世界

2016年01月03日

ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(1)

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自分たちの国を取り巻く内外の情勢というものは自分たちの目から分かりづらいものです。そこで、米国有数のシンクタンクであるヘリテージ財団が2015年12月31日大晦日にアジア情勢についての客観的なレポートを出していたので引用しながら解説していきたいと思います。(本レポートはこちら、*グラフも全て引用)

ちなみに、本文解説中で日本に文章で触れた個所は

「Japan, while underperforming for many years in terms of economic growth, also invests heavily both in the government services the U.S. provides its citizens and the private American economy.」(日本は経済成長が長年全然ダメだけれども、それでも米国の政府や民間経済に非常に投資してくれています)

しかないため、他の部分についてはグラフや地図に本ブログが注釈を入れながら「米国から見るとこう見える」ということを補足説明していきます。

日本は「ドルに対するデノミでGDP(ドルベース)は激減し、実質的な成長は貧血レベルである」という評価

まず初っ端から非常に辛口の評価を日本は頂いています。世界で最も経済成長が速いアジアにおいて、「日本はドルに対するデノミを実施した結果ドルベースのGDPは激減し、実質経済成長はしているが依然として貧血レベル」という米国から見れば当たり前の結果となりました。完全に一人負け状態です。

日本の経済失政に比べて中国の経済成長は異常なスピードで進んでおり、中国の台頭が顕著である旨が報告されています。域内大国としての中国の存在を意識せざるを得ないという米国の認識が強く現われたグラフです。

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経済的な自由度に関しては「アジアで中位程度」の評価を受けている日本

ヘリテージ財団はThe Index of Economic Freedom (経済自由度ランキング)を毎年発表しており、世界中の全ての国の経済自由度について公表しています。アジアはシンガポールや香港が圧倒的なトップを形成しており、ニュージーランド、オーストラリアが続き、台湾・日本・韓国などは第3グループに位置しています。一人当たりGDPが非常に高い国と経済自由度が高い国はほぼ一致しており、人口減少が続く日本では経済自由度を高めて高付加価値化を図っていくことが望まれます。(ちなみに、経済自由度ランキングの詳細を参照すると、日本の低位の理由は政府部門のダントツの非効率さにあり、肥大化した政府が成長の足かせになっています。)

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アジアの中で突出した日本の対米投資額、米国における日本企業の投資額の大きさに注目

次にアジア企業の対米投資の状況について解説されています。グラフを見ると、アジアからの対米投資の大半が日本企業からであることが分かります。特に直近10年間で1.5倍にまで投資額が増加しており、円安・円高に関係なく日本企業による買収が積極的に実施されていることが分かります。金融、IT、エネルギーなどの投資も大きくなものがありますが、人口が伸びて市場が成長している&カントリーリスクが低い米国は日本の内需系産業の進出先としても有望視されているということでしょう。

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中国が世界中に投資を実行して影響力を強めつつあることへの注目

一方、アジアのもう一つの雄である中国についてはグローバルな投資戦略、その分散的な構造が注目されています。おひざ元であるASEANだけでなく、米国・ロシア・ナイジェリア・イギリス・ブラジル・サウジなどのポイントに合わせて、世界各地にまんべんなく投資を実行しています。主に道路やプラントなどのインフラ建設に向けた投資であり、国策的な投資が盛んである印象を受けます。

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米国債保有残高で米国への影響度を競い合う日本と中国

米国債の保有残高は中国が日本を追い越してアジア第一位となっています。香港、台湾、シンガポールなどの華僑系の国債保有額も含めると日本は大幅に引き離された状況です。特にアジアにおける米国債保有割合シェアを中国が直近10年間で2倍にしたことは、米中関係が切っても切れないものであることを如実に示しています。

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東アジア各国の合計特殊出生率の低さが際立つ状況に

日本だけではなく中国(香港&マカオ)、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの合計特殊出生率が低いということが一目瞭然となっています。

特に中国と韓国の合計特殊出生率の低下は著しく、今後の経済成長や財政問題などが深刻化していくことが目に見えている状況です。(ちなみに、日本は晩産化の影響で直近10年で合計特殊出生率が微増している状況です。)

上記以外の国々でも東南アジア各国では出生率が2を割っている国もあり、アジア全体としても出生率が低下している傾向があることから、「アジアの老い」は中長期的に問題になっていくことになると想定されます。

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顕著な従属人口指数の増加を見せる日本の異常な状況について

(年少人口+高齢人口)/生産年齢人口で算出する従属人口比率について、日本だけが顕著な右肩上がりの状況になってきたことが分かります。これは価値観の変化や低成長による雇用の不安定化、団塊の世代の引退によって大幅な従属人口比率の増加が起きたことを示しています。

