アジア(中国・韓国)

2017年04月18日

今、北朝鮮を巡って本当に起きていることは何か

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(北朝鮮利権を持つ江沢民派、序列3位・張徳江)

朝鮮半島情勢を巡る米中関係の多面的な考察が必要

北朝鮮のミサイル実験が失敗し、朝鮮半島情勢に関する過熱報道がやや沈静化しつつあります。

元々安全保障筋では北朝鮮を攻撃する際の戦力は最低でも空母三隻と目されており、ロナルド・レーガンは横須賀で整備中、ニミッツは太平洋の何処、カール・ビンソンが向かっているのみ(実際にはダラダラと航海中)という状況なので、4月中旬にトランプ側から仕掛ける可能性は極めて低いものと判断できました。米空母の場所は公開情報からある程度得られるため、一部報道は朝鮮半島近海に存在すらしていない空母による攻撃を散々煽り立てていたに過ぎなかったことになります。

在日米海軍司令部が「激おこ」の件について

今後、北朝鮮が核実験とミサイル再発射した上で米軍が十分に北朝鮮を攻撃できる体制が整備された場合はトランプ政権による攻撃の可能性がありますが、現状ではその見方もあまり有力ではないものと思われます。

北朝鮮情勢の緊迫は中国国内での政争の影響を受けたもの

北朝鮮情勢の緊迫は中国国内での政争を受けたものです。中国では秋の党大会に向けて権力集約に邁進する習近平派とそれに対立する江沢民派の政治闘争が苛烈化しています。

北朝鮮に関する利権は中国共産党序列第3位・張徳江が有しています。同氏は江沢民派に属する人物であり、既得権を守るために金正恩体制の事実上の擁護者となっています。

習近平は共産党内の高位のポストに江沢民派を残すことは避けたいため、反腐敗闘争の名目で次々と江沢民派から利権をはく奪して粛清を行っています。ただし、張徳江が掌握する北部軍区に関しては、現在まではむしろ焼け太りさせただけで手を付けることができていませんでした。

そのため、トランプが習近平に求める北朝鮮と中国の取引に関する規制の強化は、習近平にとっても政敵にダメージを当たる願ったりかなったりのものと言えます。トランプは北朝鮮への対応強化を習近平に求めることで、習近平の国内闘争を間接的に支援している状況となっています。

米国側が実施している北朝鮮に対する圧力をかける作業は、中国国内における政争で習近平を優位に立たせるものであり、習近平もそれが分かっているので米国からの無理難題を受け入れているものと推測されます。

一方、金正恩側は現在の緊張状態が高まる以前から、自らの中国側のパイプが政治的危機に瀕していることは理解しており、習近平側のカードとなる金正男暗殺などを含めて自らの地位を脅かす可能性がある要素を排除し、周辺国に対する存在感を示すデモンストレーションを継続しています。

北朝鮮に関する中国側の利権の切り替えがスムーズに進むのか
 
今後の北朝鮮情勢は、習近平と張徳江の闘争の軍配がどちらに上がるか、という点に注目する必要があります。

習近平が勝利した場合、習近平‐金正恩間に新しい利権関係が形成されるのか、それとも習近平が金正恩体制を自らの都合が良い体制に転換させるのか、その後の状況は流動的なものになるのではないかと想定されます。また、張徳江が勝利した場合、既存の金正恩と中国側の利権が温存される形となり、金正恩体制は温存される、現状の維持の状況がそのまま継続することが想定されます。

トランプは今のところ北朝鮮を巡るゲームについては、習近平側が勝つと見込んで勝負を張った状況となっています。

トランプ政権は北朝鮮情勢に対して様々なメッセ―ジを発していますが、それは上記の環境を前提とした上で判断していくことが重要です。米中間では様々なディールが行わていくことになるでしょうが、トランプ・習近平の関係は厳しい注文を付け合いながらも、実際には今後更に接近していくことが予想されます。

蚊帳の外に置かれた日本外交、根本的な外交戦略の見直しが必要

上記のような米中間でのディールが事実上行われている中で、日本は北朝鮮情勢に関して完全に受け身の状況となっています。北朝鮮が暴発する可能性はゼロではなく、その際に危機に瀕するのは日本と韓国であり、米中の大国間外交の後塵を黙って拝していることはリスクしかありません。

また、筆者が以前から指摘している通り、トランプ政権は東アジアについては中国を中心とした二重外交を仕掛ける可能性が高く、現実に、トランプ・習近平は急接近しながら、同盟国にはペンス副大統領が訪問してお茶を濁す対応が行われています。

トランプの対中国政策(1)「揺さぶり」と「妥協」
トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性

たしかに、北朝鮮問題は安全保障上のリスクであり、日米が共同して対応することは当然のことです。しかし、日本にとっては北朝鮮のリスクは以前から顕在化していたものでしかありません。日本にとっての真のリスクは北朝鮮の事実上の後ろ盾になり、東アジアにおける軍事的脅威である中国の存在です。

トランプ政権は中国とのバランス関係を取る中で、日本、韓国、台湾などを変数として扱う傾向があります。このような受動的な状況から抜け出して、米国の日本へのコミットメントを厳格化していくために、米国内でのロビーイングを含めた根本的な戦略の見直しが必要です。そのためには、今東アジアで何が起きているのか、という認識を持つことは大前提となることでしょう。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年04月13日

在日米海軍司令部が「激おこ」の件について

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(在日米海軍司令部FBより引用)

「トランプによる北朝鮮攻撃」を煽る過熱報道に在日米海軍司令部が激おこ

日本の過熱する「トランプによる北朝鮮攻撃」報道の煽りを受けて、在日米海軍司令部が激おこになりました。

今回はテレビ神奈川が米軍に何の確認もせずに横須賀基地が地域交流行事を中止してロナルド・レーガンが北朝鮮に向けた出航準備を急ピッチで進めているというデマを流したものを受けたものとになります。

