アジア(中国・韓国)

2016年11月15日

安倍外交・完全崩壊、運命が逆回転を始めた日

写真:覚書を交換する世耕経済産業大臣とウリュカエフ経済発展大臣
<経済産業省HP・覚書を交換する世耕経済産業大臣とウリュカエフ経済発展大臣>

北方領土交渉のキーパーソン・突然の逮捕劇が起きた!

本日ロシアの連邦捜査委員会によって、ウリュカエフ経済発展相が国営石油会社を巡る収賄容疑で身柄を拘束されました。同人物は世耕・ロシア経済分野協力担当大臣(経済産業大臣)のカウンターパートとして日ロ関係のキーパーソンとなっていた人物です。

ウリュカエフ大臣が身柄を拘束されたことで、日本側が望む北方領土交渉は完全に暗礁に乗り上げる形となり、既に約束した対ロシア経済協力の果実のみをロシア側に提供するだけ状況になる公算が高まりました。

報道ベースではあるものの、世耕大臣のコメントを見る限り、日本政府はこの事態を全く予見できていなかったのではないかと推測します。そして、この致命的な外交ミスも米国大統領選挙と密接に関係したものと言えるでしょう。

トランプ大統領で米ロ関係が改善、用済みになった日本は捨てられた形に

トランプ大統領は予てから中東地域、つまり米国にとって最も厄介な地域での対ロ協調を打ち出してきました。そして、現実にトランプ大統領が誕生した以上、当面の間は米ロ関係はオバマ政権時代と比べて友好的な関係が続くものと思われます。

一方、日本は外交的な情報能力不足から「ヒラリー大統領誕生」を前提に様々な外交交渉を進めてきたように見受けられます。ヒラリー陣営に所属していたカート・キャンベル氏が「安倍・ヒラリー会談時に日本側が意図している日ロ関係改善についての大筋を認めた」趣旨の発言をしていました。

ロシア側にとっては日ロ関係の改善は、米国によるロシア包囲網を切り抜けるための重要なカードであり、経済協力と引き換えに北方領土問題で妥協する可能性は十分にあったものと思います。

ただし、それはヒラリー政権が誕生して米国がロシアに対して引き続き厳しい立場を取り続ける可能性がある場合のケースです。

トランプ勝利が決まったことによって、米ロ関係が二国間レベルで改善してしまうことで、ロシアにとって日本の位置づけは相対的に低下することになります。そのことを端的に示した事件が上記のウリュカエフ大臣の身柄の拘束です。ウリュカエフ氏は今月予定されているAPECで世耕大臣に会う予定になっていましたが、日本側は完全に梯子を外された形になりました。

日本エスタブリッシュメントの頭の中、致命的な外交失敗を引き起こした頭の中
 
安倍政権の外交政策の基本方針は対中包囲網であったように思われます。

歴史修正主義のイメージを払拭して米国の支持を取り付け、南シナ海でASEAN諸国と結んで中国に対抗し、インドに巨額の支援を約束して抱き込む、最後に北方領土問題を前進させて、中国を四方八方から抑え込むというイメージです。

しかし、このような対中包囲網の発想は、日本のエスタブリッシュメント独特の極東の島国の外交センスでしかありません。なぜなら、世界の基本的な外交状況は中国の脅威にそれほど重きを置いていないからです。

国際政治の基本的な構図は、米ロ対立の構図、そして中東地域におけるテロとの戦いです。米国のシンクタンクの外交文書でも東アジアに触れる量の何倍もの分析がロシア・中東に対して行われています。

中国をロシアや中東よりも安全保障上の脅威として上だとみなしている米国の専門家は少数でしょう。一部の日本をヨイショしてくれるような都合が良い米国のカウンターパートから情報収集をしているから、木を見て森を見ずの外交政策が実行されてしまうのです。

そのため、対中包囲網という枠組みは、米ロが激しく対立している状況においては、ロシア側の思惑(日米同盟の切り崩し)によって有効に機能しているかのように見えましたが、実は掌の上で踊らさられていたということが言えそうです。

南シナ海においてもフィリピンをはじめとして、安倍外交が作り上げた中国封じ込めの枠組みは崩れつつあり、韓国でも政権が転覆して日韓合意のレガシーが破棄される可能性も高まっています。まさに、世界情勢は大きく変動しつつある状況です。

このように米国によるロシア包囲網の枠組みが偶然に日本の中国包囲網の枠組みとリンクしたことで、安倍外交はここまで実に見事な成果をあげてきましたが、この年末にかけて運命は逆回転の道をたどることになるでしょう。
 
外交失敗によって日本国内で政変が起きる可能性も高まった

安倍外交の失敗は日本国内における自民党内でのパワーバランスの変更を迫ることになるかもしれません。国内では民進党が非常に弱体であるため、選挙による政権交代が発生する可能性は極めて低いものと思います。

しかし、自民党内では今年の参議院議員選挙・都知事選挙を通じて反主流派の力が増加している状況があり、安倍首相をはじめとした政権主流派の影響力が外交的な失敗によって低下することで、党内のパワーバランスが崩れて政変に繋がる可能性もあるのではないかと推測します。

日ロ関係で大見得を切った安倍外交は北方領土問題で成果を挙げられるかどうかで成否が問われる状況となりました。トランプ氏の親ロ的方向性から意外と前向きに話が進む可能性もありますが、プーチン大統領が利用価値が下がった安倍首相を引き続き必要とするかどうかは分かりません。

来年のトランプ政権の本格稼働によって米国のエスタブリッシュメント人脈に依存した安倍政権の限界が更に露呈していくことなるでしょう。日本は一気に危機的な状況に立たされた状況となっています。








本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2016年01月18日

日中開戦「僅か5日」で敗北、米国は尖閣諸島を見捨てる判断

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米国の権威ある外交専門誌「Foreign Policy」が尖閣諸島を舞台とした日中衝突、日米同盟の顛末についての机上演習の結果を発表しました。机上演習を行った主体は米国最有力・軍事研究所であるランド研究所となります。

