保守派

2016年12月13日

トランプ外交の「算盤勘定」への正しい対処法

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(国務長官に指名濃厚・レックス・ティラーソン・エクソンモービルCEO)

祭英文・中華民国総統との電話会談は何を意味するのか

12月2日、「トランプ次期大統領が台湾の祭英文氏と電話会談を行った」とTweetしたニュースは東アジアに激震をもたらしました。米国と中国が所与のものと看做していた「一つの中国」の原則を覆すものであり、米国内の保守派だけでなく日本の保守派からも喝采の声が上がりました。

また、トランプ氏は「米国は台湾に何十億ドルもの兵器を売っているが、私は台湾からの祝いの電話を受けてはならないとは興味深い」ともTweetしています。そして、この2つのTweetの中にトランプ政権の外交方針の一端を垣間見ることができます。

米国の保守主義者の考え方である「自由主義」とビジネスマンの考え方である「金銭的利益」、この2つの異なる思考法が絶妙なバランスでブレンドされた外交、これがトランプ政権の外交方針だと看做すべきでしょう。

そして、今後のトランプ外交で何が起きていくのかを理解するためには、トランプ政権内での力関係を注意深く観察する必要があります。

トランプ政権の中で圧倒的なポジションを獲得した保守派・茶会党の面々

トランプ政権は史上最も保守的な政権と呼ぶことができると思います。これは選挙戦において共和党主流派が手を引く中で、保守派がフル回転したことで勝利を掴むことができた論功行賞によるものだと推測されます。

マイク・ペンス副大統領以外の閣僚メンバーとして、ラインス・プリーバス大統領首席補佐官、ジェフ・セッションズ司法長官、ベッツィ・デボス教育長官、マイク・ポンぺオCIA長官、トム・プライス厚生長官、スコット・プルイット環境保護局長官、ベン・カーソン住宅長官などの保守派が推す人々が次々と任命されました。

また、ニッキー・ヘイリー国連大使は予備選挙期間中にトランプ氏の政敵をエンドースし続けたにも関わらず、同ポストを手に入れることに成功しました。彼女は保守派が推す次期大統領または副大統領候補者と目される人物として注目されています。彼女の国連大使就任は、共和党保守派の重鎮であるATRのグローバー・ノーキストが「素晴らしい選択だ。ニッキー・ヘイリーは共和党の未来。トランプは長期戦を行っている。」と喜んでコメントするほど保守派の人々にとって慶事でした。

更にトランプ氏は上記の他にもアンディー・パズダー労働長官やリンダ・マクマホン中小企業局局長などの極めて保守的な主張を持つ企業経営者らを規制撤廃を推進する重要なポジションに就けています。

これらは米国建国の理念(≒道徳)である「自由主義」を体現する人選であり、リベラルな傾向を持つとして保守派から警戒されているトランプ氏にが保守派に対して相当に配慮したものと思われます。

トランプ政権の算盤勘定を担う国務長官、商務長官、財務長官の3人

レックス・ティラーソン国務長官、ウィルバー・ロス商務長官、スティーブン・ムニューチン財務長官の3人はトランプ次期大統領肝入りの人事です。この3人はいずれもビジネスマン出身の人々であり、トランプ氏の算盤勘定を担当する人々だと言えるでしょう。

特に当初名前が挙がっていたボルトン氏やロムニー氏ではなく、ティラーソン氏を国務長官に指名したことはトランプ政権が極めて強いビジネス志向を持った政権であることを示唆しています。また、同時にシェール革命を経て、エネルギーの自立を確立した米国が今後は石油・ガスなどの資源外交の側面を強化していくことを表す象徴的な人事だとも言えるでしょう。

ただし、トランプ人脈からの上記3長官の任命には、米国建国の理念を奉じる共和党内保守派から極めて強い違和感を持たれていることも事実です。ウォール街やグローバル企業が政権と接近することによるクローニーキャピタリズム(縁故資本主義)は共和党保守派が最も嫌うところだからです。両者のパワーバランスの推移は中長期的には政権の不安定要因となる可能性があります。

とはいうものの、当面の間は対外交渉のツールとして冒頭の祭英文氏との電話会談のように保守派が満足するロジックをまぶしながら、トランプ政権内で保守派は米国国内の減税・規制緩和に注力し、国際的な外交・ビジネスについてはトランプ人脈がフル回転するという棲み分けによってお茶を濁す形になるのではないかと推測します。

卓越した職業軍人による効率的・効果的な国防政策の実施

ジェームス・マティス国防長官は「狂犬」というあだ名とは裏腹に極めて慎重な国防政策を立案する軍人だと言えます。同氏はブッシュ政権当時に無理な戦争計画を推進するネオコンと激しく対立し、同盟国重視の姿勢とアラブの価値観を理解した統治政策の必要性を説いた人物です。

今回の大統領選挙でもネオコン勢力によってトランプへの造反対抗馬として一時期名前が取り沙汰されましたが、それらの誘いを断ったという意味では論功行賞の意味合いもあるものと思われます。

一方、ジョン・ケリー国土安全保障長官も職業軍人出身の人物であり、トランプ政権は退役将校も含めた職業軍人経験者が多く踏まれることから軍事政権とも揶揄され始めています。また、国防費の増額などは共和党側も主張するところであり、財政の健全性の観点から心配する声もあります。

