腐敗
2015年12月12日
大人の教科書(16)既得権と腐敗の違いは何だろう?
政治や経済の話をするときに耳にする「既得権」ってどんなものですか?
日本で政治や経済の話をするときに、「既得権」という言葉を耳にすることがあります。「既得権の打破が必要だ!」みたいなことを改革派の議員が述べたりすることを報道等で見たことがあり人もいるかもしれません。
では、「既得権」とは具体的にはどのようなものでしょうか。平たく言うと、既得権とは、歴史的な経緯などから形成・固定化した政治によってもたらされる利益、のことだと言って良いでしょう。
たとえば、分厚い規制に守られた業界(たとえば、農業、電力、官僚機構、その他諸々)は、既得権と呼ばれて批判されることがありますが、行政改革の対象となっては改革話が立ち枯れになって消えていきます。
その上、政府によって保護された既得権を変更することは極めて困難であるため、日本においては批判されるだけで実際には既得権者はほとんど影響を受けない状況にあります。
そして、既得権が存在することによって、市場経済に歪みが生じて富の分配の不平等や経済的な合理性が阻害されて、国民一般の福利厚生への負の影響が生じることになっています。
開発途上国の政治を語るときに耳にする「腐敗」はどのようなものですか?
開発途上国では政府職員による賄賂などが蔓延しており、企業活動などに対する介入や国民への理不尽な対応などが行われています。
これらは法的権限の恣意的な行使によるものもありますが、多くは政府職員の収賄行為や公金流用などであるため、明らかな違法行為であることが少なくありません。しかし、開発途上国では腐敗を行う側と腐敗を取り締まる側と一体化していることも多く、これらの地域で腐敗を無くしていくことは困難な状況にあります。
政府職員による恣意的な違法行為である腐敗が生じることによって、市場経済に予測できない負の影響が生じることになります。これらの負の影響が開発途上国の成長を阻害する主要な要因となっています。
既得権は「合法的で予測可能な腐敗」のこと、既得権の名称は「合法腐敗」に変更するべき
では、既得権と腐敗の違いは何でしょうか。
既得権と腐敗の差は「法律で保障されている」ことで「予測可能」かどうかということになります。
既得権も腐敗も市場経済に対する負の影響が生じることは一緒ですが、両者の差は負の影響が生じる発生経緯が「合法的なものかどうか」ということになります。政府によって腐敗が法律で保障されることを通じて、既得権として予測可能な弊害に変換されることになります。
つまり、既得権とは「合法的で予測可能な腐敗」のことであり、これらを維持することは日本社会のためにはならないことは明白です。そのため、既得権については「合法腐敗」という名称に変更したほうが良いでしょう。
もちろん、既得権も最初は理由があって成立したものもあると思います。しかし、時代の流れで必要性が無くなったにも関わらず存続しているものは腐敗とほぼ変わらないものでしょう。日本国民が既得権を廃止していくためには、既得権とは合法腐敗であるという認識を持つべきです。
yuyawatase at 17:58|Permalink│Comments(0)