減税

2016年04月09日

参議院選挙の争点は消費税5%への引き下げになる

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7月参議院議員選挙・増税先送りは昨年予想した通りの展開だということ

筆者は昨年の段階で増税先送りを予想しており、自民の高齢者重視路線、維新の教育無償化路線についても予測してきました。大阪維新の全国的な拡がりが遅々としていること以外は、現実は予想した通りの展開となっています。安倍政権の主要目的は憲法改正と中国への優位を築くことなので政治行動が非常に分かりやすい政権だと言えます。

自民党は高齢者、維新は子育て世代、参議院選挙圧勝の構図へ(2015年12月)
日中限定戦争への道、慰安婦・日韓合意の真意を探る(2015年12月)

安倍政権の財政再建や消費増税に対する熱意はほとんどない

安倍政権はクルーグマンとの会合の中でG7の場でドイツなどの参加国に財政出動を行うことを要請する旨を述べた上で、更に最近では日本としても景気対策として巨額の財政出動を行う方針を示しています。つまり、現政権には財政再建への意志というものはほとんどないと言って良いでしょう。

筆者は消費増税が財政再建に繋がるとは思っていませんが、安倍政権は更に財政支出を削ることの重要性を理解しておらず、日銀による財政ファイナンスで経済運営感覚が完全にマヒしていることが分かります。そのため、消費増税の先送りはほぼ確定的な状況であると言えるでしょう。

外国人に世界経済の悲観的な見通しを語らせた上で、G7で経済危機による財政出動の必要性を訴えるという、日本国内での大胆な経済対策を行うための地ならしを進めています。筆者は消費増税の単純な先送りということだけのために、ここまでの準備を行うのかということについて疑問を持っています。

自民党は消費税5%への引き下げで勝負する可能性が高まっている

一方、野党・民進党は自民党が最終決断を行う前に致命的なミスを犯した状態となっています。それは、消費増税先送りを自民党よりも先に宣言をしてしまったことです。

これが何故野党のミスなのかというと、自民党にとって「消費税を5%に引き下げる」という宣言を行った場合、ほぼ確実に選挙で勝利できる状況が生まれたからです。野党が見送りで主張を固定したことで、それ以下の数字を出せば衆参同時選挙で圧勝できる構図が出来上がっています。

参議院議員選挙において、景気失速はアベノミクスの失敗として野党は攻め立てる予定だと思いますが、自民党側が先送りではなく消費税5%を打ち出せば野党の批判は空虚なものになるでしょう。

安倍政権の戦略目標は財務省の夢である増税ではなく、憲法改正と中国への優位構築を行うことであるため、平然と消費税5%の決断を下すものと思います。これは軽減税率で大幅に譲歩を迫った公明党にとっても飲める内容です。

夏の選挙に向けて野党はバンバンとカードを切り始めていますが、与党側はまだ一切カードを切っていない状況です。衆議院補欠選挙の結果を受けた今後の展開が楽しみな状況となりつつあります。

税務署が隠したい増税の正体
山田 順
文藝春秋
2014-06-06



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yuyawatase at 20:26|PermalinkComments(0)

2016年01月07日

20代・30代所得税全廃(約3兆2111億円)は可能か?

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出生率の改善には「20代・30代の所得税全廃」の実行こそが重要

以前の記事「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ」でも述べた通り、日本の出生率の変化は、価値観の変化による晩産化と経済不安・雇用不安による未婚率の上昇によるものであることは明らかです。

そして、出生率の向上という新しい時代の要請に対応するために、従来までの「子どもを持つ世帯」に偏った子育て支援策の在り方を「結婚・出産」に的を絞ったものに転換する必要性を説きました。

その中で、未婚・未出産も含む20代・30代の所得税減税を行うことで、雇用増・可処分所得増・経済成長を促すことを提言しております。なぜなら、中途半端な児童手当などの子育て政策を行うよりも、勤労者の雇用機会を生み出して可処分所得を増額させるほうが婚姻率・出産数の向上が見込まれると推測しているからです。

日本の出産は結婚家庭から大半が生まれているため、若手世代を正社員で雇いやすい環境を税制面から整備して婚姻を促進することが有効です。さらに、女性の社会進出の観点から働く世帯の可処分所得増を通じて各種保育サービスなどへの支出を確保していくことは急務と言えます。