 https://www.facebook.com/CNFJ.Japanese/posts/1835356033395179?pnref=story

<下記全文>
4月11日にテレビ神奈川で放送された、米海軍横須賀基地で4月19日に予定されていた日米地域交流行事が中止されたことに関するニュースに対する、在日米海軍司令部の見解をお伝えします。
なお、米海軍では通常、将来的な運用スケジュール等については言及しませんが、今回は影響が大きかったため、特別に予定についてお話させていただきました。
**********
【4月19日に米海軍横須賀基地で予定されていた日米交流行事の中止に関して、誤解を招く恐れのあるテレビ神奈川のニュース報道に対する在日米海軍司令部の見解】
2017年4月11日、テレビ神奈川は「日米交流事業が中止 北朝鮮への軍事圧力影響か」と題する米海軍横須賀基地で4月19日に予定されていた日米地域交流行事が中止されたことに関するニュース(http://www.tvk-yokohama.com/tvknews/news1.php)を報道しました。記事には憶測が含まれており、Yahooニュースでも報道内容が伝えられていること(https://headlines.yahoo.co.jp/hl…)から、テレビ神奈川の視聴者、Yahooニュースの読者、ひいては日本国民の皆様の誤解と不安を招き、誤った情報を与える恐れがあります。
4月19日に予定されていた、日米交流行事の中止は、テレビ神奈川が憶測で報道したような世界情勢とは全く関係なく、ひとえに予定されている副大統領の訪問に伴うものです。ホワイトハウス報道室が先日発表した通り(https://www.whitehouse.gov/…/vice-president-mike-pence-trav…)、次週、ペンス副大統領は、現在米海軍横須賀基地に係留されている空母ロナルド・レーガンを訪問する予定となっております。そのため、今回の日米交流行事はやむなく中止とさせていただきました。
テレビ神奈川はなぜ今回の地域交流行事中止の理由に関し、米海軍に問い合わせることすらせず、憶測でセンセーショナルに世界情勢と結び付け、無責任な報道をされたのでしょうか?米海軍に事実やコメントを求めることなく、テレビ神奈川がこのような憶測の報道をされたことは非常に残念です。今回の交流行事の中止は、副大統領の訪問に伴うものであり、無知な情報源による空想の理由ではありません。
今回は副大統領訪問というやむを得ない理由によって中止となりましたが、今後も米海軍は引き続き地元の皆様との地域交流行事を続けてまいります。
******

戦争を煽り立てるメディア、冷静な視点が必要な状態に

世界中が地政学リスクに対して敏感になっていることは理解できますが、日本のメディアの米軍の北朝鮮報道はあまりに苛烈になり過ぎており閉口するレベルとなっています。

イラク戦争時に米軍が動員した空母数は6隻であり、今回カール・ビンソンが向かってきたところで1隻に過ぎません。横須賀基地に停泊しているロナルド・レーガンは現在整備中であり、同空母の整備が終る目途は5月になるものと思われます。

安全保障の専門家筋では空母3隻が北朝鮮攻撃の最低ラインとされており、対北朝鮮の文脈で戦闘を開始するには現状では戦力不足の感が否めません。したがって、米軍による軍事行動の可能性はゼロではないものの、現在の状況は軍事力を使った強硬な威圧外交の段階とみなすべきでしょう。

おそらくWW2前の日本のメディアもこのような恐慌状態だったのではないかと思います。今はまだ中国も含めた外交による対北朝鮮対応の段階ですし、北朝鮮が核実験に踏み切ったとしても当面は外交対応による対処が続くものと想定されます。

むしろ、今回の件を通じて日米同盟とは何か、ということが問われている

むしろ、今回の北朝鮮への対応を見た場合、日本が完全に米中によってスポイルされている状態にあるということを深刻に捉えるべきだと思います。

在日米軍基地を多数抱える日本との話し合いはほとんど行われることもなく、北朝鮮問題は米中首脳間での話し合いによって対応が行われている状況です。両国ともに日本が眼中にないことは明らかです。

北朝鮮有事が発生した場合に甚大な被害を受ける可能性が高いのは日本と韓国ですが、それらの国々はこの地域の未来を決める重要な意思決定について何ら関与もできずに追認するだけの状況に追い込まれています。(韓国は政治混乱中なので当然ですが、日本は長期安定政権であるにも関わらずです)

日本人は首脳間でゴルフをやっただけで日米同盟は堅固な状況である、というような幻想は捨てて、米国の東アジア戦略を左右できるように米国内での影響力を持つことを目指して外交力を強化するべきです。

日米同盟は米軍の空母を整備する基地を貸与しているだけのものではなく、米国の東アジアの安全保障戦略に日本がコミットするためのものであり、日米外交に対する戦略の根本的な立て直しが必要です。



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2017年04月05日

トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性

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トランプ政権の対中国人事は「揺さぶり」と「妥協」の二面性

トランプ政権の対中国人事は、通商面・外交面で「揺さぶり」を担当する対中強硬派、そして「妥協」を担当する対中融和派に分かれています。トランプ政権の対中政策は、これらの人事に明確に反映されており、同政権のおおよその意図を推測することが可能となります。

トランプ政権の「東アジア政策」は通商・貿易、そして地域の安定性確保を目的とする

トランプ政権の東アジア政策、特に対中人事の特徴は通商関連の人事に偏向しています。そして、対中強硬派とみなされる人々も軍人ではなく、あくまでも外交政策の専門家が配置されています。

これは現実に軍事力の行使(地上軍の派兵)が始まりつつある中東方面に対し、同政権が安全保障関連の軍人・専門家を任命している状況とは明確に異なります。

一部には米中衝突を煽る論説がありますが、それはトランプ政権の面子を見る限りでは直ぐには有り得ません。また、北朝鮮への武力行使の可能性も過大評価するべきではなく、あくまでも中国に交渉を通じて対処を促すことを念頭に置いているものと推測されます。(ただし、北朝鮮側が中国の言うことを聞くかどうかは定かではありません。)

トランプ政権は中東方面での軍事力行使を行う一方、東アジアでは中国の地域大国化を事実上容認(北朝鮮への対応含む)しながら、安全保障面でのプレッシャーと通商面での交渉を両立させていく形になるものと予測されます。

対中国強硬派による「揺さぶり」、通商問題の専門家を配置、狙いは2018年中間選挙

トランプ政権は貿易赤字などの通商問題で中国に対して強硬な姿勢を取っています。特に中国との通商問題を安全保障とリンクさせて語るピーター・ナヴァロ国会通商会議議長は目立つ存在です。

ピータ・ナヴァロ議長の共和党のメインストリームである自由貿易から距離がある政治スタンスは、大統領選挙のプロセスでトランプが共和党内のリバタリアン勢力と揉めて同勢力の影響力が落ちていること、グローバリゼーション推進派の主流派の力が落ちていることなども影響しています。

その他の閣僚級の対中強硬派人事として、ウィルバー・ロス商務長官、ロバート・ライトハイザー通商代表なども挙げることが出来るでしょう。これらの人々は中国への市場開放論者であるとともに、主に中国を対象とした二国間の不公正貿易に対する厳しい姿勢を取っている人々です。

2018年の中間選挙の上院が製造業州が多いことを踏まえた場合、中国に対する通商問題に対する姿勢で強気の立場を選挙対策としても非常に良く機能することになるでしょう。

