怒られる
2016年01月10日
絶望国会、実質賃金?失業率?問題はそこじゃない!
絶望国会、実質賃金?失業率?問題はそこじゃない!
山井和則議員と安倍首相の国会質疑での安倍首相の金銭感覚が問題視されているわけですが、これは安倍首相の脳内インフレがアベノミクスによって進んだ結果なので問題視する必要はありません。いつの間にか50%以上の名目賃金・物価上昇が発生していたと考えれば良いと思います。
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それよりも、筆者が心配していることは、
・実質賃金が低下しても雇用が改善しているのだから良いではないか
という、日本の将来について何の見識もない答弁内容です。
「日本のビジネスモデルが劣化」によって実質賃金が低下して雇用が改善している
まず、政府が発表している労働力調査によると、下記(1)~(3)のことが分析できます。この傾向については、民主党政権から安倍政権になっても基本的な傾向は変わらない日本の構造的な問題です。
(1)近年の就業者数の減少は定年による労働市場からの退出などであり、直近の就業者数増は一度退出した高齢者の出戻りと女性による低賃金の就労が増加したことが要因。
(2)民主党政権・安倍政権でも福祉・医療関係の就業者数の増加が大きく、新たな働き口の大半は社会保障費の芋づる式の増加によって生まれたもの。アベノミクスによる就業者数増の正体は社会保障費を増加させているだけのこと(2009年からの雇用増の約60%は福祉・医療系雇用、それ以外は景気循環によるものと推測)
(3)福祉・医療関係と非正規労働者の増加は産業構造の質的な環境変化であり、政府が社会保障費増加を少しでも抑制するために福祉・医療関係の賃金を圧縮する限り大幅な増加を見込むことは不可能。
ということです。リーマンショック前に製造業に従事していた人々が退職・失業などによって職を失い、それらの人々を福祉・医療系の雇用によって吸収したという状況が日本経済の実態なのです。
上記の結果として、相対的に付加価値額の高い製造業での雇用が減少し、付加価値額の低い福祉・医療系(高齢化と社会保障増というおまけ付き)の雇用が増加し、日本の国際競争力は失われ続けています。
実質賃金・雇用増などの議論も重要だが、日本の経済改革についてのビジョンと方策を示すべき
そのため、実質賃金や雇用などの量的な側面に注目するだけでは、日本の中長期的な将来設計の観点から極めて不十分な議論と言えるでしょう。
労働者全体の賃金総額増や雇用増を誇る現政権ですが、国会議員なら「このまま毎年20万人ペースで福祉・医療系の人材を増やし続けていくことが国家戦略なのか」ということを質問するべきでしょう。
自民党も民主党も政権在任期間中にこの日本の構造問題について何ら処方箋を示しておらず、社会保障費拡大による見せかけの雇用増を実績として誇るばかりです。それで毎年の雇用増万歳!というだけなら誰でもできるのではないかと思います。(現に安倍政権も民主党も政権運営できていましたし)
福祉・医療系以外の雇用増が限定的である原因は、アベノミクス第3の矢である規制改革が進んでいないこと、人口動態の中長期的な展望や税制面での魅力がないこと、などによって、世界の経済活動の大半を占めるグローバル企業による日本への投資が極めて少ないからです。経済・産業構造の転換を促すインパクトを与える要素が欠落しており、高い付加価値の伴う雇用増を生み出せていないわけです。
国会で問われるべき質問は、日本の経済・産業構造の未来像をどのように描くのか、というビジョンと方策です。
実質賃金や失業率の話などデータを見れば誰でも分かります。まして、首相の金銭感覚などはどうでも良い事だと思います。まともに経済構造の転換を実行できていない前政権と現政権の二択しかないような罰ゲームを止めましょう。
yuyawatase at 09:00|Permalink│Comments(0)