保育園
2016年03月22日
公正取引委員会が「保育園」制度の閉鎖性に激おこ状態だった件
公正取引委員会が「保育園」に関する制度の閉鎖性に激おこ状態だった件
(平成26年6月25日)保育分野に関する調査報告書について
という保育園の閉鎖性について問題点を指摘する報告書が提出されています。簡単に中身を要約すると、
「既存の社会福祉法人らが行政と癒着して株式会社の参入ができない仕組みを作っているので、本来供給されるべき株式会社による子育てサービスが供給されてない」
ということです。つまるところ、保育園業界の腐敗について堂々と指摘したものということが言えるでしょう。公正取引委員会もなかなかの男っぷりを発揮しています。
上記の平成26年の公正取引委員会の指摘を受けて、平成27年4月1日から規制緩和で株式会社立の保育園を原則自治体は受け入れざるを得なくなったものの、目に見える制度的な障壁、目に見えない非制度的な障壁が株式会社立の保育園によるサービスの供給量を鈍らせている状況です。
株式会社立の保育園は2015年4月以来順調に増えていますが、従来までは待機児童問題が散々叫ばれる中で株式会社の参入を拒む自治体と保育園がそれらの子育てサービスを必要とする家庭を自分たちの利権のために見殺しにしてきたとも言えるかもしれません。
経営的な体力がある株式会社が参入しやすい体制を整備が必要
そもそも現状の社会福祉法人主体の保育サービスの提供は、中小・零細事業者中心の保育園運営または何らか他の福祉系事業の付帯としての事業運営を前提としています。
したがって、十分に体力がある事業者が新規にガンガン参入して子育てサービスを提供するような環境がありません。また、一般的な中小・零細事業者と同じように社員に十分な給与を払ったり、将来に渡るキャリアパスを示しづらい環境があります。
このような状況は一定規模のスケールメリットを見込んだ株式会社が参入することによって、本来は改善されていくことが想定されますが、現状では上述の公正取引委員会が指摘した「癒着」による制度の不均衡によって、株式会社と社会福祉法人の競争条件に著しく差が存在しています。(社会福祉法人には原則非課税・設置補助金有など)
保育士の待遇・キャリアパス改善は保育チェーンが参入して雇用・キャリアの目途がつけられるような事業者がいて初めて成り立つものであり、保育園経営者らは保育士の待遇改善を真に願うなら株式会社の新規参入を認めることを積極的に推進するべきでしょう。
市場の力を生かした保育環境の改善を積極的に進めていくべきだ
福祉の話になると、何でもかんでも補助金増やせ、給与増やせ、という議論になりがちですが、それは大前提として「まともな競争環境」があることが重要です。
公正取引委員会に指摘されている点などについて、株式会社と社会福祉法人の間のイコールフッティングなどの条件面の整備をしっかりと改善に取り組んだ上で、保育園サービスの在り方についての議論が行われることを望みます。
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2016年02月19日
保育士の給料が低い理由、保育の方法を根本から変えるべき
最近、やたらと騒がれている保育士の給料が低いという不毛な議論
「保育士の給料が低くて保育士が集まらない、その結果として保育所の基準が満たせないため、保育所による子どもの受け入れ体制が十分に整備されていない、それが待機児童が解消しない原因だ!」という不毛な議論が喧しく騒がれる世の中になりました。
たしかに、保育士給与はかなり低いことは事実です。
しかし、その理由の要因として、業界の年齢構成が20代~30代前半中心であること、平均勤続年数が僅か7.6年であること、したがって業界の半公務員的な状況に鑑みて給与基準を引くと、保育士の給与は低い水準にとどまらざるを得ないことが分かります。
そして、規制によって小規模経営が基本となっている保育所は、経営陣による同族経営が普通であるために保育士として将来的なキャリアパスはほぼありません。
政府の給与基準や規制を前提とした議論は不毛な結論になることは明らかであり、本当に保育士の給料を上げたいならば、馬鹿の一つ覚えのように政府に給与アップを訴えるタックスイーター的な態度では、せいぜい雀の涙程度の果実しか手にすることはできないでしょう。
そもそも保育所で働いて生計を立てるという発想は正しいのか?
