アジア(中国・韓国)
2018年01月23日
米国は一体いつ北朝鮮と戦争するのか?(笑)
米国と北朝鮮の戦争が日本国内で喧伝されて久しい状況となっています。しかし、ご案内の通り、実際には米国と北朝鮮の間の戦争は昨年中には発生しませんでしたし、年明けからは平昌五輪もあって両国の間は一時的に緊張が緩和しつつある状況となっています。
昨年から国内では北朝鮮との戦争を喧伝するほうが世間の耳目を引くため、多くの有識者とされる人々が北朝鮮有事を煽ってきました。「〇月開戦説」「クリスマス開戦」など、様々な開戦時期が宣伝されてきたものです。日本政府関係者も北朝鮮有事を煽ったほうが支持率向上に繋がるからなのか、それらと繋がりがある方々は関係者の話を真に受けて「〇月が怪しい、なぜなら・・・」という話をされることが多々あります。
筆者はヘッジファンドなどのアドバイザーを務めており、昨年中お客様から北朝鮮有事の可能性を質問される度に「全否定」してきました。たしかに、北朝鮮に対する緊張の度合いは高まっていますが、米国には開戦に至るまでのインセンティブは存在せず、東アジア地域で戦争を実行するだけの戦力が揃っていかなかったからです。
米軍の朝鮮半島周辺に常駐している空母数は横須賀港に寄港している1隻のみとなっています。イラク戦争当時に動員された空母数は6隻であり、イラクよりも軍事的リスクが高い北朝鮮との有事を想定した場合、米国は対イラク並みまたはそれ以上の戦力を投下する必要があります。したがって、最低でも3~4隻の空母は必要であり、または病院船も含めた戦闘態勢の準備が欠かせません。しかし、昨年はトランプの東アジア歴訪時以外にそれだけの戦力が十分な形で揃うことはありませんでした。
また、米国内では大枠としての北朝鮮への軍事行動への支持は高まりつつあるものの、米軍単独での軍事行使への支持は必ずしも高くありません。したがって、米国が実際に軍事行使を行う前提として周辺国との協力関係を構築することが重要となります。しかし、韓国の文大統領は親北朝鮮姿勢を鮮明としており、そして戦争の一歩手前の措置となる海上封鎖による臨検についても日本は現行の安保法制では協力できません。まして、中ロについては米国の意図通りの行動を行う可能性は極めて低いものと思われます。米国は徐々に歩を進めつつありますが、軍事行使には超えなくてならないハードルがまだまだ残っています。
米軍の戦力投射能力に話を戻すと、米国が軍事的正面を構えることができる地域は、現行ではおそらく世界で一地域のみであり、その上で東アジアよりも中東や南米のほうが米国にとっては緊急度が高い地域となっています。特に一旦は判断が見送られた形となっていますが、イランとの核合意の見直しが5月以降に本格化した場合、彼らの外交・安全保障上の関心は中東地域に集中し、東アジア地域は後手に回ることは明らかです。したがって、平昌五輪明けの外交・安全保障上の焦点が北朝鮮に集中するかどうかも現段階では断言できません。
米国の外交・安全保障戦略は世界戦略であるため、日本人のように日米関係、米朝関係、米中関係のように二か国間関係でモノを考えることはほぼありません。全世界を相手にしている米国は、地球全体での各地域のバランスを見ながら、その地域内での勢力バランスに配慮し、その上で各国での対応を決めるという思考プロセスに基づいて対応を決定します。
したがって、米朝関係は、中東・南米・東欧・その他の地域も含めた全体戦略の一部に過ぎず、米国の対北朝鮮に関する発言や日本政府に対する発言のみを切り取って物事を理解する従来の日本人の感覚では彼らの思考枠組みについて行くことは困難です。米朝関係は世界全体の外交・安全保障の全体感に基づいて決定されるものであり、独立した変数として決定されるものではないのです。
少なくとも昨年「〇月が危ない」という話をしていた方々は「米国の思考枠組みについていけていないか」、または「北朝鮮有事を商売にしている」に過ぎず、現実にシビアな判断が求められるヘッジファンドなどのアドバイザーとしては通用しないレベルであることは明らかでしょう。
2017年08月06日
北朝鮮、トランプ政権の奥手は”海上封鎖”
北朝鮮への制裁措置には依然として猶予が残されている
北朝鮮の7月ICBM2度の発射を受けて国連安保理が全会一致で北朝鮮に対する制裁決議を採択しました。これにより、北朝鮮の主要輸出品である石炭、鉄・鉄鉱石、鉛・鉛鉱石、海産物などの輸出の例外の無い形での受入れ禁止が実施されることで北朝鮮経済に大打撃を与えることになります。トランプ政権としては、まずは年間輸出の3分の1を占める輸出品目に制裁を加えることによって北朝鮮への締め付けを強化したことになります。
ただし、北朝鮮への石油輸出は未だ禁止されておらず、北朝鮮の生命線は首の皮一枚繋がった形となっています。したがって、北朝鮮はこの程度の妥協策で懐柔されることはなく、今後も反米の立場を崩さずに核とICBMの開発を継続していくことになるものと思われます。そのため、トランプ政権は、中国への北朝鮮対応のプレッシャーをかけながら、北朝鮮の金正恩政権自体への圧力も強化していくことになります。
トランプ政権の奥の手は”北朝鮮に対する海上封鎖”の実施
今後、北朝鮮が核実験やICBM発射実験に再び踏み切った場合、トランプ政権は北朝鮮への石油輸出を禁止する措置に方向に強烈に舵を切ることになるものと予想されます。その際、同措置に現実性をもたせるためには、北朝鮮に対する海上封鎖、を実施することになるでしょう。北朝鮮への海上封鎖は金正恩政権に対する最後通牒となり得るため、筆者は同段階に至るまでに北朝鮮問題が解決することを望んでいます。
