米国

2016年11月14日

大統領選挙・日本を覆いつくした米国メディアのソフトパワー

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大統領選挙・日本を覆いつくした米国メディアのソフト・パワー

米国の大統領選挙に関して日本人は当然投票権を持っているわけではありません。しかし、多くの人が米国大統領選挙に関心を持っていたことも事実です。そして、大半の人がヒラリー勝利を確信していたものと思います。

実際にはヒラリー勝利は「米国メディがそう報じたこと」以外はほとんど無根拠な予測でしかなく、トランプ氏がヒラリーを破ったことで皆が幻想を見せられていたことが分かりました。このことについて筆者は散々論じてきたので今回は割愛します。興味ある人はこちらまで。(なぜ有識者は「トランプ当選」を外し続けたのか?

今回、筆者が伝えたいことは、巨大なメディアを有している国のソフトパワーについてです。

ソフトパワーは元々ジョセフ・ナイ(クリントン大統領時代のブレーン・知日派)によって提唱された通貨、文化、その他諸々多様な要素を含む国力の新しい概念でした。そして、この概念はグローバル社会におけるハードパワー(軍事力)に匹敵する力として様々な批判を浴びながらも定着したものになっていると思います。

今回、米国大統領選挙に関する日本の様子を見ていて、筆者が感じたことは「この国は簡単に米国のプロパガンダにやられる、ソフトパワーとしては三流国なのだ」ということです。

日本のメディアは米国の報道を垂れ流し続けて何の疑問もなく、そして国内からもほとんど報道内容がおかしいという検証もなされないわけです。ヒラリー万歳報道に散々騙された挙句、更に米国メディアの「かくれトランプ支持者」なる言い訳報道を何の検証もなく鵜呑みにしているわけです。オレオレ詐欺が無くならないわけだとしみじみします。

まさに文化的・メディア的な植民地状態を露呈した有り様であり、米国のメディアが持つ影響力は日本にとって非常に脅威だと感じました。

米国エスタブリッシュメントの代弁者としての日本人有識者という存在

さらに、単純に日本のメディアが米国メディアの丸写しであるというだけでなく、そこに登場する有識者の大半も米国エスタブリッシュメントの代弁者に善意によって自然となってしまう構造があります。

それらの有識者とされる人々は官僚・学者・メディアの人間ですが、彼らは米国滞在中に大学・メディア・役人などの極めてリベラルな人たちと接触する機会を多く持つことになります。

そして、日本人は米国政治における基礎的な政治教育を受けることないので、先方のエリート大学などに留学して教育を受けてすっかりリベラルに染め上げられてしまいます。更に、ハーバードをはじめとした米国のエリート大学の中でエスタブリッシュメントとの人間関係が出来上がります。

彼らが米国の友人に聞いたとか、米国でヒアリングしたとか、という際に接触しているのは、リベラルなエスタブリッシュメントばかりなので情報にバイアスがかかります。

そのため、これらの人々が日本のメディアに出て解説を行うことでメディアの偏りが一層加速する形になります。これは陰謀説というよりも、人間ってそういうものだよね、っていう話だと思ってください。彼らが悪いというよりも構造上仕方がないことなのです。

こうして米国エスタブリッシュメントの無自覚な代弁者が出来上がっていくものなのです。筆者は一方に偏り過ぎた情報のみが真実として日本に入ってくることには強い疑問を感じます。

米国のように優れた大学などの教育機関を有していると、世界各国から人材を受け入れてネットワークを作ることができるという「ソフトパワー戦略の見本」を示してくれているとも言えますが。。。

なぜ米国民の半数は強力なメディアキャンペーンに屈しなかったか

私たちのような外人(日本人)がすっかりヒラリー大統領だと思い込まされていたにも関わらず、米国では何故半数の人々がヒラリーを拒絶するような不屈の精神を発揮できたのでしょうか。

それは共和党系のグラスルーツ(草の根団体)による政治教育の結果です。米国共和党系の保守派グラスルーツは長年のCNNを筆頭とした偏向報道に対して非常に深い懸念を抱いています。そのため、大手メディアは常に民主党に偏向していることを自らの支持者に伝えているため、もはや米国共和党支持者にとっては米国メディアの偏向報道は慣れっこ&スルーになっているわけです。

更に、どのテレビ番組が放映時間の何分間で偏向報道を行ったのか、を計測して発表するような非営利団体まで存在しており、大手メディアは国民側からも常に監視されています。もはや権力と化したメディアは国民に根差したグラスルーツに監視される存在になっているのです。

また、共和党側からはリベラルに偏重する米国の大学への信頼も地に落ちているため、その代替機関として政府から独立した民間シンクタンクが発達しています。これらの組織は自由主義の立場(米国のリベラル=大きな政府の反対)から独自の提言・レポートを生産しており、共和党支持者はシンクタンクからの情報を信頼しています。

上記の通り、米国内ではメディア・大学・政府を牛耳るエスタブリッシュメントに対抗するソフトパワーが準備されており、 米国民はそれらの情報を摂取しているため、多少メディアが煽ったところで簡単に騙されにくい構造ができあがっています。

日本の課題はメディア報道に振り回されないリテラシーを構築すること

日本は独自のメディア情報網が非常に脆弱であり、米国における情報収集能力でも上記の有り様という状況になっています。そのため、一朝一夕で日本独自の情報発信組織を作ることは困難です。

そこで、一般的なメディアなどに対する免疫をつけることから始めるべきでしょう。

筆者は特に今回のヒラリー勝利の誤情報を国会議員ですら信じ込んでいた人も多かったことを懸念しています。このような貧弱なソフトパワー・脆弱な国家のままでは簡単に外国にひっくり返されるのが関の山だからです。今回、ヒラリーが必ず勝つと思っていた国会議員の人たちはリテラシーが低すぎて外交に携わって頂くのが心配で仕方がありません。

そのため、初歩としては、日本国内のメディア・大学などのリベラル偏向に対する米国流のグラスルーツの対抗措置を参考にして、日本版のリテラシーを高める試みを実践していくことが望まれます。そうすることで、外国メディアに対するリテラシーを高めることは自然とできるようになってくるでしょう。

