地方活性化

2016年05月08日

「ヤンキーの虎」だけではなく「人類」が育つ環境が大事

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最近流行りの「ヤンキーの虎」論の限界を認識するべきだろう

地方の活性化に取り組んでいる人達の界隈で「ヤンキーの虎」というワードが流行りつつあります。

衰退する地方経済の中で残存者としての利益を得つつ、地元密着の様々な事業を経営して逞しく生きる人々。彼らはマイルドヤンキーの雇用主として扱われることで、都市部の有識者らから勝手に「ヤンキーの虎」という称号を得ることになりました。

中央政府、大学、大企業のような象牙の塔での政策論、要は綺麗な世界で生きてきた人たちにはヤンキーの虎はよほど新鮮な存在のように見えるのでしょう。今まで気が付かなくてごめんなさい的な話かなと。

しかし、地方の現場の人々と触れ合えば、以前から頼れる兄貴的な存在としてヤンキーの虎的な人たちがいることは常識で分かります。自分も散々泥臭いことをやってきたので、その中で出会う彼らの漢気は素晴らしいと感じています。

「ヤンキーの虎」は非常に実行力・行動力・決断力に富んでおり、目標を決めて物事を断行するだけの資金力も有しています。中央政府や地方政府の遅々とした動き、審議会などの非生産的な状況に飽き飽きした論客たちが「ヤンキーの虎」に飛びつく気持ちも分からなくもありません。

しかし、だからと言って、「ヤンキーの虎」によって地方が活性化するということは「木を見て森を見ず」の話であり、新たな地方活性化論のためのバラマキネタを霞が関に徒に与えるだけになると思います。

「ヤンキーの虎」は、補助金経済の二次受益者ではないか、ということ

「ヤンキーの虎」の定義にもよりますが、現在のオーソドックスなヤンキーの虎は「地方経済の小さなコングロマリット」のオーナーと位置付けられていると思います。居酒屋、パチンコ、携帯ショップ、ガソリンスタンド、介護施設、産廃、その他諸々の儲かりそうな業種を統合しているプレーヤーというイメージです。

しかし、ヤンキーの虎の事業ドメインは、地方経済の「内需」に属する分野であるため、実態としては補助金経済の二次受益者ではないかと思われます。地方の人口減少の影響を受け続けながら、先細りする都市部からの財政移転の残存利益を合理的に回収しているわけです。

つまり、彼らは社会のビジネスモデル自体を変革するような存在ではなく、あくまでも現実優先の経営判断力を持った存在と言えるでしょう。それは経営者個人の資質として見た場合は素晴らしいことですが、中長期的に地方経済の衰退を食い止める存在ではないと思います。

地方経済が成長していくためには、地域外でも通用する技術やビジネスモデルを持った企業が誕生し、それらの企業が経済全体の屋台骨になって発展していくことが望まれます。

ところが、「ヤンキーの虎」が持つコアコンピタンスは、それらの技術やビジネスモデルの革新を創造する方向とは正反対の力によって構成されているのです。

「虎を頂点とした弱肉強食」ではなく「雑多な環境による適者生存」こそが競争力の源泉になる

「ヤンキーの虎」のコアコンピタンスは、地域社会におけるソーシャルキャピタル、特に縦社会の序列を形成するリーダーシップにあります。このようなリーダーシップは「やるべきビジネスモデルが見えている」場合に最大の力を発揮することになります。

ヤンキーの虎が地域に生息している生物の行動を統率し、次々に新しいビジネスを立ち上げさせて雇用を継続・維持していくやり方は、従来型の地方産業のM&Aや東京からのビジネスモデルの輸入という文脈において圧倒的な強さを示すことでしょう。

ただし、筆者のように東京都心部でVCに投資されて創業されるベンチャー等と触れあっている身としては、上述のようなヤンキーの虎のスタイルでは、地方経済の新たな立役者となる存在は生まれてこない、と感じています。

