社会問題

2017年05月12日

「禁煙条例」推進者に対する反論

20161117-6

東京都が推進しようとしている「喫煙禁止条例」に対する考え方

喫煙及び受動喫煙によって発がん性が上がるかどうかについては様々な意見が存在しています。今回はその点について議論するのではなく、「東京都内で屋内で一律に喫煙を禁止する」ことの妥当性について考えてみたいと思います。

東京都が屋内で喫煙を禁止することを正当化する理屈は「それが強制的なものであるか」ということが問われるものと思われます。つまり、喫煙を許可している物件があるとして、非喫煙者が当該物件の利用が不可避であるケースであれば一定の妥当性があり、それ以外については非喫煙者が「利用しない」という選択を行うことで話は終わります。

筆者は既に禁煙していますが、禁煙ファシズムへの抗議の意味を込めて葉巻写真を使い続けています。自分が積極的に行わないことでも他者の自由も最大限尊重する世の中を目指しています。

受動喫煙が懸念される場所の大半は利用者によって「利用しない」という選択が可能

上記の厚生労働省が実施したアンケート調査によると、受動喫煙を体験した多い場所は「飲食店」「遊技場」「職場」「路上」ということになります。

このうち、「飲食店」は喫煙スペースがある店は利用しなければ良いだけの話です。喫煙が人々から嫌われる慣習であればあえて同店舗を利用しなければ潰れていくことでしょう。また、喫煙のみor禁煙のみの店舗はそれぞれの嗜好に合わせた独自店舗として付加価値を提供できます。

つまり、飲食店は利用者の自由意志で店舗が選べるために禁止する必要はありません。この点に関してはパチンコ・競馬場などの「遊技場」も一緒であり、議論の余地はないものと思われます。

次に「職場」についても同様のことが言えます。職場によっては喫煙がそもそも望ましくない職場もあり、それらはCSやESの向上のために各職場が戦略的に実行すべきでしょう。喫煙の有無によって働く人のインセンティブも変わるので、それによって職員の採用に影響が出るのは各職場の経営者の勝手です。

喫煙を望まない優秀な労働者を集めるために積極的に禁煙にするのも良いですし、その逆も然りです。労働価値説が通用するような非生産的な職場であればタバコタイムは無駄なので経営者判断で禁止すべきかと思います。しかし、これも経営者の判断に対して労働者は職場を選べるので、政府が禁止するような話ではありません。

議論がある点は路上と公共施設でしょう。路上や公共施設は喫煙者も非喫煙者も利用を回避することはできない、そして両者ともに納税者でもあることから「分煙」が正しい対応になります。喫煙者・非喫煙者の双方が納得できる形の対応を取るべきです。(WHOが主張するように欧州の一地域の分煙の無効性似に関する特定調査のデータで日本にも同様の規制を求めることは議論が粗雑に過ぎます。)

ちなみに、「家庭」についてはそれほど受動喫煙が嫌なら結婚しないor同居しない、という選択を取ればよいです。または、どの場所で吸うかなどのルールを家庭の自治で決めることが可能なので、一律に禁止することは理屈に合いません。子どもの受動喫煙などは虐待の問題として別途扱うべき問題です。

賃貸物件の場合は、喫煙を許容するか否かは物件オーナーの方針によるところもあり、民間同士の賃貸契約に政府が介入する必要もありません。オーナーと利用者が情報開示を適切に行うことで対応できます。

極めて解像度が荒い国際機関による条約内容を受け入れる国・地方自治体は無能だ

東京都知事や厚生労働大臣が屋内禁煙にこだわっている理由は、国際機関による条約を守らなくてはならない、というインセンティブが存在しているからでしょう。

2005年に日本も批准している「たばこ規制枠組条約」が発効し、受動喫煙の防止対策、製品への警告表示方法、たばこ税引き上げまで盛り込まれています。また、同条約に基づく「たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン」の中では屋内施設の100%完全禁煙が求められています。

そして、これらの条約の影響もあって、2010年から国際オリンピック委員会と世界保健機関が「たばこの無い五輪」を推進しています。

しかし、筆者は「国際機関が主張している世界の常識」を日本もさっさと受けれ入れろ、という意見には一切与しません。なぜなら、地域における政策はできるだけ住民に近い場所で判断するほうが適切に判断できるからです。

上記のアンケート調査を見ても明らかなように、飲食店などは自由意志で利用の有無を選べるため、一律に禁止する必要はありません。また、遊技場などの屋内施設については議論する余地すらないでしょう。

つまり、国際条約・ガイドラインの立案者は、個々の地域の内情までは情報の非対称性の問題で分からないので一律禁止しろ、と言っているに過ぎず、補完性の原理を無視した全く非効率で非民主主義的な決定に過ぎないからです。

要は政府や地方自治体が国際条約を根拠に自らが定めたい条例制定について法的正当性を訴えることは、自らが住民の個々のニーズや実態を把握できない無能な政府であることを証明しているのです。

また、喫煙によって何らかの特定疾患の医療費が増加するとした場合、その疾患に対して既存のたばこ税の使途を特別に割り当てるだけで良く、従来までのようにたばこ税を一般財源として扱うことがそもそも間違いです。

仮にオリンピックを実施するために質の悪い条例を制定し、国民の自由を制約することを優先するならオリンピックなど必要ありません。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 14:21|PermalinkComments(0)

2017年05月09日

「教育無償化」の憲法明記という思考停止を超えた改革を

d08ca6811229d1d0a891a7a5a2345744

「大学・大学院まで含めた高等教育を受ける権利」=「教育を税金で提供すること」ではない

大学・大学院まで含めた高等教育の教育無償化(税負担化)について、多くの人が根本的に勘違いしていることは「人々が教育を受ける権利を保障すること」を「人々に教育を税金で提供することを保障すること」と勘違いしているということです。

