大統領選挙

2016年11月02日

トランプ大統領誕生時、「日本の米国研究者」というリスク

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Abe urges TPP approval in meeting with Clinton in New Yorkから引用>

トランプ支持率急上昇、ヒラリーは予測獲得選挙人数が減少

トランプ氏の支持率が急速に改善しつつあり、ヒラリー陣営のRCPの獲得選挙人予測も減少しつつあります。勝負の予測はもはや選挙当日にならないと分からない状況となっています。(筆者はヒラリー支持の若年層比率の高さからトランプが逆転できる可能性はあるものと予測しています。)

このような伯仲した選挙戦になることは支持率、特に接戦州の支持率調査を見ていればある程度は予測できました。

ヒラリー支持の各種メディアの発表よりも毎日発表される世論調査の数字を追いかけることで、米国政治の専門家でなくても状況を把握することが可能な状況があります。

トランプ大統領誕生時の最大のリスクは「ヒラリー万歳に偏った日本の米国研究者」たち

ところで、トランプ大統領誕生時の日本外交のリスクはトランプ氏自身にあるわけだけではありません。最大のリスクは「日本の外交チャネルの一部を担ってきた米国研究識者」たちです。

トランプ陣営も含めて米国政界では東アジア情勢に対する関心は中東・ロシアと比べて高くありません。そのため、トランプ大統領が誕生した場合、トランプ氏に対する東アジア各国の国内世論の情勢について再調査することが想定されます。

我が国の米国通とされる識者たちは、共和党の予備選挙段階からトランプ氏を「泡沫扱い」するような言動を繰り返してきました。そして、最近に至るまでヒラリー万歳の姿勢でトランプ氏に対して罵詈雑言に近い論評を発表し続けています。

筆者は個人としてのヒラリー支持が悪いと言っているわけではなく、メディアが登場させる「識者」とされる人々のヒラリー支持への傾斜ぶりが危険だと思っています。

これら日本の米国通とされる識者は予備選挙段階から予想を外し続けていますが、それでも米国側から見た場合、彼らの意見は日本の識者の見解の総意に見えるからです。トランプ陣営のスタッフがそれらの人々のせいで「日本の政府関係者はここまで反トランプなのか」と驚くことになる姿が想像できます。

対米外交の観点から見た場合、日本の大統領選挙関連の論評はかなりバランスが悪い状況だと言えるでしょう。

大統領選挙の結果が出る前に「ヒラリー支持を間接に打ち出した日本政府」というリスク

安倍首相は9月下旬にヒラリーと面会してTPPについてプッシュすることに成功しました。ヒラリー自身はTPPに選挙上は慎重な姿勢を取っているため迷惑だったかもしれませんが、安倍首相が大統領選挙の片方の候補者に間接的に支持を表明したことになります。(当然ですが、TPPの要望を行うことはヒラリーが大統領になることが前提だからです)

これはトランプ氏の全米的な猛追の可能性を予測できず、メディアや米国通の識者を妄信した安倍政権の暴走とも言える外交的な一手だったと思います。

同会談に関してはヒラリーの外交ブレーンであるカート・キャンベル氏が「(安倍総理は)より良い日ロ関係は利益になると説明した。クリントン氏は『戦略的な見識を受け入れる』と答えた」と内容を暴露しました。つまり、北方領土交渉で喉に刺さった骨になる米国側の了解がほしい安倍政権の外交的な賭けだったわけです。

しかし、現実にはヒラリーはトランプ氏に猛追されており、万が一トランプ氏が勝った場合に本件は外交的な大失敗ということになるでしょう。

キャンベル氏の発表直後にトランプ氏の外交アドバイザーであるフリン氏を来日させて意見交換していますが、このような対応を実施してもトランプ氏からの心証が良いはずがありません。

国の命運を賭けた外交は万が一を考えて慎重に行うべきものです。一か八かの賭け事のようなやり方に賛同できませんし、これも日本国内の米国研究識者らの意見の偏りが招いたリスクだと思います。

