サンダース

2016年07月20日

7月13日・日米左派の対応に「大人と子どもの差」があった

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(AFP:ヒラリー・サンダース、予備選で激戦を繰り広げた末に両者を認めて和解)

7月13日米国・ヒラリーとサンダースが抱き合って協力を誓い合った

7月13日米国ニューハンプシャー州、クリントンとサンダースは壇上で抱き合って協力を誓い合いました。

サンダースは「彼女が大統領選の民主党候補者になる。自分は何でもするつもりだ。」と述べ、ヒラリークリントンが圧倒的に最適な候補だと強調しました。

さらに、サンダースは「二人の間に意見の相違があるために予備選挙を戦ってきたが、それが民主主義というものだ」という言葉を続けて、「そのおかげで両陣営は歩み寄りができ、民主党の歴史で最も進歩的な公約をまとめることができた」と民主主義を讃えました。

サンダース支持者が会場からブーイングすると、サンダースはそれらの人々を手で制し、返礼としてクリントン氏はサンダースの存在に謝辞を述べ、彼が掲げた政策を取り入れていく決意を語りました。

【米大統領選2016】 サンダース氏、クリントン氏支持を正式表明


7月13日日本・鳥越擁立で宇都宮健児は野党に引きずり降ろされる形で苦渋の選択

一方、日本では公示日直前から野党側の候補者として内定していたと見られる宇都宮氏に代わって鳥越氏を擁立する動きが活発になりました。

宇都宮健児氏は7月12日にメディアに対して「(鳥越氏は)大変知名度のある方だとは思うが、(野党の対応に)違和感を持っている。候補者のことをなんだと思っているのか」。野党が鳥越氏を担いだ経緯についても「不透明だ。どういう議論がされているのか伝わってこない」(産経ニュースから引用)と怒りをぶちまけています。

その上で、宇都宮氏は鳥越氏と面談し、「都政のことはこれから」という鳥越氏に自らの政策集を渡し、その実現を託しました。会談終了後、宇都宮氏は「掲げた政策を実現するためには選挙で勝つ必要がある。その前提となるのは政策であって、なんでも勝てばいいという立場ではない」と囲み取材で語っています。

しかし、テレビで追及されてようやく言及した築地市場の移転反対の可能性を含めて宇都宮市の政策が十分に反映されたとは言えない状況です。

宇都宮健児氏のTwitterは7月13日の撤退表明以来沈黙していましたが、7月20日現在イベント紹介の案内の配信が再開されましたが、東京都知事選挙については一切触れられていません。

宇都宮健児氏のTwitterアカウント

政治的意思決定プロセスの成熟度に差、米国も問題があるが日本よりも上だと思う

筆者は公開討論会の様子などを見ていた限りでは、宇都宮健児氏の政策は非常に練りこまれたものであり、弁護士としての現場の匂いがする地に足の着いたものだったと感じています。

東証一部上場会社(鳥越製粉)創業家でエリートジャーナリストの鳥越氏と弁護士として貧困と戦ってきた宇都宮氏はちょうどヒラリーとサンダースを模したような存在です。日米において両者の対応が正反対のものになったことは両国の民主主義の成熟度の差を表す典型的な出来事と言えるでしょう。

今回、野党側は知名度ばかりを気にして、石田純一氏、古賀茂明氏、宇都宮健児氏らに声をかけては取り換えるという極めてご都合主義の対応を繰り返してきました。

このような無様な状況になった理由は明白です。それは党幹部支配によって党員の声が完全に無視されているからです。つまり、民進党をはじめとした国政政党は党員・サポーターを抱えているにも関わらず、彼らの声を全く無視して一部の議員だけで集まって物事を決める閉鎖的な党体質を抱えているのです。

与党側でも多くの東京都民の有権者が「増田って誰?」というところからスタートし、そのまま選挙戦に突入するという極めて都民を馬鹿にした対応がなされています。

予算規模13兆円の都庁のリーダーを決める選挙戦を通じて、日本の民主主義の未熟さが露呈したことが今回の東京都知事選挙の最大の成果と言えるでしょう。

政策論争や過去の実績を問われる候補者選定プロセスを実施すべきだろう

舛添氏の辞任は参議院議員選挙直前ではありましたが、それは東京都民がいい加減なプロセスで東京都知事を選ばされる理由にはなりません。参議院議員選挙が忙しいなんて言い訳は東京都民には全く関係ありません。

国政は国政、都政は都政であって、今回の酷い擁立劇は東京都議会の各政党会派の怠慢だと言えるでしょう。国政選挙があるから東京都知事選挙が蔑ろになるなら、国会があれば東京都議会も要らないということで良いのでしょうか。

少なくとも今後は東京都知事選挙については任期終了の半年程度前から各政党が候補者選考プロセスを東京都民に公開する形で実施していくことが必要です。今回の東京都知事選挙を反省材料とし、日本にも当たり前の民主主義のプロセスが定着していくことが望まれます。

とりあえず、日米で民主主義の成熟度が「大人と子どもの差」がある状況はみっともないので、日本の政治家には早急に是正してほしいと思います。




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本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2016年05月16日

トランプは米国の「破壊者」ではなく「救世主」だ!

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Wikipediaより引用

米国の破壊者は「ドナルド・トランプ」ではなく「ヒラリー」と「サンダース」である

筆者は昨年から主に選挙キャンペーンの観点から大統領予備選挙においてトランプ勝利を明言し、現在もトランプがヒラリーに大統領選挙本選で勝利することを予測しています。

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由(2016年5月5日)
数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)
何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)

一方、「なぜ、トランプ現象が起きたのか」ということについて、メディアや知識人が経済格差やスピーチ力などの様々な理由をつけて説明しています。しかし、それらの大半は極めてポピュリズムな観点に基づく分析が多いことを残念に思っています。なぜなら、トランプ現象は米国に深く根差した政治思想の観点から説明することが可能だからです。

政治学者ルイス・ハーツが指摘するように、米国は封建制度を経験していない建国以来の自由主義国家です。

米国では王族や貴族が存在していないことによって反革命もなく、小資本家・農民・プロレタリアートも含めて民衆がプチブルジョワの心性を共有しているために社会主義に傾倒することもありませんでした。

米国=アメリカン・ドリームという思想は「誰もが成功することができる」という信念に支えられた社会風土の中から生まれたものです。米国の支配的な認識の下では、生まれながらの貴族階級も無ければ絶望した底辺の貧困層も存在していませんでした。米国は努力すれば誰もが成功を手にすることができる国、自由主義を国是とする国家とされてきました。

つまり、「絶対化された自由主義思想」こそが「米国の自己イメージ」ということになります。

そして、共和党は絶対化された自由主義思想の体現者であるとともに、民主党であったとしても思想的なベースを変更することなくプラグマティックな対応を行う政党であることに変わりはありません。

多くの日本人は日本国と180度異なる発想で建国された米国という国家を理解することができていません。そして、近年では米国でも大学などで左派的な教育を受けた知識人はその国是を失いつつあるのかもしれません。

米国という国家への無理解の結果が「トランプは米国を破壊する」という不可思議な言説の氾濫に端的に現われていると思います。米国を破壊するのは「トランプ」ではなく「ヒラリー」と「サンダース」なのです。

