大統領

2016年11月03日

米国大統領選挙・選挙人予測「トランプ勝利のシナリオ」

ヒラリーVSトランプ(11月3日)

<Battle for White House(11月3日現在)、RCPから引用>

「支持率じゃなくて選挙人数が大事なんだよ・・・」という人に向けて説明

米国の大統領選挙は全米支持率ではなく各州に割り振られた選挙人数の獲得合計で争うことになります。そして、過半数(270議席)を得た陣営が大統領選挙での勝者ということになります。

直近数日の間でトランプ氏の全米支持率がヒラリーを上回る数字が出てきたことで、ヒラリー万歳派の日本人有識者らが「支持率じゃなくて選挙人数だから」という言い訳を始めています。今まで散々「支持率で論評しきてた」のにご都合主義「ここに極まれり」ですね。

しかし、残念ながら、その選挙人数の獲得予測でもヒラリーはトランプ氏に激しい追撃を食らっており、RCPの選挙人予測で日々数字を落としています。同予測でヒラリーは一度過半数を獲得しましたが、その後大きく選挙人数を失っている状況です。

選挙人数予測から考える「トランプ勝利のシナリオ」

現在の選挙人数の予測はヒラリー226・トランプ180でヒラリーが有利な状況となっています。しかし、接戦州に分類されている州の中でトランプ氏が有利な州が複数存在しています。

現状の支持率で推移した場合、バージニア13はヒラリー陣営、オハイオ18、ネバダ6、アイオワ6、アリゾナ11、はトランプ陣営に転ぶ可能性が高い状況です。したがって、実際にはヒラリー239・トランプ221が妥当な現状分析でしょう。

フロリダ、ノースカロライナ、ペンシルバニア、コロラド、ニューハンプシャー、メイン(2)は激戦中であり、どちらの陣営に軍配が上がってもおかしくない状況です。

トランプ氏が勝利するためには、フロリダ29、ノースカロライナ15、ニューハンプシャー4、メイン(2)1で270人の選挙人を獲得するというシナリオが最も妥当なシナリオでしょうか。ペンシルバニア20やコロラド9を陥落させた場合、形勢は一気にトランプ大勝利に流れていくことになるでしょう。(支持率を参考にするとトランプ氏のニューハンプシャー勝利は若干厳しいため、現実的にはコロラドが重要になるものと思います。)

上記のシナリオは現状の各州における支持率を見ている限りでは不可能ではありません。

鍵となるフロリダ州ではキューバ系移民からのトランプ支持が増加したこともあり、トランプ氏に有利な世論調査結果が出始めています。大票田であるフロリダがトランプ陣営の手中に入った場合、トランプ勝利の選択肢は大きく拡がることになります。

ヒラリー陣営は崩れ落ちる牙城を支え切ることができるのか?

選挙最終盤を迎えてヒラリーの獲得選挙人数予測の数字は下落し続けています。トランプ氏に比べて大量の広告費を投入して選挙戦を行ってきたヒラリー陣営にとってショックは隠しきれないものでしょう。

ヒラリー陣営は既に大統領選挙を勝利したものと看做して接戦州での対応を怠り、トランプ氏による徹底した反撃に対して後手に回った状況に置かれています。まさにエスタブリッシュメント特有の慢心と驕りによって、トランプ陣営の窮鼠猫を噛む攻撃に苦しめられる結果となったと言えるでしょう。

ヒラリー優位の残りの州の中で、ウィンスコンシン州とミシガン州は比較的崩れる可能性がありますが、ヒラリー陣営も流石にこれ以上は止血すると思います。そのため、上記の接戦州での勝敗こそが大統領選挙の勝敗を左右することになると言えるでしょう。

ちなみに、ヒラリー・トランプの獲得選挙人数が269VS269となった場合、連邦下院議員の投票によって大統領が選ばれることになります。連邦下院議員は共和党多数がほぼ確定的であるため、ヒラリー寄りの議員らが造反しなければトランプ大統領誕生ということになります。

開票日まで1週間を切っている米国大統領選挙ですが、両者の鎬を削る戦いは熱くなる一方です。毎日、米国で何が起きるのか目が離せません。





本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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2016年10月31日

トランプ支持者は「白人ブルカラー不満層」という大嘘


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<http://www.breitbart.com/から引用>

ミスリードされた「トランプ支持者像」が選挙結果を見誤らせるだろう 

トランプ支持者像として典型的に語られるイメージは「白人ブルカラー不満層」というものです。このような誤ったイメージはヒラリー陣営による徹底したプロパガンダの結果として米国内外にまで浸透しています。

トランプ支持者を紹介する日本のテレビ番組でも「デトロイトまで出かけて白人労働者」をわざわざ見付けて取材しています。トランプ支持者なんてものは全米(ワシントンD.CやNYでも)に存在するのに随分と手が込んだ画作りだなと感心してしまいます。

しかし、現実にはトランプ氏とヒラリーの支持率は拮抗している(地域によってはトランプ氏が上回っている)状況です。「米国人の約半数が白人ブルカラー不満層」だというおよそ非現実な仮定を信じない限り、トランプ支持者に対する愚かな理解が通用しないことが分かります。

私たちはステレオタイプのプロパガンダをまき散らす有識者らの悪質なデマを信じこまされて米国の大統領選挙の状況を大きく見誤っている状況に陥っています。

性別・年代・所得・学歴・人種の観点から「トランプ支持者・ヒラリー支持者」を比較する

では、10月30日発表のIBD/TIPP poll という世論調査の詳細を見ながら、実際のトランプ支持者・ヒラリー支持者の実像を探っていきたいと思います。

同世論調査は回答者のデータを詳細に公開しているため、メディアが垂れ流すイメージとは異なるトランプ支持者・ヒラリー支持者像をしっかりと理解することができます。

女性の半数はヒラリー支持、ただし白人女性に限定するとトランプ支持の割合が多い

まず、性別から見ていきましょう。男女別の支持率としては男性はヒラリー38%・トランプ49%、女性はヒラリー50%・トランプ36%となっています。

ヒラリーが獲得している女性票は約半数でしかありません。しかし、これは回答者の人種ファクターの影響が大きく、白人女性だけに限定するとヒラリー41%・トランプ43%でトランプが上回っています。

つまり、トランプ氏が男性から支持を受けていることは明らかであるとともに、10月初旬を賑わせた一連の女性スキャンダルがあってもトランプ氏が女性からの一定の支持を維持していることが分かります。

トランプ氏はミドルエイジ~高齢層、ヒラリーは相対的に若年層から人気

次に、年代を見ていきます。トランプ支持者とヒラリー支持者に関して顕著な違いが出ている年代層は若年世代です。18~44歳までの層ではヒラリー45%・トランプ33%でトランプ支持は大きく水があけられています。

これはリバタリアン党のジョンソンが支持を拡大していることが影響しています。当初はヒラリーを削る可能性も予想されていたジョンソンですが、結果としてトランプ支持者を削る形になっています。

一方、45~64歳と65歳以上の層ではヒラリー・トランプの支持率は拮抗しています。誤差の範囲かもしれませんが、数字の上ではトランプ氏のほうがヒラリーを上回る状況となっています。若年層は米国においても投票率が低い傾向があるため、トランプ支持者のほうが投票率が高くなる可能性を示唆しています。

トランプ支持者は中間層から高所得者、ヒラリー支持者は低所得者が相対的に多い

所得についても冷静に見ていきましょう。3万ドル未満の層はヒラリー55%・トランプ31%、3~5万ドルの層はヒラリー46%・トランプ36%、5~7.5万ドルはヒラリー42%・トランプ42%、7.5万ドル以上はヒラリー43%・トランプ47%となっています。

