米国政治

2017年04月29日

共和党保守派の書籍の翻訳本に取り組む出版社募集

無題

ワシントンDCにオフィスを構えることを検討中

トランプ政権100日間ということでワシントンDCを訪問中です。今回も保守派の方々を訪ねてトランプ政権の動向について尋ねるとともに、ワシントンDCにオフィスを設けてスタッフを駐在させるべく不動産を探しています。

友好団体である全米税制改革協議会(Americans for Tax Reform)の国際部門担当であるロレンゾ・モンタラーニ氏を訪ねたところ、「おっ、それならうちの5階のオフィスが空いているから、そこどう?」という話になりました。

オフィスを覗いてみると、同居組織にはエネルギー、税制、裁判などの保守系組織がズラリ。場所としては丁度いいので、引き続きお値段交渉する運びに。これからワシントンの生の情報を得る拠点となる予定です。

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(ワシントンDCど真ん中、ホワイトハウスとキャピトルヒルまで歩いて10分程度)

共和党保守派のドン、グローバー・ノーキスト氏の翻訳本作業を進める

米国保守派のドンとして有名なグローバー・ノーキスト全米税制改革協議会議長の著作の翻訳作業について話し合い、日本の出版社で興味があるところを探すことになりました。

基本的には同書については流行りというよりも長く売ることが考えられるため、初版については相当数買取も含めて検討していきたいと考えております。出版社でご協力いただけるところは、yuya.watase02@gmail.comまでご連絡ください。

現在の翻訳候補は下記の2冊。





今後も共和党系の有力政治家、ロビイスト、シンクタンカーなどの翻訳を

グローバー・ノーキスト氏は米国共和党においては顔役であるため、同氏の翻訳本を出した後はおおよそ共和党保守派であれば書籍の翻訳作業の打診が極めて容易に行えるものと考えいます。(日本でも名前の通った「売れる共和党系の本」の翻訳も優先的に取れる可能性があります。)

とはいうものの、日本の大学ではリベラルが圧倒的に優勢であり、共和党保守派についての本の翻訳などを企画で通すことは困難です。また、一般書籍では左右のヘイト本が幅を利かせている現状であり、筋が通った共和党保守派の考察本は出版社・スポンサー無しでは成り立ちません。

したがって、現在、これらの出版作業に積極的に協力してもらえる出版社及びスポンサー頂ける方を探しております。共和党保守派の考え方は、現代の日本の改革に重要な一石を投じるものであり、是非とも一緒に取り組んで頂ける方がいれば幸甚です。

よろしくお願いいたします。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年04月27日

クリスチャントゥデイで「トランプの黒幕」の書評を頂きました。

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クリスチャントゥデイで「トランプの黒幕」の書評を取り上げて頂きました

神学書を読む(14)渡瀬裕哉著『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』

キリスト教系メディアであるクリスチャントゥデイで拙著『トランプの黒幕』の書評を取り上げて頂きました。

自分は洋の東西問わず神学や思想書が好きで結構読むことが多いので、同メディアで書評を頂いたことは新鮮であるとともに素直に嬉しいです。本書がキリスト教者の皆様のトランプ政権理解に少しでもお役立ちできれば著者として幸甚です。

トランプ政権とキリスト教の関係、その協調と緊張関係についての考察

トランプ政権は、共和党支持者が持つ極端なリベラルを排した素朴な倫理観を代表する政権であり、選挙戦の時には「ヒラリーでなければ良い」という敵の敵は味方という理屈もあって、特に共和党保守派が押し上げて作った政権です。その結果として、最高裁判事の人事などでは保守派のゴーサッチ氏が選任されるとともに、中絶を巡るメキシコシティポリシーの問題などでは成果を上げるに至っています。

しかし、トランプ自身は必ずしも敬虔なキリスト教徒ではなく保守派の体現する倫理観を共有している存在とは言えません。トランプは政敵に勝つために自身の思想信条をコントロールするタイプの人物であり、まさに商人スタイルの政治家ということが言えると思います。

したがって、トランプ政権と保守派(≒福音派)の間では政権の裏側では緊張関係が続くとともに、クシュナーなどの元民主党員が政権内で台頭することによる軋轢は高まるものと推測されます。

書評が増えてくると結構嬉しい、ということ

拙著『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』最初はどんな辛口の書評が出てくるだろうか、もしくは全く書評もつかないのではないか、と懸念していましたが、意外と様々なところで書評に取り上げて頂けるようになってきました。

相変わらずリベラルな大手メディアは国際政治学者らの「的外れなトランプ本」の書評ばかりを取り上げておススメしていますが、今回キリスト教福音派の研究をされているような「米国の実相に近い方」から評価頂けることは非常に光栄です。感謝いたします。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年04月22日

北朝鮮有事、日本の「勝利」はどこにあるのか

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photo by MATTA odai by マエリベリ・ハーン

米国が北朝鮮に攻撃することは、勝者なきゲームに過ぎない

米国が北朝鮮問題に本腰を入れ始めた背景には習近平と張徳江の中国国内の政争があるものと推測されるわけですが、米国が本気になる大前提は北朝鮮の核を積んだICBMが米本土に届く可能性が出てきたことにあります。

北朝鮮の核やミサイルは日本や韓国などをそもそもターゲットにして久しいわけであり、在日米軍・在韓米軍はあるものの、米国の国内政局的なリアルに影響を与えていたとは思えません。

