クルーズ

2016年05月04日

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由

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wikipediaより引用

だから、昨年からトランプが指名獲得するって言ってきたでしょうに・・・

最近は日本国内でもトランプ指名獲得を受け入れる方向が出てきていますが、昨年段階では「トランプ勝つかも?」というと、国会議員や有識者の皆さんから「頭悪い子扱い」されてきましたが、実際にはどっちが馬鹿なのかがすっきりして良かったと思います。

何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)

筆者に対して、ニヤニヤしながら、スコットウォーカーが来るって言ってた国会議員や僕らのコミュニティではブッシュと言ってた有識者の皆さんは息してますか?彼らも仕事なので何事も無かったように今後はトランプについて語り始めるんだろうなと思いますが・・・。

自分は心情的にはクルーズを応援していたので彼の撤退は残念ではありますが、これで共和党側のトランプ指名は確実になったものと思います。そのため、今回は大統領選挙本選での予想を述べて行きたいと思います。

大統領選挙本選でトランプはヒラリーに勝利することになるだろう

日本の大半の人は、取材不足のメディアやピント外れの有識者のコメントに毒され過ぎていて、「トランプVSヒラリーならヒラリーが勝つでしょう」みたいな見解を持っていると思います。

そのような見解を持たされていることは恥じるべきことではなく、むしろ米国大統領選挙について積極的に情報を収集している証拠とも言えるでしょう。

しかし、残念ながら、ヒラリー・クリントンは大統領にはなりませんし、ドナルド・トランプ氏が大統領になることはほぼ確定しています。

断言しますが、「ヒラリー・クリントンが大統領になる」という予測をしている有識者は「麻雀で安パイを切り続ける思考と同じ」で、「自分自身への保身で大統領選挙への見解を述べている」だけの人々です。現状のまま大統領選挙が終わって流局することを願っていることでしょう、まあ彼らは選挙に関して素人さんなので仕方がありません。

「トランプがヒラリー・クリントンに勝つ」5つの理由とは・・・

現在、トランプVSヒラリーという世論調査を行った場合、現状では「ヒラリーがトランプに勝つ」という数字が出ています。では、そのような状況でトランプがヒラリーに勝つと言える根拠は何でしょうか?

<第一に、「トランプ氏はまだ大統領本選モードではない」ということです>

ヒラリーは昨年から民主党側の指名確実であったため、最初から大統領本選モードで予備選挙を戦ってきました。したがって、ヒラリーの伸びしろはほとんど残っていないと思われます。

一方、トランプ氏は名実ともに共和党予備選挙を戦ってきたわけです。そのため、中道寄りの発言は原則として難しいため、現在までの米国全体での支持率はヒラリーよりも劣っています。(トランプ自身は共和党内で最左派と言えるくらいにリベラルです。)

しかし、今後はトランプ氏も大統領本選モードのイメージ戦略に切り替えていくことになるため、共和党の主流派を取り込むことに成功することでしょう。さしあたって、副大統領候補者を誰にするのか、ということでイメージが大きく変わることになります。

その結果として、トランプVSヒラリーの支持率は拮抗していくことが予想されます。つまり、今までは違うレースをやっていた人同士を同じ尺度で比べることがそもそも間違っているということです。

<第二に、「トランプ氏は共和党の選挙リーソスにアクセスできるようになった」ということです>

米国では共和党・民主党の支持率は元々拮抗しており、足元の選挙マシーンの実力も同程度とみなして良いと思います。トランプ氏が指名を獲得する形になったことで、トランプ氏は従来まで不足していた選挙運動のための足腰を手に入れることになりました。

共和党の予備選挙において、トランプ氏は徒手空拳によるメディア・コントロールのみで勝ち残りました。他候補者が選挙のための組織・ネットワークを十全に固めていた中での快挙と言えるでしょう。

トランプ氏の指名が確実になったことで、トランプ氏の下に初めて真面に選挙を行うための体制が整備されることになります。したがって、今後は共和党から支援を受けつつ選挙戦を展開することになるため、極めて組織だった強力なキャンペーンが行われることになります。

既に組織がフル回転で選挙戦に臨んでいるヒラリーやサンダースと比べて、この点においても伸びしろがあるということができるでしょう。

<第三に、「米国民主党内の分裂は極めて深刻だ」ということです>

民主党内の反エスタブリッシュメント層であるサンダース支持者はヒラリーに対する強い嫌悪感を持っています。そして、ヒラリーにとってサンダースの存在は喉に刺さった魚の骨のような形になっています。

ヒラリーはサンダース支持層を取り込むため、予備選開始当初の大統領本選モードのイメージ戦略を微妙に修正して、米国内基準の左派寄りのスタンスを取るようになっています。これはトランプ氏とは逆の方向で選挙戦で展開していることを意味します。

現在、全米での予備選挙ではヒラリーとサンダースはヒラリーが微妙に優勢という状況で、ヒラリー氏が今後の予備選挙で下手を打つと、ヒラリーとサンダースの両者が分裂して本選に出てくることも十分にあり得ます。

ヒラリーはサンダースを取り込もうとすると中間層の票を失うことになり、中間層を取り込もうとすると反エスタブリッシュメント票の行方が怪しくなるというジレンマの中にいます。共和党以上に本当に分裂しているのは「民主党」なのです。

サンダース氏はギリギリまで予備選挙を継続するでしょうから、ヒラリーはトランプ氏と比べて極めて不利な状況で今後の選挙戦を継続することになるでしょう。

<第四に、「選挙争点は「ヒラリーの健康問題になる」ということです>

ヒラリーは様々なスキャンダルを抱えていますが、最も深刻な問題はメール問題やベンガジの対応ではなく、彼女自身の健康問題です。既にトランプ陣営は昨年段階からヒラリーの健康問題を攻撃し始めており、大統領選挙本選も容赦なく同問題を選挙争点にすることが予測されます。

トランプ氏は昨年末自らの健康診断書を公開して壮健ぶりをアピールしました。これは明らかに昨年末段階で対ヒラリーを意識したキャンペーンを始めようとしていた証左です。ヒラリーは公務の期間中に度々失神・転倒・会議キャンセルを繰り返しており、現実問題として大統領の激務が務まるかは極めて疑問です。

ただし、その後トランプ氏は調子に乗りすぎてアイオワ州を軽視したために同州でテッド・クルーズ氏に敗北したことで、しばらく共和党内の予備選挙にリソースを拘束されることになってしまいました。

しかし、共和党の指名を獲得したことで、ヒラリーにとって最も弁明が難しい健康問題に焦点が戻るものと思います。選挙は政策を選ぶわけではなく人物を選ぶものであり、その人物が健康が怪しいという一点突破で、ヒラリーは米国という軍事国家の指導者として相応しくないということになるでしょう。

<第五に、「ヒラリーはトランプ氏に反応せざるを得ない」ということです>

選挙戦の基本として、弱小な勢力が勝つためには有力な勢力に自らの名前を述べさせることが重要です。現状においては優勢であるヒラリーの口から「トランプ」という言葉が発せられる度にトランプの支持率は上がっていくことになるでしょう。

トランプ氏にとってはヒラリーと同じ土俵に乗ることが最初の作業ということになります。そのため、初期段階では徹底的にヒラリーを攻撃するとともに、ヒラリーは終わった人物である、というキャンペーンを行うことになります。前述の健康問題も含めてヒラリーは過去の人という印象を有権者に植え付けようとするでしょう。

