外交

2016年12月13日

トランプ外交の「算盤勘定」への正しい対処法

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(国務長官に指名濃厚・レックス・ティラーソン・エクソンモービルCEO)

祭英文・中華民国総統との電話会談は何を意味するのか

12月2日、「トランプ次期大統領が台湾の祭英文氏と電話会談を行った」とTweetしたニュースは東アジアに激震をもたらしました。米国と中国が所与のものと看做していた「一つの中国」の原則を覆すものであり、米国内の保守派だけでなく日本の保守派からも喝采の声が上がりました。

また、トランプ氏は「米国は台湾に何十億ドルもの兵器を売っているが、私は台湾からの祝いの電話を受けてはならないとは興味深い」ともTweetしています。そして、この2つのTweetの中にトランプ政権の外交方針の一端を垣間見ることができます。

米国の保守主義者の考え方である「自由主義」とビジネスマンの考え方である「金銭的利益」、この2つの異なる思考法が絶妙なバランスでブレンドされた外交、これがトランプ政権の外交方針だと看做すべきでしょう。

そして、今後のトランプ外交で何が起きていくのかを理解するためには、トランプ政権内での力関係を注意深く観察する必要があります。

トランプ政権の中で圧倒的なポジションを獲得した保守派・茶会党の面々

トランプ政権は史上最も保守的な政権と呼ぶことができると思います。これは選挙戦において共和党主流派が手を引く中で、保守派がフル回転したことで勝利を掴むことができた論功行賞によるものだと推測されます。

マイク・ペンス副大統領以外の閣僚メンバーとして、ラインス・プリーバス大統領首席補佐官、ジェフ・セッションズ司法長官、ベッツィ・デボス教育長官、マイク・ポンぺオCIA長官、トム・プライス厚生長官、スコット・プルイット環境保護局長官、ベン・カーソン住宅長官などの保守派が推す人々が次々と任命されました。

また、ニッキー・ヘイリー国連大使は予備選挙期間中にトランプ氏の政敵をエンドースし続けたにも関わらず、同ポストを手に入れることに成功しました。彼女は保守派が推す次期大統領または副大統領候補者と目される人物として注目されています。彼女の国連大使就任は、共和党保守派の重鎮であるATRのグローバー・ノーキストが「素晴らしい選択だ。ニッキー・ヘイリーは共和党の未来。トランプは長期戦を行っている。」と喜んでコメントするほど保守派の人々にとって慶事でした。

更にトランプ氏は上記の他にもアンディー・パズダー労働長官やリンダ・マクマホン中小企業局局長などの極めて保守的な主張を持つ企業経営者らを規制撤廃を推進する重要なポジションに就けています。

これらは米国建国の理念(≒道徳)である「自由主義」を体現する人選であり、リベラルな傾向を持つとして保守派から警戒されているトランプ氏にが保守派に対して相当に配慮したものと思われます。

トランプ政権の算盤勘定を担う国務長官、商務長官、財務長官の3人

レックス・ティラーソン国務長官、ウィルバー・ロス商務長官、スティーブン・ムニューチン財務長官の3人はトランプ次期大統領肝入りの人事です。この3人はいずれもビジネスマン出身の人々であり、トランプ氏の算盤勘定を担当する人々だと言えるでしょう。

特に当初名前が挙がっていたボルトン氏やロムニー氏ではなく、ティラーソン氏を国務長官に指名したことはトランプ政権が極めて強いビジネス志向を持った政権であることを示唆しています。また、同時にシェール革命を経て、エネルギーの自立を確立した米国が今後は石油・ガスなどの資源外交の側面を強化していくことを表す象徴的な人事だとも言えるでしょう。

ただし、トランプ人脈からの上記3長官の任命には、米国建国の理念を奉じる共和党内保守派から極めて強い違和感を持たれていることも事実です。ウォール街やグローバル企業が政権と接近することによるクローニーキャピタリズム(縁故資本主義)は共和党保守派が最も嫌うところだからです。両者のパワーバランスの推移は中長期的には政権の不安定要因となる可能性があります。

とはいうものの、当面の間は対外交渉のツールとして冒頭の祭英文氏との電話会談のように保守派が満足するロジックをまぶしながら、トランプ政権内で保守派は米国国内の減税・規制緩和に注力し、国際的な外交・ビジネスについてはトランプ人脈がフル回転するという棲み分けによってお茶を濁す形になるのではないかと推測します。

卓越した職業軍人による効率的・効果的な国防政策の実施

ジェームス・マティス国防長官は「狂犬」というあだ名とは裏腹に極めて慎重な国防政策を立案する軍人だと言えます。同氏はブッシュ政権当時に無理な戦争計画を推進するネオコンと激しく対立し、同盟国重視の姿勢とアラブの価値観を理解した統治政策の必要性を説いた人物です。

今回の大統領選挙でもネオコン勢力によってトランプへの造反対抗馬として一時期名前が取り沙汰されましたが、それらの誘いを断ったという意味では論功行賞の意味合いもあるものと思われます。

