シンクタンク

2016年01月17日

中央省庁の「大規模な地方移転」がもたらす真の効果


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現在の中央省庁の「生ぬるい移転策」は国を滅ぼすものだ

現在、地方創生の観点から中央省庁と独立行政法人の地方移転が議論されています。

具体的には、

<中央省庁>観光庁、特許庁、文化庁、消費者庁、総務省統計局、中小企業庁、気象庁
<独立行政法人>理化学研究所、水産総合研究センター、農業・食品技術総合研究機構、産業技術総合研究所、教員研修センター

などが検討対象として挙がっています。私はこのような中途半端な地方移転策は弊害が大きく、特に独法系の研究所は人材面の観点から地方に移転することは論外だと考えています。

中央省庁側も各省庁の本丸ではなく、あくまで外局を移すという消極的な対応ぶりであり、「この程度の移転策であればやらないほうがマシ」という声を上げさせることを狙っているかのようです。おそらく、7月の参議院議員選挙のどさくさに紛れて、地方創生という言葉と移転話自体を潰してしまおう、という各省庁の魂胆なのでしょう。

東京都から中央省庁の本丸を地方に移転させることが重要

ただし、筆者は東京都からの中央省庁の移転は行うべきだと考えています。関東一帯への移転であれば1時間以内に国会まで来ることは可能であるため、東京のど真ん中の一等地である霞が関に中央省庁は不要です。

もちろん官僚諸氏が懸念するような質問取りやレクなどの実務上の問題が発生することは理解します。まして、毎朝の自民党の部会への出席などを考えると永田町に近い場所に立地していたい気持ちも分かります。

しかし、筆者はそれらの官僚による国会議員への過剰サービスこそが日本の政治レベルの向上の弊害になっていると確信しています。国会議員が説明を求めれば直ぐに官僚が飛んできて政策趣旨やデータの説明を行うような環境は議員の甘えや政官の癒着構造に繋がっています。

そもそも官僚からのレクであればTV会議などでも可能、国会の質問取りなどもデータ送受信で十分な作業です。事務作業の処理が必要であれば衆議院会館・参議院会館に設置された各省の連絡室で十分だと言えるでしょう。

それ以上の過剰かつ日常的な政官の接触は官僚による根回し文化の存続の観点から有益かもしれませんが、政治のレベルアップには繋がらないため、政治側のアイディアが時代の変化に機敏に対応することが困難になる原因となっています。

民間の政策研究機関の発達が遅れている日本の政策マーケット

日本では民間の政策研究機関の発達が遅れています。中央省庁の下請けのような研究機関がゴロゴロしているだけで、国会議員らが政策研究を頼みたいと思ったときに適切な研究機関はごく少数しか存在しません。そもそも金融機関系のシンクタンクは財務省には何も言えないでしょうし、その他のケースでも政策研究能力では中央省庁に歯が立たないのが現状だと思います。

米国ではワシントンには大小様々な政府機関から独立したシンクタンクが濫立し、しっかりとした政策提言を行うことができる人材が多数存在しています。私も幾つかの研究機関を訪ねましたが、その知見の卓越性・視野の広さに驚かされた経験があります。

日本で米国のようなシンクタンクが発達していない理由は「国会議員の怠慢」に原因があります。国会議員が政策に金を払わない、毎年多額の政党助成金と立法事務費を受け取りながら、その大半を選挙関連費用に投入するカルチャーは酷いものです。

国会議員に対して提言を行う人々は原則として手弁当、または数万~数十万円のお小遣いをもらうだけ、政党からの相当重要な調査委託を受けたとしても1~2千万円程度ではないかと思います。これでは民間の政策シンクタンクが育つわけがありません。政治に関わるリスクも考慮すると「バカバカしくて付き合ってられない」というところが研究者の本音でしょう。

国会議員が政策研究に資金を投じない主たる理由は「官僚が無料で直ぐにレクチャーをしてくれるから」に尽きます。もちろん、それは無料ではなく税金によって行われているものですが、国会議員は何でも官僚に聞けてしまうので、政策=知識=お金を払う、という当たり前の慣習が無くなっているのです。

従って、国会議員の政策立案とは、官僚からのデータ、官僚からのレク、を基にしたものになり、独自の視点やアイディアが欠落することになります。

世界に通用する民間の政策研究機関の創設を行うべき

筆者は国会議員が官僚から自立するために、中央省庁の地方移転を大規模な形で進めるべきだと思います。

中央省庁と国会議員の物理的な距離を引き離すことを通じて、不必要な政官の癒着を防止するとともに、国会議員への政策インプットの経路自体を改革することが必要です。

そして、政策インプットの経路を改革する中で、政党助成金・年間320億円と立法事務費・年間50億円の10%をまともに政策調査に使うだけで37億円の政策マーケットが創出されることになります。

元々のそれらの資金の最低限10%程度は最初から政策調査に使用することが当たり前だと思いますが、たとえその程度であったとしても日本の政治のレベルを激変させるだけの効果があるでしょう。是非、地元の議員に立法事務費を何に使ったのかを聞いてみてください。

上記のような環境づくりの一環として、中央省庁の本丸の地方移転(関東圏内の移転)を推進することが望ましいものと思います。日本に世界に通用するシンクタンクが創設されることを期待しています。




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yuyawatase at 07:00|PermalinkComments(0)