本来であればヒラリーはトランプを無視し続けることが有効な戦略となります。共和党予備選挙で失脚した主流派のジェブ・ブッシュ氏やマルコ・ルビオ氏はいずれもトランプ氏の「口撃」に反応したことで支持を失っていったことからも明らかです。

しかし、ヒラリーは現在サンダースとの予備選挙の真っ最中であり、サンダースを事実上支援することになる今後のトランプの「口撃」にコメントせざるを得なくなるはずです。その結果としてトランプ氏が引きあがるとともに、ヒラリーは落ちていくことになるでしょう。


以上、5つの純選挙的な理由でトランプ氏はヒラリーに勝利することになります。今後、日本国内ではヒラリーがトランプに勝つ、という誤った言説が氾濫することでしょうが、それらは11月の大統領選挙が終わる頃には全て間違いであったことが証明されるでしょう。なんせ、それらの言説を垂れ流している人は「トランプが予備選挙に勝つこと」を予想できた人は一人もいなかったからです。

ヒラリーが勝つ可能性は、最近支持率が回復してきたオバマ大統領がサンダース支持層をうまく吸収してヒラリーのサポートに回ることができたとき、ということになります。果たして、オバマ大統領がそれだけのことを実行できる余力を残しているかいなか。トランプ氏の共和党指名確実ということで、米国大統領選挙の行方はますます面白くなってきました。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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2016年03月09日

クルーズVSトランプ、「レーガンの遺産」というキーワード

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共和党予備選挙は、クルーズVSトランプという「次代」を争う対決に

共和党の大統領選挙予備選挙では、クルーズVSトランプ、という対決の構造になりつつあります。

フロリダ州でマルコ・ルビオ氏が苦戦しており、あわや撤退かという自体に陥っていることから、上記2人に勝負が絞り込まれそうな状況です。むしろ、ケーシック氏はオハイオ州でトランプ氏と競っており、場合によってはケーシックが残ってルビオ撤退という可能性すら存在しています。

CPACのSTRAWPOLLにおいてもクルーズ大統領・ルビオ副大統領という保守派の意向が強く表明されており、マルコ・ルビオ氏が撤退表明することは時間の問題となったと言えるかもしれません。

筆者はマルコ・ルビオ氏がトランプ氏に最終的に挑戦する候補者になるかと想定していたため、クルーズ氏が大きく代議員獲得数を得ていることはかなり意外な印象を受けています。しかし、個人的にはテッド・クルーズ氏に最もシンパシーを持っているために喜ばしい出来事だと考えております。

キーワードは「レーガンの遺産」を継承するか否かということ

クルーズVSトランプという構図になった場合、予備選挙で問われることは「レーガンの遺産」について評価ということになります。

従来までの米国共和党における予備選挙は、穏健な中道路線を掲げる共和党主流派と「レーガンの遺産」を尊重する急進的な保守派の対立構造によって行われてきました。そして、1990年代から連邦議会においては保守派が圧倒的な影響力を持ち、大統領選挙では両派閥による激しい対決構造が表面化してきました。

「レーガンの遺産」とは小さな政府を始めとした保守派が掲げる政治理念のことであり、米国保守派の会合では金科玉条のごとく繰り返されるものです。それだけ彼らにとってはレーガン大統領という存在が残した功績は大きなものであったということができるでしょう。

保守派は主流派をRINO(Republican In Name Only:名ばかり共和党員)として批判し、主流派は保守派を過激な政治思想を表現する活動家グループとみなしてお互いに対立を続けてきました。

一方、トランプ氏は共和党主流派からも怨嗟の対象として強烈な批判を受けている状況にあるとともに、「レーガンの遺産」を気にかけない態度を取り続けています。トランプ氏は共和党保守派の人々と会話すると必ず触れるゴールドウォーターやレーガンの価値観についてほとんど触れることがありません。

マルコ・ルビオ氏が撤退した場合、主流派VS保守派、という一つの時代が終わり、予備選挙の構造には、保守派VSアウトサイダー、という歴史的な変化がもたらされることになります。従来までは主流派を攻め立てる立場にあった保守派がトランプ的なアウトサイダーからの攻撃にさらされる逆転の構造が生まれているのです。

これこそが現在の共和党で起きている政治構造の地殻変動の正体であり、本人たちが自覚的か否かに伴わず、共和党の時代が次の段階に進もうとしているということが言えるでしょう。

トランプ旋風の後に残る政治的な要素とは一体何なのか?

筆者はトランプ氏を非常に理知的で合理的な人物であると看做しており、彼を危険視したり馬鹿にしたりする風潮とは一線を画しています。むしろ、彼はレーガンの遺産を継承しない新しい共和党員の代表であり、かつ選挙戦においては極めて合理的な戦略を実行しています。

たとえ、トランプ氏が予備選挙・本選挙で勝たなかったとしても、トランプ氏によって掘り起こされた政治的な層は何らかの形で米国社会に残ることになるでしょう。つまり、トランプ氏という強烈なキャラクターを持った人物がいなかったとしても、誰か他の人物がその受け皿になっていたことは間違いないのであり、「レーガンの遺産」VS「トランプ的な何か」の対立こそが共和党の新しい政治テーマになるのかもしれません。

そのため、トランプ氏をトランプ氏個人の現象として捉えるのではなく、新しく巻き起こりつつある政治的な潮流として再認識する必要があるものと思われます。





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2016年03月04日

CPACに起きた「ある異変」が予備選全体に影響を与えるか?

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 共和党保守派の最大の集会であるCPACにスポンサーサイドとして参加しています。共和党大統領予備選挙候補者や保守系団体の幹部の方にお会いしましたが、その話はCPACの実況とともに後々触れていくとして、今回は予備選挙全体にインパクトを与える「ある日付」の話をお伝えしていきます。

CPACの要素として最も重要な大統領選挙の模擬投票

全米から保守派の中心人物が集まるCPACではSTRAWポールという大統領選挙の模擬投票が行われています。この投票は保守派が総体として誰を推しているのかを明らかにするためのものであり、共和党大統領選挙の結果に大きな影響を与えます。(写真は参加者が投票を機械で行っているところ)

2012年は穏健派と見られてきたロムニーが保守PRを繰り広げたことから辛うじて保守派のサントラムにSTRAWPOLLで勝利して、その後の大統領予備選挙の動向に決定的なインパクトを与えました。スーパーチューズデーの結果、3つ巴状態が色濃くなった共和党予備選挙ですが、今回のCPACでは保守派のクルーズ氏に対して、トランプ氏・ルビオ氏が逆転またはどこまで迫れるのかが予備選挙の帰趨を占う上で重要な指標となっています。

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(4日はトランプ、ケーシック、クルーズ、カーソンら予備選候補者の演説日程目白押し)

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(5日の予備選候補者の演説日程ははルビオのみ)

CPACの明暗を分ける4日・5日という演説日程の区分けとは

CPAC自体が本格的に開催されている期間は3月3日~5日であり、この間に各予備選挙候補者はメイン会場で演説を行って、その内容が評価される形で参加者が次々と模擬投票を行っていきます。

演説日程が参加者が最も集まる中日の午後早い時間が有利な時間設定だと思われます。なぜなら、多くの参加者の投票は最終日に至るまで決定しているからです。今回は一人の候補者を除いてほぼ全候補者の演説日程が4日となり、残りの1名の演説日程が最終5日となりました。

