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2016年11月29日

百田津田論争に見る「ヘイトスピーチ規制」慎重運用の必要性

百田尚樹

津田大介

百田・津田論争の問題の本質とは何か

筆者は百田氏の趣旨に賛同するものではありません。これはゴシップ的な推測みたいなものであり、同氏の発言に品が無いというだけの話だと思います。

ところが、この百田氏の発言に対してジャーナリストの津田氏が上記のような反応を示してTweetしたことで、本件は一気に炎上することになりました。

津田氏の主張はTwitterルール上の「特定の人種、性別、宗教などに対するヘイト行為: 人種、民族、出身地、信仰している宗教、性的指向、性別、性同一性、年齢、障碍、疾患を理由とした他者への暴力行為、直接的な攻撃、脅迫の助長を禁じます。また、以上のような属性を理由とした他者への攻撃を扇動することを主な目的として、アカウントを利用することも禁じます。」に抵触するというもの。

百田氏のTwitterがこのヘイト規制に当たるかどうかは議論があるところですが、本件では百田氏の発言を燃やすはずだった津田氏の発言もまとめて炎上するという事態が発生しています。それは何故でしょうか。

ヘイトスピーチ規制派が既に権力・体制側になっているということ

この問題の本質は「ヘイトスピーチ規制派が既に権力・体制側になっている」という自覚が足りないことによって起きています。

2016年6月に自民党すらも賛成する形で「「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が施行されてました。世論調査でも依然として賛否が分かれる・どこまで「不当」とするか議論が残る法律ではあるものの、民主主義における多数決(議決)によって立法府がヘイトスピーチを許さないという意志を示した形となっています。

しかし、この法案成立によって「ヘイトスピーチ規制派は従来までのように安易にヘイト認定する」ことは慎まなくてはならなくなったことを同時に意味しています。

なぜなら、既に彼らの側には政府がついていることになり、一個人が持つことが出来ない政府の非常に強力な力を陰に陽に利用できる環境が整えられたことになるからです。

そのため、従来までのように軽はずみに他者をヘイト認定することは、逆に権力の濫用行為として国民から厳しい目にさらされることになっていくでしょう。ヘイトスピーチ規制派は法律が成立したことで自らが責任ある批判される側に立ったことを踏まえて発言するべきです。

メディアやコメンテーターのエスタブリッシュメント化への危惧

筆者も少し前にテレ朝系の番組に一つ出演させて頂いたのですが、番組趣旨としてはトランプ氏のTwitter利用を欧州各国の極右政治家(&維新の橋下氏)の利用になぞらえて問題視するものでした。

筆者はメディア出演のペーペーなので適当に呼ばれた形ですが、上記のような偏ったものの見方に合わせなければ大手メディアに出続けられないとするなら非常に残念だと思っています。教条主義的な右寄りの考え方は持っていませんが、保守派とされる人々を無理やり貶める大手メディアの報道の在り方に個人的には引きました。

大手メディアは常に反体制を気取ってきましたが、もはや額面通りにその姿勢を受け止める人は少ないでしょう。

記者クラブや政府リークを通じた御用メディア化は言うに及ばず、コメンテーターのポリコレ化について権力・体制的な既得権(エスタブリッシュメント)だと受け止めている人も多いと思います。

報道・論調として何を流す・流さない、という第四の権力を持った人々への不信が強まるな中で、メディア関係者が政府または類似の規制機関の権力濫用につながる発想を公にすることへの忌避反応が出ることは当然です。

Twitterは一私企業であるため、実際のTwitterルールの適用は同社が判断すれば良いことですが、津田氏の発言の中に、多くの人が「権力の濫用の萌芽を見た」ことが炎上原因ではないかと思います。

権力・体制側は自らの力の行使に慎重であることが求められる

もちろん、津田さんも悪意があってやっているわけではないと思います。そして、百田氏の発言もゴシップ的な要素が強かったかもしれません。

しかし、今回の件では、多くの人にとっては「著名な一個人が何を言うか」ということよりも「メディアに頻繁に登場するジャーナリストが他者の発言について規制権力(Twitter社)に適用案件であることを指摘する」ことに脅威を感じたことは確かでしょう。

上記に指摘した通り、現在の世の中は自民党ですらヘイトスピーチを規制する法を通す世の中であり、言論的な大勢は既に決まっていると言えます。

百田氏の「在日外国人云々」という趣旨に賛同する人は少数であり、大半の人は「メディアの報道内容に対する不信」「ヘイト規制が濫用されることへの違和感」を示しただけのように思われます。

従来までのようにヘイトスピーチに関して敵対者を批判する行為だけでは体制・権力側に立った後は済まないということです。

昔の自民党が野党やメディアに何を言われても鷹揚に構えていたように、ヘイトスピーチ規制派も自らの発言や力の行使に慎重になるべきだと思います。

大半の国民は、主流ではない一個人の意見よりも、政府・メディアを背景とした権力の実質的な行使(及びその示唆)、のほうが自らの自由を制約することを知っています。

体制・権力側は安易に刀を抜かないからこそ権威が付加されるものです。ヘイトスピーチを規制する側も自分たちの置かれた立場の認識の見直しが必要になっていると思います。




本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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yuyawatase at 12:26│Comments(0)国内政治 | 社会問題

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