この2つは似ているようで全く違うものを意図的に混同しています。

まして、「大学・大学院まで含めた高等教育の教育無償化」を憲法に明記することは完全な思考停止の産物であり、学生のためにも社会のためにもならなことを説明していきます。

「高等教育を受ける権利を保障する方法」は「税金で保障する以外にも十分に可能」

さて、そもそも大学教育を受けるために人々が必要とする金額は幾らでしょうか。現状の最低価格帯は卒業までに約70万円程度です。これは放送大学などの通信制大学の価格帯の話です。

授業内容という意味では大学教授に中途半端に対面で習うよりも余程しっかりした内容が教えられています。仮に4年間かけて卒業すると仮定した場合、1年間16~17万円、月に1万数千円の負担ということになります。

さらに、筆者も大学に関与する立場を持っていますが、正直に言ってしまえば「4年間も大学に物理的に通う必要性」は教育を受けるだけならありません。むしろ、現状の大学は毎週ごとに自分の著作を教科書に指定する教授の話を一章づつ延々と聞くだけの授業が多く、指定された教科書を一冊読み切って理解すれば単位が取れる課目が大半です。

大学教育が高くつく理由は、研究者が教室でダラダラと4年間も教える、という現状の大学の高コスト体質が問題なだけでしょう。奨学金問題は役に立たない授業をダラダラと提供し、その教育価値も良く考えずに金を貸す体制にこそ原因があります。大学の授業の方法は時間コスト・金銭コストも含めて理にかなったものではありません。

人々に等しく大学教育を提供するためには、現状の古臭い対面形式の授業ではなく、各課目をオンライン化して低価格で効率的に提供することで対応できます。誰もが研究者になるわけではないので、専門分野の最低限の知識を享受できる環境の構築ができれば大半の学生の教育には十分です。

上記の月1万円のコストを負担できない人はそもそもやる気がないと看做して良いでしょう。どうしても、それでも全ての人に月1万円を払ってあげたいという方は私設の奨学金を用意してあげてください。皆さんの給料の一部からでも払えます。

「インドの大学」で見かけたドイツの大学のオンライン授業の営業活動

筆者がインドの大学に仕事で訪れていた際に、偶然にもドイツの大学関係者が来印して当該インドの大学の関係者とビジネスミーティングを開いているところに出くわしました。

ドイツの大学関係者の人々は、インダストリー4.0などの最近のドイツの工業事情も踏まえた非常に質の高いオンライン授業のパッケージを構築しており、英語が比較的得意なインドの学生向けに同パッケージの営業活動に来ていました。筆者は話の流れでプレゼンテーションの場に同席することになり、大いに感銘を受けた事を覚えています。

インドは大学が一大産業となっており、筆者がお会いした大学経営者も6大学を経営しているというビジネスオーナーでした。その下で働くスタッフもドイツのオンライン授業がどのように学生に役立つのかを真剣に質問していました。卒業生の質の確保も含めた激しい競争下にあるインドの大学の姿は日本の牧歌的な雰囲気の大学とは趣が違うものでした。(ちなみに、このインドの大学は中の下ぐらいのレベルです。)

上記の話は授業のオンライン化などが世界的にも進展しているという教育環境の変化の一つの事例です。もはや対面で授業を行う必要がなくなっているだけでなく、他国の大学の優れた授業をオンラインで受講することが可能な状況が生まれつつあり、日本の大学教育も根本から見直しを検討するべきでしょう。

「高等教育の教育無償化(税負担化)」の憲法明記は教育の形を固定化して時代遅れにする

大学・大学院まで含めた教育無償化(税負担化)をどのように憲法に盛り込むのか、は議論があるところですが、憲法は一度制定されると再度改正することは極めて困難だと思われます。

そして、これらの税負担を前提とした大学・大学院の教育は、世の中の流れについていくことは極めて困難でしょう。なぜなら、政府の保護によって自由市場からの影響を排除した形になるため、教育機関間の健全な競争が働かず、社会からの要請への感度が下がることになるからです。

政府が大学を厳しく管理して競争を促すという発想もありますが、そのような発想はそもそも研究や教育というものを全く理解していないものです。政府が認定する教育内容というものは社会的に権威化されたorポリティカルコレクトネスにかなうものだけになる可能性が高いと思われます。

したがって、そのような大学教育は時々の支配的な思想・方法論に盲従するだけとなり、社会に革新をもたらすような優れた教育は行われないでしょう。学生に既に化石化しつつある教育内容を延々と受けさせることが「学生や社会のためになるのか」ということは良く考えたほうが良いと思います。

また、筆者は、シグナリング効果を除けば、大学・大学院という教育モデルが存在価値が問われる過渡期に突入していると感じています。社会から大学・大学院という教育の形が有効なものといつまで看做され続けるか疑問です。(大学によってはほぼ意味がないものと既に看做されているケースも少なくありません。)

そのため、教育環境自体が過渡期にある中で、大学・大学院を前提とした教育無償化(税負担化)を盛り込むことが実際には社会の革新を妨げることすらあり得ると感じます。

最後に、税金ジャブジャブで運営されるような機関は、新たな天下り先となることは必然であり、学生のための教育ではなく文科省と大学関係者が暮らしていくためのものになるだけです。社会を停滞させる利権作りはもう沢山です。

「正しい改革」の基本は「利用者側」ではなく「供給側」を改革すること

「特定の社会的なサービスを受けられないから、サービス利用者にお金を配る(税負担)」という発想は良いサービスも生まれなければ利用者のモラルハザードも生みだします。また、現状の制度・サービスの革新を考える必要もなく、単純に金をばらまく思考停止そのものです。