一人5日という不利なスケジュール設定をされた人物はトランプ氏ではなくルビオ氏です。ルビオ氏はCPACへの参加を最後まで渋っていたため、CPAC主催団体であるACUと険悪な関係になった結果、大統領候補者の演説が集中(参加者も多い)する4日ではなく、5日の午前の遅い時間が割り振られる状況となっています。

ルビオ氏は保守派への接近を懸念したことから、共和党の予備選挙で決定的なインパクトを与えるCPACへの参加を渋り続けてきました。その結果として、ルビオ氏とACUの関係は表立って報道されるほどにまで悪化しています。

トランプ氏・クルーズ氏との保守派からの得票競争を考えると、ルビオ陣営は共和党エスタブリッシュメント側の顔色を窺い過ぎて戦略上の致命的なミスを犯しました。今回の予備選挙ではエンドースの獲得という戦術面で主流派は功を奏していますが、選挙全体の構図のデザイン力でトランプ・保守派に劣っていると言えるでしょう。

その結果として、ルビオ氏はクルーズ氏を突き放すとともにトランプ氏と互角の戦いになるための重要な機会であるCPACにおける勝利の可能性を実質的に失った状況となっています。

テッド・クルーズに神風が吹いている状況となった予備選挙

3月4日未明現在、クルーズ陣営にとってルビオ陣営の失敗はまさに神風のような追い風となって機能するでしょう。ライバルであるルビオ陣営が自滅して保守派からの支持を失っていく中で、スーパーチューズデーに集中した保守的傾向がある州での勝利と合わせてトランプ氏に対抗できる唯一の候補者のイメージを形成していくことができるからです。

予備選挙で爆走状態を続けるトランプ氏を抑えるためには、共和党内でトランプ氏に対抗する候補者を絞りこむことが必要です。今後は北部のリベラルな州での予備選挙も増加していくことから、対抗馬として最も有力な候補者はルビオ氏と目されてきました。しかし、ルビオ陣営の致命的なミス、もっと言えば「エスタブリッシュメントの優柔不断さ」が露呈した結果、クルーズ氏がルビオ氏を差し切って2着の地位を維持する(つまり、トランプ氏への本命対抗馬としての地位を維持する)ことができるようになりそうです。

今回の予備選挙は「米国政治への怒り」がテーマとされていますが、それ以上に「エスタブリッシュメントの優柔不断さ」というテーマこそが隠れテーマだと感じています。この優柔不断さの間隙を突いて、トランプ氏・クルーズ氏が台頭した状況が生まれているのです。トランプ現象のみを切り取って「怒り」と表現する既存メディアの米国政治関連の報道には飽き飽きします。ジェブ・ブッシュの不発など、全てはエスタブリッシュメントの選挙戦略上のミスによって今回の大接戦が生まれているからです。

トランプではなく米国政治を根本から変える人物は「クルーズ」だ

日本の報道ではトランプ氏の勝利が米国政治を一変させるというものが多いのですが、筆者としてはトランプ・ルビオ・クルーズの3氏の中で米国政治を一変させる可能性が高い人物はクルーズ氏であると確信しています。トランプ氏が政治を変えるという言論を垂れ流している人は、米国政治について良く知らない人か、米国政治を知った上で虚偽を述べている人でしょう。

米国の政治の左右の振れ幅を左から整理すると、サンダース、ヒラリー、トランプ、ルビオ、クルーズという順番であり、実は3氏の中でトランプ氏は限りなく民主党に近い経済政策や社会政策を持っています。そのため、見方によってはトランプ氏は共和党の中では比較的大規模な政策変更を米国に与える可能性が低い候補者であると評価することもできます。

しかし、クルーズ氏は筋金入りの保守派であり、小さな政府の理念を徹底的に追求することは間違いなく、最も大規模な政策変更を実行していくことになるでしょう。そして、そのような大規模な政府機構の改革は世界各国の政治の在り方にもインパクトを与えて、世界の姿を変える一つの軸が提示されることになります。

したがって、米国における既得権層が最大に恐れている人物はトランプ氏ではなくクルーズ氏なのです。CPACにおける演説日程はルビオ氏の苦戦を深刻化させることになり、トランプ氏への対抗軸として機能できるかどうかを左右する重要な要素となるでしょう。まさに政治の要諦は「日程」にこそがあるということは、日本だけでなく米国でも共通の事項なのだなと痛感させられる出来事でした。

*という状況だと思ったら、まさかのトランプ・ドタキャン。元々4日から直前に5日変更依頼し、その上ドタキャンというのは流石に保守派も怒るんじゃないかなと。





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2016年02月16日

中山俊宏教授のための共和党保守派入門(後篇)

前回、米国政治を専門と称する中山教授の「念願のCPACに初参加」という告白が、「自分は共和党保守派についてビギナー」だと指摘しましたが、このCPACとは何なのでしょうか。

CPAC(Conservative Political Action Conference)とは何か?

まず、前回のおさらいですが、CPACは米国共和党保守派にとっては入門的な場であるとともに、大統領予備選挙の指名を実質的に決める場です。

CPACは米国保守派の年次総会とも言えるような場であり、毎年開催されているCPACでは全ての大統領候補者が壇上に立ち、約1~2万人程度の保守派の草の根リーダーらに自らの考え方をアピールしています。

これは何故かというと、特に大統領選挙の年ではCPAC内で開催される大統領予備選挙の模擬投票が実際の予備選挙にも大きな影響を与えるからであり、2012年のロムニー予備選勝利に関してもCPACの投票結果は多大なインパクトをもたらしました。

2015年2月のCPACに出席していれば、ジェブ・ブッシュ氏の勢いがイマイチ欠けており、ドナルド・トランプ氏の旋風、マルコ・ルビオ氏の台頭などはある程度予測ができる空気感が漂っていました。

つまり、昨年の夏段階でブッシュ推しの日本人有識者はまったく共和党の空気感が分かっていない人だということが言えます。特に近年のCPACでは会長職の変更などの影響もあったのか、有色人種比率・若者比率も格段に増えていること、米国共和党保守派の変化を肌で体感することができる貴重な場でもあります。

また、CPAC会場内では多くの分科会・レセプションが開催されており、共和党保守派がどのような政策テーマに関心があるかを知ることもできます。つまり、米国共和党のイデオロギー的・政策的なテーマの方向性を知る上でもCPACへの参加は必須であると言えます。ちなみに、私の関与している団体がCPAC会場内でACUと共同で日米関係のレセプションを用意しています。

さらに、CPAC会場ではVIP用の部屋が別に構えられており、多忙なキーパーソンから会いたい人物が別室に招かれて会談を行うことも重要な機能です。私も過去に参加したCPACで当時の大統領予備選挙候補者とVIPルームで面会する機会が得られました。CPACは参加するだけなら「誰でも参加」できますが、インビテーションが無ければ入室できない催しもあり、間口は広く敷居の奥は深いイベントです。

CPACに一度も行ったことがなく、米国共和党保守派について知ったように語ることがいかにチープであるか、情報不足の日本メディアからは中山氏ら米国通を称する大学教授は持て囃されるかもしれませんが、米国の少なくとも「共和党保守派」を解説するには役不足だと思います。

こうした役不足の人物が偏見に基づいた解説をすることは、日本人に米国政治の潮流を見誤らせることになり、戦前と同じ過ちを我が国に侵させかねない行為です。

既存の政治関係者・有識者ルートから脱却した若い世代の外交ルートの発達

そもそも共和党保守派の日本への関心は従来までは高くありませんでした。上述の通り、私が関与している団体がACUとの共同レセプションを開催するまで、JapanJの字もない状況だったと言っても過言ではありません。

