増田
2016年07月23日
増田寛也氏への「言われなき批判」回答についての反論
(増田寛也氏のFB記事に掲載されている回答書)
増田寛也さんの疑問に対する丁寧な回答姿勢について感謝を示したい
ネット上で提起された様々な問題点について、増田寛也氏が丁寧な回答文書を発表されました。そのこと自体については非常に真摯な姿勢であることを評価したいと思います。
ただし、「いわれなき批判におこたえします」と題された文章の内容を拝読しても、その内容が「本当にいわれがないのか」ということは別問題です。
回答文書は①「都議会との関係は?」、②「都有地を韓国人学校に貸し出す?」、③東京への集中は悪いこと?、④外国人参政権に賛成?、⑤東京電力の役員だった?、⑥出張はファーストクラス?、⑦岩手県で1.4兆円も借金した?の全部で7項目です。
筆者は①、②、⑤については全く関心がありません。増田氏の過去の言動などを見ても特段問題があるとは思えず、それを問題視したい人は問題視すれば良いのではないかと思います。
筆者が関心がある項目は③、④、⑥、⑦ですが、③については増田氏の過去の発言等に見ても東京・地方が切磋琢磨することになるかは見解が分かれるところですが、エビデンスも見解も分かれるところなので今回は検証しません。
しかし、岩手県の借金問題、ファーストクラス利用問題、外国人参政権問題については、増田氏の弁明内容に疑問が見受けられたので「いわれなき」とは言うには無理があります。そこで、本記事では各弁明の論点を改めて確認しておきたいと思います。
岩手県知事時代の借金増加の原因は本当に「新幹線と県立大学」だけではないのでは?
少し長いのですが、重要なことだと思うので下記に増田氏の弁明文書を丸写しにさせて頂きました。
「岩手県知事在任中、新幹線の誘致によって整備費の地元負担が発生しました。また岩手県立大学の4学部一斉開学の実施によって負担額が増加しました。このどちらも将来へ向けた経済の発展と人材育成のための投資でした。」
「その結果、新幹線の整備により観光客数は増加し、地域経済が発展しました。県立大学の開学により地域の発展に不可欠な人材育成が行われ、高専の充実、技術力の高い人材供給と企業誘致につながっており、実際に卒業生約6,000人のうち約2,000人が地元企業に就職しています。 」
「また、その後は行財政構造改革プログラムを策定し、財政健全化に道筋をつけ、最終年度でプライマリーバランス(基礎的財政収支)を均衡させました。決して無駄な投資をしたわけではありません。」
「岩手県知事時代には、切るべき公共事業を切ってきたことで、現在の岩手県のメリハリのある発展に貢献したと自負しております。財政投資には時代と地域の特性があります。知事と総務大臣経験者として地域に必要な政策の見極めが私にはできます。東京都の財政運営に役立つ投資と削減を実施して参ります。」
以上、引用終わり。
自分が問題だと感じる点は、回答に見られる積み上げた借金の一部のみを誇張して報告し、自らの間違いを一切認めようとしない姿勢です。特に財政のことは素人には分からないだろうという回答態度は頂けません。
まず最初に増田県政時代に借金は(臨時財政対策債を除いても)平成6年度5940億円から平成19年度・約1.2兆円にまで増加しています。(臨財債を含むと約1.4兆円)
県立大学負担は約450億円超、整備新幹線の県負担は約950億円であり、合計で約1400億円です。つまり、増田県政で積み上げられた借金を約6000億円とした場合、その2事業の負担は全体の約23%に過ぎません。したがって、増田県政の借金の約77%は別の公共事業などで積み上げられたことになります。
たとえば、岩手県の財政事情を勘案すれば、非常に豪華な建造物である、県立美術館108億円、県民情報交流センター245億円を初めとした大型の公共事業を次々と行ったことについてはどのように考えているのでしょうか。それらも未来への投資なのでしょうか?これらは毎年の維持コスト(場合によっては1施設数億円)もかかるため、これらは未来への投資ではなく未来への負債と捉えられるべきかと思います。
また、公共事業・整備新幹線については地元紙・岩手日報が戦後70年特集として振り返りの記事を掲載しています。読者の皆様にはこちらも併せてお読みいただければと思います。
岩手日報企画「自立への壁」
(3)補助金ハコモノだけ残った
(6)整備新幹線「祭りの後」の駅閑散
そもそも企画のタイトルが「自立への壁」ってのが振るってますね。つまり、増田県政を含めた過去の県政が残した負の遺産が「岩手県の自立に向けた壁」になっているという特集です。
