日本

2016年07月26日

「インテリンチ」の衰退、そして国民が自らの声を取り戻すとき

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メディアが大衆を罵倒する「インテリンチ」の横行、マスメディアは自己崩壊過程に突入中

「インテリンチ」は筆者の造語であり、簡単に言うと「大学教授やジャーナリストなどのインテリの人々が大衆自身及び大衆が支持する政治家・政策をメディアの紙面を使って罵倒(啓発)する行為」を指します。

一昔前まではこれらの有識者を僭称する人々とマスメディアの力が結託することを通じて大衆向けの印象操作を実施し、それらによって情報力が相対的に不足している人々が妄信させられるという傾向がありました。

しかし、現代社会ではもはや現実から遊離したメディア上の権威による言葉は人々には届かなくなっている・信用されなくなっている状況が生まれています。

そして、マスメディアは自らが報道している内容が大衆から信用を失っているにもかかわらず、大衆を啓発するつもりで罵倒を続けています。インテリンチの無意味さ・陳腐さに気が付かないマスメディアは崩壊過程の中にあると言っても過言ではありません。

米国の大統領選挙・英国のEU離脱国民投票もインテリンチとは真逆の結果に・・・

たとえば、米国ではトランプ氏に対するメディアの罵倒は日々繰り返されているわけですが、共和党大会後のトランプ氏の実際の世論調査の数字は跳ね上がり、ほぼ全ての世論調査の数字でヒラリーを上回る状況が生まれています。

日本に入ってくる米国大統領選挙の報道内容は米国の報道または権威を経由した情報を垂れ流しているため、実際の米国の大統領選挙の支持率とはほとんど関係がないインテリンチ系の情報ばかりです。

筆者は昨年の予備選挙段階から筆者は一貫してトランプ勝利を予測してきましたが、日本国内に入ってくる情報は常にトランプ敗北予測という一面的で誤った情報ばかりでした。

また、英国でもEU離脱に関する国民投票について、離脱派に対するインテリンチは英国民の行動に影響を与えず、順当な結果としてEU離脱派が勝利することになりました。現在も離脱派に対するインテリンチは継続中であり、英国大衆の世論とは遊離した偏った報道を日本でも目にすることが多いことを残念に思っています。

米国支持率調査
(最新の米国大統領選挙の世論調査、メディアのインテリンチ下でもトランプ圧勝の構図に)

これらの現象は象牙の塔に閉じこもった学者の発言やイデオロギーで目が曇ったジャーナリストの報道などへの信頼が崩壊し、まさに人々が自分の生活実感に基づいた政治行動を行うようになっていると言えるでしょう。少なくとも政局同行を捉えるにあたって、それらのインテリンチ報道の情報価値は極めて減退している状況となっています。

参議院議員選挙・東京都知事選挙を通じて「インテリンチ」の無力化が進みつつある

日本でも、参議院選挙における改憲3分の2の阻止、ジャーナリスト鳥越氏による空疎な非核宣言、学者による反知性主義批判など、戦後民主主義を形成してきた左派メディアの言葉は有権者に全く届かなくなっています。それらの言論の支持世代を見てもノスタルジアの世界に生きる高齢男性と現実を知らない一部の若者らが支持しているにすぎません。

インテリを僭称してきた人々の言葉が実は生活実感とはかけ離れたママゴトのようなものであり、人々の生活の改善とは結びついていないことが明らかになったことで、権威的な大手マスメディアの影響力は下がる一方という有様です。

東京都知事選挙でもマスメディアには主要3候補者という絞り込みを行う力はあっても、その三者の戦局を左右するだけの影響力はもはや持ち合わせていない状況となっています。また、多くの人々からはそれらの絞り込みすら懐疑的に見られており、上杉隆氏のような論客がネット上では静かに注目を浴びる状況も生まれています。

「インテリンチ」によるマスメディア衰退は「国民が自らの政治的な言葉を取り戻す」ことにつながる

長年インテリンチに従事してきた鳥越俊太郎氏の週刊文春に対する二重基準の対応を受けて、日本でもメディアによるインテリンチは急速に更なる信頼を失うことになるでしょう。