一方、日本政府は船舶検査に関して様々な法的制限をいまだ課しているため、トランプ政権が海上封鎖に踏み切った場合に同盟国として同作業に協力することが困難となっています。国会議員は憲法ごっこはいい加減に見直し、現実の脅威に備えることが重要だと思われます。(たとえば、船舶への強制的検査を警察権行使の範囲内として含め直すなど。)
安倍政権は憲法改正を一旦見送るとのことですが、現実の目の前に起きている脅威への対応に注力するという判断は妥当であり、現実の安全保障を置き去りにしてイデオロギー闘争を日本国内で実施する愚を犯すべきではありません。憲法については無意味な「ためにする」議論を無視して解釈で乗り切って必要な法改正を粛々と実施するべきです。
”海上封鎖、在韓米軍家族の出国、空母の大量動員”というシグナル
米軍による「海上封鎖、在韓米軍家族の出国、空母の大量動員」は北朝鮮有事のサインであり、現在は依然としてその段階には至っていません。そのため、北朝鮮有事を過度に強調する状況ではないと思います。
しかし、金正恩政権の呼吸を止める水面は徐々に上昇しているため、今後北朝鮮で有事が起きないと断言できる状況ではなくなりつつあります。あくまでも現在時点の状況を見ている限りでは「北朝鮮有事には数段階の猶予がある」というだけのことに過ぎません。
今、日本人が行うべきことは「憲法改正論議」ではなく「現行憲法下で無理やり有事対応する」ための議論であり、政治資源をイデオロギー闘争に割くような段階は既に過ぎつつあることを自覚すべきです。
筆者は「現行憲法下でも安全保障体制を早期に整えることができる政治家」こそが有能だと考えており、国会議員には現実の問題への対処を責任を持って実施することを望みます。
「憲法を変えないと有事に対応できない(ただし、憲法改正はハードルが高い)」という無駄な議論はやめてもらって、どのような批判を受けようが現行憲法でも「安全保障上やるべきことをやること」は当たり前だという認識を持って頂きたいと思います。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
2017年04月18日
今、北朝鮮を巡って本当に起きていることは何か
(北朝鮮利権を持つ江沢民派、序列3位・張徳江)
朝鮮半島情勢を巡る米中関係の多面的な考察が必要
北朝鮮のミサイル実験が失敗し、朝鮮半島情勢に関する過熱報道がやや沈静化しつつあります。
元々安全保障筋では北朝鮮を攻撃する際の戦力は最低でも空母三隻と目されており、ロナルド・レーガンは横須賀で整備中、ニミッツは太平洋の何処、カール・ビンソンが向かっているのみ(実際にはダラダラと航海中)という状況なので、4月中旬にトランプ側から仕掛ける可能性は極めて低いものと判断できました。米空母の場所は公開情報からある程度得られるため、一部報道は朝鮮半島近海に存在すらしていない空母による攻撃を散々煽り立てていたに過ぎなかったことになります。
在日米海軍司令部が「激おこ」の件について
今後、北朝鮮が核実験とミサイル再発射した上で米軍が十分に北朝鮮を攻撃できる体制が整備された場合はトランプ政権による攻撃の可能性がありますが、現状ではその見方もあまり有力ではないものと思われます。
北朝鮮情勢の緊迫は中国国内での政争の影響を受けたもの
北朝鮮情勢の緊迫は中国国内での政争を受けたものです。中国では秋の党大会に向けて権力集約に邁進する習近平派とそれに対立する江沢民派の政治闘争が苛烈化しています。
北朝鮮に関する利権は中国共産党序列第3位・張徳江が有しています。同氏は江沢民派に属する人物であり、既得権を守るために金正恩体制の事実上の擁護者となっています。
習近平は共産党内の高位のポストに江沢民派を残すことは避けたいため、反腐敗闘争の名目で次々と江沢民派から利権をはく奪して粛清を行っています。ただし、張徳江が掌握する北部軍区に関しては、現在まではむしろ焼け太りさせただけで手を付けることができていませんでした。
そのため、トランプが習近平に求める北朝鮮と中国の取引に関する規制の強化は、習近平にとっても政敵にダメージを当たる願ったりかなったりのものと言えます。トランプは北朝鮮への対応強化を習近平に求めることで、習近平の国内闘争を間接的に支援している状況となっています。
米国側が実施している北朝鮮に対する圧力をかける作業は、中国国内における政争で習近平を優位に立たせるものであり、習近平もそれが分かっているので米国からの無理難題を受け入れているものと推測されます。
一方、金正恩側は現在の緊張状態が高まる以前から、自らの中国側のパイプが政治的危機に瀕していることは理解しており、習近平側のカードとなる金正男暗殺などを含めて自らの地位を脅かす可能性がある要素を排除し、周辺国に対する存在感を示すデモンストレーションを継続しています。
北朝鮮に関する中国側の利権の切り替えがスムーズに進むのか
今後の北朝鮮情勢は、習近平と張徳江の闘争の軍配がどちらに上がるか、という点に注目する必要があります。
習近平が勝利した場合、習近平‐金正恩間に新しい利権関係が形成されるのか、それとも習近平が金正恩体制を自らの都合が良い体制に転換させるのか、その後の状況は流動的なものになるのではないかと想定されます。また、張徳江が勝利した場合、既存の金正恩と中国側の利権が温存される形となり、金正恩体制は温存される、現状の維持の状況がそのまま継続することが想定されます。