米国に生まれた「貴族=ヒラリー」と「社会主義者=サンダース」という異分子

ヒラリー・クリントンはイェール大学のロースクールを修了した才女で政治的なキャリアの色が強い法律家として華々しいキャリアを誇っています。

彼女は夫であるビル・クリントン大統領の政治的な影響力を背景に医療保険改革問題特別専門委員会委員長に就任する前代未聞の猟官ぶりを発揮した上に、ホワイトハウスにはファーストレディーのオフィスだけでなく、大統領執務室があるウエストウイングにも特別にオフィスを構えていました。

そして、「ビラリー」(ビル+ヒラリー)または「共同大統領」と呼ばれるほどに権勢を振るい、その後もファーストレディーとしての経歴を利用して上院議員選挙に出馬・当選、大統領選挙予備選挙でオバマに敗れるまで、夫の名声を嵩にきてやりたい放題の振る舞いを繰り返してきています。

まさに、閨閥の威光を利用するエスタブリッシュメント(貴族)としての道を爆進してきた人であり、現在は米国初の「夫婦で大統領になる」という政治の私物化とも言えるようなプロジェクトに挑戦しています。ヒラリーは「大統領になって何がしたいか分からない」と批判されますが、彼女は貴族として立候補しているのだから大衆との約束が無くても当然でしょう。

一方のサンダースは、ポーランド系ユダヤ人で大学卒業後にイスラエルのキブツで過ごした後に格差の少ない社会が良いという思想に染まったバリバリの社会主義者で実兄ラリーがイギリスの緑の党の政治家という人物です。

若いころから米国で超少数勢力であった労働ユニオン党から連邦議員・州知事選挙に何度も立候補するも惨敗を繰り返し、無所属で出馬したバーリントン市長選挙で初勝利。その後、再び下院選挙に立候補するも落選、しかし不屈の闘志で再度立候補して下院議員になった筋金入りの社会主義者です。

おまけに、70年代・80年代に138回爆破テロを起こした、FALNというマルクス・レーニン主義のプエルトリコテロリストグループの主犯格の釈放をオバマに直訴したトンデモ・エピソードも保守派から指摘されています。

上記の経緯からサンダースは民主党に必ずしもシンパシーがあるわけではなく、米国の中では珍しいであろう極端に左派的な経歴を持った政治家だということが言えます。(無所属議員として民主党と院内会派を結成)

両者の特徴はビジネス経験は全く存在せずに政治を利用して台頭してきたキャリアの人物ということになります。つまり、ヒラリーもサンダースも米国の伝統である「絶対的な自由主義」という観点からは逸脱した存在なのです。

現在の状況は米国には建前上存在しないはずの「貴族」と「社会主義者」が現れて、民主党という政党を利用して「米国を乗っ取ろうとしている」状況だと言えるでしょう。

トランプ現象が起きた理由は「米国の伝統が脅かされた」ことに原因がある

一方の共和党側でも昨年段階ではブッシュ家というエスタブリッシュメントがクリントン家ばりに大統領職を私物化しようと画策している状況でした。しかし、結果は読者も知っているようにブッシュは惨敗し、エスタブリッシュメントの「アンチ・トランプ」キャンペーンは全く効果を発揮しませんでした。(ブッシュ以外の予備選挙候補者もフィオリーナを除いてビジネス経験がほぼ皆無の人々でした。)

筆者は昨年からトランプ氏の選挙キャンペーンの巧みさを指摘してきましたが、同時にトランプ現象については「米国の伝統」を背景とした米国人の根源的な危機意識の表れと捉えています。

トランプ現象の解説として一般的に述べられる「経済格差を背景とした白人下層の盛り上がり」という説明では説明不足なのです。なぜなら、経済格差の単純な是正を求める人々は、共和党ではなく民主党、そしてサンダース支持者になっているはずだからです。

ドナルド・トランプ氏は不動産ビジネスで財を成した人物であり、その人生についてもまるで映画のような浮き沈みを繰り返してきた人物です。ビジネスを通じたアメリカンドリームの体現者であり、まさに米国が絶対視してきた自由主義に基づく人生を送ってきました。彼は経済格差の是正と凡そ親和性があるような候補者ではありません。

そのトランプ氏がガサツに語る言葉や振る舞い、そして背景にある強いビジネスへの信望感こそが「米国が米国であること」そのものなのです。ヒラリーやサンダースらの「米国の伝統の破壊者」に対し、「米国の大衆が拒否意識を持った」ことによって生まれた存在が「トランプ」なのです。

ドナルド・トランプは「米国の破壊者ではなく救世主」である

したがって、現時点において、トランプは米国を破壊するどころか、米国の伝統を守る「救世主」である、ということができると思います。トランプの出現・台頭は現在の米国の政治シーンにおいては必然のことであり、米国を破壊しようとする人々に米国の本能が牙を剥いたものと理解するべきです。

米国の「絶対的な自由主義」は場合によっては独善的な思考を生み出すことにも繋がります。筆者はトランプ氏の選挙用のセンセーショナルな発言も「米国の伝統」に対して相容れない対象に対する根源的な反発を背景としたものであるように感じます。

米国は自由主義を国是とした生まれた国であり、封建制に虐げられてきたアジア人や欧州人には到底理解できないイデオロギーによって作られた国です。従来までの彼らなら特権階級の存在を受け入れることもなければ格差による絶望を受け入れることもないでしょう。

このような「米国の伝統」を理解せずにトランプ現象を語ることはそもそもできないのです。



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2016年05月07日

数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは

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トランプの予備選挙勝利を予測することができない理由は「数字」を見ないから

さて、筆者は前回の記事ではトランプ氏がヒラリーに勝てる定性的な根拠を示しました。

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由

しかし、筆者が「トランプ勝つかもよ?」と述べても、メディアや知識人などの既存の権威を信じる頑迷な人たちはクリントン勝利を漠然と信じていることでしょう。

でも、よく考えてみてください。みなさんが信じているメディアや知識人はトランプの予備選挙勝利を何ら予測することができなかった人たちです。なぜ、彼らは「専門家」であるにも関わらず予測を外してしまったのでしょうか?