20代・30代の所得税総額は「3兆2221億円(推計・平成26年度)」である

では、20代・30代の所得税を全廃するには実際に幾らの税額が必要なのでしょうか。家計調査によると、平成26年平均で、20代・30代は所得税を

20~24歳 月額4,006円  年額48,072円
25~29歳 月額7,177円  年額86,124円
30~34歳 月額9,551円  年額114,612円
35~39歳 月額13,779円 年額165,348円

ということになります。平成26年4月1日の各年代の人口推計と掛け合わせた所得税総額推計は、

20~24歳 2968億4460万円    (617万5千人)
25~29歳 5842億6521万6千円(678万4千人)
30~34歳 8644億370万4千円 (754万2千人)
35~39歳 1兆4656億4467万2千円 (886万4千人)
合計    3兆2111億58,19万2千円  (2936万5千人)

ということになります。20代前半だけなら3000億円、20代全体なら約9000億円、20代~30代前半までなら約1兆8000億円、20代・30代全体ならば3兆2100億円ということになります。

ちなみに、自民党が来年3400億円程度をかけて高齢低所得者世帯に3万円を約1250万人にばら撒く予定をしていますが、同じ金額をかけると20代前半の所得税を廃止することが可能です。若年世代・約3000万人がいかに政治的に舐められているのかを如実に表した数字です。

3兆円2110億円は巨大な金額に見えますが、消費税1%増で2兆円税収増するという見込みもあり、消費税を8%→10%に増税するのであれば20代・30代の所得税を全廃することは可能です。

政策効果の薄い児童手当を減額・廃止、結婚を促進する未婚世帯を含む雇用増・可処分所得増を

もちろん、高齢者への社会保障費は毎年2.6兆円(国・地方・特別会計含む)の増加をしている状況(小黒一正「財政危機の深層」)であり、これらを抑え込んで若年世代に回すことは必須です。日本はシルバーデモクラシー国家であるため、高齢者への社会保障費を削って若年世代に予算を回すことは困難を極めるものと思います。

そのため、若手世代の子育て予算の中で既存の政策の優先順位を晩産化・未婚率上昇対策に切り替えていくことが重要です。そこで、出生率に対する政策効果が低い「児童手当」予算を廃止または減額して20代・30代の所得税減税に回すことを検討するべきだと思います。

児童手当は平成26年度予算で2兆2300億円(平成27年度)が計上されていますが、児童手当1億円で1名の出生率向上効果ということで、予算支出の出生率に対する政策効果が極めて低いことが会計検査院のレポートによって示されています。(詳細は「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ」)

そのため、児童手当予算を15%削減で20代前半、40%削減で20代全体、85%削減で30代前半までの所得税を全廃することが可能です。可能であれば30代前半までの所得税全廃し、児童手当予算の残額3000億円で保育園整備や不妊治療への手当増額などに力を注ぐべきです。

何となく不可能に思える政策も従来までは「提唱や実行」されてこなかっただけである

20代・30代の所得税全廃という何となく不可能に思える政策であったとしても、実際に必要予算を計算してみれば現実的に実行可能なものであることが分かったと思います。要は今まで誰も真面目に推計をしてこなかった、または想像力が欠落していただけのことです。

20代・30代の人口合計数は約3000万人です。これは前回の参議院議員選挙で自民党・公明党に投票した比例票数(約2600万票)を上回るものであり、20代・30代は真面目に自分たちの経済的な利害を政治的に表明していくべきです。

その際のポイントとして重要なことは、若者世代の主張を述べる際に「保育士の給料増額」などのようなミクロな争点で戦わないことが重要です。保育士は40万人しかおらず潜在保育士を入れても100万人しかいません。つまり、総数3000万人のボリュームがまるで選挙時の圧力として生かされないのです。したがって、今回の保育関連の政策変更のように予算措置も薄く「それじゃない」感が強いものになってしまいます。

このような失敗は税金にたかることを前提としたタックスイーターとしての政治行動が招いた失敗と言えます。納税者世帯が圧倒的に多い若年層が税金で暮らす高齢者層と「税金で食べる競争」をして勝てると思うことは戦略環境への認識不足と言えます。

時代の変化に合わせた主張の変化が必要、タックスイーターからタックスぺイヤーへ

多くの若年世代はタックスイーターではなくタックスペイヤー(納税者)であり、シルバーデモクラシーに対抗するためには「20代・30代減税」などの恩恵を受ける人口の絶対数が多い争点を提示するべきです。

