アジア(中国・韓国)

2016年01月05日

点と線を繋ぐ外交視点、慰安婦問題から見る東アジア情勢

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昨年末の慰安婦に関する日韓合意の背景に存在する北朝鮮問題

昨年末に行われた慰安婦に関する日韓合意の背景には、米国による意向が強く働いていたものと推測されます。上記の日韓合意について、米国側が強烈に後押しした発言を行ったことや米国内の韓国系団体に対して合意を尊重するように働きかけたことからも明らかです。

現状では韓国政府が慰安婦関連の団体を説得する重荷を背負った状況となっていますが、そもそも日本政府が訪韓する段階でこのような状況になることは目に見えていたはずであり、日本政府側だけでなく韓国政府側にも米国から会談を受けるように要望があったことは間違いないでしょう。

米国が日韓関係の修復を急いだ背景には、中国の安全保障上の脅威が高まる中で米国の同盟国同士のいがみ合いを終わらせたかったということもありますが、北朝鮮が2010年10月に36年ぶりに朝鮮労働党党大会を開催すると決めたことが大きかったと推測します。

実際、米国の世論調査でも、国際的な安全保障上の関心事として中東・テロなどと同ランクの事項として「北朝鮮問題」が上位に位置付けられることもあり、米国の空気感は北朝鮮動向についてかなり敏感だと言えるでしょう。

北朝鮮側から同大会で限定的ながらも周辺国との関係改善及び経済改革が打ち出される可能性が高いものの、北朝鮮による核実験や南北朝鮮の再接近による政治情勢の不安定化への危惧があり、大統領選挙の年と被る同党大会前に日韓の手打ちを行わせておくことは米国にとって次善の策だったと言えます。

対中包囲網の形成にまい進する安倍外交の日本

上記のような米国の意図とは別に、安倍政権は基本的な外交・安全保障政策として対中包囲網の形成にまい進しています。中国の外交的・軍事的膨張を抑え込むために、中国の周辺国(米・日・豪・印ら)との外交・安全保障関係を強化しする路線です。(安倍政権発足当初はセキュリティダイヤモンドなどという言葉で表現されました。最近は耳にしなくなりましたが。。。)

米国向けには、安保法制を通すことで同盟国としての地位を格上げし、米国議会演説や安倍談話の発表によって、安倍政権の歴史修正主義的な雰囲気を化粧することで、同国に自由主義的なイメージを浸透させました。第一次安倍政権時代での対米関係の悪化も一因となって退陣に追い込まれた反省が生かされた形です。

豪州・インド向けには、安全保障関係の強化が確認されるとともに武器輸出に関する交渉も始まっています。昨年7月には米豪の軍事演習に日本も参加して準同盟ぶりを示すとともに、10月には8年ぶりに自衛隊がインド洋での日米印の軍事演習に参加しました。ASEANに関しても東アジアサミットで中国の南シナ海問題が大きく取り上げられることになりました。

昨年10月に任官されたばかりのタカ派の外交通である河井克行首相補佐官が日米豪英印を訪問していることからも、安倍政権がセキュリティダイヤモンド構想を継続していることが伺えます。

問題となる韓国・ロシアについても、韓国については米国の意図に乗る形で慰安婦合意を行ったことで外交関係の問題を処理することに成功し、ロシアについても年頭あいさつで日ロの平和条約について安倍首相が明言するなど関係改善に向けた動きが出ています。4月に予定されている北海道の衆議院補選で新党大地が野党連合に協力しない理由は日ロの関係改善を見据えたものではないかと推測します。

以上のように、安倍政権は中国の周辺国との関係強化にほぼ成功しつつあり、対中包囲網を完成させつつあると言えるでしょう。日本の外交・安全保障環境の改善という意味では非常に望ましいものではりますが、後述の通り、要となる日本と米国では対アジア政策観が全く異なることは日本の針路に大きな爆弾を抱えることになる可能性があります。

「米国」の主要な関心は「中東」と「欧州・ロシア」であって「中国」ではない

日本の米国通とされる有識者らが書く文章を読むと、私たちは米国が東アジア情勢、特に中国の軍事的な脅威について非常に関心を持っていると思い込みがちです。しかし、これらはそれら有識者が日本での地位を確保するためのポジショントーク的な言説に過ぎず、その手の言説をばら撒く有識者の発言は信用できません。

米国の主要な外交的関心事は中東と欧州・ロシアにあります。中東に関しては、ISを巡るシリア・イラク情勢だけでなく、イランとの交渉やサウジアラビアとの関係など、米国の安全保障に致命的に関係する案件が山積みとなっています。実際に昨年末の共和党の大統領予備選挙候補者を集めた討論会では「中国」の話はほとんど行われず、話題はもっぱら「中東」「テロ」でもちきりでした。

米国にとっては欧州・ロシアも非常に重要な問題です。欧州からの対米投資はアジアからの対米投資よりも遥かに巨大であり、政治・外交に関しても老獪な欧州・ロシアは米国にとってコストがかかる相手です。特にロシアは米国を安全保障上の脅威として位置付けるなど、豊富な軍事力・外交力・エネルギーなどを背景に米国の覇権に挑戦する存在となっています。