トランプは今のところ北朝鮮を巡るゲームについては、習近平側が勝つと見込んで勝負を張った状況となっています。
トランプ政権は北朝鮮情勢に対して様々なメッセ―ジを発していますが、それは上記の環境を前提とした上で判断していくことが重要です。米中間では様々なディールが行わていくことになるでしょうが、トランプ・習近平の関係は厳しい注文を付け合いながらも、実際には今後更に接近していくことが予想されます。
蚊帳の外に置かれた日本外交、根本的な外交戦略の見直しが必要
上記のような米中間でのディールが事実上行われている中で、日本は北朝鮮情勢に関して完全に受け身の状況となっています。北朝鮮が暴発する可能性はゼロではなく、その際に危機に瀕するのは日本と韓国であり、米中の大国間外交の後塵を黙って拝していることはリスクしかありません。
また、筆者が以前から指摘している通り、トランプ政権は東アジアについては中国を中心とした二重外交を仕掛ける可能性が高く、現実に、トランプ・習近平は急接近しながら、同盟国にはペンス副大統領が訪問してお茶を濁す対応が行われています。
トランプの対中国政策(1)「揺さぶり」と「妥協」
トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性
たしかに、北朝鮮問題は安全保障上のリスクであり、日米が共同して対応することは当然のことです。しかし、日本にとっては北朝鮮のリスクは以前から顕在化していたものでしかありません。日本にとっての真のリスクは北朝鮮の事実上の後ろ盾になり、東アジアにおける軍事的脅威である中国の存在です。
トランプ政権は中国とのバランス関係を取る中で、日本、韓国、台湾などを変数として扱う傾向があります。このような受動的な状況から抜け出して、米国の日本へのコミットメントを厳格化していくために、米国内でのロビーイングを含めた根本的な戦略の見直しが必要です。そのためには、今東アジアで何が起きているのか、という認識を持つことは大前提となることでしょう。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
2017年04月13日
在日米海軍司令部が「激おこ」の件について
(在日米海軍司令部FBより引用)
「トランプによる北朝鮮攻撃」を煽る過熱報道に在日米海軍司令部が激おこ
日本の過熱する「トランプによる北朝鮮攻撃」報道の煽りを受けて、在日米海軍司令部が激おこになりました。
今回はテレビ神奈川が米軍に何の確認もせずに横須賀基地が地域交流行事を中止してロナルド・レーガンが北朝鮮に向けた出航準備を急ピッチで進めているというデマを流したものを受けたものとになります。
https://www.facebook.com/CNFJ.Japanese/posts/1835356033395179?pnref=story
<下記全文>
戦争を煽り立てるメディア、冷静な視点が必要な状態に
世界中が地政学リスクに対して敏感になっていることは理解できますが、日本のメディアの米軍の北朝鮮報道はあまりに苛烈になり過ぎており閉口するレベルとなっています。
イラク戦争時に米軍が動員した空母数は6隻であり、今回カール・ビンソンが向かってきたところで1隻に過ぎません。横須賀基地に停泊しているロナルド・レーガンは現在整備中であり、同空母の整備が終る目途は5月になるものと思われます。
安全保障の専門家筋では空母3隻が北朝鮮攻撃の最低ラインとされており、対北朝鮮の文脈で戦闘を開始するには現状では戦力不足の感が否めません。したがって、米軍による軍事行動の可能性はゼロではないものの、現在の状況は軍事力を使った強硬な威圧外交の段階とみなすべきでしょう。
おそらくWW2前の日本のメディアもこのような恐慌状態だったのではないかと思います。今はまだ中国も含めた外交による対北朝鮮対応の段階ですし、北朝鮮が核実験に踏み切ったとしても当面は外交対応による対処が続くものと想定されます。
むしろ、今回の件を通じて日米同盟とは何か、ということが問われている
むしろ、今回の北朝鮮への対応を見た場合、日本が完全に米中によってスポイルされている状態にあるということを深刻に捉えるべきだと思います。
在日米軍基地を多数抱える日本との話し合いはほとんど行われることもなく、北朝鮮問題は米中首脳間での話し合いによって対応が行われている状況です。両国ともに日本が眼中にないことは明らかです。
北朝鮮有事が発生した場合に甚大な被害を受ける可能性が高いのは日本と韓国ですが、それらの国々はこの地域の未来を決める重要な意思決定について何ら関与もできずに追認するだけの状況に追い込まれています。(韓国は政治混乱中なので当然ですが、日本は長期安定政権であるにも関わらずです)
日本人は首脳間でゴルフをやっただけで日米同盟は堅固な状況である、というような幻想は捨てて、米国の東アジア戦略を左右できるように米国内での影響力を持つことを目指して外交力を強化するべきです。
日米同盟は米軍の空母を整備する基地を貸与しているだけのものではなく、米国の東アジアの安全保障戦略に日本がコミットするためのものであり、日米外交に対する戦略の根本的な立て直しが必要です。
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2017年04月05日
トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性
