誕生
2016年10月27日
トランプ大統領が爆誕する5つの理由
米国大統領選挙投開票日まで2週間を切った状況となっており、既に「ヒラリーが勝利した」というヒラリー陣営のプロパガンダが大量に流れている結果、日本人の間でもスッカリ決着がついたかのように錯覚している人が多く存在しています。
特にいわゆる有識者と呼ばれる人々にとってはトランプ勝利の可能性に触れること自体がポリティカルコレクトネス(政治的に正しい言説)に反するものになっているため、米国の現実とはかい離したヒラリー万歳を繰り返すだけの有様となっています。
しかし、現実の米国世論はいまだトランプかヒラリーかで大きく割れている状態であり、一度はヒラリー勝利を予測したメディアでも第3回討論会後の世論調査の推移から情勢変化を見守る姿勢に変化しているものもあります。
クリントン氏、再び過半数割れ=米大統領選
そのため、Brexitと同様にメディアの論調ではなく世論調査の数字で実際の見通しを予測することが肝要です。筆者は5月段階で「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由という記事を書きました。
残念ながらトランプ氏と共和党の関係は大人の関係を築くことができず、トランプ氏と共和党主流派は仲たがいする形になりました(ヒラリーの健康問題は炸裂しましたが・・・)が、それでもトランプVSヒラリーの状況は五分五分の状況となっています。
今回は数字と情勢から読み取ることができるトランプ氏が勝利できる5つの要素についてまとめました。米国大統領選挙は依然として伯仲した争いが続いており、読者の皆様にも冷静な判断を求めたいものと思います。
(1)トランプVSヒラリーの世論調査は第3回討論会後に縮小傾向を見せている
トランプVSヒラリーの支持率差は一部の世論調査結果を除いて第3回討論会後に縮小傾向を見せています。
つまり、大方のメディアの評価に反して有権者による第3回討論会の評価はトランプ優勢であったと考えることができます。最新の世論調査では一部を除いて約5%以内の支持率差の範囲に留まっており、調査によっては互角または1%程度の差、つまり両者の支持率差はほとんど無いとするデータも存在しています。
トランプ氏は討論会で共和党保守派の支持者に効果的なアピールを行ったため、女性問題で離反しつつあった共和党保守派系を自陣営に繋ぎとめることに成功しています。一方、共和党の30%程度である主流派支持者がトランプ陣営を離反してヒラリーに流れている状態です。
離反した共和党支持層がトランプ支持に転ぶことは困難かもしれませんが、実際の投票段階でこれらの層が投票棄権に転んだ場合、ヒラリーへの投票が減少して相対的にトランプ氏が浮上する状況となるでしょう。
(2)大統領選挙の勝敗を決める接戦州ではトランプ・ヒラリーの支持率は拮抗している
米国の大統領選挙の勝敗は接戦州とされている州の投票結果で決まります。各州に割り振られた選挙人を勝者が総取りできる制度となっており、接戦州以外は既に共和党勝利・民主党勝利がほぼ確定的な状況となっています。
トランプ氏は接戦州のうちオハイオ州・アイオワ州で優位な状況にあり、最新のブルームバーグによる世論調査ではフロリダ州でもヒラリーの支持率を上回りました。
Trump Has 2-Point Edge in Bloomberg Politics Poll of Florida
全米支持率でも支持率差が再び縮まりつつある中で、接戦州では両者の支持率が更に拮抗または逆転した数字が出てくることになるでしょう。
(3)トランプは共和党主流派と縁を切ったことで接戦州の勝敗に集中できる
トランプ氏の共和党主流派との決別は選挙戦略上は極めてマイナスに働くものとして捉えることが妥当です。実際に共和党主流派と同傾向を持つ比較的リベラルな傾向を持つ共和党員からの支持は失われています。
しかし、物事には負の側面もあれば良い側面もあります。
共和党主流派との決別はトランプ氏が「連邦議会選挙」を気にせずに「大統領選挙を決める接戦州のみ」に全力を注ぐことができることを意味します。ヒラリー陣営が民主党の連邦議員候補者らに配慮して全米的なキャンペーンを実行する必要があるのに比べて、トランプ陣営は大統領選挙における自分達の勝敗のみを意識したキャンペーンが可能です。