一方、ジョン・ケリー国土安全保障長官も職業軍人出身の人物であり、トランプ政権は退役将校も含めた職業軍人経験者が多く踏まれることから軍事政権とも揶揄され始めています。また、国防費の増額などは共和党側も主張するところであり、財政の健全性の観点から心配する声もあります。

しかし、訓練を受けた職業軍人が現代の高度に複雑化された国防政策や行政機構の運用を担うことも効率性を重視するなら当然のことと言えるかもしれません。文民統制の観点からは共和党が多数を占める議会がしっかりと監視する必要がありますが、従来よりも効率的で有効性が高い国防政策が実行されていくものと推測されます。

米国版の論語と算盤を体現するトランプ政権の外交政策

上記のようにトランプ政権では国内政策、外交政策、国防政策がそれぞれ明確に色分けされた状況となっていることが分かります。国防政策はどちらかというと勢力均衡政策とテロ対策に注力することが想定されるため、実際に外国から見ても目立つ変化は外交政策の変化ということになるでしょう。

この外交政策の基本はトランプ政権の主要3閣僚による「算盤外交」になるものと思われます。諸外国との交渉によって米国経済に利益をもたらす方向で様々な成果が挙げられていくことになるでしょう。

東アジアでは中国に対する経済的な摩擦が米国との間で表面化していくことになりますが、実はこれは大したことはないものだと考えています。なぜなら、トランプ政権が求めることは経済的な算盤勘定であって中国の国体を揺るがすことは本気で考えていないと推測されるからです。むしろ、米中両国で喧嘩と妥協の繰り返しが行われる中で両国の関係が深化していく可能性すらあります。

一方、中国と比べて日本の「算盤上の価値」は減価する一方です。中国から魅力的な対価を引き出すためのツール(台湾と同様に)として使用されることにすら成りかねません。日本政府はジャパン・ソサエティー会長で知日派のウィルバー・ロス氏が商務長官に任命されたことで一安心しているかもしれませんが、トランプ政外交の算盤勘定への対処という点ではそれだけでは話になりません。

減価していく日米の価値、つまり日米同盟の価値を算盤勘定以上のところで補う努力をしなくては、日米同盟の将来、ひいては日本の安全保障は悲観的なものにならざるを得ないでしょう。

相対的に減少する日本の経済的価値、日米同盟は風前の灯となるのか

日本の経済的価値の相対的な減少は避けがたいものであり、 今後はそれらの環境変化を前提とした上でトランプ政権への対応を考えていくべきです。

漫然と従来通りの日米関係の延長線上で行けると考えているとしたら、ある日突然梯子を外されることは十分にあり得ます。トランプ氏は中国にプレッシャーをかけるために「一つの中国」という前提をあっさりと破った人物であり、日米関係という所与の前提を揺るがしかねない人物だからです。

では、トランプ政権への対応方針として、国内の一部で主張されている米軍基地費用の全額負担や武器購入費の増額のような経済的対応は正しいでしょうか。残念ながらそれらの対応は焼け石に水に過ぎず、中国の経済的価値の増大に伴う米中接近の危機への対処としては不十分です。

トランプ政権にお金の話で対応しようと試みたところで、次から次へと新たな取引を迫られることを通じて、多くの対価を払う割には実りの薄い結果がもたらされることになるでしょう。そのような場当たり的な対応は日米同盟の将来すら危うくするものと思います。

真の知米派を育てる試みの重要性、対米外交人脈の全面的な見直しが必要

上記の通り、筆者はトランプ政権はトランプ人脈と共和党保守派の政権であると分析しました。

トランプ人脈が政権の「算盤」を担当するなら、共和党保守派は「価値観」を担っている人々です。そして、トランプ政権と対峙するためには、共和党保守派との政治的な信頼関係を醸成することが極めて重要であると考えます。

政権発足当初は共和党保守派は国内改革に注力するものと思いますが、中長期的にはトランプ政権の外交政策に対して連邦議会から強い影響力を持ち続けることに変わりはありません。

そのため、経済的利害を越えて米国保守派と「価値観」で結ばれた信頼関係を作ることができれば、日本経済の相対的な減価という現実を覆す強固な日米同盟の礎を築くことができます。

しかし、そのためには対米外交人脈の全面的な見直しが必要です。

具体的には、安倍政権が対外的に主張する「自由と民主主義の価値観を共有する」という形式上の文言だけでなく、もう少し深いレベルでの米国理解を担う人材の育成が重要となります。日本のエスタブリッシュメントや国会議員の従来までの感覚で米国保守派と付き合うことは外交的な自殺行為だからです。

一例を挙げると、先日ある会合で国会議員が来日した米国保守派重鎮らに対し、「政官財でがっちりと組んで対米外交に取り組む」「自分の配偶者はウィルバー・ロスとジュリアーニと友人」と堂々と発言していました。筆者は非常に驚くとともに大きな危機感を覚えました。