東京都心部で生まれるベンチャー経営者は、人物に依るものの、表面的にはヤンキーの虎のような漢臭さや覇気を感じない場合も多く、むしろ生き物としての生存が危ぶまれるようなパーソナリティの方もいたりします。

しかし、これらのベンチャー経営者らのビジネスが成功した場合には、社会全体のビジネスモデルが変わるものが多数存在しています。東京という社会的序列がはっきりしない雑多な環境から生まれるベンチャーは、ビジネス環境という生態系自体を作り替える「人類」であると言えるでしょう。

そして、地方経済が中長期的に必要としている要素は、「ビジネス環境自体を変える」または「域外経済においても圧倒的な市場シェアを占める」強いビジネス、そしてそれを生み出す「人類」であることは明らかです。

飼育係に支配された日本国の檻から経済人を開放することこそが重要である

日本の課題は飼育係(霞が関)に支配された日本国から動物たちを開放することです。

日本国の飼育係である霞が関は自身が管理する動物園の中で繁殖していく種族を決定し、それ以外の種族が増えないようにする力を持っています。しかし、彼らは神様でもなんでもないわけですから、生態系が繁栄するための方法を知っているわけではありません。

現在、多くの地方社会は飼育係の支店(地方政府)によって管理されており、大多数の生物は彼らの監督の下で生きていくことが許されている状況となっています。それらの場所では標語としての適者生存・繁殖促進が謳われているだけであり、実際には全ての生物が絶滅(人口消滅)に向かうプログラムが実質的に実行されているわけです。

ヤンキーの虎のような経済的な生態系における新たな発見を喜ぶだけではなく、根本的に日本経済の環境を野性的な状況に戻して活力を取り戻していくことが必要です。多様な生物が氾濫する肥沃な大地を蘇らせることが求められており、既存の環境の中での生存状況を確認だけでは不十分です。

筆者は「ヤンキーの虎」という言葉が「霞が関用語に変換された」上に虎たちに改造手術が施すための訳が分からん予算がつけられて生態系全体のバランスが更に崩壊するのではないかと懸念しています。

中央も地方も経済については介入することなく自然の逞しさに任せておけば良いのです。そして、地方からもビジネス環境全体を変革するような人々が生まれてくることに期待したいと思います。

ヤンキーの虎
藤野 英人
東洋経済新報社
2016-04-15


本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2015年11月15日

地方活性化を本気で望むならマインドを変えるべき

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アゴラに寄稿した記事について、長崎総合科学大学の前田陽次郎さんから返信を頂きましたので、私の方からも回答をさせて頂ければと思います。少々辛めの意見ですがご容赦頂ければ幸いです。

まずは地方税・地方交付税に関する大枠の話についてお答えさえて頂きます

根本的な見解の違いを申し上げますと、私は「地方が都市部と同様に十分なインフラが整備されないとおかしい」ということは不可能かつ無謀だと思いますし、また高所得者から低所得者への所得移転も無条件では同意しません。

その上で、地方財政の話について申し上げますと、現状の地方交付税などの地方への強制的な税配分の継続を前提とした場合、東京都民が地方自治体に対して利用使途を査定するという制度の導入には同意します。そして、過剰な財源移転を止めることについても当然に賛同します。

また、ご提案の各都道府県から得られる消費税収入を基礎とした地方交付税廃止案は、都市部にとっては消費税偏在の関係から大量に資金が残って非常に良いことだと思います。さらに、消費税の地方税化を通じて増減税競争が起きることで足による投票が進むことも良いことです。

仮に東京都の税収が潤沢になった場合、余剰見込みの税収を使った都内消費税減税などを通じて、東京都の景気を大幅に浮揚させることで、首都圏3500万住民の所得・雇用が大幅に改善すると思います。おそらく国民的な住居移動が促進されて首都圏人口は増加し、経済効果の恩恵を受ける人の数は増大し続けるでしょう。限界集落まで含めた国民全体という話は難しいかもしれませんが、単純にバラマキを行うよりも都市近郊の地方自治体の振興には大いに役立つはずです。