筆者はインテリンチが信用を失うこと、マスメディアが影響力を失うことは良いことだと考えています。なぜなら、その結果として、国民が自分の政治的な言葉を取り戻すようになるからです。

インテリンチの無意味化によって、メディアや有識者らが設定したポリティカルコレクトネス(政治的に正しいこと)を述べることが求められる政治から自分が思ったことを率直に述べることが許される政治に変化していくことになります。

つまり、単なる儀礼的な作法と化していた政治的な議論が生命を取り戻し、国民が自らの声で国の方向性を決める力を得ることができるのです。日本の政治も長い政治的な言論の不毛な状況から抜け出すきっかけを掴むところまできています。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

 

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2016年06月24日

英国国民投票、トランプ現象、舛添への絶望を読み解く

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貴族化した政治家の声は大衆には届かなくなった

今回の英国国民投票で主要政党の有力政治家が散々残留を支持する呼びかけてきた。メディアや有識者も賛否は分かれたものの、彼らの残留を支持する声が多く掲載されてきた。
 
米国においてもトランプが共和党予備選挙に出馬して以来、有力政治家、メディア、有識者はトランプを袋叩きにしてきたが、トランプは予備選挙において他候補を退けて圧勝することになった。
 
大衆の結論は「民主主義で選ばれたはずの既存の有力政治家の声を受け入れない」というものだった。この結論は「彼ら政治家の顔はもはや民主的なものではない」ということ、を意味している。
 
有力政治家たる貴族もどきが声を上げれば上げるほど、大衆の間には言葉にできない嫌悪が募る、その心の断絶は確かなものだと証明された。彼らの主張は大衆には届かない。もはやその顔と言葉が嫌悪の対象なのだから。

政治家主導の民主主義で提示される腐ったメニューをガラガラポンした人々
 
大衆の行動の裏側には有力政治家によって予め選択肢が調整されてきた政治への嫌悪がその根底にあるのだ。閨閥や縁故によって貴族化した政治家の声など、民主主義とはもはや関係が無く、貴族と官僚が作り出したルールなど糞くらえだという民衆の声が聞こえてくるようだ。

大衆は馬鹿ではなくて自分たちが政治家に馬鹿にされていることは理解している。EU全体の経済システムなんて分からないだろ、俺たちエリートに任せろよ、というキャンペーンが成功するわけがない。そのことが分からないくらいに政治家は貴族化しているのだと思う。
 
民主主義の形式を取って提示されるメニューが全て腐った料理であり、自分たちがシェフによって馬鹿にされていること、そのことに対する反感が噴出したのだ。

ジャーナリストや金融関係者が解説するBrexit以後に何が起きるのか?という解説記事が溢れているが、「エリートの分析など糞くらえ、お前らの記事を読みたくない」という意志が示されたわけで大衆の空気を読めないにもほどがある。

なぜ、大衆の意志は言語化されてきていないのか?

「民主主義と既存の政治家の顔が分断している」ということが最も意味ある結論であり、民衆が求めていることはEU離脱やトランプの台頭という表層的な現象ではなく、貴族と官僚から民主主義を取り戻すことなのだと思う。
 
しかし、貴族と官僚の代弁者であるメディアや有識者は、英国国民投票は「移民への反感」、トランプは「格差問題」として、彼らの文脈での評価を下し、決して貴族・官僚・メディア自身の存在こそが問題だとは言わない。
 
したがって、大衆は言葉にできない憤りを投票行動による数字、として表現することしかできない。彼らに言葉を与えるべき有識者は大衆性を失って、エスタブリッシュメントのお友達になっているのだから。
 