トランプ大統領が誕生した場合、日米外交のパイプは極めて希薄なものになる

米ブッシュ前政権で国家安全保障会議アジア上級部長を務めた知日派のマイケル・グリーン氏らはトランプ氏に対して批判的であり、ヒラリー寄りの発言を繰り返しています。

日本の米国通とされる国会議員・識者らはグリーン氏のような従来までの米国とのパイプしか持っておらず、トランプ陣営との繋がりは脆弱なものとなっています。これらの国会議員の中には大統領選挙中のトランプ氏を公然と批判するような事例も存在しています。

筆者はトランプ陣営に関与している安全保障関連のスタッフに面会する機会を得ましたが、同スタッフによると日米の外交的な関係は極めて希薄なものになっているとのことでした。

このような状況を招いてきたのは、ヒラリー万歳のポジショントークに終始し、トランプ陣営との外交チャネルの構築を怠ってきた既存の対米外交関係者の責任です。更に言及するならグリーン氏らのお馴染みの人々だけでなく、共和党・民主党の更にディープなレベルにまで恒常的に関係性を築いておくべきです。

まだ見たこともないトランプ外交をリスク扱いする以前に、日本政府及び米国研究の識者らの外交チャネルの偏りこそが最大のリスクになっていると思います。

仮にトランプ大統領が誕生した場合、従来までの外交チャネルを全面的に見直し、対米外交の在り方そのものを根本的に改革することが重要になるでしょう。





本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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2016年10月14日

トランプVSヒラリー、トランプ勝利の可能性はあるのか?

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トランプの女性蔑視スキャンダル炸裂、しかし接戦州の世論調査はまだまだ拮抗状態

トランプ氏のいわゆる「ロッカールームの中」の会話が暴露されたことで、共和党のエスタブリッシュメントらが次々と離反し、トランプ陣営は崩壊するかと思われました。しかし、その支持率は意外と粘り腰を発揮している状態です。

10月13日のNBC/WSJ/Maristの世論調査でオハイオ州ではトランプ氏がヒラリーを僅かに上回る支持率を獲得しており、その他の地域を対象とした各種世論調査でも接戦州でヒラリーとの差は5%以内におさまっています。

確かにトランプ氏の最も支持率が高かった状態から著しい落ち込みを見せていますが、巷で語られているように「ヒラリー圧勝で完全に勝負がついた」と言い切れるほど現実の数字は離れていません。

共和党支持者・民主党支持者の間に広がる溝は簡単に乗り越えられるものではない

トランプ氏の女性蔑視発言(というよりも家族の価値観を毀損する発言)は、伝統的な家庭像を大切にする米国共和党保守派にとっては極めて問題があるものでした。ただし、トランプ陣営は第二回テレビ討論会などの大舞台で共和党保守派に対する強烈なメッセージを送って止血を図ることに成功しています。

TV討論会についてもトランプ・ヒラリー両者の勝敗に関して共和党支持者・民主党支持者の理解には相違が存在しており、同じテレビ討論を見ても同一の評価に辿り着くことが難しい状況です。また、そもそもトランプ氏に圧倒的に不利な問題設定がなされているテレビ討論会自体を共和党支持者は快く感じていない向きもあります。

共和党のエスタブリッシュメントがトランプ氏への不支持を表明したとしても有権者の間に生じている亀裂は解消されるわけではなく、トランプ支持・ヒラリー支持の割合が大きく崩れず、選挙戦までギリギリの拮抗した状況が続くものと思います。

次にトランプ・ヒラリーどちらかの陣営にスキャンダルが新たに発生することになった場合、現在のヒラリーやや優勢の状況に変更圧力が加わることになり、場合によってはトランプ氏の支持率が相対的に回復する可能性もあります。

トランプ・ヒラリーの争いに嫌気が差した有権者が第三極に流れていく可能性も・・・

最近、オバマ大統領を始めとする民主党陣営はリバタリアン党のジョンソン候補に対するネガティブキャンペーンに力を入れていました。これはサンダース支持者などの積極的にヒラリーを支持しているわけではない民主党支持層がリバタリアン党のジョンソン候補や緑の党のステイン候補に流れ始めていたからです。

ヒラリーを表面的に支持する層は決して積極的なヒラリー支持者ばかりというわけではありません。むしろ、サンダース支持者などの反ヒラリー的な要素を抱えた有権者も多く存在しており、それらの層が大統領選挙への投票を棄権する可能性や第三極候補に流れる可能性が存在しています。

