与党

2016年01月26日

宜野湾市長選挙、「直近の民意」の正しい測り方を教えます

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宜野湾市長選挙で政府・与党が大差で勝利

米軍普天間飛行場問題に影響する宜野湾市長選が1月24日に投開票されました。政府・与党の支援を受けた現職の佐喜真淳氏が勝利、翁長雄志知事が推した元県幹部職員の志村恵一郎氏に大差をつけた形となりました。ちなみに、投票率は68・72%で前回2012年の市長選を4・82%上回っています。

実際の得票数は下記の通りです。5000票以上の大差がついた選挙結果となっています。

<今回>
佐喜真淳  ・・・2万7668票
志村恵一郎・・・2万1811票
 
<前回>
佐喜真淳  ・・・2万2612票
伊波洋一  ・・・2万1712 票

現職・新人の選挙分析を行う前提としての各党の基礎票を分析する

現職市長は自民・公明の推薦であるため、与党の支持者の票が基礎票となっています。そこで、保守系の次世代(こころ)・幸福を加えて直近の衆議院議員選挙の比例票を見てみると、宜野湾市からは

自民党 ・・・9297票
公明党 ・・・5033票
次世代  ・・・445票
幸福   ・・・225票
合計   ・・・1万5000票

が出ているため、与党の基礎票として計算することが可能です。

逆に同じ衆議院議員選挙で、野党の比例票を見てみると、

社民党 ・・・7947票
共産党 ・・・3555票
民主党 ・・・3090票
生活の党 ・・1281票
合計  ・・・1万5873票

という数字であり、野党のほうが基礎票が多いことが分かります。社民党・共産党の比例票が民主党を上回る状況が沖縄ならではの特徴と言えるでしょう。

この他に分裂した維新4535票がありますが、元々同党支持者は浮動票も多いため、今回は「ゆ党」扱いとして両党の基礎票としては計算していません。

現職・新人の得票から与党・野党の基礎票を引いて「中立派」の民意を測定する

選挙は与党・野党に分かれて行われるものであり、両者ともに政治的な主張があることは当然です。上記の通り、宜野湾市では与野党の基礎票は拮抗しており、野党がどちらかというと優勢という状況です。
 
そのため、宜野湾市民の当面の民意は「両者の基礎票」に属さない「中立派からの得票数」によって測ることが妥当だと思います。そこで、現職・新人から与野党の基礎票を加味して分析すると

佐喜真淳  ・・・基礎票1万5000票+中立派12668票=合計2万7668票
志村恵一郎・・・基礎票1万5873票+中立派5938票 =合計2万1811票

ということになります。つまり、現職は新人の2.13倍の中立派票を集めたことが推計されるため、宜野湾市長選挙における直近の民意は与党にあるということが言えそうです。

左翼の根拠地である「沖縄ですら失敗した野党連合」に未来はあるのか

共産党が呼びかけた「国民連合政府」構想は沖縄県のオール沖縄という野党共闘体制を念頭に置いたものと想定されます。

しかし、その沖縄県での県知事まで投入した野党統一候補の大惨敗は、参議院議員選挙に向けた野党連合に決定的な影響を与えることになるでしょう。むしろ、この結果を受けても共産党を取り込んだ「野党統一候補」の擁立を続けるならば、参議院議員選挙後に野党が消えてなくなることは必然と言えます。

特に民主党は反安保法制のバカ騒ぎの幻想から目を覚まして「国民の生活が第一」という政権を奪ったときの自党のフレーズを思い出すことが必要です。与野党の間でまともな政策論争が行わない選挙は国民にとって不幸なものであり、野党は夏の参議院議員選挙に向けて自らの立ち位置を見直してほしいと思います。



奴隷のしつけ方
マルクス シドニウス ファルクス
太田出版
2015-05-28


当確師
真山仁
中央公論新社
2015-12-25




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2016年01月15日

自民党を必要としない本物の「対案路線」を作ろう

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戦後左翼の「トラウマ的な酷さ」が「対案路線」の本質を見誤らせている