その他のアジア各国は直近10年が生産年齢人口が増加するボーナスステージであったことを示していますが、上記の合計特殊出生率の低下の観点から中長期的には「アジアの老い」による問題に日本と同じように直面していくものと思われます。

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以上、本日はレポート前半部分の経済と人口に関する部分を取り上げました。明日(1月4日)は後半部分の、圧制、移民、軍事情勢、テロなどの政治状況に関する認識を取り上げていきます。

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yuyawatase at 09:00|PermalinkComments(0)

2015年12月31日

2016年に起きる世界的なリスクの可能性を展望する

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2015年も大晦日を迎えたため、2016年の世界情勢について展望して新年に突入したいと思います。特に来年に危機が高まるであろう国際政治の要素を10個ほどまとめてみました。

<東アジア・東南アジア>

(1)中台関係の悪化

来年1月の台湾の総統選挙において、与党・国民党の朱立倫氏、野党・民進党の蔡英文女史の争いは後者の勝利となり、焦点は民進党の立法委員選挙での過半数確保に移っています。馬英九政権がシンガポールで行った中台の首脳の接触など中国傾斜を深める中で、今年夏に訪米した際に穏健化を主張した台独派民進党の蔡英文女史の支持が広がった形です。

民進党政権でも中国との関係が急速に悪化するということは無いと思いますが、米国の東アジアの安全保障の専門家の中には中国の南シナ海への進出は偽装であり、本丸は台湾海峡にあるという意見も根強く存在しています。そして、実際に中国にとっての真剣な脅威は民主主義・台湾であり、軍事大国化した中国の核心的な利益に触れる問題は台湾海峡によって発生する可能性が高いものと思います。

(2)北朝鮮の政治混乱

米国世論調査でも北朝鮮問題は中東のISの次に来るほどの危機として認識されており、日本人にとっては常態化した北朝鮮の異常な行動も世界から見ると深刻な脅威として認識され続けています。日韓の慰安婦問題についての「最終的かつ不可逆的な合意」も米国が北朝鮮情勢について深刻な懸念を持っていることの裏返しであり、2016年党大会における新方針など同国の動きは注目し続ける必要があります。

特に同国内における中国の経済的な影響力が強まる反面、同国に対する北朝鮮の国粋派による反感が強まって大国による制御不能な状況に陥ることが懸念されます。金正日体制からの体制移行後による粛清の嵐によって政権内の一体感が弱まっていることも政治混乱の引き金になる可能性があります。

(3)日本の対中包囲政策

安倍政権誕生以来、日本はセキュリティーダイヤモンド構想などの対中包囲網を敷く外交方針を継続してきました。その結果として、米国には米国議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題の妥協、インドやオーストラリアとの軍事交流強化、南シナ海問題でのASEAN各国との連携強化、中央アジア・東南アジアへの大型の円借款、ロシアへの北方領土問題のアプローチなどが進んでいます。

その結果として、安倍政権は対中政策について強いポジションを持てる国際環境が形成されつつあり、日中両国の間で何らかの小規模な紛争が発生する可能性が増しています。日本にとって外交安全保障関係が強化されることは望ましいことですが、それによるリスクも同時に高まっていることも認識されるべきです。

(4)中国経済の国際化に伴う懸念

IMFのSDRに元が採用されたことなど、中国経済の規模拡大に合わせて国際化は急速に進みつつあります。しかし、中国の国内経済は新常態と呼ばれる中成長状況に減速し、シャドーバンキングなどによる不良債権問題は依然として片付いておらず、中国経済に致命傷を与える問題は臭いものに蓋をしたままです。

中国経済が国際化することは、昨年のバブル崩壊時に見せたような証券市場への強権的な対応などに対し、国際的なルールに従うことを求める圧力がかかることになり、政治力による金融・資本市場への統制に綻びが生じる可能性があります。経済混乱の結果として、中国の政治体制への影響や日本経済への影響も懸念されます。

<中東・中央アジア>

(5)ISの世界的な拡散に伴う危機

米国におけるホームグロウン・テロのようにSNSネットワークを通じた個人のテロリスト化はISの世界的な拡散の一つの事例となりました。また、IS占領地に存在していた大量の白紙のパスポート及びパスポート製造機によって世界中へのテロリストへの自由な移動を確保する実態が生まれています。ISの機関紙を見る限りでは日本への関心も高まっており、伊勢志摩のサミットなども厳重な警戒が求められます。