大衆の「無名の意志」に名前を付けてもらっては困るわけで、それらを無名のままにしておく、または既存の自分たちが作った文脈の中に押し込めるのが彼らの仕事である。

せいぜい「政治不信」という既存の体制への不満を表現しつつ選択を与えない表現が選ばれるくらいで限界だろう。

偽装された民意の解釈、日本は怒りではなく絶望として表現されるのか
 
日本においても安倍首相・岡田代表の非大衆振りはもちろん、小泉進次郎の似非大衆性への違和感は国民の間に広がりつつあると思う。そして、それは左翼の欺瞞的な大衆性とも違う形で噴出するべく、マグマが貯まり始めている。
 
自らもエリート化したメディアとそれに出演するフィルタリングされた有識者では、大衆の気持ちを表現することなどできもない、そしてそんなことをやろうともしない。SEALDsに「民主主義って何だ!」と言わせてメディアが取り上げたところで、メディアと既存の政治家達による欺瞞性の匂いは消しようがないのだ。

また、小泉進次郎が何を言おうとピンと来ないのは、彼が大衆と違うことが外形的に明らかであるにもかかわらず、その言葉だけが民衆の声を代弁しているように見えるように演出されていること、つまりはガス抜きであることが本能的に感じ取れるからだ。

日本では大衆の怒りが選挙で表現するような機会が与えられず、舛添氏を袋叩きにする形で表現されただけだ。そこに深い絶望を感じざるを得ないし、目の前を通り過ぎていく喧しい選挙カーの音がむなしく響くだけだ。

今、最も必要なことは貴族・官僚・メディアへの嫌悪という大衆の意志が、彼らによって捻じ曲げた解釈を与えられる前に、その意思に名前をつけて呼ぶことだろう。

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)
オルテガ・イ ガセット
筑摩書房
1995-06




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2016年05月09日

「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」を提案します

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Twitterでタコスを食べながらヒスパニック大好きとコメントしたトランプ氏

「トランプ発言」から「外交的な意図を読み解く」不毛な作業をやめましょう

ドナルド・トランプ氏の発言は何かと物議を醸してきていますが、筆者は一貫して「トランプ氏の発言は選挙用」であり、その都度反応することの意味が無いことだと言及してきました。(下記は拙稿の一部)

何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)
「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由(2016年5月5日)

トランプ氏が予備選挙勝利のプロセスで他陣営の参謀をM&Aしながら中道寄りに発言を修正していく、ということも予測通りのことです。

共和党予備選挙という「限定された有権者の枠で争う選挙」では、リベラル寄りとみなされるトランプ氏が過激な発言を繰り返すことで保守派の一部から強固な支持を集めてきただけに過ぎません。そのプロセスの中で、ヒスパニックを中心とした不法移民、イスラム教徒、その他諸々色々な人々が彼の攻撃の対象となってきました。

トランプは滅多に「投票権を持つ有権者を傷つける発言」を行うことはありません。上記の批判の対象になった人々も「共和党予備選挙では絶対に投票しない人々」であることがポイントです。つまり、彼の発言は「その時に必要な有権者から支持を集めるためのもの」だと理解するべきです。

そのため、上記の記事でも書いたようにトランプ氏の発言は「大統領選挙本選用」に急速に中道旋回し始めている状況です。

トランプ氏、富裕層への増税を主張 「私は中間層寄り」(5月9日)

トランプ氏の「タコス&ヒスパニック大好き」というTwitter投稿のように、ヒスパニックについても「予備選では必要ない有権者」でしたが、彼らは大統領選挙本選において「フロリダ」「ニューメキシコ」「コロラド」「ネバダ」などの重要州での選挙に勝つために必要です。そこで、予備選挙も終わったのでヒスパニックに対して融和的なメッセージを出すことに切り替えたということでしょう。トランプ氏の同Twitter投稿は「10万いいね」がついているので炎上しながらもイメチェン中なのでしょうか?うーむ(笑)

以上のような視点に立てば、トランプ氏の外交面での発言も「大統領選挙に勝つための発言」としての文脈から読み解くことが重要であることが分かります。なぜなら、現在、彼は現役の大統領ではなく「選挙を戦う大統領候補者」だからです。