また、国家安全保障会議にも2名の対中強硬派が存在しています。

ケネス・ジャスター国際経済問題担当補佐官はその表面的な経歴からグローバリストや穏健派として語られていますが、実際には対中国強硬派です。ジャスターは第一次ブッシュ政権時代商務省次官(産業安全保障局担当)、米印戦略的パートナーシップ構想の設計者(ハイテク協力、原子力協定等推進)、対中輸出規制強化を標榜している人物です。

マット・ポッティンジャーアジア担当上級部長は、在中国時代に腐敗や環境問題を記者として追及して拘束された経験を持つ人物であり、その後海兵隊に入ってインテリジェンスの立て直しをマイケル・フリンとともにレポートにまとめた経験を持つ人物です。

さらに、政権外ではあるものの、トランプ政権を支えるシンクタンクであるヘリテージ財団は、親台湾派であり、THAADなどのミサイルディフェンスに対して積極的に取り組む傾向があります。トランプと祭英文の電話会談を仲介したシンクタンクであり、韓国へのTHAAD配置の意義について詳細なレポートを公表しています。

これらの人々は中国に直接的な軍事行動を起こすための布陣ではなく、あくまでも中国に対してプレッシャーをかけるための材料を提供する存在として機能していくことになります。

「妥協」を担当する習近平への権力集約を見越した親中派

 トランプ政権では表向きは対中強硬派を揃えている形となっていますが、実際には中国との関係が深い人々も配置されています。

トランプを取り囲む経済人の会議である大統領政策戦略フォーラムのスティーブン・シュワルツマン議長はその筆頭格と言えるでしょう。

シュワルツマンは習近平国家主席と非常に懇意であり、彼の出身大学である精華大学に多額の寄付を実施して自らの名前を冠する学院を発足させています。この際、習近平からも直々の祝辞が届いています。また、今年のダボス会議では習近平とランチミ―ティングを実施するなど、トランプの取り巻きの経済人のトップではあるものの、習近平・シュワルツマンの両者の蜜月ぶりは顕著です。

トランプが大統領選勝利早々に駐中国大使に任命したテリー・ブラウンスタッド・アイオワ州知事も習近平人脈です。ブラウンスタッドは習近平が訪米する度に接触するほど関係値が高く、両者は30年間の友好関係を持つ朋友です。習近平に権力集約が進む中で国家主席直結ルートの外交チャネルとして機能することになります。

トランプ一族も中国とは懇意な関係にあります。ジャレド・クシュナー大統領上級顧問は、中国の財閥とのビジネス関係を有しており、トランプ・祭英文の電話会談後の後処理に奔走する役割を担いました。本業の不動産業ではジャック・マーとの繋がりも有しており、トランプ・馬会談のお膳立てを行った人物です。また、実娘にはチャイナ服を着せて中国語の詩文を読ませるなど、一族ぐるみで中国への配慮を行う広報としての機能を果たしています。

ティラーソン国務長官は長官就任の際に行われる上院公聴会向けに公表した文書の中で、中国に対する問題意識を冒頭に掲げていた人物です。その内容は中国の振る舞いを脅威としつつも、中国を粘り強く交渉をしていく相手として強く認識しているものでした。また、同文書には北朝鮮問題については中国に積極的な役割を果たすことを促す論旨も含まれていました。ビジネスマンとして極めて妥当な現状認識だったと思います。

つまり、前述の閣僚級の対中強硬派とは裏腹に、大統領の意向で動く側近らは習近平や中国財界との関係を有しており、強気の交渉を裏側でいつでも手打ちを行う二重外交のための要員は揃っていることになります。

連邦議会内・共和党上院・下院の対中国政策のキーパーソン

中国に対する反中・親中の姿勢は連邦議会・共和党の内部で二重外交にあります。

共和党内で最も反中姿勢が強い連邦議員は、ダナ・ローラバッカー下院議員です。同氏はカリフォルニア州選出の下院議員であり、連邦下院外交委員会の重鎮です。トランプ政権の国務長官候補として有力な人物として名前が挙がっていた人物です。中国の人権問題について非常に強硬な姿勢を持っており、下院での中国政府の法輪功に関する人権弾圧に関する非難決議を取りまとめた経緯があります。

また、共和党内では少数派の親ロシア派としても知られており、日米露の三国による対中政策を取るべきであるという持論を有しています。そのため、トランプ政権とは極めて政策的な方向性が近いと言えるでしょう。

一方、連邦議会・共和党内で親中派として知られる人物は、ミッチ・マコーネル上院院内総務です。同氏の妻は台湾系のエレーン・チャオ(現・運輸長官)であり、東アジア地域とは深い人間関係を有しています。

チャオ一族は江沢民国家出席と一族ぐるみで仲が良く、マコーネルも現在では親中的な姿勢を取るようになっています。米国における大学での講演会で駐米中国大使と同席した際、同大使が米国による中国の法輪功に対する弾圧への批判への反論を試みた際、マコーネルはそれを黙認したまま聞いていたエピソードが有名です。

共和党は民主党と比べて親日であるかのように語られますが、それらは共和党関係の外交関係者によって日本人の国会議員や有識者が思い込まされている幻想にすぎません。現実には共和党内での対中・対日政策は振れ幅が非常に大きい状況だと言えるでしょう。

政策とは「人事」のことであり、対中政策人事の微妙な変化を観察することが大事

政策は「人」によって実行されていきます。したがって、トランプ政権の対中政策の方向性を知りたければ「人事」を見ることが大事なのです。

東アジアに精通した軍人が主要なポストに配置されていない現状では、少なくとも米国側から仕掛ける米中衝突論は非現実な想定に過ぎず、米中という二大大国の間で我々が議論するべきことは、エキセントリックな煽情論ではなく現実を踏まえた生き残りのための施策です。

次回の更新記事ではトランプ大統領当選以来の米中間でのやり取りを概観し、今後の米中関係についての分析を加えていきます。






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2017年04月02日

トランプの対中国政策(1)「揺さぶり」と「妥協」

AP
(AP)

トランプ政権の対中国政策は「揺さぶり」と「妥協」 

トランプ政権の東アジア政策、特に中国に対する政策について憶測が飛び交っています。そして、日本の有識者からはトランプ政権は対中強硬派であるとする見解も散見されます。

しかし、これらについては部分的には当たっているものの、トランプ政権の人事や行動を冷静に分析する限りは同政権を中国強硬派と断定するのは早計です。

トランプ政権は中国というプレーヤーに対して「揺さぶり」と「妥協」という交渉を行っています。

「揺さぶり」とは中国の国益に反する言動、そして「妥協」とは「揺さぶり」を引っ込めることへの対価を得ることを指します。

ただし、この「揺さぶり」は、中国からの譲歩、または日本・韓国・台湾などの米国の対中政策の変数として扱われる国々からの協力を引き出すための道具に過ぎません。実際には、「揺さぶり」は米中間での妥協、東アジア諸国からの協力、を引き出した後には一定の「妥協」による手打ちが行われてきています。