筆者は現状では米国の北朝鮮攻撃の可能性は極めて薄いと思います。しかし、仮に米国が北朝鮮を攻撃したとしても米本土はほぼ何も傷つかず、主な戦場となるのは韓国・日本です。その際、北朝鮮はミサイルだけでなくインフラテロで確実に都市機能が崩壊しにかかることでしょう。

また、北朝鮮から発生した難民問題に苦慮するのは中国・ロシアということになるでしょう。そして、北朝鮮も体制崩壊は必然であり、金王朝も終わりということになります。

つまり、北朝鮮に対して米国が実際に攻撃するという事態は、米国以外の全ての国々の負けがその場で決定します。そして、実際には米軍にも被害は出ますし、東アジア経済が混乱することで米経済も打撃を受けるという勝者のいない戦争が行われるに過ぎません。

米国はICBMさえ放棄させればOKであり、なおかつ核放棄をさせれば上々ということになります。北朝鮮有事を実際に発生させることは避けたい、ということが関係各国の指導部ほぼ全員の意図が一致している本音ではないかと思われます。

北朝鮮問題の「勝利」はどこにあるのか、日本人はどこを目指すべきなのか

日本は自由と民主主義の価値観を米国と共有する国だと安倍首相は何度も海外に向けて表明していますが、東アジアの理想はどのような状況か、というビジョンは実際には無いように見受けます。

そのため、この緊迫する事態に対して殆ど政治的なメッセージらしいメッセージも出せず、米国の同盟国として危機に慄くばかりの対応となっています。

北朝鮮有事が発生することは上記の観点から日本にとっては負けであり、現状維持またはICBMを放棄させたとしても負けに近い引き分けしかないゲームに参加していることになります。

安全保障上の脅威にさらされている日本人、北朝鮮に拉致された拉致被害者の方々、北朝鮮国内で圧政に苦しむ北朝鮮国民、そして東アジアの自由は、金王朝に脅かされ続けます。

もちろん、核とミサイル、そしてテロへの対抗策を整備していくことで、日本への安全保障上の脅威を緩和できるので大いに進めるべきです。更に難しいとは思いますが、現在議論されている先制攻撃能力の獲得やサイバー能力の拡充も急ぐべきです。

しかし、北朝鮮問題とは日本の安全保障が問われているだけではなく、世界の中、そして日本の隣国に圧政を敷く独裁国が存在していることについて、日本人としてどのように考えるべきなのか、というビジョンが問われている問題だと思います。

現在発生している事態は、北朝鮮という独裁国をコントロールするために米中の接近が生まれており、米国が軍事的・経済的にも大国でありかつ事実上の独裁国家である中国の東アジアにおける影響力を容認する方向に動いています。

日本は、北朝鮮や中国の政治体制を認めるのか、それとも自由主義・民主主義がアジア地域に拡がることを良しとするのか、仮に後者だとするなら米国も含めた国際社会に自国のビジョンを提示するべきではないでしょうか。

トランプ政権は中国政府を動かしましたが、日本は中国政府を動かすこともできず、米国政府を動かすこともほとんどできません。それは軍事力の不足も当然ですが、日本に本当はビジョンがないからに他なりません。

北朝鮮に対して中国が生殺与奪権を持っているのは理解しますが、米中のやり取りを傍観して追認するだけの存在のままで良いのでしょうか。

実際に有事が起きたときの脅威への対処で「負け」の被害を少なくすることは大事ですが、日本の「勝利」とは何か、それに向けて何をするべきか、ということをもう少し議論・準備しても良いのではないかと思います。



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2017年04月18日

今、北朝鮮を巡って本当に起きていることは何か

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(北朝鮮利権を持つ江沢民派、序列3位・張徳江)

朝鮮半島情勢を巡る米中関係の多面的な考察が必要

北朝鮮のミサイル実験が失敗し、朝鮮半島情勢に関する過熱報道がやや沈静化しつつあります。

元々安全保障筋では北朝鮮を攻撃する際の戦力は最低でも空母三隻と目されており、ロナルド・レーガンは横須賀で整備中、ニミッツは太平洋の何処、カール・ビンソンが向かっているのみ(実際にはダラダラと航海中)という状況なので、4月中旬にトランプ側から仕掛ける可能性は極めて低いものと判断できました。米空母の場所は公開情報からある程度得られるため、一部報道は朝鮮半島近海に存在すらしていない空母による攻撃を散々煽り立てていたに過ぎなかったことになります。

在日米海軍司令部が「激おこ」の件について

今後、北朝鮮が核実験とミサイル再発射した上で米軍が十分に北朝鮮を攻撃できる体制が整備された場合はトランプ政権による攻撃の可能性がありますが、現状ではその見方もあまり有力ではないものと思われます。

北朝鮮情勢の緊迫は中国国内での政争の影響を受けたもの

北朝鮮情勢の緊迫は中国国内での政争を受けたものです。中国では秋の党大会に向けて権力集約に邁進する習近平派とそれに対立する江沢民派の政治闘争が苛烈化しています。

北朝鮮に関する利権は中国共産党序列第3位・張徳江が有しています。同氏は江沢民派に属する人物であり、既得権を守るために金正恩体制の事実上の擁護者となっています。

習近平は共産党内の高位のポストに江沢民派を残すことは避けたいため、反腐敗闘争の名目で次々と江沢民派から利権をはく奪して粛清を行っています。ただし、張徳江が掌握する北部軍区に関しては、現在まではむしろ焼け太りさせただけで手を付けることができていませんでした。