最初の記事中の総合交流ターミナル施設は平成10年議会で約4.7億円の建設費が農家のためにならないバラマキであると批判されても、岩手県側が無視して建設した施設です。
また、後者の記事にあるように、整備新幹線については地元負担が伴う「整備新幹線」の盛岡-八戸間は、約950億円を岩手県が負担、岩手町は7億3千万円で、駅ビルや駐車場などの周辺整備にはさらに40億円が投じられました。そして、これらの建設投資は失敗することも多く、岩手日報の記事を読む限り成功からは程遠い現状のようです。
ただし、整備新幹線の建設決定については増田氏の責任によるだけでなく前知事時代からの引き継いだものでもあります。しかし、それであれば尚のこと整備新幹線以外の借金の積み上げについて議論されるべきです。
また、後者の記事にあるように、整備新幹線については地元負担が伴う「整備新幹線」の盛岡-八戸間は、約950億円を岩手県が負担、岩手町は7億3千万円で、駅ビルや駐車場などの周辺整備にはさらに40億円が投じられました。そして、これらの建設投資は失敗することも多く、岩手日報の記事を読む限り成功からは程遠い現状のようです。
ただし、整備新幹線の建設決定については増田氏の責任によるだけでなく前知事時代からの引き継いだものでもあります。しかし、それであれば尚のこと整備新幹線以外の借金の積み上げについて議論されるべきです。
県立大学は数少ない増田県政の成功事例と言えるものであり、それ以外の大量に積み上げられた失敗の山について触れないことには強い疑問があります。プライマリーバランスの黒字化は増田氏自身が急激に積み上げた借金で首が回らなくなった結果として進められた改革に過ぎず、無計画な県政運営は決して実務家として褒められたものではないと思います。
蛇足ですが、増田県政3期目の最後に行われた競馬組合への融資330億円(市貸付含)は全く回収ができておらず、 県民の貴重な財産がギャンブル事業を維持するために塩漬けになっている状況でもあります。
以上の観点から、増田氏が主張する地域に必要な事業の見極めができるどうか、増田氏の弁明に上記の内容を付記した上で有権者が最終的に判断すれば良いと思います。
「ファーストクラス使用はルールに基づいたもの」で片づけられて良いのか?
増田氏はファーストクラス使用について下記のとおり弁明しています。
「ビジネスクラスを利用します。なお、当時のファーストクラス使用も適正なルールに基づいておりましたが、都民の皆様のご負担を少しでも減らすのは公務を行う上での大前提であると考えております。」
筆者がファーストクラスを借金を積み重ねている知事が使用することは道義上問題があると思いますし、その人物が舛添知事の後任として政党から推薦されていることに違和感があることは事実です。
しかし、この問題について自分が問題視している点は最初から増田氏の説明責任に対する姿勢です。上記の適正なルールとは知事自身が決定するルールであって、自分で作ったルールで自分が適正に利用するのだから良いというトンデモ理論を振りかざしているに過ぎません。
実際、岩手県議会では、平成13年12月4日に、ファーストクラス使用などを問題視する岩手県議会議員の質問と岩手県人事課長の質問に対する答弁が残っています。
下記のやり取りは長いので簡単に要約すると、県議会議員が「不況なのでファーストクラスを使うのをやめてほしい」と懇願したが、増田知事は自ら答弁することもなく人事課長の答弁でNOを突き付けたというわけです。
つまり、議事録でも県議が指摘したように、自分でファーストクラス使用を自粛するか、もしくは自分でルールを変えることでファーストクラス使用は取りやめることができたのです。そして、増田氏は県議会がファーストクラス使用停止を求めてくれたにもかかわらず、知事として経費節減の率先垂範を果たさず、己自身のルール変更もせずに「現状維持したルール」に基づいて使用したと東京都民に回答することには違和感があります。
岩手県知事時代のやり取りを東京の有権者が知らないと思って、上記のような回答を行うことは東京都の有権者に対する誠実さが欠けているものと思います。下記は議事録からの引用。
<議員>
「言いたいことは、今この不況時代です。民間だったらボーナスはなくなって、給料は7割ぐらいになっているんです。たしか7割ぐらいになっているところもあります、ゼネコンとか大きいところは。そういう時代に、大きい会社で、自分の力で役職員がグリーン車とかファーストクラスに乗るのだったらいいんですけれども、県民の税金で、私も含めてですが、グリーン車とかファーストクラスに乗るのは、来年度からは何とかやめてもらいたいような感じがして今話をしているんですが、見解をお願いします。」