そして、この「揺さぶり」は共和党保守派の意向、「妥協」は共和党主流派の意向、という対応関係が存在しており、トランプ政権の対中政策は両派の国内政局の綱引きからの影響を受けることにもなります。したがって、トランプ政権の対中国政策を理解するためには、米国の国内政治情勢、その力関係を踏まえなくては片手落ちの状態となります。

日本人識者らは表面的な「揺さぶり」だけに注目し、徒にトランプ政権の対中政策を日本国民にミスリードしている人が多数存在しています。しかし、これらは米中関係・米国国内関係に関して理解できていない人々であり、基本的に話を真面目に聞くだけ野暮です。

そこで、本ブログでは、上記の観点を踏まえながら今後複数回に渡ってトランプ政権の対中国政策を分析し、その見通しについて予測を行っていきます。

トランプ政権の対中国政策に関する現実的な視座を持つべき

本分析はトランプ政権の対中国政策を、人事、行動、環境、の3点から解説していきます。具体論に入っていく前に、トランプ政権の対中国政策の基本的な理解について概要を整理しておきたいと思います。

筆者は米中戦争のような非現実な仮定を喧伝し、書籍の売上部数を稼ごうとする輩には嫌悪感を持っています。また、トランプ政権が無能であるという非現実な仮定についても賛同しません。

トランプ政権は「主に通商問題で有利な立場を構築するためにイデオロギーや安全保障を絡めた交渉事を行う」可能性が高い、という分析が筆者の結論です。

これは実際に配置されているトランプ政権の人事、大統領選挙から現在までの行動、そして中間選挙を見据えた米国国内の政局状況などを踏まえれば妥当なものだと思います。トランプ政権の対中国政策派国内政局の影響を受けるため、若干のブレはありますが概ね間違いないものと思います。

米国の保守派はイデオロギー的な自由主義の拡張を望んでおり、トランプ政権における外交政策においても一定のパワーを有しています。トランプは共和党内のこれらの支持基盤に配慮する必要があります。また、中国の拡張主義に対して安全保障上の懸念を示すことも必要であり、マティスをはじめとした同盟国との関係を重視する職業軍人らからの支持を得ることも重要です。

さらに、選挙の観点に立つのであれば、中国に強い態度を示すことで国内の選挙面での得点を稼ぐことを目指すことになります。こちらはナヴァロやロス、そしてバノンが志向している方向性になりますが、これは2018年の中間選挙での勝利を手にするためのデモンストレーションに過ぎないと思われます。その上で、輸出補助金問題などで中国側からの一定の譲歩を引き出すことができれば大きなポイント獲得となります。

しかし、現実には米中関係は経済面・金融面で非常に深い関係となっており、相互依存は切っても切れない状況となっています。また、中東方面などの地球上の別地域での安全保障上の課題を抱える米国は東アジアに新たな戦略正面を抱えることは困難であり、北朝鮮問題について中国の積極的な役割を求めています。これらの事象は共和党内での主流派からのトランプ政権へのプレッシャーとして働くことでしょう。

したがって、トランプ政権は中国に対して、イデオロギー・安保面での「揺さぶり」をかけることで保守派・同盟国を満足させるとともに、通商問題での強硬姿勢を示すことで選挙上の成果を上げた上で、更に中国から一定の譲歩を得ることで同国との妥協を模索する主流派を納得させる、という高度な外交戦略を実践に移すことになるでしょう。(それが成功するか否かは不透明だと言えます。)

明日以降、具体的なファクトベースでトランプ政権の対中国政権の方向性を検証していきます。

トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性 に続く。




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2016年11月15日

安倍外交・完全崩壊、運命が逆回転を始めた日

写真:覚書を交換する世耕経済産業大臣とウリュカエフ経済発展大臣
<経済産業省HP・覚書を交換する世耕経済産業大臣とウリュカエフ経済発展大臣>

北方領土交渉のキーパーソン・突然の逮捕劇が起きた!

本日ロシアの連邦捜査委員会によって、ウリュカエフ経済発展相が国営石油会社を巡る収賄容疑で身柄を拘束されました。同人物は世耕・ロシア経済分野協力担当大臣(経済産業大臣)のカウンターパートとして日ロ関係のキーパーソンとなっていた人物です。

ウリュカエフ大臣が身柄を拘束されたことで、日本側が望む北方領土交渉は完全に暗礁に乗り上げる形となり、既に約束した対ロシア経済協力の果実のみをロシア側に提供するだけ状況になる公算が高まりました。

報道ベースではあるものの、世耕大臣のコメントを見る限り、日本政府はこの事態を全く予見できていなかったのではないかと推測します。そして、この致命的な外交ミスも米国大統領選挙と密接に関係したものと言えるでしょう。

トランプ大統領で米ロ関係が改善、用済みになった日本は捨てられた形に

トランプ大統領は予てから中東地域、つまり米国にとって最も厄介な地域での対ロ協調を打ち出してきました。そして、現実にトランプ大統領が誕生した以上、当面の間は米ロ関係はオバマ政権時代と比べて友好的な関係が続くものと思われます。

一方、日本は外交的な情報能力不足から「ヒラリー大統領誕生」を前提に様々な外交交渉を進めてきたように見受けられます。ヒラリー陣営に所属していたカート・キャンベル氏が「安倍・ヒラリー会談時に日本側が意図している日ロ関係改善についての大筋を認めた」趣旨の発言をしていました。

ロシア側にとっては日ロ関係の改善は、米国によるロシア包囲網を切り抜けるための重要なカードであり、経済協力と引き換えに北方領土問題で妥協する可能性は十分にあったものと思います。

ただし、それはヒラリー政権が誕生して米国がロシアに対して引き続き厳しい立場を取り続ける可能性がある場合のケースです。

トランプ勝利が決まったことによって、米ロ関係が二国間レベルで改善してしまうことで、ロシアにとって日本の位置づけは相対的に低下することになります。そのことを端的に示した事件が上記のウリュカエフ大臣の身柄の拘束です。ウリュカエフ氏は今月予定されているAPECで世耕大臣に会う予定になっていましたが、日本側は完全に梯子を外された形になりました。

日本エスタブリッシュメントの頭の中、致命的な外交失敗を引き起こした頭の中
 
安倍政権の外交政策の基本方針は対中包囲網であったように思われます。

歴史修正主義のイメージを払拭して米国の支持を取り付け、南シナ海でASEAN諸国と結んで中国に対抗し、インドに巨額の支援を約束して抱き込む、最後に北方領土問題を前進させて、中国を四方八方から抑え込むというイメージです。

