国内政治

2017年04月22日

北朝鮮有事、日本の「勝利」はどこにあるのか

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photo by MATTA odai by マエリベリ・ハーン

米国が北朝鮮に攻撃することは、勝者なきゲームに過ぎない

米国が北朝鮮問題に本腰を入れ始めた背景には習近平と張徳江の中国国内の政争があるものと推測されるわけですが、米国が本気になる大前提は北朝鮮の核を積んだICBMが米本土に届く可能性が出てきたことにあります。

北朝鮮の核やミサイルは日本や韓国などをそもそもターゲットにして久しいわけであり、在日米軍・在韓米軍はあるものの、米国の国内政局的なリアルに影響を与えていたとは思えません。

筆者は現状では米国の北朝鮮攻撃の可能性は極めて薄いと思います。しかし、仮に米国が北朝鮮を攻撃したとしても米本土はほぼ何も傷つかず、主な戦場となるのは韓国・日本です。その際、北朝鮮はミサイルだけでなくインフラテロで確実に都市機能が崩壊しにかかることでしょう。

また、北朝鮮から発生した難民問題に苦慮するのは中国・ロシアということになるでしょう。そして、北朝鮮も体制崩壊は必然であり、金王朝も終わりということになります。

つまり、北朝鮮に対して米国が実際に攻撃するという事態は、米国以外の全ての国々の負けがその場で決定します。そして、実際には米軍にも被害は出ますし、東アジア経済が混乱することで米経済も打撃を受けるという勝者のいない戦争が行われるに過ぎません。

米国はICBMさえ放棄させればOKであり、なおかつ核放棄をさせれば上々ということになります。北朝鮮有事を実際に発生させることは避けたい、ということが関係各国の指導部ほぼ全員の意図が一致している本音ではないかと思われます。

北朝鮮問題の「勝利」はどこにあるのか、日本人はどこを目指すべきなのか

日本は自由と民主主義の価値観を米国と共有する国だと安倍首相は何度も海外に向けて表明していますが、東アジアの理想はどのような状況か、というビジョンは実際には無いように見受けます。

そのため、この緊迫する事態に対して殆ど政治的なメッセージらしいメッセージも出せず、米国の同盟国として危機に慄くばかりの対応となっています。

北朝鮮有事が発生することは上記の観点から日本にとっては負けであり、現状維持またはICBMを放棄させたとしても負けに近い引き分けしかないゲームに参加していることになります。

安全保障上の脅威にさらされている日本人、北朝鮮に拉致された拉致被害者の方々、北朝鮮国内で圧政に苦しむ北朝鮮国民、そして東アジアの自由は、金王朝に脅かされ続けます。

もちろん、核とミサイル、そしてテロへの対抗策を整備していくことで、日本への安全保障上の脅威を緩和できるので大いに進めるべきです。更に難しいとは思いますが、現在議論されている先制攻撃能力の獲得やサイバー能力の拡充も急ぐべきです。

しかし、北朝鮮問題とは日本の安全保障が問われているだけではなく、世界の中、そして日本の隣国に圧政を敷く独裁国が存在していることについて、日本人としてどのように考えるべきなのか、というビジョンが問われている問題だと思います。

現在発生している事態は、北朝鮮という独裁国をコントロールするために米中の接近が生まれており、米国が軍事的・経済的にも大国でありかつ事実上の独裁国家である中国の東アジアにおける影響力を容認する方向に動いています。

日本は、北朝鮮や中国の政治体制を認めるのか、それとも自由主義・民主主義がアジア地域に拡がることを良しとするのか、仮に後者だとするなら米国も含めた国際社会に自国のビジョンを提示するべきではないでしょうか。

トランプ政権は中国政府を動かしましたが、日本は中国政府を動かすこともできず、米国政府を動かすこともほとんどできません。それは軍事力の不足も当然ですが、日本に本当はビジョンがないからに他なりません。

北朝鮮に対して中国が生殺与奪権を持っているのは理解しますが、米中のやり取りを傍観して追認するだけの存在のままで良いのでしょうか。

実際に有事が起きたときの脅威への対処で「負け」の被害を少なくすることは大事ですが、日本の「勝利」とは何か、それに向けて何をするべきか、ということをもう少し議論・準備しても良いのではないかと思います。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2017年04月05日

元かがやけTokyo都議は「都民ファースト」から離党すべき

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<TBSから引用>

連合東京と政策合意なら、元かがやけTokyo都議は「都民ファースト」から離党すべきだ

「7月都議選、都民ファーストの会と連合東京が政策合意」という報道がありました。

連合東京には当然ですが、 東京都の職員組合も所属しています。したがって、職員給与に関しては基本的に守るor増やす方向であることは間違いなく、事業の民間委託や民営化にも反対であることは明白です。

一方、元々小池百合子東京都知事を知事選挙で応援した「かがやけTokyo」の議員たちは、旧みんなの党のメンバーであり、職員給与の引き上げについては反対姿勢を取るとともに、都事業の民間委託などに前向きな姿勢を見せていたものと記憶しています。

彼らの元所属政党である「みんなの党」は2013年都議会議員選挙時に「東京アジェンダ」を発表し、その中で「公務員の総人件費20%カット」を謳っていましたので、このような政治姿勢の転換はほぼ180度真逆の方向に舵を切ったと言って過言ではありません。

したがって、仮に都民ファーストの代表が小池知事の野田特別秘書であったとしても、現在の都議会所属議員には連合東京との政策協定を結ぶことには責任があります。連合東京から支援を受けた都議候補者が自党から立候補することを黙認することは2013年の都議選挙の公約への事実上の裏切りでしょう。それとも、既に党名も内容も違う、または連合東京と一緒になっても公約は守れると嘯くつもりでしょうか?

