社会問題

2017年04月15日

トランプの黒幕?何故クシュナーは台頭しているのか

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ジャレド・クシュナー大統領上級顧問の力が強まってきているとされているが・・・

当ブログでは、トランプの黒幕と噂されていたスティーブ・バノンについて、

トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置

の記事などで砂上の楼閣であり、その影響力の低下の可能性について触れてきました。当時は何も知らない日本の有識者らがバノンを黒幕として恥ずかしい動画などをネットに公開したり、陰謀論めいた論説を記事公開・出版などを行っていました。(ちなみに、筆者の著作である『トランプの黒幕』はバノンのことを指しているわけではありません。)

現在、バノンの影響力が相対的に低下しており、代わりにクシュナー上級顧問の影響力が強まっていることから「クシュナーこそが黒幕だ!」という妄言が再び出てくるようになっています。娘のイヴァンカがシリア攻撃を決断させた要因だったとか、本当にひどい言説がばかりで面白いものです。

きっと、もう少ししたらトランプの「頭」の中にクシュナーが乗って操縦しているような表紙のトンデモ本が出版されることになることでしょう。

クシュナーの影響力の源泉は、共和党主流派・ウォール街とのパイプ役として

トランプ政権のホワイトハウス及び主要閣僚は共和党保守派によってほぼ独占されている状況となっています。そのため、それらと対立する共和党主流派・ウォール街が政権にアクセスするルートは限られていることになります。

クシュナーはゲーリー・コーン国家経済会議議長とムニューチン財務長官とも親しい元民主党員です。コーンも民主党員であり、ムニューチンはリベラルの影響が強いハリウッドでも活躍していた投資家です。(二人ともGS出身であり、クシュナーと親しいことも要因の一つとなって政権入りしています。)したがって、共和党内部では保守派よりも民主党に近い主流派寄りの人物と言えます。

現在のトランプ政権では、このNY派の人々を通じた共和党主流派・ウォール街による政権へのハイジャックが起きようとしている状況です。つまり、トランプ政権を誕生させた保守派、そしてオルトライト的な傾向がある面々の立場が弱まり、選挙時にはトランプに敵対していたはずの主流派・ウォール街がホワイトハウスの新たな主になるべく蠢いている状況です。

クシュナーはトランプに近い立場にある非保守派の人間であることから、彼らの代理人としての影響力を強めている状況にあります。保守派の特攻隊員的な位置づけであるバノンの力が低下し、クシュナーの力が伸びていることはホワイトハウス内の保守派・主流派の両派の力関係の変化を示すバロメーターとなっています。

したがって、黒幕というよりも、バノンもクシュナ―も党内の勢力争いの状況を観測するための観測球のような役割を担っていると言えるでしょう。

トランプは元々保守派ではないリベラル・民主党員・ニューヨーカー

トランプ大統領は多くの人が勘違いしているように保守派の人ではありません。民主党系の人々やメディアが滅茶苦茶なバッシングを行っていますが、むしろ過去にはクリントンにも献金していたリベラル派の人物であり、ニューヨークでの大富豪でもあります。

彼は近年民主党での大統領選挙出馬の可能性が無くなったことから急速に共和党保守派に接近してきた人物であり、今回の大統領選挙では「敵の敵は味方」(ヒラリーの敵は味方)の論理で、保守派が仕方なく応援して誕生した大統領です。

トランプ自体は選挙時の選対本部長もコーク系のリバタリアン団体出身のコーリー・ルワンドウスキー、主流派のポール・マナフォート、保守派のケリーアン・コンウェイとその都度必要に応じて全く主義主張の異なる人々を採用する蝙蝠のような行動をしてきています。

そのため、ホワイトハウスの要職は最後に協力していた保守派が占めていましたが、トランプと保守派は潜在的な緊張関係にあり、クシュナーの存在、ましてイヴァンカのホワイトハウス入りは保守派はあまり快くは感じていないものと思われます。

実際、トランプは政権発足当初は保守派に配慮した運営を行ってきましたが、徐々に保守派色を弱める政策対応を行ってきています。その結果として、トランプ一族が持つリベラルなエリート傾向とワシントン政治の一掃を求める保守派との間で亀裂が生じつつあります。

大統領選挙で応援した人々を敵に回す大統領に未来はあるのか?

トランプはバノンの処遇を問われて「バノンは選挙の終盤で合流しただけだ」と発言しました。

それはケリーアン・コンウェイを含めた保守派の運動団体全般にも該当する発言であり、筆者はオバマケア代替法案先送りの際にトランプが「フリーダムコーカスは敵だ」と言い放った時よりも政局運営上深刻な発言だったと感じています。

トランプ政権はオバマケア代替法案の失敗の経験からワシントン政治に漬かったやり方に方針転換し、非常にきめ細やかな議会対応を行うようになってきています。これは政権運営上プラスではあるものの、トランプは政権を支える自らの屋台骨の入れ替え(保守派から主流派・民主党へ)に着手したように見えます。

はたして、トランプ政権の方針転換を保守派がどこまで容認するでしょうか。

保守派は最高裁判事の任命で同じ保守派のゴーサッチ氏が任命されるまでは、選挙で応援してきたはずのトランプによる保守派に対する無礼な発言に対して我慢してきたものと想定されます。しかし、ゴーサッチ氏の上院承認が行われた以上、今後はトランプ一族によるホワイトハウスの塗り替えを許容し続けることはないでしょう。

差し当たって、債務上限問題、税制改革、インフラ投資など、様々な議会案件について保守派による巻き返しが行われていくことになるものと想定されます。トランプは自らの唯一の政権基盤(≒保守派)をひっくり返す博打を打ちつつあるわけですが、それが功を奏す可能性は高くありません。

政権発足から約100日、対外的な緊張も高まる中で米国内の政局は更なる混沌に陥りつつあります。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年04月06日

バノンが「トランプの黒幕」ではないのは当たり前だ

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(ひぐらしのなく頃に、から引用)

スティーブ・バノンは重要人物だが「黒幕」と呼べるほどの存在ではない

トランプ大統領誕生以来、新設の首席戦略官というポストに就任したスティーブ・バノンは「トランプの黒幕」と表現されてきました。バノンの存在は米国共和党のことを良く知らない「ど素人」の有識者らには格好のネタだったのだと思います。

筆者はバノンについては「トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置」でも指摘してきた通り、「バノンのトランプ政権内での立ち位置は共和党内の派閥争いの微妙な均衡の上に成り立つ砂上の楼閣」として評価してきました。

今回NSC常席からバノンが外されたことについてトランプ政権は理由をつけて大したことがないように表現していますが、同政権内での力関係に変化が生じつつあることは明らかです。

トランプの黒幕は「トランプ政権を作った共和党保守派」の人々である

3月31日発刊した拙著は「トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体」(祥伝社)というタイトルで、全国の書店に置いていただいています。もちろんバノン単体をトランプの黒幕だと断定する内容ではありません。