「全ての人にサービスを受ける権利を保障する」と言えば聞こえが良いですが、時代遅れのサービスを全ての人に提供することは間違いでしょう。また、サービス利用者がサービスの利用に適切にコミットするインセンティブを与えることも当然に考慮すべきものです。したがって、サービスの対価を税金で賄えば良いという単純な話ではありません。

本当に必要なことはサービスの供給側の改革であり、現状の高価格・低品質・長期間かかるサービスを、低価格・高品質・短期間で利用できるサービスに変更するために知恵を絞ることです。

サービス利用者を甘やかす行為は結果としてサービス供給者の怠慢を生みだし、結果としてサービス利用者の便益が低下することに繋がります。

「政府が税金で負担することが人々の権利を保障することだ」という思い込みはソヴィエトが存在していた頃から現役の人たちの時代で終わりにしてください。

そして、現代を生きる若者は自分たちがどのような教育を受けるべきなのか、を真剣に考えてほしいと思います。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 09:29|PermalinkComments(0)

2017年05月05日

憲法9条と防衛大臣、本当に議論されるべきことは何か

稲田

憲法9条改正で多くの国民が勘違いしていることとは何か

安倍首相が中途半端な憲法改正を打ち出したこともあり、左も右からも憲法論議が少しだけ盛んになっているように思います。

ただし、筆者は憲法9条については改憲論者(現状の著しく不合理な内容は改正すべき)ですが、そもそも憲法改正論議などという不毛な議論に政治的資源を割り当てることは論外だと思っています。

左も右も「憲法があるから戦争が起きない」とか「憲法を改正すれば中国・北朝鮮に勝てる(または抑止になる」とか、低レベルな議論はいい加減にするべきでしょう。

はっきり言いますが、「憲法」を議論すること、「安全保障・防衛政策」を議論すること、まして「戦争を議論すること」は全く別物です。

憲法があるから戦争が起きない、憲法9条を改正するから抑止になる、のでもなく、米軍・自衛隊の具体的な戦力及び日米に国際環境を形成する外交能力があるから物理的な戦争が起きていないだけです。

憲法の内容を変えることで戦争開始・戦争勝敗に影響があると思う「呪術志向」の人たちは実際の安保・防衛政策や戦争について議論することは危険なのでやめてほしいです。

象徴としての憲法9条改正を主張する首相と全く無能な防衛大臣の組み合わせ

安倍首相は憲法9条改正を主張していますが、実際の安全保障政策・防衛政策にどこまで関心を持っているのか極めて疑問です。

なぜなら、安全保障・防衛政策を所管している防衛大臣に不適格な人事を行っているからです。国会答弁の最中に泣き始めるような感情的な人物を防衛大臣に任命していることは話になりません。また、スーダンのPKOに関する日記問題では組織を全く統率できていないことも明らかになりました。

別の国会の場面では、稲田大臣は長島昭久衆議院議員に「特定の自衛隊の具体的な装備内容・予算」について問われて「事前通告が無かったので答えられない」と答弁していましたが、嫌がらせ的なクイズはダメとしても事前通告がなかった場合に如何なる兵装についてなら答えられるのでしょうか。法務・総務・財金畑のド素人を防衛大臣の席につけた責任は重いと思います。

また、外交交渉を担う岸田外務大臣は安倍首相にとっては現在政敵とも言える人物です。現在、重要な外交交渉は官邸主導で実施しているように見えますし、防衛・外務両大臣がまともに機能しているか不安を覚えます。

安倍首相が憲法9条改正を議論してもかまいませんが、現在の安全保障・防衛・外交政策の人事的な意味での適切化を行う方が先であるかことは明らかです。

まさか安倍首相は憲法9条改正が目の前の安全保障・防衛・外交の具体的な問題よりも大事だと思っているとは思いませんが、仮に今すぐ戦争になった場合に「稲田防衛大臣」「岸田外務大臣」で十分に戦えないでしょう。

憲法9条と安全保障・防衛政策・外交交渉は別物、具体論を議論する時代に

国民の多くは左右の識者たちの議論によって、憲法9条改正と安全保障・防衛・外交が結びついているように錯覚させられています。しかし、安全保障・防衛政策・外交交渉は具体論であって憲法9条と現実の戦争は直接的には関係ありません。

政府答弁によって攻撃的兵器を持つことは憲法上禁止されているとされていますが、このような地理的な概念に制約された兵器概念自体が時代遅れであり、不合理な政府答弁が見直されることは必然だと思います。したがって、このようなことも議論するまでもなく見直されるべきものであり、現行憲法下でも内容の見直しは可能です。(昨年の安保法制で事実上見直されたものと理解しています。)

その上で、国際環境形成、自衛隊の目的、装備内容、運用の実際などが体系だった議論によって行われていくべきです。日本の安全保障を守るために必要な議論とは、防衛大綱や中期防でどのような兵力を揃えていくべきか、などの具体論です。

国会議員のうち何名が日本の具体的な兵装の在り方についてまともに話ができるでしょうか。まして、現実妥当な装備計画、予算、運用について議論できる人は少数しかいないはずです。これが世界有数の軍事費支出を行っている日本という国の現状なのです。

また、北朝鮮への日本自らによる制裁だけでなく、米国に言われるまでもなく北朝鮮の貿易相手国に積極的に制裁を行うことを確約させるよう動くべきでした。米国の指示で慌てて関係国への働きかけを行っている日本の姿は悲しくなります。

国力の基本は経済力と外交能力であり、各国はその制約下で兵装を整えていくことが求められます。闇雲な軍拡はかえって国力を削ぐ結果を生みだすため、憲法改正したとしても軍拡をすれば良いという問題ではないのです。現在の国会の議論の状況ではどのみち実際の戦争に対応することは困難かと思います。