しかし、このような対中包囲網の発想は、日本のエスタブリッシュメント独特の極東の島国の外交センスでしかありません。なぜなら、世界の基本的な外交状況は中国の脅威にそれほど重きを置いていないからです。

国際政治の基本的な構図は、米ロ対立の構図、そして中東地域におけるテロとの戦いです。米国のシンクタンクの外交文書でも東アジアに触れる量の何倍もの分析がロシア・中東に対して行われています。

中国をロシアや中東よりも安全保障上の脅威として上だとみなしている米国の専門家は少数でしょう。一部の日本をヨイショしてくれるような都合が良い米国のカウンターパートから情報収集をしているから、木を見て森を見ずの外交政策が実行されてしまうのです。

そのため、対中包囲網という枠組みは、米ロが激しく対立している状況においては、ロシア側の思惑(日米同盟の切り崩し)によって有効に機能しているかのように見えましたが、実は掌の上で踊らさられていたということが言えそうです。

南シナ海においてもフィリピンをはじめとして、安倍外交が作り上げた中国封じ込めの枠組みは崩れつつあり、韓国でも政権が転覆して日韓合意のレガシーが破棄される可能性も高まっています。まさに、世界情勢は大きく変動しつつある状況です。

このように米国によるロシア包囲網の枠組みが偶然に日本の中国包囲網の枠組みとリンクしたことで、安倍外交はここまで実に見事な成果をあげてきましたが、この年末にかけて運命は逆回転の道をたどることになるでしょう。
 
外交失敗によって日本国内で政変が起きる可能性も高まった

安倍外交の失敗は日本国内における自民党内でのパワーバランスの変更を迫ることになるかもしれません。国内では民進党が非常に弱体であるため、選挙による政権交代が発生する可能性は極めて低いものと思います。

しかし、自民党内では今年の参議院議員選挙・都知事選挙を通じて反主流派の力が増加している状況があり、安倍首相をはじめとした政権主流派の影響力が外交的な失敗によって低下することで、党内のパワーバランスが崩れて政変に繋がる可能性もあるのではないかと推測します。

日ロ関係で大見得を切った安倍外交は北方領土問題で成果を挙げられるかどうかで成否が問われる状況となりました。トランプ氏の親ロ的方向性から意外と前向きに話が進む可能性もありますが、プーチン大統領が利用価値が下がった安倍首相を引き続き必要とするかどうかは分かりません。

来年のトランプ政権の本格稼働によって米国のエスタブリッシュメント人脈に依存した安倍政権の限界が更に露呈していくことなるでしょう。日本は一気に危機的な状況に立たされた状況となっています。








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2016年01月18日

日中開戦「僅か5日」で敗北、米国は尖閣諸島を見捨てる判断

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米国の権威ある外交専門誌「Foreign Policy」が尖閣諸島を舞台とした日中衝突、日米同盟の顛末についての机上演習の結果を発表しました。机上演習を行った主体は米国最有力・軍事研究所であるランド研究所となります。

FPに公開された記事はこちら

「見捨てられる日本、尖閣諸島へのコミットメントを回避する米国」

簡単に言うと、上記の机上演習の結果として、中国に日米同盟は惨敗して多大な被害を出すことが予測されるため、米国は尖閣諸島で何が起きても無視をするべき・・・、ということが提言されています。

そして、(1)同盟は戦争に引き込まれる危険なものであること、(2)日本との相互防衛条約による防衛の大半を履行することは困難であること、(3)人民解放軍の現代化によって全てのルールが変わったこと、(4)空母の脆弱性及び潜水艦の有効性が中国との戦いを深刻化させること、(5)3か国のナショナリズムの高まりによるエスカレーションによって各国の打ち手が制限されること、などが結論として得られたとしています。

今回の机上演習で特に注目に値することは、日本が中国のミサイル攻撃によって成す術もなく多大な被害を出して敗北すること、そして米国は甚大な被害が生じる日中開戦に引き込まれることを極めて懸念していること、です。

人民解放軍の軍事力の著しい進歩の結果として、「ミサイル攻撃主体の現代戦において先制攻撃能力を持たない日本は甚大な被害を出してそのまま敗北する」という衝撃のシナリオが米国最有力の軍事研究所によって検証されたことは大きな出来事だと思います。

「僅か5日間」で中国が勝利宣言、壊滅させられる日本の自衛隊

同机上演習では中国が日本の自衛隊を壊滅させて勝利宣言するまでに要する日数は「僅か5日間」とされています。ざっくりと戦況経過をまとめると下記の通りとなります。

<1日目>
日本の極右が尖閣諸島に日本国旗を立てたことに対し、中国が艦船を派遣して日本の活動家を拘束する。

<2日目>
日本は艦船と戦闘機を尖閣諸島に派遣。日本は日米同盟の履行を求め、米国は日本本土防衛への支援と日本沿岸への潜水艦の派遣。

<3日目>
衝突発生後、中国の艦船が日本の艦船2隻を撃沈、米国潜水艦も中国の駆逐艦2隻を撃沈、死者数百名に。

<4日目>
中国のサイバー攻撃によって、カリフォルニアの送電システムが被害を受けてロサンゼルスとサンフランシスコが大停電、ナスダックのシステムが操作されて金融パニック発生。中国のミサイル攻撃で自衛隊は深刻な打撃を受ける。

<5日目>
中国は日本の海上兵力の20%を掃討し、日本の経済的な中心地に狙いを定める。米国は日本からの中国船に対する攻撃依頼を拒否、代わりに自衛隊の撤退を支援。中国は勝利宣言を実施。

ランド研究所は「尖閣諸島での日中開戦シミュレーションを公開」したのか?

ランド研究所がこのタイミングで尖閣諸島での日中開戦の机上演習を公開した理由は明白です。年初に日本政府は海上自衛隊の艦艇の尖閣諸島への派遣を中国に通達したことを示唆しました。

そこで、ランド研究所は「本気で日中開戦を懸念している」というメッセージをFP誌を通じて日本政府に伝えたということでしょう。ランド研究所は国防総省との関係も非常に深いため、上記の机上演習結果の公開は米国からの非公式なメッセージであると捉えることが妥当だと思います。

筆者は昨年末から安倍政権の行動が日中開戦を想定したものであることを指摘してきました。

日中限定戦争への道、慰安婦・日韓合意の真意を探る
 
安倍政権の活発な対中外交は極めて見事であり、おそらく米国もそれを認めるところだと思います。しかし、それらが日本の実力の過信に繋がることを米国は真剣に憂慮していると考えるべきでしょう。そして、私たち日本国民も上記の机上演習の結果を重く受け止めるべきです。