元かがやけTokyoの都議会議員が「都民との公約」をまともに守るつもりがあるなら、「都民ファースト」から離党するか、連合東京との政策協定を撤回するように働きかけるべきです。

政治家なのか、政治屋なのか、それが問題だ

自分達が推薦した都知事が連合東京と組むからといって自らの政治スタンスを180度転換する議員は、政治家ではなく政治屋でしかありません。地方議会は小池知事の私塾である希望の塾の都議選候補者選抜試験にもあったように「二元代表制」であるため、小池知事の方針に従って自党が連合東京と組む必要はありません。現在の都民ファーストの都議会議員らはこの事態を容認したのでしょうか。

連合東京と政策協定を結ぶと言うならば、みんなの党⇒維新の党⇒民進党、と所属政党を変えてきた、旧みんなの党の都議会議員らと何も変わりません。自分達が受かりたいだけの都議会議員なら既に十分足りてますから、政策方針を転換するなら次の選挙に出馬するべきではありません。有権者にとっては改革派を僭称する勢力が存在することは紛らわしいだけで迷惑です。

明確に申し上げておきますが、ここで黙って都民ファーストに残って政策協定を追認するようであれば、それは「政治屋」です。元かがやけTokyoに所属していた都議会議員は、政治家なのか、政治屋なのか、それが問題なのです。現在の政治的な党派性をとるのか、前回の選挙で自分を都議会に送ってくれた有権者を信頼するのか、どちらを選ぶべきなのかが問われています。

ちなみに、筆者はかがやけTokyoの人々は都民ファーストを離党したほうが良いと考えています。なぜなら、筋が悪い公営市場移転問題に政局的に振り回されることなく、本来政策的に必要なことを有権者に訴えられるようになるからです。

元かがやけTokyoの都議会議員のTwitterアカウント

下記が元かがやけTokyoの都議会議員のTwitterアカウントです。おかしいと思う人はこちらに意見投稿を行って、彼らに都民ファーストからの離党または連合東京の政策協定の撤回を要望してください。これは彼らに期待した都民への明白な裏切りであり、彼らに政治家としての志があるなら筋を通させるべきです。

音喜多駿 https://twitter.com/otokita
上田令子 https://twitter.com/uedareiko
もろずみみのる https://twitter.com/morozumi_m

トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体
渡瀬裕哉
祥伝社
2017-04-01




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2017年03月26日

森友問題で安倍首相が辞任するべき唯一の理由

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籠池問題の本質は「反社会的組織の疑いがある」組織の名誉職に首相夫人が就いていたこと

籠池問題の本質は「自民党の国会議員が法人の代表者が銭を持ってきた」と主張している法人の名誉校長を務めていたということです。

メディアでは「国有地の払い下げに対して便宜を図ったかどうか」という点ばかりが強調されていますが、役所側が資料を破棄したと主張している以上、どちらにせよ事実関係を推論することしかできず、与党も野党もどうでも良い罵り合いを継続するだけのことです。まして、首相が籠池氏に100万円寄付したかどうかという真実でもどうでも良いことが議論されていることに辟易します。

本件で唯一明確になっていることは、

〇安倍昭恵・首相夫人が瑞穂の國記念小學院の名誉校長に就任していたということ
〇鴻池参議院議員が記者会見やメディア取材で籠池氏が金銭(らしきもの)を包んできたので突き返したと主張していること

です。賄賂の申し込みは相手が受領しなくても賄賂申込罪が成立するため、鴻池議員の発言は非常に重いものであり、国会議員に賄賂を申し込もうとした疑いがある法人の名誉校長に首相夫人がなっていたこと自体が問題なのです。

実際に便宜が図られたかどうかなど、鴻池議員の発言を前提とするならもはや問題ではありません。首相夫人が名誉校長の職を軽率に引き受けたことにより、安倍政権のガバナンス及びコンプライアンス、更に言うなら安全保障上の基本的な管理すらできていないことが明らかになりました。

上場企業の役員でも利益相反の恐れがある法人の役職者に親族がなることは望ましくない

上場企業及びグループ会社の役員に就任する際、通常の手続きとして、近親者が取引先、利益相反の恐れがある法人の役職者にいるかどうかをチェックすることは当然のことです。それらの親族がいる場合には利益相反行為を行わないことを誓約することになります。

本件については首相夫人という身分にある人物が「その場のノリ」で名誉校長という役職に就任するという信じがたい行動を行ったことが問題なのです。鴻池議員が告発したような行為を自党の所属議員に行っているような人物について相手の素性をまともに確認することもなく、首相夫人が名義貸しを行ったという危機意識の無さこそが信じられません。

また、首相夫人付きの公務員はその現場を目撃していたとしたら当然制止するべきでしょう。何のためにお付きの人がいるのか、を全く理解していない税金の無駄です。それらの公務員は首相夫人の日々の世話をすることだけが仕事ではなく、このような輩による夫人への篭絡行為を防止するために、国民は血税を払ってそれらの職員を配置しているのです。このような行為を黙殺した上に、ましてその相手の要望に応じて役所に問い合わせた結果を報告する間抜けぶりは常軌を逸しています。忖度云々のレベルではありません。

学校法人という許認可・補助金に関係がある法人の名誉職に、首相夫人という身分にあるものが「自らの一存」で民間の法人の名誉職に就任できる、そしてそれを知りながら黙認してきたことは、ガバナンス、コンプライアンス、安全保障の観点から論外です。

「首相夫人」を「公人」として位置づけ直し、非常識な行動を謝罪・反省することが必要

安倍首相は本件について国有地の払い下げについて強気の発言を行っています。

しかし、安倍首相が国民の代表である国会議員に対して最初に行うべきことは「逆切れ」ではなく、首相夫人の行動をコントロールできていなかった自らの不徳によって国会を空転させていることへの謝罪です。そして、自らの所属政党の国会議員が同法人の反社会性について告発している現状に鑑み、早急に調査をした上で報告すべきでしょう。