FPに公開された記事はこちら

「見捨てられる日本、尖閣諸島へのコミットメントを回避する米国」

簡単に言うと、上記の机上演習の結果として、中国に日米同盟は惨敗して多大な被害を出すことが予測されるため、米国は尖閣諸島で何が起きても無視をするべき・・・、ということが提言されています。

そして、(1)同盟は戦争に引き込まれる危険なものであること、(2)日本との相互防衛条約による防衛の大半を履行することは困難であること、(3)人民解放軍の現代化によって全てのルールが変わったこと、(4)空母の脆弱性及び潜水艦の有効性が中国との戦いを深刻化させること、(5)3か国のナショナリズムの高まりによるエスカレーションによって各国の打ち手が制限されること、などが結論として得られたとしています。

今回の机上演習で特に注目に値することは、日本が中国のミサイル攻撃によって成す術もなく多大な被害を出して敗北すること、そして米国は甚大な被害が生じる日中開戦に引き込まれることを極めて懸念していること、です。

人民解放軍の軍事力の著しい進歩の結果として、「ミサイル攻撃主体の現代戦において先制攻撃能力を持たない日本は甚大な被害を出してそのまま敗北する」という衝撃のシナリオが米国最有力の軍事研究所によって検証されたことは大きな出来事だと思います。

「僅か5日間」で中国が勝利宣言、壊滅させられる日本の自衛隊

同机上演習では中国が日本の自衛隊を壊滅させて勝利宣言するまでに要する日数は「僅か5日間」とされています。ざっくりと戦況経過をまとめると下記の通りとなります。

<1日目>
日本の極右が尖閣諸島に日本国旗を立てたことに対し、中国が艦船を派遣して日本の活動家を拘束する。

<2日目>
日本は艦船と戦闘機を尖閣諸島に派遣。日本は日米同盟の履行を求め、米国は日本本土防衛への支援と日本沿岸への潜水艦の派遣。

<3日目>
衝突発生後、中国の艦船が日本の艦船2隻を撃沈、米国潜水艦も中国の駆逐艦2隻を撃沈、死者数百名に。

<4日目>
中国のサイバー攻撃によって、カリフォルニアの送電システムが被害を受けてロサンゼルスとサンフランシスコが大停電、ナスダックのシステムが操作されて金融パニック発生。中国のミサイル攻撃で自衛隊は深刻な打撃を受ける。

<5日目>
中国は日本の海上兵力の20%を掃討し、日本の経済的な中心地に狙いを定める。米国は日本からの中国船に対する攻撃依頼を拒否、代わりに自衛隊の撤退を支援。中国は勝利宣言を実施。

ランド研究所は「尖閣諸島での日中開戦シミュレーションを公開」したのか?

ランド研究所がこのタイミングで尖閣諸島での日中開戦の机上演習を公開した理由は明白です。年初に日本政府は海上自衛隊の艦艇の尖閣諸島への派遣を中国に通達したことを示唆しました。

そこで、ランド研究所は「本気で日中開戦を懸念している」というメッセージをFP誌を通じて日本政府に伝えたということでしょう。ランド研究所は国防総省との関係も非常に深いため、上記の机上演習結果の公開は米国からの非公式なメッセージであると捉えることが妥当だと思います。

筆者は昨年末から安倍政権の行動が日中開戦を想定したものであることを指摘してきました。

日中限定戦争への道、慰安婦・日韓合意の真意を探る
 
安倍政権の活発な対中外交は極めて見事であり、おそらく米国もそれを認めるところだと思います。しかし、それらが日本の実力の過信に繋がることを米国は真剣に憂慮していると考えるべきでしょう。そして、私たち日本国民も上記の机上演習の結果を重く受け止めるべきです。

憲法改正のためには日中開戦が必要、ただしそれは手痛い敗北がセットとなるということ

改憲派で衆参の3分の2を占めることに成功したとしても、国民投票で憲法改正に対して過半数からの賛同を得ることは極めて困難だと思います。そのため、実際の憲法改正には「日中の軍事的な衝突」が現実の脅威として日本国民に意識される必要があります。したがって、日中間での限定的な戦争が行われる可能性が上昇しています。

米国も安倍政権の対中国包囲網を形成する外交的意図を意識しており、その先に存在する日本の首脳陣の決定的な間違い(日本が中国に限定戦争で勝利できる)について忠告を開始したということでしょう。

日本の自衛隊は専守防衛の立場を墨守してきた結果、ミサイル攻撃が主体となる現代戦では「戦えない軍隊」になっています。これは日本国憲法による制約として課されているものですが、その制約によって憲法改正時に発生可能性が高い日中開戦において敗北することがほぼ確定しています。

少なくともこのジレンマを解消することなく安易な日中開戦への道を開くことは、第二次大戦以来の再敗戦を望む自殺行為と言えるでしょう。安倍政権が現実を見据えた外交・安全保障政策を実行してくれることを期待します。
奴隷のしつけ方
マルクス シドニウス ファルクス
太田出版
2015-05-28




ランド 世界を支配した研究所 (文春文庫)
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文藝春秋
2011-06-10











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2016年01月17日

民進党勝利、中国民主化に向けて「日本の魅力」を取り戻そう


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wikipediaから引用 

民進党の蔡英文女史が台湾の総統選挙勝利へ

台湾の総統選挙で、民進党が勝利し、8年間続いた国民党政権に終止符が打たれました。台湾住民の政治的な勇気に賛意を送るとともに、今までよりも親日的な政権が誕生したことを大いに祝いたいと思います。

元々の民進党は台湾独立派でしたが、過去の選挙で対中経済関係を重視する台湾財界の離反により敗北し、長らく政権の座から離れていました。その結果、民進党は現状維持というマイルドな路線に舵を切ることで、台湾住民からの現実的な支持を獲得しています。

中国が民主化しない理由は「日本」の成長が停滞しているから

民進党が独立に関して消極的な姿勢に転向した理由は、日本の経済力が相対的に衰退する一方で、大陸の経済的な魅力が増加しているから、ということが言えるでしょう。

日本が失われた20年を経験している間に、台湾を取り巻く経済環境は大きく変わってしまいました。中国の一人あたりGDPは沿岸部を中心に飛躍的に増大しており、中国との貿易量は日本との取引量を圧倒する状況になっています。

