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2015年12月09日

「民泊解禁」はシェアリングエコノミーの息の根を止める

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10兆円:「新経済連盟」が発表したホームシェア(民泊)の経済効果

民泊解禁に当たって新経済連盟がシェアリングエコノミーの経済効果について推計値を発表しています。そのうちホームシェア(民泊)の経済効果は10兆円台と推計されています。

<新経済連盟のホームシェアの経済効果推計値>
①ゲストによる消費等 約3.8兆円
②ホストによる投資等 約1兆円
③インバウンド消費 約7.5兆円

<新経済連盟の政策提言はこちら>
シェアリングエコノミー活性化に必要な法的措置に係る具体的提案

100億円:民泊解禁とともに発表された関係者への買収コスト 

一部地域での民泊解禁とともに政府は100億円の民泊を支援する補助金を支出することを決定しました。

具体的には、社宅や空き家などを民泊に合わせてリフォームする際の費用補助や無料のWi-Fiをホテルや旅館に整備する費用を補助に使用するそうです。

遊休資産や稼働資産を使ってビジネスをやろうとしている有産層なのだから自分で設備投資するのが本来筋ですが、不動産屋や宿泊業者などの自民党支持層に民泊を認めさせるコストとしての100億円と捉えるべきでしょう。おまけに仲介業者を届け出制にするなど、新たな役所の仕事を増やすことまでセットになっていることもお約束です。

日本は欧米ではなくアジアの国なので改革には既得権に不当なメリットを与えつつも、それ以上の経済効果が生まれる改革を実現するという、中国型の行政改革の発想を持つほうが妥当だとも言えます。

7日間滞在という罠:既存の宿泊事業者への実質的な保護は維持、宿泊状況悪化の可能性も・・・

今回の民泊解禁は最低でも6泊7日の宿泊という条件が政府から課されています。

しかし、各種統計データによると、東京を訪れる外国人の大半は7日未満の滞在日数であり、実際に同じ施設に宿泊する割合は3割にも満たない状況です。実際、日本人であったとしても同じ宿に7日以上泊まることなどほとんどないのではないでしょうか。

つまり、既存の宿泊施設にはボリュームが大きい7日未満の旅行客をあてがい、新たに参入する民泊施設には7日以上の宿泊客という全体の残りカスのようなパイを割り当てる話が民泊解禁の実態です。

それとも、政府は宿泊日数7日以上の旅行者が民泊を優先的に利用する、そしてそれらが爆発的に増加する根拠を何か持っているのでしょうか。

今回の民泊が法定化されたことを受けて、グレーな形で運営されてきたホームシェアに法令遵守が強制されることで、同ビジネスは実質的に壊滅的な打撃を受けることになるでしょう。政府は自分たちの支持基盤に100億円を配りながら、既存の宿泊業者に競合する10兆円の新たな産業の芽を綺麗に摘んだといえます。

本当の解禁は「規制の廃止」、政府の解禁は「法律の適用拡大」はいつも通り

政府が○○解禁というときには、実態として従来まではグレーで行われてきた分野を正式に規制している場合があるということに気を付けるべきです。今回の民泊解禁は、公職選挙法のネット選挙解禁(実態は運用が不透明な公職選挙法のネット空間への規制適用拡大)のときの愚かな話にそっくりです。

今回の民泊解禁は名称こそ「解禁」という規制緩和のような形を取っていますが、実質的にはシェアリングエコノミーに打撃を与えるためのものであり、民泊解禁でも旅館業法の規制緩和でもないのです。むしろ、民泊が厳しい条件で法定化されたことを受けて、政府の規制との本当の闘いが始まったと言えます。

今後、民泊の主要な課題は7日間とされている「最低宿泊日数の短縮」がメインになってくるものと思います。それらを短縮することがシェアリングエコノミーを推進する人々のメインテーマとなるでしょう。

日本をアジア体質の国と認めて、赤裸々な規制と腐敗の議論を始めるべきだ

日本は政治・行政に関しては実態として後進国と大して変わりません。後進国で堂々と行われている腐敗行為を、法律や規制という形に表面上綺麗に整えて合法的なものにしているに過ぎません。

政府による規制と腐敗の構造を覆い隠すレトリックだけが進化しており、政治家を丸め込んで経済・生活に様々な統制を加えてレント(既得権)を得るという形が成り立っています。

日本は欧米ではなく「アジア」の腐敗体質の政府なので、政府による腐敗、規制、改革の果実に関する議論を中国のように堂々と行って議論するべきだと思います。

私自身は「自分が持っている物件を自由に使う」という当たり前の権利を守るために、そもそも旅館業法の規制自体を消滅させるべきだと考えます。

他の先進諸国に置いて行かれたまま、時代遅れのビジネスモデルとともに沈んでいくことを防止し、自由で力強い社会を構築していくことが望まれます。





 

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