安倍首相はこの問題が単なる行儀が悪い学校法人ではなく、北朝鮮などの敵性国家の息がかかった組織だったらどうするつもりだったのでしょうか。昭恵夫人は過去に大麻使用容疑で逮捕された高樹沙耶氏と親交があり大麻解禁論者になっていましたが、それらの問題発覚後も夫人の行動を何ら改善しなかった危機管理能力の不足・無反省ぶりは深刻です。

首相夫人の扱いは安全保障上の重要事項であり、予算委員会で議論することは当たり前です。北朝鮮の恣意行動などへの対処と同様に早期の改善を行うことが必要です。

昭恵夫人がFBで私人として自らの意見表明を出したことには呆れ果てました。いまだ問題の本質が分かっていない証拠です。今すぐ首相夫人を「公人」として位置づけ直して管理すべきです。

仮に安倍首相が昭恵夫人の行動を改善する気がないなら即刻首相を辞任して頂きたいと思います。自民党には他にも優秀な議員が多数存在しており、常識を持った行動ができる夫人を持った方がおります。たった一人の人間を説得するだけで可能な安全保障上の深刻な問題すら改善できない首相は日本に必要ありません。






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2017年03月24日

東京都の政党は「地方交付税」問題を争点にすべき

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政治家にビジョン形成を求めること自体が時代錯誤ではないのか

宇佐美典也さんの「都議選は「空前絶後で超絶怒涛な公約」を待望してます」を読んで、やはり元官僚の方は言うことが違うなと思いました。

政治家はビジョナリーな空前絶後で超絶怒涛の公約を語ることよりも、現実の財布(=税金)の話をすることが本来の仕事であり、税支出の使途の妥当性を問うべきです。彼らは納税者の代表であって妄想を語ることは仕事ではありません。

政治家や官僚に社会のビジョン形成を求めること自体が時代錯誤であり、革新官僚的な発想で「政治にビジョンの提示を求める」という行為をやめていくべきでしょう。

東京に基盤を置く政党が地方交付税や地方バラマキ政策を問題にするのは当たり前

筆者も維新の会の「議員定数5分の1」は全く意味不明だと思いますが、都民ファーストの音喜多都議が地方交付税の在り方を問題にすることは東京都に基盤を置く政党の幹事長として至極当然のことだと思います。

年間7兆円以上も東京都内から流出している「みみっちい」税金の話を看過できるほど、東京都民は非現実な世界に生きているわけではありません。

宇佐美さんが主張する「東京の出生率を2.5まで引き上げる」とか、「75歳まで働ける社会」とか、「観光消費を倍増させて経済を成長させる」とか、「生活コストの引き下げ」などは東京都民の手に資金が残っていればある程度解決可能な問題です。このような政治家の対処療法的な個別のレトリックではなく、東京都からの税流出を防止することは問題の根治に繋がります。

東京に基盤を置きながら、都議会だけでなく国政に候補者を立てる準備を推進している「都民ファーストの会」の都議会幹事長が税金の話をすることは当たり前です。

まして、筆者も音喜多氏も東京出身者であり、それらの人々の声、そして地方から出てきて東京で子育てしている人々の声を代弁しても何ら不思議でもありません。

また、東京と地方の共存共栄とは、東京一人勝ち&地方へのバラまき、を前提とした関係ではなく、東京と地方が独立・協力・競争しながら一緒に栄えるものだと考えます。

必要とされるものは政治家の「口約束」ではなく、民間の力を信頼する「契約」だということ

筆者が都民ファースト会などに期待する都議会議員選挙の公約は、宇佐美さんが共感を示したような石原氏の「〇〇やります」的な公約ではなく、「〇〇やりません、東京都民の手にお金と権限を戻します」というものです。

豊洲新市場一つをとっても移転するか否か以前に、行政機関は意思決定までに時間がかかりすぎて、元々想定していた事業環境と大きく変化が生じてしまうことはザラだと思います。(豊洲市場は大赤字!金融の視点で見える事業面での大問題)小池知事が移転を早期に実行したところで、東京都庁が無能な投資家であることに違いはありません。

宇佐美さんと筆者は同年代ですが、東京都の政治家と都庁の役人に夢を見せてもらう必要はありませんし、むしろ政治家と役人は余計なことをせずに粛々と行革、減税、権限移譲・規制緩和を進めてほしいものと思います。

宇佐美さんが我々の世代を代表されるようなことをおっしゃっていたので本稿に引用してしまって申し訳ありませんが、意見が違う人もいるよということで大目に見てください。

政治家が考える「日本の中で東京がどのような役割を果たすべきか」を具体化した「空前絶後で超絶怒涛な公約」でげっそりさせられるよりも、日々をコツコツと生きている東京都民の生活が豊かになる政策をやってもらう方向性でお願いしたいものです。

これ以上東京都民の税金を政治家や役人のおもちゃに使う行為をやめること、次回の東京都議会議員選挙に一都民として唯一期待しております。起きながら見る夢とは民間人が努力する中で見るものであり、政治家ができることはそれを邪魔しないことです。
 





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2017年03月22日

百条委員会で感じた「豊洲」とは関係ない話

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豊洲の地下水汚染にはほとんど関心がない筆者が思うこと

豊洲新市場の地下水汚染と東京ガスとの土地売買契約を巡る経緯に関する石原氏と浜渦氏に対する百条委員会が終りました。かつての大物知事と辣腕副知事が登場してなかなか見応えがある質疑が成されたものと思います。

しかし、筆者は「豊洲新市場にさっさと移転したら良いんじゃないの」 派なので、百条委員会で石原氏らに環境基準が意味がなかったことを認めさせる一定の意義は認めつつも、質疑内容とは正直言って全然関係ないことが気になってしまいました。

2005年の百条委員会で偽証認定されて辞任した元副知事が天下りしている事実

浜渦氏は副知事時代に議会にやらせ質問を依頼したことを問われた2005年に行われた百条委員会で「偽証」を認定された方です。つまり、百条委員会での偽証なんぞナンボのもんよ、という胆力を持った方ということになります。