憲法改正のためには日中開戦が必要、ただしそれは手痛い敗北がセットとなるということ

改憲派で衆参の3分の2を占めることに成功したとしても、国民投票で憲法改正に対して過半数からの賛同を得ることは極めて困難だと思います。そのため、実際の憲法改正には「日中の軍事的な衝突」が現実の脅威として日本国民に意識される必要があります。したがって、日中間での限定的な戦争が行われる可能性が上昇しています。

米国も安倍政権の対中国包囲網を形成する外交的意図を意識しており、その先に存在する日本の首脳陣の決定的な間違い(日本が中国に限定戦争で勝利できる)について忠告を開始したということでしょう。

日本の自衛隊は専守防衛の立場を墨守してきた結果、ミサイル攻撃が主体となる現代戦では「戦えない軍隊」になっています。これは日本国憲法による制約として課されているものですが、その制約によって憲法改正時に発生可能性が高い日中開戦において敗北することがほぼ確定しています。

少なくともこのジレンマを解消することなく安易な日中開戦への道を開くことは、第二次大戦以来の再敗戦を望む自殺行為と言えるでしょう。安倍政権が現実を見据えた外交・安全保障政策を実行してくれることを期待します。
奴隷のしつけ方
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2015-05-28




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2016年01月17日

民進党勝利、中国民主化に向けて「日本の魅力」を取り戻そう


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wikipediaから引用 

民進党の蔡英文女史が台湾の総統選挙勝利へ

台湾の総統選挙で、民進党が勝利し、8年間続いた国民党政権に終止符が打たれました。台湾住民の政治的な勇気に賛意を送るとともに、今までよりも親日的な政権が誕生したことを大いに祝いたいと思います。

元々の民進党は台湾独立派でしたが、過去の選挙で対中経済関係を重視する台湾財界の離反により敗北し、長らく政権の座から離れていました。その結果、民進党は現状維持というマイルドな路線に舵を切ることで、台湾住民からの現実的な支持を獲得しています。

中国が民主化しない理由は「日本」の成長が停滞しているから

民進党が独立に関して消極的な姿勢に転向した理由は、日本の経済力が相対的に衰退する一方で、大陸の経済的な魅力が増加しているから、ということが言えるでしょう。

日本が失われた20年を経験している間に、台湾を取り巻く経済環境は大きく変わってしまいました。中国の一人あたりGDPは沿岸部を中心に飛躍的に増大しており、中国との貿易量は日本との取引量を圧倒する状況になっています。

また、大陸においても著しい経済発展を経験した結果として、中国共産党独裁体制に関する問題は先送りまたは不問にされています。アジア最大の経済力を誇る民主主義国である日本経済が実質的に停滞した状態にあり、中国から見た場合に魅力的な政治体制のモデルとは思えないことが少なからず影響を与えているものと想定されます。

民主国家の日本が経済的に停滞している現状に鑑み、中国共産党政権下で高度経済成長を経験した中国人民は民主化という冒険的な選択肢をあえて取らないでしょう。また、台湾も日本の強力な後ろ盾が無ければ現状維持以上の選択を選ぶことは困難だと思います。

今回の台湾の政権交代は行き過ぎた国民党政権からの揺り戻しとして正しいものですが、台湾の独立、中国の民主化という見果てぬ目標からは依然として遠い状況となっています。

日清戦争後の変法運動と辛亥革命をもう一度起こすための裏付けが必要

日清戦争は、日本と中国の力関係が逆転した歴史的な事件でした。清朝側は日本よりも早く洋務運動などの経済・軍事の近代化に取り組んでいたものの、自分たちよりも遅れて改革(明治維新)に着手した日本に軍事的に敗北することになりました。

これらを受けて、清朝内では政治体制の変革そのものが必要ということになり、康有為が主導した変法運動という体制変革運動が発生しました。康有為が目指した変革とは、西欧や日本の強さを政治体制に求めるものであり、特に日本の明治維新に倣って清朝を立憲君主制国家に移行させようというものでした。もしも、康有為が改革に成功していたならば、清朝は立憲君主制に移行し、日本と同様にアジアの最大級の民主主義国になった可能性も否定できません。

その後、辛亥革命に至る過程で、日本は清朝から大量の留学生を招き入れて、清朝を打倒する中核となる結社を構成する人々を生み出しました。そして、彼らによって清朝の打倒と漢民族による共和制が掲げられて活動が行われることになりました。同じアジアに存在した新興かつ強力な日本という魅力的な国家が存在したことが同革命に与えた影響は大きかったと推量します。

政治体制は米国やソ連のように積極的に輸出しなくとも、世界各国では同時代で最も望ましい体制を模倣しようという動きが出てくるものです。現在、中国国内で民主化の動きが力を持ち得ていないことは、アジアにおける日本の停滞に起因するものと言えるでしょう。これでは、中国人民が政治的なリスクを冒してまで日本の制度を模倣しないのも無理からぬことです。

むしろ、日本側では太子党支配のような与野党の世襲支配が横行し、中国の政治の有様を日本側が模倣しつつあると言っても過言ではない状況が生まれています。日本国民は自国の民主主義の変質に対して危機意識を持つべきです。
 

日本の構造改革による再成長が東アジアに民主化をもたらす

アジアに民主化と安定化をもたらす最も良い方法は、日本が経済成長を再び取り戻して、中国人民から魅力的な国家として再評価されることです。

私たちは中国の軍事的な脅威に対して自衛力を充実させるだけでなく、お互いの国が政治体制の優劣を競い合っているという自覚をもつべきでしょう。そして、その政治体制の優劣とは経済成長の優劣によって測られるものであり、中長期的には経済力で勝利した陣営の政治体制が両国で選択されることになります。

日本人は自らの生活にのみ汲々とした政治意識の中で、金融緩和だ、財政出動だ、などと、モルヒネ経済で目の前の問題を誤魔化すことを続けています。しかし、失われた20年を続けた反省を真摯に生かし、現実の問題への対処に取り組むべきときが来ているのではないでしょうか。

アジアの人々が中国共産党のような独裁・世襲体制で過ごすことになるのか、それとも自由で民主的な国で過ごすことになるのか。日本はアジアの未来に大きな影響を及ぼす影響力がある国です。

台湾が自らの勇気を出して民進党という選択を行ったことを受けて、日本も甘ったれた経済・社会の在り方を捨てて、もう一度アジアに冠たる国家を目指して努力をすることが望まれます。






 

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yuyawatase at 13:48|PermalinkComments(0)

2016年01月08日

国会議員失格?北朝鮮抗議決議を欠席した国会議員一覧

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2016年1月8日・参議院本会議で北朝鮮核実験抗議決議に欠席した議員一覧。山本太郎氏のように出席した上で採決を棄権する議員もどうかと思いますが、そもそも同決議に対する決議を行う本会議を「欠席」する議員は「日本国の安全保障を担う国会議員」として如何なる認識でしょうか。

ということで、下記は参議院本会議「北朝鮮核実験抗議決議」の欠席者一覧です。地元の選挙の事前運動よりも日本の国会議員としての務めを果たしてほしいものです。特に中曽根弘文議員とアントニオ猪木議員は参議院外交安全委員会所属議員であり本件について見識を問われる責任ある立場です。

欠席議員は(中にはいるかもしれませんが)、北朝鮮の水爆実験に賛成ということで良いのでしょうか???