上記でも述べた通り、政官財のトライアングルはクローニーキャピタリズム(縁故資本主義)として米国保守派が毛嫌いする政治屋そのものであり、更に上記の二人はウォール街・リベラルとして保守派から距離が遠い人物だからです。わざわざ来日した米国保守派の方々に対するあまりに無理解な発言に日米同盟の未来を考えて暗い気持ちになりました。

米国ではGoogle社が対保守派のパブリックリレーションを行う人材の求人広告を出して話題になっていましたが、日本政府も米国保守派の思想・文脈を理解できる外交人材を採用・育成することが必要です。

表面的な米国の姿ではなく、米国建国の理念に対する深い理解力を持った「真の知米派」による対米外交政策の立案が望まれます。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2016年05月09日

「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」を提案します

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Twitterでタコスを食べながらヒスパニック大好きとコメントしたトランプ氏

「トランプ発言」から「外交的な意図を読み解く」不毛な作業をやめましょう

ドナルド・トランプ氏の発言は何かと物議を醸してきていますが、筆者は一貫して「トランプ氏の発言は選挙用」であり、その都度反応することの意味が無いことだと言及してきました。(下記は拙稿の一部)

何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)
「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由(2016年5月5日)

トランプ氏が予備選挙勝利のプロセスで他陣営の参謀をM&Aしながら中道寄りに発言を修正していく、ということも予測通りのことです。

共和党予備選挙という「限定された有権者の枠で争う選挙」では、リベラル寄りとみなされるトランプ氏が過激な発言を繰り返すことで保守派の一部から強固な支持を集めてきただけに過ぎません。そのプロセスの中で、ヒスパニックを中心とした不法移民、イスラム教徒、その他諸々色々な人々が彼の攻撃の対象となってきました。

トランプは滅多に「投票権を持つ有権者を傷つける発言」を行うことはありません。上記の批判の対象になった人々も「共和党予備選挙では絶対に投票しない人々」であることがポイントです。つまり、彼の発言は「その時に必要な有権者から支持を集めるためのもの」だと理解するべきです。

そのため、上記の記事でも書いたようにトランプ氏の発言は「大統領選挙本選用」に急速に中道旋回し始めている状況です。

トランプ氏、富裕層への増税を主張 「私は中間層寄り」(5月9日)

トランプ氏の「タコス&ヒスパニック大好き」というTwitter投稿のように、ヒスパニックについても「予備選では必要ない有権者」でしたが、彼らは大統領選挙本選において「フロリダ」「ニューメキシコ」「コロラド」「ネバダ」などの重要州での選挙に勝つために必要です。そこで、予備選挙も終わったのでヒスパニックに対して融和的なメッセージを出すことに切り替えたということでしょう。トランプ氏の同Twitter投稿は「10万いいね」がついているので炎上しながらもイメチェン中なのでしょうか?うーむ(笑)

以上のような視点に立てば、トランプ氏の外交面での発言も「大統領選挙に勝つための発言」としての文脈から読み解くことが重要であることが分かります。なぜなら、現在、彼は現役の大統領ではなく「選挙を戦う大統領候補者」だからです。

選挙を知らない米国通とされる有識者の皆さんにはトランプ氏を解説することは不可能であり、世の中にはどうでも良いトランプ外交論が溢れかえっている状況です。

なぜ、トランプは同盟国を軽視してロシアを重視する発言を行っているのか

トランプ氏は報道されている通り、同盟国の日本に対する駐留米軍などの大幅な負担増・関税の引き上げに言及する一方、ロシアなどの潜在的なライバル国に対して対話重視の姿勢を示しています。

これらの一連の発言はトランプ氏がタフネゴシエーターであることを国民に印象付けるためのものです。したがって、これらの発言にイチイチ右往左往する米国関連の有識者・ジャーナリスト・メディアのコメントを相手にする必要がありません。むしろ、それらの発言について外交的な意味合いで真面目に言及する人々は「米国政治」を分かっていない人々だと思います。

米国の大統領選挙に対して影響を与える国際政治のプレーヤーは「ロシア」です。ロシアの東欧や中東における一挙手一投足は米国の外交政策の成否に直結するものです。オバマ大統領はロシアのプーチン大統領に対して常に後手に回らされており、米国の威信は大いに傷つけられることになりました。

そして、大統領選挙直前に外交的アクションを起こして選挙へのインパクトを与えられる存在もロシアだけです。「ロシアが更なる軍事的威嚇を行うこと」または「ロシアがトランプと対話の準備があると発言する」だけでオバマ外交=民主党の外交は失敗だと言えます。トランプ氏にとって現在のロシアに対するスタンスは選挙上の得点はあっても失点が生じることはありません。

一方、日本を始めとする同盟国は「米国の軍事力を必要」としており、何を言われても「文句を言う程度」で大統領選挙に影響を与えるインパクトを与える行動を行うことはできません。したがって、トランプ氏にとっては日本や韓国のような同盟国は「ボコボコに叩いても良い対象」となり、現在のように言いたい放題の状況を許すことになってしまうのです。

