小さな政府

2017年04月04日

「トランプの黒幕」アマゾンでの書評で☆5つを頂きました。

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アマゾンレビューで☆5つ頂戴しました。4月1日に発刊した「トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体」ですが、レビュワーの皆様から☆5を頂き続けております。感謝です!

そこで、現在まで頂いておりますレビュワーをご紹介したいと思います。

<1人目>
・トランプ大統領はなぜ当選できたのか。納得のいく論理的でまとまった説明に、はじめて出会いました。
・トランプ大統領が云々以前に、日本のメディアにはそもそも、共和党の価値観や考え方を理解しようとする以前に、拒絶したり、嘲笑ったりするようなトーンが目につきます。
・それに対して本書は、日本からは注目されない、けれど実はアメリカ政治を動かす重要な力を持っている共和党の保守派の見方から、トランプ政権を分析しています。本書を読むと、日本の報道のどこが、どこから、なぜズレているのか、根本の部分に戻って理解できます。
・また、現在のアメリカ政治全体を見ようとする上での論点が網羅されており、入門書としても価値があります。

<2人目>
・政権内にも議会内にも共和党保守派の名だたる人物たちが存在し紹介もされていますが、その正体は、建国の理念である「自由」を守ろうとする愛国心にあふれた普通の市民です。
・トランプとは相いれない部分もありましたが、これ以上、民主党(クリントン)のような、インテリぶったエスタブリッシュメントにアメリカを任せておけないと譲歩してトランプを支持する事で、政権内での発言力やポストを手に入れ、トランプに協力しつつ保守主義に基づいた政治の実現を目指そうとしています。
・「最も名誉なことは一有権者であることだ」という言葉を思い出さずにはいられません。ティーパーティーや全米税制改革協会のような各種の団体の力もありましたが、それを作り上げたのは普通の市民だと思います。低学歴の低所得というレッテル貼りやカテゴライズこそ、差別や偏見ではないでしょうか?

<3人目>

・第4章P172トランプ政権の二重外交の可能性について、分かりやすく解説していて興味深い。
そもそも外交の本質は、国益のためならあらゆる努力を惜しまないことであるからして、二重だろうが三重だろうがありなのである。
・たとえばトランプの娘イヴァンカさんは、彼女の幼い娘がピコ太郎体操をする動画を投稿して親日ぶりを示したが、一方その幼い娘に中国服を着せ中国の詩歌を歌わせている。イヴァンカさんのアパレルブランドの工場は中国にあるし、彼女の夫は中国とはビジネス上、切っても切れないほど深いつながりがある。このあたりは、なかなか面白い。もちろん、ここはトランプ政権自体の台湾への姿勢と対中政策についての分析がテーマだ。
・冷徹な米国の本質がわかり、日本はトランプ政権に甘い期待など持ってはいられないことが痛感された。
・本書で印象に残ったのは、共和党内部の主流派と保守派の違いである。共和党の主流とは言えないトランプが、どうやって共和党主流派を納得させて舵取りをしてゆこうとしているかという部分が興味深い。トランプ政権は、ナヴァロ、ロス、バノンなどの対中強硬派をそろえ、通商問題で中国に強い態度を示すことで2018年の中間選挙の勝利をめざす。イデオロギー、安全保障面で中国に「揺さぶり」をかけることで、共和党保守派と同盟国を満足させ、出来れば中国から一定の譲歩を得ることで「妥協点」を見出そうとしているとのこと。そこから、共和党全体を何とか納めて大統領としての足場を築きたいというところだろう。
・著者は、現実を伝えないヒステリックなマスゴミを批判、また「米中戦争」のような非現実的な仮定をたてるのではなく、冷静にトランプ政権の人事、行動、環境を見据え分析し、楽観を許さない現状を読み解いている。
・米国の共和党保守派との関係が濃密な著者ならではの一冊!是非ご一読ください。

<4人目>
・二重というのは、民主党から共和党へそして共和党主流派から共和党保守派(草の根団体)へという意味である。
・トランプ大統領とは、共和党保守派が押し上げたものである。「白人低所得者層の不満」、「ポピュリズム」ではない。「隠れトランプ」などは、予測を誤ったメディアのお粗末な言い訳に過ぎない。
・さて、共和党保守派とは一体何ものであろうか。日本に入って来る情報は、彼らを蔑視するアメリカリベラル学者の言説であり、日本の学者はその受け売りをするのである。翻訳学者のレベルである。
マスコミにしてもアメリカのリベラルメディアのそれを垂れ流すのみである。
・これらの状況は、トランプ政権誕生後も変わっていない。何故、誤ったのかの検証をしせず、それに対して知らんぷりしているからである。このままでは、日米関係に致命的ミスを犯す可能性がある。
・トランプ大統領は、大統領令・覚書により法の厳格な適用・規制緩和・政府関与の縮小・許認可のスピードアップ・テロリスト対策等々を粛々として実行中である。その政策の本質は「行政国家」の解体である。それは、通常の独裁者であれば自殺行為である。
・著者は、日本国内で数えきれない選挙に関わったプロであった。早くから、トランプ当選を予測し適中した。選挙分析を正しく解釈したのであった。知性の自主性である。
・全米保守連合がワシントンに於いて毎年開催する年次総会がある。著者は、毎年参加していて知人も多い。「保守とは何か」、「何が解決すべき課題か」を三日間に亘り論議するのである。政治家の発掘・養成・政治手法の機会も用意されている。日本の保守もこういったシステムを参考にすべきではないのか。
・日本のメディアは、ごく一部を除き無関心であるが何故、誤ったのかの検証をせずに参加してもステレオタイプな結論となるのは目に見えている。外務省も完全に予想を外し茫然とした状態であった。
救いは、政治家の動物的勘による安倍総理の行動であった。今回は、成功したがこれは、危ない。
3月27日、橋下さんはワシントンの戦力国際研究所で講演した。司会者は、マイケル・グリーンであった。トランプ政権は、従来のカウンターパートの大半を放逐中であるそうである。果して、吉か凶か。

<5人目>
日本のテレビ、新聞では分からない事が満載でビックリした本でした!本当の事を知るにはやはり本だなと改めて思いました。

<6人目>
・著者のブログの読者であり、他の有識者・知識人・専門家とされている方達との見解の違いに関心を持っていました。今回初めてのメジャー出版物となる様ですが、今後も多数出版をされていく存在になられることでしょう。
・くれぐれも物書きにとどまらず、確かな取材・分析・検証の上、共和党保守派の流れを日本の政治にも持ち込んでいただきたいと考えます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<筆者>
読者の皆様の期待に応えてこれからも頑張ります!