一方、アジアは中国の軍事的な拡張は留意されるものの、米国にとっては北朝鮮の体制混乱のほうが問題視されていると言えるでしょう。中国の米国に対する挑戦は上記の2地域と比べれば表面化しておらず、米国側では「中国の台頭」として認識されています。そのため、日本・韓国・豪州などの同盟国を活用したバランスを取る政策が採用されており、中国の脅威に対して本格的にコミットする状況ではありません。これは南シナ海での航行の自由作戦が事実上の腰砕けに終わっていることからも明らかです。

そして、この米国の外交方針はオバマ政権だけでなく共和党党政権になったとしても、現状では大きな変更があるとは想定できず、米国のコミットメントは必要とするものの過大な期待を抱くことは間違っています。

噛み合わない日米の安全保障戦略、東アジアの現代史の岐路へ

上記の通り、日本と米国の安全保障戦略観は大きく異なります。ここで問題となることは、日本は主要な仮想敵として中国を認定した安全保障戦略を性急に展開しつつあるに対し、米国は中国を脅威として認識しつつも優先順位が極めて低いということです。

従来までは米国は日中の紛争に関するコミットメントについては中国を刺激しないような形での温和な表現を心がけてきていました。米国としては中東・ロシアの相手で手一杯であり、中国と事を構えるつもりはほとんどないものと思われます。

一方、日本側は対中包囲網が完成しつつある中で、中国との限定的な紛争に具体的に突入できる環境が形成されるつあります。この見通しは「憲法改正反対!」「安保反対!」というお花畑な主張ではなく、安倍政権の一連の具体的な外交・安全保障政策の結果として生まれた環境変化によるものです。

このようなズレによる齟齬がが安倍首相が航行の自由作戦に賛意を示した後、米国の及び腰の対応を見て参加を見送る穏便な発言に修正したこと等のように現実に起き始めています。

安倍政権の外交政策が成功してきた結果として、逆に日米の外交・安全保障環境の認識において噛み合わない状況が発生するという皮肉な状況が起きています。このような状況の中で、日米の外交当局者がどのような外交・安全保障に対する判断を下していくのか、我々は東アジアの現代史の岐路に差し掛かっていると言えるでしょう。




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2016年01月04日

ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(2)

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昨日の「ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(1)」に続いて、本日は後半部分、移民、政治体制、テロ、軍事などに関するヘリテージのアジア情勢評価を見ていきます。

アジア圏から米国への合法的な移民は「中国」「インド」「フィリピン」がトップ3

直近10年間のアジアから米国への合法的な移民は中国、インド、フィリピンが圧倒的に多い状況です。これに続いて、ベトナムや韓国などが人口数に比べて多くの移民を輩出しています。

特に中国はインドを抜かしてアジア圏からの移民シェアで第1位となりました。これは米国国内での中国系移民・インド系移民の政治的な発言力が強まっていくことを意味しており、中長期的には米国の対アジア政策に影響を与えていくことになるでしょう。2016年の大統領選挙の共和党予備選挙候補者にインド系の州知事が名前を連ねていたことは米国の変化の象徴とも言えるでしょう。

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海外の移民からの本国への送金によって経済を支えている国の存在
 
海外の移民からの送金が自国における経済に大きな役割を占めているアジアの国は意外と多い状況にあります。その中で特に米国からの送金割合が多い国は、トンガ、フィリピン、キリバス、ベトナムなどであり、米国に移民を比較的多く輩出しているフィリピンやベトナムは米国に移民を輩出することで自国への送金経済を作り上げていることが分かります。

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政治的な自由や報道の自由に関して著しい格差を抱えるアジア
 
豪州や日本のような自由度が高い国々が存在している一方、中国、ラオス、北朝鮮のような自由を抑圧する国が同時に存在している点がアジア圏の特徴です。

政治的な自由に関しては確実にモンゴル、自由が進展している国も存在している国もあれば、スリランカやタイのように大幅な後退を見る国など非常に様々です。しかし、全体的には自由が拡大していることが分かります。一方、報道の自由に関しては年々悪化している国も多く、政権によるメディアへの介入が常態化している国が少なくありません。

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イスラム諸国で信教の自由が抑圧される傾向があり、中国では政府の弾圧が厳しい状況あり
 
信教の自由に関してはイスラム教が強い国々では政府による規制や社会的な敵視が強い傾向があります。マレーシアのみが政府規制が強いものの、社会的な敵視が弱い地域ということ言えるでしょう。一方で共産主義国である中国は政府による信教の自由への規制が非常に強く深刻な事態を引き起こしていること分かります。

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国家の脆弱性が高まりつつあり、政治的な不安定化が引き起こされる可能性が高い
 
アジア圏には失敗国家と堅牢な国家の2つが同時に存在していることが特徴です。アフガニスタンやパキスタンンのような非常に危機的な国家もあれば、日本やアングロサクソン諸国のような安定性の高い国家も存在しています。

国家の脆弱性が高まっている国々は北朝鮮を除けば基本的に南アジアの国々であり、何らかの拍子に国家が崩壊して政府機能がマヒする事態になる可能性が高い状況があります。ちなみに、日本も経済的な失策はここでも叩かれています。

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パキスタンはアフガニスタンよりも頻繁にテロリズムが発生している状態に
 
パキスタン、アフガニスタン、インドなどの南アジアを中心にテロが活発化している状況にあり、特に域内大国であるインドの役割が極めて大きくなってきていることが分かります。インドはテロ対策についても実績がある国であり、2015年末にインド首相がパキスタンを電撃訪問したことは非常に重要な意味があったと思われます。