しかし、正直言って、「バノン」や「クシュナー」、挙句の果てには「イヴァンカ」がトランプの黒幕であるというトンデモ解説が溢れており、Googleで「トランプの黒幕」のワードを検索するとロクな分析が出てこない有り様です。

トランプ政権を作った原動力であり、現在も同政権を支えている人々は「共和党保守派の人々」です。小さな政府などの保守的な価値観、建国の理念を信じる人々の集団、そのリーダーたちがトランプ政権を支えています。

その多くはレーガン政権時代から続く保守派の流れの中で育ってきたプロフェッショナルです。彼らは黒幕というよりも本来は「黒子」という表現が正しいかもしれないと思っています。

バノンはマーサー(メルセル)財団という新興のパトロンを背景とした保守派内の新参勢力に過ぎず、トランプを支える保守派の中では明らかに浮いた存在です。実際に共和党保守派の重鎮らに会って話を聞けばバノンとの距離が離れていることは直ぐに分かることであり、彼をトランプをコントロールする黒幕として過大評価してきた有識者らは共和党のことを何も知らない人たちです。

選挙戦の経緯からトランプ政権にマーサーの意向が強く反映する傾向はあるものの、現在ではバノンは局的な下手を打ち過ぎたことから影響力の低下が起きていることは明らかでしょう。

ライアンケアの先送り後、急速に議会対策を綿密に行うようになったトランプ政権

ライアンケア(オバマケア代替法案)の先送り後、トランプ政権は議会対策・政局対策の面で極めて巧みな動きを見せるようになってきています。

切り崩し可能な様々な議連に接触したり、法案に反対しそうな個別の議員の説得に応じたり、保守派の重要人物らの囲い込みに走ったり、と今までにない積極的な対応を行うようになってきました。

ワシントン政治への対応力の急速な向上は、政権発足以来政局を担ってきたバノンから共和党の生え抜きの人々に議会対策・政局対策の主導権が移ったことを示唆しています。

また、バノンはテロリスト渡航防止法対象国からの入国禁止大統領令の積極的な推進者であり、彼のスタッフであるセバスチャン・ゴルカはグローバル・ジハード論者です。

この観点から保守派内のリバタリアン陣営(≒フリーダムコーカス)を率いる大富豪のコーク兄弟と対立してきましたが、バノンがNSC常任から外れることはコーク兄弟に対してトランプが議会対策の観点も踏まえて一定の恭順の意を示したものと捉えるべきでしょう。

ちなみに、バノンが外れるとともに、コーツ国家情報長官、ダンフォード統合参謀本部議長、常任に復帰、エネルギー長官、中央情報局長官、国連大使が追加されたところを見ると、これは5月19日のイラン大統領選で反米強硬派が勝利する可能性をを踏まえた布陣を敷いたと見るべきです。

トランプ政権を偏見や陰謀論で語る「小説」ではなく「分析・考察」が必要だ

現在、トランプ政権が発足してから随分と時が経った状況となっています。それにも関わらず、書店のトランプ本コーナーには相変わらず、国内の有識者の人々による偏見や陰謀論まがいの書籍が大量に並んだままです。

筆者は「バノン、クシュナー、イヴァンカなどがトランプの黒幕だ!」というトンデモ話をそろそろやめるべきだと確信しています。それらは小説的な読み物としては面白いかもしれませんが、トランプ政権を真剣に理解しようと思っている人には害悪でしかありません。

我々日本人もトランプ政権に対して真面目に「分析」と「考察」を行っていく段階となっています。


*下記の拙著をご覧いただければ米国で何が起きているのか、は論理的に分かります。


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2017年03月30日

著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)のご紹介

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Amazonでの購入はこちらをClick!)

著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を発刊します

ブログ読者の皆様のおかげで『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を2017年4月1日に出版する運びとなりました。深く感謝いたします。(一部都心の本屋さんでは既に陳列が始まっているようです。)

読者の皆様のおかげで現在Amazonのカテゴリー「アメリカ」で1位~2位で推移しています。

本作を執筆するきっかけとなりましたのは、まさに本ブログの更新及びアゴラへの転載を祥伝社の編集の方に注目して頂いたことです。

日本国内ではヒラリー勝利が喧伝していたいい加減な言論が蔓延する中、データと事実を用いてトランプ当選の可能性を予測した圧倒的な少数派として、日本人に正しい情報を伝える取り組みを続けてきたことを認めて頂いたことを嬉しく感じております。

本作の読みどころ「日本人と180度真逆の発想を持った共和党保守派を知ること」

本作で取り上げた大統領選挙やトランプ政権の解説について是非多くの皆様にご一読いただければと思います。その上で、筆者が読者の皆様に強調したいことは「共和党保守派」という大半の日本人とは180度真逆の発想を持った人たちについて理解を深めてほしいということです。

多くの日本の有識者は共和党保守派について良く知らないまま、彼らについて偏見に基づく解説を行っています。米国政治に関する研究は共和党保守派を蔑視する学者らによって行われてきており、無自覚なのか意図的なのか分かりませんが、日本人に対して正しい情報が伝わりにくい環境があります。

本書は筆者が2009年当時から付き合ってきた保守派の人々の政治的な思考・行動を大統領選挙及び組閣に絡めてまとめたものであり、政権与党である米国の共和党の中で影響力を強める保守派の考え方を知るための一助となるものと思います。

なぜ共和党保守派は「小さな政府」を求めているのか、そして大統領選挙にどのように関わってきており、トランプ政権の中で自らのポジションをどのように位置付けているのか、リベラルな関係者によって寡占されている一面的な報道などでは伝わらない米国の今を理解できるものと思います。

次回作があれば、今度は「共和党保守派の政治システム」について書かせてほしい

万が一、本作が人々に受け入れて貰えて一定数以上販売実績が出た場合、将来的には「共和党保守派の政治システム」について解説する本を出したいと思います。

共和党保守派が有する、①統合機能(年次総会)、②司令塔機能(毎週実施される作戦会議)、③運動支援機能、④訓練機能(選挙学校)⑤政策立案(シンクタンク)、⑥資金源(財団)、⑦メディア及びメディア監視機能、➇歴史教育、などがどのように有機的に結びついて機能しているのかという分析をまとめたものを想定しています。日本の政治では見たことがない近代的なシステムが存在しており、筆者は非常に驚かされた経験を持っております。

2年前に我が大学に上記のシステムを調査する研究計画を提出したときに、このイデオロギー的に偏った企画は君の趣味だよね、という感じで却下された研究企画なのですが、米国政治やトランプ政権を理解するためだけでなく、日本の政治改革にとっても重要な示唆が含まれたものだと確信しています。(むしろ、本件について一緒に研究して頂ける大学研究室などがあれば同時に募集しています。)

上記の内容を出版という形でまとめることができれば、単なる研究というだけではなく多くの日本の方に知って頂く機会にもなるため、非常に有意義なものになるのではないかと夢想しております。

とはいうものの、まずは本作が売れてくることを願っております。読者の皆様にもご協力を賜れれば幸いです。



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2017年03月26日

森友問題で安倍首相が辞任するべき唯一の理由

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籠池問題の本質は「反社会的組織の疑いがある」組織の名誉職に首相夫人が就いていたこと