そのため、トランプが習近平に求める北朝鮮と中国の取引に関する規制の強化は、習近平にとっても政敵にダメージを当たる願ったりかなったりのものと言えます。トランプは北朝鮮への対応強化を習近平に求めることで、習近平の国内闘争を間接的に支援している状況となっています。

米国側が実施している北朝鮮に対する圧力をかける作業は、中国国内における政争で習近平を優位に立たせるものであり、習近平もそれが分かっているので米国からの無理難題を受け入れているものと推測されます。

一方、金正恩側は現在の緊張状態が高まる以前から、自らの中国側のパイプが政治的危機に瀕していることは理解しており、習近平側のカードとなる金正男暗殺などを含めて自らの地位を脅かす可能性がある要素を排除し、周辺国に対する存在感を示すデモンストレーションを継続しています。

北朝鮮に関する中国側の利権の切り替えがスムーズに進むのか
 
今後の北朝鮮情勢は、習近平と張徳江の闘争の軍配がどちらに上がるか、という点に注目する必要があります。

習近平が勝利した場合、習近平‐金正恩間に新しい利権関係が形成されるのか、それとも習近平が金正恩体制を自らの都合が良い体制に転換させるのか、その後の状況は流動的なものになるのではないかと想定されます。また、張徳江が勝利した場合、既存の金正恩と中国側の利権が温存される形となり、金正恩体制は温存される、現状の維持の状況がそのまま継続することが想定されます。

トランプは今のところ北朝鮮を巡るゲームについては、習近平側が勝つと見込んで勝負を張った状況となっています。

トランプ政権は北朝鮮情勢に対して様々なメッセ―ジを発していますが、それは上記の環境を前提とした上で判断していくことが重要です。米中間では様々なディールが行わていくことになるでしょうが、トランプ・習近平の関係は厳しい注文を付け合いながらも、実際には今後更に接近していくことが予想されます。

蚊帳の外に置かれた日本外交、根本的な外交戦略の見直しが必要

上記のような米中間でのディールが事実上行われている中で、日本は北朝鮮情勢に関して完全に受け身の状況となっています。北朝鮮が暴発する可能性はゼロではなく、その際に危機に瀕するのは日本と韓国であり、米中の大国間外交の後塵を黙って拝していることはリスクしかありません。

また、筆者が以前から指摘している通り、トランプ政権は東アジアについては中国を中心とした二重外交を仕掛ける可能性が高く、現実に、トランプ・習近平は急接近しながら、同盟国にはペンス副大統領が訪問してお茶を濁す対応が行われています。

トランプの対中国政策(1)「揺さぶり」と「妥協」
トランプの対中国政策(2)対中政策人事の二面性

たしかに、北朝鮮問題は安全保障上のリスクであり、日米が共同して対応することは当然のことです。しかし、日本にとっては北朝鮮のリスクは以前から顕在化していたものでしかありません。日本にとっての真のリスクは北朝鮮の事実上の後ろ盾になり、東アジアにおける軍事的脅威である中国の存在です。

トランプ政権は中国とのバランス関係を取る中で、日本、韓国、台湾などを変数として扱う傾向があります。このような受動的な状況から抜け出して、米国の日本へのコミットメントを厳格化していくために、米国内でのロビーイングを含めた根本的な戦略の見直しが必要です。そのためには、今東アジアで何が起きているのか、という認識を持つことは大前提となることでしょう。



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2017年04月16日

トランプの再選準備は既にスタートしている

トランプ

トランプは「再選」を狙って既に行動を始めている
 
筆者によく寄せられる質問として、「トランプは再選を狙っているのか?」というものがあります。

この問いについてトランプ本人ではないので回答が難しいのですが、トランプ自身は既に再選に向けたキャンペーン準備を開始していることは事実です。

連邦選挙委員会によると、トランプは、Donald J. Trump for President, Trump Victory, and Trump Make America Great Again Committeeという3つの組織を有しており、最初の四半期で13.2百万ドルの資金を調達して20人程度の職員を雇用しています。

DONALD J. TRUMP FOR PRESIDENT
TRUMP VICTORY
TRUMP MAKE AMERICA GREAT AGAIN COMMITTEE
 
主な支出先は選挙期間中からトランプのデジタル・マーケティングを担ってきた企業への支出であり、同企業の経営者であるブラッド・パースケルはペンス副大統領のスタッフであった共和党有力者のニック・エイヤーズとトランプ政権の政策実現に向けた新しいグループを作っています。

トランプの「再選」に向けた取り組みが功を奏するかは未知数

現職大統領が再選を目指すポーズを見せることは政治的な定石だと思います。再選を目指さない大統領は早期にレイムダック化してしまい、政治的な影響力を失ってしまうことでしょう。

トランプは元々支持率に応じて言動を変更する傾向を持っており、世論動向について常時把握するシステムを転がし続けることは極めてトランプらしい取り組みだと言えます。

ただし、現職大統領になった後も世論全体の動向は重要ではあるものの、ワシントンにおける議会とのやり取りなどはそれだけでは乗り越えられないものでしょう。その都度人気が取れる発言で自らのポジションを形成し続けるやり方は、政治的なログが明らかに取られてしまう大統領職の手法として正しいかどうかは未知数です。

オバマは無意味な文言を修辞的に重ねる天才であり、彼は退任まで自ら失政についてヌラヌラとうまく誤魔化し切ったものと言えます。トランプは逆に発言が明確な点に特徴があり、その都度発言の矛盾が決定的に目立ってしまう傾向があります。したがって、トランプの再選に向けた取り組みが功を奏すかどうかはいまだ不透明な状況です。