根本的な視点に立つと、保育所における保育士の仕事だけで生計を立てる必要があるのか、というところから考え直す必要があります。
保育所勤務だけで生計を立てるという発想は、「保育士という資格が存在し、保育所という勤務地が存在して、そこで決まった時間で子どもを預かる」という政府の作った仕組みが前提となっています。そして、このような勤務を強制されるため、保育所で安月給でこき使われてモンスターペアレントの相手をしなくてはならないのです。
しかし、元々家庭で行われていた子育てサービスをより高度な形で身に付けた保育士というスキルは本来もっと高く評価されるべきであり、時間単価もより高い水準で受け取ってもおかしくありません。
しかし、現状では保育士は勤務地・勤務方法に規制を受けているため、公務員と保育所経営者らに中抜きされた後の安月給しか受け取ることができない不遇な環境に置かれてます。
社会全体が子育てに参加する仕組みを効率的に構築することが必要
仮にUberのように子育てサービスの提供者と需要者を直接リンケージする仕組みができあがり、お互いがソーシャルレーティングを受けて自由にマッチングする仕組みができれば、公務員や保育所経営者らによる中抜きは消滅します。
そして、子育てを経験した親御さんも自らの経験を生かした形で子育てサービス市場に参入できるとともに、保育士資格を持つ人々は専門家として高単価でサービスを販売することができるようになるでしょう。
子どもを持つ家庭にはヴァウチャーを支給することで低所得問題と子育て市場の育成を同時に解決するとともに、高付加価値サービスを使いたい家庭は追加料金を払ってサービスを受ければ良いのです。また、付加価値を上げるために提供者側に対する研修も充実していくことが予想されるとともに、参加者全員が加入する保険システムなどを整えることでリスクマネジメントを行うことが望まれます。
つまり、政府(公務員)が指定した特定事業者だけが子育てサービスを提供する時代から社会全体で子育てを行う時代に移行していくことが必要なのです。その過程で専門性を持った保育士給与の時間当たり単価も高まっていくことが想定されます。
公務員と保育所経営者らによる保育士の囲い込みという社会システムを変える
現在の日本の子育て環境の問題は、政府と保育所経営者らの既得権化であり、本来はテクノロジーの進化によって淘汰されるべき旧来型の保育所サービスがいまだに幅を利かせていることにあります。
少子化が進展していく中で、新たに保育所を作り続けることは盲目的な社会保障のバラマキであり、世代間格差による対立によって保育所設立・保育士給与アップを煽り立てることは無見識そのものと言えます。
保育士は専門性を持った人材であり、現状の政府(公務員)と保育所経営者に囲い込まれた環境で、安月給で暮らすような人々ではありません。彼らは市場によって適切な評価を受けて、個々人のサービススキルに見合った報酬を受け取るべきなのです。
保育士給与をアップしながら誰もが子育てサービスを受ける体制を作るためには、現状の仕組みを止めて根本的な社会システムの変革を行うことが必要です。高度経済成長期の残滓としての社会システムを一掃し、現代社会にふさわしい仕組みを構築することが望まれます。
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2016年01月07日
20代・30代所得税全廃(約3兆2111億円)は可能か?