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中国の軍事的な膨張に対して高まる警戒感、インドの軍事的な存在感の高まりも
 
南シナ海における中国の海洋進出が注目されていますが、それらは南シナ海の領海の主張に関して複数国が異なる意見を主張していることを確認し、その上で中国の岩礁開発や艦船の動向について注目しています。また、アジア地域を俯瞰する米軍の配置状況を確認した上で、日本と韓国の軍事基地について重要性を指摘しています。

軍拡については中国の軍事的な膨張を注目するとともに、同時にインドの軍事拡大についても注目しています。米国はアジア地域の安全保障に関する意識は危機が明確化している対ロシア・対中東などの他地域と比べて劣りがちであり、域内の軍事バランスを保つために日本側から米国のコミットメントを積極的に求めていくことが望まれます。
 
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ランド 世界を支配した研究所 (文春文庫)
アレックス アベラ
文藝春秋
2011-06-10




南シナ海: アジアの覇権をめぐる闘争史
ビル ヘイトン
河出書房新社
2015-12-25




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2015年12月31日

2016年に起きる世界的なリスクの可能性を展望する

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2015年も大晦日を迎えたため、2016年の世界情勢について展望して新年に突入したいと思います。特に来年に危機が高まるであろう国際政治の要素を10個ほどまとめてみました。

<東アジア・東南アジア>

(1)中台関係の悪化

来年1月の台湾の総統選挙において、与党・国民党の朱立倫氏、野党・民進党の蔡英文女史の争いは後者の勝利となり、焦点は民進党の立法委員選挙での過半数確保に移っています。馬英九政権がシンガポールで行った中台の首脳の接触など中国傾斜を深める中で、今年夏に訪米した際に穏健化を主張した台独派民進党の蔡英文女史の支持が広がった形です。

民進党政権でも中国との関係が急速に悪化するということは無いと思いますが、米国の東アジアの安全保障の専門家の中には中国の南シナ海への進出は偽装であり、本丸は台湾海峡にあるという意見も根強く存在しています。そして、実際に中国にとっての真剣な脅威は民主主義・台湾であり、軍事大国化した中国の核心的な利益に触れる問題は台湾海峡によって発生する可能性が高いものと思います。

(2)北朝鮮の政治混乱

米国世論調査でも北朝鮮問題は中東のISの次に来るほどの危機として認識されており、日本人にとっては常態化した北朝鮮の異常な行動も世界から見ると深刻な脅威として認識され続けています。日韓の慰安婦問題についての「最終的かつ不可逆的な合意」も米国が北朝鮮情勢について深刻な懸念を持っていることの裏返しであり、2016年党大会における新方針など同国の動きは注目し続ける必要があります。

特に同国内における中国の経済的な影響力が強まる反面、同国に対する北朝鮮の国粋派による反感が強まって大国による制御不能な状況に陥ることが懸念されます。金正日体制からの体制移行後による粛清の嵐によって政権内の一体感が弱まっていることも政治混乱の引き金になる可能性があります。

(3)日本の対中包囲政策

安倍政権誕生以来、日本はセキュリティーダイヤモンド構想などの対中包囲網を敷く外交方針を継続してきました。その結果として、米国には米国議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題の妥協、インドやオーストラリアとの軍事交流強化、南シナ海問題でのASEAN各国との連携強化、中央アジア・東南アジアへの大型の円借款、ロシアへの北方領土問題のアプローチなどが進んでいます。

その結果として、安倍政権は対中政策について強いポジションを持てる国際環境が形成されつつあり、日中両国の間で何らかの小規模な紛争が発生する可能性が増しています。日本にとって外交安全保障関係が強化されることは望ましいことですが、それによるリスクも同時に高まっていることも認識されるべきです。

(4)中国経済の国際化に伴う懸念

IMFのSDRに元が採用されたことなど、中国経済の規模拡大に合わせて国際化は急速に進みつつあります。しかし、中国の国内経済は新常態と呼ばれる中成長状況に減速し、シャドーバンキングなどによる不良債権問題は依然として片付いておらず、中国経済に致命傷を与える問題は臭いものに蓋をしたままです。

中国経済が国際化することは、昨年のバブル崩壊時に見せたような証券市場への強権的な対応などに対し、国際的なルールに従うことを求める圧力がかかることになり、政治力による金融・資本市場への統制に綻びが生じる可能性があります。経済混乱の結果として、中国の政治体制への影響や日本経済への影響も懸念されます。

<中東・中央アジア>

(5)ISの世界的な拡散に伴う危機

米国におけるホームグロウン・テロのようにSNSネットワークを通じた個人のテロリスト化はISの世界的な拡散の一つの事例となりました。また、IS占領地に存在していた大量の白紙のパスポート及びパスポート製造機によって世界中へのテロリストへの自由な移動を確保する実態が生まれています。ISの機関紙を見る限りでは日本への関心も高まっており、伊勢志摩のサミットなども厳重な警戒が求められます。

従来までは水際対策を講じられてきたテロリストへの対策が事実上不可能になる中で、各国政府は国内のリアル・ネット上のセキュリティーの強化を行う必要に迫られています。しかし、それは同時に欧米先進国で守られている人々の自由に対する侵害行為であり、自由を基調とする欧米先進国にとって社会的な自由が後退することはそれ自体が敗北であるというジレンマが生じています。