また、大陸においても著しい経済発展を経験した結果として、中国共産党独裁体制に関する問題は先送りまたは不問にされています。アジア最大の経済力を誇る民主主義国である日本経済が実質的に停滞した状態にあり、中国から見た場合に魅力的な政治体制のモデルとは思えないことが少なからず影響を与えているものと想定されます。

民主国家の日本が経済的に停滞している現状に鑑み、中国共産党政権下で高度経済成長を経験した中国人民は民主化という冒険的な選択肢をあえて取らないでしょう。また、台湾も日本の強力な後ろ盾が無ければ現状維持以上の選択を選ぶことは困難だと思います。

今回の台湾の政権交代は行き過ぎた国民党政権からの揺り戻しとして正しいものですが、台湾の独立、中国の民主化という見果てぬ目標からは依然として遠い状況となっています。

日清戦争後の変法運動と辛亥革命をもう一度起こすための裏付けが必要

日清戦争は、日本と中国の力関係が逆転した歴史的な事件でした。清朝側は日本よりも早く洋務運動などの経済・軍事の近代化に取り組んでいたものの、自分たちよりも遅れて改革(明治維新)に着手した日本に軍事的に敗北することになりました。

これらを受けて、清朝内では政治体制の変革そのものが必要ということになり、康有為が主導した変法運動という体制変革運動が発生しました。康有為が目指した変革とは、西欧や日本の強さを政治体制に求めるものであり、特に日本の明治維新に倣って清朝を立憲君主制国家に移行させようというものでした。もしも、康有為が改革に成功していたならば、清朝は立憲君主制に移行し、日本と同様にアジアの最大級の民主主義国になった可能性も否定できません。

その後、辛亥革命に至る過程で、日本は清朝から大量の留学生を招き入れて、清朝を打倒する中核となる結社を構成する人々を生み出しました。そして、彼らによって清朝の打倒と漢民族による共和制が掲げられて活動が行われることになりました。同じアジアに存在した新興かつ強力な日本という魅力的な国家が存在したことが同革命に与えた影響は大きかったと推量します。

政治体制は米国やソ連のように積極的に輸出しなくとも、世界各国では同時代で最も望ましい体制を模倣しようという動きが出てくるものです。現在、中国国内で民主化の動きが力を持ち得ていないことは、アジアにおける日本の停滞に起因するものと言えるでしょう。これでは、中国人民が政治的なリスクを冒してまで日本の制度を模倣しないのも無理からぬことです。

むしろ、日本側では太子党支配のような与野党の世襲支配が横行し、中国の政治の有様を日本側が模倣しつつあると言っても過言ではない状況が生まれています。日本国民は自国の民主主義の変質に対して危機意識を持つべきです。
 

日本の構造改革による再成長が東アジアに民主化をもたらす

アジアに民主化と安定化をもたらす最も良い方法は、日本が経済成長を再び取り戻して、中国人民から魅力的な国家として再評価されることです。

私たちは中国の軍事的な脅威に対して自衛力を充実させるだけでなく、お互いの国が政治体制の優劣を競い合っているという自覚をもつべきでしょう。そして、その政治体制の優劣とは経済成長の優劣によって測られるものであり、中長期的には経済力で勝利した陣営の政治体制が両国で選択されることになります。

日本人は自らの生活にのみ汲々とした政治意識の中で、金融緩和だ、財政出動だ、などと、モルヒネ経済で目の前の問題を誤魔化すことを続けています。しかし、失われた20年を続けた反省を真摯に生かし、現実の問題への対処に取り組むべきときが来ているのではないでしょうか。

アジアの人々が中国共産党のような独裁・世襲体制で過ごすことになるのか、それとも自由で民主的な国で過ごすことになるのか。日本はアジアの未来に大きな影響を及ぼす影響力がある国です。

台湾が自らの勇気を出して民進党という選択を行ったことを受けて、日本も甘ったれた経済・社会の在り方を捨てて、もう一度アジアに冠たる国家を目指して努力をすることが望まれます。






 

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2016年01月08日

国会議員失格?北朝鮮抗議決議を欠席した国会議員一覧

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2016年1月8日・参議院本会議で北朝鮮核実験抗議決議に欠席した議員一覧。山本太郎氏のように出席した上で採決を棄権する議員もどうかと思いますが、そもそも同決議に対する決議を行う本会議を「欠席」する議員は「日本国の安全保障を担う国会議員」として如何なる認識でしょうか。

ということで、下記は参議院本会議「北朝鮮核実験抗議決議」の欠席者一覧です。地元の選挙の事前運動よりも日本の国会議員としての務めを果たしてほしいものです。特に中曽根弘文議員とアントニオ猪木議員は参議院外交安全委員会所属議員であり本件について見識を問われる責任ある立場です。

欠席議員は(中にはいるかもしれませんが)、北朝鮮の水爆実験に賛成ということで良いのでしょうか???

<欠席者一覧>

<自民党>
金子原二郎、木村義雄、熊谷大、小坂憲次、鴻池祥肇、中泉松司、中曽根弘文、長谷川岳、藤川政人、古川俊治、水落敏栄、宮本周司、山崎力、山本一太、若林健太、渡辺猛之

<民主党>
足立信也、江崎孝、尾立源幸、北沢俊美、小見山幸治、桜井充、芝博一、那谷屋正義、前川清成、増子輝彦、水岡俊一

<共産党>
吉良佳子、大門実紀史

<維新・元気の会>
アントニオ猪木
 


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2016年01月05日

点と線を繋ぐ外交視点、慰安婦問題から見る東アジア情勢

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昨年末の慰安婦に関する日韓合意の背景に存在する北朝鮮問題

昨年末に行われた慰安婦に関する日韓合意の背景には、米国による意向が強く働いていたものと推測されます。上記の日韓合意について、米国側が強烈に後押しした発言を行ったことや米国内の韓国系団体に対して合意を尊重するように働きかけたことからも明らかです。

