社会問題

2017年04月27日

クリスチャントゥデイで「トランプの黒幕」の書評を頂きました。

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クリスチャントゥデイで「トランプの黒幕」の書評を取り上げて頂きました

神学書を読む(14)渡瀬裕哉著『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』

キリスト教系メディアであるクリスチャントゥデイで拙著『トランプの黒幕』の書評を取り上げて頂きました。

自分は洋の東西問わず神学や思想書が好きで結構読むことが多いので、同メディアで書評を頂いたことは新鮮であるとともに素直に嬉しいです。本書がキリスト教者の皆様のトランプ政権理解に少しでもお役立ちできれば著者として幸甚です。

トランプ政権とキリスト教の関係、その協調と緊張関係についての考察

トランプ政権は、共和党支持者が持つ極端なリベラルを排した素朴な倫理観を代表する政権であり、選挙戦の時には「ヒラリーでなければ良い」という敵の敵は味方という理屈もあって、特に共和党保守派が押し上げて作った政権です。その結果として、最高裁判事の人事などでは保守派のゴーサッチ氏が選任されるとともに、中絶を巡るメキシコシティポリシーの問題などでは成果を上げるに至っています。

しかし、トランプ自身は必ずしも敬虔なキリスト教徒ではなく保守派の体現する倫理観を共有している存在とは言えません。トランプは政敵に勝つために自身の思想信条をコントロールするタイプの人物であり、まさに商人スタイルの政治家ということが言えると思います。

したがって、トランプ政権と保守派(≒福音派)の間では政権の裏側では緊張関係が続くとともに、クシュナーなどの元民主党員が政権内で台頭することによる軋轢は高まるものと推測されます。

書評が増えてくると結構嬉しい、ということ

拙著『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』最初はどんな辛口の書評が出てくるだろうか、もしくは全く書評もつかないのではないか、と懸念していましたが、意外と様々なところで書評に取り上げて頂けるようになってきました。

相変わらずリベラルな大手メディアは国際政治学者らの「的外れなトランプ本」の書評ばかりを取り上げておススメしていますが、今回キリスト教福音派の研究をされているような「米国の実相に近い方」から評価頂けることは非常に光栄です。感謝いたします。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年04月15日

#FireKushner がトランプ支持者の間で流行っている

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(CNNから引用、オバマケア代替法案成立失敗時にスキーに出かけていたクシュナー一家)

共和党保守派によるトランプ・ファミリーへの逆襲開始

トランプの黒幕?何故、クシュナーは台頭しているのか

を投稿したら、Twitterのハッシュタグで #FireKushnerが増加していることに気が付きました。

米国民の保守派はホワイトハウスで何が起きているのかを理解しているようです。嫌々ながらも選挙で応援してきた保守派の人々を裏切って、主流派や民主党出身者を重用しようというのだから、保守派から逆襲されて当然と言えるでしょう。

保守派とトランプの間の蜜月関係にもヒビが入ることになるだろう

トランプも直径家族であるクシュナーを安易に退けることは難しいため、上記の対立関係が深刻化した場合、トランプ政権自体を事実上レイムダック化させるところまで行く可能性すらあります。

原則として「保守派は裏切り者を許さない」傾向があります。元々保守派の運動団体は納税者保護誓約書に署名しなかったトランプと彼の取り巻きのリベラル傾向を警戒しており、今回のクシュナーの台頭に象徴されるようなトランプのリベラル回帰をある程度予測していたと言えるでしょう。

実際、バノンの降格をきっかけとして反クシュナー(主流派・民主党出身者)のキャンペーンが貼られたことは、保守派の意見表明、ということになります。これらの草の根ネットワークによる反クシュナー運動が盛り上がると、共和党議会の保守派対策にも影響が出ることになります。

また、クシュナーは議会でロシアとの繋がりを糾弾されつつありますが、こちらも共和党保守派が庇わなくなった場合、かなりの窮地に立たされることが予想されます。

政治家事務所などの鉄則としてはNo2に家族をおいてはならないということ

これは日本でも言えることですが、事務所のNo2に家族をつけることは望ましくないこと、ということです。息子などを政治的な後継者する場合は例外ではあるものの、何らかの形で家族に批判が寄せられた場合、その批判は家族だけではなく政治家本人にまで及んでしまうからです。

トランプが家族を信用するというのは理解できますが、クシュナーやイヴァンカをホワイトハウスに招き入れたことは政治的な悪手だと言えます。No2を悪者にしてトップへの批判を回避するという伝統的な政治的やりくりの手法を採用することができないからです。

現状はまだ保守派の運動団体の一部に火が付き始めた段階であり、トランプは対処を誤らなければボヤで済ませることができるはずです。しかし、一度保守派を敵に回してしまうと大炎上することになって議会対策どころではなくなることになるでしょう。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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トランプの黒幕?何故クシュナーは台頭しているのか

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ジャレド・クシュナー大統領上級顧問の力が強まってきているとされているが・・・

当ブログでは、トランプの黒幕と噂されていたスティーブ・バノンについて、

トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置

の記事などで砂上の楼閣であり、その影響力の低下の可能性について触れてきました。当時は何も知らない日本の有識者らがバノンを黒幕として恥ずかしい動画などをネットに公開したり、陰謀論めいた論説を記事公開・出版などを行っていました。(ちなみに、筆者の著作である『トランプの黒幕』はバノンのことを指しているわけではありません。)

現在、バノンの影響力が相対的に低下しており、代わりにクシュナー上級顧問の影響力が強まっていることから「クシュナーこそが黒幕だ!」という妄言が再び出てくるようになっています。娘のイヴァンカがシリア攻撃を決断させた要因だったとか、本当にひどい言説がばかりで面白いものです。

きっと、もう少ししたらトランプの「頭」の中にクシュナーが乗って操縦しているような表紙のトンデモ本が出版されることになることでしょう。

クシュナーの影響力の源泉は、共和党主流派・ウォール街とのパイプ役として

トランプ政権のホワイトハウス及び主要閣僚は共和党保守派によってほぼ独占されている状況となっています。そのため、それらと対立する共和党主流派・ウォール街が政権にアクセスするルートは限られていることになります。