サンダース氏との予備選挙中から常に指摘されてきたことですが、ヒラリー自身は何故彼女が大統領になるべきなのか、という説明を怠り、いまだにその正統性について十分に有権者にアピールできていません。

トランプ支持者・共和党保守派はエスタブリッシュメントの牙城を崩せるのか

一方、トランプ氏の支持者は、熱烈なトランプ支持者、共和党保守派、名ばかり共和党員(RINO:republican in name only)に分かれています。熱烈なトランプ支持者は予備選挙中に新たに共和党に加わった層であり、トランプ自身を積極的に支えるインセンティブを持っています。

トランプ氏が共和党保守派へのメッセージが功を奏して同支持者からの支持低下を食い止めることが出来た場合、最初からヒラリーを事実上推している共和党のエスタブリッシュメントなどのリベラルな傾向があるRINOが裏切ったところで十分に戦うことができるでしょう。

実際、トランプ支持者と保守派支持者からの突き上げを食らって、トランプ不支持を表明した議員らが態度を一転して軟化させるケースも出てきています。共和党指導部が諦めても地場の共和党員はまだまだ戦う意欲が残っている状況です。

不確定要素が多く残された米国大統領選挙、トランプ勝利の可能性はあるのか?

関ヶ原の合戦中に小早川の裏切りにあったようなトランプ陣営ですが、困難な状況を逆転する可能性が残されているのでしょうか。かなり苦しい状況ではあるものの、トランプ勝利の可能性は残されていると言うことが出来ます。

その根拠はヒラリー・クリントンの不人気です。現在、米国では毎日のようにメディアとセレブがトランプ・バッシングを繰り返して滅茶苦茶な状況になっていますが、トランプのネガティブ情報のシャワーを浴びさせられているはずの有権者がヒラリー支持に雪崩を打って流れ込む状況になっていません。

世論調査によってはトランプ氏よりもヒラリーのほうが当選後のスキャンダルについて心配する比率が相対的に高いという結果になったものすら存在しています。ヒラリーも有権者から信任を得ているとは全く言えない状況です。

むしろ、ヒラリーに対する不信感はメディアが盛り上げるトランプへの拒絶感よりも米国民の底に根差したものであるように感じられます。ヒラリーに対する不信感はマグマのように滞留しており、一度噴き出すことになれば押し止めることは困難でしょう。そのとき、トランプ氏が大統領選挙で勝利を得るという構図が生まれることになります。

いずれにせよ、既に米国大統領が決まる日まで一か月を切りました。「既に決着がついた」というヒラリー陣営の選挙キャンペーン(笑)が横行していますが、勝敗はまだ予断を許さない状況となっています。

トランプ
ワシントン・ポスト取材班
文藝春秋
2016-10-11




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2016年05月12日

日本外交、大丈夫?高校生に揶揄される日本の有識者って・・・

トランプを外した人

トランプの支持率が急上昇中でヒラリーと接戦州(スイングステート)でほぼ互角に

米国大統領選挙、トランプ氏の支持率が急上昇してヒラリーに肉薄するようになってきました。筆者は昨年からトランプ氏の予備選挙勝利、その後の支持率の上昇を予測して記事にしてきました。そのため、トランプ氏の支持率上昇については驚いていませんが、その上昇ペースについては予測よりも早く始まったなと思っています。(下記拙稿の一部)

数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)
「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」(2016年5月10日)

接戦州のフロリダ、ペンシルヴァニアでは僅か1%差、オハイオではトランプが4%差で勝利しています。全国的な差もヒラリーが僅か6%リードしているに過ぎません。トランプ氏と共和党の連携が完全に出来上がっていない状態ですらこの状況です。以前から数字の上ではサンダースのほうがヒラリーよりもトランプに有利に戦える数字が出ており、サンダースが予備選挙から降りない強気の理由はこの数字にあるのでしょう。

トランプVS

テレビで的外れな解説を続けて「高校生に揶揄される米国通の有識者」って・・・

ところで、上記にも書きましたが、昨年からトランプ氏が予備選挙で勝つと言い続けてきた身としては、日本の外交力、そして有識者のレベルって本当に大丈夫なの?と思う次第です。