結局、浜渦氏は偽証認定されたことで都議会で問責決議を受けて副知事を辞職することになったのですが、まさかその直後に「東京都の第三セクター(東京都交通会館)に副社長になった」とは驚きました。

東京都における議決機関である都議会で「偽証」し「問責決議が可決された」人物に天下りを認める東京都とはどれだけ腐敗した組織なのか、と率直に思います。私自身は浜渦氏が辣腕な方だと耳にしたことはありましたが、副知事以後のポジションは知りませんでしたので、正直言って唖然としました。

石原慎太郎氏が百条委員会で問われるべきは「新銀行東京」の末路ではないのか

石原氏が百条委員会で問われるべき問題は新銀行東京の内実でしょう。新銀行東京は議員の口利きやヤクザものなどによって都民の税金が食い物にされたと噂されている事例です。その杜撰な経営について石原氏に対する住民訴訟も起きています。

筆者としては、本件は納税者の血税を政治家が浪費した最たる事例であったように感じています。豊洲新市場よりも政治責任を問われるべきものであり、その設立からの経緯を徹底的に見直されるべきものです。そして、二度と政府が金融という愚策に新たに手を出さないようにする戒めとすることが重要です。

石原慎太郎氏には百条委員会で今度は新銀行東京の顛末についてじっくりと語って頂きたいものだと思いました。

今回の豊洲に関して、今までの証言をそのまま信じるならば、都知事・副知事が与り知らぬところで、都民に不利益な契約内容を結んだことが明らかになったわけですが、そのようなガバナンス上の問題が発生しないようにすること、更に政治家の都合で新銀行東京のような大失敗が二度と発生しないようにすることをもう一度確認するべきです。

政治家は60歳程度を限度に定年したほうが良いということ

石原慎太郎氏が脳梗塞を患って体調不良のため、彼の百条委員会は1時間で終了しました。その上、非常に明瞭に記憶していること、記憶から無くなってしまったこと、が混在しており、高齢になっても自分に都合が良いことは覚えているものだなと人の記憶の在り方に感心させられました。

しかし、東京都知事のような重大な意思決定を為す要職についていた人が職責から退いて僅か数年で全ての記憶が無くなってしまうことは問題でしょう。日常的に忙しくて過去のことは忘れてしまうのも理解できますが、具体的な証言や資料が出てきたら思い出すことも多いのではないかと思います。

そこで、首長職などの重要な職責を担うポジションの人は比較的健康体である60歳くらいまでを上限に設定するべきなのだろうと思いました。高齢化社会以前は何歳の人でも要職に座っても良いということは道理がありましたが、現状のような長寿社会では少し非現実な気がします。

立候補に制限をかけるわけにはいきませんので、有権者は投票判断に際して「年齢」というものをもう少し気にしても良いのではないかと感じました。

石原都政に関する検証、その失敗を繰り返さないために

石原都政は長期に渡るものでしたが、久しぶりにその流れにない都知事が誕生したことで、石原都政の功罪について徹底的に検証を加えて反省材料にすることは重要なことのように思います。

石原氏には財政健全化などについては一定の功績はあったと思いますが、東京都の隠蔽体質・官僚体質、放漫な財政運営、政治家による口利きなど、注目が集まっているうちに全て掃除することが大事でしょう。

百条委員会を見ながら、一時代の終わり、そしてその反省の必要性を感じてしまったわけで、同委員会はそのための象徴的な意味はあったかなと思います。



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2017年02月04日

都議会の「真の改革派」を見分ける簡単な方法

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千代田区長選挙を通じて都議会議員が「改革派」だらけになった(笑)

アゴラでの千代田区長選挙に関する関係者の論争で、知事与党である都民ファーストの会も最大野党である自由民主党も、都と区のあり方について「我こそが改革派」であることを宣言する事態に至りました。非常に喜ばしいことです。

<都民ファーストの会>(*正確には伊藤区議は都民ファーストの会ではないと思うけども。)

なぜ区長選挙が「東京大改革を進めるか、止めるのか」を問う闘いなのか?都と基礎自治体の関係から考えてみる(音喜多駿・都議)
千代田区長選、与謝野氏当選ならドン勢い。特別区にも影響。(伊藤陽平・新宿区議)
内田茂氏は都民ファーストだと言い張る川松自民都議へ公開質問状(伊藤陽平・新宿区議)

*過去記事(音喜多都議)
舛添前知事がトーンダウンした児童相談所の特別区(23区)移管を実施し、社会的養護の充実を!
東京都の「区」と「市」の違い、言えますか? -大阪都構想、特別区の正体-

<自由民主党>

小池支持者も驚愕、千代田ファーストは内田茂都議の政策だった⁈(川松真一朗都議)
公開質問への回答+都議会改革は私がやる!(川松真一朗都議)

都区制度改革に対する「改革派」かどうかを測るための指標とは何か

政治家というものは選挙の時には演説などで嘘八百をつくものであり、まして他人の選挙なんてものには何の責任も取らないわけです。しかし、幸いなことに音喜多都議と川松都議はもうすぐ「東京都議会議員選挙」の審判を受けるわけであり、有権者から声を上げて求めれば「本物の改革派」かどうかを知ることができます。

そこで、筆者からは都区制度改革における改革派か否かを測る指標を提示したいと思います。東京都と特別区は普通の地方自治体同士の関係ではなく、歴史的な経緯によって東京都は基礎自治体が本来は持っている権限を特別区から取り上げている形となっています。

ただし、一般的には住民に近い地方自治体が住民サービスを行うほうが安価で質の高い公共サービスを提供できることは明らかです。しかし、残念なことに東京都と特別区は東京都からの事務移管について長年話し合ってきていますが、近年は両者のすれ違いによって事務移管はほとんど行われていません。