クシュナーはゲーリー・コーン国家経済会議議長とムニューチン財務長官とも親しい元民主党員です。コーンも民主党員であり、ムニューチンはリベラルの影響が強いハリウッドでも活躍していた投資家です。(二人ともGS出身であり、クシュナーと親しいことも要因の一つとなって政権入りしています。)したがって、共和党内部では保守派よりも民主党に近い主流派寄りの人物と言えます。

現在のトランプ政権では、このNY派の人々を通じた共和党主流派・ウォール街による政権へのハイジャックが起きようとしている状況です。つまり、トランプ政権を誕生させた保守派、そしてオルトライト的な傾向がある面々の立場が弱まり、選挙時にはトランプに敵対していたはずの主流派・ウォール街がホワイトハウスの新たな主になるべく蠢いている状況です。

クシュナーはトランプに近い立場にある非保守派の人間であることから、彼らの代理人としての影響力を強めている状況にあります。保守派の特攻隊員的な位置づけであるバノンの力が低下し、クシュナーの力が伸びていることはホワイトハウス内の保守派・主流派の両派の力関係の変化を示すバロメーターとなっています。

したがって、黒幕というよりも、バノンもクシュナ―も党内の勢力争いの状況を観測するための観測球のような役割を担っていると言えるでしょう。

トランプは元々保守派ではないリベラル・民主党員・ニューヨーカー

トランプ大統領は多くの人が勘違いしているように保守派の人ではありません。民主党系の人々やメディアが滅茶苦茶なバッシングを行っていますが、むしろ過去にはクリントンにも献金していたリベラル派の人物であり、ニューヨークでの大富豪でもあります。

彼は近年民主党での大統領選挙出馬の可能性が無くなったことから急速に共和党保守派に接近してきた人物であり、今回の大統領選挙では「敵の敵は味方」(ヒラリーの敵は味方)の論理で、保守派が仕方なく応援して誕生した大統領です。

トランプ自体は選挙時の選対本部長もコーク系のリバタリアン団体出身のコーリー・ルワンドウスキー、主流派のポール・マナフォート、保守派のケリーアン・コンウェイとその都度必要に応じて全く主義主張の異なる人々を採用する蝙蝠のような行動をしてきています。

そのため、ホワイトハウスの要職は最後に協力していた保守派が占めていましたが、トランプと保守派は潜在的な緊張関係にあり、クシュナーの存在、ましてイヴァンカのホワイトハウス入りは保守派はあまり快くは感じていないものと思われます。

実際、トランプは政権発足当初は保守派に配慮した運営を行ってきましたが、徐々に保守派色を弱める政策対応を行ってきています。その結果として、トランプ一族が持つリベラルなエリート傾向とワシントン政治の一掃を求める保守派との間で亀裂が生じつつあります。

大統領選挙で応援した人々を敵に回す大統領に未来はあるのか?

トランプはバノンの処遇を問われて「バノンは選挙の終盤で合流しただけだ」と発言しました。

それはケリーアン・コンウェイを含めた保守派の運動団体全般にも該当する発言であり、筆者はオバマケア代替法案先送りの際にトランプが「フリーダムコーカスは敵だ」と言い放った時よりも政局運営上深刻な発言だったと感じています。

トランプ政権はオバマケア代替法案の失敗の経験からワシントン政治に漬かったやり方に方針転換し、非常にきめ細やかな議会対応を行うようになってきています。これは政権運営上プラスではあるものの、トランプは政権を支える自らの屋台骨の入れ替え(保守派から主流派・民主党へ)に着手したように見えます。

はたして、トランプ政権の方針転換を保守派がどこまで容認するでしょうか。

保守派は最高裁判事の任命で同じ保守派のゴーサッチ氏が任命されるまでは、選挙で応援してきたはずのトランプによる保守派に対する無礼な発言に対して我慢してきたものと想定されます。しかし、ゴーサッチ氏の上院承認が行われた以上、今後はトランプ一族によるホワイトハウスの塗り替えを許容し続けることはないでしょう。

差し当たって、債務上限問題、税制改革、インフラ投資など、様々な議会案件について保守派による巻き返しが行われていくことになるものと想定されます。トランプは自らの唯一の政権基盤(≒保守派)をひっくり返す博打を打ちつつあるわけですが、それが功を奏す可能性は高くありません。

政権発足から約100日、対外的な緊張も高まる中で米国内の政局は更なる混沌に陥りつつあります。



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2017年04月06日

バノンが「トランプの黒幕」ではないのは当たり前だ

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(ひぐらしのなく頃に、から引用)

スティーブ・バノンは重要人物だが「黒幕」と呼べるほどの存在ではない

トランプ大統領誕生以来、新設の首席戦略官というポストに就任したスティーブ・バノンは「トランプの黒幕」と表現されてきました。バノンの存在は米国共和党のことを良く知らない「ど素人」の有識者らには格好のネタだったのだと思います。

筆者はバノンについては「トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置」でも指摘してきた通り、「バノンのトランプ政権内での立ち位置は共和党内の派閥争いの微妙な均衡の上に成り立つ砂上の楼閣」として評価してきました。

今回NSC常席からバノンが外されたことについてトランプ政権は理由をつけて大したことがないように表現していますが、同政権内での力関係に変化が生じつつあることは明らかです。

トランプの黒幕は「トランプ政権を作った共和党保守派」の人々である

3月31日発刊した拙著は「トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体」(祥伝社)というタイトルで、全国の書店に置いていただいています。もちろんバノン単体をトランプの黒幕だと断定する内容ではありません。

しかし、正直言って、「バノン」や「クシュナー」、挙句の果てには「イヴァンカ」がトランプの黒幕であるというトンデモ解説が溢れており、Googleで「トランプの黒幕」のワードを検索するとロクな分析が出てこない有り様です。

