同盟国・米国との間でアジア地域での共通の利益が強化されることを通じて、潜在的な競争相手である中国からの軍事的プレッシャーに対抗する意味合いが強くあります。
米国はそもそも東アジアや東南アジア地域への関心が強くありません。彼らの安全保障上の主要な関心事項の大半はロシアと中東問題です。そのため、むしろ東アジア・東南アジア地域では中国の軍事的な台頭に対して米国は及び腰であり、米国による関与を維持することが極めて難しい局面となっています。
トランプ氏やサンダース氏の台頭、日本・アジアへの関心の低さは彼ら特有の問題ではありません。彼らがTPPに否定的な理由の一つにはアジア地域への安保上のコミットを避けたいという意図があるはずです。
そのため、仮にTPPが米国または日本が抜けて非成立になった場合、TPPに加入した場合と比べて日本は中長期的には中国の安全保障上の脅威に対して米国抜きで対応するだけの防衛コストの負担が迫られることになるでしょう。また、東南アジア諸国の軍拡も継続していくことになり、日本にとって重要な地域の平和維持のためのコストが増加していくことが予想されます。
防衛費等の増加は日本国内における社会保障、教育、地方交付税などの他予算を削減することによって賄うしかないため、TPPに加入しないことは現在の政府による行政サービスの低下を間接的に招くことになるでしょう。そして、拡大する防衛予算は非採算部門である政府規模の拡大に繋がり、日本の経済成長は更に鈍化していくことになります。
巷ではTPPに入ると皆保険が崩壊するなどと議論にも値しない論が横行していますが、安全保障環境の中長期的な見通しに立てばTPPに入らないほうが政府予算内での資源の取り合いが浅ましいことになっていくことは容易に想定されるのです。
国会議員らはくだらない政争をやめて、さっさと大政翼賛会を結成したら良い
冒頭でも触れた通り、かつては自由主義を掲げた政党の所属国会議員らが現在では「聖域を守れ!」と主張している姿を見ると、日本の国会議員の節操のなさはここに極まれりだなとしみじみしてくるわけです。
私の20代・30代前半は小泉構造改革や第三極ブームとともにありましたが、当時と比べて現在の与党と野党の議論の質の低下は著しくもはや見る影もないということが言えるでしょう。
聖域を守ると述べながらも守っているのは既得権者だけで産業自体を衰退させていることにも気が付かない有様。そして、米国自体がアジアへのコミットメントに引き気味であるためにTPPにも既に及び腰になりつつあることを知らず、他国に交渉でやられた!というチャチな陰謀論を振りかざす有様。
国会審議のレベルの低さは真剣に成長・発展、そして平和・繁栄を求める他国の政治家から見た場合に絶句に値する状況です。
与党と野党の議論は双方ともに自分たちが何の議論をしているかも分からず、既得権集団のための「ためにする議論」をしているプロレスみたいなものです。与党も野党も求める結論が一緒ならさっさと大政翼賛会を結成すれば良いわけで、あえて違う政党のフリをしてくれなくても良いのです。
国会議員は今更民主主義をやっているフリをしなくても問題ありません。国民は皆さんが官僚・既得権の言いなりであることを十分に知っているのだから。それよりももっと分かりやすく自分たちがやっていることの説明責任を国民に果たしてほしいものです。自分たちが一般納税者の敵であることを明らかにすることはアカウンタビリティーを果たす上で重要な意思表明だと思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
yuyawatase at 15:30|Permalink│Comments(0)
2016年01月26日
宜野湾市長選挙、「直近の民意」の正しい測り方を教えます
宜野湾市長選挙で政府・与党が大差で勝利
米軍普天間飛行場問題に影響する宜野湾市長選が1月24日に投開票されました。政府・与党の支援を受けた現職の佐喜真淳氏が勝利、翁長雄志知事が推した元県幹部職員の志村恵一郎氏に大差をつけた形となりました。ちなみに、投票率は68・72%で前回2012年の市長選を4・82%上回っています。