出生率の改善には「20代・30代の所得税全廃」の実行こそが重要
以前の記事「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ」でも述べた通り、日本の出生率の変化は、価値観の変化による晩産化と経済不安・雇用不安による未婚率の上昇によるものであることは明らかです。
そして、出生率の向上という新しい時代の要請に対応するために、従来までの「子どもを持つ世帯」に偏った子育て支援策の在り方を「結婚・出産」に的を絞ったものに転換する必要性を説きました。
その中で、未婚・未出産も含む20代・30代の所得税減税を行うことで、雇用増・可処分所得増・経済成長を促すことを提言しております。なぜなら、中途半端な児童手当などの子育て政策を行うよりも、勤労者の雇用機会を生み出して可処分所得を増額させるほうが婚姻率・出産数の向上が見込まれると推測しているからです。
日本の出産は結婚家庭から大半が生まれているため、若手世代を正社員で雇いやすい環境を税制面から整備して婚姻を促進することが有効です。さらに、女性の社会進出の観点から働く世帯の可処分所得増を通じて各種保育サービスなどへの支出を確保していくことは急務と言えます。
20代・30代の所得税総額は「3兆2221億円(推計・平成26年度)」である
では、20代・30代の所得税を全廃するには実際に幾らの税額が必要なのでしょうか。家計調査によると、平成26年平均で、20代・30代は所得税を
20~24歳 月額4,006円 年額48,072円
25~29歳 月額7,177円 年額86,124円
30~34歳 月額9,551円 年額114,612円
35~39歳 月額13,779円 年額165,348円
ということになります。平成26年4月1日の各年代の人口推計と掛け合わせた所得税総額推計は、
20~24歳 2968億4460万円 (617万5千人)
25~29歳 5842億6521万6千円(678万4千人)
30~34歳 8644億370万4千円 (754万2千人)
35~39歳 1兆4656億4467万2千円 (886万4千人)
合計 3兆2111億58,19万2千円 (2936万5千人)
ということになります。20代前半だけなら3000億円、20代全体なら約9000億円、20代~30代前半までなら約1兆8000億円、20代・30代全体ならば3兆2100億円ということになります。
ちなみに、自民党が来年3400億円程度をかけて高齢低所得者世帯に3万円を約1250万人にばら撒く予定をしていますが、同じ金額をかけると20代前半の所得税を廃止することが可能です。若年世代・約3000万人がいかに政治的に舐められているのかを如実に表した数字です。
3兆円2110億円は巨大な金額に見えますが、消費税1%増で2兆円税収増するという見込みもあり、消費税を8%→10%に増税するのであれば20代・30代の所得税を全廃することは可能です。
政策効果の薄い児童手当を減額・廃止、結婚を促進する未婚世帯を含む雇用増・可処分所得増を
もちろん、高齢者への社会保障費は毎年2.6兆円(国・地方・特別会計含む)の増加をしている状況(小黒一正「財政危機の深層」)であり、これらを抑え込んで若年世代に回すことは必須です。日本はシルバーデモクラシー国家であるため、高齢者への社会保障費を削って若年世代に予算を回すことは困難を極めるものと思います。
そのため、若手世代の子育て予算の中で既存の政策の優先順位を晩産化・未婚率上昇対策に切り替えていくことが重要です。そこで、出生率に対する政策効果が低い「児童手当」予算を廃止または減額して20代・30代の所得税減税に回すことを検討するべきだと思います。
児童手当は平成26年度予算で2兆2300億円(平成27年度)が計上されていますが、児童手当1億円で1名の出生率向上効果ということで、予算支出の出生率に対する政策効果が極めて低いことが会計検査院のレポートによって示されています。(詳細は「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ」)
そのため、児童手当予算を15%削減で20代前半、40%削減で20代全体、85%削減で30代前半までの所得税を全廃することが可能です。可能であれば30代前半までの所得税全廃し、児童手当予算の残額3000億円で保育園整備や不妊治療への手当増額などに力を注ぐべきです。
何となく不可能に思える政策も従来までは「提唱や実行」されてこなかっただけである
20代・30代の所得税全廃という何となく不可能に思える政策であったとしても、実際に必要予算を計算してみれば現実的に実行可能なものであることが分かったと思います。要は今まで誰も真面目に推計をしてこなかった、または想像力が欠落していただけのことです。
20代・30代の人口合計数は約3000万人です。これは前回の参議院議員選挙で自民党・公明党に投票した比例票数(約2600万票)を上回るものであり、20代・30代は真面目に自分たちの経済的な利害を政治的に表明していくべきです。