米国エスタブリッシュメントが有する圧倒的なソフトパワーを見せつけられたこと、それが今回の大統領選挙における日本人としての最大の収穫だったと感じています。





本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2016年10月31日

トランプ支持者は「白人ブルカラー不満層」という大嘘


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<http://www.breitbart.com/から引用>

ミスリードされた「トランプ支持者像」が選挙結果を見誤らせるだろう 

トランプ支持者像として典型的に語られるイメージは「白人ブルカラー不満層」というものです。このような誤ったイメージはヒラリー陣営による徹底したプロパガンダの結果として米国内外にまで浸透しています。

トランプ支持者を紹介する日本のテレビ番組でも「デトロイトまで出かけて白人労働者」をわざわざ見付けて取材しています。トランプ支持者なんてものは全米(ワシントンD.CやNYでも)に存在するのに随分と手が込んだ画作りだなと感心してしまいます。

しかし、現実にはトランプ氏とヒラリーの支持率は拮抗している(地域によってはトランプ氏が上回っている)状況です。「米国人の約半数が白人ブルカラー不満層」だというおよそ非現実な仮定を信じない限り、トランプ支持者に対する愚かな理解が通用しないことが分かります。

私たちはステレオタイプのプロパガンダをまき散らす有識者らの悪質なデマを信じこまされて米国の大統領選挙の状況を大きく見誤っている状況に陥っています。

性別・年代・所得・学歴・人種の観点から「トランプ支持者・ヒラリー支持者」を比較する

では、10月30日発表のIBD/TIPP poll という世論調査の詳細を見ながら、実際のトランプ支持者・ヒラリー支持者の実像を探っていきたいと思います。

同世論調査は回答者のデータを詳細に公開しているため、メディアが垂れ流すイメージとは異なるトランプ支持者・ヒラリー支持者像をしっかりと理解することができます。

女性の半数はヒラリー支持、ただし白人女性に限定するとトランプ支持の割合が多い

まず、性別から見ていきましょう。男女別の支持率としては男性はヒラリー38%・トランプ49%、女性はヒラリー50%・トランプ36%となっています。

ヒラリーが獲得している女性票は約半数でしかありません。しかし、これは回答者の人種ファクターの影響が大きく、白人女性だけに限定するとヒラリー41%・トランプ43%でトランプが上回っています。

つまり、トランプ氏が男性から支持を受けていることは明らかであるとともに、10月初旬を賑わせた一連の女性スキャンダルがあってもトランプ氏が女性からの一定の支持を維持していることが分かります。

トランプ氏はミドルエイジ~高齢層、ヒラリーは相対的に若年層から人気

次に、年代を見ていきます。トランプ支持者とヒラリー支持者に関して顕著な違いが出ている年代層は若年世代です。18~44歳までの層ではヒラリー45%・トランプ33%でトランプ支持は大きく水があけられています。

これはリバタリアン党のジョンソンが支持を拡大していることが影響しています。当初はヒラリーを削る可能性も予想されていたジョンソンですが、結果としてトランプ支持者を削る形になっています。

一方、45~64歳と65歳以上の層ではヒラリー・トランプの支持率は拮抗しています。誤差の範囲かもしれませんが、数字の上ではトランプ氏のほうがヒラリーを上回る状況となっています。若年層は米国においても投票率が低い傾向があるため、トランプ支持者のほうが投票率が高くなる可能性を示唆しています。

トランプ支持者は中間層から高所得者、ヒラリー支持者は低所得者が相対的に多い

所得についても冷静に見ていきましょう。3万ドル未満の層はヒラリー55%・トランプ31%、3~5万ドルの層はヒラリー46%・トランプ36%、5~7.5万ドルはヒラリー42%・トランプ42%、7.5万ドル以上はヒラリー43%・トランプ47%となっています。

つまり、「低所得者はヒラリー支持、高所得者はトランプ支持」は世論調査の数字から明確に確認できると言えるでしょう。トランプ支持者が「低所得の白人ブルカラー層」という嘘っぱちは一体どこからでてきたものでしょうか(笑)

トランプ氏は共和党の指名候補者であり、同世論調査では共和党支持層の8割以上を固めることに成功しています。したがって、米国においてはタックスイーターではなくタックスぺイヤー(納税者≒高所得者)側の候補者であることは改めて確認するまでもないことです。インデペンデントからの支持率もヒラリーを上回っており、「トランプ支持者はヒラリー支持者よりも所得が高い」が正しい分析です。

トランプ支持者は高卒・大学中退者が多く、ヒラリー支持者は大卒以上が多い

学歴については、高卒者でヒラリー35%・トランプ52%、大学中退者でヒラリー38%・トランプ47%、大卒以上でヒラリー50%・トランプ36%となっています。

トランプ支持者は相対的に学歴が低い傾向があり、ヒラリー支持者のほうが高学歴者が多いことが分かります。本人が望んだのか不幸にも進学できなかったかは定かではありませんが、トランプ支持者はたたき上げの人物ということになります。

しかし、大卒以上でも36%はトランプ支持であるわけで3人に1人はトランプ支持者であるわけです。したがって、トランプ支持を単純に低学歴だと断定することは明らかな間違いです。

また、上記の所得層と合わせて考えると、学歴についてはトランプ支持者はヒラリー支持者よりも低いけれども、所得についてはトランプ支持者はヒラリー支持者を上回っていると推量することができます。

ヒラリー支持者が高学歴層で多数派を占めていることで、メディア上のオピニオンは徹底的にトランプ・パッシングだらけになっているわけですが、それらは学歴エスタブリッシュメントのインナーサークルの言論でしかないと言えるかもしれません。

トランプ支持者は白人が中心ではあるものの、ヒスパニックも3人に1人はトランプ支持

白人男性はヒラリー31%・トランプ57%、白人女性はヒラリー41%・トランプ43%となっており、白人層においてはトランプ氏が相対的に優位な状況となっています。黒人層でヒラリー85%・トランプ4%と圧倒的な差がついている状況とは顕著な違いがあると言えるでしょう。

トランプ氏は「メキシコ国境に壁を築く」などの不法移民に対する厳しい姿勢を見せていますが、ヒスパニック層からの支持はヒラリー48%・トランプ35%という状況となっています。3人に1人のヒスパニックはトランプ支持という状況です。