トランプ政権を作った原動力であり、現在も同政権を支えている人々は「共和党保守派の人々」です。小さな政府などの保守的な価値観、建国の理念を信じる人々の集団、そのリーダーたちがトランプ政権を支えています。

その多くはレーガン政権時代から続く保守派の流れの中で育ってきたプロフェッショナルです。彼らは黒幕というよりも本来は「黒子」という表現が正しいかもしれないと思っています。

バノンはマーサー(メルセル)財団という新興のパトロンを背景とした保守派内の新参勢力に過ぎず、トランプを支える保守派の中では明らかに浮いた存在です。実際に共和党保守派の重鎮らに会って話を聞けばバノンとの距離が離れていることは直ぐに分かることであり、彼をトランプをコントロールする黒幕として過大評価してきた有識者らは共和党のことを何も知らない人たちです。

選挙戦の経緯からトランプ政権にマーサーの意向が強く反映する傾向はあるものの、現在ではバノンは局的な下手を打ち過ぎたことから影響力の低下が起きていることは明らかでしょう。

ライアンケアの先送り後、急速に議会対策を綿密に行うようになったトランプ政権

ライアンケア(オバマケア代替法案)の先送り後、トランプ政権は議会対策・政局対策の面で極めて巧みな動きを見せるようになってきています。

切り崩し可能な様々な議連に接触したり、法案に反対しそうな個別の議員の説得に応じたり、保守派の重要人物らの囲い込みに走ったり、と今までにない積極的な対応を行うようになってきました。

ワシントン政治への対応力の急速な向上は、政権発足以来政局を担ってきたバノンから共和党の生え抜きの人々に議会対策・政局対策の主導権が移ったことを示唆しています。

また、バノンはテロリスト渡航防止法対象国からの入国禁止大統領令の積極的な推進者であり、彼のスタッフであるセバスチャン・ゴルカはグローバル・ジハード論者です。

この観点から保守派内のリバタリアン陣営(≒フリーダムコーカス)を率いる大富豪のコーク兄弟と対立してきましたが、バノンがNSC常任から外れることはコーク兄弟に対してトランプが議会対策の観点も踏まえて一定の恭順の意を示したものと捉えるべきでしょう。

ちなみに、バノンが外れるとともに、コーツ国家情報長官、ダンフォード統合参謀本部議長、常任に復帰、エネルギー長官、中央情報局長官、国連大使が追加されたところを見ると、これは5月19日のイラン大統領選で反米強硬派が勝利する可能性をを踏まえた布陣を敷いたと見るべきです。

トランプ政権を偏見や陰謀論で語る「小説」ではなく「分析・考察」が必要だ

現在、トランプ政権が発足してから随分と時が経った状況となっています。それにも関わらず、書店のトランプ本コーナーには相変わらず、国内の有識者の人々による偏見や陰謀論まがいの書籍が大量に並んだままです。

筆者は「バノン、クシュナー、イヴァンカなどがトランプの黒幕だ!」というトンデモ話をそろそろやめるべきだと確信しています。それらは小説的な読み物としては面白いかもしれませんが、トランプ政権を真剣に理解しようと思っている人には害悪でしかありません。

我々日本人もトランプ政権に対して真面目に「分析」と「考察」を行っていく段階となっています。


*下記の拙著をご覧いただければ米国で何が起きているのか、は論理的に分かります。


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2017年03月30日

著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)のご紹介

無題
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著作『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を発刊します

ブログ読者の皆様のおかげで『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)を2017年4月1日に出版する運びとなりました。深く感謝いたします。(一部都心の本屋さんでは既に陳列が始まっているようです。)

読者の皆様のおかげで現在Amazonのカテゴリー「アメリカ」で1位~2位で推移しています。

本作を執筆するきっかけとなりましたのは、まさに本ブログの更新及びアゴラへの転載を祥伝社の編集の方に注目して頂いたことです。

日本国内ではヒラリー勝利が喧伝していたいい加減な言論が蔓延する中、データと事実を用いてトランプ当選の可能性を予測した圧倒的な少数派として、日本人に正しい情報を伝える取り組みを続けてきたことを認めて頂いたことを嬉しく感じております。

本作の読みどころ「日本人と180度真逆の発想を持った共和党保守派を知ること」

本作で取り上げた大統領選挙やトランプ政権の解説について是非多くの皆様にご一読いただければと思います。その上で、筆者が読者の皆様に強調したいことは「共和党保守派」という大半の日本人とは180度真逆の発想を持った人たちについて理解を深めてほしいということです。

多くの日本の有識者は共和党保守派について良く知らないまま、彼らについて偏見に基づく解説を行っています。米国政治に関する研究は共和党保守派を蔑視する学者らによって行われてきており、無自覚なのか意図的なのか分かりませんが、日本人に対して正しい情報が伝わりにくい環境があります。

本書は筆者が2009年当時から付き合ってきた保守派の人々の政治的な思考・行動を大統領選挙及び組閣に絡めてまとめたものであり、政権与党である米国の共和党の中で影響力を強める保守派の考え方を知るための一助となるものと思います。

なぜ共和党保守派は「小さな政府」を求めているのか、そして大統領選挙にどのように関わってきており、トランプ政権の中で自らのポジションをどのように位置付けているのか、リベラルな関係者によって寡占されている一面的な報道などでは伝わらない米国の今を理解できるものと思います。

次回作があれば、今度は「共和党保守派の政治システム」について書かせてほしい

万が一、本作が人々に受け入れて貰えて一定数以上販売実績が出た場合、将来的には「共和党保守派の政治システム」について解説する本を出したいと思います。

共和党保守派が有する、①統合機能(年次総会)、②司令塔機能(毎週実施される作戦会議)、③運動支援機能、④訓練機能(選挙学校)⑤政策立案(シンクタンク)、⑥資金源(財団)、⑦メディア及びメディア監視機能、➇歴史教育、などがどのように有機的に結びついて機能しているのかという分析をまとめたものを想定しています。日本の政治では見たことがない近代的なシステムが存在しており、筆者は非常に驚かされた経験を持っております。