選挙を知らない米国通とされる有識者の皆さんにはトランプ氏を解説することは不可能であり、世の中にはどうでも良いトランプ外交論が溢れかえっている状況です。

なぜ、トランプは同盟国を軽視してロシアを重視する発言を行っているのか

トランプ氏は報道されている通り、同盟国の日本に対する駐留米軍などの大幅な負担増・関税の引き上げに言及する一方、ロシアなどの潜在的なライバル国に対して対話重視の姿勢を示しています。

これらの一連の発言はトランプ氏がタフネゴシエーターであることを国民に印象付けるためのものです。したがって、これらの発言にイチイチ右往左往する米国関連の有識者・ジャーナリスト・メディアのコメントを相手にする必要がありません。むしろ、それらの発言について外交的な意味合いで真面目に言及する人々は「米国政治」を分かっていない人々だと思います。

米国の大統領選挙に対して影響を与える国際政治のプレーヤーは「ロシア」です。ロシアの東欧や中東における一挙手一投足は米国の外交政策の成否に直結するものです。オバマ大統領はロシアのプーチン大統領に対して常に後手に回らされており、米国の威信は大いに傷つけられることになりました。

そして、大統領選挙直前に外交的アクションを起こして選挙へのインパクトを与えられる存在もロシアだけです。「ロシアが更なる軍事的威嚇を行うこと」または「ロシアがトランプと対話の準備があると発言する」だけでオバマ外交=民主党の外交は失敗だと言えます。トランプ氏にとって現在のロシアに対するスタンスは選挙上の得点はあっても失点が生じることはありません。

一方、日本を始めとする同盟国は「米国の軍事力を必要」としており、何を言われても「文句を言う程度」で大統領選挙に影響を与えるインパクトを与える行動を行うことはできません。したがって、トランプ氏にとっては日本や韓国のような同盟国は「ボコボコに叩いても良い対象」となり、現在のように言いたい放題の状況を許すことになってしまうのです。

当然ですが、日本人には「米国大統領選挙の投票権」はありませんし、在米日系人もまとまった投票行動が苦手(しかも民主党寄り)であるため、トランプ氏にとっては日本を叩いても選挙上のプラスはあってもマイナスはありません。したがって、誰もが印象として知っている「日本の輸出=自動車」批判というステレオタイプで話題作りをしています。(トランプ氏は馬鹿ではないので日本車の多くが現地生産であることくらい当然理解しているでしょう。本当に馬鹿なら共和党の予備選挙で勝利することはありません。)

トランプ氏が同盟国に対する日本への厳しい発言を続ける理由はそんなところでしょう。そのため、本来はトランプ氏の外交的な発言を分析対象として取り上げることが不毛だと思います。

なぜ、トランプ氏は「一度認めた日本の核容認」を撤回したのか

上記で概観した通り、トランプ氏の発言は全て大統領選挙に勝つためのものであり、外交に関する発言もその例外ではありません。むしろ、外交的発言だけを特例扱いする根拠は全くないものと思います。

トランプ氏は徹底した合理主義者であり、日本に対して「良好な発言を引き出そう」と思うならば、「日本が大統領選挙にインパクトを与える発言」をするしかないわけです。

筆者は日本外交のヒントになる2つの出来事があったことを指摘しておきます。1つ目は「タコス&ヒスパニック大好き」発言、2つ目は「日本の核武装を肯定した発言を修正したこと」です。

トランプ氏、日韓の核保有容認の可能性示唆 NATO批判強める(2016年3月28日)
トランプ氏“日本の核保有容認はうそだ”(2016年4月12日)

タコス&ヒスパニック大好き発言は大統領選挙本選に向けたトランプ氏のヒスパニックに対する対応変更から生まれたものです。では、なぜトランプ氏が「日本の核武装容認から否定へ」と意見が変わったのでしょう。

トランプ氏はニューヨークタイムズやワシントンポストが「嘘をついた」と述べましたが、発言修正の真意は違うのではないかと思います。真の理由は「日本側の核保有に対する反応が思ったよりも大きかった」と理解するべきです。