これは米国共和党保守派という近年の政治シーンでは無視できない存在に対して、日本の政治・学会関係者がほぼノータッチだったことを意味しています。どれだけ日本外交は無策なんですかと。

従来までのように一部の米国通とされる有識者らが情報を独占し、自分にとって都合が良い解釈をメディアで流し続けて安泰でいられる時代ではなくなりました。日米関係という非常に重要な二国間関係に関わる情報ルートであっても、人間の行き来の活発化やネットの発達によって情報寡占は不可能になりつつあります。いまや新聞・テレビで解説されている程度の話は英字新聞どころか、英字新聞の日本語版サイトを見れば十分です。(日本のメディアでどんな発言しているかも相手国にキーパーソンに容易に伝わるようになりました。)

一方、これから重要になることは情報の解釈であり、筆者は米国共和党保守派の理念である「小さな政府」を始めとした政治思想が日本にとって伝えられるべき重要な思想であると考えています。

そのため、中山俊宏教授が述べられているような一方的なバイアスがかかった共和党保守派に関する言説ではなく、これら共和党保守派との間でしっかりと根をはった言論が増えてくることが望ましいものと思います。

これは日米関係だけではなく他国のケースであったとしても同様のことが言えるでしょう。海外の情報を摂取する際に、従来まで権威とされてきた情報源だけではなく、現地・現場とのリレーションに基づく情報の送受信の多様化が起きていくことが必要です。

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中山俊宏教授のための共和党保守派入門(前篇)

米国大統領選挙の解説で有名な中山俊宏教授とのTwitterでのやり取り

時節柄、米国大統領選挙の最新動向についての新聞やテレビ等でのコメンテーターによる解説が増えてきました。しかし、それらは、非常に偏った視点に基づく解説であることが多いのです。

その典型例は、NHK国際報道でお馴染みの慶応義塾大学教授の中山俊宏氏によるものです。彼の共和党保守派に対する分析は具体的な根拠に基づかない偏見や思い込みであり、しかも予想は連戦連敗しているのです。

中山氏は言います。

「今日のアイオワ党員集会にかんする短評を書き上げました。共同通信を介して明日配信されるはず。「共和党はこれでルビオでしょう」という雰囲気をかすかに漂わせせた。」

(2月2日、twitter)

→その後、ルビオ候補はニューハンプシャー予備選挙で5位と没落し、彼のtwitterはしばし沈黙し、その上でケーシックが善戦すると予想していたと言い始める始末。(ルビオ候補が有力であることは認めますし、NHの世論調査を見ていればケーシック善戦は誰でも分かる話ですが・・・)

「ジェブ・ブッシュがFB上で事実上の出馬表明。ブッシュとクリスティが競って、ブッシュが勝って、最終的に二人が組んでみたいなことになると、かなり強そう。」(2014年12月17日、twitter)

「ジェブ・ブッシュ氏(中略)の動向が要注目」(NHKBS国際報道、2014年10月28日)

→その後の展開を思えば的外れもよいところの予測です

「(米国における)茶会運動は政治運動としての保守主義が死んだ兆候だ」

(2010年12月17日)

→その後、茶会運動が滅亡することなく、政治運動としての保守主義が盛んになっていることを思えば失笑です

その他にも、テッド・クルーズは原理主義的で危険、ティーパーティ運動の参加者には陰謀論を持っている等の極端な言説が多く、共和党保守派やTea Party運動の方々と親交がある筆者としては以前より違和感・不快感を覚えてきました。

どうして、専門家を称しているのに、いつも的外れの予測と解説ばかりしてしまうのか。

しかし、中山教授の最近の以下の呟きを見て、私の疑問は一気に解決しました。

専門家ではなく、米国共和党保守派のビギナーだったのだから、これは仕方がないと。

 CPAC中山

この発言は、何を意味するのでしょうか。

CPACとは、米国保守派の入門的な一大イベントであり、そこで次期大統領候補が事実上決定される極めて重要な大会です。しかも、誰でも参加できるものであり、筆者も何度も参加して大統領予備選挙候補者を始めとした多くのVIPとの面談も行ってきました。CPACは共和党保守派を知る上では欠かすことができないイベントです。 

筆者は中山教授に、この点を聞いてみました。

 すると、中山教授からは、

キーン中山

というお返事をいただきました。ACUとはCPACの主催団体ですが、中山教授が名前を挙げているキーン会長は5年前に退任した方です。現在はアル・カーディナス前会長、マット・シュラップ現会長と二代も会長職が交代しています。しかも、ソルトレイクシティ―の話も2011年のことです。

2016年の大統領選挙はおろか、2012年大統領選挙の時でも現職でなかった方(立派な方ですが)の名前を挙げて、「俺は共和党保守派を知っているんだぞ」アピールされても、ますます「???」と思った次第です。米国のことは分からないだろうとタカをくくった態度が不誠実すぎますね。ちなみに、その後中山教授からはお返事ありません。CPAC初参加についての釈明もありません

ちなみに、筆者はフリーダムワークスから来賓として過去にダラスの大集会に招かれたことがありますが、直近4年以内の話なので中山氏に米国でお会いしたことはありませんね。

そもそも、中山教授の博士論文は、「米国共産党研究」ですから、共和党保守派をご存知ないのも無理はありません。

中山氏は2016年の予備選挙はセオリー通りではないことを予想が難しい理由に挙げていますが、トランプが全米支持率トップであることは一貫しており、トランプ台頭をあえて無視してきたか、そもそも世論調査すら見てないのか、どちらでしょうか?ちなみに、米国共和党に詳しくない人向けに解説すると、中山氏のセオリー通りではないという意味は中山氏が好きな共和党主流派の候補者らが苦戦しているというだけの話でしかありません。

 

次回は、そもそも、CPACとは何かについて、共和党保守派についてビギナーの中山教授の為にも解説したいと存じます。

中山俊宏教授のための共和党保守派入門(後編)に続く



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2016年02月07日

ブルームバーグの大統領選挙立候補検討の背景

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何故、ブルームバーグの大統領選挙立候補は検討されているのか

億万長者・メディア社主であり、3期の元ニューヨーク市長としての実績を誇るブルームバーグ氏。政治遍歴としては、元々は民主党支持者でしたが、市長選挙出馬時に共和党から立候補、市長退任後には無所属に戻っています。

政策的な方向としては、社会政策は銃規制強化・中絶賛成などリベラル傾向ですが、経済政策は財政均衡路線で保守的傾向を持つハイブリッド型の政治家です。イデオロギー的な人物というよりは、根っからの経営者タイプの人物と言えるかもしれません。

そのブルームバーグ氏の大統領選挙出馬、それも「無所属」での立候補が取り沙汰される状況となっています。今回は、その背景にある米国の政治構造について分析していきます。

共和党・民主党内の勢力争いを知ることで「ブルームバーグ」の意味が分かる

ブルームバーグ氏の立候補検討に至る流れを理解するためには、共和党・民主党内部の勢力構造という背景事情について知る必要があります。両党の党内闘争の現状をざっくりとした構図で示すと下記の通りとなります。

〇共和党  共和党指導部(主流派(ルビオ)VS保守派(クルーズ))VS共和党不満層(トランプ)
〇民主党  民主党指導部(ヒラリー)VS民主党不満層(サンダース)

共和党は指導部内で主流派と保守派が対立しており、更にその両者とも対立する不満層を吸収したトランプ氏が存在している三国志状態になっています。民主党はゴリゴリの既得権者であるヒラリー女史に対してサンダース氏が不満層を吸収して党内を2分する戦いを展開しています。