ヒスパニックにはキューバ系とメキシコ系が存在しており、両者は異なる政治的な支持の傾向を持っています。キューバ系は自主独立の精神が高く、共和党の基本的な方向性と親和性があります。

その結果としてヒスパニックにもトランプ支持が一定層存在する形となっているため、トランプをレイシストと単純に罵る人々は複雑な現実を理解できない層と言えるでしょう。実際にフロリダ州ではキューバ系のトランプ支持が高まりつつあります。

<フロリダのキューバ系ヒスパニックでトランプの支持率上昇>
Poll: Donald Trump +4 in Florida; Jumps 19 Points Among Cubans

・・・以上となります。

トランプ支持者が「白人ブルカラー不満層」というステレオタイプが間違っていることが明らかになったと思います。トランプ支持者を馬鹿にしている日本人有識者よりも約3分の1のトランプ支持者は学歴も所得も上回っている可能性があります。

米国大統領選挙は依然として支持率が拮抗した状況が続いていますが、支持年代層の分布を加味した場合、トランプ氏が相対的に伸びると推測する見方が妥当です。この年代別の支持分布の構造は英国のBrexitと酷似しており、数%の差であればトランプ氏がヒラリーをまくることも現実的なものと言えるでしょう。

いずれにせよ、今回の選挙ほど有権者にレッテルを貼る酷いメディアのキャンペーンはありません。それらの偏ったメディア情報を鵜呑みにするのではなく、実際の世論調査の数字を見ながら冷静に状況を見ていきたいものです。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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2016年05月12日

日本外交、大丈夫?高校生に揶揄される日本の有識者って・・・

トランプを外した人

トランプの支持率が急上昇中でヒラリーと接戦州(スイングステート)でほぼ互角に

米国大統領選挙、トランプ氏の支持率が急上昇してヒラリーに肉薄するようになってきました。筆者は昨年からトランプ氏の予備選挙勝利、その後の支持率の上昇を予測して記事にしてきました。そのため、トランプ氏の支持率上昇については驚いていませんが、その上昇ペースについては予測よりも早く始まったなと思っています。(下記拙稿の一部)

数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)
「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」(2016年5月10日)

接戦州のフロリダ、ペンシルヴァニアでは僅か1%差、オハイオではトランプが4%差で勝利しています。全国的な差もヒラリーが僅か6%リードしているに過ぎません。トランプ氏と共和党の連携が完全に出来上がっていない状態ですらこの状況です。以前から数字の上ではサンダースのほうがヒラリーよりもトランプに有利に戦える数字が出ており、サンダースが予備選挙から降りない強気の理由はこの数字にあるのでしょう。

トランプVS

テレビで的外れな解説を続けて「高校生に揶揄される米国通の有識者」って・・・

ところで、上記にも書きましたが、昨年からトランプ氏が予備選挙で勝つと言い続けてきた身としては、日本の外交力、そして有識者のレベルって本当に大丈夫なの?と思う次第です。

下記はテレビなどで大統領選挙の解説員として良く見かける慶應大学の中山俊宏教授です。外務省や内閣府の米国政治に関するレクチャーを務められている方でもあり、国内外の様々なシンポジウムで大統領選挙の見通しについて発表されてきました。

で、その中山氏が自分のTwitterで下記のようなコメント。そりゃ、あれだけいい加減な情報をお茶の間に流してれば高校生にも揶揄されるってものです。

トランプを外した人

筆者はこの方は好きではありません。なぜなら、米国の保守派の人々に対して十分な理解もなく無思慮な発言を繰り返しており、今回の大統領選挙も自分の偏見と思い込みで「国民に偏った情報ばかり」を伝えてきた人物だからです。(かなり前のことですが、筆者も茶会運動についてメディアで適当な発言をされて迷惑した思い出があります。)

そして、5月4日の毎日新聞の取材のレベルの低さに驚きました。この記事内容は完全にただの思い込みですよね。冒頭にも示した通り、トランプ氏の支持率も急上昇中だし、早々に共和党のエスタブリッシュメントらも妥協始めてますが・・・

16年大統領選 共和党内団結遠く 中山俊宏・慶応大総合政策学部教授(米国政治外交)の話

今回の大統領選挙でも「ブッシュ⇒マルコ・ルビオ⇒挙句の果てには、ケーシックに注目してました!⇒トランプ氏の敗北は確実とは言えない」など次々に変節。この期に及んで更に取材する「毎日新聞」の取材先を選ぶ能力を疑うレベルですね。

中山氏は共和党保守派最大の集会であるCPACには今年初参加(要は素人みたいなもの)だったという話。トランプが予備選挙の期間中に支持率1位を維持し続けていましたが、彼は何を見てたんでしょうか?

明確に申し上げますが、中山氏の大統領選挙に関する論説は米国のエスタブリッシュメントの噂話を代弁しているだけで分析と呼べるようなものではありません。自分は学会のヒエラルキーとか関係ないんで遠慮なく言わせてもらいます。

筆者は選挙は流動的なものだと思うので大統領選挙の予測が外れることは非難しません。しかし、定量的な裏付けがない無根拠な噂話を真実のようにメディアで語ることは論外だと思います。

日本政府とメディアは「数字で議論することができる解説員や説明者」を登用すべき

さて、政治や外交というものはブラックボックスに包まれているため、「いい加減な人々」が専門家然とすることができるものです。

しかし、解説員や説明者を務める方々は、社会科学を扱う人間の基礎的な素養として「公開されている数字や情報を分析できること」は最低条件と言えるでしょう。彼らが検証可能な情報に従って分析した結果が間違っていても構わないわけですが、社会科学的な検証不能なオカルト情報をメディアで垂れ流すことは慎んでいくべきでしょう。

現代社会では米国のメディア報道や統計情報についてネットでアクセスすることが可能であり、なおかつ米国の政治・行政にコネクションを持つ人物も大学関係者・政府関係者以外にも随分と増えてきました。そのため、従来のように「どうせ日本人には分かんねえだろ」的な解説は「嘘」だと一発でバレます。