同発言を受けて日本が本気で核武装を行う方向に流れた場合、民主党の選挙戦略上でトランプ氏は「外交的に決定的な失敗を犯した」というレッテルを貼られることになるでしょう。そのため、同発言が外交問題に発展する可能性を未然に塞いだものと推測します。

そして、日本側からの反応(賛否も含めて)が大きかった同発言の火消しを図ったトランプ氏の姿にこそ「対トランプ」の有効な手段の手がかりを見出すことができるのです。

情けない日本の外交に「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」を提案します

日本の政治家からは外交通とされる石破氏のように「日米安保条約」や「NPTの意義」の再確認を求めたるという何とも腰が砕けた意見しか出てきません。

上記の「核武装論の一瞬の盛り上がり」が一段落してしまったあと、トランプ氏にとって再び「殴りたい放題の日本」という位置づけにすっかり逆戻りしてしまいました。日本の政治家はトランプ氏に苦言を述べるなら「大統領選挙に影響を与える発言」でなければ何の意味もないことを理解していないと言えるでしょう。

筆者は日本の政治家の才覚では「トランプに梅干しを食べさせることすら」できないと思います。

日本の政治家がトランプの発言に対して本気で影響を与えるためには「日本は米国が安保条約の義務を果たさないなら、中国も含めた安全保障環境の見直しを行う可能性がある」と発言するくらいの大胆さが必要です。

民進党もせっかく日本共産党と選挙協力しているのだから、有力議員が訪米した際に「日本共産党とは連立を組みません」というポチぶりを発揮せず、「日本共産党の政権入りもあり得る」と本当のことを述べて米国側をビビらせたら良いのです。

それらが無理なら、上述の核武装論について議論を盛り上げていくだけでもトランプ氏の発言を修正していくことができるでしょう。

これらのアイディアは非現実&望ましいことではありませんが、日本の政治家から発言が実際に行われた場合は「トランプ外交の失敗」として「大統領選挙に影響を与えるインパクト」をもたらすことになります。

その結果として、日本との関係修復が選挙戦略上の必須事項になり、「トランプ氏は梅干しを食べながら日本大好きだ!」と発言してくれることが期待されるでしょう。

トランプ氏が日本を好き放題に叩きまくれる理由は「日本の政治家が舐められている」からであり、散々罵られても「日米安保条約を読んでください」という程度のポチのような発言しかできないことに原因があります。トランプ氏の発言は「日本の政治家が主体的な外交を行ってこなかった」ことの証左です。

つまり、「どうせ何を言っても、日本は米国にしっぽを振ってついてくるんだろ」と思われているのです。

「トランプ氏に梅干しを食べさせる」ためには「大統領選挙に影響が持てる国になる」ことが必要です。言いたい放題のトランプ氏を止めるためには、日本側もそれなりの実力を持って対応していくことが重要です。


スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


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2016年01月17日

民進党勝利、中国民主化に向けて「日本の魅力」を取り戻そう


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wikipediaから引用 

民進党の蔡英文女史が台湾の総統選挙勝利へ

台湾の総統選挙で、民進党が勝利し、8年間続いた国民党政権に終止符が打たれました。台湾住民の政治的な勇気に賛意を送るとともに、今までよりも親日的な政権が誕生したことを大いに祝いたいと思います。

元々の民進党は台湾独立派でしたが、過去の選挙で対中経済関係を重視する台湾財界の離反により敗北し、長らく政権の座から離れていました。その結果、民進党は現状維持というマイルドな路線に舵を切ることで、台湾住民からの現実的な支持を獲得しています。

中国が民主化しない理由は「日本」の成長が停滞しているから

民進党が独立に関して消極的な姿勢に転向した理由は、日本の経済力が相対的に衰退する一方で、大陸の経済的な魅力が増加しているから、ということが言えるでしょう。

日本が失われた20年を経験している間に、台湾を取り巻く経済環境は大きく変わってしまいました。中国の一人あたりGDPは沿岸部を中心に飛躍的に増大しており、中国との貿易量は日本との取引量を圧倒する状況になっています。

