「インテリンチ」の衰退、そして国民が自らの声を取り戻すとき増田寛也氏が都知事になって改革できそうなことを考えた

2016年07月27日

「東京一極集中」から「東京の多極化・成長」に議論を変えるべき

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東京都の課題は「東京の一極集中」ではなく「東京の多極化・成長」である

今回の東京都知事選挙は「東京-地方の共存」を持論にする候補者が出てきたこともあり、東京都の成長の観点から周回遅れの議論が延々と繰り返されている印象を受けています。

筆者は「東京への一極集中は進むことは必然」であって、それを無理やり政策的に是正しようとすることは不可能であるばかりか都市成長の自然な流れを阻害する有害な試みでしかないように思っています。

1960~70年代に叫ばれた地方の都市開発は完全に失敗し、直近は地方創生の名の下に焼き直されたバラマキ政策は失敗の山を積み上げ続けています。むしろ、現在の私たちが受け入れるべきは「東京一極集中」を前提とした更なるビジョンであって、それは無駄に開発した地方のインフラを再稼働させることではありません。

奇しくも増田氏が自らの著作で語っているように、地方経済は民間経済、年金、公共事業で3分の1づつ成り立っているわけで、もはや地方経済は自分たちの力だけでは足腰が立たないほどに衰退しており、そこにテコ入れしたところでほとんど効果が無いものと思います。

現在の東京都・日本にとって必要なことは、東京都という国際的な競争力を持つ都市の潜在力を解放して圧倒的なプレゼンスを発揮できる体制を構築することです。都市の力の解放によって国民の中長期的な所得・生活環境を向上させる事が求められています。

そのためには、東京一極集中を所与のものとし、むしろ巨大化した東京の多極化を推進することで更なる成長エンジンを稼働させることが重要です。

東京都庁への権限集中を是正し、東京23区を複数の政令市に再編するべきである

現在、東京23区の都市開発権限は都区制度によって東京都庁に権限が集中しています。つまり、東京23区は独自の都市開発・産業政策の立案が制限されており、東京23区間の競争の優劣は各特別区の努力ではなく東京都庁の一存で決まる状況となっています。

本来であれば、東京23区は小規模な県程度の人口を単独で保持しており、都市計画も産業政策も自由に決定できるだけの人口規模を有しています。しかし、戦時体制の一環で構築された都区制度は特別区住民から自治権を奪い、東京都区部の動員体制を構築されたままの有様です。

いわゆる東京都議会の伏魔殿問題とは、都議会議員個人の素養の問題というよりも東京23区という金の卵の都市開発の差配権が一握りの部署の権限として集中していること自体に問題の本質があります。
 
東京23区の更なる成長を実現するためには、東京都庁の肥大化した権限を23区に分権することを通じて東京都内の都市間競争を活発化させていくことが重要です。東京圏に人口が集中する一極集中はもはや前提であって、今後の課題は東京の受け皿としての力・そのポテンシャルを最大化するための「東京の多極化・成長」が重要なのです。

そのため、東京23区を複数の政令市に再編して権限を移譲することを検討していくべきでしょう。各政令市が都市計画・産業政策で鎬を削ることによって、東京都民の所得・生活環境が向上していくことにつながるからです。

この方向性に進んでいくことによって多摩地域や神奈川・埼玉・千葉などの周辺都市の開発も進展し、ポジティブな都市間競争が進んでいくことが想定されます。東京-地方の問題は時代遅れの問題設定であり、今後は東京・関東圏への人口集中に対応した都市開発・都市間競争が社会的なテーマになるべきです。

5000万人規模の世界最大級の複数のメガシティ―が競合する地域へ変革を遂げる

既に関東圏には3500万人の人口が集中しており、日本の人口の約25%以上が集住している状況となっています。今後、地方の経済衰退・高齢化の進展を通じて、関東圏への人口集住の割合は一層加速度的に増加していくことになるでしょう。

都市化の進展に纏わる問題として良く指摘される震災の影響などは都市開発が進んでいる地域の方が被害が少なく、出生率の低さなども都市からの財政移転を縮小して子育て予算に振り向けていくことで解決していくことが本来の筋論です。

都市部の問題は都市からの財政移転による資金流出によって、都市化に伴う問題を解決するための予算を取り戻すことで克服していくことが可能であると思われます。日本国民が都市化によるメリットを最大限に得るためには、都市からの財政移転による都市・地方の中途半端な開発ではなく都市に徹底的な集中投資を選択するべきです。

そのため、筆者は関東圏に人口5000万人を集中させて圏内に誕生する人口300万人程度の都市群が経済・生活環境に関して積極的な善政競争を行う方向性を目指すべき、と考えています。

東京-地方の問題などは既に決着がついたテーマであり、ノスタルジアに駆られた政策議論を堂々と行う選挙は今回の東京都知事選挙でケジメとして終わらせるべきでしょう。

東京は世界を見据えた都市間競争に議論の舵を切るべきであり、「東京一極集中」を更に踏み込んだ「東京の多極化・成長」という段階の議論に進むことが望まれます。






本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。





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yuyawatase at 02:55│Comments(0)国内政治 | 社会問題

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