<答弁者>
「今、資料が届きましたのでお答えいたします。いわゆるグリーン料金につきましては、知事、副知事、出納長並びに議員の皆様及び議会選出の監査委員の内国旅行、国内旅行に支給されております。それからファーストクラス料金につきましては、知事並びに議長が外国旅行に際して航空機を利用した場合に支給されている実態でございます。」
<議員>
「知事は公選で岩手県から1人しか出ないわけですので仕方ないとしても、以下の人は全員普通車でいいと思うんですが、その見解をよろしくお願いします。」
<答弁者>
「特別職の職員の方々のグリーン料金とファーストクラス料金の支給につきましては、この旅費制度全体が職務とか職責に応じた旅費を支給するという基本的な考え方で構成されておりますので、国あるいは東北各県の状況もおおむね同様でございますので、現行の制度で運用してまいりたいと考えております。」
外国人参政権の容認に関して島嶼の有無が影響という珍理論?について
増田氏は外国人参政権に関する姿勢も都道府県によって異なるという回答をされています。
「岩手県知事時代の発言は見直します。当時、地域の声をくみ上げるために賛意を表しましたが、現在の国際関係は大きく変化しております。島嶼部を持たない岩手県と東京都とは違います。地方といえども参政権付与を安易に認めるべきではないと考えます。」
しかし、島嶼を持つか持たないか、で外国人参政権を認めるか否かの判断要素の一部とする、という考え方は全く納得できるものではありません。これでは内陸県は外国人参政権を認める可能性があると読めると思うのですが、それは違うのでしょうか?
また、岩手県知事時代の公式発言は、納税・地域貢献を理由にあげていたことが完全に捨象されており、2011年まで日韓グリッド構想を提唱されていた人物が急速に日韓関係が変化した、と判断したのは何年何月からの判断でしょうか。
岩手県知事代は「容認」→出馬記者会見時は「コミュニティへの参加の有無」→選挙期間中は安易に認めない(島嶼の有無を条件に含む)という判断の急速な変化について、国際関係ではなく増田氏の立場が変化しただけではないかと思います。
また、同対応の変化は推薦政党である自民党の党是である外国人参政権反対に歩調を合わせた修正だと思います。しかし、仮に自民党対応とした場合、もう一つの推薦政党である公明党は多民族多文化の共生社会をめざす立場から、一貫して参政権付与法案を提出してきた事実とは矛盾します。
自民党の主張を重視して公明党の主張を簡単に捨てる政治姿勢も納得できかねます。筆者は公明党の党是が一貫している姿勢も評価しているため、増田氏は公明党ではなく自民党を選んだことについて、一体どちらの住民の声を優先させるのかを明確にしてほしいと感じています。
増田寛也氏の丁寧な回答には賛同したい、ただし更なる疑問が湧いてきたことも事実
増田氏が様々な疑問に対して真摯に回答しようとしている姿勢については非常に好感が持てますが、その上で回答内容について更なる疑問が沸いてくることも事実です。
筆者は都議会との関係、韓国人学校、東京電力の話などは納得しましたが、自分の関心がある分野では少なくとも増田氏の回答は依然として極めて説明不足であるように感じます。
岩手時代に借金を積み重ねて失敗していたとしても、それを反省して東京都では失敗を繰り返さないと言えば良いだけではないですか。ファーストクラスも外国人参政権も一緒です。間違いを認めてもう一度挑戦する真摯な姿勢を見せるほうが都民の好感度も上がると思います。
なぜなら、現在の都知事選挙は「誰も本当のことを言っている気がしない」雰囲気なので、失敗を素直に認められる人への支持が集まる可能性が高いからです。
このような発表を選挙期間中に行う誠実な対応については一定の評価をさせていだき、増田氏の回答文書への反論とさせていただきます。ご対応ありがとうございました。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
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2016年07月22日
超高齢化社会で政治家が二枚舌になる理由
何故、政治家の言動の「二重基準」が横行してしまうのか?
