米国保守派の定例会議「水曜会」について説明する大統領選の「インテリンチ」の空気に飲まれていた人へ

2016年11月10日

なぜ、有識者は「トランプ当選」を外し続けてきたのか

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筆者が1年越しで予測してきたトランプ大統領が誕生しました

兼ねてから筆者が予想してきた通り、トランプ大統領が誕生することになりました。昨年末に始めたブログなのでトランプ大統領誕生でほぼ1年になります。(下記はトランプ関連から抜粋)

米国大統領選挙・選挙人予測「トランプ勝利のシナリオ」(2016年11月3日)
トランプ支持者は「白人ブルーカラー不満層」という大嘘(2016年11月1日)
トランプ大統領誕生の可能性を示す数字(2016年10月18日)
そろそろトランプ大統領誕生を真剣に考えたら?(2016年9月13日)
トランプをレイシストだと罵る人に不都合な真実(2016年5月19日)
数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)
「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由(2016年5月5日)
トランプを低評価するか否かは「情弱」のリトマス試験紙だ(2016年2月28日)
トランプVSルビオ、ニューハンプシャー州予備選挙は佳境に(2016年2月6日)
ドナルド・トランプ共和党予備選勝利宣言としての「健康診断書」(2015年12月15日)
なぜ反イスラム発言でトランプの支持率は落ちないか(2015年12月12日)
ドナルド・トランプの強さの秘密を徹底分析(2015年11月25日)
支持率の変化から見た共和党大統領選挙予備選挙(2015年11月6日)

ご覧の通り、予備選挙から大統領本選挙まで一貫してトランプ勝利を予測し続けてきた形になります。その際、共和党に内在する定性的な要因を加味して、世論調査の内容を淡々と分析してきました。そのため、トランプ大統領誕生は順当な結果で驚くに値しませんので、今更世間が何で騒いでいるのかサッパリ分かりません。

予測を外し続けてきた有識者らは「世論調査の精度」に責任転嫁を開始(笑)

さて、その一方で予備選挙の段階から「有識者」と呼ばれてきた人々は予測を外してトランプ氏を「トンデモ」「泡沫」扱いしてきました。早速ですが、ここでネタバレしてしまうと彼らが外してきた要因は下記の通りと推測します。

(1)共和党の予備選挙は「主流派の候補者が勝つ」って言っておけば大体当たってきた
(2)英字新聞が読める+米国の学者&政治関係に知り合いがいるだけで有識者として通用してきた
(3)世論調査の数字について正確な分析ができなかった

さて、(1)と(2)は専門家のバイアスというもので、従来通用したやり方が古臭くなって通用しなかった、という理解で良いと思います。一昔前までは海の向こうの話をネットで一次情報を取る人もあまりいなかったので、その程度のやり方でも十分に専門家として通用してきました。ただし、時代が変わったことで、それらの人々の慣習・ネットワーク・能力は時代遅れになりました。

そこで、それらの不足を補うために今回必要だった能力は「次々と発表される世論調査の数字を追って世論調査内容を吟味する」というものでした。しかし、日本の有識者らは数字を悉く無視した分析を継続するか、または表面的な数字のみを追って世論調査の回答者内訳などの深読みが全くできませんでした。

その結果として、「世論調査自体の精度が落ちている」「隠れトランプ支持者が拾えなかった」「今回は数字ではなく空気を読むのが大事だった」という見るも無残な言い訳を並べ始めています。

しかし、明確に述べさせていただきますが、このような言い訳を述べている人々に世論調査に基づく分析を語る資格はありません。なぜなら、これらは選挙のド素人以下の言い訳だからです。

世論調査の数字は「回答者の属性を分析して初めて意味を持つ」という常識

当たり前の話過ぎて閉口するのですが、単純に世論調査全体の数字で勝敗を予測できるわけではありません。今回の共和党予備選挙のようにトランプが圧倒的支持率1位を継続していれば、トランプ勝利の予測は簡単です。しかし、トランプVSヒラリーの予測は世論調査の数字をそのまま追っても予測は困難でしょう。