籠池問題の本質は「自民党の国会議員が法人の代表者が銭を持ってきた」と主張している法人の名誉校長を務めていたということです。

メディアでは「国有地の払い下げに対して便宜を図ったかどうか」という点ばかりが強調されていますが、役所側が資料を破棄したと主張している以上、どちらにせよ事実関係を推論することしかできず、与党も野党もどうでも良い罵り合いを継続するだけのことです。まして、首相が籠池氏に100万円寄付したかどうかという真実でもどうでも良いことが議論されていることに辟易します。

本件で唯一明確になっていることは、

〇安倍昭恵・首相夫人が瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任していたということ
〇鴻池参議院議員が記者会見やメディア取材で籠池氏が金銭(らしきもの)を包んできたので突き返したと主張していること

です。賄賂の申し込みは相手が受領しなくても賄賂申込罪が成立するため、鴻池議員の発言は非常に重いものであり、国会議員に賄賂を申し込もうとした疑いがある法人の名誉校長に首相夫人がなっていたこと自体が問題なのです。

実際に便宜が図られたかどうかなど、鴻池議員の発言を前提とするならもはや問題ではありません。首相夫人が名誉校長の職を軽率に引き受けたことにより、安倍政権のガバナンス及びコンプライアンス、更に言うなら安全保障上の基本的な管理すらできていないことが明らかになりました。

上場企業の役員でも利益相反の恐れがある法人の役職者に親族がなることは望ましくない

上場企業及びグループ会社の役員に就任する際、通常の手続きとして、近親者が取引先、利益相反の恐れがある法人の役職者にいるかどうかをチェックすることは当然のことです。それらの親族がいる場合には利益相反行為を行わないことを誓約することになります。

本件については首相夫人という身分にある人物が「その場のノリ」で名誉校長という役職に就任するという信じがたい行動を行ったことが問題なのです。鴻池議員が告発したような行為を自党の所属議員に行っているような人物について相手の素性をまともに確認することもなく、首相夫人が名義貸しを行ったという危機意識の無さこそが信じられません。

また、首相夫人付きの公務員はその現場を目撃していたとしたら当然制止するべきでしょう。何のためにお付きの人がいるのか、を全く理解していない税金の無駄です。それらの公務員は首相夫人の日々の世話をすることだけが仕事ではなく、このような輩による夫人への篭絡行為を防止するために、国民は血税を払ってそれらの職員を配置しているのです。このような行為を黙殺した上に、ましてその相手の要望に応じて役所に問い合わせた結果を報告する間抜けぶりは常軌を逸しています。忖度云々のレベルではありません。

学校法人という許認可・補助金に関係がある法人の名誉職に、首相夫人という身分にあるものが「自らの一存」で民間の法人の名誉職に就任できる、そしてそれを知りながら黙認してきたことは、ガバナンス、コンプライアンス、安全保障の観点から論外です。

「首相夫人」を「公人」として位置づけ直し、非常識な行動を謝罪・反省することが必要

安倍首相は本件について国有地の払い下げについて強気の発言を行っています。

しかし、安倍首相が国民の代表である国会議員に対して最初に行うべきことは「逆切れ」ではなく、首相夫人の行動をコントロールできていなかった自らの不徳によって国会を空転させていることへの謝罪です。そして、自らの所属政党の国会議員が同法人の反社会性について告発している現状に鑑み、早急に調査をした上で報告すべきでしょう。

安倍首相はこの問題が単なる行儀が悪い学校法人ではなく、北朝鮮などの敵性国家の息がかかった組織だったらどうするつもりだったのでしょうか。昭恵夫人は過去に大麻使用容疑で逮捕された高樹沙耶氏と親交があり大麻解禁論者になっていましたが、それらの問題発覚後も夫人の行動を何ら改善しなかった危機管理能力の不足・無反省ぶりは深刻です。

首相夫人の扱いは安全保障上の重要事項であり、予算委員会で議論することは当たり前です。北朝鮮の恣意行動などへの対処と同様に早期の改善を行うことが必要です。

昭恵夫人がFBで私人として自らの意見表明を出したことには呆れ果てました。いまだ問題の本質が分かっていない証拠です。今すぐ首相夫人を「公人」として位置づけ直して管理すべきです。

仮に安倍首相が昭恵夫人の行動を改善する気がないなら即刻首相を辞任して頂きたいと思います。自民党には他にも優秀な議員が多数存在しており、常識を持った行動ができる夫人を持った方がおります。たった一人の人間を説得するだけで可能な安全保障上の深刻な問題すら改善できない首相は日本に必要ありません。






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2017年03月22日

百条委員会で感じた「豊洲」とは関係ない話

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豊洲の地下水汚染にはほとんど関心がない筆者が思うこと

豊洲新市場の地下水汚染と東京ガスとの土地売買契約を巡る経緯に関する石原氏と浜渦氏に対する百条委員会が終りました。かつての大物知事と辣腕副知事が登場してなかなか見応えがある質疑が成されたものと思います。

しかし、筆者は「豊洲新市場にさっさと移転したら良いんじゃないの」 派なので、百条委員会で石原氏らに環境基準が意味がなかったことを認めさせる一定の意義は認めつつも、質疑内容とは正直言って全然関係ないことが気になってしまいました。

2005年の百条委員会で偽証認定されて辞任した元副知事が天下りしている事実

浜渦氏は副知事時代に議会にやらせ質問を依頼したことを問われた2005年に行われた百条委員会で「偽証」を認定された方です。つまり、百条委員会での偽証なんぞナンボのもんよ、という胆力を持った方ということになります。

結局、浜渦氏は偽証認定されたことで都議会で問責決議を受けて副知事を辞職することになったのですが、まさかその直後に「東京都の第三セクター(東京都交通会館)に副社長になった」とは驚きました。

東京都における議決機関である都議会で「偽証」し「問責決議が可決された」人物に天下りを認める東京都とはどれだけ腐敗した組織なのか、と率直に思います。私自身は浜渦氏が辣腕な方だと耳にしたことはありましたが、副知事以後のポジションは知りませんでしたので、正直言って唖然としました。

石原慎太郎氏が百条委員会で問われるべきは「新銀行東京」の末路ではないのか

石原氏が百条委員会で問われるべき問題は新銀行東京の内実でしょう。新銀行東京は議員の口利きやヤクザものなどによって都民の税金が食い物にされたと噂されている事例です。その杜撰な経営について石原氏に対する住民訴訟も起きています。

筆者としては、本件は納税者の血税を政治家が浪費した最たる事例であったように感じています。豊洲新市場よりも政治責任を問われるべきものであり、その設立からの経緯を徹底的に見直されるべきものです。そして、二度と政府が金融という愚策に新たに手を出さないようにする戒めとすることが重要です。

石原慎太郎氏には百条委員会で今度は新銀行東京の顛末についてじっくりと語って頂きたいものだと思いました。

今回の豊洲に関して、今までの証言をそのまま信じるならば、都知事・副知事が与り知らぬところで、都民に不利益な契約内容を結んだことが明らかになったわけですが、そのようなガバナンス上の問題が発生しないようにすること、更に政治家の都合で新銀行東京のような大失敗が二度と発生しないようにすることをもう一度確認するべきです。