実際の得票数は下記の通りです。5000票以上の大差がついた選挙結果となっています。
<今回>
佐喜真淳 ・・・2万7668票
志村恵一郎・・・2万1811票
<前回>
佐喜真淳 ・・・2万2612票
伊波洋一 ・・・2万1712 票
現職・新人の選挙分析を行う前提としての各党の基礎票を分析する
現職市長は自民・公明の推薦であるため、与党の支持者の票が基礎票となっています。そこで、保守系の次世代(こころ)・幸福を加えて直近の衆議院議員選挙の比例票を見てみると、宜野湾市からは
自民党 ・・・9297票
公明党 ・・・5033票
次世代 ・・・445票
幸福 ・・・225票
合計 ・・・1万5000票
が出ているため、与党の基礎票として計算することが可能です。
逆に同じ衆議院議員選挙で、野党の比例票を見てみると、
社民党 ・・・7947票
共産党 ・・・3555票
民主党 ・・・3090票
生活の党 ・・1281票
合計 ・・・1万5873票
という数字であり、野党のほうが基礎票が多いことが分かります。社民党・共産党の比例票が民主党を上回る状況が沖縄ならではの特徴と言えるでしょう。
この他に分裂した維新4535票がありますが、元々同党支持者は浮動票も多いため、今回は「ゆ党」扱いとして両党の基礎票としては計算していません。
現職・新人の得票から与党・野党の基礎票を引いて「中立派」の民意を測定する
選挙は与党・野党に分かれて行われるものであり、両者ともに政治的な主張があることは当然です。上記の通り、宜野湾市では与野党の基礎票は拮抗しており、野党がどちらかというと優勢という状況です。
そのため、宜野湾市民の当面の民意は「両者の基礎票」に属さない「中立派からの得票数」によって測ることが妥当だと思います。そこで、現職・新人から与野党の基礎票を加味して分析すると
佐喜真淳 ・・・基礎票1万5000票+中立派12668票=合計2万7668票
志村恵一郎・・・基礎票1万5873票+中立派5938票 =合計2万1811票
ということになります。つまり、現職は新人の2.13倍の中立派票を集めたことが推計されるため、宜野湾市長選挙における直近の民意は与党にあるということが言えそうです。
左翼の根拠地である「沖縄ですら失敗した野党連合」に未来はあるのか
共産党が呼びかけた「国民連合政府」構想は沖縄県のオール沖縄という野党共闘体制を念頭に置いたものと想定されます。
しかし、その沖縄県での県知事まで投入した野党統一候補の大惨敗は、参議院議員選挙に向けた野党連合に決定的な影響を与えることになるでしょう。むしろ、この結果を受けても共産党を取り込んだ「野党統一候補」の擁立を続けるならば、参議院議員選挙後に野党が消えてなくなることは必然と言えます。
特に民主党は反安保法制のバカ騒ぎの幻想から目を覚まして「国民の生活が第一」という政権を奪ったときの自党のフレーズを思い出すことが必要です。与野党の間でまともな政策論争が行わない選挙は国民にとって不幸なものであり、野党は夏の参議院議員選挙に向けて自らの立ち位置を見直してほしいと思います。
yuyawatase at 12:00|Permalink│Comments(0)
2016年01月15日
自民党を必要としない本物の「対案路線」を作ろう
戦後左翼の「トラウマ的な酷さ」が「対案路線」の本質を見誤らせている
55年体制の中で野党社会党や左翼グループの非現実な妄想の影響を受けて、日本特有の「野党は何でも反対」という政治カルチャーが育まれてきました。その結果として、自民党以外の野党は左傾化した妄想を語っているにすぎず、政権選択上の判断として彼らが述べる内容は検討するに値しないという政治の貧困が産み出されてきました。
日本の良識ある有権者は、野党の異常な政治姿勢を見せ続けられた結果、自民党の政治姿勢を相対的に健全なものとして認識してきました。それは同時に日本の有権者の判断基準は「現実的であるということ」=「戦後の自民党路線であること」という非常に低いレベルでの政治選択を余儀なくされてきたことを意味しています。