その際のポイントとして重要なことは、若者世代の主張を述べる際に「保育士の給料増額」などのようなミクロな争点で戦わないことが重要です。保育士は40万人しかおらず潜在保育士を入れても100万人しかいません。つまり、総数3000万人のボリュームがまるで選挙時の圧力として生かされないのです。したがって、今回の保育関連の政策変更のように予算措置も薄く「それじゃない」感が強いものになってしまいます。
このような失敗は税金にたかることを前提としたタックスイーターとしての政治行動が招いた失敗と言えます。納税者世帯が圧倒的に多い若年層が税金で暮らす高齢者層と「税金で食べる競争」をして勝てると思うことは戦略環境への認識不足と言えます。
時代の変化に合わせた主張の変化が必要、タックスイーターからタックスぺイヤーへ
多くの若年世代はタックスイーターではなくタックスペイヤー(納税者)であり、シルバーデモクラシーに対抗するためには「20代・30代減税」などの恩恵を受ける人口の絶対数が多い争点を提示するべきです。
このように述べると「今までも児童手当や保育園などが整備されてきたじゃないか」という人もいるかもしれませんが、それらの制度が導入された当時は「団塊の世代が子育て世代であり、高齢者数は相対的にまだ少なかった」という事実を忘れるべきではありません。そのような時代背景があったからこそ、当時の若者世代のタックスイーターとしての主張が通っていたに過ぎないのです。
日本の子育て関連の予算がOECD諸国の対GDP比で低いためにもっと増額をするべき、という主張を行う人もいますが、民主主義の現実をもっとよく見たほうが良いと思います。そのような予算増額競争では子どもを持つ世帯が高齢者世帯に勝つことは不可能であり、もっと間口を広く取った若年世代全体にダイレクトに関係する争点設計を行うことが重要です。
「子育て支援策を訴える政治家」=「若者の声を代弁する政治家」という誤った認識と戦略が選挙マーケットにおけるニッチへの没落を生み出し、若者向けの予算措置・減税措置は行われてこなかった、という現実を受け入れるべきでしょう。
先進国の中でシルバーデモクラシーがいち早く進展していく日本において、若者の政治行動・政治的主張が現実妥当なものに変化していくことが望まれます。
yuyawatase at 07:00|Permalink│Comments(0)
2015年12月28日
「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ
日本の出生率の低下の原因は価値観の変化などによる「晩産化」にある
出生率の低下の主要因は、国民の価値観の変化による晩産化にあります。
1980年代と比べて現在は、30代の合計特殊出生率は増加していますが、20代の合計特殊出生率は約2分の1まで低下しています。
平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況(合計特殊出生率について)*厚生労働省
その結果として、女性の第一子の出産年齢が30代となることによって、第2子を産むための時間的な制約が発生し、結果として日本全体の人口が減少していく状況が発生することが予想されます。
上記のような変化は、人生設計に関する自由な価値観が普及したポジティブな要素と非正規雇用による雇用環境の不安定化などのネガティブな要素の両方が働いた結果と生じています。
政策ターゲットを間違えた「子育て支援」は少子化への効果が薄いという実態
「出生率」の改善を政策目標として据えた場合、既存の子育て支援策は「政策ターゲットを間違えた」「時代遅れ」の政策となっています。代表的な子育て支援策は、児童手当と保育所整備の2つということになりますが、いずれも少子化対策としては十分な効果を発揮していません。
なぜなら、上記の政策は団塊の世代が出産適齢期に入った1970年代に本格的に整備が開始されたものであり、「既に子どもが生まれた家庭」からの政治的圧力によって形成されたものだからです。
児童手当は1972年に第3子がいる家庭に支給が開始された家計への補助政策です。その後対象が第2子、第1子と拡大しつつ、その支給金額が増額し続けています。平成27年度予算は国・地方・事業主負担・公務員分を合わせて2兆2300億円という巨大な支出に膨らんでいます。(平成27年度における児童手当制度について)
しかし、児童手当は出生率の改善についてはほとんど効果が無いという会計検査院からの研究レポートが提出されています。児童手当の支給を通じた所得増による子どもを持つインセンティブと現在の子どもへの教育インセンティブが子どもを新たに産むことに対して各々プラスとマイナスの効果を及ぼして相殺されます。その結果として、児童手当の出生率に対する政策効果は微小となり、「子ども1人を増加させるために年1億円の児童手当」が必要とされています。(子育て支援策の出生率に与える影響 会計検査研究第38号・2008)
一方、保育所は元々明治時代の民間で運営されていましたが、戦後直後の段階では経済的に困窮している家庭用の救貧政策として法制化されました。その後、高度経済成長期には女性の社会進出との関係で保育所づくり運動が展開された結果、保育所整備が開始されました。