つまり、「低所得者はヒラリー支持、高所得者はトランプ支持」は世論調査の数字から明確に確認できると言えるでしょう。トランプ支持者が「低所得の白人ブルカラー層」という嘘っぱちは一体どこからでてきたものでしょうか(笑)

トランプ氏は共和党の指名候補者であり、同世論調査では共和党支持層の8割以上を固めることに成功しています。したがって、米国においてはタックスイーターではなくタックスぺイヤー(納税者≒高所得者)側の候補者であることは改めて確認するまでもないことです。インデペンデントからの支持率もヒラリーを上回っており、「トランプ支持者はヒラリー支持者よりも所得が高い」が正しい分析です。

トランプ支持者は高卒・大学中退者が多く、ヒラリー支持者は大卒以上が多い

学歴については、高卒者でヒラリー35%・トランプ52%、大学中退者でヒラリー38%・トランプ47%、大卒以上でヒラリー50%・トランプ36%となっています。

トランプ支持者は相対的に学歴が低い傾向があり、ヒラリー支持者のほうが高学歴者が多いことが分かります。本人が望んだのか不幸にも進学できなかったかは定かではありませんが、トランプ支持者はたたき上げの人物ということになります。

しかし、大卒以上でも36%はトランプ支持であるわけで3人に1人はトランプ支持者であるわけです。したがって、トランプ支持を単純に低学歴だと断定することは明らかな間違いです。

また、上記の所得層と合わせて考えると、学歴についてはトランプ支持者はヒラリー支持者よりも低いけれども、所得についてはトランプ支持者はヒラリー支持者を上回っていると推量することができます。

ヒラリー支持者が高学歴層で多数派を占めていることで、メディア上のオピニオンは徹底的にトランプ・パッシングだらけになっているわけですが、それらは学歴エスタブリッシュメントのインナーサークルの言論でしかないと言えるかもしれません。

トランプ支持者は白人が中心ではあるものの、ヒスパニックも3人に1人はトランプ支持

白人男性はヒラリー31%・トランプ57%、白人女性はヒラリー41%・トランプ43%となっており、白人層においてはトランプ氏が相対的に優位な状況となっています。黒人層でヒラリー85%・トランプ4%と圧倒的な差がついている状況とは顕著な違いがあると言えるでしょう。

トランプ氏は「メキシコ国境に壁を築く」などの不法移民に対する厳しい姿勢を見せていますが、ヒスパニック層からの支持はヒラリー48%・トランプ35%という状況となっています。3人に1人のヒスパニックはトランプ支持という状況です。

ヒスパニックにはキューバ系とメキシコ系が存在しており、両者は異なる政治的な支持の傾向を持っています。キューバ系は自主独立の精神が高く、共和党の基本的な方向性と親和性があります。

その結果としてヒスパニックにもトランプ支持が一定層存在する形となっているため、トランプをレイシストと単純に罵る人々は複雑な現実を理解できない層と言えるでしょう。実際にフロリダ州ではキューバ系のトランプ支持が高まりつつあります。

<フロリダのキューバ系ヒスパニックでトランプの支持率上昇>
Poll: Donald Trump +4 in Florida; Jumps 19 Points Among Cubans

・・・以上となります。

トランプ支持者が「白人ブルカラー不満層」というステレオタイプが間違っていることが明らかになったと思います。トランプ支持者を馬鹿にしている日本人有識者よりも約3分の1のトランプ支持者は学歴も所得も上回っている可能性があります。

米国大統領選挙は依然として支持率が拮抗した状況が続いていますが、支持年代層の分布を加味した場合、トランプ氏が相対的に伸びると推測する見方が妥当です。この年代別の支持分布の構造は英国のBrexitと酷似しており、数%の差であればトランプ氏がヒラリーをまくることも現実的なものと言えるでしょう。

いずれにせよ、今回の選挙ほど有権者にレッテルを貼る酷いメディアのキャンペーンはありません。それらの偏ったメディア情報を鵜呑みにするのではなく、実際の世論調査の数字を見ながら冷静に状況を見ていきたいものです。



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2016年10月27日

トランプ大統領が爆誕する5つの理由

トランプ

米国大統領選挙投開票日まで2週間を切った状況となっており、既に「ヒラリーが勝利した」というヒラリー陣営のプロパガンダが大量に流れている結果、日本人の間でもスッカリ決着がついたかのように錯覚している人が多く存在しています。

特にいわゆる有識者と呼ばれる人々にとってはトランプ勝利の可能性に触れること自体がポリティカルコレクトネス(政治的に正しい言説)に反するものになっているため、米国の現実とはかい離したヒラリー万歳を繰り返すだけの有様となっています。

しかし、現実の米国世論はいまだトランプかヒラリーかで大きく割れている状態であり、一度はヒラリー勝利を予測したメディアでも第3回討論会後の世論調査の推移から情勢変化を見守る姿勢に変化しているものもあります。

クリントン氏、再び過半数割れ=米大統領選

そのため、Brexitと同様にメディアの論調ではなく世論調査の数字で実際の見通しを予測することが肝要です。筆者は5月段階で「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由という記事を書きました。

残念ながらトランプ氏と共和党の関係は大人の関係を築くことができず、トランプ氏と共和党主流派は仲たがいする形になりました(ヒラリーの健康問題は炸裂しましたが・・・)が、それでもトランプVSヒラリーの状況は五分五分の状況となっています。

今回は数字と情勢から読み取ることができるトランプ氏が勝利できる5つの要素についてまとめました。米国大統領選挙は依然として伯仲した争いが続いており、読者の皆様にも冷静な判断を求めたいものと思います。

(1)トランプVSヒラリーの世論調査は第3回討論会後に縮小傾向を見せている

トランプVSヒラリーの支持率差は一部の世論調査結果を除いて第3回討論会後に縮小傾向を見せています。

つまり、大方のメディアの評価に反して有権者による第3回討論会の評価はトランプ優勢であったと考えることができます。最新の世論調査では一部を除いて約5%以内の支持率差の範囲に留まっており、調査によっては互角または1%程度の差、つまり両者の支持率差はほとんど無いとするデータも存在しています。

トランプ氏は討論会で共和党保守派の支持者に効果的なアピールを行ったため、女性問題で離反しつつあった共和党保守派系を自陣営に繋ぎとめることに成功しています。一方、共和党の30%程度である主流派支持者がトランプ陣営を離反してヒラリーに流れている状態です。

離反した共和党支持層がトランプ支持に転ぶことは困難かもしれませんが、実際の投票段階でこれらの層が投票棄権に転んだ場合、ヒラリーへの投票が減少して相対的にトランプ氏が浮上する状況となるでしょう。

(2)大統領選挙の勝敗を決める接戦州ではトランプ・ヒラリーの支持率は拮抗している

米国の大統領選挙の勝敗は接戦州とされている州の投票結果で決まります。各州に割り振られた選挙人を勝者が総取りできる制度となっており、接戦州以外は既に共和党勝利・民主党勝利がほぼ確定的な状況となっています。

トランプ氏は接戦州のうちオハイオ州・アイオワ州で優位な状況にあり、最新のブルームバーグによる世論調査ではフロリダ州でもヒラリーの支持率を上回りました。

Trump Has 2-Point Edge in Bloomberg Politics Poll of Florida

全米支持率でも支持率差が再び縮まりつつある中で、接戦州では両者の支持率が更に拮抗または逆転した数字が出てくることになるでしょう。

(3)トランプは共和党主流派と縁を切ったことで接戦州の勝敗に集中できる

トランプ氏の共和党主流派との決別は選挙戦略上は極めてマイナスに働くものとして捉えることが妥当です。実際に共和党主流派と同傾向を持つ比較的リベラルな傾向を持つ共和党員からの支持は失われています。