政治家は60歳程度を限度に定年したほうが良いということ

石原慎太郎氏が脳梗塞を患って体調不良のため、彼の百条委員会は1時間で終了しました。その上、非常に明瞭に記憶していること、記憶から無くなってしまったこと、が混在しており、高齢になっても自分に都合が良いことは覚えているものだなと人の記憶の在り方に感心させられました。

しかし、東京都知事のような重大な意思決定を為す要職についていた人が職責から退いて僅か数年で全ての記憶が無くなってしまうことは問題でしょう。日常的に忙しくて過去のことは忘れてしまうのも理解できますが、具体的な証言や資料が出てきたら思い出すことも多いのではないかと思います。

そこで、首長職などの重要な職責を担うポジションの人は比較的健康体である60歳くらいまでを上限に設定するべきなのだろうと思いました。高齢化社会以前は何歳の人でも要職に座っても良いということは道理がありましたが、現状のような長寿社会では少し非現実な気がします。

立候補に制限をかけるわけにはいきませんので、有権者は投票判断に際して「年齢」というものをもう少し気にしても良いのではないかと感じました。

石原都政に関する検証、その失敗を繰り返さないために

石原都政は長期に渡るものでしたが、久しぶりにその流れにない都知事が誕生したことで、石原都政の功罪について徹底的に検証を加えて反省材料にすることは重要なことのように思います。

石原氏には財政健全化などについては一定の功績はあったと思いますが、東京都の隠蔽体質・官僚体質、放漫な財政運営、政治家による口利きなど、注目が集まっているうちに全て掃除することが大事でしょう。

百条委員会を見ながら、一時代の終わり、そしてその反省の必要性を感じてしまったわけで、同委員会はそのための象徴的な意味はあったかなと思います。



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2017年03月20日

トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置とは

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スティーブ・バノン首席戦略官はトランプ政権の黒幕なのか? 

最近の報道などではスティーブ・バノン首席戦略官への注目が高まっているようです。

散々オルト・ライトを馬鹿にしてきた日本人有識者もバノンの存在感の大きさが無視できなくなりつつあり、欧米メディアがバノンの報道を増やすのに合わせて解説記事などが増えてきました。

たしかに、バノン首席補佐官はトランプ政権の意思決定について重要な役割を果たしていると思います。現在のトランプ政権における最重要人物の一人と言えるでしょう。しかし、バノンのトランプ政権内での立ち位置は共和党内の派閥争いの微妙な均衡の上に成り立つ砂上の楼閣でしかありません。

トランプ政権内での影響力を過大評価する論調には全く同意できず、彼も広義の保守派の中の一つのパートを担っている存在として冷静に認識していく必要があります。

スティーブ・バノンの人生、そして力の源泉とは何か

スティーブ・バノンの父は朴訥とした真面目な労働者であり、AT&Tを務め上げた米国における父親像を体現するような人物です。スティーブ・バノンは父であるマーティー・バノンのような人々が米国を支えていると認識しています。

一方、スティーブ・バノンは一流大学を卒業、機関投資家であるゴールドマン・サックスで活躍し、自らの父とは対極にある米国内の特権階級側に所属する一員としての人生を歩みました。

この二人の人生が交錯した瞬間がリーマンショックでした。

父のマーティーがコツコツと積み上げたAT&Tの株価が下落・一夜にして財産を失った一方、スティーブは政府と癒着した一部の人々が何ら責任を取らずにヌケヌケと暮らす姿を金融マンとして目の当たりにしました。この際、バノンは父のような真面目な米国民を蔑ろにした米国の政治への深い憤りを持ったと伝えられています。

この後、スティーブ・バノンはオルト・ライト系とされるネットメディア「ブライトバートニュースネットワーク」との関係を強化し、同サイトをニュースメディアとして大きく飛躍させることに成功しました。

ただし、バノンをホワイトハウスに送り込んだ力はネットメディアの力ではなく、このときブライトバートニュースネットワークの飛躍を支えた、ある有力者の存在にありました。

マーサー財団とトランプの同盟、その同盟関係の代理人としてのバノン

米国には政治運動の資金面を富豪が設立した財団が支えることは珍しくありません。有名な財団はコーク財団などであり、主に共和党系連邦議員らに対して巨額の資金援助が行われていることで有名です。

トランプは大統領選挙の過程でコーク財団と対立・ムスリム入国禁止などの舌禍によって共和党主流派とも対立関係に陥ってしまい、大統領選挙で資金面・運動力面でヒラリーに対して大きく劣後する状況に陥りました。

トランプの苦境に手を差し伸べた存在がマーサー財団です。マーサー財団は共和党予備選挙で保守派の大統領候補者であったテッド・クルーズのスーパーPACへの巨額資金提供者であり、ティーパーティー運動や保守系シンクタンクなどへの資金提供者として近年存在感を高めてきた財団です。

バノンのブライトバートニュースもマーサー財団から10億円以上の資金援助を受けていたと報道されており、バノンとマーサーは政治的同盟関係にあったものと推測されます。

テッド・クルーズの予備選挙撤退後、マーサー財団は急速にトランプに接近し、その過程の中で財団設立者のロバート・マーサーがバノンをトランプに引き合わせました。

また、クルーズのスーパーPACの責任者は現大統領顧問のケリーアン・コンウェイが務めていましたが、同スーパーPACはトランプを支援するためのものに看板が架け替えられるとともに、コンウェイはトランプの選挙対策本部長に就任することになりました。

バノンとコンウェイの合流以降、トランプ選対に保守派の政治運動が結集し始めてトランプとヒラリーの支持率差は急速に詰まっていくことになりました。

ロバート・マーサーの娘のレベッカ・マーサーはトランプ政権移行チームの執行役員に選ばれており、バノンとコンウェイのホワイトハウス入りも含め、人事面・資金面の観点からトランプとマーサー財団が緊密な関係を維持していることが分かります。

トランプの黒幕は「共和党保守派」であって「バノン個人」とは言えない

共和党内では保守派の政治運動を基盤としている保守派、様々な利権構造に支えられた有力な政治家を基盤とする主流派の2つの派閥が権力闘争を繰り広げています。

現在までトランプ政権は大統領選挙の経緯を反映してバノンを含めた保守派の影響力が相対的に強い状況となっています。

ただし、トランプを支える政治勢力の中心は大統領選挙の途中からトランプ陣営に合流したレーガン大統領の流れを組む保守派の政治運動の担い手です。たとえ、バノンやコンウェイなどのマーサー財団と近い関係にある人々が論功行賞でホワイトハウスの重要な地位を占めていたとしても、その影響力の過大評価することは誤っています。

バノンは保守主義運動の中ではニュースサイト運営者に過ぎず、バノンの権力基盤はマーサー財団という保守系の一つの財団が支えているに過ぎません。共和党保守派全体から見た場合、あくまでも彼の位置づけは保守派の一角を占めている新参者の重要人物というだけです。