ただし、その後も政府内には子どもは家庭で育てるものという意識の中で供給制限・サービス制限が存在し続けたため、認可外保育所などの女性の更なる社会進出に対応したサービスが増加し続けることになりました。現在では更にエンゼルプラン・新エンゼルプラン、東京都による認可保育所整備などの共働きが標準化した社会向けのサービスが展開されており、今後は一層の規制緩和や民営化などを通じた効率的な施設整備が望まれているところです。
しかし、上記の会計検査院の研究レポートによると、待機児童を解消するまで保育所を整備した場合の出生率への改善効果は0.02ポイント、効果が高い都市部で0.1ポイントの改善効果が見込まれますが、保育所の整備を促進しても出生率の劇的な回復には至りません。
そもそも保育所の整備は、子どもがいる女性の社会進出などの社会変化に対応したものであり、晩産化などの出生率の改善を元々意図したものではないからです。
既存の子育て政策の大きな柱を構成してきた、児童手当と保育所整備の共通点は「既に子どもがいる家庭向け」の政策であり、日本の人口減少問題を解決するための出生率改善へのダイレクトな効果は薄いものと言えます。
「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ
私たちは既存の「子育て支援」のための政策が「出生率の改善」に効果があると過大な期待をしてきたのではないでしょうか。それらの政策の効果は極めて限定的であり、出生率改善のためには既存予算を見直して根本的な政策転換を実行することが必要です。
出生率改善のための政策コンセプトは「子育て」から「結婚・出産」への転換です。既に子どもがいる家庭から未婚・未出産の人々に対する結婚・出産支援に政策をシフトさせるべきです。
そこで、出生率低下に影響を及ぼしている要因を晩産化と未婚率の増加にあるとした場合、これらに対応した集中的な政策投下を行うことが重要となります。
「晩産化」という価値観の変化に対して過去の価値観を強制することは人権侵害でしかなく、20代だけでなく30代・40代での出産を安心・安全に行えるように不妊治療・産婦人科サービスなどの強化に取り組むべきです。特に多額の資金が必要とされる不妊治療に関しての重点的な予算投入が重要です。
「未婚」の状況は男性側の非正規雇用の増加の影響が大きく経済環境・雇用環境の改善が必要です。そのためには、20代・30代向けの所得税減税を通じて、未婚・未出産者を含む若手世代全体の手にお金が残る環境を整えるとともに、企業側から見た若手世代を雇用する経済メリットを強化することが望まれます。根本的には産業関連の規制緩和を実施して、労働生産性を高めながら新規雇用増や雇用の多様化を進めるべきです。
上記の政策のための予算は児童手当2兆2300億円の削減によって捻出していくべきです。晩産化の影響から一定の所得を有する30代の子育て世帯も増加することが予想されるため、児童手当による家計支援を通じた出生率改善は益々効果が薄れていくことが予想されるからです。
出生率の改善にほとんど効果が無い児童手当から「結婚・出産」へのダイレクトな支援に切り替える、という大胆な決断を実行することが望まれます。
「子育て支援」を優先するなら「移民による人口補充」を視野に
既存の子育て支援策では出生率の改善を見込むことはほぼ不可能であるため、「子育て支援」の必要性を訴えるタックスイーターを重視した政策を継続し続ければ深刻な人口減少から抜け出ることは困難です。若手世代から高齢世代への過重な所得移転を止める必要はありますが、その分を子育てタックスイーターに予算を割いても意味がないのです。
そのため、現状のように「子育て支援」を重視して「結婚・出産」を軽視する政策を実行する場合、日本の人口減少を補うために大規模な移民受け入れ政策を実行することは必然となります。移民の受け入れはダイレクトな経済効果がもたらされるとともに、移民は若年世代が多いことが予想されるので日本の出生率は大幅に改善していくことになるでしょう。
現在の財政難の状況にある日本では、何でもかんでも予算を増額することは極めて難しく、特にシルバーデモクラシーが深刻化する中で、若手世代への予算配分増を求めることはほぼ無理だと判断するべきです。そのため、限られた予算をどのように使用するのか、という知恵が重要となります。
高度経済成長期に形成された既存の子育て政策という時代遅れな政策に予算投入を増やしたところで効果はなく、現代社会に合わせた政策を展開することで出生率を改善していくことが望まれます。
yuyawatase at 16:07|Permalink│Comments(0)
2015年11月03日
待機児童増加の犯人は事業者の資本力が足りないこと
「待機児童増加の、意外な犯人は」(駒崎弘樹氏)
http://blogos.com/article/141651/
という記事を読みました。駒崎氏の主張に対する感想は「しっかりとした企業体の参入」が必要だということです。
民間の経営感覚から見た違和感
駒崎氏は記事の中で、待機児童増加している原因は「役所が保育園のための初期の補助金を創らないからだ」と述べており、地方自治体や厚生労働省などへの制度設計を求めています。しかし、本当にそうでしょうか?