従来までは水際対策を講じられてきたテロリストへの対策が事実上不可能になる中で、各国政府は国内のリアル・ネット上のセキュリティーの強化を行う必要に迫られています。しかし、それは同時に欧米先進国で守られている人々の自由に対する侵害行為であり、自由を基調とする欧米先進国にとって社会的な自由が後退することはそれ自体が敗北であるというジレンマが生じています。

(6)サウジアラビア危機と中東の動乱化

原油価格の低下によってスンニ派の盟主であるサウジアラビアの政治経済体制に綻びが生じつつあります。王政の代替わりによって発生した権力の集中問題も問題を複雑化させています。特にサウジアラビアの東部では民主化圧力も高まりつつあり、政治体制の安定性に懸念が生じています。

また、イエメン隣接地域における反政府勢力との戦闘における敗北など、王政に忠誠を誓う軍隊の脆弱さが露呈しており、ISやアルカイダがイエメンで勢力を拡大し、中東全体ではイランが主導権を握らんとまい進する中で、サウジアラビアの安全保障面・治安面での危機が強まりつつあります。しかも、原油価格低下と終わりなきイエメンでの戦争により、サウジの16年度予算は10.5兆円の赤字となり、補助金見直しや付加価値税導入を検討する有様です。

バラマキ政策が限界をむかえつつあり、隣国との戦争が泥沼化し、国民と王族内の不満が高まりつつあるサウジアラビア。この国が混乱に陥った場合、中東地域は収拾不能な動乱に陥ることになります。そして、それは我が国が石油の三割を輸入している国を喪うと言う事を意味しているのです。

(7)中央アジアのIS化の可能性
 
タジキスタンの行方不明になっていた治安警察のテロ担当司令官がISの一員として同国大統領に宣戦布告のメッセージを伝えるなど、中東地域での激しい戦闘から逃れたIS勢力が中央アジアで新たな勢力を築く可能性が出てきています。

また、ISは9月に中国人の誘拐・殺害を行った上で、新疆ウイグル自治区に戦闘員を帰還させて蜂起を促すなど、同地域の不安定化に力を注いでいます。中国側が同自治区への弾圧を強化するほどIS側は勢いづくことは間違いなくイタチごっこの状況です。

中央アジアの不安定化に対応するため、対テロ戦争に中国が本格的に関与することが求められるようになり、国際政治の基本的な構図に変化を及ぼす可能性があります。

<欧米>

 (8)米国の指導力の低下

2016年は米国大統領選挙の年であり、レイムダック化したオバマ大統領の外交指導力が低下するため、大規模な国際環境への変化への米国の対応力が低下します。米国は既に世界の警察官としての役割を放棄し、世界中で頻発する問題に選択的介入を行う十分な能力を持っていない状況です。

米国大統領選挙は内向き志向を強める候補者らと対外関与の必要性を訴える候補者の路線闘争の状況を呈してきておりますが、オバマ大統領ではなくとも今後の指導力の低下は避けられないものと思われます。米国の同盟国は自国の外交・安全保障の在り方について再検討を行う必要性が生じています。

(9)欧州分裂・移民問題の危機 
 
人道上・経済上の問題から継続・拡大されてきた移民問題が深刻化しています。特にフランスの同時多発テロやシリア難民の増加は各国の右派政党の台頭に繋がっており排外主義の台頭が起きています。また、イギリスがEU離脱の国民投票を行う旨を発表するなど、EUの屋台骨自体が危機にさらされつつあります。

欧州は充実した社会保障制度を持っているために、自国民への社会保障を維持するために新たに受け入れる移民への反感が強まっているという、ケイジアン的な発想による新しい排外主義の形が出現しています。EU分裂や移民問題の危機は、政治経済体制の新しいパラダイムを見出す上で注目に値します。

(10)サイバー空間における攻撃の深刻化
 
サイバー空間における米中の摩擦が深刻化しており、実質的な紛争状態になりつつあります。特に、米国共和党は中国からのサイバー攻撃に非常に大きな懸念を示しており、共和党が大統領選挙に勝利することになれば同問題は大きな外交テーマとして取り上げられていくことになるでしょう。

また、日本はアノニマスによって厚生労働省や首相HPがダウンさせられるなど、サイバーセキュリティー環境が極めて脆弱であり、来年の伊勢志摩サミットに際して何らかのサイバーセキュリティー上の問題が発生する可能性が高く、セキュリティー体制の早急な強化が必要です。今後は、大規模な国際会議などの開催国の要件としてサイバーセキュリティーへの対応力などが一層求められることになるでしょう。





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yuyawatase at 13:12|PermalinkComments(0)