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トランプ政権の対中国人事は「揺さぶり」と「妥協」の二面性
トランプ政権の対中国人事は、通商面・外交面で「揺さぶり」を担当する対中強硬派、そして「妥協」を担当する対中融和派に分かれています。トランプ政権の対中政策は、これらの人事に明確に反映されており、同政権のおおよその意図を推測することが可能となります。
トランプ政権の「東アジア政策」は通商・貿易、そして地域の安定性確保を目的とする
トランプ政権の東アジア政策、特に対中人事の特徴は通商関連の人事に偏向しています。そして、対中強硬派とみなされる人々も軍人ではなく、あくまでも外交政策の専門家が配置されています。
これは現実に軍事力の行使(地上軍の派兵)が始まりつつある中東方面に対し、同政権が安全保障関連の軍人・専門家を任命している状況とは明確に異なります。
一部には米中衝突を煽る論説がありますが、それはトランプ政権の面子を見る限りでは直ぐには有り得ません。また、北朝鮮への武力行使の可能性も過大評価するべきではなく、あくまでも中国に交渉を通じて対処を促すことを念頭に置いているものと推測されます。(ただし、北朝鮮側が中国の言うことを聞くかどうかは定かではありません。)
トランプ政権は中東方面での軍事力行使を行う一方、東アジアでは中国の地域大国化を事実上容認(北朝鮮への対応含む)しながら、安全保障面でのプレッシャーと通商面での交渉を両立させていく形になるものと予測されます。
対中国強硬派による「揺さぶり」、通商問題の専門家を配置、狙いは2018年中間選挙
トランプ政権は貿易赤字などの通商問題で中国に対して強硬な姿勢を取っています。特に中国との通商問題を安全保障とリンクさせて語るピーター・ナヴァロ国会通商会議議長は目立つ存在です。
ピータ・ナヴァロ議長の共和党のメインストリームである自由貿易から距離がある政治スタンスは、大統領選挙のプロセスでトランプが共和党内のリバタリアン勢力と揉めて同勢力の影響力が落ちていること、グローバリゼーション推進派の主流派の力が落ちていることなども影響しています。
その他の閣僚級の対中強硬派人事として、ウィルバー・ロス商務長官、ロバート・ライトハイザー通商代表なども挙げることが出来るでしょう。これらの人々は中国への市場開放論者であるとともに、主に中国を対象とした二国間の不公正貿易に対する厳しい姿勢を取っている人々です。
2018年の中間選挙の上院が製造業州が多いことを踏まえた場合、中国に対する通商問題に対する姿勢で強気の立場を選挙対策としても非常に良く機能することになるでしょう。
また、国家安全保障会議にも2名の対中強硬派が存在しています。
ケネス・ジャスター国際経済問題担当補佐官はその表面的な経歴からグローバリストや穏健派として語られていますが、実際には対中国強硬派です。ジャスターは第一次ブッシュ政権時代商務省次官(産業安全保障局担当)、米印戦略的パートナーシップ構想の設計者(ハイテク協力、原子力協定等推進)、対中輸出規制強化を標榜している人物です。
マット・ポッティンジャーアジア担当上級部長は、在中国時代に腐敗や環境問題を記者として追及して拘束された経験を持つ人物であり、その後海兵隊に入ってインテリジェンスの立て直しをマイケル・フリンとともにレポートにまとめた経験を持つ人物です。
さらに、政権外ではあるものの、トランプ政権を支えるシンクタンクであるヘリテージ財団は、親台湾派であり、THAADなどのミサイルディフェンスに対して積極的に取り組む傾向があります。トランプと祭英文の電話会談を仲介したシンクタンクであり、韓国へのTHAAD配置の意義について詳細なレポートを公表しています。
これらの人々は中国に直接的な軍事行動を起こすための布陣ではなく、あくまでも中国に対してプレッシャーをかけるための材料を提供する存在として機能していくことになります。
「妥協」を担当する習近平への権力集約を見越した親中派
トランプ政権では表向きは対中強硬派を揃えている形となっていますが、実際には中国との関係が深い人々も配置されています。
トランプを取り囲む経済人の会議である大統領政策戦略フォーラムのスティーブン・シュワルツマン議長はその筆頭格と言えるでしょう。
シュワルツマンは習近平国家主席と非常に懇意であり、彼の出身大学である精華大学に多額の寄付を実施して自らの名前を冠する学院を発足させています。この際、習近平からも直々の祝辞が届いています。また、今年のダボス会議では習近平とランチミ―ティングを実施するなど、トランプの取り巻きの経済人のトップではあるものの、習近平・シュワルツマンの両者の蜜月ぶりは顕著です。
トランプが大統領選勝利早々に駐中国大使に任命したテリー・ブラウンスタッド・アイオワ州知事も習近平人脈です。ブラウンスタッドは習近平が訪米する度に接触するほど関係値が高く、両者は30年間の友好関係を持つ朋友です。習近平に権力集約が進む中で国家主席直結ルートの外交チャネルとして機能することになります。
トランプ一族も中国とは懇意な関係にあります。ジャレド・クシュナー大統領上級顧問は、中国の財閥とのビジネス関係を有しており、トランプ・祭英文の電話会談後の後処理に奔走する役割を担いました。本業の不動産業ではジャック・マーとの繋がりも有しており、トランプ・馬会談のお膳立てを行った人物です。また、実娘にはチャイナ服を着せて中国語の詩文を読ませるなど、一族ぐるみで中国への配慮を行う広報としての機能を果たしています。