しかし、物事には負の側面もあれば良い側面もあります。

共和党主流派との決別はトランプ氏が「連邦議会選挙」を気にせずに「大統領選挙を決める接戦州のみ」に全力を注ぐことができることを意味します。ヒラリー陣営が民主党の連邦議員候補者らに配慮して全米的なキャンペーンを実行する必要があるのに比べて、トランプ陣営は大統領選挙における自分達の勝敗のみを意識したキャンペーンが可能です。

トランプ氏は全米支持率でヒラリーに負けたとしても接戦州の投票結果でヒラリーを逆転することができれば大統領選挙に勝利することができます。

たしかに、トランプ陣営が上記の戦略を実行し続けたことで、ヒラリー陣営の全米的なキャンペーンによってテキサス州などの共和党の金城湯池が攻め落とされた場合、トランプ氏は歴史的な大敗を帰することになる可能性もあります。

しかし、大統領選挙の慣習通りにレッドステイツ(共和党優位の州)でトランプ氏が勝利することになれば、トランプ陣営の接戦州に特化する戦略を成功を収めることになるでしょう。トランプ陣営にとっては状況を有利に活用して一か八かの博打を打つことが可能な状況が生まれていると言えます。

(4)ヒラリー支持者は若年世代が多く実際の投票率が低い可能性がある

ヒラリー支持者はトランプ支持者よりも若年層が相対的に多い状況となっています。

Clinton Vs. Trump: IBD/TIPP Presidential Election Tracking Poll

そして、米国大統領選挙においても若年層の投票率は低い傾向があるため、表面上のヒラリーVSトランプの数字が拮抗していたとしても、実際のヒラリー陣営の支持率から若年層の支持率を割り引いて考えることが妥当です。

英国のBrexitの国民投票時にも若年層の相対的な投票率の低さによって事実上の決着がついたこともあり、米国の大統領選挙においても若年層の投票率は大きな勝敗を決めるファクターとなるでしょう。

(5)消極的な選択肢であるヒラリー支持は第三極候補者に流れる可能性がある
 
ヒラリーは予備選挙・本選挙を通じて「何故自らが大統領になるのか?」ということを有権者に十分にアピールしてきませんでした。ヒラリーは常に「消去法としてのヒラリー」でしかなく、米国の有権者は彼女を積極的に大統領に押し上げる理由がありません。彼女は現在もせいぜい「トランプを大統領にしてはいけない」という程度の消極的支持を得ているに過ぎません。

ヒラリー支持者の票は若者が多いこと・熱心な支持者ではないことから、流石にトランプに流れることはないものの、ジョンソンやステインらの第三極候補者に流れる可能性があります。エスタブリッシュメントらに配慮して無意味なポリティカルコレクトネスに基づくセリフを繰り返し、大統領候補者として自らの言葉を失った結果ということが言えるでしょう。

ヒラリーに比べてトランプ氏は「何故トランプ氏なのか」ということについて、「アメリカを再び偉大にする」というキャッチフレーズとともに、経営者経験があるアウトサイダーとしてのメッセージを有権者に提示し続けました。そのため、トランプ支持者は全くの政治素人が多いものの、熱心な支持者としてメディアの異常なバッシング下でも高い士気を保ち続けています。

一例を挙げると、2016年の共和党予備選挙は2012年時よりも圧倒的に多くの米国民が参加しています。2012年時の参加者総数は約1860万人でしたが、今回の予備選挙では3100万人を超えています。民主党の予備選挙の参加人数が2008年のオバマVSヒラリーのデットヒート時よりも減少している点とは対照的な状況です。


以上のように、トランプVSヒラリーの支持率差は縮小しつつあり、特に接戦州では逆転している数字も存在しており、トランプ陣営が接戦州に戦力を集中する中で、ヒラリー支持者の若者が投票に行かないか・第三極候補者に投票することによって、トランプ氏がヒラリーに逆転できる可能性が残されています。

これらはメディア・有識者によるイメージ操作ではなく世論調査の数字に基づく分析結果です。2016年の米国大統領選挙は未曽有の大接戦になっています。そして、米国にエスタブリッシュメントを葬り去るアウトサイダーの大統領が誕生する日が現実になる日が近付きつつあるのです。



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2016年09月13日

そろそろトランプ大統領誕生を真剣に考えたら?

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ヒラリー・クリントンの健康問題を一貫して指摘してきたが・・・

筆者は予備選挙におけるトランプ勝利を予備選開始段階で予測し、予備選挙終了後はヒラリー・クリントンの健康問題が選挙焦点になる旨を明言してきました。

トランプがヒラリー・クリントンに勝つ5つの理由
http://agora-web.jp/archives/2019010.html

その後、米国大統領選挙に関する報道についてコメントすることは暫く静観してきましたが、相も変わらずトランプへのバッシングとヒラリー擁護が繰り返されるメディアと識者の解説に辟易していました。

たしかに、ムスリムの米国兵士の両親に対するトランプ氏の批判が行われたときの一時的な支持率の落ち込みは心配ではありましたが、それ以外の時の世論調査の数字はトランプ・ヒラリーはほぼ拮抗している状態が続いてきました。

大統領選挙に関する世論調査はこちら(接戦州はほぼ互角)
http://www.realclearpolitics.com/epolls/latest_polls/

現在も接戦州ではほぼ互角の戦いが展開されており、ヒラリー・クリントンの健康問題がクローズアップされていくことで、トランプの優勢が確立することになるのではないかと予測しております。

ヒラリー・クリントンの健康問題発生を予め想定していたトランプ陣営

そもそもトランプ氏はヒラリー・クリントンとの対決の中で健康問題が焦点になるということを予測していたように思われます。それは昨年の予備選挙の途中段階で共和党内で圧倒的な優位を確立した際に早々に自らの健康診断書を提出しています。

ドナルド・トランプ共和党予備選勝利宣言としての「健康診断書」
http://yuyawatase.blog.jp/archives/667277.html

その後、共和党予備選挙でテッド・クルーズにやや苦戦したことから、この一手は注目されることがありませんでしたが、対ヒラリーの観点から大統領選挙序盤の好手が利いていく形になることでしょう。

トランプ陣営はミスを犯すこともあるものの、中核的なメッセージ発信に関しては総じて成功しており、現在も米国民の約半数から厚い支持を得ている事実にもう少し注目しても良いと思います。

トランプが孤立しているかのような印象は完全な誤りであり、トランプ陣営の言動は確実に米国民の心を捉えるものになっています。

ヒラリー有利という根拠薄弱な主張を妄信せず、トランプ大統領誕生を真剣に捉えるべき

メディアや識者と呼ばれる人々が流す情報は「ヒラリー・クリントン大統領誕生は既定路線」という演出が行われていますが、現実の世論調査の数字はそれらを反映したものになっていません。むしろ、それは彼らの願望を反映しただけのミスリードであるとすら言っても良いでしょう。

現実はトランプ氏とヒラリー・クリントンどちらになってもおかしくない状況です。そして、ヒラリー・クリントンの健康問題が取り上げられていく場合、今後はトランプ優勢に形勢が傾いていくことになるでしょう。9.11の追悼式典で体調不良を起こしたことの印象は最悪です。

既存のメディアと識者が垂れ流す情報はそれなりに聞き流して、賢明な読者諸氏には大統領選挙の動向については上述の世論調査サイトの数字を参考にして頂ければ幸いです。

筆者が昨年から指摘し続けているように、トランプ大統領誕生を見据えた議論を真面目に行うべきであり、これ以上バカげたトランプ・バッシングに日本の世論が付き合うことが無いようにしてほしいものです。

そろそろ筆者の主張を信じてもらっても良いのではないかと思います(笑)

プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く
アンソニー プラトカニス
誠信書房
1998-11-01


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2016年05月07日

数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは

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トランプの予備選挙勝利を予測することができない理由は「数字」を見ないから

さて、筆者は前回の記事ではトランプ氏がヒラリーに勝てる定性的な根拠を示しました。

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由

しかし、筆者が「トランプ勝つかもよ?」と述べても、メディアや知識人などの既存の権威を信じる頑迷な人たちはクリントン勝利を漠然と信じていることでしょう。

でも、よく考えてみてください。みなさんが信じているメディアや知識人はトランプの予備選挙勝利を何ら予測することができなかった人たちです。なぜ、彼らは「専門家」であるにも関わらず予測を外してしまったのでしょうか?