(6)サウジアラビア危機と中東の動乱化

原油価格の低下によってスンニ派の盟主であるサウジアラビアの政治経済体制に綻びが生じつつあります。王政の代替わりによって発生した権力の集中問題も問題を複雑化させています。特にサウジアラビアの東部では民主化圧力も高まりつつあり、政治体制の安定性に懸念が生じています。

また、イエメン隣接地域における反政府勢力との戦闘における敗北など、王政に忠誠を誓う軍隊の脆弱さが露呈しており、ISやアルカイダがイエメンで勢力を拡大し、中東全体ではイランが主導権を握らんとまい進する中で、サウジアラビアの安全保障面・治安面での危機が強まりつつあります。しかも、原油価格低下と終わりなきイエメンでの戦争により、サウジの16年度予算は10.5兆円の赤字となり、補助金見直しや付加価値税導入を検討する有様です。

バラマキ政策が限界をむかえつつあり、隣国との戦争が泥沼化し、国民と王族内の不満が高まりつつあるサウジアラビア。この国が混乱に陥った場合、中東地域は収拾不能な動乱に陥ることになります。そして、それは我が国が石油の三割を輸入している国を喪うと言う事を意味しているのです。

(7)中央アジアのIS化の可能性
 
タジキスタンの行方不明になっていた治安警察のテロ担当司令官がISの一員として同国大統領に宣戦布告のメッセージを伝えるなど、中東地域での激しい戦闘から逃れたIS勢力が中央アジアで新たな勢力を築く可能性が出てきています。

また、ISは9月に中国人の誘拐・殺害を行った上で、新疆ウイグル自治区に戦闘員を帰還させて蜂起を促すなど、同地域の不安定化に力を注いでいます。中国側が同自治区への弾圧を強化するほどIS側は勢いづくことは間違いなくイタチごっこの状況です。

中央アジアの不安定化に対応するため、対テロ戦争に中国が本格的に関与することが求められるようになり、国際政治の基本的な構図に変化を及ぼす可能性があります。

<欧米>

 (8)米国の指導力の低下

2016年は米国大統領選挙の年であり、レイムダック化したオバマ大統領の外交指導力が低下するため、大規模な国際環境への変化への米国の対応力が低下します。米国は既に世界の警察官としての役割を放棄し、世界中で頻発する問題に選択的介入を行う十分な能力を持っていない状況です。

米国大統領選挙は内向き志向を強める候補者らと対外関与の必要性を訴える候補者の路線闘争の状況を呈してきておりますが、オバマ大統領ではなくとも今後の指導力の低下は避けられないものと思われます。米国の同盟国は自国の外交・安全保障の在り方について再検討を行う必要性が生じています。

(9)欧州分裂・移民問題の危機 
 
人道上・経済上の問題から継続・拡大されてきた移民問題が深刻化しています。特にフランスの同時多発テロやシリア難民の増加は各国の右派政党の台頭に繋がっており排外主義の台頭が起きています。また、イギリスがEU離脱の国民投票を行う旨を発表するなど、EUの屋台骨自体が危機にさらされつつあります。

欧州は充実した社会保障制度を持っているために、自国民への社会保障を維持するために新たに受け入れる移民への反感が強まっているという、ケイジアン的な発想による新しい排外主義の形が出現しています。EU分裂や移民問題の危機は、政治経済体制の新しいパラダイムを見出す上で注目に値します。

(10)サイバー空間における攻撃の深刻化
 
サイバー空間における米中の摩擦が深刻化しており、実質的な紛争状態になりつつあります。特に、米国共和党は中国からのサイバー攻撃に非常に大きな懸念を示しており、共和党が大統領選挙に勝利することになれば同問題は大きな外交テーマとして取り上げられていくことになるでしょう。

また、日本はアノニマスによって厚生労働省や首相HPがダウンさせられるなど、サイバーセキュリティー環境が極めて脆弱であり、来年の伊勢志摩サミットに際して何らかのサイバーセキュリティー上の問題が発生する可能性が高く、セキュリティー体制の早急な強化が必要です。今後は、大規模な国際会議などの開催国の要件としてサイバーセキュリティーへの対応力などが一層求められることになるでしょう。





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2015年12月29日

なぜ、新党大地は野党統一候補に協力しないのか?

鈴木宗男
Wikipediaより引用

北海道新聞が報道した安倍首相と新党大地・鈴木宗男氏の会談の意図

新党大地・鈴木代表、首相と意見交換 来年の選挙に向け(北海道新聞)という地味なニュースが報道されました。しかし、これは今後の政局だけでなく、日本の針路を決める決定的な会合の一つになるものと思います。報道内容は下記の通り。

「安倍晋三首相は28日、首相官邸で新党大地の鈴木宗男代表と約40分間会談し、来年4月の衆院道5区(札幌市厚別区、石狩管内)補欠選挙や来夏の参院選などについて意見交換した。関係者によると、首相は鈴木氏に「北海道では大地が影響力を持っている。鈴木氏はキーマンだ」と述べ、大地の動向を注視していく考えを示した。」

「これに対し鈴木氏は、共産党が加わる野党統一候補の擁立は支持しない考えを伝えた。日ロ関係やシリア情勢でも議論した。鈴木氏は会談後、記者団に「来年は参院選の年でもあり、首相は自身の考えを披露された。私は聞き役だった」と述べた。」