インターネットが普及して政治家やジャーナリストの過去と現在の言動の整合性が簡単に取れる時代になりました。そのため、その場しのぎのポリティカルコレクトネス(政治的に正しい発言)を繰り返してきた、ポリコレ人間が政治家を続けることは極めて困難な状況になってきています。
筆者は上記のようなネット社会の進展とともに、超高齢化社会も政治家の言動の二重基準が発覚する原因だと思っています。
人生は非常に複雑怪奇であって誰もが聖人君主のような生活を送れるわけではありません。したがって、叩けばホコリが出ない人物など一人もいないと思います。
しかし、超高齢化社会では「政治家が極めて長期間在職することが可能になる」、または「著名な有識者とされている人の賞味期限が長くなる」という現象が起きてきます。これらの人々も若い頃は純粋な気持ちで活動していたかもしれませんが、酸いも甘いも知る大人になるプロセスで様々な誘惑にさらされることになります。
そして、彼らが高齢者の年齢に達する頃には何らかの人生の失敗を抱えることになるのは当然なのです。しかし、問題は超高齢化社会においては「高齢」の域に達したとしても、現役と同じように「社会的・政治的に正しい発言を求め続けられるようになる」ということです。人生はそんな単純じゃないよーと腹で思っていても、表では清廉潔白な人物を演じ続ける必要があります。
これはある意味拷問のような作業ですが、若い頃にそれで飯を食べてきた人が高齢になった場合に今更止められるわけもありません。ご愁傷さまとしか言いようが無いのですが、それこそ自己責任ということですね。
そのため、自分の人生を振り返れば自分自身の過去に刺さってしまうような発言であったとしても、相変わらず表舞台で発言を続ける必要があり、その人物が「公人」として活動しようものなら一気に自己矛盾が表出化することになります。
政治家の「期間制限」を社会的に導入していく取り組みが必要である
公人、つまり政治家の過去の発言との整合性が簡単に取れてしまうことは、有権者にとっても良い面と悪い面があります。
良い面は言動の整合性がある信頼できる人物を選べるようになるということ、悪い面は投票で選ばれたはずの政治家が言動の二重基準を突かれて簡単に辞任するようになること、です。悪い面は良い面の裏返しと考えることもできるのですが、せっかく選んだ人間にコロコロ辞められても有権者も困ってしまいます。
そこで、最低限のこととして、政治家が多選を繰り返して長期間の在職が出来ない文化を作っていくことが必要だと思います。超高齢化社会では、政治家が何十年も議席にしがみ付くことが常態化して腐敗が生まれるとともに、当人の人生や社会の進展に合わせて言動に矛盾が生まれてしまうからです。
米国においては、The Term Limitsと呼ばれる草の根団体が存在しています。同団体は議員の多選による腐敗の蔓延を防止するための措置として始まった市民運動です。「政治屋ではなく市民のリーダーを!」が彼らのキャッチフレーズです。
具体的には議会議員選挙に出馬する候補者に最長2期で辞任することを署名で約束させて、WEBでその模様を公開するということが行われています。政治家自らから在職期間についての言質を取ることを通じて有権者との間で約束事を決めるのです。
一方、見方によってはThe Term Limitsは腐敗に塗れて何期もやりたいという議員を除けば、議員から見ても8年以内に議員を公に辞める口実を作ってくれる都合が良い仕組みとなっています。つまり、政治家にとっても職を辞めるタイミングを逸して延々と自己矛盾を抱えながら生活していく辛い人生から解放してくれるメリットがあるわけです。
首長などでも多選自粛を口にする人々がいても、日本では平気で約束を破る人も多い悲しい現状がありますが、米国ではこの約束を違えると同取り組みを信頼している人々からの支持が失われた上にネガキャンなどの社会的制裁が下されることになります。
そもそも政治家は若い人がやっていく仕事になるかもしれない?