当然ですが、日本人には「米国大統領選挙の投票権」はありませんし、在米日系人もまとまった投票行動が苦手(しかも民主党寄り)であるため、トランプ氏にとっては日本を叩いても選挙上のプラスはあってもマイナスはありません。したがって、誰もが印象として知っている「日本の輸出=自動車」批判というステレオタイプで話題作りをしています。(トランプ氏は馬鹿ではないので日本車の多くが現地生産であることくらい当然理解しているでしょう。本当に馬鹿なら共和党の予備選挙で勝利することはありません。)

トランプ氏が同盟国に対する日本への厳しい発言を続ける理由はそんなところでしょう。そのため、本来はトランプ氏の外交的な発言を分析対象として取り上げることが不毛だと思います。

なぜ、トランプ氏は「一度認めた日本の核容認」を撤回したのか

上記で概観した通り、トランプ氏の発言は全て大統領選挙に勝つためのものであり、外交に関する発言もその例外ではありません。むしろ、外交的発言だけを特例扱いする根拠は全くないものと思います。

トランプ氏は徹底した合理主義者であり、日本に対して「良好な発言を引き出そう」と思うならば、「日本が大統領選挙にインパクトを与える発言」をするしかないわけです。

筆者は日本外交のヒントになる2つの出来事があったことを指摘しておきます。1つ目は「タコス&ヒスパニック大好き」発言、2つ目は「日本の核武装を肯定した発言を修正したこと」です。

トランプ氏、日韓の核保有容認の可能性示唆 NATO批判強める(2016年3月28日)
トランプ氏“日本の核保有容認はうそだ”(2016年4月12日)

タコス&ヒスパニック大好き発言は大統領選挙本選に向けたトランプ氏のヒスパニックに対する対応変更から生まれたものです。では、なぜトランプ氏が「日本の核武装容認から否定へ」と意見が変わったのでしょう。

トランプ氏はニューヨークタイムズやワシントンポストが「嘘をついた」と述べましたが、発言修正の真意は違うのではないかと思います。真の理由は「日本側の核保有に対する反応が思ったよりも大きかった」と理解するべきです。

同発言を受けて日本が本気で核武装を行う方向に流れた場合、民主党の選挙戦略上でトランプ氏は「外交的に決定的な失敗を犯した」というレッテルを貼られることになるでしょう。そのため、同発言が外交問題に発展する可能性を未然に塞いだものと推測します。

そして、日本側からの反応(賛否も含めて)が大きかった同発言の火消しを図ったトランプ氏の姿にこそ「対トランプ」の有効な手段の手がかりを見出すことができるのです。

情けない日本の外交に「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」を提案します

日本の政治家からは外交通とされる石破氏のように「日米安保条約」や「NPTの意義」の再確認を求めたるという何とも腰が砕けた意見しか出てきません。

上記の「核武装論の一瞬の盛り上がり」が一段落してしまったあと、トランプ氏にとって再び「殴りたい放題の日本」という位置づけにすっかり逆戻りしてしまいました。日本の政治家はトランプ氏に苦言を述べるなら「大統領選挙に影響を与える発言」でなければ何の意味もないことを理解していないと言えるでしょう。

筆者は日本の政治家の才覚では「トランプに梅干しを食べさせることすら」できないと思います。

日本の政治家がトランプの発言に対して本気で影響を与えるためには「日本は米国が安保条約の義務を果たさないなら、中国も含めた安全保障環境の見直しを行う可能性がある」と発言するくらいの大胆さが必要です。

民進党もせっかく日本共産党と選挙協力しているのだから、有力議員が訪米した際に「日本共産党とは連立を組みません」というポチぶりを発揮せず、「日本共産党の政権入りもあり得る」と本当のことを述べて米国側をビビらせたら良いのです。

それらが無理なら、上述の核武装論について議論を盛り上げていくだけでもトランプ氏の発言を修正していくことができるでしょう。

これらのアイディアは非現実&望ましいことではありませんが、日本の政治家から発言が実際に行われた場合は「トランプ外交の失敗」として「大統領選挙に影響を与えるインパクト」をもたらすことになります。

その結果として、日本との関係修復が選挙戦略上の必須事項になり、「トランプ氏は梅干しを食べながら日本大好きだ!」と発言してくれることが期待されるでしょう。

トランプ氏が日本を好き放題に叩きまくれる理由は「日本の政治家が舐められている」からであり、散々罵られても「日米安保条約を読んでください」という程度のポチのような発言しかできないことに原因があります。トランプ氏の発言は「日本の政治家が主体的な外交を行ってこなかった」ことの証左です。

つまり、「どうせ何を言っても、日本は米国にしっぽを振ってついてくるんだろ」と思われているのです。

「トランプ氏に梅干しを食べさせる」ためには「大統領選挙に影響が持てる国になる」ことが必要です。言いたい放題のトランプ氏を止めるためには、日本側もそれなりの実力を持って対応していくことが重要です。


スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


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2016年04月29日

何故、NHKの大統領選挙報道は視聴する価値がないのか?