そのため、共和党保守派の政治勢力全体を指してトランプを支える黒幕と表現することは可能であっても、バノン個人を黒幕と表現する行為は小説であって分析はありません。

また、保守派と対立する主流派はバノンの動きを警戒しており、陰に陽にバノンを追い落とそうとする動きが活発化している状況があります。バノンとコンウェイを支える政治的な背景は他の保守派の人々よりも弱いため、ホワイトハウスや連邦議会の主流派、そして彼らに近いメディアがバノンとコンウェイをネガティブキャンペーンのターゲットにしています。

大統領選挙の過程で生まれた保守派と主流派の対立の関係を背景とし、その天秤のバランスを保守派側に傾けるためにバノンは一時的に保守派から同盟相手として認識されている状態であり、その地位は砂上の楼閣として表現できるものと思われます。

したがって、バノンが首席戦略官として国内政策に強い影響力を持ちながら、国外政策に影響力があるNSCの常席になったとしても、その権勢を過大に評価する論調に与することは誤りです。

スティーブ・バノン首席戦略官の扱いは共和党内の権力闘争のバロメーター

それにも関わらず、筆者はトランプ政権におけるバノンの扱いについては注目すべきと考えています。なぜなら、バノンの扱いは共和党内の勢力争いを測る指標となるからです。

仮に何らかの勢力構造の変化によってバノンがトランプ政権から追放された場合、その現象は従来までの保守派が更に勢力を拡大したのか、それとも主流派が勢力を盛り返しているのか、のいずれかを意味します。

逆に現状のままバノンの権力が拡大し続ける場合、それは保守派・主流派の両派の力が拮抗している状況であり、トランプ大統領の独自の権勢が勢力均衡下で拡大している状況にあることを示唆しています。

スティーブ・バノン首席戦略官はその人生、政治観、歴史観を含めて小説のネタとしては非常に魅力的な人物像を持った人物だと思いますが、その人間性からトランプ政権の性格を導き出そうとする行為はバランスの悪い論評だと思います。

米国政治について面白い物語を描くだけでなく、冷静に分析を加えていく目線が必要です。

<ワタセユウヤ(渡瀬裕哉)初著作のご紹介>


 本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

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2017年03月15日

日経新聞の欧米政治に関する偏向報道が酷すぎる

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先週の土日の日経新聞の内容が酷すぎてびっくりした

今週はオランダの総選挙があるため、日経新聞に米国・欧州の選挙情勢について解説した記事が掲載さました。ただし、一言で述べるならば、極めて稚拙な演出がなされた偏向報道でした。

「国粋の枢軸」危うい共鳴 本社コメンテーター(3月11日・日経新聞・秋田浩之)
極右政党 欧州に烈風 15日にオランダ議会選仏独に連鎖 (3月12日)

筆者の感想としては、欧米のポピュリズム(≒極右、左翼ポピュリズムもあるため)について考察しているにも拘わらず、その考察の解像度が著しく低く、前者の記事であればせめて現地取材をすべきであり、後者の記事であれば前提として新書一冊くらいは読んでから取材結果を公表すべきだと思います。

トランプ、ルペン、ウィルダース、AfDなどの欧州の右派勢力を同じカテゴリーの極右という形でまとめるのは無理があります。これらの政治勢力は主張の根幹となるイデオロギーや政策が全く異なり、これらを同一の極右勢力として論じることは、根本的に頭が悪いのか、それとも欧米人に対する偏見があるのか、いずれなのか迷うところです。

最近では他の新聞の権威が落ちている中で、日経新聞はそれなりのポジションを保っているのだから程度が低い政治解説記事を載せていることは極めて残念です。そこで、両者の記事について徹底的に反証をしておきたいと思います。

「国粋の枢軸」危うい共鳴 本社コメンテーター」の記事の支離滅裂さ

秋田浩之氏が記事中で2回も触れている「ワシントン近郊で開かれた米保守系政治団体のイベント」とは、Coservative Political Action Conserence(CPAC)と呼ばれる全米保守派の年次総会のことです。筆者はこちらの集会に直接参加しましたが、日本のメディアは一部のテレビメディア以外ほとんど姿はありませんでした。

「2月下旬の米保守系政治団体のイベントには、欧州から極右や右派政党も顔をそろえた。報道によれば、フランスの国民戦線やイタリアの北部同盟、オーストリアの自由党の幹部らがトランプ政権側と熱心に接触を重ねた。」という記述もありますが、会場内では「欧州からの極右勢力なんてどこにいたの?」というほどに存在感が薄く、たとえ彼らが居たとしてもあくまでも国内イベントに過ぎないCPACでは端役でしかありません。これを誇張して記事化するのはもはやプロパガンダの類に過ぎません。

CPACにはスティーブ・バノン首席戦略官とともに、オルト・ライトの一部とみなされているブライトバートニュースも初参加の状況でした。会場に参加している保守派の人々からは彼らは形式上の参加を許されているに過ぎず、暖かい歓迎もなければ生暖かい目線が向けられていただけです。ちなみに、CPACの主催団体であるAmerican Conservative Unionのダン・シュナイダー事務局長は自らの講演のタイトルを「オルト・ライトは全く保守ではない」と名付けてオルト・ライトを激しく糾弾していました。

CPACでバノンは当初単独公演の予定でしたが、急遽予定を変更して保守派のラインス・プリーバス首席補佐官と同じ時間に現れて、保守派内での蜜月を演出しました。ただし、この行為はトランプ政権の中でバノンが浮いていると認識されていることを逆に意味しており、バノンが保守派に対して恭順の意を示したものと捉えることもできます。また、バノンとトランプが思想を共有しているという根拠も全くありません。

したがって、CPACがまるでバノンの独壇場であり、欧州の極右が顔をそろえて仲良しでした、というような個別の事象を都合よくつなぎ合わせた記事内容は捏造に近い解釈だと言えます。バノンは保守派の中でも浮いた存在であり、トランプ政権におけるキーマンではあるものの、保守派・主流派に挟まれて好き勝手振舞えているわけではありません。

さらに、秋田氏は記事の中でバノンの思想に関する説明をしていますが、「知人の噂話」を根拠にバノンの思想を解説しています。ワシントンのメディア関係者のひそひそ話の結果が「ヒラリー優勢」の誤報を日本にまき散らした原因だったことを忘れたのでしょうか。

CPACの現地取材もろくにせずに先入観で内容を語り、バノンについては直接取材したわけでもない噂話を掲載したことについて、ジャーナリストとして恥ずかしいものと認識してほしいと思います。

極右政党 欧州に烈風 15日にオランダ議会選仏独に連鎖 (3月12日)」の解像度の低さ

こちらの記事については言うならば、ウィルダースとルペンを同一の極右政党のように扱って並列的な記事にしていますが、彼らの政治的な主張は全く異なるものです。取材をしていることは秋田氏の文章と比べて一定の評価に値しますが、その内容については疑問が残ります。