本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

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2017年03月25日

何故「ライアンケア」の採決は見送りになったのか

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ライアンケア(オバマケア代替法案)の採決が見送りになった理由

オバマケアの代替法案であるライアンケア(オバマケア・ライト)の採決が民主党からの頑強な抵抗と共和党内の保守派の一部からの抵抗で可決の見通しが立たないために採決が見送りになりました。

今回のポイントは、トランプ政権を支える保守派が反旗を翻すとトランプ政権は法案を通すことができないということが如実になった ということです。

筆者は1月政権発足時に「 トランプを黙らせる方法」(アゴラ)という記事を執筆しました。内容としては政権基盤がぜい弱なトランプ政権は自らを支える保守派を他者におさえられると身動きが取れなくなるというものです。

トランプは自らを支える保守派を軽視して主流派に阿ったオバマケア改革案を認めたことで、保守派の一部から手痛くお灸を据えられた形になりました。

トランプ政権はコーク兄弟に一瞬の隙を突かれて保守派の一部を切り崩された
 
左傾化が進んでいる民主党がオバマケアを見直す同法案に賛成しないことは当然ですが、今回はトランプ政権を支えているはずの保守派の一部が強硬に反対を主張したことは注目に値します。

特に反対の急先鋒に立った人々はFreedom Caucusというリバタリアン色の強い保守系の議員連盟に所属している連邦議員です。彼らはライアンケアはオバマケアを廃止するとしていた政権公約に反する中途半端な粗悪品に過ぎないものとして批判を展開しました。

この背景には選挙期間中からトランプと激しく対立してきた大富豪のコーク兄弟との確執があります。

コーク兄弟はリバタリアン系(一応保守派の一部とみなされる)を中心に共和党連邦議員らに巨額の資金援助を実施しており、今回はライアンケア廃案と資金提供をバーターにする取引を連邦議員に持ちかけました。 the Club for Growth、the Heritage Foundation's political arm、Americans for Prosperity、Freedom Partnersなどのコーク兄弟と関係が深い団体もライアンケアに一斉に反旗を翻しました。

トランプと下院共和党指導部が法案通過を意図して共和党内主流派と妥協を行ったことで、コーク兄弟に保守派内に生まれた亀裂を突かれてお膝元の保守派を切り崩された形となります。

しかも、その理屈はライアンケアは手ぬるく公約違反であるというものでした。つまり、政局的な要素ではなく、あくまでもコーク兄弟はトランプ政権の最優先政策を頓挫させる大義名分まで得て政局を制するという大勝利となりました。(もちろん、トランプにとっては完敗となりました。)

連邦議会の掌握に失敗したホワイトハウス・共和党下院指導部

ライアンケアはポール・ライアン下院議長が主導した紛い物であると反旗を翻した保守派からは非難されています。そのため、ポール・ライアン議長にしてみれば連邦下院という自らの庭でコーク兄弟に赤っ恥をかかされたことになりました。

ホワイトハウスでもポール・ライアン議長と懇意にしていたラインス・プリーバス首席補佐官、コーク財団系の運動団体であるFreedom Partnersの元代表のマーク・シュートを議会対策の文脈で顧問に据えているペンス副大統領などは、連邦議会との調整力という意味では疑問符がついたことになります。

連邦上院では民主党によるフィリバスターや反トランプの議員らの抵抗が想定されるため、元々ライアンケアがそのまま成立する可能性が薄かったわけですが、トランプ政権と近い関係にあるはずの連邦下院、しかも保守派からの造反が出たことは、トランプ政権が議会対策を根本的に見直す必要があることを示唆しています。

トランプ政権が取り得る選択肢にはどのようなものがあるのか

トランプ政権が取り得る選択肢としては、最も手堅いものはコツコツと難易度の低い法案を通して、議会運営の実績を積んで成果が出ているように見せていくことでしょう。

しかし、次の山場はトランプ政権が想定している下院の税制改革案ということになります。こちらは国境税調整を含むものであり、主流派との妥協が必要な点、保守派の団結に綻びがある点、コーク兄弟が反対している点、など、ライアンケアとほぼ同じ構図が成立しており、コーク兄弟の影響力を見せつけられた現在、予算成立は極めて困難になってきました。

トランプ政権とポール・ライアン下院議長は保守派をまとめ上げて国境税調整を含む税制改革をごり押しすることができるのか、それとも民主党や主流派との妥協を通じた対応を継続していくのか、その際コーク兄弟の影響力をどのように排除または利用するのか、ということが問われることになります。

仮に今回同様の失敗の可能性がある場合、保守派と一緒にごり押しして来年の中間選挙で民主党・主流派との全面対決姿勢を取るのか、保守派と距離を取ってインフラ投資などをバーターとして民主党・主流派との関係を仕切り直しするのか、それとも何もしないで無策でいくのか、次の一手が非常に興味深いことになりました。

今回のライアンケアの一件は、トランプ政権内における保守派の重要性を再認識させる出来事であるとともに、ホワイトハウス内での勢力争いの力関係の変更にも繋がることから、トランプ政権の動向からますます目が離せない状況となってきました。



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2017年03月17日

トランプ「不完全な」予算教書が示唆すること

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3月16日予算教書(骨格)から分かるホワイトハウスと議会の確執

トランプ大統領が3月16日に発表した予算教書(骨格)は、国務省や環境保護局などの予算を削って、その分を防衛費の増額に充てるというものであり、内容の是非はともかくトランプ政権が明言してきた内容が反映されただけのものであり、それほど驚くべき内容ではありません。

予算を削られる分野に関連している人々からは様々な批判が寄せられると思いますが、それは予算削減の折に見られるお約束の批判であるので重要な情報として相手にする必要も特にありません。

一部のバラマキ的なプロジェクト停止が上院・下院の選挙に影響を与える可能性はあるものの、大半の分野が民主党議員の利権分野であることから肉を切らせて骨を断つ内容とも言えます。

ただし、本予算教書は全く不完全なものであり、現在の段階でこれ以上の議論を行っても仕方がありません。そして、その不完全さがトランプ政権の今後の道筋の困難さを表すものとなっています。

春先まで減税案と財政赤字の見通しの公表は先送りに
 
トランプ大統領が提示する予算で最も焦点になるポイントは、国境税調整を含めた減税改革、の内容となります。しかし、その中心となる減税案の公表が先送りとなったことで、今後の展望が見えにくい状況となっています。