下記はテレビなどで大統領選挙の解説員として良く見かける慶應大学の中山俊宏教授です。外務省や内閣府の米国政治に関するレクチャーを務められている方でもあり、国内外の様々なシンポジウムで大統領選挙の見通しについて発表されてきました。

で、その中山氏が自分のTwitterで下記のようなコメント。そりゃ、あれだけいい加減な情報をお茶の間に流してれば高校生にも揶揄されるってものです。

トランプを外した人

筆者はこの方は好きではありません。なぜなら、米国の保守派の人々に対して十分な理解もなく無思慮な発言を繰り返しており、今回の大統領選挙も自分の偏見と思い込みで「国民に偏った情報ばかり」を伝えてきた人物だからです。(かなり前のことですが、筆者も茶会運動についてメディアで適当な発言をされて迷惑した思い出があります。)

そして、5月4日の毎日新聞の取材のレベルの低さに驚きました。この記事内容は完全にただの思い込みですよね。冒頭にも示した通り、トランプ氏の支持率も急上昇中だし、早々に共和党のエスタブリッシュメントらも妥協始めてますが・・・

16年大統領選 共和党内団結遠く 中山俊宏・慶応大総合政策学部教授(米国政治外交)の話

今回の大統領選挙でも「ブッシュ⇒マルコ・ルビオ⇒挙句の果てには、ケーシックに注目してました!⇒トランプ氏の敗北は確実とは言えない」など次々に変節。この期に及んで更に取材する「毎日新聞」の取材先を選ぶ能力を疑うレベルですね。

中山氏は共和党保守派最大の集会であるCPACには今年初参加(要は素人みたいなもの)だったという話。トランプが予備選挙の期間中に支持率1位を維持し続けていましたが、彼は何を見てたんでしょうか?

明確に申し上げますが、中山氏の大統領選挙に関する論説は米国のエスタブリッシュメントの噂話を代弁しているだけで分析と呼べるようなものではありません。自分は学会のヒエラルキーとか関係ないんで遠慮なく言わせてもらいます。

筆者は選挙は流動的なものだと思うので大統領選挙の予測が外れることは非難しません。しかし、定量的な裏付けがない無根拠な噂話を真実のようにメディアで語ることは論外だと思います。

日本政府とメディアは「数字で議論することができる解説員や説明者」を登用すべき

さて、政治や外交というものはブラックボックスに包まれているため、「いい加減な人々」が専門家然とすることができるものです。

しかし、解説員や説明者を務める方々は、社会科学を扱う人間の基礎的な素養として「公開されている数字や情報を分析できること」は最低条件と言えるでしょう。彼らが検証可能な情報に従って分析した結果が間違っていても構わないわけですが、社会科学的な検証不能なオカルト情報をメディアで垂れ流すことは慎んでいくべきでしょう。

現代社会では米国のメディア報道や統計情報についてネットでアクセスすることが可能であり、なおかつ米国の政治・行政にコネクションを持つ人物も大学関係者・政府関係者以外にも随分と増えてきました。そのため、従来のように「どうせ日本人には分かんねえだろ」的な解説は「嘘」だと一発でバレます。

今後、海外情勢に関する分析などは「米国政治」のような低い解像度ではなく、「米国共和党の選挙」「大統領選挙の世論調査」くらいの最低限のレベルまでは掘り下げた人々によって解説されるようになるべきです。

従来までのような「英語ができれば専門家」という時代は終わっており、今後は独自の専門性を持った人々による分析が行わていくことを期待します。





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2016年02月16日

中山俊宏教授のための共和党保守派入門(後篇)

前回、米国政治を専門と称する中山教授の「念願のCPACに初参加」という告白が、「自分は共和党保守派についてビギナー」だと指摘しましたが、このCPACとは何なのでしょうか。

CPAC(Conservative Political Action Conference)とは何か?