トランプ政権には再選に向けた取り組みよりも世界経済の先行きにも影響する選挙時の経済政策などの公約を粛々と実行してほしいものです。



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2017年04月15日

#FireKushner がトランプ支持者の間で流行っている

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(CNNから引用、オバマケア代替法案成立失敗時にスキーに出かけていたクシュナー一家)

共和党保守派によるトランプ・ファミリーへの逆襲開始

トランプの黒幕?何故、クシュナーは台頭しているのか

を投稿したら、Twitterのハッシュタグで #FireKushnerが増加していることに気が付きました。

米国民の保守派はホワイトハウスで何が起きているのかを理解しているようです。嫌々ながらも選挙で応援してきた保守派の人々を裏切って、主流派や民主党出身者を重用しようというのだから、保守派から逆襲されて当然と言えるでしょう。

保守派とトランプの間の蜜月関係にもヒビが入ることになるだろう

トランプも直径家族であるクシュナーを安易に退けることは難しいため、上記の対立関係が深刻化した場合、トランプ政権自体を事実上レイムダック化させるところまで行く可能性すらあります。

原則として「保守派は裏切り者を許さない」傾向があります。元々保守派の運動団体は納税者保護誓約書に署名しなかったトランプと彼の取り巻きのリベラル傾向を警戒しており、今回のクシュナーの台頭に象徴されるようなトランプのリベラル回帰をある程度予測していたと言えるでしょう。

実際、バノンの降格をきっかけとして反クシュナー(主流派・民主党出身者)のキャンペーンが貼られたことは、保守派の意見表明、ということになります。これらの草の根ネットワークによる反クシュナー運動が盛り上がると、共和党議会の保守派対策にも影響が出ることになります。

また、クシュナーは議会でロシアとの繋がりを糾弾されつつありますが、こちらも共和党保守派が庇わなくなった場合、かなりの窮地に立たされることが予想されます。

政治家事務所などの鉄則としてはNo2に家族をおいてはならないということ

これは日本でも言えることですが、事務所のNo2に家族をつけることは望ましくないこと、ということです。息子などを政治的な後継者する場合は例外ではあるものの、何らかの形で家族に批判が寄せられた場合、その批判は家族だけではなく政治家本人にまで及んでしまうからです。

トランプが家族を信用するというのは理解できますが、クシュナーやイヴァンカをホワイトハウスに招き入れたことは政治的な悪手だと言えます。No2を悪者にしてトップへの批判を回避するという伝統的な政治的やりくりの手法を採用することができないからです。

現状はまだ保守派の運動団体の一部に火が付き始めた段階であり、トランプは対処を誤らなければボヤで済ませることができるはずです。しかし、一度保守派を敵に回してしまうと大炎上することになって議会対策どころではなくなることになるでしょう。



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yuyawatase at 21:30|PermalinkComments(0)

トランプの黒幕?何故クシュナーは台頭しているのか

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ジャレド・クシュナー大統領上級顧問の力が強まってきているとされているが・・・

当ブログでは、トランプの黒幕と噂されていたスティーブ・バノンについて、

トランプの黒幕?スティーブ・バノンの微妙な立ち位置

の記事などで砂上の楼閣であり、その影響力の低下の可能性について触れてきました。当時は何も知らない日本の有識者らがバノンを黒幕として恥ずかしい動画などをネットに公開したり、陰謀論めいた論説を記事公開・出版などを行っていました。(ちなみに、筆者の著作である『トランプの黒幕』はバノンのことを指しているわけではありません。)

現在、バノンの影響力が相対的に低下しており、代わりにクシュナー上級顧問の影響力が強まっていることから「クシュナーこそが黒幕だ!」という妄言が再び出てくるようになっています。娘のイヴァンカがシリア攻撃を決断させた要因だったとか、本当にひどい言説がばかりで面白いものです。

きっと、もう少ししたらトランプの「頭」の中にクシュナーが乗って操縦しているような表紙のトンデモ本が出版されることになることでしょう。

クシュナーの影響力の源泉は、共和党主流派・ウォール街とのパイプ役として

トランプ政権のホワイトハウス及び主要閣僚は共和党保守派によってほぼ独占されている状況となっています。そのため、それらと対立する共和党主流派・ウォール街が政権にアクセスするルートは限られていることになります。

クシュナーはゲーリー・コーン国家経済会議議長とムニューチン財務長官とも親しい元民主党員です。コーンも民主党員であり、ムニューチンはリベラルの影響が強いハリウッドでも活躍していた投資家です。(二人ともGS出身であり、クシュナーと親しいことも要因の一つとなって政権入りしています。)したがって、共和党内部では保守派よりも民主党に近い主流派寄りの人物と言えます。

現在のトランプ政権では、このNY派の人々を通じた共和党主流派・ウォール街による政権へのハイジャックが起きようとしている状況です。つまり、トランプ政権を誕生させた保守派、そしてオルトライト的な傾向がある面々の立場が弱まり、選挙時にはトランプに敵対していたはずの主流派・ウォール街がホワイトハウスの新たな主になるべく蠢いている状況です。

クシュナーはトランプに近い立場にある非保守派の人間であることから、彼らの代理人としての影響力を強めている状況にあります。保守派の特攻隊員的な位置づけであるバノンの力が低下し、クシュナーの力が伸びていることはホワイトハウス内の保守派・主流派の両派の力関係の変化を示すバロメーターとなっています。