しかし、訓練を受けた職業軍人が現代の高度に複雑化された国防政策や行政機構の運用を担うことも効率性を重視するなら当然のことと言えるかもしれません。文民統制の観点からは共和党が多数を占める議会がしっかりと監視する必要がありますが、従来よりも効率的で有効性が高い国防政策が実行されていくものと推測されます。

米国版の論語と算盤を体現するトランプ政権の外交政策

上記のようにトランプ政権では国内政策、外交政策、国防政策がそれぞれ明確に色分けされた状況となっていることが分かります。国防政策はどちらかというと勢力均衡政策とテロ対策に注力することが想定されるため、実際に外国から見ても目立つ変化は外交政策の変化ということになるでしょう。

この外交政策の基本はトランプ政権の主要3閣僚による「算盤外交」になるものと思われます。諸外国との交渉によって米国経済に利益をもたらす方向で様々な成果が挙げられていくことになるでしょう。

東アジアでは中国に対する経済的な摩擦が米国との間で表面化していくことになりますが、実はこれは大したことはないものだと考えています。なぜなら、トランプ政権が求めることは経済的な算盤勘定であって中国の国体を揺るがすことは本気で考えていないと推測されるからです。むしろ、米中両国で喧嘩と妥協の繰り返しが行われる中で両国の関係が深化していく可能性すらあります。

一方、中国と比べて日本の「算盤上の価値」は減価する一方です。中国から魅力的な対価を引き出すためのツール(台湾と同様に)として使用されることにすら成りかねません。日本政府はジャパン・ソサエティー会長で知日派のウィルバー・ロス氏が商務長官に任命されたことで一安心しているかもしれませんが、トランプ政外交の算盤勘定への対処という点ではそれだけでは話になりません。

減価していく日米の価値、つまり日米同盟の価値を算盤勘定以上のところで補う努力をしなくては、日米同盟の将来、ひいては日本の安全保障は悲観的なものにならざるを得ないでしょう。

相対的に減少する日本の経済的価値、日米同盟は風前の灯となるのか

日本の経済的価値の相対的な減少は避けがたいものであり、 今後はそれらの環境変化を前提とした上でトランプ政権への対応を考えていくべきです。

漫然と従来通りの日米関係の延長線上で行けると考えているとしたら、ある日突然梯子を外されることは十分にあり得ます。トランプ氏は中国にプレッシャーをかけるために「一つの中国」という前提をあっさりと破った人物であり、日米関係という所与の前提を揺るがしかねない人物だからです。

では、トランプ政権への対応方針として、国内の一部で主張されている米軍基地費用の全額負担や武器購入費の増額のような経済的対応は正しいでしょうか。残念ながらそれらの対応は焼け石に水に過ぎず、中国の経済的価値の増大に伴う米中接近の危機への対処としては不十分です。

トランプ政権にお金の話で対応しようと試みたところで、次から次へと新たな取引を迫られることを通じて、多くの対価を払う割には実りの薄い結果がもたらされることになるでしょう。そのような場当たり的な対応は日米同盟の将来すら危うくするものと思います。

真の知米派を育てる試みの重要性、対米外交人脈の全面的な見直しが必要

上記の通り、筆者はトランプ政権はトランプ人脈と共和党保守派の政権であると分析しました。

トランプ人脈が政権の「算盤」を担当するなら、共和党保守派は「価値観」を担っている人々です。そして、トランプ政権と対峙するためには、共和党保守派との政治的な信頼関係を醸成することが極めて重要であると考えます。

政権発足当初は共和党保守派は国内改革に注力するものと思いますが、中長期的にはトランプ政権の外交政策に対して連邦議会から強い影響力を持ち続けることに変わりはありません。

そのため、経済的利害を越えて米国保守派と「価値観」で結ばれた信頼関係を作ることができれば、日本経済の相対的な減価という現実を覆す強固な日米同盟の礎を築くことができます。

しかし、そのためには対米外交人脈の全面的な見直しが必要です。

具体的には、安倍政権が対外的に主張する「自由と民主主義の価値観を共有する」という形式上の文言だけでなく、もう少し深いレベルでの米国理解を担う人材の育成が重要となります。日本のエスタブリッシュメントや国会議員の従来までの感覚で米国保守派と付き合うことは外交的な自殺行為だからです。

一例を挙げると、先日ある会合で国会議員が来日した米国保守派重鎮らに対し、「政官財でがっちりと組んで対米外交に取り組む」「自分の配偶者はウィルバー・ロスとジュリアーニと友人」と堂々と発言していました。筆者は非常に驚くとともに大きな危機感を覚えました。

上記でも述べた通り、政官財のトライアングルはクローニーキャピタリズム(縁故資本主義)として米国保守派が毛嫌いする政治屋そのものであり、更に上記の二人はウォール街・リベラルとして保守派から距離が遠い人物だからです。わざわざ来日した米国保守派の方々に対するあまりに無理解な発言に日米同盟の未来を考えて暗い気持ちになりました。

米国ではGoogle社が対保守派のパブリックリレーションを行う人材の求人広告を出して話題になっていましたが、日本政府も米国保守派の思想・文脈を理解できる外交人材を採用・育成することが必要です。