その理由は簡単です。なぜなら、彼ら自身が既存の思い込みから抜け出ることができず、数字的な根拠もなく思い込みを述べていたからに他ならないからです。昨年中のテレビの大統領選挙の解説などで「ブッシュが本命」って何度も聞きましたよね?今となっては公共の電波で根拠が何もない素人以下の見解が垂れ流されていたわけです。

また、大統領選挙について解説する有識者らのトランプ氏を批判することを目的とした「分析の体裁を取った罵倒」に何の意味があるのか、今でもさっぱり理解できません。そこにあるのは知性ではなく冷笑・嘲りなどの知的傲慢そのものだと思います。

そこで、今回はトランプ氏がヒラリーに勝てる根拠を数字で示していくことで、メディアと有識者の皆さんによる米国政治に対するミスリードから読者の皆さんの意識を修正していきます。

トランプがヒラリーに勝てることは数字で予測することができる

アメリカ大統領選挙では各州に割り当てられた選挙人団の過半数を獲得することで勝利することができます。全部で538人の選挙人団が存在しており、そのうち270人以上の選挙人団を確保すればゲーム終了ということになります。

前回のオバマVSロムニーの選挙人獲得数では、オバマ332名とロムニー206名ということで大差でロムニーが敗北しています。実際の得票数はオバマ・約6591万票VSロムニー・約6093万票なので得票割合は極めて競っていましたが、一部を除いて各州勝者総取り方式なので両者の獲得数に大きく差が出た形です。

ロムニーは共和党内では必ずしも良く思われていないモルモン教の信者であり、人気が特別高かったわけでもないので、今回の分析ではトランプ氏の最低獲得選挙人数を基礎票としてカウントするものとします。

ロムニーの選挙人獲得数は206名なので、トランプ氏の獲得選挙人数が過半数の270人に達するためにはトランプ氏は幾つの州で追加の勝利をする必要があるかを考えていきます。

まず、オバマに取られていた選挙区で共和党が取り戻す可能性が高い州は、

・オハイオ州(ケーシックの地盤)18人
・ウィンスコンシン州(スコットウォーカーの地盤)10人

だと推測されます。これで206+28人=234人です

ケーシック氏は大統領候補者になった場合ヒラリーに勝てるという世論調査結果があり、彼が副大統領または要職で迎え入れられた場合、同州での勝利は比較的手堅いものになるでしょう。ウィンスコンシン州は最近の大統領選挙では民主党支持層が厚い状況ですが、予備選挙にも出馬していたスコットウォーカー氏が州知事であり、なおかつ最近では上下両院選挙でも共和党が優勢な状況となっています。

続いて、他のスイングステート(共和・民主の勝敗が入れ替わる州)の状況を見ていきます。それらの州のうち、現在、共和党知事在職&勝率がそれなりに高い州は、

・フロリダ州29人(トランプ予備選圧勝
・ネバダ州6人(トランプ予備選圧勝)
・アイオワ州6人(トランプ僅差負)
・ニューメキシコ州5人(5月7日現在・予備選未実施)

ということになります。これらを合計すると46名になるため、この時点でトランプ氏の獲得選挙人数は280名に到達します。その上で、通常運転では民主党有利&共和党知事がいる下記の州で万が一勝利できた場合、

・ミシガン州16人
・ニュージャージー州14人
・メリーランド州10人
・メイン州4人
 
がトランプ氏の獲得選挙人数に加わることになります。これに加えて、民主党知事が存在する、ペンシルベニア州20名、コロラド州9名、ニューハンプシャー州4人などのスイングステートでの勝ち負けを考慮に入れるなら、トランプ氏が十分に大統領選挙に勝利する可能性があると言えるでしょう。

共和党が渋々トランプ氏名を認めた理由は「予備選挙参加者数の激増」にある

上記のように、大統領選挙のルールを概観した場合、トランプ氏が大統領選挙に勝利できる可能性が当たり前に存在することが理解できたと思います。その上で、読者の疑問はそれらの諸州でトランプ氏は勝利することができるのか?ということに尽きるでしょう。

その疑問に回答する数的根拠は「共和党予備選挙参加者数の激増」を取り上げたいと思います。

実は、2016年の共和党予備選挙は2012年時よりも圧倒的に多くの米国民が参加しています。2012年時の参加者総数は18,973,624名でしたが、今回は5月3日のインディアナ州での予備選挙が終わった段階で参加者総数26,639,737名に激増している状態となっています。理由は言うまでも無く、トランプ氏が新たな共和党支持者を発掘したからです。

上述の通り、米国大統領選挙に当選するための人数は6500~7000万人程度です。したがって、トランプ氏の加入によって共和党予備選挙参加者及び見込み残だけで約45~50%近い人々が今回の大統領選挙で共和党に一定のコミットを行ったことになります。

たとえば、スイングステートであるフロリダ州では、2016年の大統領選挙本選ではオバマ424万票、ロムニー416万票の僅差で共和党は敗北することになりました。

そして、今回のフロリダ州の共和党予備選挙では2012年・167万人から2016年・236万人まで増加しています。一方、民主党は2008年・175万人⇒2016年・171万人と予備選挙参加人数が減っている状況です。共和党は盛り上がっているけれども民主党はそんなでもない、ということを数字が語っています。

前回の大統領選挙本選でオバマ・ロムニーの差が約8万票しかなかったことを考えると、トランプ氏の加入による共和党予備選挙による支持者掘り起し効果が大統領選挙本選に与える影響の大きさが分かりますよね。

もちろんトランプ氏を毛嫌いする層からの得票が逃げ出すことも予想されますが、それを補って余りある数字をトランプ氏が叩き出している状況が現実なのです。

トランプ氏が負けるとする人々はトランプ加入による得票増よりも忌避票が多いと考えています。しかし、トランプ氏による得票増は数字で証明されていますが、トランプ氏に忌避票が実際にどの程度になるかは分からない状況があります。

共和党指導部は当然に上記の状況を理解しているため、トランプ氏を無下に共和党から追い出すこともでき無い状況です。上記の分析から、既存の共和党支持層が我慢してトランプ氏に投票することで共和党の勝利は極めて濃厚だということが言えるでしょう。

日本の米国政治に関する分析は「木を見て森を見ず」の典型だ

筆者はトランプ氏の発言などに一喜一憂するメディアや知識人の様子は、まさに「木を見て森を見ず」の典型みたいなものだと思っています。

米国要人の重要なコメントも価値の低いコメントもごちゃ混ぜ、なおかつ数字もろくに見ない米国通とされるコメンテーターに無根拠な見解を語らせるテレビや新聞の酷さは見るに耐えかねるものがあります。

冒頭にも申し上げた通り、予備選挙で「ブッシュが本命」という誤った無根拠な情報を述べていた人々は何の責任も取らず、いまだに米国政治の専門家然としています。一体何なんでしょうか。

少なくとも今回の大統領選挙がトランプVSヒラリーになった場合、トランプ氏が勝てる可能性は極めて高い、ということは数字で証明できることです。ヒラリー勝利の根拠として援用できる数字は、現在の全米支持率のマッチアップでヒラリーがトランプ氏よりも優位に立っていることのみだと思います。(それはそれで有力な証拠ではありますが。)

以上の通り、今回の記事では数字でトランプ氏がヒラリーに勝てる可能性は十分にあることを論証してきました。トランプ氏は既に共和党の指名候補になることが確定した状況においては、候補者個人のパーソナリティーはもちろん、共和党・民主党の党勢の推移についても注目していくべきでしょう。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


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2016年05月06日

トランプ勝利はトランプ支持者に対する思想差別が産み出した

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トランプ支持者の結束が強固な理由は「知識人による思想的差別」の結果だ

トランプ氏が予備選挙で支持率1位に立って以来、トランプ氏に対するメディアと知識人によるバッシングは度を超えるものが多数ありました。そして、彼らによるトランプ氏へのバッシングはトランプ氏自身を飛び越えて、トランプ氏を支持する有権者に関する劣悪な分析の報道・発表に至るようになりました。