今後、海外情勢に関する分析などは「米国政治」のような低い解像度ではなく、「米国共和党の選挙」「大統領選挙の世論調査」くらいの最低限のレベルまでは掘り下げた人々によって解説されるようになるべきです。

従来までのような「英語ができれば専門家」という時代は終わっており、今後は独自の専門性を持った人々による分析が行わていくことを期待します。





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2016年05月04日

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由

ダウンロード
wikipediaより引用

だから、昨年からトランプが指名獲得するって言ってきたでしょうに・・・

最近は日本国内でもトランプ指名獲得を受け入れる方向が出てきていますが、昨年段階では「トランプ勝つかも?」というと、国会議員や有識者の皆さんから「頭悪い子扱い」されてきましたが、実際にはどっちが馬鹿なのかがすっきりして良かったと思います。

何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)

筆者に対して、ニヤニヤしながら、スコットウォーカーが来るって言ってた国会議員や僕らのコミュニティではブッシュと言ってた有識者の皆さんは息してますか?彼らも仕事なので何事も無かったように今後はトランプについて語り始めるんだろうなと思いますが・・・。

自分は心情的にはクルーズを応援していたので彼の撤退は残念ではありますが、これで共和党側のトランプ指名は確実になったものと思います。そのため、今回は大統領選挙本選での予想を述べて行きたいと思います。

大統領選挙本選でトランプはヒラリーに勝利することになるだろう

日本の大半の人は、取材不足のメディアやピント外れの有識者のコメントに毒され過ぎていて、「トランプVSヒラリーならヒラリーが勝つでしょう」みたいな見解を持っていると思います。

そのような見解を持たされていることは恥じるべきことではなく、むしろ米国大統領選挙について積極的に情報を収集している証拠とも言えるでしょう。

しかし、残念ながら、ヒラリー・クリントンは大統領にはなりませんし、ドナルド・トランプ氏が大統領になることはほぼ確定しています。

断言しますが、「ヒラリー・クリントンが大統領になる」という予測をしている有識者は「麻雀で安パイを切り続ける思考と同じ」で、「自分自身への保身で大統領選挙への見解を述べている」だけの人々です。現状のまま大統領選挙が終わって流局することを願っていることでしょう、まあ彼らは選挙に関して素人さんなので仕方がありません。

「トランプがヒラリー・クリントンに勝つ」5つの理由とは・・・

現在、トランプVSヒラリーという世論調査を行った場合、現状では「ヒラリーがトランプに勝つ」という数字が出ています。では、そのような状況でトランプがヒラリーに勝つと言える根拠は何でしょうか?

<第一に、「トランプ氏はまだ大統領本選モードではない」ということです>

ヒラリーは昨年から民主党側の指名確実であったため、最初から大統領本選モードで予備選挙を戦ってきました。したがって、ヒラリーの伸びしろはほとんど残っていないと思われます。

一方、トランプ氏は名実ともに共和党予備選挙を戦ってきたわけです。そのため、中道寄りの発言は原則として難しいため、現在までの米国全体での支持率はヒラリーよりも劣っています。(トランプ自身は共和党内で最左派と言えるくらいにリベラルです。)

しかし、今後はトランプ氏も大統領本選モードのイメージ戦略に切り替えていくことになるため、共和党の主流派を取り込むことに成功することでしょう。さしあたって、副大統領候補者を誰にするのか、ということでイメージが大きく変わることになります。

その結果として、トランプVSヒラリーの支持率は拮抗していくことが予想されます。つまり、今までは違うレースをやっていた人同士を同じ尺度で比べることがそもそも間違っているということです。

<第二に、「トランプ氏は共和党の選挙リーソスにアクセスできるようになった」ということです>

米国では共和党・民主党の支持率は元々拮抗しており、足元の選挙マシーンの実力も同程度とみなして良いと思います。トランプ氏が指名を獲得する形になったことで、トランプ氏は従来まで不足していた選挙運動のための足腰を手に入れることになりました。

共和党の予備選挙において、トランプ氏は徒手空拳によるメディア・コントロールのみで勝ち残りました。他候補者が選挙のための組織・ネットワークを十全に固めていた中での快挙と言えるでしょう。

トランプ氏の指名が確実になったことで、トランプ氏の下に初めて真面に選挙を行うための体制が整備されることになります。したがって、今後は共和党から支援を受けつつ選挙戦を展開することになるため、極めて組織だった強力なキャンペーンが行われることになります。

既に組織がフル回転で選挙戦に臨んでいるヒラリーやサンダースと比べて、この点においても伸びしろがあるということができるでしょう。

<第三に、「米国民主党内の分裂は極めて深刻だ」ということです>

民主党内の反エスタブリッシュメント層であるサンダース支持者はヒラリーに対する強い嫌悪感を持っています。そして、ヒラリーにとってサンダースの存在は喉に刺さった魚の骨のような形になっています。

ヒラリーはサンダース支持層を取り込むため、予備選開始当初の大統領本選モードのイメージ戦略を微妙に修正して、米国内基準の左派寄りのスタンスを取るようになっています。これはトランプ氏とは逆の方向で選挙戦で展開していることを意味します。

現在、全米での予備選挙ではヒラリーとサンダースはヒラリーが微妙に優勢という状況で、ヒラリー氏が今後の予備選挙で下手を打つと、ヒラリーとサンダースの両者が分裂して本選に出てくることも十分にあり得ます。

ヒラリーはサンダースを取り込もうとすると中間層の票を失うことになり、中間層を取り込もうとすると反エスタブリッシュメント票の行方が怪しくなるというジレンマの中にいます。共和党以上に本当に分裂しているのは「民主党」なのです。

サンダース氏はギリギリまで予備選挙を継続するでしょうから、ヒラリーはトランプ氏と比べて極めて不利な状況で今後の選挙戦を継続することになるでしょう。

<第四に、「選挙争点は「ヒラリーの健康問題になる」ということです>

ヒラリーは様々なスキャンダルを抱えていますが、最も深刻な問題はメール問題やベンガジの対応ではなく、彼女自身の健康問題です。既にトランプ陣営は昨年段階からヒラリーの健康問題を攻撃し始めており、大統領選挙本選も容赦なく同問題を選挙争点にすることが予測されます。