ティラーソン国務長官は長官就任の際に行われる上院公聴会向けに公表した文書の中で、中国に対する問題意識を冒頭に掲げていた人物です。その内容は中国の振る舞いを脅威としつつも、中国を粘り強く交渉をしていく相手として強く認識しているものでした。また、同文書には北朝鮮問題については中国に積極的な役割を果たすことを促す論旨も含まれていました。ビジネスマンとして極めて妥当な現状認識だったと思います。
つまり、前述の閣僚級の対中強硬派とは裏腹に、大統領の意向で動く側近らは習近平や中国財界との関係を有しており、強気の交渉を裏側でいつでも手打ちを行う二重外交のための要員は揃っていることになります。
連邦議会内・共和党上院・下院の対中国政策のキーパーソン
中国に対する反中・親中の姿勢は連邦議会・共和党の内部で二重外交にあります。
共和党内で最も反中姿勢が強い連邦議員は、ダナ・ローラバッカー下院議員です。同氏はカリフォルニア州選出の下院議員であり、連邦下院外交委員会の重鎮です。トランプ政権の国務長官候補として有力な人物として名前が挙がっていた人物です。中国の人権問題について非常に強硬な姿勢を持っており、下院での中国政府の法輪功に関する人権弾圧に関する非難決議を取りまとめた経緯があります。
また、共和党内では少数派の親ロシア派としても知られており、日米露の三国による対中政策を取るべきであるという持論を有しています。そのため、トランプ政権とは極めて政策的な方向性が近いと言えるでしょう。
一方、連邦議会・共和党内で親中派として知られる人物は、ミッチ・マコーネル上院院内総務です。同氏の妻は台湾系のエレーン・チャオ(現・運輸長官)であり、東アジア地域とは深い人間関係を有しています。
チャオ一族は江沢民国家出席と一族ぐるみで仲が良く、マコーネルも現在では親中的な姿勢を取るようになっています。米国における大学での講演会で駐米中国大使と同席した際、同大使が米国による中国の法輪功に対する弾圧への批判への反論を試みた際、マコーネルはそれを黙認したまま聞いていたエピソードが有名です。
共和党は民主党と比べて親日であるかのように語られますが、それらは共和党関係の外交関係者によって日本人の国会議員や有識者が思い込まされている幻想にすぎません。現実には共和党内での対中・対日政策は振れ幅が非常に大きい状況だと言えるでしょう。
政策とは「人事」のことであり、対中政策人事の微妙な変化を観察することが大事
政策は「人」によって実行されていきます。したがって、トランプ政権の対中政策の方向性を知りたければ「人事」を見ることが大事なのです。
東アジアに精通した軍人が主要なポストに配置されていない現状では、少なくとも米国側から仕掛ける米中衝突論は非現実な想定に過ぎず、米中という二大大国の間で我々が議論するべきことは、エキセントリックな煽情論ではなく現実を踏まえた生き残りのための施策です。
次回の更新記事ではトランプ大統領当選以来の米中間でのやり取りを概観し、今後の米中関係についての分析を加えていきます。
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2017年04月02日
トランプの対中国政策(1)「揺さぶり」と「妥協」
(AP)
トランプ政権の対中国政策は「揺さぶり」と「妥協」
トランプ政権の東アジア政策、特に中国に対する政策について憶測が飛び交っています。そして、日本の有識者からはトランプ政権は対中強硬派であるとする見解も散見されます。
しかし、これらについては部分的には当たっているものの、トランプ政権の人事や行動を冷静に分析する限りは同政権を中国強硬派と断定するのは早計です。
トランプ政権は中国というプレーヤーに対して「揺さぶり」と「妥協」という交渉を行っています。
「揺さぶり」とは中国の国益に反する言動、そして「妥協」とは「揺さぶり」を引っ込めることへの対価を得ることを指します。
ただし、この「揺さぶり」は、中国からの譲歩、または日本・韓国・台湾などの米国の対中政策の変数として扱われる国々からの協力を引き出すための道具に過ぎません。実際には、「揺さぶり」は米中間での妥協、東アジア諸国からの協力、を引き出した後には一定の「妥協」による手打ちが行われてきています。
そして、この「揺さぶり」は共和党保守派の意向、「妥協」は共和党主流派の意向、という対応関係が存在しており、トランプ政権の対中政策は両派の国内政局の綱引きからの影響を受けることにもなります。したがって、トランプ政権の対中国政策を理解するためには、米国の国内政治情勢、その力関係を踏まえなくては片手落ちの状態となります。
日本人識者らは表面的な「揺さぶり」だけに注目し、徒にトランプ政権の対中政策を日本国民にミスリードしている人が多数存在しています。しかし、これらは米中関係・米国国内関係に関して理解できていない人々であり、基本的に話を真面目に聞くだけ野暮です。
そこで、本ブログでは、上記の観点を踏まえながら今後複数回に渡ってトランプ政権の対中国政策を分析し、その見通しについて予測を行っていきます。
トランプ政権の対中国政策に関する現実的な視座を持つべき
本分析はトランプ政権の対中国政策を、人事、行動、環境、の3点から解説していきます。具体論に入っていく前に、トランプ政権の対中国政策の基本的な理解について概要を整理しておきたいと思います。
筆者は米中戦争のような非現実な仮定を喧伝し、書籍の売上部数を稼ごうとする輩には嫌悪感を持っています。また、トランプ政権が無能であるという非現実な仮定についても賛同しません。