そして、現在の野党が「対案路線」という言葉で自らを定義する際、日本特有の「バイアス」、つまり「戦後左翼のトラウマ的な酷さ」とは一線を画した「現実的であること」を強調する政治文化が育ってしまうことになりました。
「自民党に似ていること」が信頼につながるなら「現状維持」で良い
しかし、政権与党に対する「対案」が「現実的であること」は、そもそもの前提として「当たり前」の話です。
むしろ、上記のように「対案」の考え方の根本が間違っているために、野党が「現実的であること」を「政府与党と同じ価値観を持つこと」と混同する弊害が生まれています。それらの弊害は「対案路線」を標榜する勢力が政権与党に対する「修正案」や「是々非々」を誇るという倒錯した政治姿勢として現われています。
政権与党に対して修正案や是々非々を良しとする立場を取るのであれば、政権与党の一員となって内部から意見を通す作業を行うべきでしょう。何よりも自民党に似た考え方を標榜することで政権担当能力があることを示せるなら、自民党が政権与党を継続すれば良いだけです。
有権者の立場から見た場合、政策の方向性がほぼ同一であれば、政権運営の実績がある現在の政権与党を選ぶことは必然的なことだと思います。
「対案路線」の本質は、「野党独自の魅力的で力強い価値観」を示すこと
修正案や是々非々とは、政権与党との政策的な技術論上の対峙でしかなく、政権与党に対する野党の受け身の姿勢を表す言葉に過ぎません。自分たちの良さをアピールするのではなく、「自民党に対してモノが言える政党です」と言われても、有権者にとって魅力的に映るわけではありません。
対案路線の本質は「野党独自の価値観」を示すことです。それは実行可能なものであるとともに、自民党の価値観とは異なるものであることが重要です。深い知識に裏付けられていることは必須であり、それらが体系だった理念に基づいて構築されている必要があります。
野党連合のような理念の欠片もない野合による選挙対策や昨年の安保反対時のSEALDsのような非現実な左派路線と一線を画すことは述べるまでもありません。これらは「自らの存立基盤を自民党に依存している集団」であり、自民党を倒した後のビジョンが何も見えません。
更に言うなら、有権者は上記の非現実な集団に与しない程度の「対案路線」ではなく、自民党に代わる魅力的で力強い「新しい価値観」が示された「対案」を求めているのではないでしょうか。
有権者が求めている「価値観」は「自民党を必要としない選択」である
野党が提示するべき価値観は、「自民党に反対する」価値観や「自民党を修正する」価値観ではなく、「自民党を必要としない」価値観でなくてはなりません。外部の政治的な敵対者を必要とせず、その価値観自体が自律性を持っており、有権者からの賛同を得るようなものであることが大事です。
有権者が望んでいることは「現実的な能力」と「明確な価値観」を持った選択肢の中から自らの支持する選択肢を手にすることです。政権交代とは有権者が自民党を必要としなくなったときに起きるものです。
この夏の参議院議員選挙で、野党連合でもなく政権の補完勢力でもない、真の選択肢に成り得る政党が立ち上がることに期待したいと思います。
yuyawatase at 01:53|Permalink│Comments(0)
2016年01月14日
野党の支持率が上がらない「たった1つ」の理由
野党は完全に「政権与党の術中」にはまっている、ということ
国会論戦を見ていると、野党側から低所得高齢者への3万円のバラマキ、軽減税率の財源不足などが追及されています。これらの追及はマトモナ神経を持った人々による突っ込みではありますが、野党の行為が支持率の上昇につながるかと言えば、全く逆の結果につながるということを知るべきでしょう。
政権与党は、野党側に上記のような追及を行わせることによって、選挙上の世論環境を自分たちに有利な方向に導くことができます。今回はその仕組みについて簡単に解説していきたいと思います。
相手の政策を連呼する「財源論」は選挙戦略上の最大の悪手
「〇〇には〇〇億円かかるのです!一体どこにそのような財源があるのですか?」