表面的な米国の姿ではなく、米国建国の理念に対する深い理解力を持った「真の知米派」による対米外交政策の立案が望まれます。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2016年02月02日

アイオワ州党員集会・テッド・クルーズ勝利、今後の展開は・・・

Ted_Cruz,_official_portrait,_113th_Congress

アイオワ州党員集会でテッド・クルーズの勝利、トランプは2位、ルビオは3位

テッド・クルーズ氏が共和党アイオワ州党員集会でトランプ氏を差し切って得票率1位を獲得しました。直前の世論調査で両者の差はトランプ氏の1ポイントリードという状況であり、保守派が多いアイオワ州で運動力があるクルーズ氏が3ポイント程度の僅差で勝利したことは妥当またはトランプ氏にやや苦戦したと評価すべきでしょう。

クルーズ氏の勝利によって州内99群を網羅的に行脚する2012年にサントラムが実践した地域密着型の選挙手法の有効性が再び証明されたことになります。保守派に属する、キリスト教福音派、Tea Party Patriotsら茶会運動、National Review誌やグレン・ベックら保守派著名人などが直前期に支持を表明したことも大きなインパクトを与えたものと推測されます。

ドナルド・トランプ氏は下馬評の支持率1位から陥落し、実際の得票率では2位の立場に甘んじることになりました。しかし、同州でボランティアを動員した地上戦をほとんど展開していないにもかかわらず、約4分の1の得票率を獲得したことでトランプ氏の影響力が共和党内で無視できないものであることを改めて立証しました。

今回のアイオワ州党員集会で最も注目すべきことは、得票率3位のマルコ・ルビオ氏が予想以上に高い数字を獲得したことです。アイオワ州はキリスト教福音派などの社会的保守派の影響力が非常に強い地域であり、マルコ・ルビオ氏が比較的苦手とする有権者層が多数を占める地域です。それにも関わらず、1位クルーズ・2位トランプと比べても遜色ない支持を獲得したことは大きな意味があります。

昨年から一部の日本人有識者の間で有力視されてきたブッシュ氏は全く振るいませんでした。彼らがブッシュ推しをいつの間にか撤回してルビオ推しになっている風見鶏ぶりには甚だ呆れます。今後ブッシュ氏は撤退に向けた調整を行っていくことになるでしょう。

「アイオワを制した者は、ニューハンプシャーを制することはできない?」のジンクス

クルーズ氏は年明けから選挙運動のリソースをアイオワ州に集中投下してきました。アイオワ州での1位獲得はクルーズ氏の生命線であり、クルーズ陣営の立案した作戦は功を奏したと言えるでしょう。

今後の予備選挙の舞台は第2ラウンドのニューハンプシャー州予備選挙に移ります。

保守派が多いアイオワ州・リベラルが多いニューハンプシャー州では有権者の投票傾向が大きく異なります。そのため、アイオワ州での勝者であるクルーズもニューハンプシャー州の世論調査ではあまり振るっていない状況です。

近年ではアイオワ州とニューハンプシャー州の両方で1位を獲得せずに予備選挙で勝利した人物は民主党のビル・クリントン元大統領のみとなっています。共和党候補者ではアイオワ州とニューハンプシャー州の両方を落として予備選挙を勝ち抜いた人物はほぼ皆無です。

そのため、トランプ氏とルビオ氏はニューハンプシャー州における2枚目の切符の獲得競争に力を注ぐことになります。号砲が打ち鳴らされた共和党の予備選挙レースは激しさを増すばかりです。

メディアによるバッシングは、テッド・クルーズ氏に集中することになるだろう

クルーズ氏がアイオワ州で得票率1位を獲得したことで、今後はトランプ・バッシングに尽力してきた主流派メディアによるクルーズへのネガキャンの集中砲火が始まるものと予想します。

元々米国の主流派メディアはクルーズ氏が属する保守派陣営に対して厳しい姿勢を取り続ける傾向があり、今回の予備選挙でもトランプ氏の支持率を一時的に抜いたベン・カーソン氏を自伝中のエピソードの嘘疑惑などによって瞬殺した経緯があります。

カーソン氏の支持率急落後はトランプ氏が全米支持率でトップであり続けたので、クルーズ氏は保守派であるにも関わらず、主流派メディアのネガティブキャンペーンの対象になりにくい環境優位を享受してきました。しかし、アイオワ州党員集会で得票率トップを記録したことで、今後はトランプ氏に代わる共和党からの指名に最も近い保守派候補者としてメディアによるバッシングが本格化するものと思われます。

クルーズ氏がカーソン氏やトランプ氏に行われたような激しい攻撃に耐えられるか否かは不明であり、クルーズ氏の選挙の強さに対する真価は「ここ」から問われる事になります。

主流派のマルコ・ルビオの追撃、クルーズとトランプがどのように対抗していくのか

冒頭でも触れた通り、トランプ氏とクルーズ氏の順位についてはそれほど驚きはありませんでした。最も大きな衝撃は、主流派候補者であるマルコ・ルビオ氏が保守派が多いアイオワ州で極めて高い支持を得たことです。