「ブルームバーグ」は共和党主流派と民主党指導部の連合が擁立する隠し玉

実は「ブルームバーグ」は共和党主流派と民主党指導部の連合が擁立する隠し玉と言われています。

選挙戦の様相は、共和党は初戦アイオワでは保守派のクルーズ氏が勝利、次戦のニューハンプシャー州ではトランプ氏が優勢な状況があります。ルビオ氏が追い上げているものの、先行する二人を差し切れるか否かは予断を許さない状況です。民主党は政界・財界で圧倒的優勢を築いているヒラリー女史がサンダース氏の猛追を受けて、あわや逆転の芽さえ出てきている状態です。

その結果として、共和党・民主党内で常に勝者であり続けたエスタブリッシュメント(共和党主流派・民主党指導部)が敗北する可能性が生じています。そして、この予備選挙におけるエスタブリッシュメント敗北のシナリオこそがブルームバーグ擁立論につながっているのです。

共和党主流派の「トランプ氏だけでなく保守派のクルーズ氏も嫌」、民主党指導部の「自分たちの利権を壊すサンダースは論外」という両者の思惑が一致した「エスタブリッシュメントが待望する第三の候補者」がブルームバーグ氏ということになります。

ニューハンプシャー州予備選挙の結果によってリアルな選択肢に・・・

上記のような構図を前提とした場合、ニューハンプシャー州の予備選挙の結果は極めて重要な意味を持つことになります。ブルームバーグ氏の擁立に向けた動きが本格化する条件を勝手に推測すると・・・

〇共和党 
トランプ氏が10ポイント以上差をつけてルビオ氏に勝利、クルーズ氏も一定の得票数を取得し、共和党内予備選挙の1位・2位構図はトランプ&クルーズという図式が定着すること

〇民主党
ヒラリー女史がサンダース氏に決定的な敗北をすることで、ニューハンプシャーだけでなく全米の支持率でもサンダース氏が逆転または両者の差が僅差になること(既に2月7日発表のキニピアック大学の調査で全米での両者の支持率差は2%しかない)

という感じでしょうか。

なお、筆者はクルーズVSサンダースの構図になった場合でもブルームバーグ氏の出馬は十分に想定されるものと思います。保守派の候補者であるクルーズ氏が共和党主流派から受け入れられるかは未知数だからです。

有識者らはトランプVSサンダースの構図になった場合にブルームバーグ氏の立候補の可能性があると述べていますが、表面的なトランプ氏とサンダース氏の印象論だけではなく、共和・民主両党の背景事情にまで踏み込んだ考察を行うことが重要です。

ちなみに、エスタブリッシュメントにとってはルビオ氏やヒラリー女史も彼らの選択肢の一つに過ぎず、それがダメならジェブ・ブッシュ氏からルビオ氏にスイッチしたように支持先を取り換えるというだけの話に過ぎないものと思います。

米国民主主義の在り方に挑戦する「ブルームバーグ」という選択肢

良いか悪いかは別として、ブルームバーグ氏の立候補は、米国エスタブリッシュメントによる米国民主主義の在り方への挑戦、といっても良いかもしれません。

エスタブリッシュメントが第三の候補者の擁立を行う理由は、彼らが米国の特徴である多様で力強いグラスルーツ(草の根)による民主主義への疑念を持っているからです。

エスタブリッシュメントは共和・民主両党員の予備選挙の手続きを通じて左右両極の候補者が選ばれることを望んでいません。ブルームバーグという選択肢の提示は「エスタブリッシュメントが推している理性的な候補者が選ばれるべきだ」という彼らの強い意志表明と言えるでしょう。

今回の大統領選挙を通じて、トランプ・クルーズ(共和党保守派・不満層)VSサンダース(民主党不満層)VSエスタブリッシュメント、という米国が抱える真の対立構造が表面化しつつあります。

<過去記事>*トランプ・サンダース台頭、ブッシュ・カーソン失速、マルコルビオ躍進を予測解説
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)
アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?(1月22日)
ドナルド・トランプがFOXの討論会を欠席した理由(1月30日)
日本の政治にも「和製のテッド・クルーズ」の誕生を!(1月31日)
FiveThirtyEight:米国の政界有力者が誰を支持しているのか(2月1日)
アイオワ州党員集会・テッド・クルーズ勝利、今後の展開は・・・(2月2日)
トランプVSルビオ、ニューハンプシャー州予備選挙は佳境に(2月6日)

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19

 


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2016年02月06日

トランプVSルビオ、ニューハンプシャー州予備選挙は佳境に

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Wikipediaから引用

ここ数日、風邪で完全ダウンしており、ブログの更新頻度が落ちておりましたが、自分の身の回りでも体調不良の方が多く皆さんの体調はいかがでしょうか。寝込んでいる間に米国大統領選挙は佳境を迎えており、分析対象としても大変面白い展開を見せてきています。

ニューハンプシャー州は事実上の共和党の指名者を決める戦いになる可能性大

2月9日にニューハンプシャー州の共和党の予備選挙が実施される予定となっています。初戦の「保守的なアイオワ州」と比べてニューハンプシャー州は「リベラルな政治風土」の土地柄です。したがって、中間層の獲得が重要となる大統領選挙の本選を見据えた場合、共和党の選挙戦略としてはニューハンプシャー州の勝者が指名を獲得することが望ましいものと言えます。

そのため、今回のニューハンプシャー州での勝者が共和党の指名に最も近い候補者となることは間違いなく、トランプ氏がリードを保っている状態を逆転すべく、共和党の主流派陣営による様々なアクションが行われている状態となっています。

<過去記事>*トランプ・サンダース台頭、ブッシュ・カーソン失速、マルコルビオ躍進を予測解説
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)
アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?(1月22日)
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アイオワ州党員集会・テッド・クルーズ勝利、今後の展開は・・・(2月2日)

ニューハンプシャー州の予備選挙に向けて急速に力を増し続けるマルコ・ルビオ氏

本ブログは初期のころからマルコ・ルビオ氏に注目してきましたが、ルビオ氏はアイオワ州で3位ながらも大健闘の結果を残したことから急速に支持を伸ばしています。日本でも様々な識者の皆さんがアイオワ州選挙以後から主流派の支持はマルコ・ルビオに集まる流れになると述べていましたが、本ブログではもう少し「ファクト」を示した解説を行っていきます。

そこで、エスタブリッシュメントからの支持率の推計するための使われる指標として、FiveThirtyEightが提供しているThe Endorsement Primaryを参考にしてみましょう。同指標は上下両院議員と州知事からの支持数をポイント換算したものであり、政界からの各共和党予備選挙候補者への支持率状況を分析するための目星となります。


そうしてみると、アイオワ州党員集会前(Before)はブッシュ1位(51ポイント)、ルビオ2位(43ポイント)ですが、・・・

<Before:アイオワ州党員集会以前の状況・2月1日早朝>
主流派

アイオワ州党員集会以後(After)は、ルビオの上下両院の支持者が増加した結果、ルビオ1位(60ポイント)、ブッシュ2位(51ポイント)に逆転しているわけです。これがいわゆる「勝ち馬に乗る現象」となります。世間の世知辛さが感じられる変化です。