このように述べると「今までも児童手当や保育園などが整備されてきたじゃないか」という人もいるかもしれませんが、それらの制度が導入された当時は「団塊の世代が子育て世代であり、高齢者数は相対的にまだ少なかった」という事実を忘れるべきではありません。そのような時代背景があったからこそ、当時の若者世代のタックスイーターとしての主張が通っていたに過ぎないのです。

日本の子育て関連の予算がOECD諸国の対GDP比で低いためにもっと増額をするべき、という主張を行う人もいますが、民主主義の現実をもっとよく見たほうが良いと思います。そのような予算増額競争では子どもを持つ世帯が高齢者世帯に勝つことは不可能であり、もっと間口を広く取った若年世代全体にダイレクトに関係する争点設計を行うことが重要です。

「子育て支援策を訴える政治家」=「若者の声を代弁する政治家」という誤った認識と戦略が選挙マーケットにおけるニッチへの没落を生み出し、若者向けの予算措置・減税措置は行われてこなかった、という現実を受け入れるべきでしょう。

先進国の中でシルバーデモクラシーがいち早く進展していく日本において、若者の政治行動・政治的主張が現実妥当なものに変化していくことが望まれます。





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2015年12月15日

「新聞」への軽減税率適用、いつも通りの代替財源を考えてみた

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「新聞」への軽減税率適用、いつも通りの代替財源を考えてみた 

日本では減税を実施することが決まると、税制中立(プラマイゼロにする)の観点から、代替財源を探して増税するという不可思議な議論が出てきます。

直近の法人税減税の話も何故か赤字法人にまで外形標準課税を適用してプラマイゼロにするという、尋常ではない手法で実現することになりました。そして、食品類への軽減税率の話ではたばこ税を増税するとかしないとかという話が浮上してきています。

麻生太郎財務相も記者会見で、消費税の軽減税率制度の財源が1兆円に上ることについて「安定的な恒久財源確保が必須だ」と述べています。

しかし、「新聞」への軽減税率への適用、について代替財源の話が一切出てこないので、本ブログでは新聞社への天下りという大人の事情を抱えた財務省に代わって、新聞への代替財源を考えてみることにしました。

「新聞社」への外形標準課税の導入を実施して税制中立を保つという方法

上記の法人税減税に伴う外形標準課税の導入根拠は、「中小企業の生ぬるい経営を是正し、赤字企業などを一掃して市場から退出させ、産業の新陳代謝を進める」という発想があるらしいので、是非同じ理屈を新聞各社に適用してほしいと思います。

新聞は軽減税率とした上で、軽減された税金と同じ金額の税金を新聞社の資本額や人件費割合に応じて外形標準課税を導入して、生ぬるい経営をしているメディアを一掃し、言論の新陳代謝を進めてほしいものです。

新聞社に多少は外形標準課税したところで売り上げ規模からみて問題ありません。新聞社各社の年間総売上は2兆円程度なので、売上の2%程度・400億円程度を課税してみたらどうでしょうか。新たな課税によって厳しい経営努力が行われることで、若い人にも読まれるような価値ある媒体になるか、または新聞社という遅れたビジネスモデルが転換する可能性があります。

新聞の軽減税率の受益者は高齢者、来年の高齢者バラマキは新聞クーポンで十分だ

むしろ、再販価格の維持などの規制で保護された業界であることを考慮すれば、軽減税率が適用される前から外形標準課税を導入して不当に高額な人件費の支払いを抑制するべきだったのではないかとさえ思います。

今後、軽減税率問題で若者から愛想をつかされて、新聞購読者は高齢層にますます偏っていくでしょうから、新聞社への外形標準課税を10%・2000億円に増額して来年度実施予定の低所得高齢者向けの1人3万円3400億円のうち半分くらいを「新聞購入のためのクーポン」にしたらどうでしょうか。有権者の中心である高齢者の皆さんの「知る権利」を守るためですから、新聞各社には大いに負担してほしいと思います。(多分、高齢者による暴動が発生しそうですが・・・)

新聞への軽減税率の代替財源の一案として「新聞社への外形標準課税の導入」という形で、新聞購読者の負担は増やさずに質の高い言論をお届けすることを目指すという方法があります。是非、新聞社の皆さんには自発的に提言してほしいものです。





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yuyawatase at 18:00|PermalinkComments(0)

2015年11月28日

大人の教科書(9)何故、公共事業ではなく減税を行うべきか?