2年前に我が大学に上記のシステムを調査する研究計画を提出したときに、このイデオロギー的に偏った企画は君の趣味だよね、という感じで却下された研究企画なのですが、米国政治やトランプ政権を理解するためだけでなく、日本の政治改革にとっても重要な示唆が含まれたものだと確信しています。(むしろ、本件について一緒に研究して頂ける大学研究室などがあれば同時に募集しています。)

上記の内容を出版という形でまとめることができれば、単なる研究というだけではなく多くの日本の方に知って頂く機会にもなるため、非常に有意義なものになるのではないかと夢想しております。

とはいうものの、まずは本作が売れてくることを願っております。読者の皆様にもご協力を賜れれば幸いです。



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2017年03月26日

森友問題で安倍首相が辞任するべき唯一の理由

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籠池問題の本質は「反社会的組織の疑いがある」組織の名誉職に首相夫人が就いていたこと

籠池問題の本質は「自民党の国会議員が法人の代表者が銭を持ってきた」と主張している法人の名誉校長を務めていたということです。

メディアでは「国有地の払い下げに対して便宜を図ったかどうか」という点ばかりが強調されていますが、役所側が資料を破棄したと主張している以上、どちらにせよ事実関係を推論することしかできず、与党も野党もどうでも良い罵り合いを継続するだけのことです。まして、首相が籠池氏に100万円寄付したかどうかという真実でもどうでも良いことが議論されていることに辟易します。

本件で唯一明確になっていることは、

〇安倍昭恵・首相夫人が瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任していたということ
〇鴻池参議院議員が記者会見やメディア取材で籠池氏が金銭(らしきもの)を包んできたので突き返したと主張していること

です。賄賂の申し込みは相手が受領しなくても賄賂申込罪が成立するため、鴻池議員の発言は非常に重いものであり、国会議員に賄賂を申し込もうとした疑いがある法人の名誉校長に首相夫人がなっていたこと自体が問題なのです。

実際に便宜が図られたかどうかなど、鴻池議員の発言を前提とするならもはや問題ではありません。首相夫人が名誉校長の職を軽率に引き受けたことにより、安倍政権のガバナンス及びコンプライアンス、更に言うなら安全保障上の基本的な管理すらできていないことが明らかになりました。

上場企業の役員でも利益相反の恐れがある法人の役職者に親族がなることは望ましくない

上場企業及びグループ会社の役員に就任する際、通常の手続きとして、近親者が取引先、利益相反の恐れがある法人の役職者にいるかどうかをチェックすることは当然のことです。それらの親族がいる場合には利益相反行為を行わないことを誓約することになります。

本件については首相夫人という身分にある人物が「その場のノリ」で名誉校長という役職に就任するという信じがたい行動を行ったことが問題なのです。鴻池議員が告発したような行為を自党の所属議員に行っているような人物について相手の素性をまともに確認することもなく、首相夫人が名義貸しを行ったという危機意識の無さこそが信じられません。

また、首相夫人付きの公務員はその現場を目撃していたとしたら当然制止するべきでしょう。何のためにお付きの人がいるのか、を全く理解していない税金の無駄です。それらの公務員は首相夫人の日々の世話をすることだけが仕事ではなく、このような輩による夫人への篭絡行為を防止するために、国民は血税を払ってそれらの職員を配置しているのです。このような行為を黙殺した上に、ましてその相手の要望に応じて役所に問い合わせた結果を報告する間抜けぶりは常軌を逸しています。忖度云々のレベルではありません。

学校法人という許認可・補助金に関係がある法人の名誉職に、首相夫人という身分にあるものが「自らの一存」で民間の法人の名誉職に就任できる、そしてそれを知りながら黙認してきたことは、ガバナンス、コンプライアンス、安全保障の観点から論外です。

「首相夫人」を「公人」として位置づけ直し、非常識な行動を謝罪・反省することが必要

安倍首相は本件について国有地の払い下げについて強気の発言を行っています。

しかし、安倍首相が国民の代表である国会議員に対して最初に行うべきことは「逆切れ」ではなく、首相夫人の行動をコントロールできていなかった自らの不徳によって国会を空転させていることへの謝罪です。そして、自らの所属政党の国会議員が同法人の反社会性について告発している現状に鑑み、早急に調査をした上で報告すべきでしょう。

安倍首相はこの問題が単なる行儀が悪い学校法人ではなく、北朝鮮などの敵性国家の息がかかった組織だったらどうするつもりだったのでしょうか。昭恵夫人は過去に大麻使用容疑で逮捕された高樹沙耶氏と親交があり大麻解禁論者になっていましたが、それらの問題発覚後も夫人の行動を何ら改善しなかった危機管理能力の不足・無反省ぶりは深刻です。

首相夫人の扱いは安全保障上の重要事項であり、予算委員会で議論することは当たり前です。北朝鮮の恣意行動などへの対処と同様に早期の改善を行うことが必要です。

昭恵夫人がFBで私人として自らの意見表明を出したことには呆れ果てました。いまだ問題の本質が分かっていない証拠です。今すぐ首相夫人を「公人」として位置づけ直して管理すべきです。

仮に安倍首相が昭恵夫人の行動を改善する気がないなら即刻首相を辞任して頂きたいと思います。自民党には他にも優秀な議員が多数存在しており、常識を持った行動ができる夫人を持った方がおります。たった一人の人間を説得するだけで可能な安全保障上の深刻な問題すら改善できない首相は日本に必要ありません。






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2017年03月22日

百条委員会で感じた「豊洲」とは関係ない話

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豊洲の地下水汚染にはほとんど関心がない筆者が思うこと

豊洲新市場の地下水汚染と東京ガスとの土地売買契約を巡る経緯に関する石原氏と浜渦氏に対する百条委員会が終りました。かつての大物知事と辣腕副知事が登場してなかなか見応えがある質疑が成されたものと思います。

しかし、筆者は「豊洲新市場にさっさと移転したら良いんじゃないの」 派なので、百条委員会で石原氏らに環境基準が意味がなかったことを認めさせる一定の意義は認めつつも、質疑内容とは正直言って全然関係ないことが気になってしまいました。