そのため、マルコ・ルビオ氏に対する主流派の期待が一気に高まることで同氏の支持率が大幅に上昇していくことが予測されます。現在までのニューハンプシャー州の世論調査で、ケーシック、ブッシュ、クリスティー、ルビオで割れている主流派の支持率がルビオ氏に集約されていく可能性があります。

一方、昨日までの世論調査では、トランプ氏はニューハンプシャー州において圧倒的にリードしています。トランプ陣営は元々アイオワ州はほとんど重視しておらず、最初からニューハンプシャー州での勝利に重点を置いています。ただし、アイオワ州で勝利を逃したことで期待値の剥離がどこまで進むかは予想が出来ません。トランプ支持者はトランプ氏への忠誠度が高い傾向がありますが、初戦で躓いた中で勢いを維持できるかどうかがポイントとなります。

また、クルーズ氏は、ニューハンプシャー州での連勝にこだわる必要はないので、同州では保守派候補者の中で最上位の地位をキープするだけで良いと思われます。クルーズ陣営はアイオワ州での手堅い選挙戦略から推察するに、次回の選挙戦略上の力点は保守派が多いサウスカロライナ州での勝利ということになるでしょう。

したがって、第二戦のニューハンプシャーはトランプVSルビオら主流派という構図になるかと思われます。トランプ氏は保守派や主流派と彼らの得意とする州でその都度正面衝突することになり、なかなかハードな選挙対応を強いられていると言えるでしょう。

アイオワ州での結果を受けて、トランプ、クルーズ、ルビオの3つ巴の戦いはしばらく続くことになりそうです。今回のトランプ首位陥落によって米国大統領選挙は更に面白い展開になってきました。


 

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2016年01月31日

日本の政治にも「和製のテッド・クルーズ」の誕生を!

Ted_Cruz,_official_portrait,_113th_Congress

共和党大統領予備選挙候補者「テッド・クルーズ」とは何者なのか?

今回の記事は米国大統領選挙の選挙戦略の話ではなく、現在共和党予備選挙で議論されている視点が「なぜ、日本の政治にとっても大事なのか」という政策的な観点から内容をまとめてみました。そのため、今回の記事はトランプ氏ではなく、現在2位のテッド・クルーズ氏のビジョンと主張について触れていきます。

2012年テキサス州ダラス、筆者はFREEPACという全米の保守派集会に日本からの来賓として招待されました。同イベントには全米から10万人近い保守派運動家が結集しており、テキサスの大地が米国保守派の聖地と化した瞬間でした。

その際、尋常ではない数の共和党保守派運動員がプラカードを掲げて支援していた人物がテッド・クルーズ氏です。数万人の支持者が密集する会場の中でテッド・クルーズ氏は大歓声で迎えられていました。そのため、彼は筆者のテキサス訪問時において最も印象に残っていた人物となりました。

テッド・クルーズ氏は、キューバ移民の父と米国人の母を持つ人物であるとともに、茶会系の保守派議員として知られています。そして、小さな政府と社会的保守派の価値観を持ちながら、ウィンストン大学やハーバードロースクールで優秀な成績を修めたピカピカのエリート法曹でもあります。(奥さんはGSの管理職を務めているセレブな家庭です。)

米国の大衆と同一の価値観を持ちながら煌びやかな経歴を持つテッド・クルーズ氏。現在、彼はトランプ氏に対抗する2位候補者として激しい首位争いのデッドヒートを繰り広げている状態です。

<過去記事>*トランプ・サンダース台頭、ブッシュ・カーソン失速、マルコルビオ台頭を予測解説
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)
アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?(1月22日)
ドナルド・トランプがFOXの討論会を欠席した理由(1月30日)

第7回共和党候補者討論会で見せた「知見」と「能力」について

ドナルド・トランプ氏が欠席戦術に出た1月28日の第7回候補者討論会において、テッド・クルーズ氏はトランプ氏に対して選挙の構図上の不利を背負ったものの、非常に見事なディベートを展開することに成功しました。

実際の支持率の変化については別の要因が働くことになると思いますが、日本に必要な「政策的視点」をテッド・クルーズ氏が提供していたために紹介したいと思います。

テッド・クルーズ氏は「エタノールに対する補助金の廃止」を主張しており、トランプ氏によって同主張がテキサスの石油産業の傀儡だからであると叩かれてきていました。

共和党保守派は伝統的に補助金などの政府支出に懐疑的であるため、テッド・クルーズ氏の主張自体はおかしなものではありません。しかし、初戦のアイオワ州は農業が盛んであることからエタノール利権も多いために、政治的に難しい立場に立たされている状況でした。

テッド・クルーズ氏は自身の見解への批判に対して「エタノールへの補助金を廃止する代わりに、エタノールの燃料への上限規制を取り払うことなどの規制緩和を通じて、エタノール市場を60%増加させることができる」と反論しました。

上記の発言をアイオワ州民が信じたかどうかは別として、テッド・クルーズ氏が行ったことは政治的な信念と勇気が必要なことです。同発言を通じて、補助金ではなく規制緩和による産業活性化を目指す、という彼の政治姿勢が更に鮮明になったと言えるでしょう。