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NHKの「米国大統領選挙に関する報道」は視聴するに値しない理由とは

トランプ氏 日本に負担増求め中ロ関係立て直しを(NHK、4月28日)

というニュースを目にして、現在無理やり加入させられているNHK解約を決意しました。ちょうど我が家のTVが故障して捨てるところだったこともありますが、正直言って報道取材のレベルの低さに飽き飽きしましたね。

本ブログの賢明な読者諸氏は、NHKなんぞ最初から見るに値しない、というかもしれませんが、私が呆れかえった理由は「自分以下の取材力」で「あるべき報道とは真逆の内容」を「堂々と国民に流布する」姿は辟易したということです。

自分はNHKが左翼だとか、現会長が安倍側近だとか、そんなことはどうでも良いんです。そうではなくて、まともに取材ができないなら報道を止めてしまえ、と思うわけです。この人たちは筆者から徴収した料金で常時ワシントンに駐在して何やってんだろうと。以下、何故NHKの米国大統領選挙報道を視聴する価値がないかを説明していきます。

トランプの外交ブレーンではなくトランプの政敵に取材して「トランプ外交」を語る愚劣な取材

一言で言うと、NHKは取材先すらまともに選択することができない組織だ、ということです。

本報道はトランプ氏の外交政策について日本国民に伝えるための報道だったと思います。それであれば、当然に「既に発表されているトランプ氏の外交ブレーン」に取材することが当然に求められます。

トランプ氏の外交ブレーンとして名前を公表している人物らの連絡先は調べれば直ぐに分かります。メディアとして取材依頼を行うことは簡単なことです。そして、NHKが取材を断られたら断られたでそれ自体が価値ある情報であり、トランプ氏の外国メディアへの対応姿勢の現われということができたはずです。

しかし、NHKはそのような当たり前の取材行為をせずに「取材先としてあり得ない人物」のコメントを掲載し、それをあたかもトランプ氏の日米関係の外交政策に関する見通しとして日本人に伝えたわけです。

では、NHKが取材した先はどんな人物だったかというと、簡単に言うなら「トランプ氏の政敵」です(笑)

つまり、トランプ氏の外交方針に関する分析を行うという趣旨で「トランプ氏の外交方針を最初から全否定する人物」を選んで取材しているのです。

報道中のAEIというシンクタンクは日本の親米派保守系議員が日参するシンクタンクとして有名です。そして、彼らは米国内でも屈指のネオコン系のシンクタンクであり、トランプ氏の外交政策とは真っ向から衝突する研究機関でもあります。

従って、AEIの日本担当者の意見を聞いたところで、それは「トランプ氏の外交政策」をまともに解説することになるか甚だ疑問です。本来取材するべきトランプ氏の「外交ブレーン」ではなく「政敵」に取材をしただけで報道化する神経を疑います。

トランプ氏について昨年から見るに耐えかねるレベルの報道が多い理由とは

日本のメディアを見ていると、いずれのメディアも共和党予備選挙とトランプ氏について昨年から一貫して無価値な情報を垂れ流し続けてきました。彼らの共和党予備選挙の予測はことごとく外れており、現在でもトランプ氏については「取材先すら分からない」有様が続いています。

筆者は何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)、の中でも触れている通り、トランプ氏の放言は選挙戦略であり、本選時には発言内容を知的なものに修正していくと予言していました。他候補者のスタッフをM&Aしていくことで発言が修正されるということも断言させて頂きました。

そして、現実に直近に行われたトランプ氏の外交演説はまさに新規に加入したスタッフによる振付によるものであり、トランプ氏は本選を見据えて大統領らしい振る舞いに急速に自身のイメージを転換させつつあります。ほぼ全てが昨年に事前に予測した通りの状況です。

なぜ、NHKを始めとする日本メディアの予測が外れて、筆者の予測がほぼ全て当たるのでしょうか。それは筆者は米国に関する独自の取材網を構築しているとともに、日本の国会議員や政治家が頼りにしている「米国人の知日派」を重視していないからです。

米国には「知日派」と呼ばれる日本政策の担当者がいます。彼らはジャパンハンドラーズなどと呼ばれて、日本を操縦している云々と陰謀論が囁かれていることもありますが、「米国内での影響力は極めて限定的」です。

しかし、日本の国会議員もメディアもこれらの知日
派を神のごとく崇めており、そのご託宣を並べて有り難がっています。そして、既存の日本人の外交ルート・取材ルートも「知日派」しかいないため、これらの日本に関する利権で飯を食っている米国官僚の掌の上で転がされている状況となっています。日本の政治家は彼らの見解を垂れ流すだけで外交している気分になれるし、日本のメディアは米国政治を報道した気になれる便利な人々です。