55年体制の中で野党社会党や左翼グループの非現実な妄想の影響を受けて、日本特有の「野党は何でも反対」という政治カルチャーが育まれてきました。その結果として、自民党以外の野党は左傾化した妄想を語っているにすぎず、政権選択上の判断として彼らが述べる内容は検討するに値しないという政治の貧困が産み出されてきました。

日本の良識ある有権者は、野党の異常な政治姿勢を見せ続けられた結果、自民党の政治姿勢を相対的に健全なものとして認識してきました。それは同時に日本の有権者の判断基準は「現実的であるということ」=「戦後の自民党路線であること」という非常に低いレベルでの政治選択を余儀なくされてきたことを意味しています。

そして、現在の野党が「対案路線」という言葉で自らを定義する際、日本特有の「バイアス」、つまり「戦後左翼のトラウマ的な酷さ」とは一線を画した「現実的であること」を強調する政治文化が育ってしまうことになりました。

「自民党に似ていること」が信頼につながるなら「現状維持」で良い

しかし、政権与党に対する「対案」が「現実的であること」は、そもそもの前提として「当たり前」の話です。

むしろ、上記のように「対案」の考え方の根本が間違っているために、野党が「現実的であること」を「政府与党と同じ価値観を持つこと」と混同する弊害が生まれています。それらの弊害は「対案路線」を標榜する勢力が政権与党に対する「修正案」や「是々非々」を誇るという倒錯した政治姿勢として現われています。

政権与党に対して修正案や是々非々を良しとする立場を取るのであれば、政権与党の一員となって内部から意見を通す作業を行うべきでしょう。何よりも自民党に似た考え方を標榜することで政権担当能力があることを示せるなら、自民党が政権与党を継続すれば良いだけです。

有権者の立場から見た場合、政策の方向性がほぼ同一であれば、政権運営の実績がある現在の政権与党を選ぶことは必然的なことだと思います。

「対案路線」の本質は、「野党独自の魅力的で力強い価値観」を示すこと

修正案や是々非々とは、政権与党との政策的な技術論上の対峙でしかなく、政権与党に対する野党の受け身の姿勢を表す言葉に過ぎません。自分たちの良さをアピールするのではなく、「自民党に対してモノが言える政党です」と言われても、有権者にとって魅力的に映るわけではありません。

対案路線の本質は「野党独自の価値観」を示すことです。それは実行可能なものであるとともに、自民党の価値観とは異なるものであることが重要です。深い知識に裏付けられていることは必須であり、それらが体系だった理念に基づいて構築されている必要があります。

野党連合のような理念の欠片もない野合による選挙対策や昨年の安保反対時のSEALDsのような非現実な左派路線と一線を画すことは述べるまでもありません。これらは「自らの存立基盤を自民党に依存している集団」であり、自民党を倒した後のビジョンが何も見えません。

更に言うなら、有権者は上記の非現実な集団に与しない程度の「対案路線」ではなく、自民党に代わる魅力的で力強い「新しい価値観」が示された「対案」を求めているのではないでしょうか。

有権者が求めている「価値観」は「自民党を必要としない選択」である

野党が提示するべき価値観は、「自民党に反対する」価値観や「自民党を修正する」価値観ではなく、「自民党を必要としない」価値観でなくてはなりません。外部の政治的な敵対者を必要とせず、その価値観自体が自律性を持っており、有権者からの賛同を得るようなものであることが大事です。

有権者が望んでいることは「現実的な能力」と「明確な価値観」を持った選択肢の中から自らの支持する選択肢を手にすることです。政権交代とは有権者が自民党を必要としなくなったときに起きるものです。

この夏の参議院議員選挙で、野党連合でもなく政権の補完勢力でもない、真の選択肢に成り得る政党が立ち上がることに期待したいと思います。

フラット化する世界〔普及版〕上
トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社
2010-07-21



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2016年01月14日

野党の支持率が上がらない「たった1つ」の理由

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野党は完全に「政権与党の術中」にはまっている、ということ

国会論戦を見ていると、野党側から低所得高齢者への3万円のバラマキ、軽減税率の財源不足などが追及されています。これらの追及はマトモナ神経を持った人々による突っ込みではありますが、野党の行為が支持率の上昇につながるかと言えば、全く逆の結果につながるということを知るべきでしょう。