ポイントは「極右」という表現にあります。基本的に欧州のポピュリズムは反EUの文脈で構成されることが多い状況です。したがって、政治運動を形成するためには「EU」に対置する「我々」を定義する必要があります。

そのため、各国の歴史・文化によるアイデンティティーポリティクスが必要とされた結果、右派系のポピュリズムは躍進しやすい状況があります。しかし、各国民のアイデンティティーは全く異なるため、表出してくるポピュリズム政党の政治的主張にも相違が生じることになります。

たとえば、

ウィルダース率いるオランダの自由党はリベラルな政策を追求した結果として生まれた極右政党です。元々オランダは自由主義の影響が強く、様々な社会政策が極めてリベラルな形で運営されてきました。

しかし、このようなオランダ文化を破壊する存在としてイスラム教やEUが認知されたことにより、自由主義の文化を守るための主張が盛り上がった状況となっています。ただし、社会政策に関しては相変わらずリベラルなままです。また、ウィルダースは貿易の自由化については否定的とは言えません(ただし、貿易自由化=EUのことを意味するわけではない。)

一方、

ルペン率いる国民戦線は元々ネオナチなどの系譜を引き継ぐ人々が多数含まれていた立党状況が示すようにオランダの自由党は真逆の成り立ちとなっています。特にマリーヌ・ルペンは大きな政府に党の経済政策の舵を切るとともに、グローバリズムを批判しています。共和国的な価値観を維持しつつ、それらに反するイスラム教には厳しいという面はあるものの、それ以外はオランダの自由党とはかなり違うものだと言えます。

さらに、

ドイツのAfDは元々経済学者らが作った政党であり、欧州単一市場にも公式には反対の立場ではなく、ユーロの解体と各国通貨の導入を謳っています。AfDはギリシャのようなお荷物国家への金融支援を拒否していることが特徴です。

また、AfDはグローバル化を拒否しておらず、主権を保った上での市場統合については是としています。高度技術者の移民受け入れを主張し、難民や低技能者の移民を拒否する姿勢を示しています。イスラムに関してはやはり文化面から拒否。

ということで、「反イスラム」は共通かもしれませんが、その理由も極めて欧州的な考え方によるものであり、日本で想像しているような極右とは少し趣が異なるわけです。しかも、EUの統治機構には反対であっても、グローバル化や単一市場について各々のポピュリズム政党によって濃淡あるわけです。

「TPP・EU」=「グローバル化」というリベラルなエスタブリッシュメントの安易な発想

筆者は安全保障・国内市場改革の観点から米国がTPPを推進したほうが良かったと考えています。

ただし、TPPやEU自体を「グローバル化」の象徴だとみなす思考は各国の中のリベラルなエスタブリッシュメントの典型的な思考パターンでしかありません。

TPPやEUは見方によってはブロック経済の亜種のような存在であり、これらの枠組みをグローバル化とイコールの存在だと思うことは間違っています。そもそも煩雑な官僚的手続きがそれらの枠組みには求められるため、筆者も参加する自由主義者の国際会議などでは自由経済の観点から否定的な意見が出ることも少なくありません。

欧米型のリベラルな教育を受けた有識者やメディア関係者の頭の中にはグローバル化といえばTPPやEUが大前提であり、それらを否定するポピュリズム政党は全て反グローバルだと思うのかもしれませんが実態としては誤りだと言えるでしょう。

また、メディアはトランプ政権について無根拠なアジテーションを記事にすることは即刻改めるべきです。それらの行為は書き手の自らの知的貧困をさらす行為であるとともに読者にとっても有害であるからです。

日経新聞には一面的な記事内容を掲載するのではなく、各国の政治状況の内実にまで踏み込んだ、読む価値がある記事を生産することに注力してほしいと思います。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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日経新聞の数字がわかる本
小宮 一慶
日経BP社
2013-09-06

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2017年02月10日

トランプは本当にHPから気候変動の記述を削除したのか?

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<トランプ大統領就任式当日(1月20日)にホワイトハウスHPから気候変動の記述が削除された?>

約3週間前の話になりますが、日本でも「トランプ政権発足に合わせてホワイトハウスHPから気候変動の記述が削除された」というオルタナファクトが平然と垂れ流されていました。

トランプ政権が気候変動の政策的な優先順位が低い共和党政権であることから、各種メディアが「トランプによってホワイトハウスHP上から気候変動に関する記述が削除された!(or記述が消された!)」と騒ぎたい理由は分かります。

しかし、これは明らかな事実を歪曲した誇張報道であり、これらを報道した米国主要メディアと日本の各種メディアの倫理観が問われるべきものだったと思われます。

<単なるWEBページの移行:事実の歪曲報道で記事の訂正に追い込まれたメディア>

米国では大統領が変わると前大統領のホワイトハウスのデータは別サイトでアーカイブ化されることで保存されることになります。そして、ホワイトハウスHPは新大統領の施政方針が示されたものに入れ替わります。

つまり、トランプ大統領はホワイトハウスHP上から気候変動に関する記述を「削除した」わけではなく「内容が入れ替わった」ために他の記述も含めてまとめて消えたということが正しいのです。

新政権発足時のHPの内容はまだ十分な情報も無いことは当たり前であるとともに、数少ない掲載されている情報は政権として優先順位が高いものになることは必然的なことです。それを持って記述を削除した・記述が消えた、ということはやや誇張が過ぎると言えるでしょう。

ちなみに、現状ではトランプ政権では閣僚の承認に伴う公聴会でも気候変動に強面とされる閣僚候補のコメントが軟化しつつあり、OPECからの石油ではなく自国のシェールガス主体のエネルギー構造になるとCO2排出量と減少するため、米国がパリ協定に代わる新たな枠組みを提示する可能性すらあるものと思われます。

したがって、日本語サイトでもこのような当たり前の事実認識すらできない偏向したメディアが一部記事内容の修正を行うことになり見苦しい釈明に追われることになりました。ちなみに、多くのメディアはこのことに対する偏向報道についてほとんど訂正も釈明もしていません。

<EPAに対する気候変動に関する記述削除指示、ロイター報道は事実か否かが証明されていない>

上記のようなミスリーディングが米国のメディアを賑わせている中、追い打ちをかけるようにロイターが下記のような報道を行いました。

トランプ政権、米環境保護局に気候変動に関するページ削除を要求

この記事はオバマ政権時代から働いている環境保護局の職員の内部リークが記事化されたものです。しかし、同内部リークが指摘した指示の有無についてはトランプ政権側から裏が取れておらず、なおかつ環境保護局HPから気候変動のページ自体が削除されることもありませんでした。(一部の項目では政策の見直しから修正がありました。)

反トランプ勢力などの論評ではロイターの記事が引き金となり、社会的な抗議・対策の動きが広まったため、トランプ政権が指示を撤回したという理解になっていますが、それを裏付ける証拠は同リーク証言以外にほぼありません。ただし、同指示の存在は環境保護関連の人たちによって誠しやかに事実として語り続けられています。

<米国メディアの報道はタイトルだけでなく内容の吟味も必要>

最近の米国メディアの報道は「タイトルによる釣り」が常態化しており、その報道内容までじっくり読まないといけません。たとえば、ニューヨークタイムズの

With Trump in Charge, Climate Change References Purged From Website(1月20日)

の記事はタイトルだけみれば「気候変動の記事がパージ(追放)された」と書いてありますが、記事内容まで読むと上記で指摘したHPの入れ替わりの過程で生じたものであることが触れられています。しかし、多くの人はタイトルしか見ないことも多く、偏向した世論誘導目的の記事であることが明らかです。

米国では主要メディアが反トランプ勢力に加担する政治的な党派対立が深刻化しています。したがって、その米国の主要メディアの報道だけで情勢に判断することは間違っています。

日本のメディアの大半も「欧米のメディアがこんな報道をしてました」という言い方で責任回避しているつもりかもしれませんが、それらの行為は責任回避になっておらず、米国内の政治闘争に間接的に加わっているだけに過ぎません。

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2017年02月09日

なぜトランプの入国禁止措置に違憲訴訟が起きているのか?