現状では韓国政府が慰安婦関連の団体を説得する重荷を背負った状況となっていますが、そもそも日本政府が訪韓する段階でこのような状況になることは目に見えていたはずであり、日本政府側だけでなく韓国政府側にも米国から会談を受けるように要望があったことは間違いないでしょう。

米国が日韓関係の修復を急いだ背景には、中国の安全保障上の脅威が高まる中で米国の同盟国同士のいがみ合いを終わらせたかったということもありますが、北朝鮮が2010年10月に36年ぶりに朝鮮労働党党大会を開催すると決めたことが大きかったと推測します。

実際、米国の世論調査でも、国際的な安全保障上の関心事として中東・テロなどと同ランクの事項として「北朝鮮問題」が上位に位置付けられることもあり、米国の空気感は北朝鮮動向についてかなり敏感だと言えるでしょう。

北朝鮮側から同大会で限定的ながらも周辺国との関係改善及び経済改革が打ち出される可能性が高いものの、北朝鮮による核実験や南北朝鮮の再接近による政治情勢の不安定化への危惧があり、大統領選挙の年と被る同党大会前に日韓の手打ちを行わせておくことは米国にとって次善の策だったと言えます。

対中包囲網の形成にまい進する安倍外交の日本

上記のような米国の意図とは別に、安倍政権は基本的な外交・安全保障政策として対中包囲網の形成にまい進しています。中国の外交的・軍事的膨張を抑え込むために、中国の周辺国(米・日・豪・印ら)との外交・安全保障関係を強化しする路線です。(安倍政権発足当初はセキュリティダイヤモンドなどという言葉で表現されました。最近は耳にしなくなりましたが。。。)

米国向けには、安保法制を通すことで同盟国としての地位を格上げし、米国議会演説や安倍談話の発表によって、安倍政権の歴史修正主義的な雰囲気を化粧することで、同国に自由主義的なイメージを浸透させました。第一次安倍政権時代での対米関係の悪化も一因となって退陣に追い込まれた反省が生かされた形です。

豪州・インド向けには、安全保障関係の強化が確認されるとともに武器輸出に関する交渉も始まっています。昨年7月には米豪の軍事演習に日本も参加して準同盟ぶりを示すとともに、10月には8年ぶりに自衛隊がインド洋での日米印の軍事演習に参加しました。ASEANに関しても東アジアサミットで中国の南シナ海問題が大きく取り上げられることになりました。

昨年10月に任官されたばかりのタカ派の外交通である河井克行首相補佐官が日米豪英印を訪問していることからも、安倍政権がセキュリティダイヤモンド構想を継続していることが伺えます。

問題となる韓国・ロシアについても、韓国については米国の意図に乗る形で慰安婦合意を行ったことで外交関係の問題を処理することに成功し、ロシアについても年頭あいさつで日ロの平和条約について安倍首相が明言するなど関係改善に向けた動きが出ています。4月に予定されている北海道の衆議院補選で新党大地が野党連合に協力しない理由は日ロの関係改善を見据えたものではないかと推測します。

以上のように、安倍政権は中国の周辺国との関係強化にほぼ成功しつつあり、対中包囲網を完成させつつあると言えるでしょう。日本の外交・安全保障環境の改善という意味では非常に望ましいものではりますが、後述の通り、要となる日本と米国では対アジア政策観が全く異なることは日本の針路に大きな爆弾を抱えることになる可能性があります。

「米国」の主要な関心は「中東」と「欧州・ロシア」であって「中国」ではない

日本の米国通とされる有識者らが書く文章を読むと、私たちは米国が東アジア情勢、特に中国の軍事的な脅威について非常に関心を持っていると思い込みがちです。しかし、これらはそれら有識者が日本での地位を確保するためのポジショントーク的な言説に過ぎず、その手の言説をばら撒く有識者の発言は信用できません。

米国の主要な外交的関心事は中東と欧州・ロシアにあります。中東に関しては、ISを巡るシリア・イラク情勢だけでなく、イランとの交渉やサウジアラビアとの関係など、米国の安全保障に致命的に関係する案件が山積みとなっています。実際に昨年末の共和党の大統領予備選挙候補者を集めた討論会では「中国」の話はほとんど行われず、話題はもっぱら「中東」「テロ」でもちきりでした。

米国にとっては欧州・ロシアも非常に重要な問題です。欧州からの対米投資はアジアからの対米投資よりも遥かに巨大であり、政治・外交に関しても老獪な欧州・ロシアは米国にとってコストがかかる相手です。特にロシアは米国を安全保障上の脅威として位置付けるなど、豊富な軍事力・外交力・エネルギーなどを背景に米国の覇権に挑戦する存在となっています。

一方、アジアは中国の軍事的な拡張は留意されるものの、米国にとっては北朝鮮の体制混乱のほうが問題視されていると言えるでしょう。中国の米国に対する挑戦は上記の2地域と比べれば表面化しておらず、米国側では「中国の台頭」として認識されています。そのため、日本・韓国・豪州などの同盟国を活用したバランスを取る政策が採用されており、中国の脅威に対して本格的にコミットする状況ではありません。これは南シナ海での航行の自由作戦が事実上の腰砕けに終わっていることからも明らかです。

そして、この米国の外交方針はオバマ政権だけでなく共和党党政権になったとしても、現状では大きな変更があるとは想定できず、米国のコミットメントは必要とするものの過大な期待を抱くことは間違っています。

噛み合わない日米の安全保障戦略、東アジアの現代史の岐路へ

上記の通り、日本と米国の安全保障戦略観は大きく異なります。ここで問題となることは、日本は主要な仮想敵として中国を認定した安全保障戦略を性急に展開しつつあるに対し、米国は中国を脅威として認識しつつも優先順位が極めて低いということです。

従来までは米国は日中の紛争に関するコミットメントについては中国を刺激しないような形での温和な表現を心がけてきていました。米国としては中東・ロシアの相手で手一杯であり、中国と事を構えるつもりはほとんどないものと思われます。