政権与党は、野党側に上記のような追及を行わせることによって、選挙上の世論環境を自分たちに有利な方向に導くことができます。今回はその仕組みについて簡単に解説していきたいと思います。

相手の政策を連呼する「財源論」は選挙戦略上の最大の悪手

「〇〇には〇〇億円かかるのです!一体どこにそのような財源があるのですか?」

これは負ける選挙で良く使われるフレーズです。このフレーズを述べると何故負けるのか?それは対立陣営の候補者自らが「本来は否定されるべき相手の政策」を連呼しているからです。しかも、数字付きで述べることによって有権者の頭にはばっちり記憶されることになります。

冒頭に触れた「低所得高齢者に3万円」という政策は、政権与党だけではなく愚かな野党が取り上げ続けることによって有権者層に浸透し続けることになります。消費税の軽減税率についても話は一緒であり、軽減税率1兆円の財源について議論すればするほど、軽減税率の概念と金額が広まっていくことになるのです。

多くの政治関係者が錯覚していることは、相手の政策のおかしさを批判すれば自党の支持率が上がる、ということです。そして、残念ながらそのようなことはほぼ発生しません。

相手の政策のおかしさを指摘することは実質的に相手の政策の宣伝でしかなく、自党の支持率を上げるためには「自党の政策」を相手に批判させる必要があります。3万円のバラマキはお金を受け取る当事者たちの記憶にはばっちりと残り続けることになる一方、それを批判していた人々の政策は有権者の記憶に残ることはないでしょう。

なぜなら、有権者は「反対」している人間の理屈に耳を貸すほど暇ではないからです。有権者はポジティブな選択肢に賛成したいのであり、小難しい反対論への関心は薄い傾向があります。日本国民の一日は多忙であり、ある政策を記憶した上で、その反対論まで理解し、そして更に反対者が掲げる政策まで覚えるほど暇ではないのです。

したがって、「相手の政策」に対する「財源論」批判とは最低最悪の選挙戦略上の悪手と言えるでしょう。

2009年・民主党による政権交代選挙で自民党が敗北した理由とは

2009年・民主党による政権交代選挙の時、自民党議員は「子ども手当とか、高速道路の無料化とか、一体どこにそのようなお金があるのですか!」と批判していました。

そして、自らの後援会の支持者に自民党の政策をほとんど語らず、民主党の看板政策の批判ばかりしたのです。その結果、自民党議員によって集められた後援会の支持者は「民主党の政策を記憶して」家路につくことになりました。

圧倒的な組織力を有している自民党・公明党の組織力が仇となり、彼らの組織がフル回転で民主党の政策を宣伝して回れば、自公政権でも与党であり続けることは極めて困難だと言えます。

野党は与党と比べれば組織力で常に劣勢に立たされているものです。野党が与党に勝利するためには与党支持者の「口コミ」を利用した選挙を実行することが選挙戦略上好手なのです。相手が自党の批判をしていることを喜んで受け入れて、相手の政策を無視し続けることが取るべき王道ということになります。

2009年時は民主党は与党としての振る舞いを実行し、自民党は負ける野党としての失策を犯していたのです。選挙上の争点設計に成功した陣営が勝利し、それに反対させられた陣営が負ける、という単純な構図が現れたと言えます。

野党は「パブロフの犬」の状態、条件反射の反対論からの脱却を

従って、現在の野党は安倍政権がぶらさげた分かりやすい餌に食いつかされている状態にあると言えるでしょう。政権与党が分かりやすいバラマキを行うことによって、野党はそれらに反対することが選挙戦略上意味があるかどうかを考えずに財源論に頼ってバラマキ政策に反対しているだけです。

まさに、政権与党にパブロフの犬のように扱われて馬鹿にされてる状況が野党の状況と言えます。

仮に野党が自党の支持率を上げたいのであれば、「多数決のために止めることができない」政権与党の政策を無視した上で、自党の問題意識と解決策としての政策を述べ続けるだけで良いのです。それもできるだけ分かりやすく、そして与党が「反対したくなる」ようなものを掲げる必要があります。