<After:アイオワ州党員集会以後の状況・2月6日現在>
無題

マルコ・ルビオ氏の支持率は全米及びニューハンプシャーで増加する傾向を示しています。下記は直近のニューハンプシャー州の世論調査の推移をまとめたものですが、トランプ氏が10ポイント以上引き離し続けている点は変わらない状況です。ただし、マルコ・ルビオ氏が支持率2位に浮上しており、場合によってはニューハンプシャー州でトランプ氏に肉薄する可能性がある状況となっています。(前々からブッシュ氏ら主流派の支持率を合計するとトランプ氏を上回っている状況なので可能性はゼロではない)

<ニューハンプシャー州の世論調査結果の推移(RealClearPolitics)2月6日現在>
ニューハンプシャー州


トランプ氏は終わりなのか?答えは「No」だと思う

メディアによる評価では、トランプ氏はアイオワ州における敗者と位置付けられており、高支持率が得票に結びつかない傾向が表面化したと評価されました。メディアや識者はこれで「トランプも終わり」的な雰囲気を醸しだそうとしていますが、トランプ氏の今後の浮き沈みはまだ分からない状況だと言えます。

筆者はトランプ氏はアイオワ州では善戦したと考えています。アイオワ州党員集会の直前の世論調査でトランプ氏は1ポイントしかテッド・クルーズ氏に差をつけることができておらず、筆者は支持団体の運動力などの実力差からトランプ氏がかなり苦戦する可能性も想定していました。しかし、結果として1位クルーズ氏と2位トランプ氏の差は3ポイント程度しか開きませんでした。(筆者は2012年のサントラム氏の予備選挙結果からMAX8ポイント程度の差がつくことも想定していたのでクルーズ氏はアイオワ州で勝ちきれなかったと見ています。)

クルーズ氏は保守派の候補者であるため、アイオワ州で高支持率を獲得できても、上記の支持率推移でみても分かるようにニューハンプシャーなどのリベラル州では際立った強さは保持していないことが明らかです。一方、クルーズ氏に比べてトランプ氏とルビオ氏はアイオワ・ニューハンプシャーの両州で高い支持率を有しており、大統領本選挙における汎用性が比較的高い候補者であると言えるでしょう(大方のイメージと違うかもしれませんが、トランプ氏の支持率の数字はそれを示しています。)

したがって、ニューハンプシャーでマルコ・ルビオ氏に肉薄または逆転されることなく、トランプ氏が10ポイント近い差をつけて1位を獲得した場合、予備選挙の有力な候補者として残留し続けることになるでしょう。

今後の予測は難しい状況、「定番セオリーが通用しない」予備選挙に・・・

共和党主流派はマルコ・ルビオ氏の下に結集していくことが明らかになりつつあり、マルコ・ルビオ氏が指名に最も近い候補者に近づいていくことはほぼ間違いないでしょう。筆者も以前から今回の大統領選挙のダークホースはマルコ・ルビオ氏である旨を主張し続けてきました。

ただし、共和党の指名レースの通常のパターンである、「主流派に好意的なメディアが保守派の候補者を叩いて、主流派候補者の支持率が保守派の支持率を上回って終わり」、というセオリーが、トランプ氏というスキャンダル耐性の強い非主流・非保守の存在によって主流派の予定が狂い続けているという状況が今回の大統領予備選挙の特徴ということになります。つまり、メディアが狙うべきターゲットが保守派のクルーズ氏なのか、しぶといトランプ氏なのか、絞り切れていないという現象が起きています。

「トランプ氏はアイオワ州で終わった」として片づけた後に、「残った保守派のクルーズ氏をニューハンプシャー以降で倒そう」という主流派の戦略は道半ばの状況であり、彼らの戦略が成功裡に進んでいるかは些かの疑問が残るところです。(ところで、ネタバレすると、このセオリーがあるために米国専門家の日本有識者は「主流派候補者が勝つ」と言い続けるだけで良かったわけです。日本のメディアで大統領選挙を解説する人々がブッシュ推しを放棄してルビオ推しの予測に切り替えたタネ明かしはそんなものです。)

筆者は日本国内における大・小の選挙での経験はもちろん、米国における共和党系選挙訓練校での経験や米国内の知己の動向などから、今回の大統領予備選挙は一波乱あると予測しておりました。ただし、正直な感想としては予想以上に複雑な状況になっていると思います。トランプ氏について共和党の指名を獲得できなかった場合、共和党との誓約を守らずに独立系の候補者として出馬する可能性は依然として存在しており、予備選挙後も更なる波乱がありそうな予感もしています。

世界の運命を大きく左右する米国大統領選挙はその選挙動向について分析することでも十分に楽しめます。今後も継続的にウォッチしていきたいと思います。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
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2016年02月02日

アイオワ州党員集会・テッド・クルーズ勝利、今後の展開は・・・

Ted_Cruz,_official_portrait,_113th_Congress

アイオワ州党員集会でテッド・クルーズの勝利、トランプは2位、ルビオは3位

テッド・クルーズ氏が共和党アイオワ州党員集会でトランプ氏を差し切って得票率1位を獲得しました。直前の世論調査で両者の差はトランプ氏の1ポイントリードという状況であり、保守派が多いアイオワ州で運動力があるクルーズ氏が3ポイント程度の僅差で勝利したことは妥当またはトランプ氏にやや苦戦したと評価すべきでしょう。

クルーズ氏の勝利によって州内99群を網羅的に行脚する2012年にサントラムが実践した地域密着型の選挙手法の有効性が再び証明されたことになります。保守派に属する、キリスト教福音派、Tea Party Patriotsら茶会運動、National Review誌やグレン・ベックら保守派著名人などが直前期に支持を表明したことも大きなインパクトを与えたものと推測されます。

ドナルド・トランプ氏は下馬評の支持率1位から陥落し、実際の得票率では2位の立場に甘んじることになりました。しかし、同州でボランティアを動員した地上戦をほとんど展開していないにもかかわらず、約4分の1の得票率を獲得したことでトランプ氏の影響力が共和党内で無視できないものであることを改めて立証しました。

今回のアイオワ州党員集会で最も注目すべきことは、得票率3位のマルコ・ルビオ氏が予想以上に高い数字を獲得したことです。アイオワ州はキリスト教福音派などの社会的保守派の影響力が非常に強い地域であり、マルコ・ルビオ氏が比較的苦手とする有権者層が多数を占める地域です。それにも関わらず、1位クルーズ・2位トランプと比べても遜色ない支持を獲得したことは大きな意味があります。

昨年から一部の日本人有識者の間で有力視されてきたブッシュ氏は全く振るいませんでした。彼らがブッシュ推しをいつの間にか撤回してルビオ推しになっている風見鶏ぶりには甚だ呆れます。今後ブッシュ氏は撤退に向けた調整を行っていくことになるでしょう。

「アイオワを制した者は、ニューハンプシャーを制することはできない?」のジンクス

クルーズ氏は年明けから選挙運動のリソースをアイオワ州に集中投下してきました。アイオワ州での1位獲得はクルーズ氏の生命線であり、クルーズ陣営の立案した作戦は功を奏したと言えるでしょう。

今後の予備選挙の舞台は第2ラウンドのニューハンプシャー州予備選挙に移ります。

保守派が多いアイオワ州・リベラルが多いニューハンプシャー州では有権者の投票傾向が大きく異なります。そのため、アイオワ州での勝者であるクルーズもニューハンプシャー州の世論調査ではあまり振るっていない状況です。

近年ではアイオワ州とニューハンプシャー州の両方で1位を獲得せずに予備選挙で勝利した人物は民主党のビル・クリントン元大統領のみとなっています。共和党候補者ではアイオワ州とニューハンプシャー州の両方を落として予備選挙を勝ち抜いた人物はほぼ皆無です。