更に言うと、現在、大半の知日派はトランプ政権への批判のトーンを明確に絞っており、彼らがトランプ政権入りを目指していることは明らかな状況です。そのため、NHKは知日派の中でも反トランプ姿勢を鮮明にしているAEIしか取材に応じてくれるところがなかったので、このコメントをそのまま流したのではないかと推測します。何とも貧弱な取材体制だなあと思わざるを得ません。

新しい対米関係を構築するための「新しい日本側のプレーヤー」が必要だ

既存の日本の政治家、官僚、メディアは「知日派」との関係が深すぎて簡単に方針転換することが困難であるため、日本人は新たな対米関係を築いていくための研究機関やメディアを構築していくことが必要です。

そして、米国の日本担当者でしかない知日派ではなく、もっと米国政治の深部に辿り着くようなディープなレベルでの情報網を構築し、アジア政策などについての情報交換を行う体制を整備することが望まれます。

そのような体制を構築出来て初めて、米国外交や米国に関する報道が価値を持つようになっていくことでしょう。米国と対等な関係を構築していくためには、日本人が米国内に知日派を上回る情報力と人脈を持つことが重要です。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19





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2016年01月05日

点と線を繋ぐ外交視点、慰安婦問題から見る東アジア情勢

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昨年末の慰安婦に関する日韓合意の背景に存在する北朝鮮問題

昨年末に行われた慰安婦に関する日韓合意の背景には、米国による意向が強く働いていたものと推測されます。上記の日韓合意について、米国側が強烈に後押しした発言を行ったことや米国内の韓国系団体に対して合意を尊重するように働きかけたことからも明らかです。

現状では韓国政府が慰安婦関連の団体を説得する重荷を背負った状況となっていますが、そもそも日本政府が訪韓する段階でこのような状況になることは目に見えていたはずであり、日本政府側だけでなく韓国政府側にも米国から会談を受けるように要望があったことは間違いないでしょう。

米国が日韓関係の修復を急いだ背景には、中国の安全保障上の脅威が高まる中で米国の同盟国同士のいがみ合いを終わらせたかったということもありますが、北朝鮮が2010年10月に36年ぶりに朝鮮労働党党大会を開催すると決めたことが大きかったと推測します。

実際、米国の世論調査でも、国際的な安全保障上の関心事として中東・テロなどと同ランクの事項として「北朝鮮問題」が上位に位置付けられることもあり、米国の空気感は北朝鮮動向についてかなり敏感だと言えるでしょう。

北朝鮮側から同大会で限定的ながらも周辺国との関係改善及び経済改革が打ち出される可能性が高いものの、北朝鮮による核実験や南北朝鮮の再接近による政治情勢の不安定化への危惧があり、大統領選挙の年と被る同党大会前に日韓の手打ちを行わせておくことは米国にとって次善の策だったと言えます。

対中包囲網の形成にまい進する安倍外交の日本

上記のような米国の意図とは別に、安倍政権は基本的な外交・安全保障政策として対中包囲網の形成にまい進しています。中国の外交的・軍事的膨張を抑え込むために、中国の周辺国(米・日・豪・印ら)との外交・安全保障関係を強化しする路線です。(安倍政権発足当初はセキュリティダイヤモンドなどという言葉で表現されました。最近は耳にしなくなりましたが。。。)

米国向けには、安保法制を通すことで同盟国としての地位を格上げし、米国議会演説や安倍談話の発表によって、安倍政権の歴史修正主義的な雰囲気を化粧することで、同国に自由主義的なイメージを浸透させました。第一次安倍政権時代での対米関係の悪化も一因となって退陣に追い込まれた反省が生かされた形です。

豪州・インド向けには、安全保障関係の強化が確認されるとともに武器輸出に関する交渉も始まっています。昨年7月には米豪の軍事演習に日本も参加して準同盟ぶりを示すとともに、10月には8年ぶりに自衛隊がインド洋での日米印の軍事演習に参加しました。ASEANに関しても東アジアサミットで中国の南シナ海問題が大きく取り上げられることになりました。

昨年10月に任官されたばかりのタカ派の外交通である河井克行首相補佐官が日米豪英印を訪問していることからも、安倍政権がセキュリティダイヤモンド構想を継続していることが伺えます。

問題となる韓国・ロシアについても、韓国については米国の意図に乗る形で慰安婦合意を行ったことで外交関係の問題を処理することに成功し、ロシアについても年頭あいさつで日ロの平和条約について安倍首相が明言するなど関係改善に向けた動きが出ています。4月に予定されている北海道の衆議院補選で新党大地が野党連合に協力しない理由は日ロの関係改善を見据えたものではないかと推測します。

以上のように、安倍政権は中国の周辺国との関係強化にほぼ成功しつつあり、対中包囲網を完成させつつあると言えるでしょう。日本の外交・安全保障環境の改善という意味では非常に望ましいものではりますが、後述の通り、要となる日本と米国では対アジア政策観が全く異なることは日本の針路に大きな爆弾を抱えることになる可能性があります。