日本の政治家に求められる「和製のテッド・クルーズ」の誕生

日本の政治家に「特定産業の補助金を廃止&規制緩和による成長ビジョン・具体策」を堂々と有権者に対して語ることができる知見と能力を持った人物がいるでしょうか。おそらく存在していないと思います。

したがって、日本では旧態依然とした既得権が蔓延り、新産業の芽が摘まれ続けている状況が発生しています。「民泊の解禁」という名称の既存の業界団体に配慮した実質的な規制強化など、その最たる事例として挙げることができると思います。

現在、日本に求められている政治家は「和製のテッド・クルーズ」である、ということができるでしょう。ドナルド・トランプ氏の政策は過激なように見えて、現状維持的な保護主義的な政策も意外と含まれており、実はテッド・クルーズ氏が大統領候補者に選ばれるほうが「日本に新たな政策的視点をもたらす」という意味ではインパクトが大きいものと思います。

ちなみに、日本のメディアでテッド・クルーズ氏がほとんど紹介されない理由は、上記のような思想が日本に持ち込まれると困る人々が米国通として蔓延っている日本の病巣を端的に象徴しているものと言えるでしょう。

共和党大統領予備選挙はいよいよ2月1日に最初の党員集会を迎えますが、日本の政治家には「テッド・クルーズ氏のビジョン・政策」にもぜひ注目してほしいものです。



 

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2016年01月12日

米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?

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2016年米国大統領選挙でトランプ・ルビオ・サンダースの高支持率を解説

本ブログは2016年米国大統領選挙に関してトランプ・ルビオ・サンダースの高支持率を予測した上で解説をしてきました。

昨年中は日本国内ではブッシュ・ヒラリー楽勝を予想していた米国研究者ばかりでしたが、彼らも流石にまずいと思ったのかもしれませんが、日本でも年末になってからマルコ・ルビオ氏やテッド・クルーズ氏の数少ない日本への言及内容を慌てて取り上げ始める記事が増えてきています。このような現象は米国内の共和党穏健派からのみ情報で大半が形成される日本の米国情報ルートの限界が露呈したものです。

本ブログは米国のアクティビストらの現場に即した感覚を持つ分析を提供する日本唯一のブログであり、本年も客観的なデータと独自の情報ルートによる分析記事を配信していきます。

<過去記事>

主番狂わせか?ヒラリーVSサンダースが面白いことに(12月20日)

2016年1月最初の世論調査は、トランプ優位&サンダースの急上昇の展開に

2016年早々に行われた共和党予備選挙の世論調査でもトランプ氏の優位が続いています。Real Clear Politicsにまとめられている世論調査結果を見る限りでは、全米調査、そして予備選の第1ラウンド・第2ラウンドが行われるアイオワ州・ニューハンプシャー州でもトランプ氏の支持率が上がっています。

保守派の雄であるテッド・クルーズ氏は昨年末からアイオワ州でトランプ氏と拮抗する状態を演じていました。さらに、テッド・クルーズ氏は年明けも精力的にアイオワ州に資源を投入する作戦に出ましたが、強固な支持を獲得しているトランプ氏を引き離すことができませんでした。

最近はトランプ支持者は低学歴云々という差別的な言説がメディア・有識者(さらに言うと日米)で溢れかえっていますが、事実かどうかはともかく、そのようなエスタブリッシュメントの言説自体がトランプ支持者の結束を固めることに繋がっていると言えるでしょう。

年明け暫くすると各陣営が大規模なメディアキャンペーンを展開し始めるために、資金力が枯渇した陣営が撤退を開始します。共和党内の勝負は今後予想される撤退者の指示を誰がM&Aしていくのか、という段階に入っていきていると言えるでしょう。


ちなみに、トランプ氏は現状までの選挙キャンペーンは膨大な自己資金ではなく「トランプ氏への寄付」によって賄っているため、大富豪としての自己資金は全て温存している状態です。

<上から全米世論調査、アイオワ州、ニューハンプシャー州の調査結果>

2016年1月共和党

一方、民主党はヒラリーに対してサンダースが驚異的な追い上げを見せており、ARGが年明けに実施した世論調査のように、全米でヒラリーとサンダースの差が僅か4ポイントという結果も出てき始めています。(まだ他調査では15ポイント前後離れているものが多い状態ですが・・・)

特に注目すべきは、年明けのアイオワ州・ニューハンプシャー州の世論調査結果です。アイオワ州ではヒラリーとサンダースが拮抗しており、ニューハンプシャー州ではサンダースの優位が確立しています。

2008年のオバマ勝利は初戦2州を勝利したことにによって勢いづいたことも要因として大きく、共和党のトランプ氏のケースと比べて上記2州以外ではヒラリーの優勢な数字が継続しているものの、ヒラリーは必ずしもサンダースに対して楽勝という状況ではないかもしれません。そのため、ヒラリーはサンダース支持が強い若者層を切り崩すため、セス・モールトン議員などの30代若手の副大統領候補者を投入する可能性が出てきています。

資金面でもヒラリーの圧倒的な優勢と勘違いされることも多いのですが、サンダースは小口献金でヒラリーに匹敵するだけの資金を集めています。したがって、ヒラリー・サンダースの両者の競争は激しさを増す形で継続することになるでしょう。

ただし、共和党の予備選挙の場合と違って、ヒラリー支持者は支持を強固に決めているケースも多く、サンダースがヒラリーをまくり切るには現状を変える決定的な一撃が必要な状況だと言えます。

<上から全米世論調査、アイオワ州、ニューハンプシャー州の世論調査>
2016年1月民主党


2016年大統領選挙は、トランプVSサンダースという究極バトルがあり得るか?