その理由は簡単です。なぜなら、彼ら自身が既存の思い込みから抜け出ることができず、数字的な根拠もなく思い込みを述べていたからに他ならないからです。昨年中のテレビの大統領選挙の解説などで「ブッシュが本命」って何度も聞きましたよね?今となっては公共の電波で根拠が何もない素人以下の見解が垂れ流されていたわけです。

また、大統領選挙について解説する有識者らのトランプ氏を批判することを目的とした「分析の体裁を取った罵倒」に何の意味があるのか、今でもさっぱり理解できません。そこにあるのは知性ではなく冷笑・嘲りなどの知的傲慢そのものだと思います。

そこで、今回はトランプ氏がヒラリーに勝てる根拠を数字で示していくことで、メディアと有識者の皆さんによる米国政治に対するミスリードから読者の皆さんの意識を修正していきます。

トランプがヒラリーに勝てることは数字で予測することができる

アメリカ大統領選挙では各州に割り当てられた選挙人団の過半数を獲得することで勝利することができます。全部で538人の選挙人団が存在しており、そのうち270人以上の選挙人団を確保すればゲーム終了ということになります。

前回のオバマVSロムニーの選挙人獲得数では、オバマ332名とロムニー206名ということで大差でロムニーが敗北しています。実際の得票数はオバマ・約6591万票VSロムニー・約6093万票なので得票割合は極めて競っていましたが、一部を除いて各州勝者総取り方式なので両者の獲得数に大きく差が出た形です。

ロムニーは共和党内では必ずしも良く思われていないモルモン教の信者であり、人気が特別高かったわけでもないので、今回の分析ではトランプ氏の最低獲得選挙人数を基礎票としてカウントするものとします。

ロムニーの選挙人獲得数は206名なので、トランプ氏の獲得選挙人数が過半数の270人に達するためにはトランプ氏は幾つの州で追加の勝利をする必要があるかを考えていきます。

まず、オバマに取られていた選挙区で共和党が取り戻す可能性が高い州は、

・オハイオ州(ケーシックの地盤)18人
・ウィンスコンシン州(スコットウォーカーの地盤)10人

だと推測されます。これで206+28人=234人です

ケーシック氏は大統領候補者になった場合ヒラリーに勝てるという世論調査結果があり、彼が副大統領または要職で迎え入れられた場合、同州での勝利は比較的手堅いものになるでしょう。ウィンスコンシン州は最近の大統領選挙では民主党支持層が厚い状況ですが、予備選挙にも出馬していたスコットウォーカー氏が州知事であり、なおかつ最近では上下両院選挙でも共和党が優勢な状況となっています。

続いて、他のスイングステート(共和・民主の勝敗が入れ替わる州)の状況を見ていきます。それらの州のうち、現在、共和党知事在職&勝率がそれなりに高い州は、

・フロリダ州29人(トランプ予備選圧勝
・ネバダ州6人(トランプ予備選圧勝)
・アイオワ州6人(トランプ僅差負)
・ニューメキシコ州5人(5月7日現在・予備選未実施)

ということになります。これらを合計すると46名になるため、この時点でトランプ氏の獲得選挙人数は280名に到達します。その上で、通常運転では民主党有利&共和党知事がいる下記の州で万が一勝利できた場合、

・ミシガン州16人
・ニュージャージー州14人
・メリーランド州10人
・メイン州4人
 
がトランプ氏の獲得選挙人数に加わることになります。これに加えて、民主党知事が存在する、ペンシルベニア州20名、コロラド州9名、ニューハンプシャー州4人などのスイングステートでの勝ち負けを考慮に入れるなら、トランプ氏が十分に大統領選挙に勝利する可能性があると言えるでしょう。

共和党が渋々トランプ氏名を認めた理由は「予備選挙参加者数の激増」にある

上記のように、大統領選挙のルールを概観した場合、トランプ氏が大統領選挙に勝利できる可能性が当たり前に存在することが理解できたと思います。その上で、読者の疑問はそれらの諸州でトランプ氏は勝利することができるのか?ということに尽きるでしょう。

その疑問に回答する数的根拠は「共和党予備選挙参加者数の激増」を取り上げたいと思います。

実は、2016年の共和党予備選挙は2012年時よりも圧倒的に多くの米国民が参加しています。2012年時の参加者総数は18,973,624名でしたが、今回は5月3日のインディアナ州での予備選挙が終わった段階で参加者総数26,639,737名に激増している状態となっています。理由は言うまでも無く、トランプ氏が新たな共和党支持者を発掘したからです。

上述の通り、米国大統領選挙に当選するための人数は6500~7000万人程度です。したがって、トランプ氏の加入によって共和党予備選挙参加者及び見込み残だけで約45~50%近い人々が今回の大統領選挙で共和党に一定のコミットを行ったことになります。

たとえば、スイングステートであるフロリダ州では、2016年の大統領選挙本選ではオバマ424万票、ロムニー416万票の僅差で共和党は敗北することになりました。

そして、今回のフロリダ州の共和党予備選挙では2012年・167万人から2016年・236万人まで増加しています。一方、民主党は2008年・175万人⇒2016年・171万人と予備選挙参加人数が減っている状況です。共和党は盛り上がっているけれども民主党はそんなでもない、ということを数字が語っています。

前回の大統領選挙本選でオバマ・ロムニーの差が約8万票しかなかったことを考えると、トランプ氏の加入による共和党予備選挙による支持者掘り起し効果が大統領選挙本選に与える影響の大きさが分かりますよね。

もちろんトランプ氏を毛嫌いする層からの得票が逃げ出すことも予想されますが、それを補って余りある数字をトランプ氏が叩き出している状況が現実なのです。

トランプ氏が負けるとする人々はトランプ加入による得票増よりも忌避票が多いと考えています。しかし、トランプ氏による得票増は数字で証明されていますが、トランプ氏に忌避票が実際にどの程度になるかは分からない状況があります。

共和党指導部は当然に上記の状況を理解しているため、トランプ氏を無下に共和党から追い出すこともでき無い状況です。上記の分析から、既存の共和党支持層が我慢してトランプ氏に投票することで共和党の勝利は極めて濃厚だということが言えるでしょう。

日本の米国政治に関する分析は「木を見て森を見ず」の典型だ

筆者はトランプ氏の発言などに一喜一憂するメディアや知識人の様子は、まさに「木を見て森を見ず」の典型みたいなものだと思っています。

米国要人の重要なコメントも価値の低いコメントもごちゃ混ぜ、なおかつ数字もろくに見ない米国通とされるコメンテーターに無根拠な見解を語らせるテレビや新聞の酷さは見るに耐えかねるものがあります。

冒頭にも申し上げた通り、予備選挙で「ブッシュが本命」という誤った無根拠な情報を述べていた人々は何の責任も取らず、いまだに米国政治の専門家然としています。一体何なんでしょうか。

少なくとも今回の大統領選挙がトランプVSヒラリーになった場合、トランプ氏が勝てる可能性は極めて高い、ということは数字で証明できることです。ヒラリー勝利の根拠として援用できる数字は、現在の全米支持率のマッチアップでヒラリーがトランプ氏よりも優位に立っていることのみだと思います。(それはそれで有力な証拠ではありますが。)