また、大陸においても著しい経済発展を経験した結果として、中国共産党独裁体制に関する問題は先送りまたは不問にされています。アジア最大の経済力を誇る民主主義国である日本経済が実質的に停滞した状態にあり、中国から見た場合に魅力的な政治体制のモデルとは思えないことが少なからず影響を与えているものと想定されます。

民主国家の日本が経済的に停滞している現状に鑑み、中国共産党政権下で高度経済成長を経験した中国人民は民主化という冒険的な選択肢をあえて取らないでしょう。また、台湾も日本の強力な後ろ盾が無ければ現状維持以上の選択を選ぶことは困難だと思います。

今回の台湾の政権交代は行き過ぎた国民党政権からの揺り戻しとして正しいものですが、台湾の独立、中国の民主化という見果てぬ目標からは依然として遠い状況となっています。

日清戦争後の変法運動と辛亥革命をもう一度起こすための裏付けが必要

日清戦争は、日本と中国の力関係が逆転した歴史的な事件でした。清朝側は日本よりも早く洋務運動などの経済・軍事の近代化に取り組んでいたものの、自分たちよりも遅れて改革(明治維新)に着手した日本に軍事的に敗北することになりました。

これらを受けて、清朝内では政治体制の変革そのものが必要ということになり、康有為が主導した変法運動という体制変革運動が発生しました。康有為が目指した変革とは、西欧や日本の強さを政治体制に求めるものであり、特に日本の明治維新に倣って清朝を立憲君主制国家に移行させようというものでした。もしも、康有為が改革に成功していたならば、清朝は立憲君主制に移行し、日本と同様にアジアの最大級の民主主義国になった可能性も否定できません。

その後、辛亥革命に至る過程で、日本は清朝から大量の留学生を招き入れて、清朝を打倒する中核となる結社を構成する人々を生み出しました。そして、彼らによって清朝の打倒と漢民族による共和制が掲げられて活動が行われることになりました。同じアジアに存在した新興かつ強力な日本という魅力的な国家が存在したことが同革命に与えた影響は大きかったと推量します。

政治体制は米国やソ連のように積極的に輸出しなくとも、世界各国では同時代で最も望ましい体制を模倣しようという動きが出てくるものです。現在、中国国内で民主化の動きが力を持ち得ていないことは、アジアにおける日本の停滞に起因するものと言えるでしょう。これでは、中国人民が政治的なリスクを冒してまで日本の制度を模倣しないのも無理からぬことです。

むしろ、日本側では太子党支配のような与野党の世襲支配が横行し、中国の政治の有様を日本側が模倣しつつあると言っても過言ではない状況が生まれています。日本国民は自国の民主主義の変質に対して危機意識を持つべきです。
 

日本の構造改革による再成長が東アジアに民主化をもたらす

アジアに民主化と安定化をもたらす最も良い方法は、日本が経済成長を再び取り戻して、中国人民から魅力的な国家として再評価されることです。

私たちは中国の軍事的な脅威に対して自衛力を充実させるだけでなく、お互いの国が政治体制の優劣を競い合っているという自覚をもつべきでしょう。そして、その政治体制の優劣とは経済成長の優劣によって測られるものであり、中長期的には経済力で勝利した陣営の政治体制が両国で選択されることになります。

日本人は自らの生活にのみ汲々とした政治意識の中で、金融緩和だ、財政出動だ、などと、モルヒネ経済で目の前の問題を誤魔化すことを続けています。しかし、失われた20年を続けた反省を真摯に生かし、現実の問題への対処に取り組むべきときが来ているのではないでしょうか。

アジアの人々が中国共産党のような独裁・世襲体制で過ごすことになるのか、それとも自由で民主的な国で過ごすことになるのか。日本はアジアの未来に大きな影響を及ぼす影響力がある国です。

台湾が自らの勇気を出して民進党という選択を行ったことを受けて、日本も甘ったれた経済・社会の在り方を捨てて、もう一度アジアに冠たる国家を目指して努力をすることが望まれます。






 

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2015年12月27日

大人の教科書(23)欧州の出生率向上は「移民」が原因?