東京都議会議員選挙の前に音喜多・川松両都議は改革派として「都民ファーストの会」と「自由民主党」から「東京都から特別区の事務移管の項目の一覧表」を公約として提出していただきたいと思います。

東京都と特別区の事務方の会議が暗礁に乗り上げてお互いに責任を擦り付け合っている現状を踏まえた場合、都議会が政治的な主導権を持って都区制度改革に着手すべきです。

有権者はこの一覧表の個数及び実際に実行された事務移管数で「改革派か否か」を簡単に測ることができます。もちろん、事務移管の一覧表すら提出しない政党は「抵抗勢力」以外の何物でもありません。

都区制度の新たな区割りなどは事務移管の問題が進展していくことで自ずと解決することになります。まずは東京都が自ら権力を手放せば良いだけのことです。

真の「身を切る改革」とは権力を手放すことができるかどうかだ

最近では「身を切る改革」という言葉で「議員報酬を減らす」という政治的なパフォーマンスが実施されることが多い状況があります。この手の話は政治的な支持を高めるには良いのですが、本質的な意味ではほとんど意味がありません。

都議会議員が給料を減らしても権力の源泉である東京都の事務権限を手放さないなら、都議会議員は政治献金で幾らでも後から減額した議員報酬分の資金を回収できるでしょう。一時的な減俸などは権力を持つ人々にはどうでも良いことでしかありません。

真の「身を切る改革」とは目の前に転がっている権力を自ら手放すという決断ができるかどうか、です。東京都から様々な事務権限を特別区に移す、または廃止・民営化することができる都議会議員だけが改革派を名乗る資格があります。

与野党の双方の過去記事において、都民ファーストの会は幹事長が改革派だと名乗りを上げ、自民党都議は政党のドンである内田茂氏が改革派だと主張しました。

是非ともこれらの都議会議員には有権者に自らが改革派である「証拠」を見せてほしいものです。「東京都から特別区の事務移管の項目の一覧表」を出すことすらできない都議会議員など必要ありません。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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2017年02月01日

音喜多都議・都民ファーストの会幹事長の真価を問うポイント

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音喜多都議会議員の真価を問うポイントとは何か

千代田区長選挙を巡る姿勢について音喜多都議の政治姿勢、過去のブログ記事に関する矛盾点を指摘する記事が出ており、公職にある人がネットで情報発信し続けるということは色々な意味で大変だなと感じています。

議員の発言が検証されることは良いことだと思いつつも、今回の事例にビビって他の議員の情報発信が益々行われなくなることを危惧しています。

筆者は彼の情報公開に関する姿勢を非常に評価しており、議員の議場以外での過去の発言も多面的に検証される対象となってきたことは民主主義の進歩ですから、音喜多都議には今後とも積極的に情報発信を行い続けてほしいと考えています。

真価は「都民ファーストの会」の「党綱領」と「党則」で問われる

さて、今後の音喜多都議の真価を問うポイントは幹事長としての手腕にあると思います。

都民ファーストの会は、既に公認候補者が存在しており、千代田区長選挙でも現職を推薦しているにも関わらず、依然として党綱領も党則も発表されていません。そのため、現状では理念なき野合だと批判されても仕方がありません。

音喜多都議が幹事長として早急に実施すべきことは、政党として目指す姿を示す「党綱領」、そして政党の運営をルールである「党則」を創り上げることです。

(注記:報道によると、政治団体・都民ファーストの会は地域政党として活動するとのことで、所属議員は3人しかいないので、筆者は都民ファーストの会 都議団幹事長と地域政党の幹事長は同一のものという前提で書いています。この辺りから定義もしっかりしてほしい。)

音喜多都議はまだ1期目にも関わらず過去にルール不備だらけの政党のゴタゴタに巻き込まれてきており、ワンマン政党の脆弱さと健全な政党運営を行うための仕組みの重要性を認識しているものと推測します。

今後、様々なステークホルダーが党運営に関わることになると思いますが、その際に政党としてのルールが無ければ早晩同じように潰れることになるでしょう。したがって、都議選の前哨戦である千代田区長選挙は早々に片づけて幹事長としての最初の仕事に着手するべきです。

また、政党としての党綱領も基本政策も存在しないにも関わらず、希望の塾から公認候補者や政策立案スタッフを選ぶ姿勢は野合そのものなので控えるべきです。

形だけの幹事長になるのか、実質の伴った幹事長になるのか

政党にも様々な形がありますが、政党の番頭である幹事長は政党の公認権と予算の両方の決定権を持つことが重要です。

政党に所属している議員(自分より期数が多い)をコントロールするためには、都議選公認段階で党綱領や政党の公約への忠誠を所属候補者らに確約させる必要があります。

現在の不透明な公認プロセスを改めて透明性を高めるとともに、次回の都議選挙時には予備選挙を導入して当選議員の既得権化を防止するべきです。

特に選挙に勝つために政党を移籍してくる候補者らが大半でしょうから「公の場」での血判状にサインさせることが重要です。

さらに都議選後に所属議員の離反が相次ぐことが予想されるため、政党の予算や議事決定の在り方などで幹事長の主導権を握る形にすることも必要です。

議員は政党と有権者を平然と裏切るものであり、当選1期目の議員が手練手管の都議会議員らを相手に幹事長の重責を果たすなら所属議員の言動を縛る強いルールが必要です。

上記の内容を党則に実装できるかどうかで、音喜多都議が当選するための小池追従なのか、それとも自らが信じる政策を実行するための現実的な判断なのかも分かってきます。

既に当選1期目の陣笠議員の領域を超えているということ

音喜多都議が語った理想と現実の話は既に当選1期目の陣笠議員の枠を超えているものです。もちろん、政党の幹事長ですから陣笠議員ではないのは明白であり、彼の意志は政党運営の結果として都政に反映されていくことになります。

都民ファーストの会は入社数年目の社員をいきなりCOOのポストに据えたベンチャー企業みたいなものであり、社内体制もまともに構築されていない成長中の組織だと言えます。そのため、音喜多都議には最前線で千代田区長選挙の応援を実施しつつも、新政党の経営陣としてやるべきことをやることを望みます。

音喜多都議に対する評価は一都議会議員としての言動に対する評価も問われるべきですが、小池都政という有権者から一定の期待を持たれている政党の幹事長としての経営手腕で問われるべき段階となっています。

何度も政党が壊れていく姿を見続けてきた経験を活かし、上の世代の人々が私利私欲に惑わされてまともに運営することができなかった新党の運営という大事を成し遂げてほしいと思います。

<渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)の最新著作のご紹介>

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本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。
 

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2017年01月14日

まだ「イアン・ブレマーの世界の10大リスク」を信じてるの?