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<トランプ政権は入国禁止を行う入管に関する権限を持っている>

本日はトランプのイラン・シリアなどの7か国からの一時的な入国禁止措置に関する違憲訴訟の狙いについて考えていきたいと思います。

メディア上では入国できなかった人々のお涙頂戴的な内容が流れ続けてきており、難民の入国などをいきなり制限するとは何事だ!きっと違憲に違いないと思った人もいるかもしれませんが、実はそのようなことは裁判の主要な争点になってはいません。

そもそも多くの日本人の多くは、トランプに一時的な入国禁止措置を講じる権限が無い、と思っているかもしれませんが、司法省法律顧問室で同措置が形式的には合法であると確認しており、同措置がただちに違憲になるということはありません。

<極めて米国的な事情に基づく違憲訴訟の観点とは>

では、米国では違憲訴訟で一体何が主に争点になっているのでしょうか。

本件では私たち日本人には馴染みが無い論点が違憲訴訟の対象になっています。

合衆国憲法修正第1条には「合衆国議会は、国教を制定する法律もしくは自由な宗教活動を禁止する法律、または言論・出版の自由もしくは人民が平穏に集会して不満の解消を求めて政府に請願する権利を奪う法律を制定してはならない。」と書いてあります。

本件で問題となっている争点は、今回の入国禁止措置が修正第1条で禁止している宗教差別、つまりイスラム教徒に対する宗教的な差別にあたるのではないかというものです。

単純な入国禁止措置だけでは過去にオバマやカーターが行った入国禁止措置もあり、司法省法律顧問室の形式的なリーガルチェックも経ているために大統領令を制止することが難しいものと思います。そこで、トランプ政権に反対する勢力は「修正第1条」を使った違憲訴訟に持ち込んでいる状況です。

特に政権反対勢力は「トランプ陣営の過去の発言」(イスラム教徒入国禁止など)を例示し、これがテロ対策ではなく宗教差別の意図で行われていることを立証するやり方を取っています。つまり、トランプ政権側としては大統領令自体の形式性よりも選挙期間中などの発言に基づく立法趣旨を問われる展開となっており、おそらくこの状況は多少想定外だったのではないかと推測します。

そして、何よりも本件では大統領令の違法性を単純な違法性ではなく憲法違反に持ち込んでいるところが最大の肝になってくるのです。

<目的は違憲判決から連邦議会における弾劾のコンビネーション>

今回の政権に反対する勢力の訴訟目的は、大統領令を単純に撤回させることだけではありません。むしろ、この大統領令に難癖をつけて違憲判決を得ることによって、トランプ政権を一気に瓦解させることが真の目的であるように推測されます。

合衆国憲法第2章第1条8項では、大統領は合衆国大統領の職務を忠実に執行し、全力を尽して合衆国憲法を維持し、保護し、擁護する ことを宣誓することが求められています。

仮にトランプの大統領令が違憲だということになった場合、現職大統領の行為は憲法を維持・保護・擁護する存在ではないと司法が認めることになります。そのため、トランプに反対する政治勢力は違憲判決後に一気に議会における大統領弾劾に持ち込んでトランプ大統領の首を殺る計画を仕込んでいるわけです。

そして、この強引なトランプ殺しの方法は、最高裁判事でトランプが指名した9人目の保守派の判事が任命される前に進めるしかチャンスはありません。数か月後に最高裁で保守派判事が任命されるまで司法の見通しは極めて不透明であり、民主党側は連邦議会で同判事の就任を徹底的に妨害しつつしつつ、米国各地で同党系の司法関係者によって違憲訴訟が乱発する戦略を取っているわけです。

そして、それに民主党系に与するメディアは国務省が指定している「テロ支援国やテロリスト・セーフ・ヘイブン」ではなく、あえて「イスラム教徒が多数派を占める国」という表現を使って「これはテロ対策ではなく差別なんですよ」というメッセージを流布し続けています。これらは裁判を有利に行うための世論誘導による支援と言えるでしょう。

つまり、これは入国禁止で理不尽な思いをした人がいる、という表面上の話ではなく、もはやトランプ政権と反対勢力による単なる政争の延長線上のものでしかなくなってしまっているわけです。

<党派的な政争目的で犠牲になる米国のセキュリティ>

ジョージ・ワシントン大学のジョナサン・タリー教授が言うように「あからさまなイスラム教禁止ではなく、7か国からの入国を一時的に制限しても世界の大多数のイスラム教徒は影響を受けない」という見解に従って、筆者も同大統領令を軽はずみに違憲とすることは難しいのではないかと思っています。

そして、筆者がそれ以上に問題であると感じていることは、既にトランプ政権は同禁止措置の大統領令を発布した翌日にシリア・イラクのISISを掃討する計画の立案を国防総省らに求める大統領覚書を出してしまっていることです。

つまり、トランプ政権は入国禁止の大統領令を即時適用することによってISIS掃討計画の立案命令を出す前に、彼らが逃げられないor米国に入国できないようにしていたわけです。ところが、連邦地裁の判決によって大統領令が停止したことで、ISISがシリア・イラクから脱出して米国に侵入する千載一遇のチャンスが生まれてしまっています。

上記の状況に鑑み、筆者には同大統領令の立法趣旨はこれから実施するISIS掃討に伴うテロ対策にしか見せませんし、米国内の政治的な党派対立によってテロリストを利する結果となっている状況については疑問を感じざるを得ません。

また、このことを分かった上で違憲訴訟を行う政権反対勢力に倫理観の無さには憤りを覚えます。実際に筆者も月末に仕事で米国に行く必要があるのですが、このような温い対応状況では一抹の不安を覚えざるを得ません。米国民には無暗な反トランプ騒動はいい加減にしてもらって冷静さを取り戻してほしいと思います。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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イスラム国 テロリストが国家をつくる時
ロレッタ ナポリオーニ
文藝春秋
2015-01-07