トランプ氏は全米支持率でヒラリーに負けたとしても接戦州の投票結果でヒラリーを逆転することができれば大統領選挙に勝利することができます。
たしかに、トランプ陣営が上記の戦略を実行し続けたことで、ヒラリー陣営の全米的なキャンペーンによってテキサス州などの共和党の金城湯池が攻め落とされた場合、トランプ氏は歴史的な大敗を帰することになる可能性もあります。
しかし、大統領選挙の慣習通りにレッドステイツ(共和党優位の州)でトランプ氏が勝利することになれば、トランプ陣営の接戦州に特化する戦略を成功を収めることになるでしょう。トランプ陣営にとっては状況を有利に活用して一か八かの博打を打つことが可能な状況が生まれていると言えます。
(4)ヒラリー支持者は若年世代が多く実際の投票率が低い可能性がある
ヒラリー支持者はトランプ支持者よりも若年層が相対的に多い状況となっています。
Clinton Vs. Trump: IBD/TIPP Presidential Election Tracking Poll
そして、米国大統領選挙においても若年層の投票率は低い傾向があるため、表面上のヒラリーVSトランプの数字が拮抗していたとしても、実際のヒラリー陣営の支持率から若年層の支持率を割り引いて考えることが妥当です。
英国のBrexitの国民投票時にも若年層の相対的な投票率の低さによって事実上の決着がついたこともあり、米国の大統領選挙においても若年層の投票率は大きな勝敗を決めるファクターとなるでしょう。
(5)消極的な選択肢であるヒラリー支持は第三極候補者に流れる可能性がある
ヒラリーは予備選挙・本選挙を通じて「何故自らが大統領になるのか?」ということを有権者に十分にアピールしてきませんでした。ヒラリーは常に「消去法としてのヒラリー」でしかなく、米国の有権者は彼女を積極的に大統領に押し上げる理由がありません。彼女は現在もせいぜい「トランプを大統領にしてはいけない」という程度の消極的支持を得ているに過ぎません。
ヒラリー支持者の票は若者が多いこと・熱心な支持者ではないことから、流石にトランプに流れることはないものの、ジョンソンやステインらの第三極候補者に流れる可能性があります。エスタブリッシュメントらに配慮して無意味なポリティカルコレクトネスに基づくセリフを繰り返し、大統領候補者として自らの言葉を失った結果ということが言えるでしょう。
ヒラリーに比べてトランプ氏は「何故トランプ氏なのか」ということについて、「アメリカを再び偉大にする」というキャッチフレーズとともに、経営者経験があるアウトサイダーとしてのメッセージを有権者に提示し続けました。そのため、トランプ支持者は全くの政治素人が多いものの、熱心な支持者としてメディアの異常なバッシング下でも高い士気を保ち続けています。
一例を挙げると、2016年の共和党予備選挙は2012年時よりも圧倒的に多くの米国民が参加しています。2012年時の参加者総数は約1860万人でしたが、今回の予備選挙では3100万人を超えています。民主党の予備選挙の参加人数が2008年のオバマVSヒラリーのデットヒート時よりも減少している点とは対照的な状況です。
以上のように、トランプVSヒラリーの支持率差は縮小しつつあり、特に接戦州では逆転している数字も存在しており、トランプ陣営が接戦州に戦力を集中する中で、ヒラリー支持者の若者が投票に行かないか・第三極候補者に投票することによって、トランプ氏がヒラリーに逆転できる可能性が残されています。
これらはメディア・有識者によるイメージ操作ではなく世論調査の数字に基づく分析結果です。2016年の米国大統領選挙は未曽有の大接戦になっています。そして、米国にエスタブリッシュメントを葬り去るアウトサイダーの大統領が誕生する日が現実になる日が近付きつつあるのです。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
yuyawatase at 00:17|Permalink│Comments(0)