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まだ「イアン・ブレマーの世界の10大リスク」を信じてるの?

毎年年初になると、イアン・ブレマー率いるユーラシアグループから「世界の10大リスク」が発表されます。しかし、2016年に彼らが予測した世界の10大リスクは、彼らが抽象的な表現ではなく明確な結果を予言したもの、については悉く外れることになりました。

その最たる事例はリスク・もどきとして扱われた「ドナルド・トランプは共和党指名候補者になることはなく、万が一指名候補になってもヒラリー・クリントンには勝てない。」です。

結果は誰もが知っている通り真逆のものとなり、彼らが議会と裁判所を説得できないと主張した「イスラム教徒の入国禁止」「国境に壁を建設」「数兆ドルの税制改革」の3つのトランプの予備選挙での発言のうち、国境の壁と税制改革は共和党の政策綱領に取り入れられるに至っています。

また、10大リスクに掲げられた各項目は非常に抽象的であり、どれも当たっているとも外れているとも言えるような内容によって構成されています。そのため、2016年で明確に当たり外れが判断できることは「ドナルド・トランプ大統領誕生」のみです。

他にもBrexit、トルコ・クーデター、シリア情勢の悪化など、諸々様々なことがありましたが、2016年の世界的な出来事の中で、ドナルド・トランプ大統領誕生、よりもインパクトがあるとは到底思えません。

ドナルド・トランプに対する偏見に基づく2017年の世界10大リスクは信用できない


イアン・ブレマー氏のユーラシアグループは2017年1月3日に、2017年の世界の10大リスク、も発表しています。そのうち、3つまでがトランプ大統領および共和党勝利に関するもので占められています。つまり、これはイアン・ブレマー氏と同グループのトランプ氏に対する偏った見解が如実に現われていると言えるでしょう。

1. INDEPENDENT AMERICA、6. CENTRAL BANKS GET POLITICAL、7. THE WHITE HOUSE VS SILICON VALLEYなどです。つまり、トランプが孤立主義的になり、中央銀行に介入し、シリコンバレーと対立するというものです。

しかし、現実は全く異なる様相を示し始めています。トランプ氏が指名したティラーソン国務長官やマティス国防大臣はグローバルな課題に積極的に関与し、米国の意図を明確にすることを強調しています。

また、そもそもトランプのAmerican FIrstやMake America Great Again、というキャッチフレーズを孤立主義だと解釈しているのは、リベラル派の一部知識人のみであり、トランプ氏は再三に渡って、中国の安全保障上の問題や中東におけるISの問題などにロシアなどと強調した対応を行うことを明言してきました。

中央銀行への関与については、トランプ氏は当選以来全くFRBについて触れていません。米国の経済環境は回復基調にありましたが、昨今発表されている経済指標からは本年もその傾向が続くかどうかは分からず、トランプ氏が利上げを積極的に邪魔をしなくても積極的な利上げが行われるかは分からない状況です。

また、中央銀行の意思決定の不透明性は以前から共和党からも問題視されており、その意思決定の恣意性を排除するために中央銀行への監査の仕組みを整えることが主張されています。これをもって中央銀行への政治関与の強化ということができますが、むしろ中央銀行の裁量的な金融政策の政治性を排除するための改革であると看做すべきでしょう。

最後に、トランプとシリコンバレーの対立についてですが、トランプとシリコンバレーの住人との対立関係は大統領選挙期間中の話であり、今後は修復されていく可能性が高いものと思います。

トランプ氏の政権移行チームにおける約4000人と言われる政治任用ポストの差配を握ったのは、新駐日大使に指名されたウィリアム・ハガティ氏であり、彼はシリコンバレーでプライベートエクイティを経営していた投資家です。それ以外にも当初は対立していたシリコンバレーから政権への協力者が次々現れています。

また、IT企業の海外における留保利益を国内に還元する際の課税を著しく引き下げるなど、同業界に対する経済的なプロフィットをもたらすことも行われています。トランプ氏は海外に蓄積された留保利益が国内に還元し、投資や雇用が産み出されることによって大いに満足するものと思われます。

更に、イアン・ブレマー氏はTwitterで「Trump almost surely unaware of Taiwan-China sensitivities before taking President's call. They don't yet have Asia expertise on team.」と述べています。簡単に言うと、トランプのスタッフにはアジア政策の専門家がいないから細かいことが分からないのだ、と述べていましたが、祭英文とトランプを仲介した人物はヘリテージ財団のフェローで台湾問題の専門家のイエーツ氏です。イアン・ブレマーとは方向性が違うかもしれませんが、ヘリ―テージは有力なシンクタンクで同氏が専門家であることは間違いありません。

以上のように、イアン・ブレマー氏が選んだリスクのうち、トランプ政権に関するものは1月14日段階で既に的外れの状況になりつつあります。少なくとも米国政治に関する見通しについては同グループの見解は必ずしも信用できるものでは無さそうです。

ただし、世界中における地政学上の政治動向に影響を与える米国政治の動向に関する考察が正確ではないということは、世界中の政治現象に対する見通しが間違っている可能性を示唆していますが。。。