一方、日本側は対中包囲網が完成しつつある中で、中国との限定的な紛争に具体的に突入できる環境が形成されるつあります。この見通しは「憲法改正反対!」「安保反対!」というお花畑な主張ではなく、安倍政権の一連の具体的な外交・安全保障政策の結果として生まれた環境変化によるものです。

このようなズレによる齟齬がが安倍首相が航行の自由作戦に賛意を示した後、米国の及び腰の対応を見て参加を見送る穏便な発言に修正したこと等のように現実に起き始めています。

安倍政権の外交政策が成功してきた結果として、逆に日米の外交・安全保障環境の認識において噛み合わない状況が発生するという皮肉な状況が起きています。このような状況の中で、日米の外交当局者がどのような外交・安全保障に対する判断を下していくのか、我々は東アジアの現代史の岐路に差し掛かっていると言えるでしょう。




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2016年01月04日

ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(2)

ヘリテージ財団アジア情勢2015

昨日の「ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(1)」に続いて、本日は後半部分、移民、政治体制、テロ、軍事などに関するヘリテージのアジア情勢評価を見ていきます。

アジア圏から米国への合法的な移民は「中国」「インド」「フィリピン」がトップ3

直近10年間のアジアから米国への合法的な移民は中国、インド、フィリピンが圧倒的に多い状況です。これに続いて、ベトナムや韓国などが人口数に比べて多くの移民を輩出しています。

特に中国はインドを抜かしてアジア圏からの移民シェアで第1位となりました。これは米国国内での中国系移民・インド系移民の政治的な発言力が強まっていくことを意味しており、中長期的には米国の対アジア政策に影響を与えていくことになるでしょう。2016年の大統領選挙の共和党予備選挙候補者にインド系の州知事が名前を連ねていたことは米国の変化の象徴とも言えるでしょう。

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海外の移民からの本国への送金によって経済を支えている国の存在
 
海外の移民からの送金が自国における経済に大きな役割を占めているアジアの国は意外と多い状況にあります。その中で特に米国からの送金割合が多い国は、トンガ、フィリピン、キリバス、ベトナムなどであり、米国に移民を比較的多く輩出しているフィリピンやベトナムは米国に移民を輩出することで自国への送金経済を作り上げていることが分かります。

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政治的な自由や報道の自由に関して著しい格差を抱えるアジア
 
豪州や日本のような自由度が高い国々が存在している一方、中国、ラオス、北朝鮮のような自由を抑圧する国が同時に存在している点がアジア圏の特徴です。

政治的な自由に関しては確実にモンゴル、自由が進展している国も存在している国もあれば、スリランカやタイのように大幅な後退を見る国など非常に様々です。しかし、全体的には自由が拡大していることが分かります。一方、報道の自由に関しては年々悪化している国も多く、政権によるメディアへの介入が常態化している国が少なくありません。

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イスラム諸国で信教の自由が抑圧される傾向があり、中国では政府の弾圧が厳しい状況あり
 
信教の自由に関してはイスラム教が強い国々では政府による規制や社会的な敵視が強い傾向があります。マレーシアのみが政府規制が強いものの、社会的な敵視が弱い地域ということ言えるでしょう。一方で共産主義国である中国は政府による信教の自由への規制が非常に強く深刻な事態を引き起こしていること分かります。

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国家の脆弱性が高まりつつあり、政治的な不安定化が引き起こされる可能性が高い
 
アジア圏には失敗国家と堅牢な国家の2つが同時に存在していることが特徴です。アフガニスタンやパキスタンンのような非常に危機的な国家もあれば、日本やアングロサクソン諸国のような安定性の高い国家も存在しています。

国家の脆弱性が高まっている国々は北朝鮮を除けば基本的に南アジアの国々であり、何らかの拍子に国家が崩壊して政府機能がマヒする事態になる可能性が高い状況があります。ちなみに、日本も経済的な失策はここでも叩かれています。

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パキスタンはアフガニスタンよりも頻繁にテロリズムが発生している状態に
 
パキスタン、アフガニスタン、インドなどの南アジアを中心にテロが活発化している状況にあり、特に域内大国であるインドの役割が極めて大きくなってきていることが分かります。インドはテロ対策についても実績がある国であり、2015年末にインド首相がパキスタンを電撃訪問したことは非常に重要な意味があったと思われます。

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中国の軍事的な膨張に対して高まる警戒感、インドの軍事的な存在感の高まりも
 
南シナ海における中国の海洋進出が注目されていますが、それらは南シナ海の領海の主張に関して複数国が異なる意見を主張していることを確認し、その上で中国の岩礁開発や艦船の動向について注目しています。また、アジア地域を俯瞰する米軍の配置状況を確認した上で、日本と韓国の軍事基地について重要性を指摘しています。

軍拡については中国の軍事的な膨張を注目するとともに、同時にインドの軍事拡大についても注目しています。米国はアジア地域の安全保障に関する意識は危機が明確化している対ロシア・対中東などの他地域と比べて劣りがちであり、域内の軍事バランスを保つために日本側から米国のコミットメントを積極的に求めていくことが望まれます。
 
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SR-asia-update-2015-20-military_548


 SR-asia-update-2015-21-arms_548

ランド 世界を支配した研究所 (文春文庫)
アレックス アベラ
文藝春秋
2011-06-10




南シナ海: アジアの覇権をめぐる闘争史
ビル ヘイトン
河出書房新社
2015-12-25




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2015年12月31日

2016年に起きる世界的なリスクの可能性を展望する

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2015年も大晦日を迎えたため、2016年の世界情勢について展望して新年に突入したいと思います。特に来年に危機が高まるであろう国際政治の要素を10個ほどまとめてみました。

<東アジア・東南アジア>

(1)中台関係の悪化

来年1月の台湾の総統選挙において、与党・国民党の朱立倫氏、野党・民進党の蔡英文女史の争いは後者の勝利となり、焦点は民進党の立法委員選挙での過半数確保に移っています。馬英九政権がシンガポールで行った中台の首脳の接触など中国傾斜を深める中で、今年夏に訪米した際に穏健化を主張した台独派民進党の蔡英文女史の支持が広がった形です。