トランプ政権は「主に通商問題で有利な立場を構築するためにイデオロギーや安全保障を絡めた交渉事を行う」可能性が高い、という分析が筆者の結論です。
これは実際に配置されているトランプ政権の人事、大統領選挙から現在までの行動、そして中間選挙を見据えた米国国内の政局状況などを踏まえれば妥当なものだと思います。トランプ政権の対中国政策派国内政局の影響を受けるため、若干のブレはありますが概ね間違いないものと思います。
米国の保守派はイデオロギー的な自由主義の拡張を望んでおり、トランプ政権における外交政策においても一定のパワーを有しています。トランプは共和党内のこれらの支持基盤に配慮する必要があります。また、中国の拡張主義に対して安全保障上の懸念を示すことも必要であり、マティスをはじめとした同盟国との関係を重視する職業軍人らからの支持を得ることも重要です。
さらに、選挙の観点に立つのであれば、中国に強い態度を示すことで国内の選挙面での得点を稼ぐことを目指すことになります。こちらはナヴァロやロス、そしてバノンが志向している方向性になりますが、これは2018年の中間選挙での勝利を手にするためのデモンストレーションに過ぎないと思われます。その上で、輸出補助金問題などで中国側からの一定の譲歩を引き出すことができれば大きなポイント獲得となります。
しかし、現実には米中関係は経済面・金融面で非常に深い関係となっており、相互依存は切っても切れない状況となっています。また、中東方面などの地球上の別地域での安全保障上の課題を抱える米国は東アジアに新たな戦略正面を抱えることは困難であり、北朝鮮問題について中国の積極的な役割を求めています。これらの事象は共和党内での主流派からのトランプ政権へのプレッシャーとして働くことでしょう。
したがって、トランプ政権は中国に対して、イデオロギー・安保面での「揺さぶり」をかけることで保守派・同盟国を満足させるとともに、通商問題での強硬姿勢を示すことで選挙上の成果を上げた上で、更に中国から一定の譲歩を得ることで同国との妥協を模索する主流派を納得させる、という高度な外交戦略を実践に移すことになるでしょう。(それが成功するか否かは不透明だと言えます。)
明日以降、具体的なファクトベースでトランプ政権の対中国政権の方向性を検証していきます。
トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性 に続く。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
2016年11月15日
安倍外交・完全崩壊、運命が逆回転を始めた日
<経済産業省HP・覚書を交換する世耕経済産業大臣とウリュカエフ経済発展大臣>
北方領土交渉のキーパーソン・突然の逮捕劇が起きた!
本日ロシアの連邦捜査委員会によって、ウリュカエフ経済発展相が国営石油会社を巡る収賄容疑で身柄を拘束されました。同人物は世耕・ロシア経済分野協力担当大臣(経済産業大臣)のカウンターパートとして日ロ関係のキーパーソンとなっていた人物です。
ウリュカエフ大臣が身柄を拘束されたことで、日本側が望む北方領土交渉は完全に暗礁に乗り上げる形となり、既に約束した対ロシア経済協力の果実のみをロシア側に提供するだけ状況になる公算が高まりました。
報道ベースではあるものの、世耕大臣のコメントを見る限り、日本政府はこの事態を全く予見できていなかったのではないかと推測します。そして、この致命的な外交ミスも米国大統領選挙と密接に関係したものと言えるでしょう。
トランプ大統領で米ロ関係が改善、用済みになった日本は捨てられた形に
トランプ大統領は予てから中東地域、つまり米国にとって最も厄介な地域での対ロ協調を打ち出してきました。そして、現実にトランプ大統領が誕生した以上、当面の間は米ロ関係はオバマ政権時代と比べて友好的な関係が続くものと思われます。
一方、日本は外交的な情報能力不足から「ヒラリー大統領誕生」を前提に様々な外交交渉を進めてきたように見受けられます。ヒラリー陣営に所属していたカート・キャンベル氏が「安倍・ヒラリー会談時に日本側が意図している日ロ関係改善についての大筋を認めた」趣旨の発言をしていました。
ロシア側にとっては日ロ関係の改善は、米国によるロシア包囲網を切り抜けるための重要なカードであり、経済協力と引き換えに北方領土問題で妥協する可能性は十分にあったものと思います。
ただし、それはヒラリー政権が誕生して米国がロシアに対して引き続き厳しい立場を取り続ける可能性がある場合のケースです。
トランプ勝利が決まったことによって、米ロ関係が二国間レベルで改善してしまうことで、ロシアにとって日本の位置づけは相対的に低下することになります。そのことを端的に示した事件が上記のウリュカエフ大臣の身柄の拘束です。ウリュカエフ氏は今月予定されているAPECで世耕大臣に会う予定になっていましたが、日本側は完全に梯子を外された形になりました。
日本エスタブリッシュメントの頭の中、致命的な外交失敗を引き起こした頭の中
安倍政権の外交政策の基本方針は対中包囲網であったように思われます。
歴史修正主義のイメージを払拭して米国の支持を取り付け、南シナ海でASEAN諸国と結んで中国に対抗し、インドに巨額の支援を約束して抱き込む、最後に北方領土問題を前進させて、中国を四方八方から抑え込むというイメージです。
