無償化
2015年12月18日
自民党は高齢者、維新は子育て世代、参議院選挙圧勝の構図へ
(橋下徹氏のTwitterから引用)
2016年の参議院選挙を見据えた主要政党のバラマキ・マーケティング本格化へ
2015年12月中旬も過ぎて来年の政治日程が見えてくる中で、主要政党は自分たちのフォーカスする有権者層向けのバラマキ・マーケティングに大幅に舵を切ってきています。
選挙に勝つために各政党ともに自分たちの支持者を潤すことが基本的な戦略であり、臨時給付金の配布、児童扶養手当増額、教育無償化などのかなり突っ込んだ政策を実現または提示してきています。
本記事では現在話題となっている消費税増税見送りも含めて、主要政党のマーケティング戦略から来年の参議院議員選挙の展望を分析・予測していきます。
高齢者マーケティングに大幅に舵を切る自民党の戦略
自民党は高投票率の高齢者にシフトしたマーケティングに舵を切っており、消費増税に伴う子育て世帯への給付金を廃止しつつ、低所得の高齢者層1100万人に臨時給付金1人3万円・約3400億円を配布するというバラマキを実行することを決定しています。
相変わらず小泉進次郎氏などによる若年世代向けのガス抜きのコメントは出ていますが、露骨な選挙対策を実行する開き直り、選挙戦略上の割り切り感には感心させられます。
また、公共事業費について政権奪取以来の当初予算を増やす方針を踏襲し、伝統的な支持基盤である地方の土建層からの支持獲得に完全回帰しています。建設業従事者数は500万人程度、更に現場の高齢化は進んでいるため、自民党にとっては良いマーケティング対象であることは間違いありません。
自民党は参議院比例票で1800万~2100万票程度を確保すると例年通りの数字であるために既存の支持層を固める作業に入っていると言えるでしょう。
低所得者マーケティングに集中投下する公明党の戦略
公明党は消費増税への軽減税率の導入を自民党に大幅に飲ませたことで安保法制に妥協を繰り返した面目を躍如することになりました。参議院選挙だけでなく宜野湾市長選挙への推薦を含めた交渉力は大したものです。
ただし、現在の景気動向から消費増税自体が見送りになる可能性が高いため、軽減税率自体が意味を失う可能性もありますが、彼らのマーケティング対象である有権者から軽減税率という公約を履行したことで信頼感を回復するには意味があったことでしょう。
また、前述の通り、子育て世代全体への給付金は廃止となりますが、主に公明党のロビーイングによって低所得のひとり親家庭については2人目以降の児童扶養手当が倍増することになりました。
公明党は噂されるダブル選挙に備えて750万票~850万票の既存の組織票の取りこぼしを防止しつつ、共産党との低所得者市場の争奪戦に備えていると言えるでしょう。
子育て世代マーケティングに大きく賭ける橋下氏の大胆な発言
来年の参議院議員選挙では、おおさか維新の会の公約の予測として、橋下徹氏のTwitterの内容は要注目です。消費増税見送り、憲法改正、安保法制は当然の方針ですが、それでは選挙が戦えないので維新としての明確なマーケティングが必要になってきます。
そこで、注目されるのは「大学までの教育費無償化」ということになるでしょう。内容としては公務員人件費の削減などによって、子育て世代向けの5兆円の教育無償化(税負担化)資金をねん出するというものになります。
18歳未満がいる子育て世帯は1150万世帯弱であり、潜在的な層を含めると同政策の対象は拡がりがあると思われます。前回の参議院議員選挙における維新・みんなの得票合計数は約1100万人であり、世代間格差を訴えることで維新は子育て世代の得票を取り込めば大幅に得票を伸ばす可能性があります。
自民と維新、消費税増税見送り・シマのすみ分けで完全一致の選挙戦略
自民党とおおさか維新の会は、上記のようにお互いのシマをすみ分けてマーケティングを実施する展開になるものと推測されます。これが打ち合わせの上のものかどうかは分かりませんが、お互いに綺麗に支持層を分け合うことになるでしょう。
一方、民主党についてはそもそも消費税増税の三党合意の中心政党であり、その責を無視して消費税増税見送りに舵を切れるかどうかは非常に微妙な立場に置かれるものと思います。しかも、民主党=バラマキ=失敗のイメージが強くバラマキアピールも非常に苦しい状況です。