トランプ支持者は、白人の低所得者や低学歴層、、思いやりが足りない、人種差別主義者、権威主義者、ポピュリズムに踊らされた大衆、その他諸々の表現(基本は「馬鹿で人でなし」ということ)で予備選挙期間中散々に罵倒されてきたわけです。

メディアや知識人というものは普段何も話したこともないような人々に対して様々な名称をつけて罵る天才だなと思うわけですが、これらのメディアや知識人によるレッテル貼り、つまり「知識人による思想差別」はトランプ支持者の強固な結束を生み出したと思います。

筆者も「そりゃそうですよね」と思うわけです。彼らは単純にトランプ氏を支持しただけで、トランプ氏の政敵であるメディアや知識人から「人間失格の烙印」が押されるのだから怒りを感じて当然でしょう。まして、全然関係ない日本人などの世界中のメディアと有識者からも突然に「馬鹿扱い」されてさぞ驚いたものと思います。

トランプ氏やトランプ支持者に対する既存の権威からの分析は「分析の体裁を取った感情の吐露」ばかりで、筆者も定期購読しているThe Wall Street Journalの論説内容が酷すぎてげっそりしました。

それらの思想差別の結果として、トランプ支持者が「自分たちを馬鹿扱いする奴らを見返してやりたい」というモチベーションを強くしたことを想像することは簡単です。

有力政治家からのトランプ不支持はトランプ氏への支持率によって変わってしまうものだ

さて、メディアや有識者による「無知な大衆は俺らに従うべきだ」という論理展開をトランプ氏の予備選挙当確によって米国の民衆が退けたわけですが、その後の展開はどのようになっていくでしょうか。

早速トランプ氏に対して共和党の重鎮らが不支持または支持保留を打ち出していますが、これらは今後のトランプ氏の行動による支持率の変化によって大きく変わっていくことになるでしょう。

政治家というものは日本の政治を見ても分かるように「自分が政治的に生き残るために役に立つか」という観点から物事を判断する人々だと言えます。つまり、トランプ氏の支持率が上昇することになれば、前言撤回で態度を翻してトランプを支持することになります。政治家の悲しい性とはそういうものです。

一方、トランプ氏に対するメディアや有識者のバッシングはおそらく最後まで止むことは無いと思います。彼らはトランプ氏が勝利することは自らの存在意義が社会によって否定されることを意味しているからです。

これらのトランプ氏に対するバッシングはトランプ氏にとっては追い風になるでしょう。単純にメディア露出が増加するだけではなく、一度でも自らがバッシングの対象になったと認識した有権者は「強固なトランプ支持者」に変わっていくからです。

サンダース支持者はヒラリー・クリントンという妥協の選択肢を選ぶことができるのか

一方、民主党はヒラリーがエスタブリッシュメント陣営であるため、サンダース支持者の大衆がヒラリー支持にあっさりと転ぶかというと疑問です。

サンダース支持者は自らの信念に基づいてサンダースを支持しており、サンダースの支持率に関わらず彼を支持しているはずです。つまり、共和党の政治家とは違ってサンダース支持者は簡単に妥協することはできないものと思います。

今後、仮にサンダースが予備選挙を継続していく中で、メディアや有識者がサンダースを叩き始めるとサンダース支持者の反ヒラリー姿勢は硬直化していくことになるでしょう。(まあ、サンダースは知識人と共通の左派なのでトランプほどは叩かれないでしょうが・・・)

共和党と民主党の構図を見ると、政治的に妥協できるエスタブリッシュメントではなく、大衆レベルでの分裂は共和党と民主党の双方ともに深刻な状況だと言えます。特に民主党側の分裂はこれから更に深刻になることが予想されるため、ヒラリーが何事もなかったように穏便に指名を受けられるかすら疑問です。

トランプ支持者に対する不当な思想的・社会的差別は止めるべきではないか


トランプ氏及びトランプ支持者についての罵倒を念頭に置いた分析はそろそろ止める段階に入っていると思います。米国内では党派的な対立があるために難しいのかもしれませんが、遠く離れた日本での分析はトランプ氏への感情的な拒否感を乗り越えて冷静に行われるべきでしょう。

米国大統領選挙に関する言説をウォッチしている身としては罵倒的な論説やコメントに食傷気味で、日本人のメディアや有識者には第三国の人間としてもう少しまともな読み物を生産してほしいという切なる願いを持っています。正直言って、知的な刺激も欠片もないものが多すぎる気がします。

我々は米国人ではないのでトランプ氏やトランプ支持者をバッシングしたところで一円にもならないし、自分自身の知識人としてのポジションを守るための言論はやめましょう。特定人物に対する政治的な支持の有無によって思想的に差別をす良識に欠ける言論空間が是正されることを望みます。

知識人と社会主義 (勝田吉太郎著作集)
勝田 吉太郎
ミネルヴァ書房
1992-10




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2016年04月06日

米国大統領選挙本選はトランプVSサンダースの展開に

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しばらく体調不良で更新が滞っていたものの、その間に米国大統領選挙情勢が大きく変化してきたようです。今回は、久方ぶりに米国大統領選挙の予測について書いていきたいと思います。

世界の命運を決める米国大統領選挙の構図は・・・

筆者にとっては当然の結果ではあるものの、トランプVSサンダースという本選構図がおぼろげながら姿を現してきました。半年前だと何言ってんの?と多くの有識者の皆さんが言っていた構図がリアリティーを帯びてきています。

代議員数獲得数は4月5日時点でトランプ758・クルーズ499、クリントン1298・サンダース1089ということで、トランプ1位は不変の状況であり、クリントン・サンダースの差は猛烈に詰まっています。

ちなみに、筆者はかなり前からトランプVSサンダースがあり得ることを指摘してきました。そのため、今から書くことはいい加減な米国研究者の人々よりも信ぴょう性があると思ってもらって良いです。

<過去記事から一部抜粋>
何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月)
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(2016年1月頭)

共和党の指名はトランプでほぼ決まり、決選投票逆転説は無根拠である 

筆者はトランプ氏が党大会までに過半数取れなかった場合、決選投票で厳しいのではないかという見通しを持っていましたが、病床に臥せっている間に過去の見解は周回遅れのものになったように思います。

現在の筆者の見解では、トランプ氏の党大会での指名はほぼ確実だと思われます。たしかに、トランプ氏が党大会までに過半数の代議員を獲得することは困難であり、おそらく決選投票になる可能性は依然として高い状況にあります。しかし、ドナルド・トランプ氏が党大会で指名を受けれなかった場合に大人しく撤退する可能性はほとんど無くなりました。

理由は2つあります。

第一の根拠はお金です。大方のイメージと異なってトランプ氏は最近までほぼ自己資金を使わない選挙を行ってきました。しかし、直近では20億円以上の自己借入を実施して選挙キャンペーンを行うようになっています。つまり、今までトランプ氏は自己資金を使わない手抜き選挙をやってきたわけですが、勝利を意識し始めたために、お試し期間を終了して資金的なリスクを取り始めたと言えます。そのため、サンク・コストが発生して引くに引けない状況になっていくものと思います。