<欠席者一覧>

<自民党>
金子原二郎、木村義雄、熊谷大、小坂憲次、鴻池祥肇、中泉松司、中曽根弘文、長谷川岳、藤川政人、古川俊治、水落敏栄、宮本周司、山崎力、山本一太、若林健太、渡辺猛之

<民主党>
足立信也、江崎孝、尾立源幸、北沢俊美、小見山幸治、桜井充、芝博一、那谷屋正義、前川清成、増子輝彦、水岡俊一

<共産党>
吉良佳子、大門実紀史

<維新・元気の会>
アントニオ猪木
 


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yuyawatase at 22:39|PermalinkComments(0)

2016年01月05日

点と線を繋ぐ外交視点、慰安婦問題から見る東アジア情勢

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昨年末の慰安婦に関する日韓合意の背景に存在する北朝鮮問題

昨年末に行われた慰安婦に関する日韓合意の背景には、米国による意向が強く働いていたものと推測されます。上記の日韓合意について、米国側が強烈に後押しした発言を行ったことや米国内の韓国系団体に対して合意を尊重するように働きかけたことからも明らかです。

現状では韓国政府が慰安婦関連の団体を説得する重荷を背負った状況となっていますが、そもそも日本政府が訪韓する段階でこのような状況になることは目に見えていたはずであり、日本政府側だけでなく韓国政府側にも米国から会談を受けるように要望があったことは間違いないでしょう。

米国が日韓関係の修復を急いだ背景には、中国の安全保障上の脅威が高まる中で米国の同盟国同士のいがみ合いを終わらせたかったということもありますが、北朝鮮が2010年10月に36年ぶりに朝鮮労働党党大会を開催すると決めたことが大きかったと推測します。

実際、米国の世論調査でも、国際的な安全保障上の関心事として中東・テロなどと同ランクの事項として「北朝鮮問題」が上位に位置付けられることもあり、米国の空気感は北朝鮮動向についてかなり敏感だと言えるでしょう。

北朝鮮側から同大会で限定的ながらも周辺国との関係改善及び経済改革が打ち出される可能性が高いものの、北朝鮮による核実験や南北朝鮮の再接近による政治情勢の不安定化への危惧があり、大統領選挙の年と被る同党大会前に日韓の手打ちを行わせておくことは米国にとって次善の策だったと言えます。

対中包囲網の形成にまい進する安倍外交の日本

上記のような米国の意図とは別に、安倍政権は基本的な外交・安全保障政策として対中包囲網の形成にまい進しています。中国の外交的・軍事的膨張を抑え込むために、中国の周辺国(米・日・豪・印ら)との外交・安全保障関係を強化しする路線です。(安倍政権発足当初はセキュリティダイヤモンドなどという言葉で表現されました。最近は耳にしなくなりましたが。。。)

米国向けには、安保法制を通すことで同盟国としての地位を格上げし、米国議会演説や安倍談話の発表によって、安倍政権の歴史修正主義的な雰囲気を化粧することで、同国に自由主義的なイメージを浸透させました。第一次安倍政権時代での対米関係の悪化も一因となって退陣に追い込まれた反省が生かされた形です。

豪州・インド向けには、安全保障関係の強化が確認されるとともに武器輸出に関する交渉も始まっています。昨年7月には米豪の軍事演習に日本も参加して準同盟ぶりを示すとともに、10月には8年ぶりに自衛隊がインド洋での日米印の軍事演習に参加しました。ASEANに関しても東アジアサミットで中国の南シナ海問題が大きく取り上げられることになりました。

昨年10月に任官されたばかりのタカ派の外交通である河井克行首相補佐官が日米豪英印を訪問していることからも、安倍政権がセキュリティダイヤモンド構想を継続していることが伺えます。

問題となる韓国・ロシアについても、韓国については米国の意図に乗る形で慰安婦合意を行ったことで外交関係の問題を処理することに成功し、ロシアについても年頭あいさつで日ロの平和条約について安倍首相が明言するなど関係改善に向けた動きが出ています。4月に予定されている北海道の衆議院補選で新党大地が野党連合に協力しない理由は日ロの関係改善を見据えたものではないかと推測します。

以上のように、安倍政権は中国の周辺国との関係強化にほぼ成功しつつあり、対中包囲網を完成させつつあると言えるでしょう。日本の外交・安全保障環境の改善という意味では非常に望ましいものではりますが、後述の通り、要となる日本と米国では対アジア政策観が全く異なることは日本の針路に大きな爆弾を抱えることになる可能性があります。

「米国」の主要な関心は「中東」と「欧州・ロシア」であって「中国」ではない

日本の米国通とされる有識者らが書く文章を読むと、私たちは米国が東アジア情勢、特に中国の軍事的な脅威について非常に関心を持っていると思い込みがちです。しかし、これらはそれら有識者が日本での地位を確保するためのポジショントーク的な言説に過ぎず、その手の言説をばら撒く有識者の発言は信用できません。

米国の主要な外交的関心事は中東と欧州・ロシアにあります。中東に関しては、ISを巡るシリア・イラク情勢だけでなく、イランとの交渉やサウジアラビアとの関係など、米国の安全保障に致命的に関係する案件が山積みとなっています。実際に昨年末の共和党の大統領予備選挙候補者を集めた討論会では「中国」の話はほとんど行われず、話題はもっぱら「中東」「テロ」でもちきりでした。

米国にとっては欧州・ロシアも非常に重要な問題です。欧州からの対米投資はアジアからの対米投資よりも遥かに巨大であり、政治・外交に関しても老獪な欧州・ロシアは米国にとってコストがかかる相手です。特にロシアは米国を安全保障上の脅威として位置付けるなど、豊富な軍事力・外交力・エネルギーなどを背景に米国の覇権に挑戦する存在となっています。

一方、アジアは中国の軍事的な拡張は留意されるものの、米国にとっては北朝鮮の体制混乱のほうが問題視されていると言えるでしょう。中国の米国に対する挑戦は上記の2地域と比べれば表面化しておらず、米国側では「中国の台頭」として認識されています。そのため、日本・韓国・豪州などの同盟国を活用したバランスを取る政策が採用されており、中国の脅威に対して本格的にコミットする状況ではありません。これは南シナ海での航行の自由作戦が事実上の腰砕けに終わっていることからも明らかです。