まず、前回のおさらいですが、CPACは米国共和党保守派にとっては入門的な場であるとともに、大統領予備選挙の指名を実質的に決める場です。

CPACは米国保守派の年次総会とも言えるような場であり、毎年開催されているCPACでは全ての大統領候補者が壇上に立ち、約1~2万人程度の保守派の草の根リーダーらに自らの考え方をアピールしています。

これは何故かというと、特に大統領選挙の年ではCPAC内で開催される大統領予備選挙の模擬投票が実際の予備選挙にも大きな影響を与えるからであり、2012年のロムニー予備選勝利に関してもCPACの投票結果は多大なインパクトをもたらしました。

2015年2月のCPACに出席していれば、ジェブ・ブッシュ氏の勢いがイマイチ欠けており、ドナルド・トランプ氏の旋風、マルコ・ルビオ氏の台頭などはある程度予測ができる空気感が漂っていました。

つまり、昨年の夏段階でブッシュ推しの日本人有識者はまったく共和党の空気感が分かっていない人だということが言えます。特に近年のCPACでは会長職の変更などの影響もあったのか、有色人種比率・若者比率も格段に増えていること、米国共和党保守派の変化を肌で体感することができる貴重な場でもあります。

また、CPAC会場内では多くの分科会・レセプションが開催されており、共和党保守派がどのような政策テーマに関心があるかを知ることもできます。つまり、米国共和党のイデオロギー的・政策的なテーマの方向性を知る上でもCPACへの参加は必須であると言えます。ちなみに、私の関与している団体がCPAC会場内でACUと共同で日米関係のレセプションを用意しています。

さらに、CPAC会場ではVIP用の部屋が別に構えられており、多忙なキーパーソンから会いたい人物が別室に招かれて会談を行うことも重要な機能です。私も過去に参加したCPACで当時の大統領予備選挙候補者とVIPルームで面会する機会が得られました。CPACは参加するだけなら「誰でも参加」できますが、インビテーションが無ければ入室できない催しもあり、間口は広く敷居の奥は深いイベントです。

CPACに一度も行ったことがなく、米国共和党保守派について知ったように語ることがいかにチープであるか、情報不足の日本メディアからは中山氏ら米国通を称する大学教授は持て囃されるかもしれませんが、米国の少なくとも「共和党保守派」を解説するには役不足だと思います。

こうした役不足の人物が偏見に基づいた解説をすることは、日本人に米国政治の潮流を見誤らせることになり、戦前と同じ過ちを我が国に侵させかねない行為です。

既存の政治関係者・有識者ルートから脱却した若い世代の外交ルートの発達

そもそも共和党保守派の日本への関心は従来までは高くありませんでした。上述の通り、私が関与している団体がACUとの共同レセプションを開催するまで、JapanJの字もない状況だったと言っても過言ではありません。

これは米国共和党保守派という近年の政治シーンでは無視できない存在に対して、日本の政治・学会関係者がほぼノータッチだったことを意味しています。どれだけ日本外交は無策なんですかと。

従来までのように一部の米国通とされる有識者らが情報を独占し、自分にとって都合が良い解釈をメディアで流し続けて安泰でいられる時代ではなくなりました。日米関係という非常に重要な二国間関係に関わる情報ルートであっても、人間の行き来の活発化やネットの発達によって情報寡占は不可能になりつつあります。いまや新聞・テレビで解説されている程度の話は英字新聞どころか、英字新聞の日本語版サイトを見れば十分です。(日本のメディアでどんな発言しているかも相手国にキーパーソンに容易に伝わるようになりました。)

一方、これから重要になることは情報の解釈であり、筆者は米国共和党保守派の理念である「小さな政府」を始めとした政治思想が日本にとって伝えられるべき重要な思想であると考えています。

そのため、中山俊宏教授が述べられているような一方的なバイアスがかかった共和党保守派に関する言説ではなく、これら共和党保守派との間でしっかりと根をはった言論が増えてくることが望ましいものと思います。

これは日米関係だけではなく他国のケースであったとしても同様のことが言えるでしょう。海外の情報を摂取する際に、従来まで権威とされてきた情報源だけではなく、現地・現場とのリレーションに基づく情報の送受信の多様化が起きていくことが必要です。

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中山俊宏教授のための共和党保守派入門(前篇)