第二の根拠は本選です。たしかに、現状においてはトランプ氏は本選でヒラリー・サンダースの両氏に対して世論調査で不利な数字が出ています。しかし、共和党はトランプ氏が代議員数1位の状況で指名を受けられなかった場合、独自の第三の候補者として出馬する事態を恐れています。その時点で共和党側の負けが確定するからです。トランプ氏がその状況を理解していないわけがありません。

したがって、決選投票でのトランプ敗北説は周回遅れの議論になっており、今後の焦点は共和党との落としどころとして副大統領候補者を誰にするのか、ということが重要になるでしょう。私見では、副大統領候補者として有力な人物はクリスティー、ケーシック、ルビオなどの主流派の予備選候補者、または女性のイメージが良い人物ということになるかと思います。

蛇足ですが、日本の大部分の有識者やメディアは私から更に1周遅れており、最近になってトランプ有力説をやっと認める現状否定論者ばかりです。上記の決選投票でトランプ敗北説にやっとたどり着いたといったところでしょう。

最近では米国研究者があまりにも使い物にならないため、コミュニケーションコンサルタントによるトランプの話術に関するどうでも良い解説が増えてきたり、彼の選挙用の発言にイチイチ反応する選挙音痴の外交専門家の論評が発表されていたり、本当に日本の対米研究は末期だなあと感じる次第です。

WSJで安倍首相がトランプ氏に対して懸念を示したそうですが、無能な外交ブレーンに乗せられて「一国の首相が米国大統領に最も近い人物に無意味ないちゃもんをつける行為」はリスクが高いので勘弁してほしいです。

サンダースはヒラリーを倒すことができるのか?かなり面白いことになってきた 

トランプ優勢は当たり前のことですが、筆者は民主党側のサンダースの巻き返しには驚いています。

最近のサンダースの勝利の大半は党員集会なので、予備選挙で今後も勝利できるかどうかは疑わしいのですが、クリントンがここまで苦しめられるのは意外な展開だと思います。

全国的な世論調査ではヒラリーとサンダースの支持率差は僅差であり、なおかつ大統領選挙本選では「ヒラリーよりもサンダースのほうが共和党候補者に対して強い」という結果が出ています。つまり、民主党側では本選で勝利するならサンダースのほうが良いのでは?という共和党側のトランプ評価とは真逆の現象が起きています。

ヒラリー陣営は現在の獲得代議員数及び特別代議員数でサンダースを上回っている状況ですが、万が一NY州で敗北することがあればその後は雪崩を打って崩壊する可能性があります。同州の世論調査で今年初めの頃までは余裕で20ポイント以上(場合によっては48ポイント)引き離していましたが、現在は10ポイント前後まで詰められています。残り2週間程度で接戦になることは明らかであり、ヒラリーはここで終わる可能性が出てきています。

数字を見た議論が必要であり、大統領候補者の発言に右往左往するのは役人だけで十分だ

外務省はトランプ氏が勝つことを予測できていなかったので、急きょトランプ対策班を作ってレーガン大統領とトランプ氏を比較する資料を慌てて作ってみたりしているらしいですが、米国政治を知っている人々から見れば「意味不明な作業」をしているだけです。

政治家でもトランプ氏の発言に本気でコメントしている人がいますが、「選挙用の発言と外交用の発言は違う」ことくらい、普段から自分も選挙やっているのだから理解してコメントしてほしいものだと思います。

要は数字でモノを考えるという当たり前のことをやることからスタートするべきでしょう。トランプ優位は「トランプは1回しか予備選の支持率で負けたことがない」という当たり前のことを認識すれば「小学生でも分かる」ことでした。また、現在サンダースがヒラリーを逆転できる可能性が出てきたことは世論調査の数字を見れば誰でも分かります。

そして、トランプ・サンダースに共通することは「真面目に選挙マーケティングに取り組んでいる」ということだけです。米国大統領選挙の解説で頻繁に語られている「トランプ・サンダースの両者の支持者が格差を問題にしている」という主張は「何の数的根拠もない印象論」です。共和党と民主党の支持者を同じ尺度で考えることがナンセンスだと何故気づかないのでしょうか?

今回の米国大統領選挙では、日本人が不得意な「数字で選挙を考える」という当たり前の思考を訓練するには良いケーススタディになったと思います。今後の展開が益々楽しみな状況となってきました。





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2016年02月20日

サンダースの全米支持率がヒラリーを初めて上回る結果に

Bernie_Sanders_113th_Congress

2月18日・FOXの世論調査でサンダースの全米支持率がヒラリーを上回る結果に

盤石の強さを見せてきたヒラリー・クリントンですが、2月18日全米世論調査で初めてサンダース氏に敗北する結果となりました。たった一つの世論調査の結果となるため、大勢に影響があるとは思えないものの、ヒラリー・クリントンの圧倒的優勢は絶対ではないということを印象付ける結果となりました。

ヒラリー・クリントンのエスタブリッシュメントな振る舞いに対し、若者を中心とした批判勢力がサンダースを支持する構図となっており、サンダースの勢いがアイオワ州での接戦・ニューハンプシャー州での勝利によって増している状況となります。

予備選挙ではヒラリーの強さが際立つ、党員集会州では両者互角の展開に

ただし、サウスカロライナ州予備選挙ではヒラリーが圧倒的な状況であることに変わりなく、運動員による草の根活動が重要となるネバダ州などの党員集会州においてヒラリーとサンダースが接戦を展開している状況に変わりはありません。

サンダースは「なぜ大統領としてサンダースが相応しいのか」というメッセージを発することで、ヒラリー・クリントン陣営の最大の弱点である「大統領がヒラリーである理由の無さ」を効果的に突いてきました。今後は、「サンダースでも大統領選挙に勝利できる」というメッセージを発することが重要となります。ヒラリーのサンダースに対する理屈上の比較優位は「大統領選挙で勝てる」ということだけであり、ヒラリー支持の存在理由が崩れた場合はひょっとしてという状況が生まれています。

この点については共和党側の予備選挙の状況とリンクする状況が生じており、両党の予備選挙状況がお互いに影響しあっている複雑な選挙情勢であるということが言えるでしょう。

依然として圧倒的な強さを誇るヒラリー、ただし不確定要素としてのサンダース支持者を抱える

とはいうものの、ヒラリーはエスタブリッシュメント、特に民主党政界関係者からの圧倒的な支持を固めています。有力者からのエンドースメント数に関しては、対オバマ戦の時よりも強固な状況を築いており、サンダースはオバマ以上の勢いを確保できなければヒラリーに勝利することはできません。これは極めて困難な道のりであることは間違いありません。

ただし、ヒラリーが予備選挙に勝ち抜いて本選に進んだ場合、サンダース支持者がヒラリーを支持するかどうかは極めて疑問です。サンダース支持者は、特に若者はヒラリーを大いに嫌っているため、共和党側の候補者によっては、そちらに支持が流れる可能性もあり得ます。ヒラリーではサンダース支持者を満足させることは難しいものと想定されます。

流石にヒラリーが勝利した場合にサンダースが独立系の候補者として出馬する可能性は考えられませんが、ヒラリーは予備選挙を通じて民主党内に爆弾を抱えた形となることは間違いないでしょう。ヒラリーは「自分が何故大統領にふさわしいのか」という必然性を問われる事態となっており、この初歩的な問題に十分に回答することができなければ本選でも苦戦は必至という状況です。