そこで、分析上の常識として「回答者の属性」を見ていくことになります。最も分かりやすい事例として下記の記事を改めて紹介したいと思います。

トランプ支持者は「白人ブルーカラー不満層」という大嘘(2016年11月1日)

この世論調査を見ればわかるように、トランプとヒラリー支持者の相対的な差を幾つかあげると、

・トランプは中高年者以上、ヒラリーは若年層
・トランプは中~高所得者、ヒラリーは低~中所得者
・トランプは高卒・大学中退者、ヒラリーは大卒者以上
・トランプは白人とヒスパニックの35%、ヒラリーは黒人・ヒスパニックから圧倒的な支持

であることが分かります。

さて、ここから導き出せる分析の結論は、トランプ支持者のほうが結果的に投票に行くだろう、ということです。

・若者よりも年配者は投票率が高いこと
・オバマと比べてヒラリーでは有色人種の投票率が下がること

は選挙を知っていれば分かることです。そして、

・共和党に親和性があるキューバ系ヒスパニックの動向がフロリダでは鍵になること(選挙直前にキューバ系ヒスパニックからの支持率に関してトランプがヒラリーを抜かしました)
・今回の両陣営の選挙キャンペーンによって白人労働者の投票率が上がること、

も明らかでした。意味がある情報を選別してデータ内容を細やかに精査すれば十分に導き出せる仮説です。

さらに、共和党・民主党の予備選挙時の参加者数を分析すると、

数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)

予備選挙時から共和党陣営は盛り上がっていましたが、民主党陣営は平常運転以下の状況だったことが分かります。本選挙にインパクトを与えるだけのトランプ支持者数が存在することは既に予備選挙時に確認済であり、予測を外した有識者が「隠れトランプ支持者」なる都合が良い存在をでっちあげるのは論外です。

したがって、大前提として接戦州ではトランプ及びヒラリーの支持率差は誤差の範囲に収まっていたことを確認した上で、上記の定性的な要因を加味していくことで支持者の実際の投票行動についてトランプ氏に有利に働くことは十分に予測することができます。

つまり、有識者とされた人々は「選挙のど素人以下」だから、世論調査や情勢分析から意味がある仮説が立てられなかっただけのことです。

筆者は日本国内で数え切れない選挙に関わり、米国共和党系の選挙プログラムを受講した経験から上記のことは比較的簡単に予測できました。選挙に馴れた人ならその程度の票読みができることは常識的なことです。

有識者の言い訳ってのは本当に見苦しいものだなと改めて実感した

一般の人々が分からないだろうと思って、有識者とされる人々は「世論調査の精度」に難癖をつけて弁明していますが、それは大きな間違いです。彼らは本来は「自分の分析力の無さ」を恥じるべきであり、速やかに謝罪をするべきでしょう。プロ(専門家)を自称しているのだから当たり前です。

有識者サークル内で皆がヒラリー優勢だと言っているから、メディアを使って反論できないトランプ支持者を安全圏からボロクソに叩いていただけのことなのです。これはBrexitの時にも同様に見られた現象(インテリンチ)と共通しています。

英国EU離脱は「インテリンチ(Intelynch)」が原因

特定の有権者層(たとえば白人労働者)をスケープゴートにしてディスるだけの無価値なイジメ的な言論はエリートのお仲間内だけでやってほしいものです。世の中にまで間違った分析をばらまかれると、国際情勢を勘違いした首相が最後に落選する大統領候補者に選挙前に訪問するような国益を損ねる事態が発生します。

日本の対米関係の有識者の選定は見直されていくべきであり、予備選挙・本選挙で両方とも外したような人たちがいまだにメディアでトランプ政権について解説していることに違和感を覚えています。

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本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。 

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yuyawatase at 00:28│Comments(0)米国政治 

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