安保法制の議論の時の左派のような愚かな議論は必要ありませんし、ほぼド素人と言っても過言ではない防衛大臣を任命している場合でもありません。そして、国民もいつまでも憲法9条改正という、実際にはどうでも良い話題にかまけているべきではないでしょう。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 19:09|PermalinkComments(0)

2017年04月27日

クリスチャントゥデイで「トランプの黒幕」の書評を頂きました。

ダウンロード

クリスチャントゥデイで「トランプの黒幕」の書評を取り上げて頂きました

神学書を読む(14)渡瀬裕哉著『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』

キリスト教系メディアであるクリスチャントゥデイで拙著『トランプの黒幕』の書評を取り上げて頂きました。

自分は洋の東西問わず神学や思想書が好きで結構読むことが多いので、同メディアで書評を頂いたことは新鮮であるとともに素直に嬉しいです。本書がキリスト教者の皆様のトランプ政権理解に少しでもお役立ちできれば著者として幸甚です。

トランプ政権とキリスト教の関係、その協調と緊張関係についての考察

トランプ政権は、共和党支持者が持つ極端なリベラルを排した素朴な倫理観を代表する政権であり、選挙戦の時には「ヒラリーでなければ良い」という敵の敵は味方という理屈もあって、特に共和党保守派が押し上げて作った政権です。その結果として、最高裁判事の人事などでは保守派のゴーサッチ氏が選任されるとともに、中絶を巡るメキシコシティポリシーの問題などでは成果を上げるに至っています。

しかし、トランプ自身は必ずしも敬虔なキリスト教徒ではなく保守派の体現する倫理観を共有している存在とは言えません。トランプは政敵に勝つために自身の思想信条をコントロールするタイプの人物であり、まさに商人スタイルの政治家ということが言えると思います。

したがって、トランプ政権と保守派(≒福音派)の間では政権の裏側では緊張関係が続くとともに、クシュナーなどの元民主党員が政権内で台頭することによる軋轢は高まるものと推測されます。

書評が増えてくると結構嬉しい、ということ

拙著『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』最初はどんな辛口の書評が出てくるだろうか、もしくは全く書評もつかないのではないか、と懸念していましたが、意外と様々なところで書評に取り上げて頂けるようになってきました。

相変わらずリベラルな大手メディアは国際政治学者らの「的外れなトランプ本」の書評ばかりを取り上げておススメしていますが、今回キリスト教福音派の研究をされているような「米国の実相に近い方」から評価頂けることは非常に光栄です。感謝いたします。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 06:50|PermalinkComments(0)

2017年04月15日

#FireKushner がトランプ支持者の間で流行っている

170322152501-aspen-trumps-exlarge-169
(CNNから引用、オバマケア代替法案成立失敗時にスキーに出かけていたクシュナー一家)

共和党保守派によるトランプ・ファミリーへの逆襲開始

トランプの黒幕?何故、クシュナーは台頭しているのか

を投稿したら、Twitterのハッシュタグで #FireKushnerが増加していることに気が付きました。

米国民の保守派はホワイトハウスで何が起きているのかを理解しているようです。嫌々ながらも選挙で応援してきた保守派の人々を裏切って、主流派や民主党出身者を重用しようというのだから、保守派から逆襲されて当然と言えるでしょう。

保守派とトランプの間の蜜月関係にもヒビが入ることになるだろう

トランプも直径家族であるクシュナーを安易に退けることは難しいため、上記の対立関係が深刻化した場合、トランプ政権自体を事実上レイムダック化させるところまで行く可能性すらあります。

原則として「保守派は裏切り者を許さない」傾向があります。元々保守派の運動団体は納税者保護誓約書に署名しなかったトランプと彼の取り巻きのリベラル傾向を警戒しており、今回のクシュナーの台頭に象徴されるようなトランプのリベラル回帰をある程度予測していたと言えるでしょう。

実際、バノンの降格をきっかけとして反クシュナー(主流派・民主党出身者)のキャンペーンが貼られたことは、保守派の意見表明、ということになります。これらの草の根ネットワークによる反クシュナー運動が盛り上がると、共和党議会の保守派対策にも影響が出ることになります。

また、クシュナーは議会でロシアとの繋がりを糾弾されつつありますが、こちらも共和党保守派が庇わなくなった場合、かなりの窮地に立たされることが予想されます。

政治家事務所などの鉄則としてはNo2に家族をおいてはならないということ

これは日本でも言えることですが、事務所のNo2に家族をつけることは望ましくないこと、ということです。息子などを政治的な後継者する場合は例外ではあるものの、何らかの形で家族に批判が寄せられた場合、その批判は家族だけではなく政治家本人にまで及んでしまうからです。

トランプが家族を信用するというのは理解できますが、クシュナーやイヴァンカをホワイトハウスに招き入れたことは政治的な悪手だと言えます。No2を悪者にしてトップへの批判を回避するという伝統的な政治的やりくりの手法を採用することができないからです。

現状はまだ保守派の運動団体の一部に火が付き始めた段階であり、トランプは対処を誤らなければボヤで済ませることができるはずです。しかし、一度保守派を敵に回してしまうと大炎上することになって議会対策どころではなくなることになるでしょう。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 21:30|PermalinkComments(0)

トランプの黒幕?何故クシュナーは台頭しているのか

Jared_Kushner_cropped

ジャレド・クシュナー大統領上級顧問の力が強まってきているとされているが・・・

当ブログでは、トランプの黒幕と噂されていたスティーブ・バノンについて、

トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置

の記事などで砂上の楼閣であり、その影響力の低下の可能性について触れてきました。当時は何も知らない日本の有識者らがバノンを黒幕として恥ずかしい動画などをネットに公開したり、陰謀論めいた論説を記事公開・出版などを行っていました。(ちなみに、筆者の著作である『トランプの黒幕』はバノンのことを指しているわけではありません。)