トランプ氏は昨年末自らの健康診断書を公開して壮健ぶりをアピールしました。これは明らかに昨年末段階で対ヒラリーを意識したキャンペーンを始めようとしていた証左です。ヒラリーは公務の期間中に度々失神・転倒・会議キャンセルを繰り返しており、現実問題として大統領の激務が務まるかは極めて疑問です。

ただし、その後トランプ氏は調子に乗りすぎてアイオワ州を軽視したために同州でテッド・クルーズ氏に敗北したことで、しばらく共和党内の予備選挙にリソースを拘束されることになってしまいました。

しかし、共和党の指名を獲得したことで、ヒラリーにとって最も弁明が難しい健康問題に焦点が戻るものと思います。選挙は政策を選ぶわけではなく人物を選ぶものであり、その人物が健康が怪しいという一点突破で、ヒラリーは米国という軍事国家の指導者として相応しくないということになるでしょう。

<第五に、「ヒラリーはトランプ氏に反応せざるを得ない」ということです>

選挙戦の基本として、弱小な勢力が勝つためには有力な勢力に自らの名前を述べさせることが重要です。現状においては優勢であるヒラリーの口から「トランプ」という言葉が発せられる度にトランプの支持率は上がっていくことになるでしょう。

トランプ氏にとってはヒラリーと同じ土俵に乗ることが最初の作業ということになります。そのため、初期段階では徹底的にヒラリーを攻撃するとともに、ヒラリーは終わった人物である、というキャンペーンを行うことになります。前述の健康問題も含めてヒラリーは過去の人という印象を有権者に植え付けようとするでしょう。

本来であればヒラリーはトランプを無視し続けることが有効な戦略となります。共和党予備選挙で失脚した主流派のジェブ・ブッシュ氏やマルコ・ルビオ氏はいずれもトランプ氏の「口撃」に反応したことで支持を失っていったことからも明らかです。

しかし、ヒラリーは現在サンダースとの予備選挙の真っ最中であり、サンダースを事実上支援することになる今後のトランプの「口撃」にコメントせざるを得なくなるはずです。その結果としてトランプ氏が引きあがるとともに、ヒラリーは落ちていくことになるでしょう。


以上、5つの純選挙的な理由でトランプ氏はヒラリーに勝利することになります。今後、日本国内ではヒラリーがトランプに勝つ、という誤った言説が氾濫することでしょうが、それらは11月の大統領選挙が終わる頃には全て間違いであったことが証明されるでしょう。なんせ、それらの言説を垂れ流している人は「トランプが予備選挙に勝つこと」を予想できた人は一人もいなかったからです。

ヒラリーが勝つ可能性は、最近支持率が回復してきたオバマ大統領がサンダース支持層をうまく吸収してヒラリーのサポートに回ることができたとき、ということになります。果たして、オバマ大統領がそれだけのことを実行できる余力を残しているかいなか。トランプ氏の共和党指名確実ということで、米国大統領選挙の行方はますます面白くなってきました。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


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2016年01月05日

点と線を繋ぐ外交視点、慰安婦問題から見る東アジア情勢

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昨年末の慰安婦に関する日韓合意の背景に存在する北朝鮮問題

昨年末に行われた慰安婦に関する日韓合意の背景には、米国による意向が強く働いていたものと推測されます。上記の日韓合意について、米国側が強烈に後押しした発言を行ったことや米国内の韓国系団体に対して合意を尊重するように働きかけたことからも明らかです。

現状では韓国政府が慰安婦関連の団体を説得する重荷を背負った状況となっていますが、そもそも日本政府が訪韓する段階でこのような状況になることは目に見えていたはずであり、日本政府側だけでなく韓国政府側にも米国から会談を受けるように要望があったことは間違いないでしょう。

米国が日韓関係の修復を急いだ背景には、中国の安全保障上の脅威が高まる中で米国の同盟国同士のいがみ合いを終わらせたかったということもありますが、北朝鮮が2010年10月に36年ぶりに朝鮮労働党党大会を開催すると決めたことが大きかったと推測します。

実際、米国の世論調査でも、国際的な安全保障上の関心事として中東・テロなどと同ランクの事項として「北朝鮮問題」が上位に位置付けられることもあり、米国の空気感は北朝鮮動向についてかなり敏感だと言えるでしょう。

北朝鮮側から同大会で限定的ながらも周辺国との関係改善及び経済改革が打ち出される可能性が高いものの、北朝鮮による核実験や南北朝鮮の再接近による政治情勢の不安定化への危惧があり、大統領選挙の年と被る同党大会前に日韓の手打ちを行わせておくことは米国にとって次善の策だったと言えます。

対中包囲網の形成にまい進する安倍外交の日本

上記のような米国の意図とは別に、安倍政権は基本的な外交・安全保障政策として対中包囲網の形成にまい進しています。中国の外交的・軍事的膨張を抑え込むために、中国の周辺国(米・日・豪・印ら)との外交・安全保障関係を強化しする路線です。(安倍政権発足当初はセキュリティダイヤモンドなどという言葉で表現されました。最近は耳にしなくなりましたが。。。)

米国向けには、安保法制を通すことで同盟国としての地位を格上げし、米国議会演説や安倍談話の発表によって、安倍政権の歴史修正主義的な雰囲気を化粧することで、同国に自由主義的なイメージを浸透させました。第一次安倍政権時代での対米関係の悪化も一因となって退陣に追い込まれた反省が生かされた形です。

豪州・インド向けには、安全保障関係の強化が確認されるとともに武器輸出に関する交渉も始まっています。昨年7月には米豪の軍事演習に日本も参加して準同盟ぶりを示すとともに、10月には8年ぶりに自衛隊がインド洋での日米印の軍事演習に参加しました。ASEANに関しても東アジアサミットで中国の南シナ海問題が大きく取り上げられることになりました。

昨年10月に任官されたばかりのタカ派の外交通である河井克行首相補佐官が日米豪英印を訪問していることからも、安倍政権がセキュリティダイヤモンド構想を継続していることが伺えます。

