2015年12月16日

ドナルド・トランプ共和党予備選勝利宣言としての「健康診断書」

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(写真はANNから引用)

ドナルド・トランプが「健康診断書」を提出した意味とは・・・

トランプ氏が自分自身の健康診断書を提出し、「歴代の大統領で最も健康的な大統領になる」というコメントを発表しました。これを受けてオバマ政権は「歴代大統領の全員を診断したのか!」と的外れなコメントで応酬したことが日本でも話題になりました。

前代未聞のドナルド・トランプの健康診断書(トランプ氏のHP)

Monmouth大学の調査で予備選挙の支持率40ポイントを超えた段階で、トランプ氏の健康診断書を提出したことには大統領本選挙における重要なメッセージが含まれています。そして、民主党側であるホワイトハウスが過剰な反応を示したことは、大統領候補者の健康問題が民主党にとってアキレス健であることを意味しています。

ヒラリー・クリントンとの戦いに重点をシフトしたドナルド・トランプ

以前の記事でも書きましたが、トランプ氏にとっては40ポイントを超えることは予備選挙における勝利の可能性が格段に高まったことを意味します。脱落していく他の予備選挙候補者から支持者を残り10%を回収していくことで50%を超える結果を出すというプロセスが見えてくるからです。(同時期のABCでも38ポイントということで高い数字が一回限りマグレではないことが伺えます。)

何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(12月11日、記事脱稿後にトランプ氏の支持率が上昇しました。)

そのため、トランプ氏は予備選挙における「勝利宣言」&「対ヒラリー」の意味を込めて、「健康診断書」を提出するという一手を打ってきたと言えるでしょう。

民主党の候補者として確定的だと思われているヒラリー・クリントンは在任中70歳を超える高齢になる点ではトランプ氏と一緒ですが、国務長官在任中に脱水症状から失神、脳振とうを起こして入院した上、現在も抗血液凝固剤を常用している状態です。

つまり、トランプ氏は予備選挙はほぼ終結したものとして、現状の各種世論調査でトランプVSヒラリーではヒラリー有利という数字を逆転するため、「ヒラリー・クリントンには健康不安があるが、自分は力強くて健康である」という民主党への宣戦布告を早々に行ったものと言えます。

トランプはアイオワ、ニューハンプシャー、サウスカロライナの初戦を制するか

トランプ氏は年明2月に党員集会が開催されるアイオワ州では現在の支持率でテッド・クルーズ氏と肉薄した状態にあります。しかし、アイオワ州は短期間の集中的な選挙キャンペーンによって比較的逆転することが可能な地域であり、トランプ氏が1月からアイオワ州に入って、積極的な草の根活動を行うことができれば支持率は回復することになるでしょう。(2012年大統領選挙のとき、保守派のサントラムは2週間で99郡を回る重点的なキャンペーンを貼り、大本命のロムニーにアイオワ州で勝利しました。)

トランプ氏はアイオワに続くニューハンプシャーやサウスカロライナでは高い支持率を維持しており、このまま共和党指導部がトランプ氏に対して無策のままであれば、トランプ氏が共和党の予備選挙を勝ち抜く可能性はかなりリアルな状況になってきました。

WSJが2012年大統領選挙時のミット・ロムニーの未公開株でのスキャンダルを引き合いに出し、トランプ氏の30年前の思い出話をネタにして「トランプ氏とマフィアの関係について調査しろ」という社説を掲載するほど、共和党シンパの中でもトランプ氏勝利への危機感は高まっています。

CNNの共和党予備選挙のディベートが決める今後の対戦構図

日本時間16日午前中今年最後のCNNの共和党予備選挙候補者のディベートが予定さており、共和党の予備選挙候補者が激しく火花を散らす予定です。

このディベートでは、トランプ氏とテッド・クルーズ氏の対決がどのようになるかが見所です。両者はアウトサイダーと保守派という共和党内部では反主流勢力の代表者ですが、現在支持率で1位と2位というトップ争いで鎬を削る状況となっています。

構図としては、トランプ氏は「テッド・クルーズ氏がハーバード出身でGSマネージングディレクターの奥さんを持ち石油会社から資金提供を受けているエスタブリッシュメントの操り人形だ」と批判することが予想されます。それに対して、今回のディベートのメインテーマとして設定されている安全保障の政策論争で、各候補者がトランプ氏の支持率をどのように切り崩すかが注目されるところです。

このディベートでテッド・クルーズ氏が落ちていくことになれば、誰がその受け皿になるのか、が問われることになり、トランプ氏と雌雄を決する共和党予備選挙の候補者が再浮上してくることになります。私はヒラリーに対して現在の世論調査で唯一勝っている候補者である、マルコ・ルビオ氏に穏健派・保守派の支持が集約していくのではないかと予測します。

現在の世論調査でヒラリーに勝てる数字を出しているマルコ・ルビオ氏(2016年大統領選挙世論調査)

もしくは、トランプ氏はもはや共和党予備選挙レースを終わったものとして、穏健派・保守派の連合した候補者と戦う道は避けたいでしょうが、トランプ氏の思惑通りにうまくことは運ぶでしょうか?

2016年大統領選挙はトランプの掌の上で踊ったまま?

 さて、上記の筋書きはトランプ陣営が描いているであろう戦略について簡単にまとめてみたものです。今のところ、トランプ氏に対する共和党の他候補者たちは完全にトランプ氏の掌の上で転がされている状況にあります。

トランプ氏は様々な問題発言(特に反ムスリム発言)で支持率が上昇してきていますが、それらを実行することは実務上非常に難易度が高く、その連続的な成功が一連のトランプ氏の行動が計算されたものであることを証明しています。最も難しい発言であったムスリム入国拒否が「テレビの突発的な発言」ではなく、ダメージコントロールしやすい「プレスリリース」で行われたことからもトランプ陣営の選挙戦の腕の良さが分かります。

ムスリム入国拒否プレスリリース(原本)

年明けから本格化する共和党の指名レースはまだまだ見応えが十分な状況です。共和党の他候補者たちもトランプ氏の戦略に乗せられていたことに気が付いているはずであり、ここから巻き返しが図れる策を練りこんでくるでしょう。まさに「これが民主主義だ!」という熱戦が繰り広げられる米国大統領選挙の面白さは知れば知るほど病みつきになります。

追記:CNN でもトランプ氏はうまく乗りきり、しかも驚くべきことに冗談交じりにテッド・クルーズ氏を副大統領候補として持ち上げました。トランプ氏の沈着な算盤には驚きます。明らかにトランプ氏はレースをクロージングしたがってますが、手強いライバルがそれを許してくれるのか。今後も面白くなりました。

当確師
真山 仁
中央公論新社
2015-12-18




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yuyawatase at 07:00│Comments(0)米国政治 

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