これはトランプ政権と連邦議会の間で税制改革の合意がほとんど得られていないことを意味しています。米国大統領は予算教書で自らの見解を述べることしかできず、実際の予算策定・承認の全ては連邦議会で行われます。

そのため、トランプ大統領は事前にある程度連邦議会側とネゴシエーションして税制改革案を提示するわけですが、現段階まで減税案を示すことができていないことは、肝心の議会対策が不調であることを示唆しています。

トランプ政権の苦しい議会運営、トランプを支持する勢力の実数は25~30%程度か

共和党が上下両院過半数を占めているため、トランプ政権の議会運営が楽になったとみなす向きもありますが、それは現実の政局構造を踏まえていない論説だと思います。

トランプ政権に対して連邦議会の共和党内の約半数を占める保守派が支持、残りの半数の主流派は是々非々というスタンスです。これは選挙戦の軋轢を反映した結果として生まれた構図であり、トランプ政権側が掌握している連邦議会の共和党保守派に属する勢力は全体の25~30%程度でしかありません。

特に連邦上院では100議席中60議席以上を獲得しなくてはフィリバスター(議事妨害)によって予算決議は妨害されるために大幅な妥協が強いられます。また、予算決議に付帯させることが可能な財政調整措置に減税の規模・内容を技術的に委任することもできますが、その方法を採用しても技術的に過半数の賛成が必要となります。

トランプは予算教書(骨格)に先立つ一般教書演説で議会に協力を求めましたが、それは上記のような苦しい議会運営の状況が表れたものでした。

連邦下院の保守派が推進する国境税調整の行方、上院との落としどころを巡る争いは続く

元々共和党下院のポール・ライアン議長とケビン・ブレイディ歳入委員長は国境税調整を含めた大幅な法人税などの減税案を推進しています。連邦下院は共和党の議席の絶対数が上院よりも多く、共和党保守派が推進する税制改革案を推し進めやすい構造があるからです。

しかし、上院は共和党・民主党の議席数が拮抗しているとともに、共和党議員でありながら実際の投票行動が民主党と変わらない「名ばかり共和党員」、マケインなどのトランプと大統領選の過程で深刻な亀裂を抱えた有力議員、国境税調整に反対するウォルマートが地元にある州選出議員などがおり、下院の税制改革案がそのまま通る状況ではありません。

したがって、トランプ政権としては、減税規模や減税内容について上下両院議員との間である程度の合意の目途をつけてから春先に予算教書の本格版を提示する形を取ったのでしょうが、実際にどの程度合意できるかということは不透明感が漂っています。

筆者の見立てでは大統領の予算教書(本格版)と下院が国境税調整入りの減税案を推進し、上院が減税規模の縮小と一部の財源を国境税調整以外のものに切り替える修正を行うのではないかと想定しています。(もちろん、全てが崩壊して減税案自体がほぼ骨抜きになる可能性もゼロではありません。)

トランプ政権の減税改革は世界経済、日本企業に与えるインパクトも非常に強烈なものであり、今後もその展開から目を離すことはできません。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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2017年03月04日

トランプの大統領令・覚書「行政国家の解体」という本質

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トランプの大統領令の大半は「政府(≒ホワイトハウス)が権限を手放すため」のもの
 
トランプ大統領が就任以来発してきた大統領令・大統領覚書、多くの有識者とされる人々がトランプ大統領の精力的な仕事ぶりを独裁と揶揄してきました。しかし、それはこれらの大統領令・大統領覚書の内容を見ていないことを同時に意味しています。

トランプ大統領が命令した大統領令・大統領覚書の大半は、連邦政府が所管している規制権限を手放すことを求めることか、法の厳格な運用を求めるものでしかありません。つまり、政府の権限を小さくして人々の行動の自由を拡げるものであり、または議会に与えられた権限を実直に実行するというものです。

したがって、トランプが独裁者であるというのは馬鹿げた妄想でしかなく、同じく大統領令を連発したオバマ大統領が発してきた、連邦政府の権限を強化したり・法の運用を骨抜きにするような大統領令・大統領覚書と比べることは全く意味を成しません。

1月20日就任式から2月末までに発されたトランプの大統領令・大統領覚書

トランプ大統領が発令した大統領令・大統領覚のうち、

規制緩和、政府関与の縮小、許認可スピードアップを求めるものは、

・医療保険制度改革法の廃止に向けた大統領令(オバマケアの廃止・置き換え) 
・国内製造業に関する規制負担の許可制の合理化及び削減に関する大統領覚書
・規制改革に関する大統領令(1つ新たな規制を作る度に2つ規制を廃止する)
・連邦金融システムを規制するための基本原則に関する大統領令(金融規制の緩和)
・受託者責任ルールに関する大統領覚書(退職口座に関する投資アドバイスへの規制適用を止める)
・連邦政府機関に規制改革タスクフォース(作業部会)を新設する大統領令
・連邦政府機関に規制改革タスクフォース(作業部会)を新設する大統領令
・米国の水に関す再評価による法の支配、連邦制、経済成長を回復させる大統領令
・雇用凍結に関する大統領覚書(コスト増につながる新規職員採用停止)
・キーストンXLパイプラインの建設に関する大統領覚書(連邦政府の不許可の見直し)
・ダコタ・アクセス・パイプラインの建設に関する大統領覚書(連邦政府の不許可の見直し)
・メキシコシティー・ポリシーの復活に関する大統領覚書(中絶を支援する国際組織への補助金停止)
・高い優先順位のインフラ計画に関する環境評価・承認の迅速化についての大統領令

などです。政府の社会に対する干渉を廃止してビジネスの自由度を増やす改革ばかりであり、これらが粛々と実行されていくとホワイトハウスをはじめとした政府機関の権力は大いに縮小していくことでしょう。

そして、法の厳格な運用を求める大統領令・大統領覚書は、

・米国内の治安強化に関する大統領令
・国境警備及び移民執行改善に関する大統領令
・犯罪抑止と公共の安全のタスクフォースに関する大統領令
・警察官に対する暴力を防止する大統領令
・国際的な犯罪組織に対する法執行及び国際的取引を防止するための大統領令

などです。治安維持、国境管理の厳格化などが求められています。極めて当たり前の内容であり、むしろ現在まで十分な対応が取られてこなかったことに驚きを禁じ得ません。

そして、そのほかには、国防系の対応としてISISなどのテロリスト対策として

外国人テロリストの流入からの米国の保護に関する大統領令(テロリスト渡航防止法対象7か国からの一時的な入国禁止等)
軍備増強に関する大統領覚書(米軍の即応体制の準備等)
シリアとイラクのISISを打ち負かす作戦立案に関する大統領覚書
国家安全保障会議及び国土安全保障会議の組織に関する大統領覚書