資産格差・所得格差についてですが、田舎の地方自治体内部にも所得格差・資産格差は当然に存在しますので、まずはそちらで平等化を実施してみてください。それを一国レベルで実施するのか、地域単体で実施するのかの違いでだけです。本当に成り立つ話でしょうか、想像してみてください。

私が何度も申し上げていることは、都市からの財源移転を前提としなければ、地方の経済も財政も成り立たないことを素直に認めるべきであり、都市に集中投資することでスムーズな移行を実施するべきだということです。地方消滅に向けた準備や移住促進を速やかに行うべきだと思います。

ごめんなさい、細かい質問に回答するならコンサルティングフィーを頂けますか

さて、その他の前田陽次郎さんの諸々の疑問に一つ一つ反論していくこともやぶさかではないのですが、この場でそれを行うことはいたしません。なぜなら、アイディアも紙面もは有限だからです。

前田さんは優秀な都会人が「ふるさと納税のような制度を提示してあれば」とおっしゃっていますが、それらは無料ではないために地方活性化策についてこの場では回答する気はありません。

ちなみに、自分は現実に再生不能な地方自治体がゴロゴロしている中で、あたかも再生可能であるかのような話を安易にすること自体が無責任だと感じています。

ご紹介された「ふるさと納税」で賄える税収など微々たるものですし、本当に儲かるモノなら地方自治体ではなく民間で運営したらよいと思います。また、中途半端なアイディアコンサルである伝道師やら地域おこし協力隊のような地方を途上国扱いする仕組みで事態が改善するとも全く思いません。

ただし、前田さんに限らず地方活性化にお悩みの首長様などがいらっしゃれば、容赦のない意見を述べて良いのであれば、活性化策のアイディアを有料でお答えさせて頂きます。

営業サービスとして地方活性化の基本マインドについて述べさせて頂きます

そうは言っても、「アイディアは無い」と言われるのも癪なので、下記の通り基本的なものの考え方を提示します。これらが無くして地方が活性化することはありません。

地方活性化についての基本的な3つの考え方について述べさせていただきます。

(1)資本主義マインド

最初に変えるべきことは、金持ちから貧乏人にお金を移すことが当たり前という発想を止めることです。そんな考え方が蔓延っているところに「お金を稼げる人」はイケダハヤトさんのようなプチブル個人事業主などの例外ケース以外はワザワザやって来ません。地域の富はお金を稼げる人が創ります。そういう人を大切にする政策を実行しましょう。

(2)ビジネスマインド

民間経済が回復することはそのまま地域が活性化することであると理解しています。したがって、民間の経済力が豊かな都市部とのビジネスを積極的に行うべきです。都市部からの財源移転(漁師が魚を貰っている状況)から抜け出て、民間経済が回る(魚を釣る)方法を覚えましょう。ちなみに、私が何度も言っているように、既に魚が捕れないほどに砂漠化が進んだ場所であることが判明した場合は速やかに住む場所を変えることをお勧めします。

(3)主体性マインド

たとえば、観光振興を例にとってみれば、大半の観光資源は元々別用途で使われていたものです。それを観光資源にしていくためには主体性が必要であり、地域の人が自分で自発的に考えて実行できるマインドが必要です。地方創生予算があるからとか、同じ国民だから最低限の水準を整えるべきとか、というしみったれた発想ではなく、隣の街よりも稼げるまち、都市よりも稼げるまちを目指すことが大事です。

私からは以上の通りとなります。何度も申し上げますが、これ以上のアイディアをお求めであれば、コンサルティングフィー次第では相談には乗らせて頂きます。よろしくお願いいたします。

ということで、11月16日にアゴラ上で返信予定。





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yuyawatase at 19:00|PermalinkComments(0)