現在、バノンの影響力が相対的に低下しており、代わりにクシュナー上級顧問の影響力が強まっていることから「クシュナーこそが黒幕だ!」という妄言が再び出てくるようになっています。娘のイヴァンカがシリア攻撃を決断させた要因だったとか、本当にひどい言説がばかりで面白いものです。

きっと、もう少ししたらトランプの「頭」の中にクシュナーが乗って操縦しているような表紙のトンデモ本が出版されることになることでしょう。

クシュナーの影響力の源泉は、共和党主流派・ウォール街とのパイプ役として

トランプ政権のホワイトハウス及び主要閣僚は共和党保守派によってほぼ独占されている状況となっています。そのため、それらと対立する共和党主流派・ウォール街が政権にアクセスするルートは限られていることになります。

クシュナーはゲーリー・コーン国家経済会議議長とムニューチン財務長官とも親しい元民主党員です。コーンも民主党員であり、ムニューチンはリベラルの影響が強いハリウッドでも活躍していた投資家です。(二人ともGS出身であり、クシュナーと親しいことも要因の一つとなって政権入りしています。)したがって、共和党内部では保守派よりも民主党に近い主流派寄りの人物と言えます。

現在のトランプ政権では、このNY派の人々を通じた共和党主流派・ウォール街による政権へのハイジャックが起きようとしている状況です。つまり、トランプ政権を誕生させた保守派、そしてオルトライト的な傾向がある面々の立場が弱まり、選挙時にはトランプに敵対していたはずの主流派・ウォール街がホワイトハウスの新たな主になるべく蠢いている状況です。

クシュナーはトランプに近い立場にある非保守派の人間であることから、彼らの代理人としての影響力を強めている状況にあります。保守派の特攻隊員的な位置づけであるバノンの力が低下し、クシュナーの力が伸びていることはホワイトハウス内の保守派・主流派の両派の力関係の変化を示すバロメーターとなっています。

したがって、黒幕というよりも、バノンもクシュナ―も党内の勢力争いの状況を観測するための観測球のような役割を担っていると言えるでしょう。

トランプは元々保守派ではないリベラル・民主党員・ニューヨーカー

トランプ大統領は多くの人が勘違いしているように保守派の人ではありません。民主党系の人々やメディアが滅茶苦茶なバッシングを行っていますが、むしろ過去にはクリントンにも献金していたリベラル派の人物であり、ニューヨークでの大富豪でもあります。

彼は近年民主党での大統領選挙出馬の可能性が無くなったことから急速に共和党保守派に接近してきた人物であり、今回の大統領選挙では「敵の敵は味方」(ヒラリーの敵は味方)の論理で、保守派が仕方なく応援して誕生した大統領です。

トランプ自体は選挙時の選対本部長もコーク系のリバタリアン団体出身のコーリー・ルワンドウスキー、主流派のポール・マナフォート、保守派のケリーアン・コンウェイとその都度必要に応じて全く主義主張の異なる人々を採用する蝙蝠のような行動をしてきています。

そのため、ホワイトハウスの要職は最後に協力していた保守派が占めていましたが、トランプと保守派は潜在的な緊張関係にあり、クシュナーの存在、ましてイヴァンカのホワイトハウス入りは保守派はあまり快くは感じていないものと思われます。

実際、トランプは政権発足当初は保守派に配慮した運営を行ってきましたが、徐々に保守派色を弱める政策対応を行ってきています。その結果として、トランプ一族が持つリベラルなエリート傾向とワシントン政治の一掃を求める保守派との間で亀裂が生じつつあります。

大統領選挙で応援した人々を敵に回す大統領に未来はあるのか?

トランプはバノンの処遇を問われて「バノンは選挙の終盤で合流しただけだ」と発言しました。

それはケリーアン・コンウェイを含めた保守派の運動団体全般にも該当する発言であり、筆者はオバマケア代替法案先送りの際にトランプが「フリーダムコーカスは敵だ」と言い放った時よりも政局運営上深刻な発言だったと感じています。

トランプ政権はオバマケア代替法案の失敗の経験からワシントン政治に漬かったやり方に方針転換し、非常にきめ細やかな議会対応を行うようになってきています。これは政権運営上プラスではあるものの、トランプは政権を支える自らの屋台骨の入れ替え(保守派から主流派・民主党へ)に着手したように見えます。

はたして、トランプ政権の方針転換を保守派がどこまで容認するでしょうか。

保守派は最高裁判事の任命で同じ保守派のゴーサッチ氏が任命されるまでは、選挙で応援してきたはずのトランプによる保守派に対する無礼な発言に対して我慢してきたものと想定されます。しかし、ゴーサッチ氏の上院承認が行われた以上、今後はトランプ一族によるホワイトハウスの塗り替えを許容し続けることはないでしょう。

差し当たって、債務上限問題、税制改革、インフラ投資など、様々な議会案件について保守派による巻き返しが行われていくことになるものと想定されます。トランプは自らの唯一の政権基盤(≒保守派)をひっくり返す博打を打ちつつあるわけですが、それが功を奏す可能性は高くありません。

政権発足から約100日、対外的な緊張も高まる中で米国内の政局は更なる混沌に陥りつつあります。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 12:33|PermalinkComments(0)

2017年04月06日

バノンが「トランプの黒幕」ではないのは当たり前だ

img_1
(ひぐらしのなく頃に、から引用)

スティーブ・バノンは重要人物だが「黒幕」と呼べるほどの存在ではない

トランプ大統領誕生以来、新設の首席戦略官というポストに就任したスティーブ・バノンは「トランプの黒幕」と表現されてきました。バノンの存在は米国共和党のことを良く知らない「ど素人」の有識者らには格好のネタだったのだと思います。