米国大統領選挙の解説で有名な中山俊宏教授とのTwitterでのやり取り

時節柄、米国大統領選挙の最新動向についての新聞やテレビ等でのコメンテーターによる解説が増えてきました。しかし、それらは、非常に偏った視点に基づく解説であることが多いのです。

その典型例は、NHK国際報道でお馴染みの慶応義塾大学教授の中山俊宏氏によるものです。彼の共和党保守派に対する分析は具体的な根拠に基づかない偏見や思い込みであり、しかも予想は連戦連敗しているのです。

中山氏は言います。

「今日のアイオワ党員集会にかんする短評を書き上げました。共同通信を介して明日配信されるはず。「共和党はこれでルビオでしょう」という雰囲気をかすかに漂わせせた。」

(2月2日、twitter)

→その後、ルビオ候補はニューハンプシャー予備選挙で5位と没落し、彼のtwitterはしばし沈黙し、その上でケーシックが善戦すると予想していたと言い始める始末。(ルビオ候補が有力であることは認めますし、NHの世論調査を見ていればケーシック善戦は誰でも分かる話ですが・・・)

「ジェブ・ブッシュがFB上で事実上の出馬表明。ブッシュとクリスティが競って、ブッシュが勝って、最終的に二人が組んでみたいなことになると、かなり強そう。」(2014年12月17日、twitter)

「ジェブ・ブッシュ氏(中略)の動向が要注目」(NHKBS国際報道、2014年10月28日)

→その後の展開を思えば的外れもよいところの予測です

「(米国における)茶会運動は政治運動としての保守主義が死んだ兆候だ」

(2010年12月17日)

→その後、茶会運動が滅亡することなく、政治運動としての保守主義が盛んになっていることを思えば失笑です

その他にも、テッド・クルーズは原理主義的で危険、ティーパーティ運動の参加者には陰謀論を持っている等の極端な言説が多く、共和党保守派やTea Party運動の方々と親交がある筆者としては以前より違和感・不快感を覚えてきました。

どうして、専門家を称しているのに、いつも的外れの予測と解説ばかりしてしまうのか。

しかし、中山教授の最近の以下の呟きを見て、私の疑問は一気に解決しました。

専門家ではなく、米国共和党保守派のビギナーだったのだから、これは仕方がないと。

 CPAC中山

この発言は、何を意味するのでしょうか。

CPACとは、米国保守派の入門的な一大イベントであり、そこで次期大統領候補が事実上決定される極めて重要な大会です。しかも、誰でも参加できるものであり、筆者も何度も参加して大統領予備選挙候補者を始めとした多くのVIPとの面談も行ってきました。CPACは共和党保守派を知る上では欠かすことができないイベントです。 

筆者は中山教授に、この点を聞いてみました。

 すると、中山教授からは、

キーン中山

というお返事をいただきました。ACUとはCPACの主催団体ですが、中山教授が名前を挙げているキーン会長は5年前に退任した方です。現在はアル・カーディナス前会長、マット・シュラップ現会長と二代も会長職が交代しています。しかも、ソルトレイクシティ―の話も2011年のことです。

2016年の大統領選挙はおろか、2012年大統領選挙の時でも現職でなかった方(立派な方ですが)の名前を挙げて、「俺は共和党保守派を知っているんだぞ」アピールされても、ますます「???」と思った次第です。米国のことは分からないだろうとタカをくくった態度が不誠実すぎますね。ちなみに、その後中山教授からはお返事ありません。CPAC初参加についての釈明もありません

ちなみに、筆者はフリーダムワークスから来賓として過去にダラスの大集会に招かれたことがありますが、直近4年以内の話なので中山氏に米国でお会いしたことはありませんね。

そもそも、中山教授の博士論文は、「米国共産党研究」ですから、共和党保守派をご存知ないのも無理はありません。

中山氏は2016年の予備選挙はセオリー通りではないことを予想が難しい理由に挙げていますが、トランプが全米支持率トップであることは一貫しており、トランプ台頭をあえて無視してきたか、そもそも世論調査すら見てないのか、どちらでしょうか?ちなみに、米国共和党に詳しくない人向けに解説すると、中山氏のセオリー通りではないという意味は中山氏が好きな共和党主流派の候補者らが苦戦しているというだけの話でしかありません。