「米国」の主要な関心は「中東」と「欧州・ロシア」であって「中国」ではない

日本の米国通とされる有識者らが書く文章を読むと、私たちは米国が東アジア情勢、特に中国の軍事的な脅威について非常に関心を持っていると思い込みがちです。しかし、これらはそれら有識者が日本での地位を確保するためのポジショントーク的な言説に過ぎず、その手の言説をばら撒く有識者の発言は信用できません。

米国の主要な外交的関心事は中東と欧州・ロシアにあります。中東に関しては、ISを巡るシリア・イラク情勢だけでなく、イランとの交渉やサウジアラビアとの関係など、米国の安全保障に致命的に関係する案件が山積みとなっています。実際に昨年末の共和党の大統領予備選挙候補者を集めた討論会では「中国」の話はほとんど行われず、話題はもっぱら「中東」「テロ」でもちきりでした。

米国にとっては欧州・ロシアも非常に重要な問題です。欧州からの対米投資はアジアからの対米投資よりも遥かに巨大であり、政治・外交に関しても老獪な欧州・ロシアは米国にとってコストがかかる相手です。特にロシアは米国を安全保障上の脅威として位置付けるなど、豊富な軍事力・外交力・エネルギーなどを背景に米国の覇権に挑戦する存在となっています。

一方、アジアは中国の軍事的な拡張は留意されるものの、米国にとっては北朝鮮の体制混乱のほうが問題視されていると言えるでしょう。中国の米国に対する挑戦は上記の2地域と比べれば表面化しておらず、米国側では「中国の台頭」として認識されています。そのため、日本・韓国・豪州などの同盟国を活用したバランスを取る政策が採用されており、中国の脅威に対して本格的にコミットする状況ではありません。これは南シナ海での航行の自由作戦が事実上の腰砕けに終わっていることからも明らかです。

そして、この米国の外交方針はオバマ政権だけでなく共和党党政権になったとしても、現状では大きな変更があるとは想定できず、米国のコミットメントは必要とするものの過大な期待を抱くことは間違っています。

噛み合わない日米の安全保障戦略、東アジアの現代史の岐路へ

上記の通り、日本と米国の安全保障戦略観は大きく異なります。ここで問題となることは、日本は主要な仮想敵として中国を認定した安全保障戦略を性急に展開しつつあるに対し、米国は中国を脅威として認識しつつも優先順位が極めて低いということです。

従来までは米国は日中の紛争に関するコミットメントについては中国を刺激しないような形での温和な表現を心がけてきていました。米国としては中東・ロシアの相手で手一杯であり、中国と事を構えるつもりはほとんどないものと思われます。

一方、日本側は対中包囲網が完成しつつある中で、中国との限定的な紛争に具体的に突入できる環境が形成されるつあります。この見通しは「憲法改正反対!」「安保反対!」というお花畑な主張ではなく、安倍政権の一連の具体的な外交・安全保障政策の結果として生まれた環境変化によるものです。

このようなズレによる齟齬がが安倍首相が航行の自由作戦に賛意を示した後、米国の及び腰の対応を見て参加を見送る穏便な発言に修正したこと等のように現実に起き始めています。

安倍政権の外交政策が成功してきた結果として、逆に日米の外交・安全保障環境の認識において噛み合わない状況が発生するという皮肉な状況が起きています。このような状況の中で、日米の外交当局者がどのような外交・安全保障に対する判断を下していくのか、我々は東アジアの現代史の岐路に差し掛かっていると言えるでしょう。




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yuyawatase at 13:23|PermalinkComments(0)

2015年12月22日

書籍紹介(1)「スーパーパワー」イアン・ブレマー

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スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


米国の未来を知るために必読の一冊となる本

米国の著名な外交評論家であるイアン・ブレマー氏の最新の著作です。

1998年僅か28歳で世界をリードする地政学リスクを評価するシンクタンクを創設し、度々日本にも来日して首相などへのアドバイザーを務める凄腕のコンサルタントです。私も過去に彼が考案した世界的な政治リスク指標であるGPRIを拝見させていただき非常に感銘を受けた思い出があります。

本書は今年5月に発刊された最新著作の日本語訳であり、多極化した世界であるGゼロの中で、米国はどのように振舞うべきなのか、世界と米国の現実を知ることができる必読の一冊となっています。

日本人の対米イメージの先入観が一掃されることになる内容

日本人は米国が対外関与を続けることを前提に世界像を描いていますが、イアン・ブレマー氏は本書の中で下記の3つの米国像をこれからの選択肢として提示しています。

1. 「独立するアメリカ」……国益を優先し、安全と自由を確保する
2. 「マネーボール・アメリカ」……自国の評価を上げ、国益も守る
3. 「必要不可欠なアメリカ」……アメリカ、そして世界を主導する