クリントン・キャッシュ
ピーター・シュヴァイツァー
LUFTメディアコミュニケーション
2016-02-10


ヒラリー
岸本 裕紀子
PHP研究所
2016-01-23



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2016年02月07日

ブルームバーグの大統領選挙立候補検討の背景

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何故、ブルームバーグの大統領選挙立候補は検討されているのか

億万長者・メディア社主であり、3期の元ニューヨーク市長としての実績を誇るブルームバーグ氏。政治遍歴としては、元々は民主党支持者でしたが、市長選挙出馬時に共和党から立候補、市長退任後には無所属に戻っています。

政策的な方向としては、社会政策は銃規制強化・中絶賛成などリベラル傾向ですが、経済政策は財政均衡路線で保守的傾向を持つハイブリッド型の政治家です。イデオロギー的な人物というよりは、根っからの経営者タイプの人物と言えるかもしれません。

そのブルームバーグ氏の大統領選挙出馬、それも「無所属」での立候補が取り沙汰される状況となっています。今回は、その背景にある米国の政治構造について分析していきます。

共和党・民主党内の勢力争いを知ることで「ブルームバーグ」の意味が分かる

ブルームバーグ氏の立候補検討に至る流れを理解するためには、共和党・民主党内部の勢力構造という背景事情について知る必要があります。両党の党内闘争の現状をざっくりとした構図で示すと下記の通りとなります。

〇共和党  共和党指導部(主流派(ルビオ)VS保守派(クルーズ))VS共和党不満層(トランプ)
〇民主党  民主党指導部(ヒラリー)VS民主党不満層(サンダース)

共和党は指導部内で主流派と保守派が対立しており、更にその両者とも対立する不満層を吸収したトランプ氏が存在している三国志状態になっています。民主党はゴリゴリの既得権者であるヒラリー女史に対してサンダース氏が不満層を吸収して党内を2分する戦いを展開しています。

「ブルームバーグ」は共和党主流派と民主党指導部の連合が擁立する隠し玉

実は「ブルームバーグ」は共和党主流派と民主党指導部の連合が擁立する隠し玉と言われています。

選挙戦の様相は、共和党は初戦アイオワでは保守派のクルーズ氏が勝利、次戦のニューハンプシャー州ではトランプ氏が優勢な状況があります。ルビオ氏が追い上げているものの、先行する二人を差し切れるか否かは予断を許さない状況です。民主党は政界・財界で圧倒的優勢を築いているヒラリー女史がサンダース氏の猛追を受けて、あわや逆転の芽さえ出てきている状態です。

その結果として、共和党・民主党内で常に勝者であり続けたエスタブリッシュメント(共和党主流派・民主党指導部)が敗北する可能性が生じています。そして、この予備選挙におけるエスタブリッシュメント敗北のシナリオこそがブルームバーグ擁立論につながっているのです。

共和党主流派の「トランプ氏だけでなく保守派のクルーズ氏も嫌」、民主党指導部の「自分たちの利権を壊すサンダースは論外」という両者の思惑が一致した「エスタブリッシュメントが待望する第三の候補者」がブルームバーグ氏ということになります。

ニューハンプシャー州予備選挙の結果によってリアルな選択肢に・・・

上記のような構図を前提とした場合、ニューハンプシャー州の予備選挙の結果は極めて重要な意味を持つことになります。ブルームバーグ氏の擁立に向けた動きが本格化する条件を勝手に推測すると・・・

〇共和党 
トランプ氏が10ポイント以上差をつけてルビオ氏に勝利、クルーズ氏も一定の得票数を取得し、共和党内予備選挙の1位・2位構図はトランプ&クルーズという図式が定着すること

〇民主党
ヒラリー女史がサンダース氏に決定的な敗北をすることで、ニューハンプシャーだけでなく全米の支持率でもサンダース氏が逆転または両者の差が僅差になること(既に2月7日発表のキニピアック大学の調査で全米での両者の支持率差は2%しかない)

という感じでしょうか。

なお、筆者はクルーズVSサンダースの構図になった場合でもブルームバーグ氏の出馬は十分に想定されるものと思います。保守派の候補者であるクルーズ氏が共和党主流派から受け入れられるかは未知数だからです。

有識者らはトランプVSサンダースの構図になった場合にブルームバーグ氏の立候補の可能性があると述べていますが、表面的なトランプ氏とサンダース氏の印象論だけではなく、共和・民主両党の背景事情にまで踏み込んだ考察を行うことが重要です。

ちなみに、エスタブリッシュメントにとってはルビオ氏やヒラリー女史も彼らの選択肢の一つに過ぎず、それがダメならジェブ・ブッシュ氏からルビオ氏にスイッチしたように支持先を取り換えるというだけの話に過ぎないものと思います。

米国民主主義の在り方に挑戦する「ブルームバーグ」という選択肢

良いか悪いかは別として、ブルームバーグ氏の立候補は、米国エスタブリッシュメントによる米国民主主義の在り方への挑戦、といっても良いかもしれません。

エスタブリッシュメントが第三の候補者の擁立を行う理由は、彼らが米国の特徴である多様で力強いグラスルーツ(草の根)による民主主義への疑念を持っているからです。

エスタブリッシュメントは共和・民主両党員の予備選挙の手続きを通じて左右両極の候補者が選ばれることを望んでいません。ブルームバーグという選択肢の提示は「エスタブリッシュメントが推している理性的な候補者が選ばれるべきだ」という彼らの強い意志表明と言えるでしょう。

今回の大統領選挙を通じて、トランプ・クルーズ(共和党保守派・不満層)VSサンダース(民主党不満層)VSエスタブリッシュメント、という米国が抱える真の対立構造が表面化しつつあります。

<過去記事>*トランプ・サンダース台頭、ブッシュ・カーソン失速、マルコルビオ躍進を予測解説
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)
アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?(1月22日)
ドナルド・トランプがFOXの討論会を欠席した理由(1月30日)
日本の政治にも「和製のテッド・クルーズ」の誕生を!(1月31日)
FiveThirtyEight:米国の政界有力者が誰を支持しているのか(2月1日)
アイオワ州党員集会・テッド・クルーズ勝利、今後の展開は・・・(2月2日)
トランプVSルビオ、ニューハンプシャー州予備選挙は佳境に(2月6日)

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19

 


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2016年01月23日

アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?