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

北海道衆議院小選挙第5区における新党大地の集票力は約24,000票と推定されます。この数字は新党大地が2013年参議院議員選挙で同選挙区から比例票を獲得した票を基に算出しています。

直近の小選挙区選挙の結果は、

町村信孝 (自由民主党)131,394票、勝部賢志(民主党)94,975票、鈴木龍次(日本共産党)31,523票であり、単純な票の出方で考えると、野党連合候補者にとっては新党大地24,000票は勝敗を左右するレベルのものだと言えるでしょう。

実際には与党側は町村氏が娘婿への代替わり、野党側は共産党との協力の是非という難しい問題を孕んでいるため、上記の数字の通りの結果にはならないでしょうが、それにしても新党大地の力は無視できないものでしょう。

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

ところで、野党連合候補者が来年予定されている補欠選挙で、反安保というピンとがずれた選挙争点を掲げることが予想されるため、安倍政権側にとっては新党大地が野党連合候補者に協力しないことは、最後の詰めの一手に過ぎないものと思います。また、従来までの新党大地の動向に鑑みるに、安倍政権と協力する理由も特に見当たりません。

新党大地に対して提示した安倍政権の真の狙いは北方領土問題の解決ということになるでしょう。それに伴い北海道経済は対ロ関係で大きなメリットを得るものと思います。安倍政権は「中国以外」の全ての周辺国との間で「手打ち」を行うことで、対中関係に関して強硬姿勢を取れる環境を構築しています。

米国には米国上下両院議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題への妥協、東南アジアは援助と引き換えとした南シナ海での東アジアサミットでの懸念表明、インド・中央アジア諸国への巨額の円借款などの援助など、安倍政権は中国包囲網を形成するための外交努力を行ってきました。その仕上げがロシアとの北方領土問題解決と平和条約の締結ということになります。

先日の記事(日中限定戦争への道、慰安婦合意の真意を探る)で安倍政権の慰安婦合意について筆者の推測を書きましたが、安倍政権の外交政策及び憲法改正への段取りは最後の詰めの段階に入ったと言えます。

安倍政権は良い意味でも悪い意味でも政局・内政・外交がリンクした優れた戦略的な政権運営を行っている強靭な政権です。従来までの日本の政権とは全く異なる政権であるという解釈を行った上で、その政権運営の是非を論じることが重要です。時代遅れの右派・左派の双方の論評は論壇の座を退くべきだと思います。




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2015年12月28日

日中限定戦争への道、慰安婦・日韓合意の真意を探る

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日韓の不可解な慰安婦に関する合意、突然の年内決着の思惑とは何か

タカ派で知られる安倍政権が年の瀬に突如として実行した岸田外相の訪韓と慰安婦問題における大幅な妥協は何を意味するのでしょうか。そして、慰安婦問題の立ち合い人として米国を据えた意味はどこにあるのでしょうか。

安倍政権の日韓合意に込めた意図は米国などの国際世論に「日本の正当性」をアピールすることにあります。

同政権は米国議会における演説などでも歴史修正主義的な内容を一切含まず、夏の談話についても文言を工夫して戦後民主主義・自由主義陣営に属するイメージづくりに励んできました。そして、従来までの慰安婦に関する政府主張を顧みない今回の日韓合意は安倍政権の対外的なイメージを決定付けるものです。

安倍政権が国内から一定の失望を受けながらも国際的にタカ派のイメージを放棄する理由は何でしょうか。能あるタカは爪を隠すという諺もありますが、筆者は安倍政権の真の狙いは全く別のところにあると予測します。

真の目的は「日中限定戦争」のための環境整備ではないのか?

筆者は安倍政権の真の目的は、日中限定戦争のための環境整備、ではないかと推測します。国際的な世論環境において、発足当初の安倍政権は中韓の宣伝によって非常にタカ派色が強い政権として認知されていました。

しかし、安倍政権の対米配慮姿勢の徹底、そして中国を取り囲むような対外援助増加を実行してきた結果、安倍政権に対する国際的な世論の風当たりは弱まり、むしろ中国の海洋覇権主義に対する懸念が高まりつつあります。

米国本国は東アジア・東南アジアの政治情勢、特に対中関係は関心が強くない状況ではありますが、全体的な空気感として米国の中国側に傾いていた国際世論の流れをかなり押し戻したものと思います。

仮に日中による尖閣諸島などで限定的な戦争(紛争)が発生した場合、日本が中国に対して優勢な状況を形成できれば米国が日本側で仲裁に入る環境が既に整備されてきています。その中で今回の日韓合意によって日中が限定的な戦争状態に突入するためのツメの作業に入ったと言えるでしょう。

憲法改正のための限定戦争という本末転倒な事態が発生する可能性

筆者が日中が限定的戦争またはそれに近い状態に突入する可能性が高いと見ている理由は、安倍政権の政策目標が「憲法改正」にあると看做しているからです。

大規模な金融緩和や消費増税の先送りなどの経済政策は支持率上昇のためのものであり、安倍政権にとってはそれ以上のものではないものと推測します。そのため、第三の矢である最も重要な規制緩和は現在までほとんど実施されておらず、円安による株高誘導や企業業績のかさ上げなどのモルヒネ的な経済政策が実行されている状況があります。