現在、米国大統領選挙の予備選挙では、トランプVSサンダースという昨年段階では予想困難だった状況が発生するかもしれない状況が生まれています。(といってもブッシュが凹むことはある程度予測できましたが・・・)

共和党ではマルコ・ルビオ、民主党ではヒラリーが依然として最有力候補者ではありますが、そのような政界関係者の思惑を打ち破ってしまうのが、米国の民主主義のダイナミズムなのかもしれません。

今後の展開にますます注目していきたいと思います。いずれにせよ、日本で思われているような順当な選挙ではなくなってきたことだけは確かでしょう。



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2015年12月08日

2016米国共和党予備選挙、トランプ爆走を止めるのは誰か?

無題


2015年10月~11月の各候補者の支持率推移について振り返る
 
本ブログでは、2016年米国共和党予備選挙について、過去3回に渡って分析を行ってきました。

支持率の変化から見た共和党大統領選挙予備選挙(11月6日)
マルコ・ルビオ上院議員、米国共和党予備選挙で注目(11月16日)
ドナルド・トランプの強さの秘密を徹底分析(11月25日)

この中で予測として当たっていたことは、(1)ドナルド・トランプの支持率は落ちない、(2)ベン・カーソンの支持率は落ちる、(3)マルコ・ルビオの支持率は上がる&ブッシュは支持が低迷する、の3点です。これらはすべて的中したことになります。

上記の程度のことは米国側の政治情勢を理解して情報ルートを持っていれば当たり前のように分かることです。まあ、私が9月くらいに会った日本人の米国研究者・米国通の政治家らは「ブッシュが来る」「スコット・ウォーカーが来る」「トランプは落ちる」とかいい加減な話をしてましたが。。。

米国共和党大統領候補・予備選挙の主要なプレーヤーは来年1月中旬~末に確定する

とはいうものの、米国共和党の予備選挙の指名を最後まで争うプレーヤーは来年1月中旬~末に確定することになります。現時点ではトップを独走しているトランプはダントツなので1枠確定として、追加で2名程度1月下旬までに生き残りが確定することになるでしょう。

なぜなら、3月2日~5日に予定されている共和党保守派最大のイベントであるCPACにおける保守派運動員による模擬投票は実質的に共和党予備選挙に決着をつけることになるため、その1か月前までに各候補者は自分の指名の可能性に見切りをつけるからです。
 
そのため、12月末~1月初旬にかけて既存の候補者らが退陣することで、彼らが獲得していた票が他候補者に集約された時点で大きく票が動くことになるため、現時点ではかなり予測が困難な状況と言えます。

「ベン・カーソンとテッド・クルーズは生き残らない」と予想する

本ブログが過去でベン・カーソンが生き残らないと予想した理由は、彼の支持率が保守派の草の根運動に支えられたブームに乗ったものだからです。

共和党大統領候補・予備選挙では一時的に保守派の特定の候補者が人気を集めた後に支持率を急落させる傾向があります。そして、再び別の保守派の候補者が急落した候補者の支持を奪って上昇していく形となります。それが今回のスコット・ウォーカー、ベン・カーソン、テッド・クルーズの3氏の支持率の変化の要因です。

これらは保守派の候補者は共和党穏健派・民主党にシンパシーが強いメディアからの凄まじいバッシングに曝されるため、長期間の高い支持率を維持することは困難なことに起因します。逆に保守派は候補者を濫立させることで、保守派が一人潰されても直ぐに次の候補者に乗り換えるという対処策を取っているようにも見えます。

現段階で高い支持率にある、ベン・カーソン、テッド・クルーズの両氏は1月中旬まで高支持率を維持できるかは極めて疑問です。

最後に生き残る候補者を数字の足し算・引き算から予測してみる

現在、穏健派、保守派、トランプ、という3つのグルーピングで分けた場合の支持率合計は、12月7日発表のRCPアベレージの数字を用いて計算すると、

穏健派・・・合計23.6ポイント(ルビオ、ブッシュ、クリスティー、ケーシック、パタキ)
保守派・・・合計39ポイント(カーソン、クルーズ、フィオリーナ、ハッカビー、ポール)
トランプ・・・合計30.3ポイント

というポイントになるわけです。現段階で高い支持率がある保守派のカーソン及びクルーズがメディア・バッシングを受け続けて失速する可能性が高く、ハッカビー及びポールも伸び悩むであろう中で、フィオリーナに保守派の支持が集まる動きが出てくるでしょう。

保守派の候補者らが撤退していくと同時に、穏健派もブッシュ、クリスティー、ケーシックの撤退が予想されるため、マルコ・ルビオに支持が一元化していくことになると思います。(ルビオにスキャンダルがあればブッシュ)