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トランプ氏の初戦勝利、爆走継続がいよいよリアルな段階に・・・

2月1日のアイオワ州の党員集会直前の米国大統領予備選挙の風景が面白いことになってきました。筆者は昨年から一貫してトランプ氏が強いことを確信しておりましたが、他の日本の米国有識者の皆さんは「予想が全て外れて」西日本の大雪以上に心胆寒からしめているものと思います。

現在、全米世論調査、アイオワ州・ニューハンプシャー州の世論調査でもトランプ氏が頭一つ抜けた状況であり、このままの数字で推移していくとトランプ氏への共和党指名はリアリティーはかなり高いと言えるでしょう。

最近では、2008年選挙で副大統領候補者を務めたサラ・ペイリン女史のエンドースメントなど、保守派の中からもトランプ氏を明確に支持する人物も現れ始めています。まさに「山が動きつつある」状況です。

<過去記事>
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)

むしろ、2位の「テッド・クルーズ氏が残りすぎたこと」が反トランプ陣営の最大誤算

筆者の見立てでは、トランプ氏の爆走状態は「テッド・クルーズ氏」が2位の位置で残り続けたことが原因であると推測しています。

米国共和党の大統領予備選挙では、主流派(エスタブリッシュメント)と保守派(草の根団体)との伝統的な対立構造があります。

保守派の候補者が大衆からの支持を集め、主流派を推すメディアが保守派の候補者を叩くという構造が予備選挙で毎回のように発生してきています。その結果として保守派の候補者は、候補者の顔を取り換えながら支持率のアップダウンを繰り返すことが通例となっています。

今回の予備選挙での保守派候補者の典型的な事例は黒人候補の「ベン・カーソン氏」であり、支持率トップを一時的に記録しながらも、カーソン氏の自伝の中の虚偽記載の疑いなどがメディアで報じられたことでトップ争いから脱落することになりました。

その後、保守派の支持はベン・カーソン氏からテッド・クルーズ氏に流れることになりました。

そのため、通常のケースであれば、テッド・クルーズ氏がメディア・バッシングにさらされて失速し、マルコ・ルビオ氏などに主流派・保守派の支持が集約されることが予測されるところでした。

しかし、今回はトランプ氏の存在によって主流派の計算が狂った状況になっています。つまり、メディアのバッシングがテッド・クルーズ氏ではなくドナルド・トランプ氏に集中することになり、メディアがテッド・クルーズ氏の支持率を下げるキャンペーンを打つ余裕がなくなってしまったのです。

その結果として、主流派は支持率が高い保守派のテッド・クルーズ氏をエスタブリッシュメントとして再定義することを迫られたようです。メディアで彼のハーバード卒の経歴や奥さんがGSマネージャーであることなどが取り上げられて、保守派の主張を持つインテリ・エリートとしてのイメージを植えつける印象操作が行われてきた形跡が見え隠れします。

しかし、それらの行為は支持率3位の本命マルコ・ルビオ氏を主流派・保守派を最終的な落としどころとして一本化しようとしていた従来までの流れに反するものでした。むしろ、結果として非トランプの有権者の支持をマルコ・ルビオ氏やブッシュ氏などに分散する構図となり、現在のトランプ氏の独走状態を許す結果となっています。

通例では下降するはずだったテッド・クルーズ氏の支持が高い状態で留まっていることが反トランプ陣営にとっては大きな誤算であったと言えるでしょう。

日本の米国大統領選挙に関する報道は「エスタブリッシュメントの意向」で動く

日本国内ではトランプ氏を嘲笑するような予備選挙の解説記事が溢れていますが、とても真摯に大統領選挙の様子を解説したものになっているとは思えません。

「トランプ来るかも?」というような筆者のような言説を垂れ流していると、政治業界では「この子は頭悪いのね」という雰囲気が流れます。そのため、内心トランプ来るかもと思っていても、多くの有識者の皆さんはトランプ氏についてバイアスがかかった論評しか発表できません。見栄って怖いですね。

私が米国大統領選挙に関心がある日本の人々にお勧めしたいことは、日本人の解説記事は全部無視して、

RealClearPolitics

という米国大統領選挙の世論調査データが集まったサイトを参照することです。大統領選挙に関する無意味な分析記事よりも世論調査のページを見たほうがよほど米国のリアルな現状を知ることができます。

選挙は数字と構図が全てであり、今のところドナルド・トランプ氏は極めて不利な状況から巧みな手法で首位を勝ち取っているということが言えます。大富豪であるにも関わらず、現状まで自己資金をほぼ投入せずに寄付だけで選挙戦を行っている点だけでも驚きを禁じえません。

ただし、トランプ氏もまだまだ安泰とは言えず、クリントン女史も厳しい戦いに

上記のように、筆者はトランプ氏の選挙戦略(メディア対応とポジショニング)について高く評価していますが、それでもトランプ氏が完全に優勢であるとは言い切れません。それは現状において非トランプの支持率の合計がトランプ氏の支持率を上回っているからです。

そのため、今後の各候補者の撤退時のM&Aの結果によっては、トランプ氏の支持率が非トランプ候補者によって追い抜かれる可能性も十分に残されています。企業買収を得意としてきたトランプ氏の真価が問われるのはここからであり、トランプ氏にとっては真に厳しい正念場が訪れることになります。

クリントン女史もサンダース氏の激しい追い上げを食らっており、予備選挙の状況が盤石な状況とは言えない雰囲気が出てきております。まさに、選挙は最後の結果が出る瞬間まで分からない、ということですね。

今後もますます目が離せない怒涛の展開が待ち受けている気がしてなりません。





 
敗者復活
ドナルド・J. トランプ
日経BP社
1999-04-16


困難な選択(上)
ヒラリー・ロダム・クリントン
日本経済新聞出版社
2015-05-01

 

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2016年01月12日

米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?

Bernie_Sanders_113th_Congress

2016年米国大統領選挙でトランプ・ルビオ・サンダースの高支持率を解説

本ブログは2016年米国大統領選挙に関してトランプ・ルビオ・サンダースの高支持率を予測した上で解説をしてきました。

昨年中は日本国内ではブッシュ・ヒラリー楽勝を予想していた米国研究者ばかりでしたが、彼らも流石にまずいと思ったのかもしれませんが、日本でも年末になってからマルコ・ルビオ氏やテッド・クルーズ氏の数少ない日本への言及内容を慌てて取り上げ始める記事が増えてきています。このような現象は米国内の共和党穏健派からのみ情報で大半が形成される日本の米国情報ルートの限界が露呈したものです。

本ブログは米国のアクティビストらの現場に即した感覚を持つ分析を提供する日本唯一のブログであり、本年も客観的なデータと独自の情報ルートによる分析記事を配信していきます。

<過去記事>

主番狂わせか?ヒラリーVSサンダースが面白いことに(12月20日)

2016年1月最初の世論調査は、トランプ優位&サンダースの急上昇の展開に

2016年早々に行われた共和党予備選挙の世論調査でもトランプ氏の優位が続いています。Real Clear Politicsにまとめられている世論調査結果を見る限りでは、全米調査、そして予備選の第1ラウンド・第2ラウンドが行われるアイオワ州・ニューハンプシャー州でもトランプ氏の支持率が上がっています。

保守派の雄であるテッド・クルーズ氏は昨年末からアイオワ州でトランプ氏と拮抗する状態を演じていました。さらに、テッド・クルーズ氏は年明けも精力的にアイオワ州に資源を投入する作戦に出ましたが、強固な支持を獲得しているトランプ氏を引き離すことができませんでした。

最近はトランプ支持者は低学歴云々という差別的な言説がメディア・有識者(さらに言うと日米)で溢れかえっていますが、事実かどうかはともかく、そのようなエスタブリッシュメントの言説自体がトランプ支持者の結束を固めることに繋がっていると言えるでしょう。