情報化社会は過去の言動のログを簡単に取ることができること、そして人間は聖人君子のような暮らしを続けることは極めて難しいことを考えると、これからの高齢政治家は極めて難しい立場に置かれることになっていくでしょう。
少し前までならインターネットで過去ログも溜まっていないので、高齢政治家も過去の発言との整合性をしつこく問われることはありませんでした。自分の過去を棚に上げて言いたい放題していても、過去との矛盾を突かれて老醜をさらすことはなかったのです。
しかし、現代社会で活躍してる人々は既に過去ログの山を公文書その他を問わず積み上げている現状です。この人たちが高齢者になったあとに選挙に出よう・政治家を続けようと思っても過去の言動の記録がそれを許さないケースが増えると思います。
そのため、政治家という極めてクリーンさが求められる仕事に関しては、薄汚れた要素が相対的に少なく、二重基準で攻撃されにくい若い人が担っていくことになるかもしれません。もちろん本人次第のところがあるので不倫育休議員のようにあっさりと二重基準でペケがつく人もいるわけですが・・・。
いずれにせよ、政治家がどのような人物になるべきか、ということについて、候補者本人や政党が勝手に決めて有権者に提示する流れではなく、もう少し社会の側からコントロールできるようにしていかなくては、現在の不安定な政治状況は改善されることは無いでしょう。
政治家を批判することは当然のこととして、私たち自身の政治へのアプローチも変えていくことが必要です。
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2016年07月19日
なぜ「今回の都知事選は政策の議論が行われない」のか
<FBでの塩村都議の小池百合子不支持表明、だが・・・>
なぜ、東京都知事選挙のマニフェストのレベルは低くなるのか?
最初に断っておきますが、筆者は東京都知事選挙の主要3候補者をいずれも支持していません。その理由は各候補者が検討する価値もない政策集を発表しているからです。
それぞれのHPを見てもらえればわかりますが、小池氏は国会議員時代からの持論をほぼそのまま、鳥越氏は急ごしらえ感丸出しの代物、増田氏は総花的な政策をちょっと書いてみただけ、という感じです。
小池百合子
鳥越俊太郎
増田寛也
主要3氏ともに気が利いた大学生なら1時間程度で作れるレベルの内容を発表しています。「これで都庁13兆円組織のトップ?いい加減にしろ」というのが都民としての正直な感想ですね。
そのため、今回の選挙は「政策」ではなく「各候補者の過去の履歴」を追うことが有権者にとって重要な要素となってくるわけです。
小池氏の国会議員時代の言動、増田氏の岩手県知事・総務大臣時代の実績、鳥越氏のジャーナリストとしての見識や現在の健康問題などが厳しく問われています。
政策の話ができる状況ではないのだから仕方がないですよね。
都知事選候補者の「政策が腐っている」理由は「都議会議員が働いてない」から
各都知事候補者の政策が「大学生の作文」になっている理由は明白であり、それは彼らを推薦した都議会議員が仕事をしていないからです。
都議会議員は年間・年間1500万円の議員報酬を受け取っています。この他に政策の企画・立案を行うために政務活動費も月額60万円・年間720万円も受け取っています。つ手当なども入れると年間・約2300万円、議会出席拘束日数は100日、つまり政策立案をじっくり行うための報酬も時間も用意されているわけです。
本来であれば、東京都知事選挙に際して、都議会各会派が党推薦候補者の政策集を「極めて高い水準で常備できる」レベルで活動していることが当たり前です。
これは大会派であろうが一人会派であろうが一緒であり、東京都知事選挙に対して自会派の包括的な政策提言集をまとめて、それに基づいて支持・不支持を決定することが常識なのではないかと思います。
この一点だけを見ても東京都議会が機能不全に陥っていることが明らかであり、現状の都議会を解散して、そのメンバーを入れ替えることが望ましいことが分かります。
「ファクトベースの議論」という最低限のレベルをクリアできる都議会議員が必要
今回の東京都知事選挙に対して、都議会議員さんたちも様々な情報発信を行っている状況です。しかし、候補者の過去の実績検証とは公文書やメディアでの「本人の発言」を引用する形で行われることが最低限の作法ではないかと思います。その上で自らの見解を添えて嫌みの一つでもつけるべきでしょう。