安倍政権が長期政権を目指す場合、安倍首相が本年行われた日本会議に送ったビデオメッセージの内容通り、憲法改正を政治日程に組み込むことが自然な流れとなります。

来年の参議院議員選挙において、消費増税の先送りを掲げて民主党などの改憲反対勢力を一掃した上で、日中の限定戦争ないしそれに近い状態を創り出すことができれば、憲法改正に向けた世論環境を創り出すことができます。

戦争というものは憲法が改正したから発生するものではなく、両国の指導者が意思を持って軍事力を行使することで始まります。来年11月米国大統領選挙の後の2017年が極めて危険だと思います。

筆者は上記の状況が発生することを支持するものではありせんが、安倍政権の一連の不可解な外交政策の積み重ねを総合的に鑑みるに、一つのシナリオとして十分な妥当性があるものと予測します。




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2015年12月26日

慰安婦の方が住んでいる場所に訪問した思い出とともに

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日本と韓国、それに第三国も入れて慰安婦問題を最終決着させる話が浮上

慰安婦問題について妥協するために28日にソウルで岸田外務大臣が韓国政府と会談することになったとのことです。

日本側が慰安婦の人たち向けの1億円の基金を創設することの代わりに、慰安婦問題については最終的に解決した旨を確認し、米国などの第三国にも同確認について再確認させるというもの、と報道されています。

日本側も随分思い切ったことを提案するなと驚きましたが、国内で保守的な歴史観を持っている(海外では自由主義者で通している)安倍首相だからこそできる妥協だと思います。

私自身は心情的には評価しませんが、成功すれば日本の国際的な地位を高めることにつながることになるでしょう。

学生時代にナヌムの家に行った時の思い出を思い出してみた

私自身は学生時代に慰安婦の方が集合して住まれているナヌムの家までお伺いし、慰安婦の人々の実際の様子を見てきた経験があります。

個人的な感想を申し上げるならば、極めて悲惨な人生を送られてきたのだなというところです。私は慰安婦が強制されたものであったかどうかは議論しません。それらについては歴史学者の皆さんが検討すれば良いことだと思っています。

私が悲惨だと感じたことは、訪問当時・戦後60年経っているにも関わらず、彼女たちはナヌムの家で「天皇を銃殺する絵を描かされて」過ごしていたということです。私の感想としては、日本との慰安婦問題における関係以前に、韓国政府が上記のような心の問題を抱えている慰安婦の状態を長年放置してきたことに衝撃を受けました。

本来は心理的なケアを行うことで彼女たちが少しでも幸福に暮らせるように配慮するところですが、韓国政府は「慰安婦」として政治利用し続けているために、彼女たちの人権は韓国国内で現在でも蹂躙され続けているように感じました。

日本政府は慰安婦のための基金を設置するべきなのだろうか?

安倍政権が慰安婦問題の解決に動き始めた理由は、米国議会演説などで自由主義的な演説を行った安倍首相による中韓に対する対米外交の盛り返し、というところでしょうが、オセロゲームのような発想で触れてよい問題なのかどうか、イマイチ納得できない問題のように感じます。

日本政府が慰安婦のための基金を設置するべきかと言えば、私の回答は日本政府として基金を設置するべきではないというものです。

むしろ、戦前の歴史とともに戦後に韓国政府が彼女たちをどのように扱ってきたのか、両者の歴史をしっかりと解明することが重要だと思います。そして、全ての歴史を明らかにした上で、慰安婦の方々に対して何らかの思うところがある方々は自発的な寄付を提供するべきでしょう。

私自身は慰安婦の人々に対する自発的な寄付には賛成です。彼女たちが、従軍慰安婦であったか否か、に関わらず、歴史の被害者として人生を過ごした人々への憐憫の情を持つ人は居ても良いからです。

彼女たちは日韓の歴史が作り出した「慰安婦」という名前の政治被害者であり、日本をバッシングするための走狗となるしか生きる道が無かったからです。自らの人生の自由を失って一生を政治の道具として捧げた人々に憐れみを覚えます。






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yuyawatase at 12:00|PermalinkComments(0)

2015年12月11日

安倍首相のHPダウンは、韓国系アノニマスの仕業なのか?

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https://ca.news.yahoo.com/photos/south-korean-activists-protest-against-japans-whaling-fleet-photo-000344386.html(写真引用元)

安倍首相のHPダウン、アノニマスが「捕鯨」を理由に犯行声明を発表している状況に

産経新聞12月10日付けの報道で、
 

という記事が出ていました。

本ブログでも過去に、いわゆる「アノニマスの犯行声明」を特定して記事にしています。

厚生労働省のHPは何故アノニマスにダウンさせられたのか?

ということで、アノニマスは以前に厚生労働省をダウンさせたときは「捕鯨」の話でした。そして、今回もアノニマスさん達は捕鯨が原因でダウンさせたと主張しています。この人たちどれだけクジラが大好きなんだろう・・・。

安倍首相のHPをダウンさせたとして喜ぶアノニマス系のTweet

HPダウン3日前に、韓国系のアノニマスっぽい奴らが反捕鯨で日本大使館前で抗議活動

一方、反捕鯨12月7日に韓国の日本大使館前で、お面の集団が反捕鯨の抗議活動を実施していたようです。

韓国の日本大使館前での仮面の集団による捕鯨への抗議活動(IBT)

IBTは飛ばし記事もあるので、本当かどうかを検証してみましたが、AFPが撮影した写真が他のサイトでも結構出回っているので、どうやらこの下らない抗議活動は本物であろうと思います。