問題となる韓国・ロシアについても、韓国については米国の意図に乗る形で慰安婦合意を行ったことで外交関係の問題を処理することに成功し、ロシアについても年頭あいさつで日ロの平和条約について安倍首相が明言するなど関係改善に向けた動きが出ています。4月に予定されている北海道の衆議院補選で新党大地が野党連合に協力しない理由は日ロの関係改善を見据えたものではないかと推測します。

以上のように、安倍政権は中国の周辺国との関係強化にほぼ成功しつつあり、対中包囲網を完成させつつあると言えるでしょう。日本の外交・安全保障環境の改善という意味では非常に望ましいものではりますが、後述の通り、要となる日本と米国では対アジア政策観が全く異なることは日本の針路に大きな爆弾を抱えることになる可能性があります。

「米国」の主要な関心は「中東」と「欧州・ロシア」であって「中国」ではない

日本の米国通とされる有識者らが書く文章を読むと、私たちは米国が東アジア情勢、特に中国の軍事的な脅威について非常に関心を持っていると思い込みがちです。しかし、これらはそれら有識者が日本での地位を確保するためのポジショントーク的な言説に過ぎず、その手の言説をばら撒く有識者の発言は信用できません。

米国の主要な外交的関心事は中東と欧州・ロシアにあります。中東に関しては、ISを巡るシリア・イラク情勢だけでなく、イランとの交渉やサウジアラビアとの関係など、米国の安全保障に致命的に関係する案件が山積みとなっています。実際に昨年末の共和党の大統領予備選挙候補者を集めた討論会では「中国」の話はほとんど行われず、話題はもっぱら「中東」「テロ」でもちきりでした。

米国にとっては欧州・ロシアも非常に重要な問題です。欧州からの対米投資はアジアからの対米投資よりも遥かに巨大であり、政治・外交に関しても老獪な欧州・ロシアは米国にとってコストがかかる相手です。特にロシアは米国を安全保障上の脅威として位置付けるなど、豊富な軍事力・外交力・エネルギーなどを背景に米国の覇権に挑戦する存在となっています。

一方、アジアは中国の軍事的な拡張は留意されるものの、米国にとっては北朝鮮の体制混乱のほうが問題視されていると言えるでしょう。中国の米国に対する挑戦は上記の2地域と比べれば表面化しておらず、米国側では「中国の台頭」として認識されています。そのため、日本・韓国・豪州などの同盟国を活用したバランスを取る政策が採用されており、中国の脅威に対して本格的にコミットする状況ではありません。これは南シナ海での航行の自由作戦が事実上の腰砕けに終わっていることからも明らかです。

そして、この米国の外交方針はオバマ政権だけでなく共和党党政権になったとしても、現状では大きな変更があるとは想定できず、米国のコミットメントは必要とするものの過大な期待を抱くことは間違っています。

噛み合わない日米の安全保障戦略、東アジアの現代史の岐路へ

上記の通り、日本と米国の安全保障戦略観は大きく異なります。ここで問題となることは、日本は主要な仮想敵として中国を認定した安全保障戦略を性急に展開しつつあるに対し、米国は中国を脅威として認識しつつも優先順位が極めて低いということです。

従来までは米国は日中の紛争に関するコミットメントについては中国を刺激しないような形での温和な表現を心がけてきていました。米国としては中東・ロシアの相手で手一杯であり、中国と事を構えるつもりはほとんどないものと思われます。

一方、日本側は対中包囲網が完成しつつある中で、中国との限定的な紛争に具体的に突入できる環境が形成されるつあります。この見通しは「憲法改正反対!」「安保反対!」というお花畑な主張ではなく、安倍政権の一連の具体的な外交・安全保障政策の結果として生まれた環境変化によるものです。

このようなズレによる齟齬がが安倍首相が航行の自由作戦に賛意を示した後、米国の及び腰の対応を見て参加を見送る穏便な発言に修正したこと等のように現実に起き始めています。

安倍政権の外交政策が成功してきた結果として、逆に日米の外交・安全保障環境の認識において噛み合わない状況が発生するという皮肉な状況が起きています。このような状況の中で、日米の外交当局者がどのような外交・安全保障に対する判断を下していくのか、我々は東アジアの現代史の岐路に差し掛かっていると言えるでしょう。




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2016年01月03日

ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(1)

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自分たちの国を取り巻く内外の情勢というものは自分たちの目から分かりづらいものです。そこで、米国有数のシンクタンクであるヘリテージ財団が2015年12月31日大晦日にアジア情勢についての客観的なレポートを出していたので引用しながら解説していきたいと思います。(本レポートはこちら、*グラフも全て引用)

ちなみに、本文解説中で日本に文章で触れた個所は

「Japan, while underperforming for many years in terms of economic growth, also invests heavily both in the government services the U.S. provides its citizens and the private American economy.」(日本は経済成長が長年全然ダメだけれども、それでも米国の政府や民間経済に非常に投資してくれています)

しかないため、他の部分についてはグラフや地図に本ブログが注釈を入れながら「米国から見るとこう見える」ということを補足説明していきます。

日本は「ドルに対するデノミでGDP(ドルベース)は激減し、実質的な成長は貧血レベルである」という評価

まず初っ端から非常に辛口の評価を日本は頂いています。世界で最も経済成長が速いアジアにおいて、「日本はドルに対するデノミを実施した結果ドルベースのGDPは激減し、実質経済成長はしているが依然として貧血レベル」という米国から見れば当たり前の結果となりました。完全に一人負け状態です。

日本の経済失政に比べて中国の経済成長は異常なスピードで進んでおり、中国の台頭が顕著である旨が報告されています。域内大国としての中国の存在を意識せざるを得ないという米国の認識が強く現われたグラフです。

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経済的な自由度に関しては「アジアで中位程度」の評価を受けている日本

ヘリテージ財団はThe Index of Economic Freedom (経済自由度ランキング)を毎年発表しており、世界中の全ての国の経済自由度について公表しています。アジアはシンガポールや香港が圧倒的なトップを形成しており、ニュージーランド、オーストラリアが続き、台湾・日本・韓国などは第3グループに位置しています。一人当たりGDPが非常に高い国と経済自由度が高い国はほぼ一致しており、人口減少が続く日本では経済自由度を高めて高付加価値化を図っていくことが望まれます。(ちなみに、経済自由度ランキングの詳細を参照すると、日本の低位の理由は政府部門のダントツの非効率さにあり、肥大化した政府が成長の足かせになっています。)