したがって、黒幕というよりも、バノンもクシュナ―も党内の勢力争いの状況を観測するための観測球のような役割を担っていると言えるでしょう。

トランプは元々保守派ではないリベラル・民主党員・ニューヨーカー

トランプ大統領は多くの人が勘違いしているように保守派の人ではありません。民主党系の人々やメディアが滅茶苦茶なバッシングを行っていますが、むしろ過去にはクリントンにも献金していたリベラル派の人物であり、ニューヨークでの大富豪でもあります。

彼は近年民主党での大統領選挙出馬の可能性が無くなったことから急速に共和党保守派に接近してきた人物であり、今回の大統領選挙では「敵の敵は味方」(ヒラリーの敵は味方)の論理で、保守派が仕方なく応援して誕生した大統領です。

トランプ自体は選挙時の選対本部長もコーク系のリバタリアン団体出身のコーリー・ルワンドウスキー、主流派のポール・マナフォート、保守派のケリーアン・コンウェイとその都度必要に応じて全く主義主張の異なる人々を採用する蝙蝠のような行動をしてきています。

そのため、ホワイトハウスの要職は最後に協力していた保守派が占めていましたが、トランプと保守派は潜在的な緊張関係にあり、クシュナーの存在、ましてイヴァンカのホワイトハウス入りは保守派はあまり快くは感じていないものと思われます。

実際、トランプは政権発足当初は保守派に配慮した運営を行ってきましたが、徐々に保守派色を弱める政策対応を行ってきています。その結果として、トランプ一族が持つリベラルなエリート傾向とワシントン政治の一掃を求める保守派との間で亀裂が生じつつあります。

大統領選挙で応援した人々を敵に回す大統領に未来はあるのか?

トランプはバノンの処遇を問われて「バノンは選挙の終盤で合流しただけだ」と発言しました。

それはケリーアン・コンウェイを含めた保守派の運動団体全般にも該当する発言であり、筆者はオバマケア代替法案先送りの際にトランプが「フリーダムコーカスは敵だ」と言い放った時よりも政局運営上深刻な発言だったと感じています。

トランプ政権はオバマケア代替法案の失敗の経験からワシントン政治に漬かったやり方に方針転換し、非常にきめ細やかな議会対応を行うようになってきています。これは政権運営上プラスではあるものの、トランプは政権を支える自らの屋台骨の入れ替え(保守派から主流派・民主党へ)に着手したように見えます。

はたして、トランプ政権の方針転換を保守派がどこまで容認するでしょうか。

保守派は最高裁判事の任命で同じ保守派のゴーサッチ氏が任命されるまでは、選挙で応援してきたはずのトランプによる保守派に対する無礼な発言に対して我慢してきたものと想定されます。しかし、ゴーサッチ氏の上院承認が行われた以上、今後はトランプ一族によるホワイトハウスの塗り替えを許容し続けることはないでしょう。

差し当たって、債務上限問題、税制改革、インフラ投資など、様々な議会案件について保守派による巻き返しが行われていくことになるものと想定されます。トランプは自らの唯一の政権基盤(≒保守派)をひっくり返す博打を打ちつつあるわけですが、それが功を奏す可能性は高くありません。

政権発足から約100日、対外的な緊張も高まる中で米国内の政局は更なる混沌に陥りつつあります。



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2017年04月13日

在日米海軍司令部が「激おこ」の件について

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(在日米海軍司令部FBより引用)

「トランプによる北朝鮮攻撃」を煽る過熱報道に在日米海軍司令部が激おこ

日本の過熱する「トランプによる北朝鮮攻撃」報道の煽りを受けて、在日米海軍司令部が激おこになりました。

今回はテレビ神奈川が米軍に何の確認もせずに横須賀基地が地域交流行事を中止してロナルド・レーガンが北朝鮮に向けた出航準備を急ピッチで進めているというデマを流したものを受けたものとになります。

 https://www.facebook.com/CNFJ.Japanese/posts/1835356033395179?pnref=story

<下記全文>
4月11日にテレビ神奈川で放送された、米海軍横須賀基地で4月19日に予定されていた日米地域交流行事が中止されたことに関するニュースに対する、在日米海軍司令部の見解をお伝えします。
なお、米海軍では通常、将来的な運用スケジュール等については言及しませんが、今回は影響が大きかったため、特別に予定についてお話させていただきました。
**********
【4月19日に米海軍横須賀基地で予定されていた日米交流行事の中止に関して、誤解を招く恐れのあるテレビ神奈川のニュース報道に対する在日米海軍司令部の見解】
2017年4月11日、テレビ神奈川は「日米交流事業が中止 北朝鮮への軍事圧力影響か」と題する米海軍横須賀基地で4月19日に予定されていた日米地域交流行事が中止されたことに関するニュース(http://www.tvk-yokohama.com/tvknews/news1.php)を報道しました。記事には憶測が含まれており、Yahooニュースでも報道内容が伝えられていること(https://headlines.yahoo.co.jp/hl…)から、テレビ神奈川の視聴者、Yahooニュースの読者、ひいては日本国民の皆様の誤解と不安を招き、誤った情報を与える恐れがあります。
4月19日に予定されていた、日米交流行事の中止は、テレビ神奈川が憶測で報道したような世界情勢とは全く関係なく、ひとえに予定されている副大統領の訪問に伴うものです。ホワイトハウス報道室が先日発表した通り(https://www.whitehouse.gov/…/vice-president-mike-pence-trav…)、次週、ペンス副大統領は、現在米海軍横須賀基地に係留されている空母ロナルド・レーガンを訪問する予定となっております。そのため、今回の日米交流行事はやむなく中止とさせていただきました。
テレビ神奈川はなぜ今回の地域交流行事中止の理由に関し、米海軍に問い合わせることすらせず、憶測でセンセーショナルに世界情勢と結び付け、無責任な報道をされたのでしょうか?米海軍に事実やコメントを求めることなく、テレビ神奈川がこのような憶測の報道をされたことは非常に残念です。今回の交流行事の中止は、副大統領の訪問に伴うものであり、無知な情報源による空想の理由ではありません。
今回は副大統領訪問というやむを得ない理由によって中止となりましたが、今後も米海軍は引き続き地元の皆様との地域交流行事を続けてまいります。
******