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2017年02月08日

安倍首相・トランプ会談の狙いに関する考察

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 <安倍・トランプ会談で日本が提案する内容とは>

安倍政権は2月10日のトランプ大統領との会談に先立ち、「日米日米成長雇用イニシアチブ」という包括的なプログラムを準備し、約51兆円のインフラ投資と70万人の雇用創出を提案することが報道されています。

同イニシアティブは5項目で構成されているとされており、米国でのインフラ投資、世界でのインフラ投資に関する連携、ロボットや人工知能での連携、サイバー分野での協力、雇用を守る分野での連携が含まれているとのことです。その上で、トヨタをはじめとした自動車関連産業が米国で150万人の雇用を作っていることを強調するものと思われます。

トランプ政権は安倍首相を歓待した上で、フロリダのリゾートで安倍・トランプのゴルフを設定し、個人的な関係を築く用意を準備していると報道されています。

<元々トランプ政権発足直後に外務省の有識者会議で提言されていたこと>

米国へのインフラ投資推進は日本政府としては規定路線であり、外務省が設置していた民間有識者の「日米経済研究会2016」が昨年11月段階で対米政策の方向性について提言書を提出しています。

その内容はトランプ大統領が推進する米国のインフラ整備について、高速鉄道・再生エネルギー・水関連インフラなどで協力する旨が記載されており、日本政府が力を入れているインフラの輸出が謳われているものでした。

そのため、トランプ政権に対する処方策として予め準備していたカードを切ったということが言えそうです。安倍政権や自民党の支持基盤を見ても高速鉄道の輸出などは悲願とも言えるものかと思います。

また、私見では、安倍政権は第三国への共同投資などにロシアのプロジェクト(ヤマルなど)を含めることで、対中包囲網にロシアを加えることへの米国のコミットを得にいくのではないかと推測します。

<日本が提案する内容が持つトランプ政権に対するインパクト>
 
筆者は安倍政権の外交・安全保障政策は終局的に失敗すると思っているので評価していません。ただし、今回の対米外交の「お土産」についてはトランプ政権に対しては極めて有効だと思います。

トランプ大統領にとってはインフラ投資による雇用創出は願ったり叶ったりのものです。トランプ政権は100兆円のインフラ投資を主張しているためにその財源が問題となってきました。しかし、日本政府が約51兆円の投資を宣言したために数字の上では目標の半分を解決したことになります。(*日本側の投資期間が不明なのでざっくり数字のみ。)

トランプ政権の経済政策の政策効果が出始めるには数年かかると想定されるため、トランプ政権としてはそれまでに象徴的な成功事例が幾つか必要になっています。そのため、日本からの多額の投資が決まったニュースは大きな意味を持っています。(トランプ氏が当初Twitterで指先介入をしたのもセンセーショナルな効果を狙った意味合いもあるものと理解すべきです。)

<インフラ投資が持つ米国外交上の多面的な効果>

また、インフラ投資は米国においては運輸省が所管する領域となります。運輸省はエレーン・チャオ運輸長官が所管していますが、彼女の夫は連邦上院の共和党院内総務のミッチー・マコーネル氏です。同氏はトランプ氏と実質的に対立している共和党主流派のボスです。

つまり、インフラ投資への協力は上記の通りトランプ氏に対して恩を売れるとともに、共和党が支配する議会に対しても友好的なメッセージを送ることになります。米国では連邦上院が外交政策に持つインパクトは大きいため、日本政府の対応は米国の共和党内の分裂にも配慮した賢いやり方だと思われます。また、インフラ投資については米国民主党も積極的であるため、米国の議会野党対策としても機能することが予想されます。

今後、インフラ投資でプラスの経済効果を受ける地域の連邦議員らに対してしっかりと影響力を拡大していくことを通じ、トランプ大統領とその周辺だけでなく連邦議会にも橋頭保から影響力を拡大していくことが望まれます。

<金で解決する外交が持つ限界点も認識すべきだ>

ただし、安倍政権の対米外交のスタンスにも問題はあります。

筆者は金で解決する外交のやり方には必ずしも肯定的ではありません。なぜなら、金で結びついた関係は、自分よりも金を持っているライバルパートナーが現れたときに終わるからです。

この場合にライバルとして登場する存在は中国です。中国は経済成長が鈍化しつつあるものの、世界第二位の経済大国となり、現在でも新常態の中で中速度の経済成長を続けています。

米中の貿易高こそが非常に大きなものがありますが、中国は米国本土にほとんど投資を行っていません。したがって、米国は民主主義国なので中国からの輸出品が選挙区の「雇用」に与える影響が無視できず、米中の距離は現状では比較的遠いものとなっています。

逆説的には、トランプ政権の圧力に屈する形で中国政府や中国企業が米国に直接投資を開始すると、日中の米国に対する影響力のバランスは崩れることになり、日中の今後の経済力の逆転が進展する中で、米国への貢ぎ物競争では最終的に日本は中国に敗北する可能性があります。したがって、日米間の問題を金だけで解決しようという日本の現在の姿勢は好ましいものとは言えない部分もあります。

そのため、筆者が以前から指摘している通り、本来は「金」ではない「価値観」を通じた日米同盟、を目指すべきであり、金はそのための下支え的なものだと認識する必要があります。

<米国から得られるものが皆無の会談になる可能性も>

日本側は米国側に貢物を用意して訪米することになるのですが、米国側が日本に与えるものが何になるのか、ということがイマイチ判然としません。たしかに、安倍・トランプ、日米関係が良好なものになるものと思います。しかし、筆者はそれだけのことに米国のATMとして約51兆円もの資金を拠出するカードを切ることの意味が分かりません。

米国の閣僚人事を見る限りでは、表面的な部分では反中派(ただし、習近平との繋がりは重視)を揃えており、トランプ政権は少なくとも数年は反中姿勢を崩さないものと思います。マティスもティラーソンも正式任命前の上院公聴会の段階から東アジアへの安全保障にコミットする発言をしています。また、日本が固執するTPPについてはトランプが既に撤退を宣言し、二国間協定に対しては日米ともに前向きな姿勢を示しています。

そのため、現段階で「インフラ投資」という日本最大の切り札を使ってトランプ政権から引き出す対価があるとは思えません。

そのため、筆者の見立てでは、安倍政権の狙いは「憲法改正に対するトランプ政権の了解を得ること」にあるものと見ています。安倍政権の悲願は憲法改正であり、その最大の障害は米国です。

国内では左派だけでなく保守にも米国が反対している・懸念していることを理由に、憲法改正や靖国参拝への自制を求める声が少なからず存在しています。それらを抑えるためのトランプとの取引ということであれば同取引を行うことも政権の理屈としては成り立つものと思います。直接的なコメントは無くとも「日本の地域における更に積極的な役割を望む」などの婉曲的な表現は出る可能性があります。

昨年、ヒラリー勝利⇒北方領土進展⇒解散総選挙という一部でささやかれたシナリオがトランプ勝利でご破算になったように、年内と想定されている総選挙にも安倍政権とトランプ政権との関係は影響を与えていきそうです。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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米中もし戦わば 戦争の地政学 (文春e-book)
ピーター・ナヴァロ
文藝春秋
2016-12-02

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