2005年の百条委員会で偽証認定されて辞任した元副知事が天下りしている事実

浜渦氏は副知事時代に議会にやらせ質問を依頼したことを問われた2005年に行われた百条委員会で「偽証」を認定された方です。つまり、百条委員会での偽証なんぞナンボのもんよ、という胆力を持った方ということになります。

結局、浜渦氏は偽証認定されたことで都議会で問責決議を受けて副知事を辞職することになったのですが、まさかその直後に「東京都の第三セクター(東京都交通会館)に副社長になった」とは驚きました。

東京都における議決機関である都議会で「偽証」し「問責決議が可決された」人物に天下りを認める東京都とはどれだけ腐敗した組織なのか、と率直に思います。私自身は浜渦氏が辣腕な方だと耳にしたことはありましたが、副知事以後のポジションは知りませんでしたので、正直言って唖然としました。

石原慎太郎氏が百条委員会で問われるべきは「新銀行東京」の末路ではないのか

石原氏が百条委員会で問われるべき問題は新銀行東京の内実でしょう。新銀行東京は議員の口利きやヤクザものなどによって都民の税金が食い物にされたと噂されている事例です。その杜撰な経営について石原氏に対する住民訴訟も起きています。

筆者としては、本件は納税者の血税を政治家が浪費した最たる事例であったように感じています。豊洲新市場よりも政治責任を問われるべきものであり、その設立からの経緯を徹底的に見直されるべきものです。そして、二度と政府が金融という愚策に新たに手を出さないようにする戒めとすることが重要です。

石原慎太郎氏には百条委員会で今度は新銀行東京の顛末についてじっくりと語って頂きたいものだと思いました。

今回の豊洲に関して、今までの証言をそのまま信じるならば、都知事・副知事が与り知らぬところで、都民に不利益な契約内容を結んだことが明らかになったわけですが、そのようなガバナンス上の問題が発生しないようにすること、更に政治家の都合で新銀行東京のような大失敗が二度と発生しないようにすることをもう一度確認するべきです。

政治家は60歳程度を限度に定年したほうが良いということ

石原慎太郎氏が脳梗塞を患って体調不良のため、彼の百条委員会は1時間で終了しました。その上、非常に明瞭に記憶していること、記憶から無くなってしまったこと、が混在しており、高齢になっても自分に都合が良いことは覚えているものだなと人の記憶の在り方に感心させられました。

しかし、東京都知事のような重大な意思決定を為す要職についていた人が職責から退いて僅か数年で全ての記憶が無くなってしまうことは問題でしょう。日常的に忙しくて過去のことは忘れてしまうのも理解できますが、具体的な証言や資料が出てきたら思い出すことも多いのではないかと思います。

そこで、首長職などの重要な職責を担うポジションの人は比較的健康体である60歳くらいまでを上限に設定するべきなのだろうと思いました。高齢化社会以前は何歳の人でも要職に座っても良いということは道理がありましたが、現状のような長寿社会では少し非現実な気がします。

立候補に制限をかけるわけにはいきませんので、有権者は投票判断に際して「年齢」というものをもう少し気にしても良いのではないかと感じました。

石原都政に関する検証、その失敗を繰り返さないために

石原都政は長期に渡るものでしたが、久しぶりにその流れにない都知事が誕生したことで、石原都政の功罪について徹底的に検証を加えて反省材料にすることは重要なことのように思います。

石原氏には財政健全化などについては一定の功績はあったと思いますが、東京都の隠蔽体質・官僚体質、放漫な財政運営、政治家による口利きなど、注目が集まっているうちに全て掃除することが大事でしょう。

百条委員会を見ながら、一時代の終わり、そしてその反省の必要性を感じてしまったわけで、同委員会はそのための象徴的な意味はあったかなと思います。



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2017年03月20日

トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置とは

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スティーブ・バノン首席戦略官はトランプ政権の黒幕なのか? 

最近の報道などではスティーブ・バノン首席戦略官への注目が高まっているようです。

散々オルト・ライトを馬鹿にしてきた日本人有識者もバノンの存在感の大きさが無視できなくなりつつあり、欧米メディアがバノンの報道を増やすのに合わせて解説記事などが増えてきました。

たしかに、バノン首席補佐官はトランプ政権の意思決定について重要な役割を果たしていると思います。現在のトランプ政権における最重要人物の一人と言えるでしょう。しかし、バノンのトランプ政権内での立ち位置は共和党内の派閥争いの微妙な均衡の上に成り立つ砂上の楼閣でしかありません。

トランプ政権内での影響力を過大評価する論調には全く同意できず、彼も広義の保守派の中の一つのパートを担っている存在として冷静に認識していく必要があります。

スティーブ・バノンの人生、そして力の源泉とは何か

スティーブ・バノンの父は朴訥とした真面目な労働者であり、AT&Tを務め上げた米国における父親像を体現するような人物です。スティーブ・バノンは父であるマーティー・バノンのような人々が米国を支えていると認識しています。

一方、スティーブ・バノンは一流大学を卒業、機関投資家であるゴールドマン・サックスで活躍し、自らの父とは対極にある米国内の特権階級側に所属する一員としての人生を歩みました。

この二人の人生が交錯した瞬間がリーマンショックでした。

父のマーティーがコツコツと積み上げたAT&Tの株価が下落・一夜にして財産を失った一方、スティーブは政府と癒着した一部の人々が何ら責任を取らずにヌケヌケと暮らす姿を金融マンとして目の当たりにしました。この際、バノンは父のような真面目な米国民を蔑ろにした米国の政治への深い憤りを持ったと伝えられています。

この後、スティーブ・バノンはオルト・ライト系とされるネットメディア「ブライトバートニュースネットワーク」との関係を強化し、同サイトをニュースメディアとして大きく飛躍させることに成功しました。

ただし、バノンをホワイトハウスに送り込んだ力はネットメディアの力ではなく、このときブライトバートニュースネットワークの飛躍を支えた、ある有力者の存在にありました。