戦争を煽り立てるメディア、冷静な視点が必要な状態に

世界中が地政学リスクに対して敏感になっていることは理解できますが、日本のメディアの米軍の北朝鮮報道はあまりに苛烈になり過ぎており閉口するレベルとなっています。

イラク戦争時に米軍が動員した空母数は6隻であり、今回カール・ビンソンが向かってきたところで1隻に過ぎません。横須賀基地に停泊しているロナルド・レーガンは現在整備中であり、同空母の整備が終る目途は5月になるものと思われます。

安全保障の専門家筋では空母3隻が北朝鮮攻撃の最低ラインとされており、対北朝鮮の文脈で戦闘を開始するには現状では戦力不足の感が否めません。したがって、米軍による軍事行動の可能性はゼロではないものの、現在の状況は軍事力を使った強硬な威圧外交の段階とみなすべきでしょう。

おそらくWW2前の日本のメディアもこのような恐慌状態だったのではないかと思います。今はまだ中国も含めた外交による対北朝鮮対応の段階ですし、北朝鮮が核実験に踏み切ったとしても当面は外交対応による対処が続くものと想定されます。

むしろ、今回の件を通じて日米同盟とは何か、ということが問われている

むしろ、今回の北朝鮮への対応を見た場合、日本が完全に米中によってスポイルされている状態にあるということを深刻に捉えるべきだと思います。

在日米軍基地を多数抱える日本との話し合いはほとんど行われることもなく、北朝鮮問題は米中首脳間での話し合いによって対応が行われている状況です。両国ともに日本が眼中にないことは明らかです。

北朝鮮有事が発生した場合に甚大な被害を受ける可能性が高いのは日本と韓国ですが、それらの国々はこの地域の未来を決める重要な意思決定について何ら関与もできずに追認するだけの状況に追い込まれています。(韓国は政治混乱中なので当然ですが、日本は長期安定政権であるにも関わらずです)

日本人は首脳間でゴルフをやっただけで日米同盟は堅固な状況である、というような幻想は捨てて、米国の東アジア戦略を左右できるように米国内での影響力を持つことを目指して外交力を強化するべきです。

日米同盟は米軍の空母を整備する基地を貸与しているだけのものではなく、米国の東アジアの安全保障戦略に日本がコミットするためのものであり、日米外交に対する戦略の根本的な立て直しが必要です。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年04月11日

トランプが「シリアの子どもの写真」を見て爆撃したと本気で思っている人へ

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🄫AFP (ISISはイラクでほぼ敗北しシリアでも風前の灯に)

トランプ大統領が「シリアの子どもの写真」を見て本気で爆撃を決意したと思っているのか?

トランプが化学兵器を散布した軍が駐留しているとされる空軍基地をトマホークで爆撃した件について、人道的な措置として大義名分が必要であることは理解できます。そして、国連でも度重なる議論を行った上での措置(ロシアの拒否権で話が進まない)であり、米国はシリアのアサド政権に対する軍事介入のための正当性作りは過去から粛々と行ってきました。

そのため、今回のシリアの空軍基地爆撃に際して、「トランプ大統領が化学兵器で苦しめられるシリアの子どもの写真を見て爆撃を決意した」と人道上の理由を強調することは武力行使にあたって当然強調されるべきでしょう。オバマ政権が実施できなかったことをトランプがやって見せたことの意義も大きいものと思います。

しかし、国際政治学者やジャーナリストとされる人々が「上記の理由」を真に受けて「トランプ政権が孤立主義から介入主義に転じたor軍事政権化したor思い付きで攻撃した」と論評している姿は残念すぎるどころか滑稽ですらあります。この人たちはホワイトハウスのHPすら見たことないのか?と思う次第です。

トランプ大統領が1月に発表した2つの大統領についておさらいする

トランプ大統領は1月27日に「軍備増強に関する大統領覚書」、1月28日に「シリアとイラクのISISを掃討するための大統領覚書」の2つの大統領覚書を発表しています。これはイスラム圏7か国からの入国禁止の大統領令とバノンをNSCの常任メンバーに加えた大統領覚書の影に隠れて現在までほとんど報道されないままとなっています。

1月27日「軍備増強に関する大統領覚書」は米軍の即応体制を整えることに主眼を置いたものであり、そのための行政管理局とともに予算措置なども併せて講じることになっています。また、1月28日「シリアとイラクのISISを掃討するための大統領覚書」は、国防総省に関係各機関と連携してISISを打倒するためのコンティンジェンシープランを1か月以内に策定して提出するものでした。