などが行われています。これらはテロの脅威に対する公約を遂行するためのものであり、今後更に具体化が進んでいくものと思います。(話題になった入国禁止の大統領令は司法省法律顧問は形式上合法としたものの、立法趣旨論で高裁まで違憲とされたに過ぎません)

いわゆる保護主義的な政策は全体の一部であり、海外との貿易・投資は二国間協定に切り替える(特にTPP三か国のGDPの大半を占める日米)ことから、それほど問題があるものとは思えません。

TPP交渉と合意からの離脱に関する大統領覚書
米国のパイプラインに関する大統領覚書(パイプライン建設に米国産資材を活用)

最後に触れておきたい大統領令は、

・行政機関の任命者の倫理に関する大統領令
・黒人の多い大学についての大統領令

です。

前者は日本でいうところの天下りによる腐敗防止(政府機関に奉職していた人の退任後のロビーイングの禁止など)をまとめたものです。このような行為は米国でも腐敗の温床とみなされていますが、トランプ政権は大胆にメスを入れる指令を出しました。日本で天下り云々で騒いだりしている人がトランプ大統領がやろうとしていることをろくに見もせず否定していることはナンセンスでしょう。

また、トランプは黒人からの一定の支持があるとともに、歴代大統領と同じように黒人が多い大学への補助金に関する大統領令に賛成しています。メディアが垂れ流す人種差別的なイメージも実態は異なっていると言えるでしょう。

トランプが推進している政策の本質は「行政国家の解体」である
 
トランプ大統領が実際に遂行しようとしている行為の大半は、米国内において政府の権限を縮小しようというものです。スティーブ・バノン大統領首席戦略官が保守派の年次総会であるCPACで宣言したように、その狙いは「行政国家の解体」なのです。

トランプ大統領が行っていることは、通常の独裁者であれば自殺行為である、自らの権限を次々と手放す指令を発していることになります。本当に独裁者になりたいのであれば、行政権を次々と強化する大統領令を発して、国民の生活の隅々まで政府による監視の目を張り巡らせれば良いのです。
 
トランプ大統領をメディアで報道されている受け売りで評価することは間違いであり、その実際の行動を評価することが必要です。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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2017年02月28日

共和党・税制改革のドン、国境税調整を語る

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ワシントンDC・全米税制改革協議会(ATR)のグローバー・ノーキスト議長と懇談

本日はトランプ政権の一般教書演説の日です。それに先立ち2月22日にワシントンDCにて、全米税制改革協議会のグローバー・ノーキスト議長と懇談の場を設けて頂きました。筆者とノーキスト議長は8年間の知己であり、現在でも渡米の度にお話を伺う機会を頂いております。

グローバー・ノーキスト全米税制改革協議会議長(ATR議長)とはどのような人物なのか?


本日はトランプ政権の一般教書演説の日です。それに先立ち2月22日にワシントンDCにて、全米税制改革協議会のグローバー・ノーキスト議長と懇談の場を設けて頂きました。筆者とノーキスト議長は8年間の知己であり、現在でも渡米の際には政治・経済の見通しを伺う機会を頂いております。

<h3>グローバー・ノーキスト全米税制改革協議会議長(ATR議長)とはどのような人物なのか?</h3>

グローバー・ノーキスト議長が率いる全米税制改革協議会(ATR・Americans for Tax Reform)は、共和党連邦議員の税制改革に対して最も影響力を持つ米国のグラスルーツです。

グローバー・ノーキスト議長はレーガン政権大統領からの依頼で同団体の活動を開始し、共和党議員らはグローバー・ノーキスト議長の顔色を常に見ながら税制改革の議論を行っています。共和党議員は選挙に際して同団体が提示する「納税者保護誓約書」という全ての増税に反対する署名にサインさせられており、当選後もATRによって連邦議会における言動を常に監視されています。

ATRは毎週水曜日にワシントンDCの事務所で全米から保守派のリーダーを招く「水曜会」を開催していることで知られています。同会は招待制・非公開・マスコミ無しで実施されており、様々なテーマについて保守派の運動方針が決まる場となっています。筆者も出席者としてカウントして頂いていますが、毎回200名程度の運動のリーダーが集まって濃密な議論が行われています。

グローバー・ノーキスト議長は、水曜会に集まる保守派のネットワークと影響力を行使し、共和党の連邦議員の生殺与奪の権力を事実上握っています。したがって、グローバー・ノーキスト議長の承認が無ければ予算・税制を司る共和党議会は身動きを取ることができません。まさに共和党保守派のドンの一人と言えます。
 
共和党税制改革のドン・日本からも大注目の「国境税調整」についての見通しを語る

トランプ政権の税制改革案として最も注目されている項目は「国境税調整」です。ノーキスト議長は連邦下院でポール・ライアン議長やブレイディ歳入委員会議長などと税制改革について議論を行っています。


ノーキスト議長によると、減税の方向性については下記の通り。


・トランプ大統領と連邦議会は米国全体の減税を押し進めることで合意している。

・連邦の所得税・法人税をカットすることで世界的に競争力がある税制改革を実行している。

・税制改革は直近8年間よりもビジネスへの投資を促すものになるだろう。

・また、所得税・法人税の減税だけでなく相続税やAMTの廃止を含むものになるだろう。

・税制全体のパッケージで、約2.5兆ドル(10年間)の減税になり、非常にpro-growthなものである。


そして、懸案の国境税調整については非常に前向きであり、


・税制改革案は国境税調整を踏まえた全体的なパッケージの形として提案される。

・「国境税調整」が導入される最大のポイントはこの仕組みから生まれる数兆ドルの税収にある。

・全ての税制改革計画に互いに合致するのは国境税調整がパッケージに含まれているからである。


国境税調整に関する懸念事項については、


・国境税調整は実質的な増税ではないかと懸念する人もいるが間違っている。税制改革は輸出では減税して輸入に増税する一つのパッケージで全体で約2.5兆ドル(10年間)の減税となる。

・目標の経済成長の数字は減税や規制改革などもあわせてオバマの2%成長ではなく、レーガンのような4%成長を導くことにある。

・国境税調整を導入すると為替の敗北が是正されて実際に米国の消費者に影響を与える、という経済学者の見解もあるが、実際には少し時間がかかることになるだろうと思う。


国境税調整が連邦議会に提出されることについて、

・実は連邦下院と大統領はほぼ税制改正案に同意している。たしかに、連邦議員の中には難色を示している人が数名いるが、税制改革全体のパッケージとしては非常に魅力的である。