以上の通り、今回の記事では数字でトランプ氏がヒラリーに勝てる可能性は十分にあることを論証してきました。トランプ氏は既に共和党の指名候補になることが確定した状況においては、候補者個人のパーソナリティーはもちろん、共和党・民主党の党勢の推移についても注目していくべきでしょう。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2016年04月17日

世界で最も質素な大統領・ムヒカ氏が支持される本当の理由

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ホセ・ムヒカ大統領がウルグアイで人気な本当の理由とは・・・

世界で最も質素な大統領として有名なホセ・ムヒカ大統領。もちろん、筆者もホセ・ムヒカ大統領の政治姿勢は一つの主張として理解できるところもあると思います。

しかし、日本で行われた「ホセ・ムヒカ大統領の言うことはなんでも素晴らしい」キャンペーンは思考停止の典型であり、ウルグアイでホセ・ムヒカ大統領が何故人気なのか、の一側面しか取り上げていないように感じます。

ウルグアイでホセ・ムヒカ大統領が人気の理由は、彼の在任期間中の経済実績のそれなりのパフォーマンスによるものであり、ウルグアイ国民が支持している理由は彼の発言内容だけではないのです。

リーマンショックからの景気の回復で好パフォーマンスだった在任期間

ホセ・ムヒカ大統領の経済成長を否定する発言からは想像できないほどに、ウルグアイは同大統領の在任期間中に経済成長の果実を得ることができました。

同大統領の在任期間は2010年3月1日~2015年2月末なので、彼の在任期間中は世界経済の回復に合わせた南米の途上国らしい経済成長率を記録しています。

つまり、ホセ・ムヒカ大統領の発言とは「うちの国は経済成長しちゃって仕方がない。でも、そこには幸せがないのだ」という無いものねだりの発言です。どこかの国ように「経済が第一」と言いながら、マイナス成長を記録している残念な国家の諦めの念とは真逆の趣旨であることを理解するべきです。

南米においてはウルグアイは着実に成長してきた歴史があり、一人当たりのGDPはアルゼンチンらを抜かして第3位の高さを誇っています。(2014年)そして、現在、同国はまさに三丁目の夕陽が失われるプロセスの中にあるわけで、経済改革が進まず低迷する日本が「これからは成熟社会だ」という敗戦の弁を述べるのとはわけが違います。

ウルグアイ経済成長率

ただし、大統領の在任時の経済パフォーマンスは「運が良かっただけ」かもしれない

それでも、ホセ・ムヒカ大統領は「経済成長をさせた上に、本人も清廉で立派な人物だ」という人もいることでしょう。しかし、そういう人は上記の経済成長率の数字を良く見てほしいと思います。

ホセ・ムヒカ大統領が就任した2010年から2015年、ウルグアイ経済は2014年・2015年には5%を切る状況となっています。これはリーマンショックがあった2009年未満の数字です。一応数%のプラス成長ですが、近年のウルグアイの経済成長率からみると疑問符が付く数字です。

そして、政権についた直後の経済パフォーマンスは、タイムラグの関係から前政権の経済政策の結果が反映されるものであり、彼の政権後期及び退任直後の数字こそが彼の評価に値するものだと思います。

ホセ・ムヒカ大統領の闘争の人生に敬意は表するものの、やはり経済運営者としてはイマイチな感じがしますね。したがって、彼がもう1期大統領を務めていたらその評価は大きく変わったのではないかと推測します。

良い人なんだろうなーと思うものの、日本国内の適当な報道を見ていると、なんだかなーと思わざるを得ないものがありました。偶像はやはり偶像に過ぎず、我々は現実の日本と戦っていく必要があると思います。



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2016年03月27日

トランプ外交で日米安保・TPPはどうなるのか?

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ドナルド・トランプ氏が大統領になる可能性が出てきた途端に・・・

筆者は昨年からドナルド・トランプ氏の共和党予備選挙優位を一貫して主張してきましたが、最近になってようやくトランプ大統領の可能性を認める日本人有識者の言説が出てくるようになりました。

しかし、大半の有識者は「トランプが大統領になる!」とは、コレッポチも想定していなかった人ばかりであり、極めてその場しのぎのいい加減な論考が目立っています。特に、日米関係についての外交方針に関するものなど、トランプ氏の発言に振り回されているだけでモンロー主義がどうのこうの、という解説しか世の中にはないわけです。

そこで、本稿では、ドナルド・トランプ氏が大統領になった場合の東アジア・東南アジア政策についての分析を行ってみたいと思います。在日米軍が撤退するとか、TPPから撤退するとか、などのトランプ氏の発言の真意に迫りたいと思います。

ジャパン・ハンドラーズとドナルド・トランプ氏の関係について

米国側には知日派という対日政策の専門家(ジャパン・ハンドラーズ)が存在しています。日本のニュースなどでも時折目にすることがあるリチャード・アーミテージ氏やマイケル・グリーン氏などがその代表的なメンバーです。

日本の親米派の国会議員が渡米する際には、これらのジャパン・ハンドラーズに詣でることが通例です。(私が以前に米国を訪れた際もたまたま渡米中の国会議員たちがジャパン・ハンドラーズの私邸で飯を食べに行ってました。)これらのネットワークは日本の与野党を超えて存在しており、親米派の国会議員とはジャパンハンドラーズと仲が良い国会議員であると言い換えても良いでしょう。

実は、このジャパン・ハンドラーズは対トランプ氏についての立場を鮮明にしていません。トランプ氏の外交・安保姿勢を外交安全保障の専門家が連名で批判したことは有名ですが、その中に上記のジャパン・ハンドラーズは名前を連ねることがありませんでした。(最終的には外部圧力によって同連名に加わる可能性もありますが・・・)

つまり、ジャパン・ハンドラーズはトランプ大統領誕生に備えて政権でのポスト獲得のために態度を保留している、またはトランプ氏に対日政策について進言するチャンスを待っていると言えるでしょう。

日米安保とTPPは「偉大な米国」(ただし、非覇権国)にとって都合が悪い政策

トランプ氏は「交渉の達人」と呼ばれています。その観点から見ると、ドナルド・トランプ氏からは日米同盟とTPPは極めて不合理な条約として目に映ることでしょう。なぜなら、これらの条約は米国の最大の切り札である軍事的なコミットメントを明示的・暗黙的に行うものだからです。

東アジアからの米国への民間投資額の大半及び米国債の購入の約35%は日本によるものであり、新たに構築されるTPPは成長著しいアジア太平洋地域の果実を日米で分け合うことを合意するものです。そして、これらの果実を得ることの前提として、米国は同地域に軍事的なコミットメントを行っている状況があります。

特にオバマ大統領はTPPの安全保障上の重要性について、昨年ホワイトハウスにキッシンジャーなどの国務長官経験者、元安全保障担当補佐官経験者、米軍トップなどを招集して大いに語ったと言われています。つまり、TPPは単なる経済条約ではなく安全保障のための側面を強く持った条約なのです。

しかし、本来、米国にとっては虎の子の軍事的なコミットメントをさせられることは極めて不本意なはずです。なぜなら、米国が一定の権益を持つことで軍事的コミットメントを実質的に保証した場合、東アジア・東南アジア諸国は「米国が離反する可能性を気にせず、競争相手である中国との関係を深めることができる」からです。

現在、日本は米国の軍事的なコミットメントにフリーライドする形で、中国からの軍事的・政治的な圧力を撥ね退けつつ、自らの経済的な利益を追求することができています。TPPはその領域をアジア太平洋全域に実質的に拡大するものと言えるでしょう。

世界中で最大限の影響力を維持しようという覇権国であれば上記の政策は価値があるものと思われます。しかし、トランプ氏が目指そうとしている「偉大な米国」は明らかに従来までの覇権国とは異なるものです。