マーサー財団とトランプの同盟、その同盟関係の代理人としてのバノン

米国には政治運動の資金面を富豪が設立した財団が支えることは珍しくありません。有名な財団はコーク財団などであり、主に共和党系連邦議員らに対して巨額の資金援助が行われていることで有名です。

トランプは大統領選挙の過程でコーク財団と対立・ムスリム入国禁止などの舌禍によって共和党主流派とも対立関係に陥ってしまい、大統領選挙で資金面・運動力面でヒラリーに対して大きく劣後する状況に陥りました。

トランプの苦境に手を差し伸べた存在がマーサー財団です。マーサー財団は共和党予備選挙で保守派の大統領候補者であったテッド・クルーズのスーパーPACへの巨額資金提供者であり、ティーパーティー運動や保守系シンクタンクなどへの資金提供者として近年存在感を高めてきた財団です。

バノンのブライトバートニュースもマーサー財団から10億円以上の資金援助を受けていたと報道されており、バノンとマーサーは政治的同盟関係にあったものと推測されます。

テッド・クルーズの予備選挙撤退後、マーサー財団は急速にトランプに接近し、その過程の中で財団設立者のロバート・マーサーがバノンをトランプに引き合わせました。

また、クルーズのスーパーPACの責任者は現大統領顧問のケリーアン・コンウェイが務めていましたが、同スーパーPACはトランプを支援するためのものに看板が架け替えられるとともに、コンウェイはトランプの選挙対策本部長に就任することになりました。

バノンとコンウェイの合流以降、トランプ選対に保守派の政治運動が結集し始めてトランプとヒラリーの支持率差は急速に詰まっていくことになりました。

ロバート・マーサーの娘のレベッカ・マーサーはトランプ政権移行チームの執行役員に選ばれており、バノンとコンウェイのホワイトハウス入りも含め、人事面・資金面の観点からトランプとマーサー財団が緊密な関係を維持していることが分かります。

トランプの黒幕は「共和党保守派」であって「バノン個人」とは言えない

共和党内では保守派の政治運動を基盤としている保守派、様々な利権構造に支えられた有力な政治家を基盤とする主流派の2つの派閥が権力闘争を繰り広げています。

現在までトランプ政権は大統領選挙の経緯を反映してバノンを含めた保守派の影響力が相対的に強い状況となっています。

ただし、トランプを支える政治勢力の中心は大統領選挙の途中からトランプ陣営に合流したレーガン大統領の流れを組む保守派の政治運動の担い手です。たとえ、バノンやコンウェイなどのマーサー財団と近い関係にある人々が論功行賞でホワイトハウスの重要な地位を占めていたとしても、その影響力の過大評価することは誤っています。

バノンは保守主義運動の中ではニュースサイト運営者に過ぎず、バノンの権力基盤はマーサー財団という保守系の一つの財団が支えているに過ぎません。共和党保守派全体から見た場合、あくまでも彼の位置づけは保守派の一角を占めている新参者の重要人物というだけです。

そのため、共和党保守派の政治勢力全体を指してトランプを支える黒幕と表現することは可能であっても、バノン個人を黒幕と表現する行為は小説であって分析はありません。

また、保守派と対立する主流派はバノンの動きを警戒しており、陰に陽にバノンを追い落とそうとする動きが活発化している状況があります。バノンとコンウェイを支える政治的な背景は他の保守派の人々よりも弱いため、ホワイトハウスや連邦議会の主流派、そして彼らに近いメディアがバノンとコンウェイをネガティブキャンペーンのターゲットにしています。

大統領選挙の過程で生まれた保守派と主流派の対立の関係を背景とし、その天秤のバランスを保守派側に傾けるためにバノンは一時的に保守派から同盟相手として認識されている状態であり、その地位は砂上の楼閣として表現できるものと思われます。

したがって、バノンが首席戦略官として国内政策に強い影響力を持ちながら、国外政策に影響力があるNSCの常席になったとしても、その権勢を過大に評価する論調に与することは誤りです。

スティーブ・バノン首席戦略官の扱いは共和党内の権力闘争のバロメーター

それにも関わらず、筆者はトランプ政権におけるバノンの扱いについては注目すべきと考えています。なぜなら、バノンの扱いは共和党内の勢力争いを測る指標となるからです。

仮に何らかの勢力構造の変化によってバノンがトランプ政権から追放された場合、その現象は従来までの保守派が更に勢力を拡大したのか、それとも主流派が勢力を盛り返しているのか、のいずれかを意味します。

逆に現状のままバノンの権力が拡大し続ける場合、それは保守派・主流派の両派の力が拮抗している状況であり、トランプ大統領の独自の権勢が勢力均衡下で拡大している状況にあることを示唆しています。

スティーブ・バノン首席戦略官はその人生、政治観、歴史観を含めて小説のネタとしては非常に魅力的な人物像を持った人物だと思いますが、その人間性からトランプ政権の性格を導き出そうとする行為はバランスの悪い論評だと思います。

米国政治について面白い物語を描くだけでなく、冷静に分析を加えていく目線が必要です。

<ワタセユウヤ(渡瀬裕哉)初著作のご紹介>


 本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

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2017年03月15日

日経新聞の欧米政治に関する偏向報道が酷すぎる

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先週の土日の日経新聞の内容が酷すぎてびっくりした

今週はオランダの総選挙があるため、日経新聞に米国・欧州の選挙情勢について解説した記事が掲載さました。ただし、一言で述べるならば、極めて稚拙な演出がなされた偏向報道でした。

「国粋の枢軸」危うい共鳴 本社コメンテーター(3月11日・日経新聞・秋田浩之)
極右政党 欧州に烈風 15日にオランダ議会選仏独に連鎖 (3月12日)

筆者の感想としては、欧米のポピュリズム(≒極右、左翼ポピュリズムもあるため)について考察しているにも拘わらず、その考察の解像度が著しく低く、前者の記事であればせめて現地取材をすべきであり、後者の記事であれば前提として新書一冊くらいは読んでから取材結果を公表すべきだと思います。