 

次回は、そもそも、CPACとは何かについて、共和党保守派についてビギナーの中山教授の為にも解説したいと存じます。

中山俊宏教授のための共和党保守派入門(後編)に続く



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2015年10月30日

米国共和党式!「小さな政府」を創る6つの仕組みとは

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米国共和党の大統領予備選挙で各候補者の熾烈な戦いが続いています。今回は台風の目としてドナルド・トランプ氏が注目されていますが、共和党の予備選挙は穏健派と保守派の2つの派閥の闘争として分析することが可能です。そして、保守派を支える政治闘争のシステムを理解して輸入することは、日本において小さな政府を目指す人々にとっては重要なことです。


表舞台で注目されるようになった保守派

共和党内部では社会保障政策などで民主党に近い穏健派と小さな政府を信条的・政策的に追求する保守派に分かれています。これらの対立の歴史はかなり古い歴史を持っていますが、歴史的には穏健派の勝利という政治情勢が続いてきました。そして、労働組合などの利権団体による動員マシーンを背景とする民主党による連邦議会も戦後の長期間の支配が続いてきました。


しかし、1994年になると共和党保守派が民主党及び共和党内の穏健派を倒すための体制を構築し、連邦議会における民主党支配を覆すことに成功しました。そして、共和党の本来の政治的な主張である「小さな政府」を金科玉条に掲げる政治勢力が政局の表舞台で注目されることになりました。保守派は民主党や共和党穏健派を凌駕する動員力、政策力、資金力を確立し、現在の連邦議会で大きな力を持っています。

米国共和党式!保守派の「小さな政府」を創る6つの仕組み

私見では、保守派を支える政治闘争のシステムは、極めてシステマチックに構築されています。代表的な事例としては、(1)保守派の大方針や大統領候補者を実質的に決定する意思決定としての保守派の年次総会(CPAC:Conservative Political Action Conference)、(2)ワシントンにおける日常的な保守派の動き司令塔となる定期会議(全米税制改革協議会主催のWednesday Meeting)、(3)保守派の運動員を育てる訓練機関(The Leadership Institute)、(4)保守派の政策立案を担うシンクタンク(ヘリテージ財団など)、(5)保守派の主張を伝えるメディアやメディア監視団体(フォックスニュースやMedia Research Center)、(6)保守派の価値観を教育する草の根組織(Tea PartyやFreedom Works)など、その他多様な能力を持つ組織が存在し、多くの仕組みが分散的・有機的に結合した巨大な運動ネットワークとして機能しています。


大統領候補者や連邦議員から政策的な言質を引き出すとともに、彼らを国政の場に送り出すための力強い運動が展開されて、減税や規制改革の政策が次々に提供される仕組みには目を見張るものがあります。

日本で旧来の米国通の識者が保守派を紹介するとき、これらの識者は穏健派との繋がりが深い傾向があり、故意に矮小化された保守派のイメージ(保守派は極端な主張を述べているという類のレッテル貼り)が伝えられることが多く、保守派の優れたネットワークの有機的な結合についての全体感が語られることは少ない印象を受けます。

そのため、本来、日本の「小さな政府」を求める政治勢力にとって必要な「米国の保守派の政治闘争のシステム」の輸入という貴重な機会が失われています。

共和党予備選で注目すべきポイント

日本の政治状況は自民党及び官僚による支配が継続しており、彼らが生み出し続けている巨額の政府債務と張り巡らされた規制制度が未来への希望を閉ざしています。しかし、依然として小さな政府を求める政治勢力の力は弱く、「大きな政府」と「更に大きな政府」を求める政治勢力による不毛な政争が続けられています。


「小さな政府」を掲げる政治勢力を代表する政党が誕生し、責任ある二大政党政治を創り上げるためには、政党や政治家だけではなく、周辺の政治闘争のためのシステムを構築することが必要不可欠です。

共和党の大統領予備選挙に注目が集まる中で、候補者同士戦いの背景で動いている米国の保守派の政治闘争のシステムについて、より多くの日本国民が注目し、日本でも「小さな政府」の政治勢力を強化する仕組みづくりが開始されることが期待されます。





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