これは負ける選挙で良く使われるフレーズです。このフレーズを述べると何故負けるのか?それは対立陣営の候補者自らが「本来は否定されるべき相手の政策」を連呼しているからです。しかも、数字付きで述べることによって有権者の頭にはばっちり記憶されることになります。
冒頭に触れた「低所得高齢者に3万円」という政策は、政権与党だけではなく愚かな野党が取り上げ続けることによって有権者層に浸透し続けることになります。消費税の軽減税率についても話は一緒であり、軽減税率1兆円の財源について議論すればするほど、軽減税率の概念と金額が広まっていくことになるのです。
多くの政治関係者が錯覚していることは、相手の政策のおかしさを批判すれば自党の支持率が上がる、ということです。そして、残念ながらそのようなことはほぼ発生しません。
相手の政策のおかしさを指摘することは実質的に相手の政策の宣伝でしかなく、自党の支持率を上げるためには「自党の政策」を相手に批判させる必要があります。3万円のバラマキはお金を受け取る当事者たちの記憶にはばっちりと残り続けることになる一方、それを批判していた人々の政策は有権者の記憶に残ることはないでしょう。
なぜなら、有権者は「反対」している人間の理屈に耳を貸すほど暇ではないからです。有権者はポジティブな選択肢に賛成したいのであり、小難しい反対論への関心は薄い傾向があります。日本国民の一日は多忙であり、ある政策を記憶した上で、その反対論まで理解し、そして更に反対者が掲げる政策まで覚えるほど暇ではないのです。
したがって、「相手の政策」に対する「財源論」批判とは最低最悪の選挙戦略上の悪手と言えるでしょう。
2009年・民主党による政権交代選挙で自民党が敗北した理由とは
2009年・民主党による政権交代選挙の時、自民党議員は「子ども手当とか、高速道路の無料化とか、一体どこにそのようなお金があるのですか!」と批判していました。
そして、自らの後援会の支持者に自民党の政策をほとんど語らず、民主党の看板政策の批判ばかりしたのです。その結果、自民党議員によって集められた後援会の支持者は「民主党の政策を記憶して」家路につくことになりました。
圧倒的な組織力を有している自民党・公明党の組織力が仇となり、彼らの組織がフル回転で民主党の政策を宣伝して回れば、自公政権でも与党であり続けることは極めて困難だと言えます。
野党は与党と比べれば組織力で常に劣勢に立たされているものです。野党が与党に勝利するためには与党支持者の「口コミ」を利用した選挙を実行することが選挙戦略上好手なのです。相手が自党の批判をしていることを喜んで受け入れて、相手の政策を無視し続けることが取るべき王道ということになります。
2009年時は民主党は与党としての振る舞いを実行し、自民党は負ける野党としての失策を犯していたのです。選挙上の争点設計に成功した陣営が勝利し、それに反対させられた陣営が負ける、という単純な構図が現れたと言えます。
野党は「パブロフの犬」の状態、条件反射の反対論からの脱却を
従って、現在の野党は安倍政権がぶらさげた分かりやすい餌に食いつかされている状態にあると言えるでしょう。政権与党が分かりやすいバラマキを行うことによって、野党はそれらに反対することが選挙戦略上意味があるかどうかを考えずに財源論に頼ってバラマキ政策に反対しているだけです。
まさに、政権与党にパブロフの犬のように扱われて馬鹿にされてる状況が野党の状況と言えます。
仮に野党が自党の支持率を上げたいのであれば、「多数決のために止めることができない」政権与党の政策を無視した上で、自党の問題意識と解決策としての政策を述べ続けるだけで良いのです。それもできるだけ分かりやすく、そして与党が「反対したくなる」ようなものを掲げる必要があります。
したがって、その選挙争点となる政策は「難しい財源論」ではなく「その政策に関心が無い与党の議員でも理解できる」ものである必要があります。誰もが「ぽろっ」と批判できる政策を創り出しつつ、深堀すれば非の打ちどころがないものを掲げることが重要なのです。