トランプ、ルペン、ウィルダース、AfDなどの欧州の右派勢力を同じカテゴリーの極右という形でまとめるのは無理があります。これらの政治勢力は主張の根幹となるイデオロギーや政策が全く異なり、これらを同一の極右勢力として論じることは、根本的に頭が悪いのか、それとも欧米人に対する偏見があるのか、いずれなのか迷うところです。

最近では他の新聞の権威が落ちている中で、日経新聞はそれなりのポジションを保っているのだから程度が低い政治解説記事を載せていることは極めて残念です。そこで、両者の記事について徹底的に反証をしておきたいと思います。

「国粋の枢軸」危うい共鳴 本社コメンテーター」の記事の支離滅裂さ

秋田浩之氏が記事中で2回も触れている「ワシントン近郊で開かれた米保守系政治団体のイベント」とは、Coservative Political Action Conserence(CPAC)と呼ばれる全米保守派の年次総会のことです。筆者はこちらの集会に直接参加しましたが、日本のメディアは一部のテレビメディア以外ほとんど姿はありませんでした。

「2月下旬の米保守系政治団体のイベントには、欧州から極右や右派政党も顔をそろえた。報道によれば、フランスの国民戦線やイタリアの北部同盟、オーストリアの自由党の幹部らがトランプ政権側と熱心に接触を重ねた。」という記述もありますが、会場内では「欧州からの極右勢力なんてどこにいたの?」というほどに存在感が薄く、たとえ彼らが居たとしてもあくまでも国内イベントに過ぎないCPACでは端役でしかありません。これを誇張して記事化するのはもはやプロパガンダの類に過ぎません。

CPACにはスティーブ・バノン首席戦略官とともに、オルト・ライトの一部とみなされているブライトバートニュースも初参加の状況でした。会場に参加している保守派の人々からは彼らは形式上の参加を許されているに過ぎず、暖かい歓迎もなければ生暖かい目線が向けられていただけです。ちなみに、CPACの主催団体であるAmerican Conservative Unionのダン・シュナイダー事務局長は自らの講演のタイトルを「オルト・ライトは全く保守ではない」と名付けてオルト・ライトを激しく糾弾していました。

CPACでバノンは当初単独公演の予定でしたが、急遽予定を変更して保守派のラインス・プリーバス首席補佐官と同じ時間に現れて、保守派内での蜜月を演出しました。ただし、この行為はトランプ政権の中でバノンが浮いていると認識されていることを逆に意味しており、バノンが保守派に対して恭順の意を示したものと捉えることもできます。また、バノンとトランプが思想を共有しているという根拠も全くありません。

したがって、CPACがまるでバノンの独壇場であり、欧州の極右が顔をそろえて仲良しでした、というような個別の事象を都合よくつなぎ合わせた記事内容は捏造に近い解釈だと言えます。バノンは保守派の中でも浮いた存在であり、トランプ政権におけるキーマンではあるものの、保守派・主流派に挟まれて好き勝手振舞えているわけではありません。

さらに、秋田氏は記事の中でバノンの思想に関する説明をしていますが、「知人の噂話」を根拠にバノンの思想を解説しています。ワシントンのメディア関係者のひそひそ話の結果が「ヒラリー優勢」の誤報を日本にまき散らした原因だったことを忘れたのでしょうか。

CPACの現地取材もろくにせずに先入観で内容を語り、バノンについては直接取材したわけでもない噂話を掲載したことについて、ジャーナリストとして恥ずかしいものと認識してほしいと思います。

極右政党 欧州に烈風 15日にオランダ議会選仏独に連鎖 (3月12日)」の解像度の低さ

こちらの記事については言うならば、ウィルダースとルペンを同一の極右政党のように扱って並列的な記事にしていますが、彼らの政治的な主張は全く異なるものです。取材をしていることは秋田氏の文章と比べて一定の評価に値しますが、その内容については疑問が残ります。

ポイントは「極右」という表現にあります。基本的に欧州のポピュリズムは反EUの文脈で構成されることが多い状況です。したがって、政治運動を形成するためには「EU」に対置する「我々」を定義する必要があります。

そのため、各国の歴史・文化によるアイデンティティーポリティクスが必要とされた結果、右派系のポピュリズムは躍進しやすい状況があります。しかし、各国民のアイデンティティーは全く異なるため、表出してくるポピュリズム政党の政治的主張にも相違が生じることになります。

たとえば、

ウィルダース率いるオランダの自由党はリベラルな政策を追求した結果として生まれた極右政党です。元々オランダは自由主義の影響が強く、様々な社会政策が極めてリベラルな形で運営されてきました。

しかし、このようなオランダ文化を破壊する存在としてイスラム教やEUが認知されたことにより、自由主義の文化を守るための主張が盛り上がった状況となっています。ただし、社会政策に関しては相変わらずリベラルなままです。また、ウィルダースは貿易の自由化については否定的とは言えません(ただし、貿易自由化=EUのことを意味するわけではない。)

一方、

ルペン率いる国民戦線は元々ネオナチなどの系譜を引き継ぐ人々が多数含まれていた立党状況が示すようにオランダの自由党は真逆の成り立ちとなっています。特にマリーヌ・ルペンは大きな政府に党の経済政策の舵を切るとともに、グローバリズムを批判しています。共和国的な価値観を維持しつつ、それらに反するイスラム教には厳しいという面はあるものの、それ以外はオランダの自由党とはかなり違うものだと言えます。

さらに、

ドイツのAfDは元々経済学者らが作った政党であり、欧州単一市場にも公式には反対の立場ではなく、ユーロの解体と各国通貨の導入を謳っています。AfDはギリシャのようなお荷物国家への金融支援を拒否していることが特徴です。

また、AfDはグローバル化を拒否しておらず、主権を保った上での市場統合については是としています。高度技術者の移民受け入れを主張し、難民や低技能者の移民を拒否する姿勢を示しています。イスラムに関してはやはり文化面から拒否。