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少子化対策と人口問題を結びつける「愚かな発想」は止めましょう

本日は永江一石さんという「超激馬鹿」な有識者もどきを切り捨てたいと思います。本人が、

「国会議員の男性が育児休暇取ると宣言したことで、「税金で給料ははらってるんだから」とか「国会議員やめてからやれ」とか「重要な審議はどうすんだ」とかいろいろアホなことを言ってるじーさんとかばーさん(蓮舫もその口)がいますが、まじで激馬鹿だと思います。日本の現状を分かっていってるのかと思う。まずこういうことを平気で言う人には国会議員はやってほしくない。日本という国の現状認識がないからだ。」

と述べているので、私も彼を超激馬鹿と表現しても良いでしょう。

イクメンだめとか、このままだと45年後の日本の人口はどうなるか、分かってて言ってんの?(永井江石さん)


欧米先進国の人口増加は、移民増によるインパクトと移民による出生率の改善が要因

「日本人が育児休暇を取得する」と「日本の急激な人口減少を解決できる」という論理的な飛躍が蔓延していることは極めて深刻です。感情論としては理解できますが、「現実をしっかりと見てほしいものだ」と思います。

厚生労働省は、主要な先進国の出生率の比較として下記のデータを公開しています。スウェーデン、フランス、アメリカの出生率が高く、日本の出生率が低いという結果が出ています。

各国の出生率
*厚生労働省「平成26年少子化社会対策白書」より抜粋


もう一つ見てほしいのは、先進国出身女性と外国籍・移民女性の出生率の差です。こちらを見れば分かるように先進国出身女性の出生率は1.2~1.8前後の範囲で収まっていることが分かります。特にフランスの場合はフランス国籍の場合でも国籍取得した移民1世・2世に出生率増への寄与率は高いものと推測されます。

移民と出生率

社会実情データ実録から引用

各国の移民の増加割合を見てみると、各国で移民が増加していることが分かります。これらの移民増加国では人口が上昇し続けています。また、英国などでは2011年の出生数の4分の1以上が移民による子どもたちという状況にもなっています。

一方、ドイツは移民割合が横ばいであるために人口増加はほとんどしていません。また、GDP比で日本の2倍の子育て予算を投下していますが、出生率は日本より微妙に高いだけの状態です。


各国の移民割合の推移
社会実情データ実録から引用

子育て政策は「労働環境改善」であり、「出生率改善への影響」を過大評価されている

日本の人口は既に少子化対策で維持・逆転できる状態ではないことは明らかだと思います。先進各国では移民による若年人口の受け入れと出生率のかさ上げを行っていることを認識するべきです。日本出身者だけでは既に1億人を維持するための出生率2以上に引き上げることも困難です。

日本の将来人口の推計
平成25年版高齢社会白書より引用

育児休暇などが出生率の改善に結びつく影響は極めて少ないものとして認識し、その政策の影響力を過大評価するべきではありません。現状の子育て政策は「人口増加」ではなく「労働環境の改善」にこそ効果が発揮されるものだと認識するべきです。

従って、子育て政策と少子化問題を結びつけて議論する人は、その影響が限定的なものであることを前提に議論を行うべきだと思います。少なくとも、育児休暇=人口増、のような短絡志向で「日本の人口問題を語るな」と思うわけです。

また、上記は移民の数字を扱ってきましたが、元々の自国民の価値観の変化による出産年齢の遅れも直近の先進各国の出生率改善の大きな要因です。これは政策とは関係なく文化レベルの発展による価値変化によるものです。従って、20代女性に出産圧力をかけるような政策よりも晩産化に対応した医療技術の高度化のほうが重要です。

日本の人口減少が問題だと思っている人は、先進各国が行っている移民の受け入れの議論を始めるべきでしょう。子育て政策によって日本の人口が維持できるかのような有識者もどきや子育てタックスイーターが述べているプロパガンダを信じず、日本人は本当に必要なことを淡々と議論する段階に入っています。





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