マティス国防長官はこれらの大統領覚書にしたがってトランプ大統領に指示された報告しており、その後から小規模ではあるものの、シリアとイラクに対して地上軍の派兵が進みつつある状態となっています。

一方、トランプ大統領・ペンス副大統領・ティラーソン国務長官らは中東の関係諸国に安全地帯の設置やISIS掃討キャンペーンへの協力を求める外交努力を続けてきました。粛々とトランプ政権の中東への介入及び派兵の準備は進んでいたものと言えます。

シリアへの攻撃は「マティス&マクマスター」の軍人コンビが主導したもの

仮に報道の通り、マティス及びマクマスターの二名によってシリア空軍基地の爆撃を行ったとした場合、上記の経緯から「アサド政権に対する人道的介入」も計画プランに入っていたと想定することが極めて妥当だと思われます。

元々アサド政権の化学兵器使用は度々国連でも制裁の議題としてあがっており、中東地域のISIS掃討計画の要素の中に組み込まれていないとすることには無理があります。マティスとマクマスター主導の軍事展開が無計画に行われると考えるのは中学生以下の妄想です。(相手は米軍ですよ?(笑))

では、なぜトランプ政権はアサド政権に対して人道的介入に踏み切ったのでしょうか。それはISISが当初想定していたよりも早く壊滅しつつあることが要因として大きいと見るべきです。直近では、米軍が本格的に介入する前に、米軍の介入根拠であるはずのISISがアサド・反政府軍・クルドによって片づけられてしまい、米国抜きで和平に向けたプロセスが進む可能性が高まっていました。

ISIS掃討計画には戦後構想が含まれることは当然であり、上記の大統領覚書には国防総省だけでなく幅広い政府機関の協力が求められています。そして、ISISが壊滅しつつある現在、シリアの状況は既に戦後構想を巡る主導権争いに移っていると理解するべきでしょう。

アサド政権による化学兵器の使用は、上記の文脈の中で反体制派に対して「米軍は助けに来ない」ことを印象付けるためのアサド政権の示威行為であったと見ることが妥当であり、米軍はそれを拒否してシリア情勢に介入する意志を見せたことになります。

軍事介入をを正当化する理由として人道介入を強調することは当然ですが、米国が同地域の和平プロセスについてロシアや関係各国に米国の存在を見せつけることが理由でしょう。今後、更に主導権を取り戻すために米軍が何らかの関与を強めるのか、ロシア・アサド側が何らかの妥協を行うのか、交渉フェーズに改めて入ったと見るべきでしょう。

NSCの構成メンバーの変更が持つ意味合いについて

バノンなどのオルト・ライトとして位置づけられる勢力が中東地域への介入に否定的であったために外されて、軍人主導の中東への介入政策がとられる方向に舵が切られたと理解することは間違いです。

元々バノンも含めてトランプ政権は中東、ISIS絡みの事案への介入に関しては積極的であり、孤立主義でも無ければ非介入主義でもありません。むしろ、中東地域については地上軍の派兵も含めて積極的な介入を当初から謳っていました。

NSC常任メンバーからバノンが外れた理由は、バノンやセバスチャン・ゴルカなどが主張するグローバル・ジハード(つまり、テロ)への対応よりもシリア、ロシア、イランなどの敵性国家への対応に重点が置かれたからでしょう。バノンらは米国内でテロが発生した場合に再び台頭してくる可能性が高いものと思います。

今回のNSC人事の中で国家情報長官と統合参謀本部議長が復活するとともに、核管理を所管しているエネルギー省のリック・ペリー長官も加わることになりました。これはロシアとの核軍縮やイランとの核合意(エネルギー省も関与)についての交渉を進めていく上で必要な人事として捉えるべきでしょう。特に5月に行われるイラン大統領選挙は反米勢力が勝利する可能性があり注目に値します。

したがって、トランプ政権としての優先目標の変更はあったものの、基本的な対中東シフトの方向性は変わらず、むしろ元々政権の中に存在していたISISやイランに対する強硬姿勢が徐々に表面化しつつあるといったところです。

議会対策などの国内政局上の意味合いも考慮するべき

オバマケア代替法案(ライアンケア)に反対した保守強硬派はコーク兄弟からの支援を受けており、コーク兄弟はムスリムの入国禁止を巡ってトランプと激しく対立してきた経緯があります。

主流派を推す一部のメディアの報道によると、議会対策に失敗した理由はバノンの傲慢な対応にあったとするプロパガンダまがいの記事が公定力を持って垂れ流されており、議会対策をしたいならバノンを主要ポストから外せ、という反対勢力の意思表示は明確であったように思われます。

したがって、同入国禁止を主導してきたバノンをNSC常任メンバーから外すことは、国内政局上の観点からトランプのコーク兄弟に対する恭順の意を示すものとも言えそうです。

以上のようにアサド政権への介入やNSCメンバーの変更は孤立主義から介入主義へとか、軍国主義化したとか、何も考えていないとか、そのような論調が論外であることはお分かり頂けたことでしょう。

以上のように、トランプ政権の行動を陰謀まがいの「バノン黒幕説」「クシュナー黒幕説」で説明することはナンセンスです。国内外の情勢を時系列で並べながら分析を加えていくことが重要です。


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2017年04月08日

日経新聞・秋田浩之氏の「トランプ論」はデタラメ

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(国連安保理緊急会合でシリアで化学兵器の犠牲になった子どもの写真を掲げるニッキー・ヘイリー米国連大使)*ニューズウィークから写真引用