しかし、このような対中包囲網の発想は、日本のエスタブリッシュメント独特の極東の島国の外交センスでしかありません。なぜなら、世界の基本的な外交状況は中国の脅威にそれほど重きを置いていないからです。
国際政治の基本的な構図は、米ロ対立の構図、そして中東地域におけるテロとの戦いです。米国のシンクタンクの外交文書でも東アジアに触れる量の何倍もの分析がロシア・中東に対して行われています。
中国をロシアや中東よりも安全保障上の脅威として上だとみなしている米国の専門家は少数でしょう。一部の日本をヨイショしてくれるような都合が良い米国のカウンターパートから情報収集をしているから、木を見て森を見ずの外交政策が実行されてしまうのです。
そのため、対中包囲網という枠組みは、米ロが激しく対立している状況においては、ロシア側の思惑(日米同盟の切り崩し)によって有効に機能しているかのように見えましたが、実は掌の上で踊らさられていたということが言えそうです。
南シナ海においてもフィリピンをはじめとして、安倍外交が作り上げた中国封じ込めの枠組みは崩れつつあり、韓国でも政権が転覆して日韓合意のレガシーが破棄される可能性も高まっています。まさに、世界情勢は大きく変動しつつある状況です。
このように米国によるロシア包囲網の枠組みが偶然に日本の中国包囲網の枠組みとリンクしたことで、安倍外交はここまで実に見事な成果をあげてきましたが、この年末にかけて運命は逆回転の道をたどることになるでしょう。
外交失敗によって日本国内で政変が起きる可能性も高まった
安倍外交の失敗は日本国内における自民党内でのパワーバランスの変更を迫ることになるかもしれません。国内では民進党が非常に弱体であるため、選挙による政権交代が発生する可能性は極めて低いものと思います。
しかし、自民党内では今年の参議院議員選挙・都知事選挙を通じて反主流派の力が増加している状況があり、安倍首相をはじめとした政権主流派の影響力が外交的な失敗によって低下することで、党内のパワーバランスが崩れて政変に繋がる可能性もあるのではないかと推測します。
日ロ関係で大見得を切った安倍外交は北方領土問題で成果を挙げられるかどうかで成否が問われる状況となりました。トランプ氏の親ロ的方向性から意外と前向きに話が進む可能性もありますが、プーチン大統領が利用価値が下がった安倍首相を引き続き必要とするかどうかは分かりません。
来年のトランプ政権の本格稼働によって米国のエスタブリッシュメント人脈に依存した安倍政権の限界が更に露呈していくことなるでしょう。日本は一気に危機的な状況に立たされた状況となっています。
本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
2016年01月18日
日中開戦「僅か5日」で敗北、米国は尖閣諸島を見捨てる判断
米国の権威ある外交専門誌「Foreign Policy」が尖閣諸島を舞台とした日中衝突、日米同盟の顛末についての机上演習の結果を発表しました。机上演習を行った主体は米国最有力・軍事研究所であるランド研究所となります。
FPに公開された記事はこちら
「見捨てられる日本、尖閣諸島へのコミットメントを回避する米国」
簡単に言うと、上記の机上演習の結果として、中国に日米同盟は惨敗して多大な被害を出すことが予測されるため、米国は尖閣諸島で何が起きても無視をするべき・・・、ということが提言されています。
そして、(1)同盟は戦争に引き込まれる危険なものであること、(2)日本との相互防衛条約による防衛の大半を履行することは困難であること、(3)人民解放軍の現代化によって全てのルールが変わったこと、(4)空母の脆弱性及び潜水艦の有効性が中国との戦いを深刻化させること、(5)3か国のナショナリズムの高まりによるエスカレーションによって各国の打ち手が制限されること、などが結論として得られたとしています。
今回の机上演習で特に注目に値することは、日本が中国のミサイル攻撃によって成す術もなく多大な被害を出して敗北すること、そして米国は甚大な被害が生じる日中開戦に引き込まれることを極めて懸念していること、です。
人民解放軍の軍事力の著しい進歩の結果として、「ミサイル攻撃主体の現代戦において先制攻撃能力を持たない日本は甚大な被害を出してそのまま敗北する」という衝撃のシナリオが米国最有力の軍事研究所によって検証されたことは大きな出来事だと思います。
「僅か5日間」で中国が勝利宣言、壊滅させられる日本の自衛隊
同机上演習では中国が日本の自衛隊を壊滅させて勝利宣言するまでに要する日数は「僅か5日間」とされています。ざっくりと戦況経過をまとめると下記の通りとなります。
<1日目>
日本の極右が尖閣諸島に日本国旗を立てたことに対し、中国が艦船を派遣して日本の活動家を拘束する。
<2日目>
日本は艦船と戦闘機を尖閣諸島に派遣。日本は日米同盟の履行を求め、米国は日本本土防衛への支援と日本沿岸への潜水艦の派遣。
<3日目>
衝突発生後、中国の艦船が日本の艦船2隻を撃沈、米国潜水艦も中国の駆逐艦2隻を撃沈、死者数百名に。
<4日目>
中国のサイバー攻撃によって、カリフォルニアの送電システムが被害を受けてロサンゼルスとサンフランシスコが大停電、ナスダックのシステムが操作されて金融パニック発生。中国のミサイル攻撃で自衛隊は深刻な打撃を受ける。
<5日目>
中国は日本の海上兵力の20%を掃討し、日本の経済的な中心地に狙いを定める。米国は日本からの中国船に対する攻撃依頼を拒否、代わりに自衛隊の撤退を支援。中国は勝利宣言を実施。
ランド研究所は「尖閣諸島での日中開戦シミュレーションを公開」したのか?