SR-asia-update-2015-03-econ-freedom_1200

アジアの中で突出した日本の対米投資額、米国における日本企業の投資額の大きさに注目

次にアジア企業の対米投資の状況について解説されています。グラフを見ると、アジアからの対米投資の大半が日本企業からであることが分かります。特に直近10年間で1.5倍にまで投資額が増加しており、円安・円高に関係なく日本企業による買収が積極的に実施されていることが分かります。金融、IT、エネルギーなどの投資も大きくなものがありますが、人口が伸びて市場が成長している&カントリーリスクが低い米国は日本の内需系産業の進出先としても有望視されているということでしょう。

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中国が世界中に投資を実行して影響力を強めつつあることへの注目

一方、アジアのもう一つの雄である中国についてはグローバルな投資戦略、その分散的な構造が注目されています。おひざ元であるASEANだけでなく、米国・ロシア・ナイジェリア・イギリス・ブラジル・サウジなどのポイントに合わせて、世界各地にまんべんなく投資を実行しています。主に道路やプラントなどのインフラ建設に向けた投資であり、国策的な投資が盛んである印象を受けます。

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米国債保有残高で米国への影響度を競い合う日本と中国

米国債の保有残高は中国が日本を追い越してアジア第一位となっています。香港、台湾、シンガポールなどの華僑系の国債保有額も含めると日本は大幅に引き離された状況です。特にアジアにおける米国債保有割合シェアを中国が直近10年間で2倍にしたことは、米中関係が切っても切れないものであることを如実に示しています。

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東アジア各国の合計特殊出生率の低さが際立つ状況に

日本だけではなく中国(香港&マカオ)、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの合計特殊出生率が低いということが一目瞭然となっています。

特に中国と韓国の合計特殊出生率の低下は著しく、今後の経済成長や財政問題などが深刻化していくことが目に見えている状況です。(ちなみに、日本は晩産化の影響で直近10年で合計特殊出生率が微増している状況です。)

上記以外の国々でも東南アジア各国では出生率が2を割っている国もあり、アジア全体としても出生率が低下している傾向があることから、「アジアの老い」は中長期的に問題になっていくことになると想定されます。

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顕著な従属人口指数の増加を見せる日本の異常な状況について

(年少人口+高齢人口)/生産年齢人口で算出する従属人口比率について、日本だけが顕著な右肩上がりの状況になってきたことが分かります。これは価値観の変化や低成長による雇用の不安定化、団塊の世代の引退によって大幅な従属人口比率の増加が起きたことを示しています。

その他のアジア各国は直近10年が生産年齢人口が増加するボーナスステージであったことを示していますが、上記の合計特殊出生率の低下の観点から中長期的には「アジアの老い」による問題に日本と同じように直面していくものと思われます。

 SR-asia-update-2015-08-dependency_548


以上、本日はレポート前半部分の経済と人口に関する部分を取り上げました。明日(1月4日)は後半部分の、圧制、移民、軍事情勢、テロなどの政治状況に関する認識を取り上げていきます。

ランド 世界を支配した研究所 (文春文庫)
アレックス アベラ
文藝春秋
2011-06-10














 

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yuyawatase at 09:00|PermalinkComments(0)

2015年12月29日

なぜ、新党大地は野党統一候補に協力しないのか?

鈴木宗男
Wikipediaより引用

北海道新聞が報道した安倍首相と新党大地・鈴木宗男氏の会談の意図

新党大地・鈴木代表、首相と意見交換 来年の選挙に向け(北海道新聞)という地味なニュースが報道されました。しかし、これは今後の政局だけでなく、日本の針路を決める決定的な会合の一つになるものと思います。報道内容は下記の通り。

「安倍晋三首相は28日、首相官邸で新党大地の鈴木宗男代表と約40分間会談し、来年4月の衆院道5区(札幌市厚別区、石狩管内)補欠選挙や来夏の参院選などについて意見交換した。関係者によると、首相は鈴木氏に「北海道では大地が影響力を持っている。鈴木氏はキーマンだ」と述べ、大地の動向を注視していく考えを示した。」

「これに対し鈴木氏は、共産党が加わる野党統一候補の擁立は支持しない考えを伝えた。日ロ関係やシリア情勢でも議論した。鈴木氏は会談後、記者団に「来年は参院選の年でもあり、首相は自身の考えを披露された。私は聞き役だった」と述べた。」

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

北海道衆議院小選挙第5区における新党大地の集票力は約24,000票と推定されます。この数字は新党大地が2013年参議院議員選挙で同選挙区から比例票を獲得した票を基に算出しています。

直近の小選挙区選挙の結果は、

町村信孝 (自由民主党)131,394票、勝部賢志(民主党)94,975票、鈴木龍次(日本共産党)31,523票であり、単純な票の出方で考えると、野党連合候補者にとっては新党大地24,000票は勝敗を左右するレベルのものだと言えるでしょう。

実際には与党側は町村氏が娘婿への代替わり、野党側は共産党との協力の是非という難しい問題を孕んでいるため、上記の数字の通りの結果にはならないでしょうが、それにしても新党大地の力は無視できないものでしょう。

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

ところで、野党連合候補者が来年予定されている補欠選挙で、反安保というピンとがずれた選挙争点を掲げることが予想されるため、安倍政権側にとっては新党大地が野党連合候補者に協力しないことは、最後の詰めの一手に過ぎないものと思います。また、従来までの新党大地の動向に鑑みるに、安倍政権と協力する理由も特に見当たりません。

新党大地に対して提示した安倍政権の真の狙いは北方領土問題の解決ということになるでしょう。それに伴い北海道経済は対ロ関係で大きなメリットを得るものと思います。安倍政権は「中国以外」の全ての周辺国との間で「手打ち」を行うことで、対中関係に関して強硬姿勢を取れる環境を構築しています。

