レーガン
2016年03月09日
クルーズVSトランプ、「レーガンの遺産」というキーワード
共和党予備選挙は、クルーズVSトランプという「次代」を争う対決に
共和党の大統領選挙予備選挙では、クルーズVSトランプ、という対決の構造になりつつあります。
フロリダ州でマルコ・ルビオ氏が苦戦しており、あわや撤退かという自体に陥っていることから、上記2人に勝負が絞り込まれそうな状況です。むしろ、ケーシック氏はオハイオ州でトランプ氏と競っており、場合によってはケーシックが残ってルビオ撤退という可能性すら存在しています。
CPACのSTRAWPOLLにおいてもクルーズ大統領・ルビオ副大統領という保守派の意向が強く表明されており、マルコ・ルビオ氏が撤退表明することは時間の問題となったと言えるかもしれません。
筆者はマルコ・ルビオ氏がトランプ氏に最終的に挑戦する候補者になるかと想定していたため、クルーズ氏が大きく代議員獲得数を得ていることはかなり意外な印象を受けています。しかし、個人的にはテッド・クルーズ氏に最もシンパシーを持っているために喜ばしい出来事だと考えております。
キーワードは「レーガンの遺産」を継承するか否かということ
クルーズVSトランプという構図になった場合、予備選挙で問われることは「レーガンの遺産」について評価ということになります。
従来までの米国共和党における予備選挙は、穏健な中道路線を掲げる共和党主流派と「レーガンの遺産」を尊重する急進的な保守派の対立構造によって行われてきました。そして、1990年代から連邦議会においては保守派が圧倒的な影響力を持ち、大統領選挙では両派閥による激しい対決構造が表面化してきました。
「レーガンの遺産」とは小さな政府を始めとした保守派が掲げる政治理念のことであり、米国保守派の会合では金科玉条のごとく繰り返されるものです。それだけ彼らにとってはレーガン大統領という存在が残した功績は大きなものであったということができるでしょう。
保守派は主流派をRINO(Republican In Name Only:名ばかり共和党員)として批判し、主流派は保守派を過激な政治思想を表現する活動家グループとみなしてお互いに対立を続けてきました。
一方、トランプ氏は共和党主流派からも怨嗟の対象として強烈な批判を受けている状況にあるとともに、「レーガンの遺産」を気にかけない態度を取り続けています。トランプ氏は共和党保守派の人々と会話すると必ず触れるゴールドウォーターやレーガンの価値観についてほとんど触れることがありません。
マルコ・ルビオ氏が撤退した場合、主流派VS保守派、という一つの時代が終わり、予備選挙の構造には、保守派VSアウトサイダー、という歴史的な変化がもたらされることになります。従来までは主流派を攻め立てる立場にあった保守派がトランプ的なアウトサイダーからの攻撃にさらされる逆転の構造が生まれているのです。
これこそが現在の共和党で起きている政治構造の地殻変動の正体であり、本人たちが自覚的か否かに伴わず、共和党の時代が次の段階に進もうとしているということが言えるでしょう。
トランプ旋風の後に残る政治的な要素とは一体何なのか?
筆者はトランプ氏を非常に理知的で合理的な人物であると看做しており、彼を危険視したり馬鹿にしたりする風潮とは一線を画しています。むしろ、彼はレーガンの遺産を継承しない新しい共和党員の代表であり、かつ選挙戦においては極めて合理的な戦略を実行しています。
たとえ、トランプ氏が予備選挙・本選挙で勝たなかったとしても、トランプ氏によって掘り起こされた政治的な層は何らかの形で米国社会に残ることになるでしょう。つまり、トランプ氏という強烈なキャラクターを持った人物がいなかったとしても、誰か他の人物がその受け皿になっていたことは間違いないのであり、「レーガンの遺産」VS「トランプ的な何か」の対立こそが共和党の新しい政治テーマになるのかもしれません。
そのため、トランプ氏をトランプ氏個人の現象として捉えるのではなく、新しく巻き起こりつつある政治的な潮流として再認識する必要があるものと思われます。
yuyawatase at 03:53|Permalink│Comments(0)