トランプの弱点は他候補者との親和性が低いため、穏健派・保守派が脱落していく数字のうち10ポイント以上獲得できるかどうかが勝負の分かれ目になるでしょう。5ポイント前後の吸収率では最終的な穏健派・保守派の候補者の合同数字には敵わないことが予測されるからです。

注目すべき点は3月CPAC前にトランプが他候補を突き放せるか

CPACはAmerican Conservative Unionという全米最大の保守派団体が毎年開いている年次総会であり、上述の通りCPACで行われる模擬投票で事実上の候補者が内定します。

現在、穏健派だけでなく保守派からもトランプへの風当たりはかなり強い状況だと思います。

トランプは強力な草の根組織を持つ保守派からも独立した存在であり、穏健派候補者以上にアンコントロールだと考えられているとともに、民主党のヒラリーに勝てるかどうかが危ぶまれているからです。

そのため、CPACでの投票でトランプが勝利することは困難ではないかと予測します。トランプは保守派の年次総会であるCPACで模擬投票が行われる前に事実上の決着をつけることができなければ極めて苦しい立場に立つことになるでしょう。逆にトランプ以外の候補者はCPACまで粘り切れば逆転の芽があるということになります。

したがって、2016共和党大統領候補・予備選挙の勝負の見どころは1月~2月でトランプが他候補者を突き放すか否か、ということになります。ますます面白い展開になりそうです。

大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ
ドナルド・トランプ&ビル・ザンカー
徳間書店
2008-07-17



 

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2015年11月16日

マルコ・ルビオ上院議員、米国共和党予備選挙で注目

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前回記事「支持率の変化から見た共和党大統領予備選挙」ではデータから共和党大統領予備選挙の各候補者の数字の推移を追いました。本日は実際に米国において各候補者の姿を見聞してきた印象をまとめてみたいと思います。

日本の米国研究者のピント外れな予想としての「ブッシュ」

2016年共和党の大統領候補者を選ぶ予備選挙について、日本の米国研究者はブッシュ氏を大本命として推してきていました。

たまに日本人の米国研究者と偶然に席を持つことがありますが、その際に「今回は保守派が強い」という話をしても彼らは鼻で笑いながら「僕らのコミュニティでは(穏健派の)ブッシュという予想になっています」と述べていたものです。(実際、米国研究者は「知ったか」が多く、あまり当てにならない印象があります。)

しかし、私は今年2月末に実施された共和党保守派の集会であるCPAC(Conservative Political Action Conference:大統領予備選候補者が全員参加する大演説会)に参加した感想としてブッシュ氏はかなり難しいという印象を受けました。

たしかに、ブッシュ氏が講演したメイン会場では多くの立ち見が出ている状況ではありましたが、ブッシュ氏の演説自体はイマイチ迫力に欠けるものであり切れ味がありませんでした。一方のドナルド・トランプ氏は大量のSPに囲まれてホテルに登場して圧倒的な威圧感を周囲に与えていました。この段階で両者の間には風格としてかなり差がついていたと思います。

勿論、現段階では最終的な候補者は確定していないため、ブッシュ氏が盛り返す可能性は0%ではありませんが、現地で見た空気感としては2月末段階からブッシュ氏の現在の低迷はある程度予想できました。

ブッシュ氏の凋落ぶりは激しくケーシック氏などの他穏健派候補者にスイッチされる可能性すらあります。

マルコ・ルビオというダークホースの登場

私自身は現在の有力候補となっているマルコ・ルビオ氏については2012年から注目してきました。

「共和党の大統領候補者選び、カギはマルコ・ルビオ氏!?」(日経ビジネスオンライン、2012年)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120220/227382/?rt=nocnt

2012年当時は保守派の筆頭格のような扱いを受けていたマルコ・ルビオ氏ですが、ヒスパニック移民に対する態度の軟化を保守派に非難されてから、保守派の色を残しつつ穏健派の取り込みを行う巧みな選挙戦略にシフトしてきました。

ブッシュ氏の低迷はマルコ・ルビオ氏のスタンスの変化が影響している部分も大きく、仮に穏健派の候補者が勝つにしても、現状はマルコ・ルビオ氏のほうがブッシュ氏よりも優勢な状況にあります。最近ではウォール街もブッシュ氏を切ってマルコ・ルビオ氏に乗り換える動きが出ています。

また、マルコ・ルビオ氏の特徴はキューバ移民の子どもでバリバリのたたき上げだということも大衆受けの面から大きな要素です。対立候補であるトランプ氏が持っているアメリカンドリームの魅力も兼ね揃えた候補者として強力だと思います。

ベン・カーソン、ランドポール、カーリー・フィオリーナなどの保守派候補について

ベン・カーソン氏とランド・ポール氏は今年のかなり早い段階からキャンペーンを開始していました。私自身は実際にランド・ポール氏とは直接お会いしたことがありますが、非常に真摯な印象を受けた記憶があります。

ランド・ポール氏に関しては、父のロン・ポール氏とは政策が違うことから仲違いしたこと、ケートー研究所が支持を撤回したことなど、コアなファン層を持つものの、現状から挽回することはかなり難しい印象です。

カーリー・フィオリーナ女史に関しては唯一の女性候補者として目立つ存在ではありますが、実際の見た感じではやや尖がった感じを受けたため、支持がどこまで拡大できるかは今一つ疑問だと思います。