7日はオーストラリアの外相と環境相が「オーストラリア政府は捕鯨に反対する32カ国と一緒に、南極海での日本の捕鯨再開に抗議する」という声明を出しており、シーシェパードが日本の邪魔をするために出港している日なので、犯人をっ実際に特定することは困難な状況ですが、

「いやいや、アノニマスっぽい仮面つけて抗議活動してたら、お前ら犯人だろ!」

と思われても仕方がない状況だよね、と思います。タイミングが良すぎるんじゃないかと・・・(笑)

ということで、抗議活動を行うときは、少なくともアノニマスっぽいお面は止めましょう。

実際に韓国系のアノニマスがやったかどうかは、彼らはアノニマスなのでさっぱり分かりませんが、少なくとも何かの抗議活動をやるときは、犯人扱いされたくないなら「アノニマスのお面」を被るのは止めましょう。

「とりあえず、お前ら犯人でいいや」ということになるので。(実際に犯人かもしれないけど)

東アジアの安全保障のことなどを考えると、韓国のお面集団には「日韓関係が意味もなく悪くなる連中は極めて迷惑」なものだなあと。日本の愛犬家の皆さんが韓国大使館前で抗議するぞ?という話です。

靖国神社を爆破したりとか、最近の韓国人のトンデモぶりが酷過ぎるだけに、もう少し韓国国内の良識派の人たちには頑張ってほしいものだと思います。





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2015年12月10日

国連安保理・全常任理事国と衝突するイスラム国

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イスラム国(IS)が中国での活動を本格化することを宣言

2015年12月9日”Take Up Weapons(武器を手に取れ!)というイスラム国のプロパガンダが中国国内のIS戦闘員及び潜在的な戦闘員候補者に呼びかけられました。

中国は国外では過去に人質をISに殺害されており、国内でのテロ対策を強化するなどの対応に追われています。宗教的な動乱が中国の過去の王朝を終わらせてきた歴史的な経緯を踏まえると、ISが中国に対して全面的な戦闘状況に突入することの意味は大きいと思います。

中央アジアに拡大するイスラム国(IS)、新たな戦乱の火種が拡大する可能性

タジキスタンでは失踪していた治安当局の司令官がイスラム国(IS)の一員として、現職のタジキスタン大統領を打倒する声明を発表しているなど、旧ソ連に属する中央アジア諸国における活動を拡大しています。

タリバンなどの旧来のイスラム勢力に代わって、勢いがある新興勢力としてイスラム国(IS)への求心力が高まっており、シリアなどの激しい戦闘が展開されている地域から、イスラム国(IS)が戦線を中央アジア及び中国西部に移す可能性が高まっています。

中央アジア地域では事実上の独裁制が敷かれており、イスラム系住民のフラストレーションが溜まっていることから過激思想に共感する人々が生まれやすい環境があります。

中国で高まるホームグランドテロの危険性と人権弾圧の激化の可能性

新疆ウイグル自治区からISに参加していた戦闘員が既に中国に戻ってホームグラウンドテロを仕掛ける可能性も高まっており、中国の対テロにおける著しい治安の悪化が起きるとともに、対テロを名目とした中国当局による人権弾圧の激しさも増すものと推測されます。

イスラム地域と国境が隣接する大国は常にイスラム過激派との間で緊張関係を抱えており、対イスラム・テロという文脈になると、通常は対立関係にある欧米と中露の利害が一致する現象が発生します。今後中国が新疆ウイグル自治区を始めとした治安強化策を行うことに対して、欧米がどのような反応を示すか、ということが問われています。

全ての国連安保理・全常任理事国と戦争状態に突入するイスラム国(IS)

以前の記事(対イスラム国、安保理常任理事国・中国に責任を果たさせよ)でも書きましたが、中国は対イスラム国(IS)に関して常任理事国として積極的に関与すべきです。

前述の中国人とノルウェー人がイスラム国に殺害された際の、国連の説明に対し、中国は

「。安保理は中国人の人質が殺害された後、即時に反応し、テロ組織による人質殺害という暴行を最も強烈な表現で非難し、各国が中国政府などと力を合わせて協力するように勧告した。これは安保理のメンバー国、さらには国連加盟国全体の共通認識を反映し、国際社会があらゆる形式のテロリズムを共同で取り締まる固い決意を表現した。」(新華網)

としていますが、国内での取り締まり以外に、国際社会の秩序を守るために積極的な役割を果たす存在が国連安保理の常任理事国です。中国は国内対策を強化するだけで国際秩序の問題から自らを蚊帳の外に置いてきましたが、もはや途上国ではない同国が国連の大国としての義務を果たすべきときが来たと言えます。

イスラム国(IS)が中国に対して戦闘状態であることを発表したことで、同組織は全常任理事国と戦闘状態に突入したことになるため、国連安保理の正式な決議によって各国バラバラに介入しているシリアを統一的な方針の下に平定するべきです。

国際社会全体の大義を掲げた闘いこそが対テロ戦争には相応しいものであり、近年低下している国連の安全保障機能を取り戻すことが望ましいものと思います。

「Gゼロ」後の世界―主導国なき時代の勝者はだれか
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2012-06-23



 

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yuyawatase at 18:00|PermalinkComments(0)

