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2016年04月22日

TPP交渉「聖域を守れ!」という亡国の国会審議で滅びる日本

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TPP国会審議、「聖域を守れ!」最低のやり取りに明け暮れる与野党の有様

TPP国会審議が始まっているわけですが、極めて不毛かつ絶望的な国会審議の有様に溜息しか出ません。TPPの聖域5品目とされる農産品について、野党が「聖域を何も守れていないではないか」と声を荒げているからです。

まず、現状認識の根本的な問題として、日本政府は聖域5品目に対して成功裡に交渉をしたと思います。しかし、その頑張りは日本の農業、納税者、そして未来にとっては、まさに亡国の頑張りでしかないことが問題です。

今回のTPP交渉における主要農産品の交渉結果について、一言で表現すると、「日本の農業は甘やかされた聖域を守ることで未来を失った」ということです。

野党はガタガタとくだらないことを述べていますが、実際に起きていることは「米などの高い関税を維持した代わりに、国家管理貿易で他国の米・麦を納税者負担で強制輸入する量が増加し、更には加工食品の関税引き下げで食品加工業の海外流出は加速していく」ということです。その結果として、産業としての農業の衰退に拍車がかかることになるでしょう。

現在の与党はTPPの農業自由化を骨抜きにして聖域を守る(農水省・農業関係者の既得権を守る)ことに成功しており、本来であればTPP交渉への参加を表明した民主党や一貫して賛成してきた第三極に所属していた国会議員らは怒りを表すべきです。

しかし、現実には彼らは「聖域が守れていない」の大合唱。これらの人々が我が国でそもそもTPPを推進しようとしていた人々であるかと思うと、自論の変節ぶりと政策論のレベルの低さに呆れるしかありません。そんなことを求めるなら野党など辞めてしまって、自民党と一緒に既得権保護にまい進すれば良いのです。

TPPには自由貿易・自由投資以外にも安全保障コスト削減のメリットがある

TPPは参加国に高度な自由貿易・自由投資へのコミットを要請するものであり、先進国である日本にとっては経済的なメリットが多い協定です。そのため、上記のような農業に関する本末転倒な議論を論外であるとともに、様々な分野の市場での経済的価値は極めて大きいものと思われます。

また、TPPは米国のアジア回帰戦略の主軸となる側面もあり、オバマ大統領が度々言及している通り、安全保障上の意味合いも重要なポイントとなってきます。つまり、TPP参加国によって自由市場の権益が共有されることで、同地域での安全保障上のコストを共有・削減していくことが可能になるからです。

特に日本の場合は同盟国・米国との間でアジア地域での共通の利益が強化されることを通じて、潜在的な競争相手である中国からの軍事的プレッシャーに対抗する意味合いが強くあります。

米国はそもそも東アジアや東南アジア地域への関心が強くありません。彼らの安全保障上の主要な関心事項の大半はロシアと中東問題です。そのため、むしろ東アジア・東南アジア地域では中国の軍事的な台頭に対して米国は及び腰であり、米国による関与を維持することが極めて難しい局面となっています。

トランプ氏やサンダース氏の台頭、日本・アジアへの関心の低さは彼ら特有の問題ではありません。彼らがTPPに否定的な理由の一つにはアジア地域への安保上のコミットを避けたいという意図があるはずです。

そのため、仮にTPPが米国または日本が抜けて非成立になった場合、TPPに加入した場合と比べて日本は中長期的には中国の安全保障上の脅威に対して米国抜きで対応するだけの防衛コストの負担が迫られることになるでしょう。また、東南アジア諸国の軍拡も継続していくことになり、日本にとって重要な地域の平和維持のためのコストが増加していくことが予想されます。

防衛費等の増加は日本国内における社会保障、教育、地方交付税などの他予算を削減することによって賄うしかないため、TPPに加入しないことは現在の政府による行政サービスの低下を間接的に招くことになるでしょう。そして、拡大する防衛予算は非採算部門である政府規模の拡大に繋がり、日本の経済成長は更に鈍化していくことになります。

巷ではTPPに入ると皆保険が崩壊するなどと議論にも値しない論が横行していますが、安全保障環境の中長期的な見通しに立てばTPPに入らないほうが政府予算内での資源の取り合いが浅ましいことになっていくことは容易に想定されるのです。

国会議員らはくだらない政争をやめて、さっさと大政翼賛会を結成したら良い

冒頭でも触れた通り、かつては自由主義を掲げた政党の所属国会議員らが現在では「聖域を守れ!」と主張している姿を見ると、日本の国会議員の節操のなさはここに極まれりだなとしみじみしてくるわけです。

私の20代・30代前半は小泉構造改革や第三極ブームとともにありましたが、当時と比べて現在の与党と野党の議論の質の低下は著しくもはや見る影もないということが言えるでしょう。

聖域を守ると述べながらも守っているのは既得権者だけで産業自体を衰退させていることにも気が付かない有様。そして、米国自体がアジアへのコミットメントに引き気味であるためにTPPにも既に及び腰になりつつあることを知らず、他国に交渉でやられた!というチャチな陰謀論を振りかざす有様。

国会審議のレベルの低さは真剣に成長・発展、そして平和・繁栄を求める他国の政治家から見た場合に絶句に値する状況です。

与党と野党の議論は双方ともに自分たちが何の議論をしているかも分からず、既得権集団のための「ためにする議論」をしているプロレスみたいなものです。与党も野党も求める結論が一緒ならさっさと大政翼賛会を結成すれば良いわけで、あえて違う政党のフリをしてくれなくても良いのです。

国会議員は今更民主主義をやっているフリをしなくても問題ありません。国民は皆さんが官僚・既得権の言いなりであることを十分に知っているのだから。それよりももっと分かりやすく自分たちがやっていることの説明責任を国民に果たしてほしいものです。自分たちが一般納税者の敵であることを明らかにすることはアカウンタビリティーを果たす上で重要な意思表明だと思います。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

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yuyawatase at 15:30│Comments(0)国内政治 | 社会問題

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