筆者も色々情報収集していますが、下記に都議会議員による情報発信として、ダメな事例として一つ取り上げたいと思います。それは塩村あやか都議会議員が小池百合子氏の不支持を表明した際のFB記事です。
「私が小池百合子候補を応援できない理由」と題されたFB記事(全体公開)ですが、明らかに事実混同された内容が含まれたものとなっています。(本人は事実誤認ではないと主張している点は触れておきます。)
塩村都議が小池氏を問題視している証拠は、13年前にVOICEという雑誌で小池氏が現代コリア研究所主任研究員・西岡力氏と杏林大学教授・田久保忠衛氏と対談した記事内容として小池氏のHP上に転載された際の記事文言です。
この記事中で塩村都議が不支持理由として指摘している「東京に米国の核ミサイルを」という文言は、小池氏の発言ではなく西岡氏の発言です。このことは読めば誰でもわかることであり、この小見出しも雑誌編集部による編集をそのまま転載したものであることは一目瞭然です。
この点について、上田令子都議の支持者の方が「小池氏の発言ではない」と指摘したところ、塩村都議は
「ホームページに掲げていること、彼女のこれまでの思想と違わないことを書いたものですが、小池氏を応援する議員関係者よりご意見頂きましたので「言動」→「思想」に変更します。思想については「日本の核武装構想について」の候補者アンケートに「国際情勢によっては検討すべきだ」と小池氏は過去の衆院選時の新聞アンケートに回答しています。」
と自らの見解についての弁明をされています。
正直言って、政治敵に対立されている方々の話なので、主張の内容としてはどっちもどっちだと思います。
ただし、雑誌の転載記事上の他人の発言がHPに掲載されていること、過去の直接的な関係が薄いアンケート結果の引用だけ、では小池氏の政治姿勢を断定するだけのファクトとしては弱いと思います。大学生のレポートなら単位がこないレベルです。
この程度の根拠で東京都議会議員という重要な立場での支持・不支持を表明するようでは、現状の都議会のレベルも与野党問わず知れていると思わざるをえません。現役の都議なら小池氏に「東京に米国の核ミサイルを入れるおつもりですか」と直接聞いて報告するくらいの責任感と行動力が必要です。
各候補者の過去履歴をガンガン詰める投稿を行うことは良いことですが、高額の議員報酬と活動費を使いながら、都議会議員の言動がこの程度のレベルかと思うと呆れざるを得ません。
東京都議会議員は「東京都知事選挙の候補者に対する政策集」を発表するくらいしてほしい
東京都議会議員の皆様が自らの理念を持たれて活動されていることは理解しています。前述の塩村都議も動物愛護について熱心に活動されていることは普段の情報発信からわかる次第です。
しかし、東京都議会議員を務める方々は「最低限・会派として」東京都知事選挙に対する政策集を提出し、それらに対する主要候補者からのコミットを発表するくらいのことは、東京都民に対する都議会議員としての義務だと思います。一人会派でもそれができるように十分な報酬と活動費を東京都民は負担しています。
東京都知事選挙について政策的な情報発信がほとんど行われない原因は「都議会議員が働いていないから」に他なりません。
ファクトに基づかないくだらない主張に時間とお金を費やすのではなく、日常的に取りまとめた政策集を掲げて都知事候補者と交渉する姿を見せれば、自らの主張が今なら大々的にメディアにも取り上げられるチャンスにもなったはずです。
なぜなら、候補者の政策はスカスカなので、ほかに政策的な話題のネタなんてほとんど無い状況だからです。
以上、都知事選挙で政策議論が行われない理由は「東京都議会議員が何も仕事をしていないから」だと思います。選挙結果次第で今年か来年の東京都議会議員選挙ではこのことを忘れずに投票に当たってほしいと思います。
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2016年07月13日
増田寛也氏・公開討論会で「司会者の嘘発見装置」にひっかかる
*青年会議所HPから引用
東京都知事選挙の公開討論会で「若者に対して宣戦布告か?(笑)」
7月12日に実施された東京都知事選挙の公開討論会(青年会議所主催)を拝見させて頂きました。基本的には司会側の中立的な対応と各候補者の防御力が高く、面白発言がほとんど無い平々凡々した内容でした。