・仮に国境税調整以外の要素をパッケージの中に代わりに入れてシステム全体が機能する場合、私はそれについてOKだと言うだろう。ただし、それは劇的に支出を削減して他に税収を上がる方向があればの話だが。

・国境税調整を批判する人々は現段階ではレパトリ課税による課税案を出しているが、私は国境税調整のほうが良いと思っている。


連邦議会での議論の見通しについては、


・税制改革案の話は今後6カ月で議論され、法案が可決することになるだろう。連邦下院とトランプ大統領が同意している現在の案になる可能性が極めて高いが、若干の変更の可能性も残っている。

・ 上院は税制改革の議論に積極的ではない(国境税調整が好きではない)が、税制改革のパッケージ全体を判断することになるため、国境税調整のみを見て判断するわけではない。

・下院が税制改革案を大統領に提出した時、トランプ大統領は「I want this」と発言しており、連邦下院は「We pass this」と発言している。

・ 税制改革案の背景として、下院での可決見通し、大統領のI want this nowという発言、ビジネスコミュニティのthis is goodという発言、スモールビジネスにもビッグビジネスにもgoodという意見、が存在している。

・上院やウォルマートは国境税調整が好きではない、と言っているが、数千・数万のスモールビジネス・個人契約者・プロフェッショナルらは支持しており、それは非常に強力である。

・仮に上院が修正したいのであれば、それは早く始める必要があるだろう。その可能性は残っているが、全体のパッケージを見直す作業になるので非常に困難である。今回の全体パッケージは経済にとって良くデザインされた計画である。

・ 彼らが「国境税調整は好きではない」と言うならば、私はその気持ちは理解していると言うだろう。しかし、投票は国境税調整のみではなく、全体パッケージに対してのものである。


と述べられています。いかがでしたでしょうか。


日本企業にも大きな影響を与える「国境税調整」に対する共和党のドンの発言

今回のワシントンDC訪問では「国境税調整」について、共和党の税制改革のドンの話を聞きたかったので、ノーキスト議長と非常に濃密な時間を過ごさせて頂きました。

一般教書演説の中でどこまで税制改革が触れられるかはわかりませんが、トランプ政権の改革の最重要項目であることは間違いありません。この他にもスティーブ・バノン首席戦略官やトランプ政権への保守派の見解など、共和党内の最前線での政局のお話を伺ってきましたが、それについては別途ブログに書くか、それとも講演のような形で皆さまにお伝えしていけるようにしていきます。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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「保守革命」がアメリカを変える
グローバー・G. ノーキスト
中央公論社
1996-06





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2017年02月04日

都議会の「真の改革派」を見分ける簡単な方法

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千代田区長選挙を通じて都議会議員が「改革派」だらけになった(笑)

アゴラでの千代田区長選挙に関する関係者の論争で、知事与党である都民ファーストの会も最大野党である自由民主党も、都と区のあり方について「我こそが改革派」であることを宣言する事態に至りました。非常に喜ばしいことです。

<都民ファーストの会>(*正確には伊藤区議は都民ファーストの会ではないと思うけども。)

なぜ区長選挙が「東京大改革を進めるか、止めるのか」を問う闘いなのか?都と基礎自治体の関係から考えてみる(音喜多駿・都議)
千代田区長選、与謝野氏当選ならドン勢い。特別区にも影響。(伊藤陽平・新宿区議)
内田茂氏は都民ファーストだと言い張る川松自民都議へ公開質問状(伊藤陽平・新宿区議)

*過去記事(音喜多都議)
舛添前知事がトーンダウンした児童相談所の特別区(23区)移管を実施し、社会的養護の充実を!
東京都の「区」と「市」の違い、言えますか? -大阪都構想、特別区の正体-

<自由民主党>

小池支持者も驚愕、千代田ファーストは内田茂都議の政策だった⁈(川松真一朗都議)
公開質問への回答+都議会改革は私がやる!(川松真一朗都議)

都区制度改革に対する「改革派」かどうかを測るための指標とは何か

政治家というものは選挙の時には演説などで嘘八百をつくものであり、まして他人の選挙なんてものには何の責任も取らないわけです。しかし、幸いなことに音喜多都議と川松都議はもうすぐ「東京都議会議員選挙」の審判を受けるわけであり、有権者から声を上げて求めれば「本物の改革派」かどうかを知ることができます。

そこで、筆者からは都区制度改革における改革派か否かを測る指標を提示したいと思います。東京都と特別区は普通の地方自治体同士の関係ではなく、歴史的な経緯によって東京都は基礎自治体が本来は持っている権限を特別区から取り上げている形となっています。

ただし、一般的には住民に近い地方自治体が住民サービスを行うほうが安価で質の高い公共サービスを提供できることは明らかです。しかし、残念なことに東京都と特別区は東京都からの事務移管について長年話し合ってきていますが、近年は両者のすれ違いによって事務移管はほとんど行われていません。

東京都議会議員選挙の前に音喜多・川松両都議は改革派として「都民ファーストの会」と「自由民主党」から「東京都から特別区の事務移管の項目の一覧表」を公約として提出していただきたいと思います。

東京都と特別区の事務方の会議が暗礁に乗り上げてお互いに責任を擦り付け合っている現状を踏まえた場合、都議会が政治的な主導権を持って都区制度改革に着手すべきです。

有権者はこの一覧表の個数及び実際に実行された事務移管数で「改革派か否か」を簡単に測ることができます。もちろん、事務移管の一覧表すら提出しない政党は「抵抗勢力」以外の何物でもありません。

都区制度の新たな区割りなどは事務移管の問題が進展していくことで自ずと解決することになります。まずは東京都が自ら権力を手放せば良いだけのことです。

真の「身を切る改革」とは権力を手放すことができるかどうかだ

最近では「身を切る改革」という言葉で「議員報酬を減らす」という政治的なパフォーマンスが実施されることが多い状況があります。この手の話は政治的な支持を高めるには良いのですが、本質的な意味ではほとんど意味がありません。

都議会議員が給料を減らしても権力の源泉である東京都の事務権限を手放さないなら、都議会議員は政治献金で幾らでも後から減額した議員報酬分の資金を回収できるでしょう。一時的な減俸などは権力を持つ人々にはどうでも良いことでしかありません。