米国にとって東アジア・東南アジアの優先順位は極めて低く、同地域の国々に軍事的にフリーライドされ続けることはコストばかりで益が無いと判断するのも論理的な判断と言えるでしょう。

米国からの武器購入圧力が高まることが予想される日本の脆弱な立場

上記のような状況の中で、トランプ大統領の下で日本に求めることは「米国製兵器の大量購入」ということになるかと思います。

現在の安倍政権下でも円安にも関わらず高価な米国製兵器を購入するカモそのものですが、トランプ政権下では安全保障面でのコミットメントの対価として従来以上に商売のターゲットになることは間違いないでしょう。そして、対日政策の担当者は引き続きジャパン・ハンドラーズが踏襲するということになります。

そもそもジャパン・ハンドラーズと呼ばれている人々は、米国にとっては数ある外交相手国の一つの担当者に過ぎず、最近の米国政権の中で主導的な立場にあるとは思えません。日本から見た場合の交渉窓口がそこしかなかったので、外交力が欠落した日本の官僚・国会議員が日参しているに過ぎないのです。

そのため、トランプ大統領の下で、ジャパン・ハンドラーズが対中政策を含めた東アジア政策などを実行できるわけもなく、日米間に横たわれる従来の利権の拡充に力を入れるのが関の山ではないかと思います。

むしろ、個人的にはジャパン・ハンドラーズには米国内でもう少し力を持ってほしいと思いますが、日本自体の経済力・影響力が急速に凋落していく現状では難しいことなのかもしれません。

したがって、日米安保は現状の延長線上となることが予測されます。

そして、トランプ大統領の下で日米同盟は維持するけれども、基地のための費用だけでなく軍事的・非軍事的な高額商品・サービスを米国側から購入させられることになるでしょう。さらに、ディールが不調に終われば何時でも中国カードで揺さぶりをかけられるようになる可能性すら考慮すべきだと思います。

TPPについては米国の国内批准がうまくいかない可能性も・・・

そもそもTPPとは民主党のオバマ政権下のレガシーに過ぎず、オバマ政権のアジア回帰を象徴する政策として位置付けられてきたものです。トランプ大統領がTPPにこだわる政治的な理由は特に無いため、今までの経緯を無視すればTPPから米国が抜ける可能性すらあります。

TPPは日米安保と違って現状を変更する条約です。何事でも現状を変更することにはエネルギーが必要です。日本国内でもTPPに対する反対運動が存在しているように、米国にもTPPに対する反対運動が存在しています。両国の中に渦巻く利権構造が現状変更を阻止する方向で働き続けているのです。そして、政治的な力学としては何もしない方が楽なのです。

そして、上記の通り、安全保障としての側面を持つTPPは既に戦争で疲弊した米国にとっては看過しがたい負担となることは明白です。アジア回帰を訴えてきたオバマ政権がその実ほとんどアジア太平洋地域にはコミットできなかったことからも、米国の軍事的な限界が如実に表れていると言えるでしょう。

その上で、トランプ氏はTPPから脱退するとは口にしていませんが、TPPについては激しく交渉内容について批判を行っています。トランプ氏の政治的な発言は「有権者ではない人々(≒自分に投票しない層)を攻撃する」ことに特徴があり、TPP参加国の国民は有権者ではないのでトランプ政権下での政権運営上は無視できます。

TPPは今年2月に参加国による署名式が行われましたが、米国内において実質的な国内批准の議会審議が始まる時期は来年の新大統領就任後となるでしょう。2016年段階でもTPPに関する影響評価などが公開されることになるため、同条約に関する議論は続くことになると思いますが、その重要性に鑑みてレームダック化するオバマ大統領の任期中に国内批准が決まるとは考え難いです。

したがって、同条約は日米のどちらかが脱落すると実質的に発効ができない内容であるため、TPPについては破棄される可能性が相当程度あると看做すべきです。

日本外交は「カモ」から「白鳥」になることができるのか?

ここまで長い文章を読んで頂いた方々は、トランプ大統領と対峙した場合、従来までの日米関係の思考の延長線上では「カモ」になることがお分かり頂けたと思います。

従来まで日本をカモにし続けてきた人々(ジャパン・ハンドラーズ)が今まで以上にカモりに来るのがトランプ政権であり、ジャパン・ハンドラーズに頭が上がらない既存の親米派国会議員に対米外交を任せていると、一気に身ぐるみ剥がされて太平洋を漂流する島国になる姿が目に浮かびます。

そして、アジア太平洋地域における日米共同権益のシンボルであるTPPが危機に瀕することで、日本は中国・米国について戦前のように政治的に挟まれた状況に回帰することになるでしょう。

TPPとは満鉄の共同経営を日米で行うことを持ちかけたハリマン提案のようなものであり、同提案を断った後の日本が戦前に辿った運命は皆さんご承知の通りだと思います。万が一TPPから米国が抜けてしまった場合、中長期的にアジア太平洋地域の安全保障バランスの不安定化は避けられないものになるでしょう。

日本人は従来までの対米外交チャネル以外の交渉チャネルを持ち、日米中の衝突の危機が高まる中で本気で生き残るための道を模索する段階がきています。外国に金をばら撒き続けて人気取りを行う呑気な外交をやっている場合ではないのです。

日本人の政治的な知力が問われる正念場であり、カモが白鳥になれるかどうか、もしくは、カモが丸焼きになるかどうか、がかかっています。トランプ大統領とは「日本人の実力」が問われる大統領なのです。

ドナルド・トランプ 300の言葉
ドナルド・トランプ
2016-03-08







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2016年02月07日

ブルームバーグの大統領選挙立候補検討の背景

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何故、ブルームバーグの大統領選挙立候補は検討されているのか

億万長者・メディア社主であり、3期の元ニューヨーク市長としての実績を誇るブルームバーグ氏。政治遍歴としては、元々は民主党支持者でしたが、市長選挙出馬時に共和党から立候補、市長退任後には無所属に戻っています。

政策的な方向としては、社会政策は銃規制強化・中絶賛成などリベラル傾向ですが、経済政策は財政均衡路線で保守的傾向を持つハイブリッド型の政治家です。イデオロギー的な人物というよりは、根っからの経営者タイプの人物と言えるかもしれません。

そのブルームバーグ氏の大統領選挙出馬、それも「無所属」での立候補が取り沙汰される状況となっています。今回は、その背景にある米国の政治構造について分析していきます。

共和党・民主党内の勢力争いを知ることで「ブルームバーグ」の意味が分かる

ブルームバーグ氏の立候補検討に至る流れを理解するためには、共和党・民主党内部の勢力構造という背景事情について知る必要があります。両党の党内闘争の現状をざっくりとした構図で示すと下記の通りとなります。

〇共和党  共和党指導部(主流派(ルビオ)VS保守派(クルーズ))VS共和党不満層(トランプ)
〇民主党  民主党指導部(ヒラリー)VS民主党不満層(サンダース)

共和党は指導部内で主流派と保守派が対立しており、更にその両者とも対立する不満層を吸収したトランプ氏が存在している三国志状態になっています。民主党はゴリゴリの既得権者であるヒラリー女史に対してサンダース氏が不満層を吸収して党内を2分する戦いを展開しています。

「ブルームバーグ」は共和党主流派と民主党指導部の連合が擁立する隠し玉

実は「ブルームバーグ」は共和党主流派と民主党指導部の連合が擁立する隠し玉と言われています。

選挙戦の様相は、共和党は初戦アイオワでは保守派のクルーズ氏が勝利、次戦のニューハンプシャー州ではトランプ氏が優勢な状況があります。ルビオ氏が追い上げているものの、先行する二人を差し切れるか否かは予断を許さない状況です。民主党は政界・財界で圧倒的優勢を築いているヒラリー女史がサンダース氏の猛追を受けて、あわや逆転の芽さえ出てきている状態です。