その中で一際異彩を放っていたのは(冒頭で暴れたマック赤坂氏を除いてw)、司会者である原田謙介さんからの「ある質問」に対する立候補予定者らの回答でした。
若者政治参加を呼びかける原田謙介さんが発した「各立候補予定者の方は若者の視点・意見を政治・行政の中に取り入れるためにどのようなことをお考えでしょうか」という質問に対し、増田・宇都宮・小池の3氏で比較すると
増田寛也
「若い人に1票の力を信じてほしい」
「若い人が意思表示したことは今までの政治は応えきれず無視してきた」
「選挙以前の段階で平場で若い世代の考えを事前に議論して政策に生かす道筋を作りたい」
宇都宮健児
「選挙権年齢が下がったが被選挙権の年齢が高い」
「選挙権年齢を引き下げれば若者が意見を反映できる」
「供託金が高すぎる。私は日本の供託金は憲法違反であるという訴訟を提起した」
小池百合子
「18歳に選挙権が引き下げられたことで若者には声をあげてほしい」
「学校教育で教え方、特に偏向教育についてはチェックする」
<参考:東京都知事選挙2016 公開討論会>
というものでした。増田・宇都宮・小池の3氏ともに非常に当たり前の話をされているように見えますし、一般論としては十分に成立する内容です。
しかし、筆者は原田健介氏が用意した上記の質問は非常に知的な質問だと感じました。
なぜなら、この質問は「各候補者の若者に対する政治姿勢と質問に対する回答との間に整合性があるのか」ということを見極める「嘘発見装置」のような問いだからです。
たとえば、宇都宮氏の回答は、東京都知事の仕事とは直接関係はありませんが、政策提言と自らのアクションについて具体性が伴った話であったと思います。また、小池氏は過去に大学入試センター試験に関する記述などについて国会で質問しており、質問への回答と国会議員としての行動との間で整合性があると言えます。
しかし、上記の2人と比べて、増田氏の回答はどうでしょうか?「それを貴方が言いますか(笑)」と会場中の方々が心の中で突っ込んだのではないでしょうか。
「高齢者組織票の権化」が「若い世代の1票の力」を説く不誠実さに絶句した
今回の東京都知事選挙において、増田寛也氏の推薦決定・立候補プロセスの中に「若い世代と徹底的に議論した跡」はまったく見られません。今回の青年会議所の公開討論会が「まさか」徹底的な議論の場であると言うつもりでもないでしょう。
報道されている通りであれば、増田寛也氏は東京都知事選挙にあたって「区長会・市長会・町村長会と面談し」「都議会自民党の推薦を受けて」「公明党に推薦願を出した」だけです。
「選挙以前の段階で自らが平場で若い人と徹底的に議論する」というプロセスは一体どこにあったのでしょうか?誰でも分かるバレバレの嘘を堂々と会場で述べていることへの罪悪感は無いのでしょうか?
また、「若者に1票の力を信じてほしい」と言いながら、上記のプロセスから「誰よりも若者の1票の力を信用していない」ことは明らかです。主に「高齢者組織票の権化」である増田寛也氏が「若い世代の1票の力」を力説する様は滑稽であるだけでなく、この国の政治家の誠実さについて深い絶望を感じざるを得ません。
「東京都知事選挙」で若者は怒りを表現するべきだ(# ゚Д゚)
そもそも高齢者組織票の集団である都議会自民党がいい加減な候補者選定を行ったことが原因で、若者を含めた東京都内の有権者は自分の時間を使って何度も東京都都知事選挙に投票させられているわけです。
4年間の任期も務められないオジサンたちを半強制的に選ばされ続けてきた若い世代のことをチラッとでも考えたことがあるのでしょうか。都議会自民党は大人として責任を感じる神経があるなら、本来であれば今回の東京都知事選挙に候補者を推薦することは控えるべきでした。
その上、高齢者組織票の代表者である人物が「行動が全く伴わない言葉」を若者に堂々と投げかけるということは「宣戦布告」という理解で良いのでしょうか?そろそろ若い世代は高齢者組織票の暴挙に対して「若い世代の1票の力」を本気で示す必要があると思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
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