真の「身を切る改革」とは目の前に転がっている権力を自ら手放すという決断ができるかどうか、です。東京都から様々な事務権限を特別区に移す、または廃止・民営化することができる都議会議員だけが改革派を名乗る資格があります。

与野党の双方の過去記事において、都民ファーストの会は幹事長が改革派だと名乗りを上げ、自民党都議は政党のドンである内田茂氏が改革派だと主張しました。

是非ともこれらの都議会議員には有権者に自らが改革派である「証拠」を見せてほしいものです。「東京都から特別区の事務移管の項目の一覧表」を出すことすらできない都議会議員など必要ありません。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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2017年01月22日

トランプ大統領就任演説で何を悟るべきなのか

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トランプに対する偏見や単なる翻訳学者の言論が溢れる日本の知的空間

トランプの大統領就任式の演説が終わりました。日本でも演説内容について評論が行われていますが、正直言って読むに耐えかねるものが多くて、ほとんどサラサラと目を通しただけの状況となっています。

この就任演説の内容を正しく理解すること、現在の米国内部及び共和党内部での権力闘争の状況を伺い知ることができます。今回はトランプの大統領就任演説を通じて、それらの状況を概観していきたいと思います。

米国民としての一体性を取り戻すパトリオティズムの発露としての演説

トランプ政権の反ワシントンの姿勢は、米国における伝統的なパトリオティズムの発露に過ぎません。建国の歴史から連なる反ワシントン、反連邦政府の姿勢は米国共和党にとってはスタンダードな考え方です。

そして、米国共和党、特に共和党保守派はこの考え方を強く支持しています。

トランプは合衆国への忠誠、つまり自由主義と保守主義という米国の規範を規範を共有することによって、米国民は共通の理念の下に団結(分断を乗り越える)というイデオロギーを表明しました。

これはポリティカル・コレクトネスによって人種・性別・所得・学歴などで人間を分類する思考法を持つリベラルに対する強烈なアンチテーゼを示したことになります。(リベラル派それを多様性と呼んでいます)

民主党と共和党では何によって国民の一体性を取り戻すのか、という基本認識にズレがあり、この演説は共和党保守派が標榜する米国民を統合する価値観の勝利を宣言する演説であると捉えるべきでしょう。

このような分析はトランプ特有のものではなくて共和党保守派は常に主張してきたことであり、同演説はトランプ政権内での共和党保守派の力の強さを示すものだと言えるでしょう。

ワシントンのリベラルなエスタブリッシュメントとの戦い

トランプは民主党や共和党主流派などのリベラルな傾向がある人々と決定的に対立しています。これらの人々が集うワシントンは腐敗の象徴とみなされており、トランプはそれらの人々が雇うロビイストをワシントンから一掃する形で権力闘争を行っています。

そして、今回の大統領選挙結果はメルセル財団らのドナー、ヘリテージ財団の政策、ティーパーティーらの選挙力を背景とした共和党保守派のエスタブリッシュメントへの勝利であり、その戦いに決着をつけるという決意表明が反ワシントン演説の本質です。

つまり、現在実行中の政治闘争の方針を示していることになります。共和党内部でリベラルな主流派の排除という権力構造の変化は閣僚人事にも反映されており、今後の政策の方向性が極めて保守的なものになっていくことを示しています。

ちなみに、日本の外交面のカウンターパートの基本は上記のエスタブリッシュメントに紐づいた人々であり、昨年の8月に共和党系でもあるにも関わらず、ヒラリー支持を打ち出して全面排除されている状況です。

共和党保守派内でのリバタリアン陣営の衰退という構造変化

今回の演説の一部で保護主義的な発言も見られましたが、それらはトランプ政権内の共和党保守派内での権力構造の変化も表しています。

共和党保守派内では完全な自由主義を標榜するリバタリアンの勢力が資金面・政策面で大きな力を持ってきました。具体的にはコーク財団を中心とする勢力であり、共和党の大統領候補者や連邦議員は同財団の影響力を強く受けてきました。

日本人でも多少関心がある人ならコーク財団の名称と影響力を知っていますが、実は今回の大統領選挙ではコーク財団はトランプの支援を行っておらず、同財団の系列下の関係者などからトランプに人材が流れる状態が発生しています。

コーク財団の影響力の低下は避けがたい状態となっており、共和党議会内部のパワーバランスもトランプに有利に働く可能性が高まっています。また、同財団自体も政治活動を縮小する再編を志向しており、今後は研究活動などに重点を移行する動きが出ています。

この演説内容は政権内の共和党保守派内での権力闘争の結果として、リバタリアンの影響力が低下していることを裏付けるものとなっています。日本人から見ると何が重要なのか分からないかもしれないですが、米国政治の動向を具体的に考える上で重要な変化です。

トランプ政権は共和党保守派の政権であるという基本認識を持つこと

今回のトランプ大統領の就任演説は、長年米国で主流を占めてきたリベラル勢力(共和党・民主党含)の排除、共和党保守派内部におけるリバタリアンの影響力低下を示すものとなりました。

極めて政治闘争的な意味合いを前面に押し出した戦闘的な演説だったと思います。イデオロギー的な抽象的な意味ではなく、具体的な政治闘争が伴う保守革命が確実に進んでいるということです。

人材面でも大きな変化が発生しつつあり、従来までの人脈のガラガラポンが起きていくことになるでしょう。仮に若くて実力がある人々にとっては政治的なチャンスが訪れている状況です。

米国大統領の演説とは、誰がその政権を作ったのか、という選挙のプロセスが色濃く表れるものであり、それらを理解した上で政策の予測と具体的な対策を考えることが必要となります。少なくとも共和党保守派の考え方についてほぼ無理解・偏見が溢れている日本の現状を変えることが必要です。

トランプ政権を創り上げた人々は共和党保守派であり、それらの人々を軽視してきた日本外交は危機的な状況に立たされていくことになるでしょう。

表面的な文言の意味を探る訓詁学のような分析は意味がありません。トランプが述べているように実行の時代です。就任演説について論評するだけの学者は不要であり、受け身ではなく自らが生き残るために誰に何をどのようにアプローチするべきかを考える実務家の時代が来たと言えます。


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2017年01月06日

「保守主義の民衆化」というプロジェクト

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池田先生と神谷さんからのご指摘を受けて

筆者が寄稿させて頂いた記事に、ハイエクの『隷属への道』のAmazonキャプチャーを貼っていたことから、池田先生神谷さんから様々なポピュリズムと保守主義の相違に関するご指摘を頂きました。