米国には米国上下両院議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題への妥協、東南アジアは援助と引き換えとした南シナ海での東アジアサミットでの懸念表明、インド・中央アジア諸国への巨額の円借款などの援助など、安倍政権は中国包囲網を形成するための外交努力を行ってきました。その仕上げがロシアとの北方領土問題解決と平和条約の締結ということになります。

先日の記事(日中限定戦争への道、慰安婦合意の真意を探る)で安倍政権の慰安婦合意について筆者の推測を書きましたが、安倍政権の外交政策及び憲法改正への段取りは最後の詰めの段階に入ったと言えます。

安倍政権は良い意味でも悪い意味でも政局・内政・外交がリンクした優れた戦略的な政権運営を行っている強靭な政権です。従来までの日本の政権とは全く異なる政権であるという解釈を行った上で、その政権運営の是非を論じることが重要です。時代遅れの右派・左派の双方の論評は論壇の座を退くべきだと思います。




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yuyawatase at 21:00|PermalinkComments(0)

2015年12月22日

書籍紹介(1)「スーパーパワー」イアン・ブレマー

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スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


米国の未来を知るために必読の一冊となる本

米国の著名な外交評論家であるイアン・ブレマー氏の最新の著作です。

1998年僅か28歳で世界をリードする地政学リスクを評価するシンクタンクを創設し、度々日本にも来日して首相などへのアドバイザーを務める凄腕のコンサルタントです。私も過去に彼が考案した世界的な政治リスク指標であるGPRIを拝見させていただき非常に感銘を受けた思い出があります。

本書は今年5月に発刊された最新著作の日本語訳であり、多極化した世界であるGゼロの中で、米国はどのように振舞うべきなのか、世界と米国の現実を知ることができる必読の一冊となっています。

日本人の対米イメージの先入観が一掃されることになる内容

日本人は米国が対外関与を続けることを前提に世界像を描いていますが、イアン・ブレマー氏は本書の中で下記の3つの米国像をこれからの選択肢として提示しています。

1. 「独立するアメリカ」……国益を優先し、安全と自由を確保する
2. 「マネーボール・アメリカ」……自国の評価を上げ、国益も守る
3. 「必要不可欠なアメリカ」……アメリカ、そして世界を主導する

そして、多極化した世界に米国が関与しても狙った結果を引き出すことが難しいという事態の中で、衝撃的なことに1の独立するアメリカ、つまり3の世界の警察官も辞めて、2の現在の姿も放棄し、完全に自国中心の米国という選択が有力視されているのです。
 
大統領選挙でトランプやサンダースが台頭する雰囲気を知ることができる

来年は米国大統領選挙ですが、自国中心主義のトランプ氏やサンダース氏が台頭している背景が浮かび上がってくる良書だと思います。

特に、トランプ氏やティーパーティーに外交政策が無い、と考えている人は同書を手に取って読んでみれば、自分の先入観を捨てた現在・未来の米国の外交の方向性を知ることができるでしょう。

日本人としてはあまり信じたくない方向かもしれませんが、興味がある人は是非手に取って読まれてみてはいかがでしょうか。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19



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yuyawatase at 07:40|PermalinkComments(0)

2015年12月10日

対日誤解を生んだKAKEHASHIプロジェクトは大丈夫か?


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ヘリテージ財団のレポートに珍しく登場した「早稲田大学」という文字

米国保守派の中心的なシンクタンクであるヘリテージ財団の若手研究者が2015年10月に来日した際の感想をThe Daily Signalという同財団研究者らが毎日情報発信するペーパーでまとめていた内容が目についたので書き留めておきます。

<ヘリテージ財団のレポートに掲載された文章>
Energy and Security in Japan(日本のエネルギーと安全保障)11月26日付

さて、この中でWaseda University で行われたセッションに出た旨が掲載されているのですが、その中でなんと

During a series of sessions hosted at Waseda University in Tokyo, scholars and ministry officials presented opposing views of Japan’s new security legislation. 

「東京の早稲田大学で行われたセッションで、学者と政府職員が日本の新しい安保法制に反対意見をプレゼンした」と記載されています。その後には早稲田大学の敷地には反対意見の看板みたいなのが沢山ありました、みたいな話が続きます。。。

外務省の実施したKAKEHASHIプロジェクトで来日した若手研究者

早稲田大学の学者や学生が政治的にどのような意見を持っていても構いませんが、ヘリテージ財団の研究者ら米国の若手研究者35名は外務省の予算を使ったKAKEHASHIプロジェクトで日本に招かれた人物です。


その事業目的として、

○一行は,対日理解促進を目的として,東京都,山梨県を訪問し,大学教授等からの講義や,省庁訪問・研究機関等訪問を通じ,幅広く日本を理解する機会を持ちます。
○今回の交流事業を通じて,米国の若手研究者が日本の魅力に触れ,帰国後に日本の外交姿勢や日本の魅力等を積極的に発信することが期待されます。

と書いてあります。

上記のとおり、米国研究者は早稲田大学で、学者や政府職員(!)が安保法制に反対している、という意見をプレゼンされて、早稲田大学の左翼運動の看板を見て日本の現状を理解し、なおかつ「積極的な情報発信」がなされているわけです。

外務省は何のためにこの事業をやっているんでしょうか?外務省(おそらく)の職員まで安保法制に反対していたって書いてあるんですが・・・。「反日・反米目的にやってんの?」と思われても仕方がない結果となっています。

米国研究者に誤ったメッセージを与えることの影響を考慮すべき

ヘリテージ財団の若手研究者は日米同盟は大事という結論で締めくくってくれていますが、外務省は未来を背負う米国研究者(米国ではシンクタンクの影響が強い)に誤解を与える情報発信を行ったことを理解しているのでしょうか?

本件は国会質問で問題にすべき由々しき事態ですが、米国の情報をまともにフォローしている国会議員や研究者は少ないです。また、彼らは対米関係の独自ルートはほとんど持っておらず、外務省北米局と仲良くしたいでしょうから、KAKEHASHI交流事業の結果として発生した「トンデモ理解」は全スルーするつもりでしょう。

官邸も外務省ももう少し慎重に情報発信を行うべきであり、米国議会やCSISにおける大上段の演説だけでなく、足元から発生している外交崩壊について注意を払うべきです。





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yuyawatase at 23:14|PermalinkComments(0)