筆者はバノンについては「トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置」でも指摘してきた通り、「バノンのトランプ政権内での立ち位置は共和党内の派閥争いの微妙な均衡の上に成り立つ砂上の楼閣」として評価してきました。

今回NSC常席からバノンが外されたことについてトランプ政権は理由をつけて大したことがないように表現していますが、同政権内での力関係に変化が生じつつあることは明らかです。

トランプの黒幕は「トランプ政権を作った共和党保守派」の人々である

3月31日発刊した拙著は「トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体」(祥伝社)というタイトルで、全国の書店に置いていただいています。もちろんバノン単体をトランプの黒幕だと断定する内容ではありません。

しかし、正直言って、「バノン」や「クシュナー」、挙句の果てには「イヴァンカ」がトランプの黒幕であるというトンデモ解説が溢れており、Googleで「トランプの黒幕」のワードを検索するとロクな分析が出てこない有り様です。

トランプ政権を作った原動力であり、現在も同政権を支えている人々は「共和党保守派の人々」です。小さな政府などの保守的な価値観、建国の理念を信じる人々の集団、そのリーダーたちがトランプ政権を支えています。

その多くはレーガン政権時代から続く保守派の流れの中で育ってきたプロフェッショナルです。彼らは黒幕というよりも本来は「黒子」という表現が正しいかもしれないと思っています。

バノンはマーサー(メルセル)財団という新興のパトロンを背景とした保守派内の新参勢力に過ぎず、トランプを支える保守派の中では明らかに浮いた存在です。実際に共和党保守派の重鎮らに会って話を聞けばバノンとの距離が離れていることは直ぐに分かることであり、彼をトランプをコントロールする黒幕として過大評価してきた有識者らは共和党のことを何も知らない人たちです。

選挙戦の経緯からトランプ政権にマーサーの意向が強く反映する傾向はあるものの、現在ではバノンは局的な下手を打ち過ぎたことから影響力の低下が起きていることは明らかでしょう。

ライアンケアの先送り後、急速に議会対策を綿密に行うようになったトランプ政権

ライアンケア(オバマケア代替法案)の先送り後、トランプ政権は議会対策・政局対策の面で極めて巧みな動きを見せるようになってきています。

切り崩し可能な様々な議連に接触したり、法案に反対しそうな個別の議員の説得に応じたり、保守派の重要人物らの囲い込みに走ったり、と今までにない積極的な対応を行うようになってきました。

ワシントン政治への対応力の急速な向上は、政権発足以来政局を担ってきたバノンから共和党の生え抜きの人々に議会対策・政局対策の主導権が移ったことを示唆しています。

また、バノンはテロリスト渡航防止法対象国からの入国禁止大統領令の積極的な推進者であり、彼のスタッフであるセバスチャン・ゴルカはグローバル・ジハード論者です。

この観点から保守派内のリバタリアン陣営(≒フリーダムコーカス)を率いる大富豪のコーク兄弟と対立してきましたが、バノンがNSC常任から外れることはコーク兄弟に対してトランプが議会対策の観点も踏まえて一定の恭順の意を示したものと捉えるべきでしょう。

ちなみに、バノンが外れるとともに、コーツ国家情報長官、ダンフォード統合参謀本部議長、常任に復帰、エネルギー長官、中央情報局長官、国連大使が追加されたところを見ると、これは5月19日のイラン大統領選で反米強硬派が勝利する可能性をを踏まえた布陣を敷いたと見るべきです。

トランプ政権を偏見や陰謀論で語る「小説」ではなく「分析・考察」が必要だ

現在、トランプ政権が発足してから随分と時が経った状況となっています。それにも関わらず、書店のトランプ本コーナーには相変わらず、国内の有識者の人々による偏見や陰謀論まがいの書籍が大量に並んだままです。

筆者は「バノン、クシュナー、イヴァンカなどがトランプの黒幕だ!」というトンデモ話をそろそろやめるべきだと確信しています。それらは小説的な読み物としては面白いかもしれませんが、トランプ政権を真剣に理解しようと思っている人には害悪でしかありません。

我々日本人もトランプ政権に対して真面目に「分析」と「考察」を行っていく段階となっています。


*下記の拙著をご覧いただければ米国で何が起きているのか、は論理的に分かります。


本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 22:44|PermalinkComments(0)

2017年03月30日

著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)のご紹介

無題
Amazonでの購入はこちらをClick!)

著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を発刊します

ブログ読者の皆様のおかげで『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を2017年4月1日に出版する運びとなりました。深く感謝いたします。(一部都心の本屋さんでは既に陳列が始まっているようです。)

読者の皆様のおかげで現在Amazonのカテゴリー「アメリカ」で1位~2位で推移しています。

本作を執筆するきっかけとなりましたのは、まさに本ブログの更新及びアゴラへの転載を祥伝社の編集の方に注目して頂いたことです。

日本国内ではヒラリー勝利が喧伝していたいい加減な言論が蔓延する中、データと事実を用いてトランプ当選の可能性を予測した圧倒的な少数派として、日本人に正しい情報を伝える取り組みを続けてきたことを認めて頂いたことを嬉しく感じております。

本作の読みどころ「日本人と180度真逆の発想を持った共和党保守派を知ること」

本作で取り上げた大統領選挙やトランプ政権の解説について是非多くの皆様にご一読いただければと思います。その上で、筆者が読者の皆様に強調したいことは「共和党保守派」という大半の日本人とは180度真逆の発想を持った人たちについて理解を深めてほしいということです。