その結果として、共和党・民主党内で常に勝者であり続けたエスタブリッシュメント(共和党主流派・民主党指導部)が敗北する可能性が生じています。そして、この予備選挙におけるエスタブリッシュメント敗北のシナリオこそがブルームバーグ擁立論につながっているのです。

共和党主流派の「トランプ氏だけでなく保守派のクルーズ氏も嫌」、民主党指導部の「自分たちの利権を壊すサンダースは論外」という両者の思惑が一致した「エスタブリッシュメントが待望する第三の候補者」がブルームバーグ氏ということになります。

ニューハンプシャー州予備選挙の結果によってリアルな選択肢に・・・

上記のような構図を前提とした場合、ニューハンプシャー州の予備選挙の結果は極めて重要な意味を持つことになります。ブルームバーグ氏の擁立に向けた動きが本格化する条件を勝手に推測すると・・・

〇共和党 
トランプ氏が10ポイント以上差をつけてルビオ氏に勝利、クルーズ氏も一定の得票数を取得し、共和党内予備選挙の1位・2位構図はトランプ&クルーズという図式が定着すること

〇民主党
ヒラリー女史がサンダース氏に決定的な敗北をすることで、ニューハンプシャーだけでなく全米の支持率でもサンダース氏が逆転または両者の差が僅差になること(既に2月7日発表のキニピアック大学の調査で全米での両者の支持率差は2%しかない)

という感じでしょうか。

なお、筆者はクルーズVSサンダースの構図になった場合でもブルームバーグ氏の出馬は十分に想定されるものと思います。保守派の候補者であるクルーズ氏が共和党主流派から受け入れられるかは未知数だからです。

有識者らはトランプVSサンダースの構図になった場合にブルームバーグ氏の立候補の可能性があると述べていますが、表面的なトランプ氏とサンダース氏の印象論だけではなく、共和・民主両党の背景事情にまで踏み込んだ考察を行うことが重要です。

ちなみに、エスタブリッシュメントにとってはルビオ氏やヒラリー女史も彼らの選択肢の一つに過ぎず、それがダメならジェブ・ブッシュ氏からルビオ氏にスイッチしたように支持先を取り換えるというだけの話に過ぎないものと思います。

米国民主主義の在り方に挑戦する「ブルームバーグ」という選択肢

良いか悪いかは別として、ブルームバーグ氏の立候補は、米国エスタブリッシュメントによる米国民主主義の在り方への挑戦、といっても良いかもしれません。

エスタブリッシュメントが第三の候補者の擁立を行う理由は、彼らが米国の特徴である多様で力強いグラスルーツ(草の根)による民主主義への疑念を持っているからです。

エスタブリッシュメントは共和・民主両党員の予備選挙の手続きを通じて左右両極の候補者が選ばれることを望んでいません。ブルームバーグという選択肢の提示は「エスタブリッシュメントが推している理性的な候補者が選ばれるべきだ」という彼らの強い意志表明と言えるでしょう。

今回の大統領選挙を通じて、トランプ・クルーズ(共和党保守派・不満層)VSサンダース(民主党不満層)VSエスタブリッシュメント、という米国が抱える真の対立構造が表面化しつつあります。

<過去記事>*トランプ・サンダース台頭、ブッシュ・カーソン失速、マルコルビオ躍進を予測解説
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)
アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?(1月22日)
ドナルド・トランプがFOXの討論会を欠席した理由(1月30日)
日本の政治にも「和製のテッド・クルーズ」の誕生を!(1月31日)
FiveThirtyEight:米国の政界有力者が誰を支持しているのか(2月1日)
アイオワ州党員集会・テッド・クルーズ勝利、今後の展開は・・・(2月2日)
トランプVSルビオ、ニューハンプシャー州予備選挙は佳境に(2月6日)

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19

 


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2015年12月24日

キニピアック大学世論調査、日本メディアのワシントン病を斬る!

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日本メディアの「ワシントン病」は深刻、世論調査の分析結果に異常な偏りが見られる

NHKが12月22日に発表したキニピアック大学の世論調査で、トランプ氏が大統領になった場合に「恥ずかしいと思う人」の割合が50%超えた、という報道を行いました。

トランプ氏が大統領は「恥ずかしい」 調査で半数に(NHKワシントン支局)

これだけ見ていると、トランプ氏が共和党大統領候補になることが問題であり、なおかつ民主党の大統領候補者にも勝てないかのような印象を与えます。しかし、後述の通り、この報道はNHKによる完全な印象操作でしかありません。

そもそも、22日のキニピアック大学の世論調査は予備選挙の数字でトランプ28%、クルーズ24%で1位・2位の差が4%として報告されていますが、最新のCNNの調査ではトランプ39%、クルーズ18%として21%も差がついています。そして、キニピアックの調査以外はトランプ氏と他候補者に概ね20%以上の差がついているものが大半です。世論調査で信頼度が高い同大学の調査でも鵜呑みにして良い雰囲気ではありません。

そのため、NHKがキニピアック大学の同世論調査結果のみを報道することは極めて不可解であり、どうせワシントンで他メディアが流している同世論調査に関する記事をそのまま垂れ流しているのだろうということが想像されます。(ワシントン政治関係者は反トランプであり、そこからしか情報が取れない「ワシントン病」にかかった日本メディアの報道は少なくとも大統領選挙に関しては信用に値しません)

NHKの報道が疑わしいので実際のキニピアック大学の世論調査結果を読んでみることにした

下記が実際の公表されたキニピアック大学の世論調査結果です。

キニピアック大学世論調査(12月22日公開)

問題の設問は、世論調査結果の一番最後に設定されており、トランプ氏とヒラリーだけに同じ設問が設定されていることが分かります。

トランプ氏 誇らしい23% 恥ずかしい50% どちらでもない24% 無回答3%
ヒラリー氏 誇らしい33% 恥ずかしい35% どちらでもない29% 無回答3%

ということで、トランプ氏については、たしかに50%を超えるものの、ヒラリーも「恥ずかしい」が「誇らしい」を上回っている状況にあるわけです。そのため、トランプ氏のみを殊更取り上げることは強調し過ぎだと思います。

さらに、年代別に見ると、トランプ氏を恥ずかしいと思っている人々は若年世代18-34歳の73%に集中しています。しかし、2012年大統領選挙における投票率、65歳以上72.0%、45〜64歳67.9%、25〜44歳59.5%、18〜29歳45.0%、という数字であり、若年世代の有権者登録(米国は投票権取得は登録制)の低さも際立っています。

つまり、現時点ではNHKが大々的に取り上げた数字「トランプ氏=恥ずかしい50%」は大統領選挙全体の決定的な要素にはなりづらいものと推測されます。また、上記の若年層の民主党支持は圧倒的に高く、同世論調査サンプルを対象に他の共和党候補者(クルーズなど)を同じような世論調査にかけても40%台後半の数字が出てくる可能性が濃厚です。

NHKは大して影響もないような数字を日本国民に重要な数字であるかのように垂れ流しているのであり、NHKの米国大統領選挙に関する分析能力について極めて疑問符がつくと言って良いでしょう。

同世論調査で「本当に重要な数字」は「トランプの予備選挙で優勢維持」を示す数字

「予備選挙の前に自らの現在の支持先が変わることはあるか?」という問いに対して、

トランプ支持者   固まっている63%  変わるかもしれない36% 無回答1%
クルーズ支持者  固まっている36%  変わるかもしれない64%

というものです。1位爆走中のトランプ支持層は極めて強固であるのに対し、2位のクルーズ支持者はイマイチ支持が固まっていない、ということが上記の数字から分かります。そのため、現状のままであれば予備選挙に関してはトランプ氏が伸ばしてくる可能性が高いということが分かるわけです。(実際の他の調査でトランプ氏が2位い以下を大きく突き放しています。)