2015年12月05日

100億円・日中緑化交流基金を調べたら運営が不透明すぎた話

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日本政府が中国の緑化事業に100億円追加で出すことを約束して非難の嵐

日本政府は、2015年度補正予算案に中国の緑化事業を支援する「日中緑化交流基金」に対し、100億円弱を追加で支出することを決めました。

同基金は、小渕恵三首相時代に日本政府が全額拠出して創設したものであり、日本の民間団体などへの助成を実施して、毎年約1000万本程度の植林を実施しています。

同基金からの支援を受けた団体は、(特)日中友好技術人材交流協会、(一社)日本アジア青年交流協会、海外林業コンサルタンツ協会など、日本国内の多岐にわたる団体への支出が行われています。

しかし、同基金は残り10億円弱となっており、今回は追加の資金拠出が行われることになったのですが、その資金拠出についてネット上で非難が巻き起こっています。

透明性が全く担保されていない「日中緑化交流基金」の運営状況について

私自身は中国の環境破壊は深刻であり、日本にも甚大な被害が生じる問題として認識しています。

本件に関しては、そもそも中国政府は経済大国として自ら環境対策と植林事業に取り組むべきであり、中国政府は日本側に有害物質の排出による健康被害に関する健康補償金を支払うべきです。また、日本の民間団体が自己資金で中国の緑化に取り組むことは良いことなので大いに取り組むべきだとも思います。

そのため、日本側が100億円も税金を支出して支援するのであれば、それなりの理屈が担保されるべきであり、資金使途も適切に公開されることが当たり前です。

しかし、100億円の資金拠出先の「日中緑化交流基金」のHPを見ても、役員構成などの代表者はそもそも公開されておらず、極めて不透明な組織運営がなされています。

また、同基金は助成事業について「厳正な審査」を行うと謳っていますが、「日中民間緑化協力委員会の委員会資金による助成事業募集案内」の内容も極めていい加減なように見えます。

同基金を所管している外務省も適当な情報公開をHPで実施しており、同事業についてなるべく触れたくなさそうな雰囲気を漂わせています。

日中緑化交流基金(代表者名・役員構成記載無し)
日中民間緑化協力委員会の委員会資金による助成事業募集案内(簡素すぎる募集案内)
日中民間緑化協力委員会の設置とその活動(外務省の無意味な事業報告)

会計検査院の監査対象として「同基金」を徹底的に調査・検証するべきだ

上記のように極めて情報公開への姿勢が疑問である同基金について、会計検査院による監査対象として徹底的に調査することが望まれます。同基金の納税者に対する姿勢があまりに不誠実すぎので仕方がありません。

外務省・日中緑化交流基金自体には上記の結果から自浄作用はほとんど無いことが推測されるため、会計検査院による監査がガッチリと入るに相応しい案件ではないかと想定されます。

同事業については基本的に見直し・廃止することが妥当だと思いますが、既に設立から10年以上も経っていることから過去の支出についての検証を実施し、今後の対中支援の是非も含めた議論の参考材料にすることが良いでしょう。



 

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yuyawatase at 09:00|PermalinkComments(0)

2015年11月24日

区議会の話、ただし香港の。

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本日は区議会は区議会でも香港の区議会の話を取り上げたいと思います。中華人民共和国内で唯一選挙が行われている地域である香港の動向は、今後の中国の民主化に対して非常に大きな影響があります。

そもそも香港の政治・選挙はどのような制度になっているのか?

香港の政治構造は、(1)実質上の制限選挙によって中国共産党によって選ばれる行政長官、(2)直接選挙と職能団体による間接選挙による半分づつ選ばれる立法会、(3)小選挙区によって選ばれる区議会選挙、という3層構造で構成されています。

主な構図は建制派という中国共産党寄りの民主建港協進聯盟を中心とした政治勢力と民主派とされる民主党を中心とした政治勢力の間での対立が起きています。元々直接選挙枠で大勝した民主派に対抗する形で建制派の政党が結成されて民主派は徐々に政治的に押されている状況です。

行政長官や立法会の普通直接選挙化を求めて政治的な意見が対立しており、直接枠の大幅な増加は議会の3分の2の同意が必要であることから実現していません。

香港の区議会議員選挙が行われた結果として民主派が少し盛り返した形に

今回の区議会議員選挙では雨傘系の学生が55名出馬して8名が当選するという快挙を成し遂げました。全体としては、建制派が民主派の1.8倍程度の議席を有しており、依然として相対的に有利な議席を確保していますが、投票率向上とともに民主派は議席を微増することになりました。

香港は区議会には実際の権限はほとんどないため、意見を述べる参考機関という形式になってしまいますが、それでも退潮が続いてきた民主派の久しぶりの増加によって潮目が少し変わってきた可能性があります。

香港はアジアの自由の灯台、日本にとっても重要な政治的な場所である

香港はアジア全体にとっての自由の灯台であり、香港から民主派の声を消すことがあってはなりません。香港では、民主派の書物を扱っていた書店員が姿を消す事件が発生しており、言論統制・言論弾圧が進んでいる状況があります。

日本はこれらの中国当局による自由・民主に対する弾圧行為に対して積極的に意見を述べていくべきであり、欧米などを巻き込む形で中国国内の自由化・民主化を進めるべく声を上げていくことが望まれます。

中国大陸にアジアの運命を決める、自由主義・民主主義の灯台が存在することを日本の多くの人々にもっと意識してほしいと思います。






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