民進党政権でも中国との関係が急速に悪化するということは無いと思いますが、米国の東アジアの安全保障の専門家の中には中国の南シナ海への進出は偽装であり、本丸は台湾海峡にあるという意見も根強く存在しています。そして、実際に中国にとっての真剣な脅威は民主主義・台湾であり、軍事大国化した中国の核心的な利益に触れる問題は台湾海峡によって発生する可能性が高いものと思います。

(2)北朝鮮の政治混乱

米国世論調査でも北朝鮮問題は中東のISの次に来るほどの危機として認識されており、日本人にとっては常態化した北朝鮮の異常な行動も世界から見ると深刻な脅威として認識され続けています。日韓の慰安婦問題についての「最終的かつ不可逆的な合意」も米国が北朝鮮情勢について深刻な懸念を持っていることの裏返しであり、2016年党大会における新方針など同国の動きは注目し続ける必要があります。

特に同国内における中国の経済的な影響力が強まる反面、同国に対する北朝鮮の国粋派による反感が強まって大国による制御不能な状況に陥ることが懸念されます。金正日体制からの体制移行後による粛清の嵐によって政権内の一体感が弱まっていることも政治混乱の引き金になる可能性があります。

(3)日本の対中包囲政策

安倍政権誕生以来、日本はセキュリティーダイヤモンド構想などの対中包囲網を敷く外交方針を継続してきました。その結果として、米国には米国議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題の妥協、インドやオーストラリアとの軍事交流強化、南シナ海問題でのASEAN各国との連携強化、中央アジア・東南アジアへの大型の円借款、ロシアへの北方領土問題のアプローチなどが進んでいます。

その結果として、安倍政権は対中政策について強いポジションを持てる国際環境が形成されつつあり、日中両国の間で何らかの小規模な紛争が発生する可能性が増しています。日本にとって外交安全保障関係が強化されることは望ましいことですが、それによるリスクも同時に高まっていることも認識されるべきです。

(4)中国経済の国際化に伴う懸念

IMFのSDRに元が採用されたことなど、中国経済の規模拡大に合わせて国際化は急速に進みつつあります。しかし、中国の国内経済は新常態と呼ばれる中成長状況に減速し、シャドーバンキングなどによる不良債権問題は依然として片付いておらず、中国経済に致命傷を与える問題は臭いものに蓋をしたままです。

中国経済が国際化することは、昨年のバブル崩壊時に見せたような証券市場への強権的な対応などに対し、国際的なルールに従うことを求める圧力がかかることになり、政治力による金融・資本市場への統制に綻びが生じる可能性があります。経済混乱の結果として、中国の政治体制への影響や日本経済への影響も懸念されます。

<中東・中央アジア>

(5)ISの世界的な拡散に伴う危機

米国におけるホームグロウン・テロのようにSNSネットワークを通じた個人のテロリスト化はISの世界的な拡散の一つの事例となりました。また、IS占領地に存在していた大量の白紙のパスポート及びパスポート製造機によって世界中へのテロリストへの自由な移動を確保する実態が生まれています。ISの機関紙を見る限りでは日本への関心も高まっており、伊勢志摩のサミットなども厳重な警戒が求められます。

従来までは水際対策を講じられてきたテロリストへの対策が事実上不可能になる中で、各国政府は国内のリアル・ネット上のセキュリティーの強化を行う必要に迫られています。しかし、それは同時に欧米先進国で守られている人々の自由に対する侵害行為であり、自由を基調とする欧米先進国にとって社会的な自由が後退することはそれ自体が敗北であるというジレンマが生じています。

(6)サウジアラビア危機と中東の動乱化

原油価格の低下によってスンニ派の盟主であるサウジアラビアの政治経済体制に綻びが生じつつあります。王政の代替わりによって発生した権力の集中問題も問題を複雑化させています。特にサウジアラビアの東部では民主化圧力も高まりつつあり、政治体制の安定性に懸念が生じています。

また、イエメン隣接地域における反政府勢力との戦闘における敗北など、王政に忠誠を誓う軍隊の脆弱さが露呈しており、ISやアルカイダがイエメンで勢力を拡大し、中東全体ではイランが主導権を握らんとまい進する中で、サウジアラビアの安全保障面・治安面での危機が強まりつつあります。しかも、原油価格低下と終わりなきイエメンでの戦争により、サウジの16年度予算は10.5兆円の赤字となり、補助金見直しや付加価値税導入を検討する有様です。

バラマキ政策が限界をむかえつつあり、隣国との戦争が泥沼化し、国民と王族内の不満が高まりつつあるサウジアラビア。この国が混乱に陥った場合、中東地域は収拾不能な動乱に陥ることになります。そして、それは我が国が石油の三割を輸入している国を喪うと言う事を意味しているのです。

(7)中央アジアのIS化の可能性
 
タジキスタンの行方不明になっていた治安警察のテロ担当司令官がISの一員として同国大統領に宣戦布告のメッセージを伝えるなど、中東地域での激しい戦闘から逃れたIS勢力が中央アジアで新たな勢力を築く可能性が出てきています。

また、ISは9月に中国人の誘拐・殺害を行った上で、新疆ウイグル自治区に戦闘員を帰還させて蜂起を促すなど、同地域の不安定化に力を注いでいます。中国側が同自治区への弾圧を強化するほどIS側は勢いづくことは間違いなくイタチごっこの状況です。

中央アジアの不安定化に対応するため、対テロ戦争に中国が本格的に関与することが求められるようになり、国際政治の基本的な構図に変化を及ぼす可能性があります。

<欧米>

 (8)米国の指導力の低下

2016年は米国大統領選挙の年であり、レイムダック化したオバマ大統領の外交指導力が低下するため、大規模な国際環境への変化への米国の対応力が低下します。米国は既に世界の警察官としての役割を放棄し、世界中で頻発する問題に選択的介入を行う十分な能力を持っていない状況です。

米国大統領選挙は内向き志向を強める候補者らと対外関与の必要性を訴える候補者の路線闘争の状況を呈してきておりますが、オバマ大統領ではなくとも今後の指導力の低下は避けられないものと思われます。米国の同盟国は自国の外交・安全保障の在り方について再検討を行う必要性が生じています。