また、トランプ氏ら共和党候補者とヒラリーら民主党支持者を比べた場合に、民主党候補者が優勢という数字が出ています。しかし、上記に触れたとおり民主党の支持は若年層で極めて高い状況となっており、若年世代の投票率と有権者登録率の関係を考慮すると、同世論調査結果のみから民主党が有利と分析することも困難です。

来年は年明け早々から予備選挙から撤退していく候補者が続出していくことが予測

上記の世論調査結果から導出できる分析は、来年初頭から共和党の予備選挙候補者が撤退していく中で、トランプの支持が一定程度の高水準で推移するということ、テッド・クルーズ氏の支持は他の候補者に流れる可能性が高いこと(おそらくマルコ・ルビオ氏であろうと予測)ということでしょうか。

今後、留学経験者などが増加していく中で、ワシントン支局への腰掛のような形で赴任している人々の付加価値は著しく減少していきます。NHKは公共放送として「ワシントン病」からいい加減に卒業して、情報の出元の影響を受け過ぎずにもう少し客観的な報道ができるようになってほしいものです。

従来までは、米国研究や米国報道は「翻訳ができる」だけで良かったのかもしれませんが、これからは専門性をもって米国の政治動向を分析する時代になるでしょう。日本の国際報道を担う人材の質の向上はますます重要になるものと思います。

当確師
真山 仁
中央公論新社
2015-12-18





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2015年12月19日

ミスリードするメディア、外交危機を招く共和党予備選挙報道

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Photo by Gage Skidmore、Wikimedia Commons


米国関係メディア・研究者関係者はジェブ・ブッシュからマルコ・ルビオに乗り換え中

12月中旬からマルコ・ルビオ氏に注目する言説が日本の中でも増えてきたようです。

トランプ氏を猛追する対中批判の急先鋒、ルビオ候補(JBpress古森義久氏)

元々日本の対米関係のメディア・研究関係の人々は穏健派の代表格であったブッシュ推しでした。私は今年2月に行われた共和党保守派の年次総会であるCPACに出席した段階でブッシュ氏に特別な勢いが無い姿を見ていたため、穏健派からしか情報を取れない人たちのブッシュ推しには一貫してかなり懐疑的でした。

しかし、日本メディアの米国報道は物事を見極める情報を十分に持たないため、上記の人々によって少なくとも2015年7月~8月段階ではブッシュを有力としてトランプは一時的な勢いとみなすような言説が溢れており、現在から見れば的外れな見通しが積み上げられてきました。

日本でマルコ・ルビオ氏に注目する論評が突然現れ始めた背景を推測する

最近、日本でマルコ・ルビオ氏に注目する論評が突然現れ始めた背景には、ウォール街も含めた共和党穏健派がブッシュからマルコ・ルビオ氏に乗り換えたことが影響しています。

日本の米国関係者は、米国共和党保守派から情報を取れないため、穏健派がマルコ・ルビオ氏を推している、という情報が出てから後追いで情報の垂れ流しを始めただけです。つまり、日本メディアは共和党穏健派のお墨付きが出てからでないと特定の大統領候補者を有力候補として扱わないというスタンスであり、米国の政治情勢の分析として一面的な報道が行われる欠陥があります。

実際、私が今年9月にお会いした日本人の研究者は「僕らのコミュニティではブッシュということになっています」と明言していましたが、情報収集・分析能力の低さにあきれ果てるばかりです。

上記の流れに対して、私の感想として「今更日本のメディアは何を言っているのか?」というところです。私自身は2012年段階、つまり前回の大統領選挙からマルコ・ルビオ氏には大統領候補としての逸材として注目してきました。

「共和党の大統領候補者選び、カギはマルコ・ルビオ氏!?」(日経ビジネスオンライン、2012年)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120220/227382/?rt=nocnt

今回のブログを開始してからもマルコ・ルビオ氏は穏健派・保守派の受け皿になるため、極めて有力な候補者として扱ってきています。実際、あたかも最近支持が伸びてきたかのように報道されているマルコ・ルビオ氏は各種世論調査でヒラリーに勝てる候補として米国では「かなり前から」扱われています。

<米国大統領選挙に関する過去記事>
支持率の変化から見た共和党大統領選挙予備選挙(11月6日)
マルコ・ルビオ上院議員、米国共和党予備選挙で注目(11月16日)
ドナルド・トランプの強さの秘密を徹底分析(11月25日)
2016米国共和党予備選挙、トランプ爆走を止めるのは誰か?(12月8日)
何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(12月11日)

ちなみに、私が上記の記事で言及したように12月19日現在の最新の世論調査でもトランプ氏の支持率は落ちていないどころかダントツです。

急ごしらえの取材・分析から共和党の外交政策の方向性を導き出すことは危機を招く


さて、そのような背景から今後マルコ・ルビオ氏への注目が日本における米国大統領選挙報道で増えていくことが予想されます。そして、米国大統領選挙に日本人からの関心を集めるために、マルコ・ルビオ氏は「尖閣諸島は日本領」と明言した唯一の立候補者として持ち上げられて報道されていくことになるでしょう。

実際、マルコ・ルビオ氏の外交方針は共和党の中でも極めてタカ派的であり、中国以外にも中東情勢に関しても共和党内随一の介入主義者です。しかし、現状では元記事にあるような米国の対中関係が大統領選挙の主要な争点になるということは言い過ぎだと思います。(ヒラリーが対中外交で弱みを抱えていることは事実のようですが・・・)

なぜなら、12月15日(米国時間)で行われた直近のCNNの共和党のディベート討論会の主要テーマは安全保障でしたが、共和党の予備選挙全候補者の議論が中東情勢とテロ対策に割かれており、米国では中国問題は完全に忘れ去られている状況だからです。

また、元記事でも使用されているマルコ・ルビオ氏の上記の写真は今年2月に行われた共和党保守派の総会であるCPACの時の写真ですが、同イベントでは対中問題はほとんど話題にはなっていません。(対中問題はCPAC会場で「台頭する中国」という分科会の一つとして取り上げられていたに過ぎません。)実際にCPACに出席していた人間なら共和党内の外交的関心が中東に集中していたことは自明だと思います。

日本の米国関係のメディア・研究者は、安易にマルコ・ルビオ氏の提灯を持とうとして日本人に誤った政策メッセージを送るべきではないと思います。

米国の関心を東アジア・東南アジアに引き止めるだけの努力を行うことが必要

米国では緊迫した中東情勢への関心が非常に高く、東アジア・東南アジアへの関心は相対的にかなり低い状況にあります。そのため、中国の海洋進出を始めとした拡張主義についての対応は、中東情勢の後回しになる可能性が極めて高いでしょう。

マルコ・ルビオ氏は米国の理念を強く主張しつつ中東への積極的な関与を主張しており、外交資源を中東以外の複数方面に振り向けることは現実的に極めて困難な状況になると推測されます。また、他の共和党候補者は中東情勢にすら積極的に介入することを好まない傾向を持つ人々もいます。そのような米国全体の雰囲気みたいなものを日本人は知る必要があるでしょう。

これらの状況を踏まえて、米国の東アジアへのコミットメント維持を望むのであれば、日本が米国の関与を積極的に引き出す試みを自主的に実施していくことが重要です。

日本人は米国人が東アジア、特に対中国という文脈で強い関心を持っているという幻想を抱くべきではありません。それらは日本人の願望から生まれる希望的観測に過ぎず、東アジア・東南アジア、日米同盟のパースペクティブに誤った認識を持つことになります。

今後、米国の関与を引き付けるために何をすべきなのか、日本自体がどのように振舞うべきなのか、米国大統領選挙の情勢を客観的に分析し、的確な対応を実施していくことが望まれます。





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yuyawatase at 17:40|PermalinkComments(0)