そのため、トランプ氏とルビオ氏はニューハンプシャー州における2枚目の切符の獲得競争に力を注ぐことになります。号砲が打ち鳴らされた共和党の予備選挙レースは激しさを増すばかりです。

メディアによるバッシングは、テッド・クルーズ氏に集中することになるだろう

クルーズ氏がアイオワ州で得票率1位を獲得したことで、今後はトランプ・バッシングに尽力してきた主流派メディアによるクルーズへのネガキャンの集中砲火が始まるものと予想します。

元々米国の主流派メディアはクルーズ氏が属する保守派陣営に対して厳しい姿勢を取り続ける傾向があり、今回の予備選挙でもトランプ氏の支持率を一時的に抜いたベン・カーソン氏を自伝中のエピソードの嘘疑惑などによって瞬殺した経緯があります。

カーソン氏の支持率急落後はトランプ氏が全米支持率でトップであり続けたので、クルーズ氏は保守派であるにも関わらず、主流派メディアのネガティブキャンペーンの対象になりにくい環境優位を享受してきました。しかし、アイオワ州党員集会で得票率トップを記録したことで、今後はトランプ氏に代わる共和党からの指名に最も近い保守派候補者としてメディアによるバッシングが本格化するものと思われます。

クルーズ氏がカーソン氏やトランプ氏に行われたような激しい攻撃に耐えられるか否かは不明であり、クルーズ氏の選挙の強さに対する真価は「ここ」から問われる事になります。

主流派のマルコ・ルビオの追撃、クルーズとトランプがどのように対抗していくのか

冒頭でも触れた通り、トランプ氏とクルーズ氏の順位についてはそれほど驚きはありませんでした。最も大きな衝撃は、主流派候補者であるマルコ・ルビオ氏が保守派が多いアイオワ州で極めて高い支持を得たことです。

そのため、マルコ・ルビオ氏に対する主流派の期待が一気に高まることで同氏の支持率が大幅に上昇していくことが予測されます。現在までのニューハンプシャー州の世論調査で、ケーシック、ブッシュ、クリスティー、ルビオで割れている主流派の支持率がルビオ氏に集約されていく可能性があります。

一方、昨日までの世論調査では、トランプ氏はニューハンプシャー州において圧倒的にリードしています。トランプ陣営は元々アイオワ州はほとんど重視しておらず、最初からニューハンプシャー州での勝利に重点を置いています。ただし、アイオワ州で勝利を逃したことで期待値の剥離がどこまで進むかは予想が出来ません。トランプ支持者はトランプ氏への忠誠度が高い傾向がありますが、初戦で躓いた中で勢いを維持できるかどうかがポイントとなります。

また、クルーズ氏は、ニューハンプシャー州での連勝にこだわる必要はないので、同州では保守派候補者の中で最上位の地位をキープするだけで良いと思われます。クルーズ陣営はアイオワ州での手堅い選挙戦略から推察するに、次回の選挙戦略上の力点は保守派が多いサウスカロライナ州での勝利ということになるでしょう。

したがって、第二戦のニューハンプシャーはトランプVSルビオら主流派という構図になるかと思われます。トランプ氏は保守派や主流派と彼らの得意とする州でその都度正面衝突することになり、なかなかハードな選挙対応を強いられていると言えるでしょう。

アイオワ州での結果を受けて、トランプ、クルーズ、ルビオの3つ巴の戦いはしばらく続くことになりそうです。今回のトランプ首位陥落によって米国大統領選挙は更に面白い展開になってきました。


 

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2016年01月23日

アイオワ州党員集会直前、共和党・民主党の波乱が現実に?

Donald_Trump_by_Gage_Skidmore

トランプ氏の初戦勝利、爆走継続がいよいよリアルな段階に・・・

2月1日のアイオワ州の党員集会直前の米国大統領予備選挙の風景が面白いことになってきました。筆者は昨年から一貫してトランプ氏が強いことを確信しておりましたが、他の日本の米国有識者の皆さんは「予想が全て外れて」西日本の大雪以上に心胆寒からしめているものと思います。

現在、全米世論調査、アイオワ州・ニューハンプシャー州の世論調査でもトランプ氏が頭一つ抜けた状況であり、このままの数字で推移していくとトランプ氏への共和党指名はリアリティーはかなり高いと言えるでしょう。

最近では、2008年選挙で副大統領候補者を務めたサラ・ペイリン女史のエンドースメントなど、保守派の中からもトランプ氏を明確に支持する人物も現れ始めています。まさに「山が動きつつある」状況です。

<過去記事>
米国大統領選挙、トランプVSサンダースの究極バトルがあり得る?(1月12日)

むしろ、2位の「テッド・クルーズ氏が残りすぎたこと」が反トランプ陣営の最大誤算

筆者の見立てでは、トランプ氏の爆走状態は「テッド・クルーズ氏」が2位の位置で残り続けたことが原因であると推測しています。

米国共和党の大統領予備選挙では、主流派(エスタブリッシュメント)と保守派(草の根団体)との伝統的な対立構造があります。

保守派の候補者が大衆からの支持を集め、主流派を推すメディアが保守派の候補者を叩くという構造が予備選挙で毎回のように発生してきています。その結果として保守派の候補者は、候補者の顔を取り換えながら支持率のアップダウンを繰り返すことが通例となっています。

今回の予備選挙での保守派候補者の典型的な事例は黒人候補の「ベン・カーソン氏」であり、支持率トップを一時的に記録しながらも、カーソン氏の自伝の中の虚偽記載の疑いなどがメディアで報じられたことでトップ争いから脱落することになりました。

その後、保守派の支持はベン・カーソン氏からテッド・クルーズ氏に流れることになりました。

そのため、通常のケースであれば、テッド・クルーズ氏がメディア・バッシングにさらされて失速し、マルコ・ルビオ氏などに主流派・保守派の支持が集約されることが予測されるところでした。

しかし、今回はトランプ氏の存在によって主流派の計算が狂った状況になっています。つまり、メディアのバッシングがテッド・クルーズ氏ではなくドナルド・トランプ氏に集中することになり、メディアがテッド・クルーズ氏の支持率を下げるキャンペーンを打つ余裕がなくなってしまったのです。

その結果として、主流派は支持率が高い保守派のテッド・クルーズ氏をエスタブリッシュメントとして再定義することを迫られたようです。メディアで彼のハーバード卒の経歴や奥さんがGSマネージャーであることなどが取り上げられて、保守派の主張を持つインテリ・エリートとしてのイメージを植えつける印象操作が行われてきた形跡が見え隠れします。

しかし、それらの行為は支持率3位の本命マルコ・ルビオ氏を主流派・保守派を最終的な落としどころとして一本化しようとしていた従来までの流れに反するものでした。むしろ、結果として非トランプの有権者の支持をマルコ・ルビオ氏やブッシュ氏などに分散する構図となり、現在のトランプ氏の独走状態を許す結果となっています。

通例では下降するはずだったテッド・クルーズ氏の支持が高い状態で留まっていることが反トランプ陣営にとっては大きな誤算であったと言えるでしょう。

日本の米国大統領選挙に関する報道は「エスタブリッシュメントの意向」で動く

日本国内ではトランプ氏を嘲笑するような予備選挙の解説記事が溢れていますが、とても真摯に大統領選挙の様子を解説したものになっているとは思えません。

「トランプ来るかも?」というような筆者のような言説を垂れ流していると、政治業界では「この子は頭悪いのね」という雰囲気が流れます。そのため、内心トランプ来るかもと思っていても、多くの有識者の皆さんはトランプ氏についてバイアスがかかった論評しか発表できません。見栄って怖いですね。