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代表的な財政政策の種類として公共事業と減税の2つは良く知られているところです。

特に日本では2000年代になるまで政権が公共事業を山のように積み上げ続けてきたため、景気対策の財政政策といえば「公共事業」というような刷り込みが行われてきました。今回は、公共事業と減税の2つの一体何が違うのかということについて取り上げていきたいと思います。

公共事業と減税で景気が良くなる理由は何故か?

景気の良し悪しはGDP(国内総生産)が成長しているか否かによって測定することが一般的です。GDPは個人消費、民間投資、政府支出、純輸出の4つによって構成されており、公共事業と減税は各要素を拡大する効果を発揮します。

公共事業は直接的に政府支出を拡大することでGDPを増加させることに寄与します。そして、政府支出が呼び水となって個人消費や民間投資も拡大すると仮定されています。

減税はお金がまずは政府から民間の手元に移ることになります。この時点ではGDPは変化しませんが、それらから消費や投資に使用された分だけGDPが拡大することになります。

公共事業と減税のどちらが景気が良くなるでしょうか?

日本では公共事業、米国では減税が財政政策として一般的に用いられてきました。

公共事業の方が減税よりもGDPが上昇すると考えられてきたため、景気対策といえば公共事業という手法が取られてきたからです。また、近年ではエコポイントやプレミアム商品券などの消費を無理やり促す形での便乗型バラマキ政策も実行されてきています。

公共事業は減税政策と比べて乗数効果(波及効果の一種)が高いと考えられてきたため、日本は積極的に公共事業を実施し続けてきた経緯があり、巨額の公的固定資本(道路などのインフラ)のストックを形成してきました。現在はインフラの維持費だけでも毎年莫大な金額となっています。

公共事業は用地費を除いたほぼ全額が公的資本として計算されるとともに関連産業への波及があると想定されてきたこと、減税は実際に消費に回る金額が公共事業で算入される金額よりも小さく波及効果が小さいとされてきたことが政府の判断に影響したからです。

何故、公共事業を行うべきではないのか?

上記のように公共事業が減税よりも景気刺激策として意味があるとされてきたわけですが、本ブログでは公共事業よりも減税を推進するべきだと主張しています。両者の成否は日本と米国の新産業の創造力の比較すれば明らかだと思います。

公共事業は減税と比べて経済波及効果が大きいということには陰陽の二面が存在します。公共事業が創りだす商品・サービスは新産業ではなく道路を代表とした社会インフラです。これらの社会インフラがそもそも無駄なものが多いだけでなく、それに関連する産業まで景気刺激されることに真の問題があります。

つまり、公共事業を闇雲に拡大した場合、経済効果が低い公共事業及び関連産業に中心に発生し、あるヒト・モノ・カネ・情報が大量に投入されるようになってきます。

その結果として、社会の有限な資産が無駄に浪費されることとなり、新たな消費や投資に繋がるような新産業の芽が育たなくなってしまうのです。無駄な公共事業にぶら下がった産業群が形成されることで社会の構造が固定化し、新産業への資源の移動が遅れてしまうのです。

何故、公共事業よりも減税の方が優れているのか?

一方、減税は一見して減税自体の効果は公共事業よりも低く見えますが、資金が消費・投資にダイレクトに結びつくことによって、新産業の商品・サービスの開発・提供が活発に行われることになります。

有限な資源が公共事業に浪費される状況と異なり、減税によって活性化した民間市場から生まれた新産業は将来に渡って自然な形で利益を稼ぎ続けることができます。また、環境変化に対する対応力も高く、常に新しい高付加価値の産業に資源が移動していきます。

21世紀になった後の日本と米国の決定的な違いは、公共事業で唯一の資源である人材を無駄に使ってきた日本と減税によって知的資本をフル回転させてきた米国の間に生まれた違いなのです。つまり、政府に言われるがままに道路の穴を掘ってきた人々と市場の中で熾烈な競争を生き抜いてきた人々の差です。

今日でも景気刺激というと公共事業やプレミアム商品券などが直ぐに出てきますが、中長期的に見た場合に人材育成に直結する減税に力を入れることは当然のことなのです。

増税が国を滅ぼす
アーサー・B・ラッファー
日経BP社
2009-07-16




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