仮に、駒崎氏が述べているように「投資から回収までの期間が1年半」かかるとしたら、経営の当たり前の感覚としてそれに見合うだけの資金調達を実施するだけのことです。実際、普通の民間事業であっても回収までに1年半かかる事業なんてザラだと思います。
むしろ、回収見込みまで運営補助で見通せているのに「資金調達を実施することができない」と仮定することは?と思います。資金調達という経営の手腕の根幹に関わる話を「行政の補助金が無いことに責任転換」することは話の筋が明らかに違います。
本当の問題は事業者の資本力の問題ではないか
確実に儲かる可能性が高い事業であるにもかかわらず、初期資金が用意できないために参入できない、それによって待機児童が解消できない、という駒崎氏の主張の通りであれば、「資本力を持った事業体が参入すれば良い」というだけのことです。
むしろ、素人考えでは初期の補助金が無いと保育園を運営できないような主体に経営を担わせることは危険ではないか、とさえ思います。良いサービスを提供しようと思えば、資金繰りはカツカツの状況ではなく、多少の余裕を持って回す必要があるからです。
本当に重要なことは、資本力が足りない事業者が参入しやすい制度ではなく、資本力の潤沢な事業者が参入しやすい環境を整備することです。
資本力を有する事業者の参加に「価格の自由化」は不可欠
資本力を有する事業者が魅力を感じて参加するためには「価格の自由化」は必要不可欠です。価格が自由化されることを通じて、強力な資本力を持つ事業者が大量に参加すれば待機児童問題は一気に解決します。
待機児童数が多い相対的に保育料が上昇している地域には、新たに事業者が参入することを通じて価格競争が生じることになります。自由価格であったとしても競争が存在している限り価格は妥当なラインに収斂します。
むしろ、社会福祉法人に関する規制、保育士に関する規制、施設に関する規制などの規制緩和を推進するとともに、経営状況が第三者からも分かるように徹底した情報公開を義務付ける方向で改革するべきです。
社会主義者の言論が社会の発展を遅らせているということ
駒崎氏の記事の中では区役所の担当者の答弁を社会主義として切り捨てていますが、同じ問題を補助金があれば解決できると主張する姿は単なる社会主義者同士の近親憎悪でしかないと思います。自分に言わせればどちらも社会主義者ですが、それをうまく自由主義的に見えるよう化粧できているか否かというだけのことです。
現代社会においては福祉国家病が蔓延しており、あらゆる人々が政府予算にたかるようになったため、昔のように「補助金を寄こせ」と騒げば無限に予算が出てきた環境ではありません。まして、高齢者の影響が強い超高齢化社会において、それ以外のアクターに対する補助金設定をソリューションとして提示することに疑問を覚えます。
現在のような人口構造・財政構造の下では、若者や乳幼児に関する施策は自由化を進めて民間資本の力で実現していくやり方について知恵を絞る必要があります。高齢者と同じ土俵で予算の分捕り合いで競合することは生産的なことだと思えません。徒に子育て関連の補助金を求めることは物事の根本的な解決を遅らせることになるのではないでしょうか。
yuyawatase at 17:00|Permalink│Comments(0)