(9)欧州分裂・移民問題の危機 
 
人道上・経済上の問題から継続・拡大されてきた移民問題が深刻化しています。特にフランスの同時多発テロやシリア難民の増加は各国の右派政党の台頭に繋がっており排外主義の台頭が起きています。また、イギリスがEU離脱の国民投票を行う旨を発表するなど、EUの屋台骨自体が危機にさらされつつあります。

欧州は充実した社会保障制度を持っているために、自国民への社会保障を維持するために新たに受け入れる移民への反感が強まっているという、ケイジアン的な発想による新しい排外主義の形が出現しています。EU分裂や移民問題の危機は、政治経済体制の新しいパラダイムを見出す上で注目に値します。

(10)サイバー空間における攻撃の深刻化
 
サイバー空間における米中の摩擦が深刻化しており、実質的な紛争状態になりつつあります。特に、米国共和党は中国からのサイバー攻撃に非常に大きな懸念を示しており、共和党が大統領選挙に勝利することになれば同問題は大きな外交テーマとして取り上げられていくことになるでしょう。

また、日本はアノニマスによって厚生労働省や首相HPがダウンさせられるなど、サイバーセキュリティー環境が極めて脆弱であり、来年の伊勢志摩サミットに際して何らかのサイバーセキュリティー上の問題が発生する可能性が高く、セキュリティー体制の早急な強化が必要です。今後は、大規模な国際会議などの開催国の要件としてサイバーセキュリティーへの対応力などが一層求められることになるでしょう。





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yuyawatase at 13:12|PermalinkComments(0)

2015年12月29日

なぜ、新党大地は野党統一候補に協力しないのか?

鈴木宗男
Wikipediaより引用

北海道新聞が報道した安倍首相と新党大地・鈴木宗男氏の会談の意図

新党大地・鈴木代表、首相と意見交換 来年の選挙に向け(北海道新聞)という地味なニュースが報道されました。しかし、これは今後の政局だけでなく、日本の針路を決める決定的な会合の一つになるものと思います。報道内容は下記の通り。

「安倍晋三首相は28日、首相官邸で新党大地の鈴木宗男代表と約40分間会談し、来年4月の衆院道5区(札幌市厚別区、石狩管内)補欠選挙や来夏の参院選などについて意見交換した。関係者によると、首相は鈴木氏に「北海道では大地が影響力を持っている。鈴木氏はキーマンだ」と述べ、大地の動向を注視していく考えを示した。」

「これに対し鈴木氏は、共産党が加わる野党統一候補の擁立は支持しない考えを伝えた。日ロ関係やシリア情勢でも議論した。鈴木氏は会談後、記者団に「来年は参院選の年でもあり、首相は自身の考えを披露された。私は聞き役だった」と述べた。」

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

北海道衆議院小選挙第5区における新党大地の集票力は約24,000票と推定されます。この数字は新党大地が2013年参議院議員選挙で同選挙区から比例票を獲得した票を基に算出しています。

直近の小選挙区選挙の結果は、

町村信孝 (自由民主党)131,394票、勝部賢志(民主党)94,975票、鈴木龍次(日本共産党)31,523票であり、単純な票の出方で考えると、野党連合候補者にとっては新党大地24,000票は勝敗を左右するレベルのものだと言えるでしょう。

実際には与党側は町村氏が娘婿への代替わり、野党側は共産党との協力の是非という難しい問題を孕んでいるため、上記の数字の通りの結果にはならないでしょうが、それにしても新党大地の力は無視できないものでしょう。

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

ところで、野党連合候補者が来年予定されている補欠選挙で、反安保というピンとがずれた選挙争点を掲げることが予想されるため、安倍政権側にとっては新党大地が野党連合候補者に協力しないことは、最後の詰めの一手に過ぎないものと思います。また、従来までの新党大地の動向に鑑みるに、安倍政権と協力する理由も特に見当たりません。

新党大地に対して提示した安倍政権の真の狙いは北方領土問題の解決ということになるでしょう。それに伴い北海道経済は対ロ関係で大きなメリットを得るものと思います。安倍政権は「中国以外」の全ての周辺国との間で「手打ち」を行うことで、対中関係に関して強硬姿勢を取れる環境を構築しています。

米国には米国上下両院議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題への妥協、東南アジアは援助と引き換えとした南シナ海での東アジアサミットでの懸念表明、インド・中央アジア諸国への巨額の円借款などの援助など、安倍政権は中国包囲網を形成するための外交努力を行ってきました。その仕上げがロシアとの北方領土問題解決と平和条約の締結ということになります。

先日の記事(日中限定戦争への道、慰安婦合意の真意を探る)で安倍政権の慰安婦合意について筆者の推測を書きましたが、安倍政権の外交政策及び憲法改正への段取りは最後の詰めの段階に入ったと言えます。

安倍政権は良い意味でも悪い意味でも政局・内政・外交がリンクした優れた戦略的な政権運営を行っている強靭な政権です。従来までの日本の政権とは全く異なる政権であるという解釈を行った上で、その政権運営の是非を論じることが重要です。時代遅れの右派・左派の双方の論評は論壇の座を退くべきだと思います。




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yuyawatase at 21:00|PermalinkComments(0)

2015年12月28日

日中限定戦争への道、慰安婦・日韓合意の真意を探る

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日韓の不可解な慰安婦に関する合意、突然の年内決着の思惑とは何か

タカ派で知られる安倍政権が年の瀬に突如として実行した岸田外相の訪韓と慰安婦問題における大幅な妥協は何を意味するのでしょうか。そして、慰安婦問題の立ち合い人として米国を据えた意味はどこにあるのでしょうか。

安倍政権の日韓合意に込めた意図は米国などの国際世論に「日本の正当性」をアピールすることにあります。

同政権は米国議会における演説などでも歴史修正主義的な内容を一切含まず、夏の談話についても文言を工夫して戦後民主主義・自由主義陣営に属するイメージづくりに励んできました。そして、従来までの慰安婦に関する政府主張を顧みない今回の日韓合意は安倍政権の対外的なイメージを決定付けるものです。

安倍政権が国内から一定の失望を受けながらも国際的にタカ派のイメージを放棄する理由は何でしょうか。能あるタカは爪を隠すという諺もありますが、筆者は安倍政権の真の狙いは全く別のところにあると予測します。

真の目的は「日中限定戦争」のための環境整備ではないのか?