日経新聞のトランプ政権論評のデタラメぶりが際立つ

シリア攻撃、処方箋なき劇薬  コメンテーター 秋田浩之

という日経新聞の記事が掲載されました。この内容があまりにも事実誤認に基づくデタラメであるため、日経新聞のクオリティーペーパーとしての信頼性が揺らぐのではなかと驚きました。

しかし、秋田氏の名前を見て納得、以前にトランプが極右 !? 日経新聞へのエール(笑)でも書いたように、現地取材もろくにせずに伝聞と想像だけでトランプと共和党保守派をディスる文章を書いているのだから仕方がないかと思います。

話にならない事実無視、そして取材不足の論評

今回のシリア空軍基地へのトマホークによる攻撃について、同記事中では

<秋田>
こんな体制で強行された今回の攻撃は、長期の中東戦略を描き、満を持した末の行動のようにはみえない。

<事実>
⇒トランプ大統領は1月27日に軍備の即応体制を整備するように大統領覚書を発し、その翌日にはシリアとイラクのISISを一掃する大統領覚書にもサインしています。その結果としてマティス国防大臣から1か月後に中東における軍事計画がトランプ大統領に提出されており、イラクとシリアへの地上軍の派兵が小規模ながら進みつつあります。
⇒また、ダンフォード統合参謀本部議長とゲラシモフ参謀総長(ロシア)はアゼルバイジャンで事前に接触し、軍事機関同士のホットラインもできています。今回、米軍はロシア軍に対して事前に連絡していたのもこのためです。
⇒当然ですが、トマホークを積んだ艦船を思い付きで中東に配備しているわけでもなければ、何の計画もなくシリア空軍基地を攻撃することは有り得ません。

<秋田>
それでも、今回の行動は性急すぎると言わざるを得ない。正当な攻撃であることを証明するための事前の努力が、あまりにも足りないからだ。シリアが化学兵器を使ったのなら、国際法違反であり、人道的にも許されない。ならば、国連安全保障理事会に証拠を示し、少なくとも議論を交わすべきだった。

<事実>
⇒シリアでは2013年にアサド政権が化学兵器を使用しており、当時もオバマ大統領がレッドラインを越えたら軍事介入すると明言(しかし、ほぼ何もしなかった。)
⇒国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の調査で、シリア軍が2014年と2015年に3度、化学兵器を使用していることは明らかになっている。(BBC
⇒2011年のシリア内線勃発以来、国連における非難決議は7回。(ロシア・中国が拒否権発動)直近は今年の2月28日。
⇒ニッキー・ヘイリー国連大使は国連安保理でサリンで倒れた子どもの写真を掲げて演説し、米英仏は化学兵器使用を批判し、真相究明に向けた調査に関する決議案を提出。(少なくとも議論は行われている。アサドを守るロシアが聞く耳を持たないのは前提)

<秋田>
この攻撃はさまざまな副作用も生みそうだ。まず考えられるのが、中ロによる一層の接近だ。両国には根深い不信感が横たわるが、米国に対抗するため、静かに枢軸を強めるだろう。

<事実>
⇒中国報道官が「冷静さと抑制した対応を維持し、情勢をさらに緊張させないよう求める」と述べ、シリアで猛毒のサリンとみられる化学兵器が使用されたとみられる空爆については「厳しく非難する」と述べ、 真相解明に向けて国連機関による独立した調査が必要だとの考えを示した。(産経新聞
⇒ロシアは化学兵器は反体制派が保有していたものであり、空爆の際にそれが飛散したものとしているため、中ロの立場は異なるものとなっています。米中首脳会談に被せたこともあり、中国の反応は極めて抑制的です。(ロイター

<秋田>
こうした問題を精査し、トランプ氏に進言できる側近は少ない。ティラーソン国務長官や、最側近の娘婿であるクシュナー上級顧問はビジネス界出身だ。2人を知る元米高官は「実務や交渉力は優れているが、外交経験はない。危機への対応力は未知数」と語る。

<事実>
⇒本件はマティス国防長官とマクマスターNSC議長主導のものであり、両氏ともに中東政策を専門とする戦略家です。また、キャスリーン・マクファーランド副補佐官も中東に強く、NSCに復帰したCIA長官のマイク・ポンぺオも中東問題に熱心な下院議員でした。
⇒ティラーソンやクシュナーは中東政策について一定の影響力はあるものの、この問題を精査し、トランプに進言できる側近が2名しかいない、というのは、トランプ政権に対してあまりに無知。

・・・とまさに、事実誤認と取材不足のオンパレード。中学生の文章かと思いました。

日本経済新聞は「偉い人」が書いたからといって駄文を掲載するな

日本経済新聞は「自社の偉い人」が書いた文章だからといって無批判に記事を掲載することは慎むべきです。少なくともジャーナリズムを名乗るのであれば、最低限思い込みではなくファクトベースで語る習慣を身に付けてほしいと思います。

日本のメディアも「トランプ政権」が誕生したことを受け入れて、リベラルの狼狽という醜態をさらし続けることをそろそろ恥ずかしい事だと認識するべきです。

日経新聞内にも当然事実について気が付いている人も多数おり、駄文を掲載することを読者に申し訳ないと思っている記者・編集者もいるはずです。しかし、筆者は自社の偉い人にすら抗議できないジャーナリストがジャーナリズムを守れるとは思いません。是非ジャーナリストとしての矜持を取り戻してほしいと思います。



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