年明け暫くすると各陣営が大規模なメディアキャンペーンを展開し始めるために、資金力が枯渇した陣営が撤退を開始します。共和党内の勝負は今後予想される撤退者の指示を誰がM&Aしていくのか、という段階に入っていきていると言えるでしょう。


ちなみに、トランプ氏は現状までの選挙キャンペーンは膨大な自己資金ではなく「トランプ氏への寄付」によって賄っているため、大富豪としての自己資金は全て温存している状態です。

<上から全米世論調査、アイオワ州、ニューハンプシャー州の調査結果>

2016年1月共和党

一方、民主党はヒラリーに対してサンダースが驚異的な追い上げを見せており、ARGが年明けに実施した世論調査のように、全米でヒラリーとサンダースの差が僅か4ポイントという結果も出てき始めています。(まだ他調査では15ポイント前後離れているものが多い状態ですが・・・)

特に注目すべきは、年明けのアイオワ州・ニューハンプシャー州の世論調査結果です。アイオワ州ではヒラリーとサンダースが拮抗しており、ニューハンプシャー州ではサンダースの優位が確立しています。

2008年のオバマ勝利は初戦2州を勝利したことにによって勢いづいたことも要因として大きく、共和党のトランプ氏のケースと比べて上記2州以外ではヒラリーの優勢な数字が継続しているものの、ヒラリーは必ずしもサンダースに対して楽勝という状況ではないかもしれません。そのため、ヒラリーはサンダース支持が強い若者層を切り崩すため、セス・モールトン議員などの30代若手の副大統領候補者を投入する可能性が出てきています。

資金面でもヒラリーの圧倒的な優勢と勘違いされることも多いのですが、サンダースは小口献金でヒラリーに匹敵するだけの資金を集めています。したがって、ヒラリー・サンダースの両者の競争は激しさを増す形で継続することになるでしょう。

ただし、共和党の予備選挙の場合と違って、ヒラリー支持者は支持を強固に決めているケースも多く、サンダースがヒラリーをまくり切るには現状を変える決定的な一撃が必要な状況だと言えます。

<上から全米世論調査、アイオワ州、ニューハンプシャー州の世論調査>
2016年1月民主党


2016年大統領選挙は、トランプVSサンダースという究極バトルがあり得るか?


現在、米国大統領選挙の予備選挙では、トランプVSサンダースという昨年段階では予想困難だった状況が発生するかもしれない状況が生まれています。(といってもブッシュが凹むことはある程度予測できましたが・・・)

共和党ではマルコ・ルビオ、民主党ではヒラリーが依然として最有力候補者ではありますが、そのような政界関係者の思惑を打ち破ってしまうのが、米国の民主主義のダイナミズムなのかもしれません。

今後の展開にますます注目していきたいと思います。いずれにせよ、日本で思われているような順当な選挙ではなくなってきたことだけは確かでしょう。



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2015年12月20日

民主番狂わせか?ヒラリーVSサンダースが面白いことに

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www.news-us.org

米国大統領選挙、共和党と比べて地味な民主党で僅かなイレギュラーが発生中

米国共和党予備選挙でトランプ氏の嵐が巻き起こっている一方、民主党の大統領候補者はヒラリー・クリントンで決まり、という報道ばかりが日本で目立っている状況です。実際、ヒラリー・クリントンは非常に強力であり、ほぼ民主党の大統領候補者として内定していると言えるでしょう。

ただし、ヒラリー・クリントンが民主党内の予備選挙でトップの座から転げ落ちる可能性はゼロではありません。下記が2016年大統領選挙の民主党の予備選挙の支持率の推移です。

当初ほぼ無名であったサンダースがバイデン元副大統領を抜かして2位まで支持率を上げ続けている状況が分かります。10月段階ではトップのヒラリー・クリントンとの差は10ポイント近くまで迫る状況も発生していました。現在は20ポイント以上差がついていますが、この数字をどう見るかによって、民主党側も十分に今後の展開を楽しめるものとなります。

<2016年ヒラリーVSサンダース>
ヒラリーVSサンダースl

2008年のヒラリーVSオバマも12月中旬段階では20ポイントもヒラリーが有利だった

下記のグラフは、2008年大統領選挙におけるヒラリーVSオバマの支持率の変化です。12月中旬段階ではサンダースと同じように20ポイント近い差がついていました。

しかし、その後2月頭のアイオワ州の予備選挙の投票の前後でヒラリーとオバマは肉薄するようになり、最終的的にはオバマがヒラリーを突き放す形となりました。

つまり、アイオワやニューハンプシャーなどの初戦の結果次第で、民主党内からの期待値が高まって盤石な戦力を持つヒラリーがひっくり返る可能性はゼロではないということです。

<2008年ヒラリーVS]オバマ>
 ヒラリーVSオバマ

バイデン副大統領が撤退した理由はヒラリーがサンダースに負けそうだったから

そこで、オバマが躍進するきっかけとなったアイオワ州やニューハンプシャー州の支持率状況についてみていきます。驚くべきことに、両州の支持率状況でヒラリーはサンダースにかなり苦戦または敗北していることが分かります。

アイオワ州では9月頭にはヒラリーとサンダースの支持率が拮抗し、バイデンが撤退したことによってエスタブリッシュメントからの支持が一本化して何とか優勢を保っている状況です。(最新のCBS世論調査では僅か5ポイント差)ヒラリーがアイオワからキャンペーンを始めるなど様々な手を打ち尽くした結果が現状です。

ニューハンプシャー州での支持率調査で12月段階でヒラリーはサンダースに敗北しています。こちらもバイデンが撤退するまではサンダースが10ポイント以上引き離す状態でしたが、バイデン撤退以後は大接戦の状況が発生しています。

サンダースが年明けからのキャンペーンをアイオワ・ニューハンプシャーに集中して勝利し、なおかつサウスカロ
ライナで勝利するようなことがあれば民主党側でも大番狂わせが起きることになります。

<アイオワ州・民主党予備選支持率>
アイオワ州

<ニューハンプシャー州の民主党予備選支持率>
 ニューハンプシャー州

年明けからは共和党からのヒラリー攻撃が本格化、ヒラリーは本当に民主党予備選に勝てるのか?

年内は共和党側は自分たち候補者の同士潰しあいがメインでしたが、年明けからの候補者からの絞り込みに合わせて、予備選挙の争点が「誰ならヒラリー・クリントンに勝てるのか?」ということが問題になってくると思います。

そのプロセスの中でヒラリー・クリントンはサンダースからだけでなく、共和党側からも激しいバッシングを受けることになるでしょう。前回のオバマに敗れたときと同じように左右両方から叩かれる状況となり、非常に苦しい状況になるかもしれません。

ヒラリー自身は強烈なトランプ批判を始めることで民主党の指名争いにケリをつけたがっています。これはトランプ陣営でも党内レースを終わらせたがっている点で同様であり、共和・民主両党のフロントランナーが来年早々の初戦を無事勝ち抜くことができるか注目に値します。

困難な選択 (上)
ヒラリー・ロダム・クリントン
日本経済新聞出版社
2015-05-01




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