結論から申し上げますと、お二人の主張は理解している上で、あえてハイエクの『隷属への道』を貼らして頂いた次第です。しかし、筆者が申し上げたかった趣旨を踏まえれば、ルイス・ハーツの『アメリカ自由主義の伝統』を紹介したほうが良かったと思っております。

筆者もポピュリズム(≒民主主義)と保守主義が伝統的に対立概念にあることは理解していますが、ポピュリズムの台頭は避けがたい情勢情勢であることに鑑み、保守主義の思想をポピュリズムに対置させるのみでは手詰まりに陥るものと考えております。

ポピュリズムと保守主義を対置してポピュリズムの暴走による危険性を指摘することは有意義ですが、ポピュリズムの暴走を止めるためにはそれは不十分だと想定しているからです。(まして、今回失敗したリベラルなエスタブリッシュメントにそれを期待することは余計に出来ませんし)

保守主義の民衆化という困難なプロジェクトの必要性

そこで、筆者が重要視していることは、保守主義の思想を民衆に内面化する、ということです。

現代社会において、私たちは今更民主主義を辞めるわけにはいきませんし、その中で極度に肥大化した政府を立法府がコントロール可能なレベルまでダウンサイジングする必要があります。

しかし、社民主義の浸透によって立法府は行政府に対する陳情機関と化しており、巨大な政府を監視する役割などほとんどないどころか、立法府議員が行政府に事実上コントロールされている始末です。そして、民衆は人生の自己決定権を喪失した上に、大きな政府が経済成長を阻害することで更なる不満が募らせることになります。

したがって、今後も更にポピュリズムは拡大することは避けられず、巷で問題の解決策として主張される「再配分の強化」というバラマキ政策が実行されれば状況は更に悪化するでしょう。なぜなら、ポピュリズム台頭の本当の原因である上記の問題は何も解決しないからです。

これらの現状を変えていくためには、民主主義の性質自体を変えていくしかありません。つまり、人々の頭の中の社会主義+民主主義という現在の公式を保守主義+民主主義の新しい公式に変えるということです。

米国における保守主義の民衆化の動向について

米国においても同様の問題は戦後早くから認識されており、民主主義の中で保守主義者が多数を取ることを目的として、保守主義者らによって保守主義の理念を共有するグラスルーツを育てる試みが実践されてきました。

これらの運動は社会的保守と経済的保守の考え方から成り立っており、フレデリック・バスティア、ウィリアム・F・バックリー・ジュニア、F.A.ハイエクの思想などを共有したものとして展開されています。そして、それらの思想を広めるだけではなく、具体的に民主主義の手続きの一つである選挙で勝利するための仕組みも整備されています。

筆者が米国の政治状況について基本的に楽観視している理由は上記の仕組みの存在を認識しているからです。そして、それらの運動に裏付けられた政治勢力が共和党保守派であり、今回の閣僚人事も実質的に共和党保守派によって大半がジャックされた状態となっています。所謂オルト・ライトはほとんど存在せず、トランプ氏関連の人々は閣僚人事のほんの一部に過ぎません。

これは極めて米国における特殊な政治現象かもしれないのですが、私たちが民主主義が浸透した現代社会で採用するべきソリューションの1つとして参考にすべきものであり、民主主義やポピュリズムの内容を変質化させることが重要だということです。

もはやポピュリズムの台頭(まして民主主義体制)は前提であり、民衆の在り方自体を見直すために何ができるのか、を考えていくべきだと思われます。

そのため、冒頭に指摘を受けたように、「なぜポピュリズムの話しているのにハイエクを貼ってるんだ、渡瀬は本当に分かっているのか」という池田先生が疑問を持たれるのは当然ですし、神谷さんが民主主義と保守主義を対比されるのは当然なのですが、上記の通りの趣旨で多くの人にハイエク読んでほしいという文脈で書籍を紹介したということでご容赦頂ければ幸いです。

*ちなみに、筆者は理念と政策なき単なるポピュリズムは大半の行為が行政機関を追認するだけ(日本の民主党政権のように)のものになると思っており、リベラルなエスタブリッシュメントと大差ない結果になるものと考えております。






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2016年11月05日

米国保守派の定例会議「水曜会」について説明する

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<全米税制改革協議会(ATR)グローバー・ノーキスト議長@水曜会)

某ネット記事が炎上中?で自分も名前を出されて若干巻き込まれているため、この際だから「自分が何をやっているのか?」「ワシントンD.Cで開催される水曜会はどのようなものか」について紹介記事を書いておこうと思います。

全世界の自由主義者とのネットワークへの紹介者としての役割

筆者は米国流の保守主義(≒自由主義)の考え方を持つ人を増やすことを是としており、世界中の自由主義者の人々とのネットワークを構築しています。

そして、米国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、フランス、イギリス、オーストリア、オーストラリア、中東諸国、その他諸々の団体と連携し、日本人の希望者に日本ではほぼ学ぶことができない自由主義の考え方に触れる機会を提供しています。

数年前に筆者が同ネットワークと接点を持った時点で日本は自由主義者の国際的な枠組みからは完全に置いていかれた存在となっていました。

関係者からのヒアリングによると、筆者が関与する以前に日本国内に海外から様々なアプローチを行ったものの、東大を頂点とする半社会主義コミュニティの皆様に間違ってアプローチしたために骨抜きにされてきた経緯があると伺っています。

日本の長期不況は経済政策の根本的な発想が与野党ともに縁故資本主義か社会主義でしかなかったことに起因しており、本当の意味での自由主義的な経済政策が実行されてこなかったことにあります。(自民党の縁故資本主義が新自由主義であるという頓珍漢なガラパゴス左翼言論が蔓延っている原因もここにあります。)

非常に残念なことですが嘆いても仕方がありません。そのため、現在は学生・国会議員スタッフ・経営者まで基本的な理解力がある方がいれば人材として選別した上で海外に渡航する場を設けています。

筆者の連携先には下記に述べる米国共和党関係者の人々だけでなく、アジア・欧州各国で現政権とも深い関係を持つ先なども存在しており、世界各国の必要な人材へのアクセスが可能となっています。

水曜会は米国共和党保守派の中心地・登竜門としての機能を持つ場

ワシントンD.Cに存在している全米税制改革協議会(共和党最大の支持母体の一つ)は筆者の連携先の一つです。主に米国中の保守系グラスルーツが集合する週1回のミーティングである「水曜会」を主宰しています。