2015年12月14日

自治体シンクタンクが担うべき「真の役割」とは何か

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地方自治体が政策立案力を高めるために「自治体シンクタンク」を作ってみたが・・・

現代社会では、地方自治体は様々な環境変化(都市間競争、財政難、少子高齢化、分権改革、市町村合併、その他諸々)のプレッシャーを受けており、それらの課題解決のための政策形成を実行することが課題となっています。

それらを解決するための方法論を見出すために、地方自治体独自の公共政策を立案・提言し、当該地方自治体の政策形成能力の質の向上などに資することを目的として、地方自治体が自治体シンクタンクを設立し始めて長い月日が経ちました。(○○研究所みたいな名前のものです)

自治体シンクタンクで一生懸命取り組まれている研究員の方がいることは存じていますが、私見では本来は企画課が実行すべき事業を外部にアウトソーシングしただけのように見えるものが多いことも実情です。

優れた外部研究者や知見ある住民を登用するための仕組みとしては有効な面もあると思いますが、そもそも本来のシンクタンクの設立目的が漠然としているために、今後の方向を思案しているのが現状といったところではないでしょうか。

そもそも「シンクタンクが何を研究すべきか」を分かっていないという課題

私は元々ブームのような形で設立された自治体シンクタンクが多かったと推測しています。そのため、自治体シンクタンクの研究内容も極めてバラバラの傾向があります。強いて言うならば、上述のとおり、本来は企画課が担っていたような計画・行革に関する研究領域のものが多い傾向にあります。

なぜなら、地方分権が叫ばれて久しい状況となりますが、実際には権限・財源などが中央に集まったままの状態が続いているため、地方自治体が自ら何をやるべきかを考えたところで大きなインパクトをもたらすことができないからです。自治体関係者は大きな声では言えないと思いますが、自治体シンクタンクが「何を研究すべきか」ということが最大の課題となっていても過言ではないでしょう。

これらの状況は我が国の地方分権が幻想のものであったことを反省することによって正していくことが可能です。そして、重要な権限・財源についてはほとんど分権化されていないという認識を持つことで、自らが何を世の中に問うていくべきかを自覚することができると思います。

自治体シンクタンクは「規制の隙間に存在するグレーな領域を合法化すること」が仕事だ

自治体シンクタンクが活躍すべきであった対象として、最大の好例は大田区で制定された民泊条例を挙げることができると思います。

民泊条例が制定される以前、既に日本国内ではネット仲介のAirbnbや単なる個人民家の貸出などを通じて、ホームシェア(民泊)は定着しつつありました。これらが旅館業法から見れば、違反スレスレのグレーな領域のビジネスではあるものの、新経済連盟の提言によると、日本全国で自由化・合法化した場合は10兆円の経済効果があるものと推計されており、ビジネスとして非常に裾野が広いものになるはずでした。

民泊を正式に法的に認める特区が制定されたとき、メディは「民泊解禁!」と大々的に報道しましたが、民泊の最低条件は6泊7日以上に限定されてしまったことで、従来までのネット仲介・個人運営の民泊は法的に禁止されることになり、むしろ新産業の芽が摘まれる結果が生まれました。

仮に自分が東京23区のシンクタンクを持つ区長であれば、当該自治体は大田区よりも短い1泊2日からの宿泊などを解禁する特区案を策定し、大田区と比べた経済効果・治安推移などを図ることを提案したと思います。そうすることで、区内に確立し始めた新たなビジネスの芽を守り、区民の経済・雇用を発展させていくための施策を実行することができるからです。

つまり、未だ地方分権が不十分な日本において、中央政府に対して政策の論理性で勝利し、経済的な自由を勝ち取ることが自治体シンクタンクの役割ということになります。

自治体シンクタンクを活性化するためには法人税・所得税の地方税化が不可欠

地方自治体が規制緩和などの構造改革に積極的に取り組まない問題は、経済成長に連動する法人税・所得税の大半が国税に入ってしまう現在の税構造に理由があります。

現状の税財政の構造は依然として地方自治体は国に多くの財源を依存しており、増大し続ける社会保障費に押しつぶされそうになっているだけです。そのため、自治体シンクタンクの研究内容は前向きで具体的なものではなく、いかにも企画課から生まれてきそうな抽象的で漠然とした即効性が薄いものばかりになるのです。

税財政の構造を変えて地域経済の成長と地方自治体の栄枯盛衰を連動させることで、初めて自治体シンクタンクが研究するべき内容が具体性を帯びたインパクトがあるものに変わっていきます。

真の地方分権・規制改革のためには、法人税・所得税の地方税化は不可欠であり、この方法でしか日本の都市経済が再活性化する方法はありません。日本の経済成長が停滞している理由は、中央政府が経済・雇用に関する権限を手放さずに、日本全体に画一的で無意味な経済規制を維持し続けていることにあります。

地方自治体の仕事は、国民に強いている規制の穴を見つけて拡大することであり、むしろ積極的に拡大していくための理論的な根拠を整備することです。民間人だけでは強力な規制権限を有する中央政府に太刀打ちすることは困難だからです。

社会保障に関する問題は中央政府によるものとして明確に切り分け、地方自治体は各地域の経済と雇用に関して責任を持つものとして再定義することが望まれます。







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yuyawatase at 21:00|PermalinkComments(0)