したがって、その選挙争点となる政策は「難しい財源論」ではなく「その政策に関心が無い与党の議員でも理解できる」ものである必要があります。誰もが「ぽろっ」と批判できる政策を創り出しつつ、深堀すれば非の打ちどころがないものを掲げることが重要なのです。

本来は政党助成金とは党の根幹となる政策を作り上げるための資金なのですが、現在は政権与党の批判を行う各議員の政治キャンペーンのための費用に化けており、全く本来の趣旨から逸脱したムダ金になっています。政策としても価値がないだけでなく、選挙としても全く意味がない使い道です。

野党は自らが本来何をすべきなのか、ということを今一度思い返して国会論戦に臨んでほしいと思まいます。




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2015年11月24日

政権交代可能な『与党』を求める有権者(選挙のイロハ)

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「政権交代可能な野党が必要」という認識が根本的に間違っている

最近の国政政局の状態を見ていると、本当にピントがずれた議論が野党内で議論されていることが分かります。それは「政権交代可能な野党を作る」という言説です。自分も何度も選挙に関わってきましたが、このような発言を行っている時点で「負け」が確定していることを知るべきだと思います。

「政権交代可能な野党」という言葉は誰にとって意味がある言葉でしょうか。これは現在野党に所属している議員たちにとって必要な言葉(つまり、自らのアイデンティティーの正当化のため)であって、有権者には一切関係が無い言葉です。

そのため、このような言葉を連呼されたところで、有権者の心と打算には響くわけもなく、現在の野党の何を言っても支持率が上がらない迷走状態が継続することになります。

有権者が望んでいるものは「政権交代可能な『与党』」である

政権交代とは野党が与党になるものであり、自らが野党と名乗っている集団を支持する有権者は多くないでしょう。一定のコアなファン層は取れるかもしれませんが、逆説的には「与党」としての意識・能力を見せることが無い限り、野党が大衆からの支持を獲得することは困難です。

現在の野党の最大の問題は、民主党政権の失敗の烙印の影響で、「与党としての能力がない」という認識を有権者にもたれていることにあります。その上、自ら「政権交代可能な野党」と連呼しているのだから支持率が上がるわけがないのです。

有権者が望んでいる政党は「与党の資格がある政党」であり野党の野合ではないということです。有権者は一定の信頼性がある与党に相乗りしたいのであって、勝つか負けるか分からず、しかも政権奪取後の運営が見えない勢力を勝たせることはしばらくないでしょう。

大阪ダブル選挙で「維新」が勝利した理由は「維新が与党」だったから

大阪ダブル選挙で勝利した理由は、現職の知事・市長を擁する勢力であり、なおかつ実質的には官邸との連携が垣間見える「実質的な与党であった」からです。これらの要素は有権者心理に深く影響を与えて、与党体質を持つ自民党の票は分裂し、公明党も自主投票を決定することになりました。

一方、大阪自民党は共産党と組んだことで野合という批判を受けましたが、野合自体は選挙における敗因ではありません。問題は共産党と組んだことによって「野党臭」が強まったことにあります。自民党支持者や一般有権者はあくまでも与党であることを好む環境にあるため、野党としての立ち位置を設定した時点で負けが確定してしまいました。(共産党の支持がダメで公明党の支持がOKな理由は「与党だから」という以外は特にないはずです。)

国政の大阪維新が躍進する単純な理由は「与党」として参加するから

国政においては、大阪維新を「与党の補完勢力」として糾弾する声もありますが、これらは返って逆効果になるものと思います。なぜなら、有権者は「自民党ではない新しい与党を望んでいる」からです。

つまり、現状の政権担当能力がない野党ではなく、政権担当能力がありながら自民ではない、という条件を兼ね揃えた与党こそが、潜在的な国民心理の中で望まれている政党の姿です。有権者は常に「与党」を求めているのであり、野党を求めていることなどないのです。

そのため、国政野党の戦略・戦術・言葉選びは基本的な選挙戦略が間違っており、自らの立ち位置を根本から見直すべきです。有権者から見れば「世間交代可能な野党」と「たしかな野党(共産党)」の間は国会議員が思っているほど違いはないのです。







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