筆者は安倍政権の真の目的は、日中限定戦争のための環境整備、ではないかと推測します。国際的な世論環境において、発足当初の安倍政権は中韓の宣伝によって非常にタカ派色が強い政権として認知されていました。

しかし、安倍政権の対米配慮姿勢の徹底、そして中国を取り囲むような対外援助増加を実行してきた結果、安倍政権に対する国際的な世論の風当たりは弱まり、むしろ中国の海洋覇権主義に対する懸念が高まりつつあります。

米国本国は東アジア・東南アジアの政治情勢、特に対中関係は関心が強くない状況ではありますが、全体的な空気感として米国の中国側に傾いていた国際世論の流れをかなり押し戻したものと思います。

仮に日中による尖閣諸島などで限定的な戦争(紛争)が発生した場合、日本が中国に対して優勢な状況を形成できれば米国が日本側で仲裁に入る環境が既に整備されてきています。その中で今回の日韓合意によって日中が限定的な戦争状態に突入するためのツメの作業に入ったと言えるでしょう。

憲法改正のための限定戦争という本末転倒な事態が発生する可能性

筆者が日中が限定的戦争またはそれに近い状態に突入する可能性が高いと見ている理由は、安倍政権の政策目標が「憲法改正」にあると看做しているからです。

大規模な金融緩和や消費増税の先送りなどの経済政策は支持率上昇のためのものであり、安倍政権にとってはそれ以上のものではないものと推測します。そのため、第三の矢である最も重要な規制緩和は現在までほとんど実施されておらず、円安による株高誘導や企業業績のかさ上げなどのモルヒネ的な経済政策が実行されている状況があります。

安倍政権が長期政権を目指す場合、安倍首相が本年行われた日本会議に送ったビデオメッセージの内容通り、憲法改正を政治日程に組み込むことが自然な流れとなります。

来年の参議院議員選挙において、消費増税の先送りを掲げて民主党などの改憲反対勢力を一掃した上で、日中の限定戦争ないしそれに近い状態を創り出すことができれば、憲法改正に向けた世論環境を創り出すことができます。

戦争というものは憲法が改正したから発生するものではなく、両国の指導者が意思を持って軍事力を行使することで始まります。来年11月米国大統領選挙の後の2017年が極めて危険だと思います。

筆者は上記の状況が発生することを支持するものではありせんが、安倍政権の一連の不可解な外交政策の積み重ねを総合的に鑑みるに、一つのシナリオとして十分な妥当性があるものと予測します。




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yuyawatase at 20:46|PermalinkComments(0)

2015年12月26日

慰安婦の方が住んでいる場所に訪問した思い出とともに

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日本と韓国、それに第三国も入れて慰安婦問題を最終決着させる話が浮上

慰安婦問題について妥協するために28日にソウルで岸田外務大臣が韓国政府と会談することになったとのことです。

日本側が慰安婦の人たち向けの1億円の基金を創設することの代わりに、慰安婦問題については最終的に解決した旨を確認し、米国などの第三国にも同確認について再確認させるというもの、と報道されています。

日本側も随分思い切ったことを提案するなと驚きましたが、国内で保守的な歴史観を持っている(海外では自由主義者で通している)安倍首相だからこそできる妥協だと思います。

私自身は心情的には評価しませんが、成功すれば日本の国際的な地位を高めることにつながることになるでしょう。

学生時代にナヌムの家に行った時の思い出を思い出してみた

私自身は学生時代に慰安婦の方が集合して住まれているナヌムの家までお伺いし、慰安婦の人々の実際の様子を見てきた経験があります。

個人的な感想を申し上げるならば、極めて悲惨な人生を送られてきたのだなというところです。私は慰安婦が強制されたものであったかどうかは議論しません。それらについては歴史学者の皆さんが検討すれば良いことだと思っています。

私が悲惨だと感じたことは、訪問当時・戦後60年経っているにも関わらず、彼女たちはナヌムの家で「天皇を銃殺する絵を描かされて」過ごしていたということです。私の感想としては、日本との慰安婦問題における関係以前に、韓国政府が上記のような心の問題を抱えている慰安婦の状態を長年放置してきたことに衝撃を受けました。

本来は心理的なケアを行うことで彼女たちが少しでも幸福に暮らせるように配慮するところですが、韓国政府は「慰安婦」として政治利用し続けているために、彼女たちの人権は韓国国内で現在でも蹂躙され続けているように感じました。

日本政府は慰安婦のための基金を設置するべきなのだろうか?

安倍政権が慰安婦問題の解決に動き始めた理由は、米国議会演説などで自由主義的な演説を行った安倍首相による中韓に対する対米外交の盛り返し、というところでしょうが、オセロゲームのような発想で触れてよい問題なのかどうか、イマイチ納得できない問題のように感じます。

日本政府が慰安婦のための基金を設置するべきかと言えば、私の回答は日本政府として基金を設置するべきではないというものです。

むしろ、戦前の歴史とともに戦後に韓国政府が彼女たちをどのように扱ってきたのか、両者の歴史をしっかりと解明することが重要だと思います。そして、全ての歴史を明らかにした上で、慰安婦の方々に対して何らかの思うところがある方々は自発的な寄付を提供するべきでしょう。

私自身は慰安婦の人々に対する自発的な寄付には賛成です。彼女たちが、従軍慰安婦であったか否か、に関わらず、歴史の被害者として人生を過ごした人々への憐憫の情を持つ人は居ても良いからです。

彼女たちは日韓の歴史が作り出した「慰安婦」という名前の政治被害者であり、日本をバッシングするための走狗となるしか生きる道が無かったからです。自らの人生の自由を失って一生を政治の道具として捧げた人々に憐れみを覚えます。






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yuyawatase at 12:00|PermalinkComments(0)