多くの日本の有識者は共和党保守派について良く知らないまま、彼らについて偏見に基づく解説を行っています。米国政治に関する研究は共和党保守派を蔑視する学者らによって行われてきており、無自覚なのか意図的なのか分かりませんが、日本人に対して正しい情報が伝わりにくい環境があります。

本書は筆者が2009年当時から付き合ってきた保守派の人々の政治的な思考・行動を大統領選挙及び組閣に絡めてまとめたものであり、政権与党である米国の共和党の中で影響力を強める保守派の考え方を知るための一助となるものと思います。

なぜ共和党保守派は「小さな政府」を求めているのか、そして大統領選挙にどのように関わってきており、トランプ政権の中で自らのポジションをどのように位置付けているのか、リベラルな関係者によって寡占されている一面的な報道などでは伝わらない米国の今を理解できるものと思います。

次回作があれば、今度は「共和党保守派の政治システム」について書かせてほしい

万が一、本作が人々に受け入れて貰えて一定数以上販売実績が出た場合、将来的には「共和党保守派の政治システム」について解説する本を出したいと思います。

共和党保守派が有する、①統合機能(年次総会)、②司令塔機能(毎週実施される作戦会議)、③運動支援機能、④訓練機能(選挙学校)⑤政策立案(シンクタンク)、⑥資金源(財団)、⑦メディア及びメディア監視機能、➇歴史教育、などがどのように有機的に結びついて機能しているのかという分析をまとめたものを想定しています。日本の政治では見たことがない近代的なシステムが存在しており、筆者は非常に驚かされた経験を持っております。

2年前に我が大学に上記のシステムを調査する研究計画を提出したときに、このイデオロギー的に偏った企画は君の趣味だよね、という感じで却下された研究企画なのですが、米国政治やトランプ政権を理解するためだけでなく、日本の政治改革にとっても重要な示唆が含まれたものだと確信しています。(むしろ、本件について一緒に研究して頂ける大学研究室などがあれば同時に募集しています。)

上記の内容を出版という形でまとめることができれば、単なる研究というだけではなく多くの日本の方に知って頂く機会にもなるため、非常に有意義なものになるのではないかと夢想しております。

とはいうものの、まずは本作が売れてくることを願っております。読者の皆様にもご協力を賜れれば幸いです。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 17:00|PermalinkComments(0)

2017年03月26日

森友問題で安倍首相が辞任するべき唯一の理由

20120527021213

籠池問題の本質は「反社会的組織の疑いがある」組織の名誉職に首相夫人が就いていたこと

籠池問題の本質は「自民党の国会議員が法人の代表者が銭を持ってきた」と主張している法人の名誉校長を務めていたということです。

メディアでは「国有地の払い下げに対して便宜を図ったかどうか」という点ばかりが強調されていますが、役所側が資料を破棄したと主張している以上、どちらにせよ事実関係を推論することしかできず、与党も野党もどうでも良い罵り合いを継続するだけのことです。まして、首相が籠池氏に100万円寄付したかどうかという真実でもどうでも良いことが議論されていることに辟易します。

本件で唯一明確になっていることは、

〇安倍昭恵・首相夫人が瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任していたということ
〇鴻池参議院議員が記者会見やメディア取材で籠池氏が金銭(らしきもの)を包んできたので突き返したと主張していること

です。賄賂の申し込みは相手が受領しなくても賄賂申込罪が成立するため、鴻池議員の発言は非常に重いものであり、国会議員に賄賂を申し込もうとした疑いがある法人の名誉校長に首相夫人がなっていたこと自体が問題なのです。

実際に便宜が図られたかどうかなど、鴻池議員の発言を前提とするならもはや問題ではありません。首相夫人が名誉校長の職を軽率に引き受けたことにより、安倍政権のガバナンス及びコンプライアンス、更に言うなら安全保障上の基本的な管理すらできていないことが明らかになりました。

上場企業の役員でも利益相反の恐れがある法人の役職者に親族がなることは望ましくない

上場企業及びグループ会社の役員に就任する際、通常の手続きとして、近親者が取引先、利益相反の恐れがある法人の役職者にいるかどうかをチェックすることは当然のことです。それらの親族がいる場合には利益相反行為を行わないことを誓約することになります。

本件については首相夫人という身分にある人物が「その場のノリ」で名誉校長という役職に就任するという信じがたい行動を行ったことが問題なのです。鴻池議員が告発したような行為を自党の所属議員に行っているような人物について相手の素性をまともに確認することもなく、首相夫人が名義貸しを行ったという危機意識の無さこそが信じられません。

また、首相夫人付きの公務員はその現場を目撃していたとしたら当然制止するべきでしょう。何のためにお付きの人がいるのか、を全く理解していない税金の無駄です。それらの公務員は首相夫人の日々の世話をすることだけが仕事ではなく、このような輩による夫人への篭絡行為を防止するために、国民は血税を払ってそれらの職員を配置しているのです。このような行為を黙殺した上に、ましてその相手の要望に応じて役所に問い合わせた結果を報告する間抜けぶりは常軌を逸しています。忖度云々のレベルではありません。

学校法人という許認可・補助金に関係がある法人の名誉職に、首相夫人という身分にあるものが「自らの一存」で民間の法人の名誉職に就任できる、そしてそれを知りながら黙認してきたことは、ガバナンス、コンプライアンス、安全保障の観点から論外です。

「首相夫人」を「公人」として位置づけ直し、非常識な行動を謝罪・反省することが必要

安倍首相は本件について国有地の払い下げについて強気の発言を行っています。

しかし、安倍首相が国民の代表である国会議員に対して最初に行うべきことは「逆切れ」ではなく、首相夫人の行動をコントロールできていなかった自らの不徳によって国会を空転させていることへの謝罪です。そして、自らの所属政党の国会議員が同法人の反社会性について告発している現状に鑑み、早急に調査をした上で報告すべきでしょう。