穏健派に比べて保守派はメディアがかなり敵対的なスタンスを取るために支持率があがると、大規模なネガキャンが直ぐに開始されます。トランプ氏以外の保守派候補者は早い段階で有力という名前が挙がることは危険なことだと思います。

共和党大統領予備選挙は何故これほどまでに複数の候補者が出るのか

米国民主党の候補者レースがヒラリーとサンダースの2名に絞られているのに対し、米国共和党の候補者が複数出馬する理由は「共和党の人材の層の厚さ」「共和党の草の根団体の独立性」の2点が挙げられると思います。

米国共和党は米国民主党と比べて分散的なネットワーク型の草の根組織で支えられています。そのため、候補者も多様なメンバーが発掘されやすく、また一部の権力者による候補者選びが極めて難しい環境があります。

まさに、共和党の大統領候補者選びこそが米国の自由で民主的な空気を体現したものと言えるでしょう。米国共和党の大統領予備選挙の現状を参考とし、日本の政党の党首・代表選挙も改善されていくことが望まれます。

「保守革命」がアメリカを変える
グローバー・G. ノーキスト
中央公論社
1996-06




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2015年10月30日

米国共和党式!「小さな政府」を創る6つの仕組みとは

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米国共和党の大統領予備選挙で各候補者の熾烈な戦いが続いています。今回は台風の目としてドナルド・トランプ氏が注目されていますが、共和党の予備選挙は穏健派と保守派の2つの派閥の闘争として分析することが可能です。そして、保守派を支える政治闘争のシステムを理解して輸入することは、日本において小さな政府を目指す人々にとっては重要なことです。


表舞台で注目されるようになった保守派

共和党内部では社会保障政策などで民主党に近い穏健派と小さな政府を信条的・政策的に追求する保守派に分かれています。これらの対立の歴史はかなり古い歴史を持っていますが、歴史的には穏健派の勝利という政治情勢が続いてきました。そして、労働組合などの利権団体による動員マシーンを背景とする民主党による連邦議会も戦後の長期間の支配が続いてきました。


しかし、1994年になると共和党保守派が民主党及び共和党内の穏健派を倒すための体制を構築し、連邦議会における民主党支配を覆すことに成功しました。そして、共和党の本来の政治的な主張である「小さな政府」を金科玉条に掲げる政治勢力が政局の表舞台で注目されることになりました。保守派は民主党や共和党穏健派を凌駕する動員力、政策力、資金力を確立し、現在の連邦議会で大きな力を持っています。

米国共和党式!保守派の「小さな政府」を創る6つの仕組み

私見では、保守派を支える政治闘争のシステムは、極めてシステマチックに構築されています。代表的な事例としては、(1)保守派の大方針や大統領候補者を実質的に決定する意思決定としての保守派の年次総会(CPAC:Conservative Political Action Conference)、(2)ワシントンにおける日常的な保守派の動き司令塔となる定期会議(全米税制改革協議会主催のWednesday Meeting)、(3)保守派の運動員を育てる訓練機関(The Leadership Institute)、(4)保守派の政策立案を担うシンクタンク(ヘリテージ財団など)、(5)保守派の主張を伝えるメディアやメディア監視団体(フォックスニュースやMedia Research Center)、(6)保守派の価値観を教育する草の根組織(Tea PartyやFreedom Works)など、その他多様な能力を持つ組織が存在し、多くの仕組みが分散的・有機的に結合した巨大な運動ネットワークとして機能しています。


大統領候補者や連邦議員から政策的な言質を引き出すとともに、彼らを国政の場に送り出すための力強い運動が展開されて、減税や規制改革の政策が次々に提供される仕組みには目を見張るものがあります。

日本で旧来の米国通の識者が保守派を紹介するとき、これらの識者は穏健派との繋がりが深い傾向があり、故意に矮小化された保守派のイメージ(保守派は極端な主張を述べているという類のレッテル貼り)が伝えられることが多く、保守派の優れたネットワークの有機的な結合についての全体感が語られることは少ない印象を受けます。

そのため、本来、日本の「小さな政府」を求める政治勢力にとって必要な「米国の保守派の政治闘争のシステム」の輸入という貴重な機会が失われています。

共和党予備選で注目すべきポイント

日本の政治状況は自民党及び官僚による支配が継続しており、彼らが生み出し続けている巨額の政府債務と張り巡らされた規制制度が未来への希望を閉ざしています。しかし、依然として小さな政府を求める政治勢力の力は弱く、「大きな政府」と「更に大きな政府」を求める政治勢力による不毛な政争が続けられています。


「小さな政府」を掲げる政治勢力を代表する政党が誕生し、責任ある二大政党政治を創り上げるためには、政党や政治家だけではなく、周辺の政治闘争のためのシステムを構築することが必要不可欠です。

共和党の大統領予備選挙に注目が集まる中で、候補者同士戦いの背景で動いている米国の保守派の政治闘争のシステムについて、より多くの日本国民が注目し、日本でも「小さな政府」の政治勢力を強化する仕組みづくりが開始されることが期待されます。





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yuyawatase at 15:54|PermalinkComments(0)TrackBack(0)