本来は政党助成金とは党の根幹となる政策を作り上げるための資金なのですが、現在は政権与党の批判を行う各議員の政治キャンペーンのための費用に化けており、全く本来の趣旨から逸脱したムダ金になっています。政策としても価値がないだけでなく、選挙としても全く意味がない使い道です。
野党は自らが本来何をすべきなのか、ということを今一度思い返して国会論戦に臨んでほしいと思まいます。
yuyawatase at 01:05|Permalink│Comments(0)
2015年11月24日
政権交代可能な『与党』を求める有権者(選挙のイロハ)
「政権交代可能な野党が必要」という認識が根本的に間違っている
最近の国政政局の状態を見ていると、本当にピントがずれた議論が野党内で議論されていることが分かります。それは「政権交代可能な野党を作る」という言説です。自分も何度も選挙に関わってきましたが、このような発言を行っている時点で「負け」が確定していることを知るべきだと思います。
「政権交代可能な野党」という言葉は誰にとって意味がある言葉でしょうか。これは現在野党に所属している議員たちにとって必要な言葉(つまり、自らのアイデンティティーの正当化のため)であって、有権者には一切関係が無い言葉です。
そのため、このような言葉を連呼されたところで、有権者の心と打算には響くわけもなく、現在の野党の何を言っても支持率が上がらない迷走状態が継続することになります。
有権者が望んでいるものは「政権交代可能な『与党』」である
政権交代とは野党が与党になるものであり、自らが野党と名乗っている集団を支持する有権者は多くないでしょう。一定のコアなファン層は取れるかもしれませんが、逆説的には「与党」としての意識・能力を見せることが無い限り、野党が大衆からの支持を獲得することは困難です。
現在の野党の最大の問題は、民主党政権の失敗の烙印の影響で、「与党としての能力がない」という認識を有権者にもたれていることにあります。その上、自ら「政権交代可能な野党」と連呼しているのだから支持率が上がるわけがないのです。
有権者が望んでいる政党は「与党の資格がある政党」であり野党の野合ではないということです。有権者は一定の信頼性がある与党に相乗りしたいのであって、勝つか負けるか分からず、しかも政権奪取後の運営が見えない勢力を勝たせることはしばらくないでしょう。
大阪ダブル選挙で「維新」が勝利した理由は「維新が与党」だったから
大阪ダブル選挙で勝利した理由は、現職の知事・市長を擁する勢力であり、なおかつ実質的には官邸との連携が垣間見える「実質的な与党であった」からです。これらの要素は有権者心理に深く影響を与えて、与党体質を持つ自民党の票は分裂し、公明党も自主投票を決定することになりました。
一方、大阪自民党は共産党と組んだことで野合という批判を受けましたが、野合自体は選挙における敗因ではありません。問題は共産党と組んだことによって「野党臭」が強まったことにあります。自民党支持者や一般有権者はあくまでも与党であることを好む環境にあるため、野党としての立ち位置を設定した時点で負けが確定してしまいました。(共産党の支持がダメで公明党の支持がOKな理由は「与党だから」という以外は特にないはずです。)
国政の大阪維新が躍進する単純な理由は「与党」として参加するから
国政においては、大阪維新を「与党の補完勢力」として糾弾する声もありますが、これらは返って逆効果になるものと思います。なぜなら、有権者は「自民党ではない新しい与党を望んでいる」からです。
つまり、現状の政権担当能力がない野党ではなく、政権担当能力がありながら自民ではない、という条件を兼ね揃えた与党こそが、潜在的な国民心理の中で望まれている政党の姿です。有権者は常に「与党」を求めているのであり、野党を求めていることなどないのです。
そのため、国政野党の戦略・戦術・言葉選びは基本的な選挙戦略が間違っており、自らの立ち位置を根本から見直すべきです。有権者から見れば「世間交代可能な野党」と「たしかな野党(共産党)」の間は国会議員が思っているほど違いはないのです。
yuyawatase at 17:00|Permalink│Comments(0)