安倍首相はこの問題が単なる行儀が悪い学校法人ではなく、北朝鮮などの敵性国家の息がかかった組織だったらどうするつもりだったのでしょうか。昭恵夫人は過去に大麻使用容疑で逮捕された高樹沙耶氏と親交があり大麻解禁論者になっていましたが、それらの問題発覚後も夫人の行動を何ら改善しなかった危機管理能力の不足・無反省ぶりは深刻です。

首相夫人の扱いは安全保障上の重要事項であり、予算委員会で議論することは当たり前です。北朝鮮の恣意行動などへの対処と同様に早期の改善を行うことが必要です。

昭恵夫人がFBで私人として自らの意見表明を出したことには呆れ果てました。いまだ問題の本質が分かっていない証拠です。今すぐ首相夫人を「公人」として位置づけ直して管理すべきです。

仮に安倍首相が昭恵夫人の行動を改善する気がないなら即刻首相を辞任して頂きたいと思います。自民党には他にも優秀な議員が多数存在しており、常識を持った行動ができる夫人を持った方がおります。たった一人の人間を説得するだけで可能な安全保障上の深刻な問題すら改善できない首相は日本に必要ありません。






本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 21:06|PermalinkComments(0)

2017年03月22日

百条委員会で感じた「豊洲」とは関係ない話

ダウンロード


豊洲の地下水汚染にはほとんど関心がない筆者が思うこと

豊洲新市場の地下水汚染と東京ガスとの土地売買契約を巡る経緯に関する石原氏と浜渦氏に対する百条委員会が終りました。かつての大物知事と辣腕副知事が登場してなかなか見応えがある質疑が成されたものと思います。

しかし、筆者は「豊洲新市場にさっさと移転したら良いんじゃないの」 派なので、百条委員会で石原氏らに環境基準が意味がなかったことを認めさせる一定の意義は認めつつも、質疑内容とは正直言って全然関係ないことが気になってしまいました。

2005年の百条委員会で偽証認定されて辞任した元副知事が天下りしている事実

浜渦氏は副知事時代に議会にやらせ質問を依頼したことを問われた2005年に行われた百条委員会で「偽証」を認定された方です。つまり、百条委員会での偽証なんぞナンボのもんよ、という胆力を持った方ということになります。

結局、浜渦氏は偽証認定されたことで都議会で問責決議を受けて副知事を辞職することになったのですが、まさかその直後に「東京都の第三セクター(東京都交通会館)に副社長になった」とは驚きました。

東京都における議決機関である都議会で「偽証」し「問責決議が可決された」人物に天下りを認める東京都とはどれだけ腐敗した組織なのか、と率直に思います。私自身は浜渦氏が辣腕な方だと耳にしたことはありましたが、副知事以後のポジションは知りませんでしたので、正直言って唖然としました。

石原慎太郎氏が百条委員会で問われるべきは「新銀行東京」の末路ではないのか

石原氏が百条委員会で問われるべき問題は新銀行東京の内実でしょう。新銀行東京は議員の口利きやヤクザものなどによって都民の税金が食い物にされたと噂されている事例です。その杜撰な経営について石原氏に対する住民訴訟も起きています。

筆者としては、本件は納税者の血税を政治家が浪費した最たる事例であったように感じています。豊洲新市場よりも政治責任を問われるべきものであり、その設立からの経緯を徹底的に見直されるべきものです。そして、二度と政府が金融という愚策に新たに手を出さないようにする戒めとすることが重要です。

石原慎太郎氏には百条委員会で今度は新銀行東京の顛末についてじっくりと語って頂きたいものだと思いました。

今回の豊洲に関して、今までの証言をそのまま信じるならば、都知事・副知事が与り知らぬところで、都民に不利益な契約内容を結んだことが明らかになったわけですが、そのようなガバナンス上の問題が発生しないようにすること、更に政治家の都合で新銀行東京のような大失敗が二度と発生しないようにすることをもう一度確認するべきです。

政治家は60歳程度を限度に定年したほうが良いということ

石原慎太郎氏が脳梗塞を患って体調不良のため、彼の百条委員会は1時間で終了しました。その上、非常に明瞭に記憶していること、記憶から無くなってしまったこと、が混在しており、高齢になっても自分に都合が良いことは覚えているものだなと人の記憶の在り方に感心させられました。

しかし、東京都知事のような重大な意思決定を為す要職についていた人が職責から退いて僅か数年で全ての記憶が無くなってしまうことは問題でしょう。日常的に忙しくて過去のことは忘れてしまうのも理解できますが、具体的な証言や資料が出てきたら思い出すことも多いのではないかと思います。

そこで、首長職などの重要な職責を担うポジションの人は比較的健康体である60歳くらいまでを上限に設定するべきなのだろうと思いました。高齢化社会以前は何歳の人でも要職に座っても良いということは道理がありましたが、現状のような長寿社会では少し非現実な気がします。

立候補に制限をかけるわけにはいきませんので、有権者は投票判断に際して「年齢」というものをもう少し気にしても良いのではないかと感じました。

石原都政に関する検証、その失敗を繰り返さないために

石原都政は長期に渡るものでしたが、久しぶりにその流れにない都知事が誕生したことで、石原都政の功罪について徹底的に検証を加えて反省材料にすることは重要なことのように思います。

石原氏には財政健全化などについては一定の功績はあったと思いますが、東京都の隠蔽体質・官僚体質、放漫な財政運営、政治家による口利きなど、注目が集まっているうちに全て掃除することが大事でしょう。

百条委員会を見ながら、一時代の終わり、そしてその反省の必要性を感じてしまったわけで、同委員会はそのための象徴的な意味はあったかなと思います。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr
yuyawatase at 12:35|PermalinkComments(0)