2017年の真の世界のリスクは、リベラルな知識人の現実社会からの遊離、だ

2017年の世界におけるリスクは、欧米のリベラルな知識層の世界認識と現実の世界状況の間に齟齬が生じ、その情報を摂取している先進諸国の人々の認識が歪められることです。

その最たる事例が2016年のドナルド・トランプ大統領誕生であり、その選挙戦を通じて欧米のメディアや知識人への信用が著しく低下することになりました。

本年においてもそれらの人々の現実から遊離した民衆に対する傲慢な態度は継続したままであり、既存の知的な権威の凋落は留まることを知らないでしょう。たとえ、彼らは民衆と同じ事象を目の前で見たとしても、古びた理想主義と大衆への侮蔑に満ちた空想の世界にいざなわれてしまうからです。

そして、欧米のリベラルな知的権威の衰退は、そのまま非西欧社会の思想的な指導者の力の増加に繋がります。たとえば、イスラム世界における宗教指導者の台頭などの背景に欧米の知的権威の衰退と合わせ鏡となっているのです。

現状のまま欧米の知的権威のポストにリベラル勢力による非現実な集団が留まり続ければ、世界の混乱は一層進むことになるでしょう。もはや古びたポリティカル・コレクトネスを後生大事に大切にするだけの人々は、世界の変化には実質的についていけなくなっているのです。

米国が置かれている環境はオバマ政権時代に極めて厳しい状況に後退しており、空想的な知識人ではなく、同国の真の主力であるビジネスマンと軍人などの実務者が投入される政権が誕生しています。

私たちも世界における環境の変化を直視し、新しい世界に順応する努力を行っていくべきです。


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2017年01月11日

新駐日大使・ウィリアム・F・ハガーティとは何者か


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(AP)

新しい米国大使・ウィリアム・F・ハガーティ氏とは何者なのか

オバマ政権のキャロライン・ケネディ駐日大使が皇室への離任の挨拶を終わらせました。

各国大使ポストは論功行賞などの情実任用のポストとして使用されることが多く、元大統領の縁故として名前に世界的な知名度はあるものの、トランプ氏から能力に見合っていない人事として批判されるなど、ケネディ駐日大使はお飾りの情実ポストの典型であったように思われます。

一方、 トランプ政権が新たに日本に派遣する新駐日大使・ウィリアム・F・ハガーティ氏は、ケネディ大使とは似ても似つかない本格的な実務派人材です。日本のメディアでは「知日派」という相変わらず無意味な紹介ばかりなので、今回は同氏の経歴・背景をもう少し詳しく掘り下げながら、トランプ政権の対日政策の方針を読み解きます。

トランプ政権で政治任用ポストを割り振るポストを担った人物

ハガーティ氏はトランプ政権の選対幹部として活躍した人物であり、トランプ政権の政権移行チームにおいて政治任用ポストを割り振るポジションについていました。米国では大統領が変わる度に約4000人の政府関係の役職者が交代することになり、その中でも重要な役職は政権移行チームが検討を重ねて任命することになります。

同氏は2012年大統領選挙ではロムニー氏を支えるスタッフとして役割を果たし、2016年大統領選挙における共和党予備選挙でブッシュ氏を当初はサポートしていました。しかし、ブッシュ氏の予備選挙撤退に伴い、途中からトランプ陣営に参加する形となっています。したがって、共和党関係者に関する幅広い人脈を持っているこ
とで、政権移行チームにおける人事担当という重要な役職に就任したものと思われます。

華やかなキャリアを誇る米国の最強のビジネスマンの一人

Hagerty Peterson & Company, LLC  というプライベート・エクイティバンクの創業者であり、同社はテネシー州のナッシュビルとシカゴにオフィスを構えています。テネシー州のサッカーチームを始めとし、保険会社、銀行、病院、ホテル、などのボードメンバーを務めており、マルチタスクをこなす非常に優れた人材です。

そして、同氏を語る上ではテネシー州との関係を外すことはできません。米国は超学歴社会であり、同氏は米国屈指の名門校であるヴァンダービルト大学で優秀な成績を修め、「Phi Beta Kappa」のメンバーとなっています。Phi Beta Kappaとは米国における成績優秀者の会のようなもので、真のエリートが所属することができる組織です。その後、同大学ロースクールに進学してLaw Reviewを作成するなどの圧倒的なパフォーマンスを発揮しました。

ハガーティ氏の最初のキャリアはボストン・コンサルティング・グループ(BCG)であり、世界5か国に渡ってヘルスケア、金融、消費者サービス、メディア、技術などの多岐に渡る分野のコンサルティングをこなしてきました。同社勤務時代の最後の3年間を日本で過ごしたことが知日派と言われる理由となっています。

その後パパ・ブッシュ政権時代にホワイトハウスのスタッフを務め、国際通商問題などを担当し、副大統領に対するレポーティングを行う仕事についています。ホワイトハウス勤務後はシリコンバレーとかかわりを持ち、プライベートエクイティを創業し、投資先のMapquest社(現在はAOL傘下)を上場させるなどの手腕を発揮しました。その後もハンズオンの投資を心がけ、数々の企業の経営に参画してイグジットまで繋げることに成功しています。

テネシー州への日本からの投資誘致に貢献した実績

2011年にはテネシー州の知事の下で経済開発庁コミッショナーとして、貿易、雇用、経済成長に関する問題に取り組むとともに、米国議会、財務省、商務省、通商代表部、中小企業局などに対する提言などを定期的に行ってきています。同氏の手腕が発揮されたことで人件費・予算が大幅にカットされるとともにアカウンタビリティーなども飛躍的に向上したとされています。

テネシー州での在任期間中、経済開発庁内に貿易に関する新たな部門を設立し、日本・米国東南部の代表団のトップとして活躍しました。この際、日産、カルソニックカンセイ、ブリジストンなどの同州への誘致に成功するなど、15bilionドル以上の投資と9万人の雇用を確保することに成功しました。テネシー州に進出している日本企業は180社以上に上り、同州への海外からの直接投資の約半分は日本によるものとなっています。