ランド研究所がこのタイミングで尖閣諸島での日中開戦の机上演習を公開した理由は明白です。年初に日本政府は海上自衛隊の艦艇の尖閣諸島への派遣を中国に通達したことを示唆しました。
そこで、ランド研究所は「本気で日中開戦を懸念している」というメッセージをFP誌を通じて日本政府に伝えたということでしょう。ランド研究所は国防総省との関係も非常に深いため、上記の机上演習結果の公開は米国からの非公式なメッセージであると捉えることが妥当だと思います。
筆者は昨年末から安倍政権の行動が日中開戦を想定したものであることを指摘してきました。
日中限定戦争への道、慰安婦・日韓合意の真意を探る
安倍政権の活発な対中外交は極めて見事であり、おそらく米国もそれを認めるところだと思います。しかし、それらが日本の実力の過信に繋がることを米国は真剣に憂慮していると考えるべきでしょう。そして、私たち日本国民も上記の机上演習の結果を重く受け止めるべきです。
憲法改正のためには日中開戦が必要、ただしそれは手痛い敗北がセットとなるということ
改憲派で衆参の3分の2を占めることに成功したとしても、国民投票で憲法改正に対して過半数からの賛同を得ることは極めて困難だと思います。そのため、実際の憲法改正には「日中の軍事的な衝突」が現実の脅威として日本国民に意識される必要があります。したがって、日中間での限定的な戦争が行われる可能性が上昇しています。
米国も安倍政権の対中国包囲網を形成する外交的意図を意識しており、その先に存在する日本の首脳陣の決定的な間違い(日本が中国に限定戦争で勝利できる)について忠告を開始したということでしょう。
日本の自衛隊は専守防衛の立場を墨守してきた結果、ミサイル攻撃が主体となる現代戦では「戦えない軍隊」になっています。これは日本国憲法による制約として課されているものですが、その制約によって憲法改正時に発生可能性が高い日中開戦において敗北することがほぼ確定しています。
少なくともこのジレンマを解消することなく安易な日中開戦への道を開くことは、第二次大戦以来の再敗戦を望む自殺行為と言えるでしょう。安倍政権が現実を見据えた外交・安全保障政策を実行してくれることを期待します。
2016年01月17日
民進党勝利、中国民主化に向けて「日本の魅力」を取り戻そう
wikipediaから引用
2016年01月08日
国会議員失格?北朝鮮抗議決議を欠席した国会議員一覧
2016年1月8日・参議院本会議で北朝鮮核実験抗議決議に欠席した議員一覧。山本太郎氏のように出席した上で採決を棄権する議員もどうかと思いますが、そもそも同決議に対する決議を行う本会議を「欠席」する議員は「日本国の安全保障を担う国会議員」として如何なる認識でしょうか。
ということで、下記は参議院本会議「北朝鮮核実験抗議決議」の欠席者一覧です。地元の選挙の事前運動よりも日本の国会議員としての務めを果たしてほしいものです。特に中曽根弘文議員とアントニオ猪木議員は参議院外交安全委員会所属議員であり本件について見識を問われる責任ある立場です。
欠席議員は(中にはいるかもしれませんが)、北朝鮮の水爆実験に賛成ということで良いのでしょうか???
<欠席者一覧>
<自民党>
金子原二郎、木村義雄、熊谷大、小坂憲次、鴻池祥肇、中泉松司、中曽根弘文、長谷川岳、藤川政人、古川俊治、水落敏栄、宮本周司、山崎力、山本一太、若林健太、渡辺猛之
足立信也、江崎孝、尾立源幸、北沢俊美、小見山幸治、桜井充、芝博一、那谷屋正義、前川清成、増子輝彦、水岡俊一
吉良佳子、大門実紀史
アントニオ猪木