そして、この米国の外交方針はオバマ政権だけでなく共和党党政権になったとしても、現状では大きな変更があるとは想定できず、米国のコミットメントは必要とするものの過大な期待を抱くことは間違っています。

噛み合わない日米の安全保障戦略、東アジアの現代史の岐路へ

上記の通り、日本と米国の安全保障戦略観は大きく異なります。ここで問題となることは、日本は主要な仮想敵として中国を認定した安全保障戦略を性急に展開しつつあるに対し、米国は中国を脅威として認識しつつも優先順位が極めて低いということです。

従来までは米国は日中の紛争に関するコミットメントについては中国を刺激しないような形での温和な表現を心がけてきていました。米国としては中東・ロシアの相手で手一杯であり、中国と事を構えるつもりはほとんどないものと思われます。

一方、日本側は対中包囲網が完成しつつある中で、中国との限定的な紛争に具体的に突入できる環境が形成されるつあります。この見通しは「憲法改正反対!」「安保反対!」というお花畑な主張ではなく、安倍政権の一連の具体的な外交・安全保障政策の結果として生まれた環境変化によるものです。

このようなズレによる齟齬がが安倍首相が航行の自由作戦に賛意を示した後、米国の及び腰の対応を見て参加を見送る穏便な発言に修正したこと等のように現実に起き始めています。

安倍政権の外交政策が成功してきた結果として、逆に日米の外交・安全保障環境の認識において噛み合わない状況が発生するという皮肉な状況が起きています。このような状況の中で、日米の外交当局者がどのような外交・安全保障に対する判断を下していくのか、我々は東アジアの現代史の岐路に差し掛かっていると言えるでしょう。




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yuyawatase at 13:23|PermalinkComments(0)

2016年01月04日

ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(2)

ヘリテージ財団アジア情勢2015

昨日の「ヘリテージ財団から見た2015年アジア情勢の客観的評価(1)」に続いて、本日は後半部分、移民、政治体制、テロ、軍事などに関するヘリテージのアジア情勢評価を見ていきます。

アジア圏から米国への合法的な移民は「中国」「インド」「フィリピン」がトップ3

直近10年間のアジアから米国への合法的な移民は中国、インド、フィリピンが圧倒的に多い状況です。これに続いて、ベトナムや韓国などが人口数に比べて多くの移民を輩出しています。

特に中国はインドを抜かしてアジア圏からの移民シェアで第1位となりました。これは米国国内での中国系移民・インド系移民の政治的な発言力が強まっていくことを意味しており、中長期的には米国の対アジア政策に影響を与えていくことになるでしょう。2016年の大統領選挙の共和党予備選挙候補者にインド系の州知事が名前を連ねていたことは米国の変化の象徴とも言えるでしょう。

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海外の移民からの本国への送金によって経済を支えている国の存在
 
海外の移民からの送金が自国における経済に大きな役割を占めているアジアの国は意外と多い状況にあります。その中で特に米国からの送金割合が多い国は、トンガ、フィリピン、キリバス、ベトナムなどであり、米国に移民を比較的多く輩出しているフィリピンやベトナムは米国に移民を輩出することで自国への送金経済を作り上げていることが分かります。

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政治的な自由や報道の自由に関して著しい格差を抱えるアジア
 
豪州や日本のような自由度が高い国々が存在している一方、中国、ラオス、北朝鮮のような自由を抑圧する国が同時に存在している点がアジア圏の特徴です。

政治的な自由に関しては確実にモンゴル、自由が進展している国も存在している国もあれば、スリランカやタイのように大幅な後退を見る国など非常に様々です。しかし、全体的には自由が拡大していることが分かります。一方、報道の自由に関しては年々悪化している国も多く、政権によるメディアへの介入が常態化している国が少なくありません。

SR-asia-update-2015-11-freedom_548


SR-asia-update-2015-12-press_548

イスラム諸国で信教の自由が抑圧される傾向があり、中国では政府の弾圧が厳しい状況あり
 
信教の自由に関してはイスラム教が強い国々では政府による規制や社会的な敵視が強い傾向があります。マレーシアのみが政府規制が強いものの、社会的な敵視が弱い地域ということ言えるでしょう。一方で共産主義国である中国は政府による信教の自由への規制が非常に強く深刻な事態を引き起こしていること分かります。

SR-asia-update-2015-13-relig-persec_548


国家の脆弱性が高まりつつあり、政治的な不安定化が引き起こされる可能性が高い
 
アジア圏には失敗国家と堅牢な国家の2つが同時に存在していることが特徴です。アフガニスタンやパキスタンンのような非常に危機的な国家もあれば、日本やアングロサクソン諸国のような安定性の高い国家も存在しています。

国家の脆弱性が高まっている国々は北朝鮮を除けば基本的に南アジアの国々であり、何らかの拍子に国家が崩壊して政府機能がマヒする事態になる可能性が高い状況があります。ちなみに、日本も経済的な失策はここでも叩かれています。

SR-asia-update-2015-14-fragile-states_548

パキスタンはアフガニスタンよりも頻繁にテロリズムが発生している状態に
 
パキスタン、アフガニスタン、インドなどの南アジアを中心にテロが活発化している状況にあり、特に域内大国であるインドの役割が極めて大きくなってきていることが分かります。インドはテロ対策についても実績がある国であり、2015年末にインド首相がパキスタンを電撃訪問したことは非常に重要な意味があったと思われます。

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中国の軍事的な膨張に対して高まる警戒感、インドの軍事的な存在感の高まりも
 
南シナ海における中国の海洋進出が注目されていますが、それらは南シナ海の領海の主張に関して複数国が異なる意見を主張していることを確認し、その上で中国の岩礁開発や艦船の動向について注目しています。また、アジア地域を俯瞰する米軍の配置状況を確認した上で、日本と韓国の軍事基地について重要性を指摘しています。

軍拡については中国の軍事的な膨張を注目するとともに、同時にインドの軍事拡大についても注目しています。米国はアジア地域の安全保障に関する意識は危機が明確化している対ロシア・対中東などの他地域と比べて劣りがちであり、域内の軍事バランスを保つために日本側から米国のコミットメントを積極的に求めていくことが望まれます。
 
SR-asia-update-2015-17-south-china-sea_548

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 SR-asia-update-2015-21-arms_548

ランド 世界を支配した研究所 (文春文庫)
アレックス アベラ
文藝春秋
2011-06-10




南シナ海: アジアの覇権をめぐる闘争史
ビル ヘイトン
河出書房新社
2015-12-25




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