トランプ氏の政権移行チームには、米議会日本研究グループに所属するマーシャ・ブラックバーン・テネシー州下院議員も参加しており、ブラックバーン議員は来日時の感想として日産・テネシー州の未来について熱く議論を交わした旨を述べています。これらの人事から米国政府の対日交渉はテネシー州人脈がキーになっていくことが分かります。ちなみに、日産ではなくトヨタがトランプ氏のTwitterの標的になったのも、このあたりが関係しているのではないかと邪推してしまいますね。

メディアなどは前述のBCG時代の在日3年間で知日派としているピンボケ報道ばかりでしたが、実際にはハガーディ氏は対米投資誘致の関係で日本との関係はかなり太いことになります。

トランプ政権は日本にビジネス目的でやってくる

上記の経歴から、キャロライン・ケネディ駐日大使からウィリアム・F・ハガ―ティ氏新駐日大使に人事が交代する意味がお分かり頂けたかと思います。一言でいうと、日米関係は従来までの牧歌的な時代は終わり、これからはシビアなビジネスの時代になるということです。

米国国内で雇用を作るために様々な直接投資案件を提案してくることは当然であり、二国間通商条約なども大胆な形で進んでいくことになることが予測されます。

トランプ政権が保護主義であるという理解は誤解であり、教条主義的な自由貿易礼賛論ではない現実的な実務的交渉がメインになって進んでいくことになります。結果としては、両国の貿易・投資関係は一層進展していくことになることは想像に難くありません。

新しい大使を迎えてビジネス上の成果をお互いにどのように出していくのか、日本側もビジョンと行動力があるビジネスマンが外交交渉の窓口に立っていくことが望まれる時代になったと言えるでしょう。



モビリティー革命2030 自動車産業の破壊と創造
デロイト トーマツ コンサルティング
日経BP社
2016-10-06






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2017年01月06日

神社やお寺はベビーカーや車椅子を断っても良い

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神社やお寺は誰のものかという基本的な問題認識の欠落

初詣でベビーカー自粛を呼び掛けていたお寺が炎上した上に、お寺にはお寺なりの事情があったことが発覚した事案について、私たちはもう少し根本的な問題認識を深めるべきだと思います。

お寺は公益法人であるために、完全に私的な宗教施設とは言えないものの、基本的にはお寺の檀家さんのためにあるものだと理解するべきです。そのため、寺院が日常的に敷地の一部を一般公開していることは、多くの人に信仰に触れる機会を提供するためにあえて行っていることに過ぎません。

したがって、お寺が安全上の問題などでベビーカーや車椅子の自粛を呼び掛けたところで、それについて第三者が喧しく意見を言うことが自体が間違っており(どうしても発信したいならそれでも良いですが)、まして少子化問題と結びつけて行政府・立法府の見地から対応を求めることは論外だと言えます。

この問題はお寺がベビーカー自粛に至った経緯を知らなかった、というよりも、私的領域に対して行政府・立法府が無暗に介入するべきではないという大原則が守られなかったことに起因しています。(したがって、警察がベビーカー自粛をお寺に要請した云々を知らなかったという経緯はある意味どうでも良いのです。)

私的な存在に対して政治家や政府が行為を求めるときは法的根拠を持つべき

本件の事例を引き合いに考えると、他に幾らでもガラガラの神社やお寺は存在しているわけで、檀家でもないような人々のためにお寺が配慮する必要性は全くありません。神様は神社などにもいるわけで、そっちに行けば良いだけのことなのです。

初詣の時期に宗教施設という私的な空間がたまたま公開されているだけにも関わらず、政治家や政府が法的根拠もなく対応を求めることは間違っています。

お願い事または相談事という形式を取らず、政治家や政府が私的な存在に対して「どうして〇〇になっているんだ、改めろ」ということがそもそも政治的にも間違っているのです。

たまたま近くに住んでいたからとか、大きな神社やお寺だから、と正月にだけ初詣に行く人が特別な待遇を受けなくても当たり前です。むしろ、お寺側の方針によってそれらの対応の是非は決まるものであり、初詣ベビーカー自粛も何を優先すべきなのかを検討した上での配慮だと言えます。

お寺は初詣場所の提供者ではあるものの、仮に死亡事故などが発生した場合、宗教施設としての運営に支障が生じる可能性があり、住職の方が檀家さんにご迷惑をかけることになるリスクを避けることは当然です。

初歩的な確認事項として、5W1Hを確認し、誰がどのようなリスクを負担しているのかを認識すべきです。本件であれば、参拝者同士の事故などの発生について、他の参拝者と寺院がリスクを抱えています。

何でも社会問題と結びつけて政治家や政府の私的空間への介入を正当化すべきではない

ベビーカーや車椅子に優しいとか優しくないとか以前に、それが大事だと思うなら自分で神社やお寺の氏子や檀家になって対応を求めるべきだ、ということです。

たしかに、神社やお寺も初詣は重要なビジネス機会ではあります。しかし、初詣の対応の在り方にだけ文句がある人は、普段は神社やお寺を何とも思っていないのに正月だけクレーマーになる自分がおかしいと自覚するべきでしょう。

手厳しい物言いかと思いますが、今回の一件は少子化や障がい者差別などの社会問題と結びつけて、政治家や元政府関係者が己の全能感を満たそうとする性が表れたものに過ぎないと思います。

たとえ一見して理にかなっているように見えたとしても、私たちの社会の大前提である私的自治に対して政治家や政府が安易に口を挟む行為を認めるべきではなく、政治家や政府関係者はそれらの行為を厳に慎むべきです。

社会における他者からの寛容さとは、お互いの立場を理解した上で迷惑をかけない範囲で合理的に行動することであって、自らの権利を無理筋で通そうとすることではないのです。



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