そのため、現在のように安保反対というテーマで選挙争点を形成することが予想されますが、それでは減少傾向にある比例票も共産党に食われて更に減少するとともに、都道府県選挙区も維新に敗北する選挙区が増えるでしょう。
自民党とおおさか維新が掲げようとしている選挙争点は、まさに民主党をスマートに崩壊させるマーケティングの上にデザインされており、秀逸な選挙戦略として準備されていることが分かります。
以上、来年の参議院議員選挙におけるバラマキ・マーケティングは自公維の圧勝という形になることが予想されますが、日本の未来はこれで良いのでしょうか。米国の大統領選挙における共和党のような自由経済を通じた力強い経済成長を掲げる政党が生まれて日本を変えることを願うばかりです。
yuyawatase at 21:00|Permalink│Comments(0)
2015年11月27日
「奨学金」を返済できる学生を作るための方法
奨学金を返す・返さない、大学を無償化する・しない、などの議論が喧しい世の中ですが、問題の根本は全く別のところにあると思います。
大学生に働く力が教育されていないということ
そもそも奨学金が返せない理由は「大学生に働く力が教育されていないこと」にあります。奨学金を受けて大学を卒業した学生が十分な給与を得る仕事につけていないというわけです。
現代社会はかつての高度経済成長期ではなく最低限の基礎的な教育が出来ていない学生を採用するほど企業に余裕はありません。そのため、企業は採用抑制や派遣労働者を活用し、職業能力が無い学生を正規採用することを選択しようとしません。
ただし、厳しい競争に向き合っている企業に正社員を無理に雇わせるように労働法制を見直すことは、企業の雇用への意欲を失わせるとともに、企業の競争力自体を衰退させることに繋がって経済全体を痛めることになります。従って、奨学金の貸し倒れ=納税者負担の発生という問題を解決するために、私たちは現実的な回答を探す必要があります。
大学教育の無償化は問題を解決するのか
一つの方法として「大学教育の無償化」という方法が提案されています。欧州の大学教育の在り方を範にとって大学教育自体を無償化することを通じて、奨学金の貸し倒れ自体を消滅させるというソリューションです。
しかし、「大学教育の無償化」を実施しても「就業能力が無い学生」が量産されている現状については何も変わりません。結果として、奨学金が後々返済されないのか、授業料を最初から税負担しているのか、という話になります。両者ともに納税者負担の増加という意味では何も変わりはありません。
むしろ、奨学金の返済という就業に向けたインセンティブが無くなることで、大学時代において就業能力を身に付ける方向性が学生個人からも一層失われます。目の前の学費という問題を全て税負担で片付ければ良いという思考停止はは更なる問題を引き起こします。
民間企業や篤志家による奨学金制度の拡充が必要である
現在の税負担によって実施される教育制度・奨学金制度は「企業ニーズ」を捉えておらず、働く力を身に付ける教育を行っていないということが問題です。
そのため、根本的に大学教育のあり方を見直す必要があります。具体的には企業による奨学金制度を積極的に奨励することです。大学を卒業した学生は企業にとって必要な労働力を提供する人材になるため、そのための教育費用は企業が一部負担することは合理的です。
最新の経済動向・産業動向についても象牙の塔の中の大学よりも最前線で戦う企業は熟知しています。そもそも時代遅れの既存大学の教育を受けて就業できるという発想が間違っています。
そのため、大学における人材育成自体を企業に任せることを通じて、就業能力が高い企業ニーズにマッチした人材を育てるべきです。企業側も丁寧な人材育成を通じて多額の採用コストを抑えるメリットがあります。
国民にとっては就業能力が高い人材を生み出す改革を実現し、更に追加の税負担を避ける二重の効果が発生します。
目的を見失った「政府による奨学金」は一旦廃止を
税金に依存して制度設計の積み増しを行うことは、制度によって恩恵を得るステークホルダーの存在を曖昧にしてしまいます。奨学金は何のために存在しているのか、ということについて今一度問い直すべきです。
現状の制度を追認して何でも税負担を拡大すれば良いという議論を見直し、その制度による受益者が費用を負担するべきという当たり前の感性を取り戻していくことが重要です。
yuyawatase at 07:00|Permalink│Comments(0)