ということで、「反イスラム」は共通かもしれませんが、その理由も極めて欧州的な考え方によるものであり、日本で想像しているような極右とは少し趣が異なるわけです。しかも、EUの統治機構には反対であっても、グローバル化や単一市場について各々のポピュリズム政党によって濃淡あるわけです。

「TPP・EU」=「グローバル化」というリベラルなエスタブリッシュメントの安易な発想

筆者は安全保障・国内市場改革の観点から米国がTPPを推進したほうが良かったと考えています。

ただし、TPPやEU自体を「グローバル化」の象徴だとみなす思考は各国の中のリベラルなエスタブリッシュメントの典型的な思考パターンでしかありません。

TPPやEUは見方によってはブロック経済の亜種のような存在であり、これらの枠組みをグローバル化とイコールの存在だと思うことは間違っています。そもそも煩雑な官僚的手続きがそれらの枠組みには求められるため、筆者も参加する自由主義者の国際会議などでは自由経済の観点から否定的な意見が出ることも少なくありません。

欧米型のリベラルな教育を受けた有識者やメディア関係者の頭の中にはグローバル化といえばTPPやEUが大前提であり、それらを否定するポピュリズム政党は全て反グローバルだと思うのかもしれませんが実態としては誤りだと言えるでしょう。

また、メディアはトランプ政権について無根拠なアジテーションを記事にすることは即刻改めるべきです。それらの行為は書き手の自らの知的貧困をさらす行為であるとともに読者にとっても有害であるからです。

日経新聞には一面的な記事内容を掲載するのではなく、各国の政治状況の内実にまで踏み込んだ、読む価値がある記事を生産することに注力してほしいと思います。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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日経新聞の数字がわかる本
小宮 一慶
日経BP社
2013-09-06

本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


 

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2017年02月10日

トランプは本当にHPから気候変動の記述を削除したのか?

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<トランプ大統領就任式当日(1月20日)にホワイトハウスHPから気候変動の記述が削除された?>

約3週間前の話になりますが、日本でも「トランプ政権発足に合わせてホワイトハウスHPから気候変動の記述が削除された」というオルタナファクトが平然と垂れ流されていました。

トランプ政権が気候変動の政策的な優先順位が低い共和党政権であることから、各種メディアが「トランプによってホワイトハウスHP上から気候変動に関する記述が削除された!(or記述が消された!)」と騒ぎたい理由は分かります。

しかし、これは明らかな事実を歪曲した誇張報道であり、これらを報道した米国主要メディアと日本の各種メディアの倫理観が問われるべきものだったと思われます。

<単なるWEBページの移行:事実の歪曲報道で記事の訂正に追い込まれたメディア>

米国では大統領が変わると前大統領のホワイトハウスのデータは別サイトでアーカイブ化されることで保存されることになります。そして、ホワイトハウスHPは新大統領の施政方針が示されたものに入れ替わります。

つまり、トランプ大統領はホワイトハウスHP上から気候変動に関する記述を「削除した」わけではなく「内容が入れ替わった」ために他の記述も含めてまとめて消えたということが正しいのです。

新政権発足時のHPの内容はまだ十分な情報も無いことは当たり前であるとともに、数少ない掲載されている情報は政権として優先順位が高いものになることは必然的なことです。それを持って記述を削除した・記述が消えた、ということはやや誇張が過ぎると言えるでしょう。

ちなみに、現状ではトランプ政権では閣僚の承認に伴う公聴会でも気候変動に強面とされる閣僚候補のコメントが軟化しつつあり、OPECからの石油ではなく自国のシェールガス主体のエネルギー構造になるとCO2排出量と減少するため、米国がパリ協定に代わる新たな枠組みを提示する可能性すらあるものと思われます。

したがって、日本語サイトでもこのような当たり前の事実認識すらできない偏向したメディアが一部記事内容の修正を行うことになり見苦しい釈明に追われることになりました。ちなみに、多くのメディアはこのことに対する偏向報道についてほとんど訂正も釈明もしていません。

<EPAに対する気候変動に関する記述削除指示、ロイター報道は事実か否かが証明されていない>

上記のようなミスリーディングが米国のメディアを賑わせている中、追い打ちをかけるようにロイターが下記のような報道を行いました。

トランプ政権、米環境保護局に気候変動に関するページ削除を要求

この記事はオバマ政権時代から働いている環境保護局の職員の内部リークが記事化されたものです。しかし、同内部リークが指摘した指示の有無についてはトランプ政権側から裏が取れておらず、なおかつ環境保護局HPから気候変動のページ自体が削除されることもありませんでした。(一部の項目では政策の見直しから修正がありました。)

反トランプ勢力などの論評ではロイターの記事が引き金となり、社会的な抗議・対策の動きが広まったため、トランプ政権が指示を撤回したという理解になっていますが、それを裏付ける証拠は同リーク証言以外にほぼありません。ただし、同指示の存在は環境保護関連の人たちによって誠しやかに事実として語り続けられています。

<米国メディアの報道はタイトルだけでなく内容の吟味も必要>

最近の米国メディアの報道は「タイトルによる釣り」が常態化しており、その報道内容までじっくり読まないといけません。たとえば、ニューヨークタイムズの

With Trump in Charge, Climate Change References Purged From Website(1月20日)

の記事はタイトルだけみれば「気候変動の記事がパージ(追放)された」と書いてありますが、記事内容まで読むと上記で指摘したHPの入れ替わりの過程で生じたものであることが触れられています。しかし、多くの人はタイトルしか見ないことも多く、偏向した世論誘導目的の記事であることが明らかです。

米国では主要メディアが反トランプ勢力に加担する政治的な党派対立が深刻化しています。したがって、その米国の主要メディアの報道だけで情勢に判断することは間違っています。

日本のメディアの大半も「欧米のメディアがこんな報道をしてました」という言い方で責任回避しているつもりかもしれませんが、それらの行為は責任回避になっておらず、米国内の政治闘争に間接的に加わっているだけに過ぎません。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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