私が米国大統領選挙に関心がある日本の人々にお勧めしたいことは、日本人の解説記事は全部無視して、

RealClearPolitics

という米国大統領選挙の世論調査データが集まったサイトを参照することです。大統領選挙に関する無意味な分析記事よりも世論調査のページを見たほうがよほど米国のリアルな現状を知ることができます。

選挙は数字と構図が全てであり、今のところドナルド・トランプ氏は極めて不利な状況から巧みな手法で首位を勝ち取っているということが言えます。大富豪であるにも関わらず、現状まで自己資金をほぼ投入せずに寄付だけで選挙戦を行っている点だけでも驚きを禁じえません。

ただし、トランプ氏もまだまだ安泰とは言えず、クリントン女史も厳しい戦いに

上記のように、筆者はトランプ氏の選挙戦略(メディア対応とポジショニング)について高く評価していますが、それでもトランプ氏が完全に優勢であるとは言い切れません。それは現状において非トランプの支持率の合計がトランプ氏の支持率を上回っているからです。

そのため、今後の各候補者の撤退時のM&Aの結果によっては、トランプ氏の支持率が非トランプ候補者によって追い抜かれる可能性も十分に残されています。企業買収を得意としてきたトランプ氏の真価が問われるのはここからであり、トランプ氏にとっては真に厳しい正念場が訪れることになります。

クリントン女史もサンダース氏の激しい追い上げを食らっており、予備選挙の状況が盤石な状況とは言えない雰囲気が出てきております。まさに、選挙は最後の結果が出る瞬間まで分からない、ということですね。

今後もますます目が離せない怒涛の展開が待ち受けている気がしてなりません。





 
敗者復活
ドナルド・J. トランプ
日経BP社
1999-04-16


困難な選択(上)
ヒラリー・ロダム・クリントン
日本経済新聞出版社
2015-05-01

 

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2015年12月24日

キニピアック大学世論調査、日本メディアのワシントン病を斬る!

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日本メディアの「ワシントン病」は深刻、世論調査の分析結果に異常な偏りが見られる

NHKが12月22日に発表したキニピアック大学の世論調査で、トランプ氏が大統領になった場合に「恥ずかしいと思う人」の割合が50%超えた、という報道を行いました。

トランプ氏が大統領は「恥ずかしい」 調査で半数に(NHKワシントン支局)

これだけ見ていると、トランプ氏が共和党大統領候補になることが問題であり、なおかつ民主党の大統領候補者にも勝てないかのような印象を与えます。しかし、後述の通り、この報道はNHKによる完全な印象操作でしかありません。

そもそも、22日のキニピアック大学の世論調査は予備選挙の数字でトランプ28%、クルーズ24%で1位・2位の差が4%として報告されていますが、最新のCNNの調査ではトランプ39%、クルーズ18%として21%も差がついています。そして、キニピアックの調査以外はトランプ氏と他候補者に概ね20%以上の差がついているものが大半です。世論調査で信頼度が高い同大学の調査でも鵜呑みにして良い雰囲気ではありません。

そのため、NHKがキニピアック大学の同世論調査結果のみを報道することは極めて不可解であり、どうせワシントンで他メディアが流している同世論調査に関する記事をそのまま垂れ流しているのだろうということが想像されます。(ワシントン政治関係者は反トランプであり、そこからしか情報が取れない「ワシントン病」にかかった日本メディアの報道は少なくとも大統領選挙に関しては信用に値しません)

NHKの報道が疑わしいので実際のキニピアック大学の世論調査結果を読んでみることにした

下記が実際の公表されたキニピアック大学の世論調査結果です。

キニピアック大学世論調査(12月22日公開)

問題の設問は、世論調査結果の一番最後に設定されており、トランプ氏とヒラリーだけに同じ設問が設定されていることが分かります。

トランプ氏 誇らしい23% 恥ずかしい50% どちらでもない24% 無回答3%
ヒラリー氏 誇らしい33% 恥ずかしい35% どちらでもない29% 無回答3%

ということで、トランプ氏については、たしかに50%を超えるものの、ヒラリーも「恥ずかしい」が「誇らしい」を上回っている状況にあるわけです。そのため、トランプ氏のみを殊更取り上げることは強調し過ぎだと思います。

さらに、年代別に見ると、トランプ氏を恥ずかしいと思っている人々は若年世代18-34歳の73%に集中しています。しかし、2012年大統領選挙における投票率、65歳以上72.0%、45〜64歳67.9%、25〜44歳59.5%、18〜29歳45.0%、という数字であり、若年世代の有権者登録(米国は投票権取得は登録制)の低さも際立っています。

つまり、現時点ではNHKが大々的に取り上げた数字「トランプ氏=恥ずかしい50%」は大統領選挙全体の決定的な要素にはなりづらいものと推測されます。また、上記の若年層の民主党支持は圧倒的に高く、同世論調査サンプルを対象に他の共和党候補者(クルーズなど)を同じような世論調査にかけても40%台後半の数字が出てくる可能性が濃厚です。

NHKは大して影響もないような数字を日本国民に重要な数字であるかのように垂れ流しているのであり、NHKの米国大統領選挙に関する分析能力について極めて疑問符がつくと言って良いでしょう。

同世論調査で「本当に重要な数字」は「トランプの予備選挙で優勢維持」を示す数字

「予備選挙の前に自らの現在の支持先が変わることはあるか?」という問いに対して、

トランプ支持者   固まっている63%  変わるかもしれない36% 無回答1%
クルーズ支持者  固まっている36%  変わるかもしれない64%

というものです。1位爆走中のトランプ支持層は極めて強固であるのに対し、2位のクルーズ支持者はイマイチ支持が固まっていない、ということが上記の数字から分かります。そのため、現状のままであれば予備選挙に関してはトランプ氏が伸ばしてくる可能性が高いということが分かるわけです。(実際の他の調査でトランプ氏が2位い以下を大きく突き放しています。)

また、トランプ氏ら共和党候補者とヒラリーら民主党支持者を比べた場合に、民主党候補者が優勢という数字が出ています。しかし、上記に触れたとおり民主党の支持は若年層で極めて高い状況となっており、若年世代の投票率と有権者登録率の関係を考慮すると、同世論調査結果のみから民主党が有利と分析することも困難です。

来年は年明け早々から予備選挙から撤退していく候補者が続出していくことが予測

上記の世論調査結果から導出できる分析は、来年初頭から共和党の予備選挙候補者が撤退していく中で、トランプの支持が一定程度の高水準で推移するということ、テッド・クルーズ氏の支持は他の候補者に流れる可能性が高いこと(おそらくマルコ・ルビオ氏であろうと予測)ということでしょうか。

今後、留学経験者などが増加していく中で、ワシントン支局への腰掛のような形で赴任している人々の付加価値は著しく減少していきます。NHKは公共放送として「ワシントン病」からいい加減に卒業して、情報の出元の影響を受け過ぎずにもう少し客観的な報道ができるようになってほしいものです。

従来までは、米国研究や米国報道は「翻訳ができる」だけで良かったのかもしれませんが、これからは専門性をもって米国の政治動向を分析する時代になるでしょう。日本の国際報道を担う人材の質の向上はますます重要になるものと思います。

当確師
真山 仁
中央公論新社
2015-12-18





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