水曜会は米国共和党保守派の関係団体の重鎮らが顔を並べているため、大統領候補者のスタッフや連邦議会議員などが保守派のグラスルーツからの支持を受けるために日参しています。同会はメディア完全非公開で議事内容・出席者についても部外者には原則は他言しないことになっています。

実際の運営は、グローバー・ノーキスト議長がテンポよく発言者を回していき、発言者が提案する内容への良否・支援の有無などを決定していく形となります。発言者にとっては米国共和党系の保守派の人々との付き合いを深めていくための登竜門のような空間だと言えます。

日本人でも紹介者がある場合は水曜会に出席することが可能であり、過去には国会議員・有識者とされる人々が参加してプレゼンの機会が与えられています。(ちなみに、日本人の国会議員・有識者は発言がコロコロ変わるために原則として信頼されていません。同会議出席後に増税に賛成してみたり、保守派への罵詈雑言を並べる人々ばかりだから(笑))

筆者は紹介者の一人として米国の保守主義が理解できる人を出席者としてエンドースする役割を担っています。水曜会でプレゼンを行った方々は興味を持った保守派の大物たちに声をかけられます。彼らとネットワークができて道が開けた各個人の進路は各々の判断で歩んでもらうことにしています。

そのため、今回の某メディアに掲載されたように同会に人物を紹介することは良くあることであり、今回の単一ケースのみの文脈で記事紹介されることはどうかなと感じています。

ガラパゴス化した日本の政治・メディア、世界の政治のネットワークに伍する人材の育成を

今回の大統領選挙においてはメディア・大学によるトランプ氏に対するバッシングは劣悪を極めています。米国のリベラルと仲良くしていても一方的な情報源からのインプットに偏ることになり、世界の趨勢について考察するために不十分な状況となっています(もっともトランプ氏については保守派からも厳しい意見は多いとは思いますが・・・)

日本の政治・メディアは完全にガラパゴス化しており、留学などでリベラル派と繋がりを得た英字新聞が読めて論文を翻訳できる程度の人が有識者として大きな顔をしています。しかし、現代の日本に本当に必要なことは世界の政治的な思想の対立について理解し、それらの深い洞察に基づいて行動できる人物を創り出すことです。

筆者の願いは世界の対立軸の一つである自由主義の思想を正しく理解できる人を日本からも見出していくということです。これは困難な道かもしれませんが、筆者の考え方に理解がある人達と幅広く連携して推進していきたいと思います。







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トランプ大統領誕生で米国経済は好景気になる

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トランプ大統領誕生は米国経済の浮揚に向けた切り札として機能する

政策音痴な識者たちによって「トランプ大統領が誕生した場合、経済にとってマイナスに作用する」という言論が行われています。しかし、それらのポジショントークの言論は経済政策の常識から考えて明らかに間違っています。

本日はヒラリーとトランプ氏の経済政策を比較することで、11月8日の米国大統領選挙後に経済がどのように推移していくのか、について予測を行うことにします。従来までの米国通とされる識者らが「実は政策をほとんど見ていない」で米国メディアの猿真似で論評していることが良く分かると思います。

ヒラリーの社会主義政策、トランプの減税&景気刺激政策の優劣は明らか

まず最初に基本的事項として確認して置くべきことはヒラリー・トランプ両氏が「何党」の代表者かということです。そして、言うまでもなく、ヒラリーは民主党、トランプ氏は共和党の指名候補者です。

ヒラリーを擁する民主党は企業活動や富裕層に対して厳しく規制強化・増税路線の政党だと言えます。更に、今回の大統領選挙でヒラリーはサンダース支持者を取り込むために左寄りの政策を採用せざるを得なくなっています。

富裕層への増税、企業への課税強化、金融機関への規制強化、TPPへの反対など、経済活動に制約を加える政策のオンパレードです。もちろんヒラリーはクローニーキャピタリズム(縁故資本主義)の権化なので、それらの政策はいずれも骨抜きになるかもしれませんが、現状においては経済フレンドリーな候補者ではありません。

そして、ヒラリー大統領の下で何よりもオバマケアをはじめとした社会保障制度を強化していくことになるでしょう。ただし、社会保障費の増大が経済成長の足枷になることは既に日本で証明済のことです。

一方、トランプ氏を擁する共和党は企業活動や富裕層にフレンドリーな規制緩和・減税路線の政党です。

たしかに、今回の大統領選挙では減税路線についてはトランプ氏・共和党の政策は共同歩調であるものの、両者の方向性が必ずしも全てが一致しているわけではありません。

トランプ氏は大型のインフラ投資に向けた財政出動を標榜しています。そして、財源としては予備選挙段階では巨額の軍事費支出について言及する場面もありました。TPPなどの自由貿易に反対す方針についても明確に述べています。これらは従来までの連邦議会を牛耳る共和党と対立する政策だと言えます。

ただし、筆者はそれらの政策的齟齬は大統領・議会の間で深刻な対立にはならないものと推量します。トランプ氏と共和党にとってはオバマケアなどのオバマ時代の社会主義的政策を廃止することが重要であり、トランプ氏の政策に反対すること自体の優先順位は高くないからです。

そのため、財政規律に関しては減税・財政出動・軍事費の折り合いをつける形でなし崩しとなり、米国経済の景気過熱が拡大していくものと推測します。また、トランプ大統領誕生時には上下両院は共和党が多数を占める可能性が高く規制緩和に関しては議会主導で粛々と進んでいくものと思います。

政策音痴の勘違いは無視、米国は一瞬の株安・ドル安後に株高・ドル高に向かう

上記のように、ヒラリーの経済政策は経済成長を阻害する要因が多く含まれており、トランプ氏の経済政策は景気を過熱させる要素が盛り込まれていることが分かります。

オバマ政権からの安定性という観点からトランプ大統領誕生の瞬間には一時的に株価などの経済指標が悪化するかもしれませんが、中長期的にはトランプ大統領の政策によって米国は株高・ドル高に向かうことになるでしょう。

筆者は「トランプ氏の自由貿易を阻害すること・巨額の財政出動を実施すること」には極めて懐疑的な立場ではあるものの、経済成長という観点からは民主党よりも共和党の方が優れた政策を掲げていると理解しています。したがって、共和党指名候補のトランプ氏と共和党主導の連邦議会によって妥当な経済政策が採用されていく可能性は十分にあります。

「トランプ大統領で米国経済は長期不況に突入し、世界経済にもトランプ・ショックが甚大な被害を与える」という類の妄言は杞憂に終わることでしょう。ヒラリーとトランプ、どちらの経済政策を良しとするかによって、その人が政策音痴かどうか明確に分かると思います。





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