近代史

2015年11月02日

今、何故「自由民権運動」が重要なのか

自由民権塾

日本の真の政権与党は「官党」である

日本には大きく分けて3つの党派が存在しています。それは、与党、野党、そして「官党」です。与党とは選挙で過半数を制した政党のこと、現在で言えば自民党・公明党のことです。野党とはその他の政党の事です。

しかし、日本にはもう一つ「官党」が存在しています。彼らは、常に政権、つまり権力機構の側に存在しています。民衆による選挙とは別に存在し、選挙を勝ち抜いた与党を取り込み権力を保持してきた存在、それが官党(霞が関)です。

日本の近代史は「官党と民党の闘い」の歴史である

日本の近代史とは「官党」に対する「民党」の戦いです。そもそも歴史的に「国会」は民衆が「官党」と戦うために創り上げた仕組みです。

明治初期の官僚による増税・規制に対し、民衆は権力である官党に対抗する力を欲しました。そして、官党に対抗する勢力が結集して生まれた勢力、つまり「民党」が「国会」を形成したのです。

民党は官党に対峙して選挙で過半数を得た与党として戦いましたが、次第に権力を握る官党の力の前に屈服することを余儀なくされました。分断、買収、疑獄、暗殺、様々な手段を通じて、戦前の民党は崩壊したのです。

今、私たちが知ることは、選挙で選んだ「民党」ではなく、この国の与党は「官党」だということ。そして、現行の政権与党である自・公は「官党」の連立与党として存在し、私たちに増税・規制強化を迫っているということです。

毎年増大を続ける政府予算は社会における官党の力の増大を意味しており、民衆の相対的な力の後退を意味しています。

 民党の復活のために「自由民権運動」の歴史観を再興すべき

本来は、自民も民主も維新も共産も無く、官党に対して「民党」たる選挙で選ばれた政党が民衆の与党として存在することが必要です。英国などで確立されている当たり前のこと、民党の官党への優位、という体制を確立するのことこそ、何にも先立ってまず実現する必要があります。

そして、民党が勝利を手にするためには、利権などの甘い誘惑に屈さない強い信念を民衆が取り戻すことが重要です。そのためには、私たちは私たち民衆の歩み、つまり歴史を取り戻して誇りを回復することが求められます。

現在、日本の学校では「自由民権運動」は歴史の教科書のほんの一幕として取り上げられるだけに過ぎません。しかも、官党の歴史観の影響から矮小化された形で記載されており、「民撰議院設立建白書」のような歴史的な文書でさえ、私が文語調のものを翻訳し、現代語訳するまで存在していませんでした。

しかし、私たちにとって「民衆」の戦いである、自由民権運動は日本国民である自覚、その誇りに直結する大切な歴史です。

日本国民は、未完に終わったトルコを除いて、アジアで初の本格的な立憲国家を樹立して国会を開いた、アジアの自由と民主主義の灯台となるべき国家です。

私たちがその歴史を見直すことで力による圧制を強める中国やいまだ暴政が蔓延る北朝鮮に対し、自由と民主主義を守るアジアの盟主たる正統性を主張することができるのです。

議員と国民に一人でも多くの自由民権運動への理解者を増やすべき

現在のバラバラになった野党の有り様は、昭和維新の際に崩壊していく自由主義・民主主義の過程そのものです。議会制民主主義の力を信じることなくデモなどの大衆運動によって世論を動かそうとする風潮もまさに当時の日本に酷似した状況になってきたと感じています。

そのような時代であるからこそ、政治への不信、官党による政権の独占時代であるからこそ、党派の別を越えて、自由民権運動の歴史観を標榜する政治家と有権者が必要です。どこの政党が良いとか悪いとかはどうでも良く、現在は一人でも議会制民主主義の意義と歴史を大切にすることこそ重要です。
 

政官攻防史 (文春新書)
金子 仁洋
文藝春秋
1999-02




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yuyawatase at 17:00|PermalinkComments(0)