そして、多極化した世界に米国が関与しても狙った結果を引き出すことが難しいという事態の中で、衝撃的なことに1の独立するアメリカ、つまり3の世界の警察官も辞めて、2の現在の姿も放棄し、完全に自国中心の米国という選択が有力視されているのです。
 
大統領選挙でトランプやサンダースが台頭する雰囲気を知ることができる

来年は米国大統領選挙ですが、自国中心主義のトランプ氏やサンダース氏が台頭している背景が浮かび上がってくる良書だと思います。

特に、トランプ氏やティーパーティーに外交政策が無い、と考えている人は同書を手に取って読んでみれば、自分の先入観を捨てた現在・未来の米国の外交の方向性を知ることができるでしょう。

日本人としてはあまり信じたくない方向かもしれませんが、興味がある人は是非手に取って読まれてみてはいかがでしょうか。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19



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yuyawatase at 07:40|PermalinkComments(0)

2015年11月17日

ティーパーティー(茶会)に外交戦略は存在しないのか?

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先日の続きで、日本の米国通とされる国会議員があまり良く理解できていないことについて、ティーパ―ティーら米国保守派の外交についての考え方を考えてみたいと思います。

米国保守派に「外交戦略は無い」という話は本当か

日本の国会議員からティーパーティーや米国保守派には外交戦略と呼べるような大戦略が無いのではないか、という質問を度々受けることがあります。特に外交安全保障に詳しいとされる議員は同様の理解をしているようです。

たしかに、ネオコンらの保守派の中のタカ派はともかくとして、一般的にティーパーティーやドメスティックな保守派が外交戦略についてあまり語らない傾向はあります。

しかし、彼らが外交戦略を持っていないとすることは短絡的で早計な理解だと思います。むしろ、彼らからあまり外交戦略が語られない点に注目し、米国保守派の政治理念が実現されていく過程で米国外交や安保政策がどうなるのか、ということについて考察することが重要です。

保守派が政権を取った場合に何が起きるのかを考えるべき

軍産複合体と結びついた一部の人々以外の保守派が掲げる政策理念は「小さな政府」です。

そのため、保守派の基本的な方向としては対外政策に関してはよほどクリティカルなもの以外は干渉を最小限にするという発想になると思います。

既に世界的な多極化の進展によって国際情勢の不安定性は増加していく傾向にあります。米国内では海外に徒に干渉するよりは国内の発展・繁栄に集中するべきという言論が力をもつ可能性があります。

特に、今年5月に著名な外交ストラテジストであるイアン・ブレマーの「Super Power」の中で、(1)「特別な存在としてのアメリカ(Indispensable America)」、(2)「利益優先のアメリカ(Moneyball America)」、(3)「独立したアメリカ(Independent America)」という3つの選択肢が示されたことに注目するべきです。

(1)は世界の警察の継続、(2)は利益に基づく選択的関与への転換、(3)は外国への干渉を最低限に留めて国内の繁栄に努める、というものです。個人的には外交政策の権威の著作の中で(3)の選択肢が重視されていることに少々驚きを覚えました。

しかし、実はこれは米国保守派の「小さな政府」による繁栄という発想、米国の伝統的なスタイルへの回帰という意味では現在米国内で蔓延する空気感との整合性があると感じています。(中東に地上軍を派遣すべし、という強硬な意見も存在しているが)

米国は自国に資源を集中することで自由主義・民主主義による繁栄を謳歌し、軍事力を使わなくても米国の魅力を海外の人々が自然と感じるようになる、という選択肢が現実に議論の俎上に上がってきているのです。

日本が準備しておくべき外交戦略とは何か

米国の外交政策について、日本の国会議員や有識者らはせいぜい(1)や(2)のレベルしか想定しておらず、米国が(3)の道に行くことについて、「薄々感じていても信じたくない」未来だと思います。今夏に制定された安保法制は米国が自国優先の姿勢に転換しないよう、(2)の観点に立って日本側が米国の関与を引き出すべく努力したものだと思います。

しかし、外交戦略はあらゆる選択肢の中を考慮した上で構築されていくべきです。米国が「世界における軍事力・経済力などのハードパワーにおける存在感を低下させつつ、自国の自由主義・民主主義による繁栄を世界に対して示す」という従来以上のソフトパワー重視の戦略に移行する場合、日本も同戦略に対応を迫られることになるでしょう。

日本はアジアにおける最大の経済力を持つ自由主義・民主主義国であり、これらの魅力を最大限に発揮できる方向に舵を切る必要があります。すなわち、日本も小さな政府を実現して国民の生命・財産を守る確固たる意志を示し、更なる経済成長を実現していくことで中国などの全体主義国に対するアジアの自由主義・民主主義としての中心地としての魅力を強化するべきです。

強力な経済・確かな価値観を持つことは外交・安全保障について基本であり、米国保守派が米国で主張することと同様に、日本も経済・社会の構造改革を断行することが望まれます。





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yuyawatase at 12:00|PermalinkComments(0)