2015年11月25日
ドナルド・トランプの強さの秘密を徹底分析
米国共和党大統領候補者を選ぶ予備選挙でドナルド・トランプ氏の爆走状態が継続しています。日本の周回遅れの米国研究者らはドナルド・トランプ氏が高い支持率を確保し続けている現状をうまく説明できていないため、本ブログがアクティビストの観点から、ドナルド・トランプ氏の強さの秘密を解説します。
周回遅れの米国共和党に関する日本の分析能力について
米国共和党の主要な派閥は、穏健派と保守派に分かれているということが基本的な共和党研究の視座となります。穏健派とは米国民主党に近い政府支出の増加を容認する立場であり、保守派とは政府支出を断固として拒否する伝統的な立場ということになります。
戦後の米国共和党内の権力構造は、穏健派による保守派への圧倒的な優位という形で推移してきました。戦後の米国共和党と日本の関係値は共和党穏健派との間で積みあがってきたものと考えることが出来ます。
しかし、レーガン政権前後から米国内では保守派の台頭が起きてきます。特に1994年の連邦議会多数派を共和党が奪取した保守革命によって共和党内における保守派の勢力が力を見せつける結果となりました。その後は、大統領予備選挙や議会運営などで共和党内部における穏健派と保守派の主導権争いが続いています。
日本の米国研究は穏健派の見方から影響を受けており、保守派の政治的な論理や腕力についての理解が足りておらず、つい最近まで的外れなブッシュ圧勝の観測を垂れ流してきていました。彼らの教えを乞うている国会議員らもテンでピントがずれたことを述べていたものです。この程度の視座ではもはや現代の米国共和党の勢力構造を正しく分析することはできないでしょう。
現代の共和党は穏健派VS保守派VSアウトサイダーという三層構造という形に
元々保守派は穏健派を「ワシントン」(中央集権)として攻撃してきた経緯があり、自分たちを「反ワシントン」と位置付けて政治闘争のスタンスを形成してきました。
しかし、保守派が台頭した1994年保守革命から既に20年の月日が経過しており、共和党の中には保守派にすら満足できない層が出現してきています。それらの層を指す名称はまだありませんが、連邦議会・州知事・グラスルーツ関係者などの政権中枢の人間ではないアウトサイダーを支持する層が生まれています。
穏健派はメディア、保守派は組織化された草の根団体(グラスルーツ団体)、アウトサイダーはそれらに不信感を持つ人に各々強みがあるといえるでしょう。
そのため、最近では「ワシントンか反ワシントンか」という二元構造よりも大きな「政治のインナーか政治のアウトサイダーか」という構図が誕生しています。この保守派とアウトサイダーは主張が似ている部分があるため、上記の対立構造の見分けがつきにくい状況にあります。
ドナルド・トランプ氏を支持する層はアウトサイダーを支持する層であり、既存の共和党内部の政治的な対立構造とは質的に異なる層であると指摘できます。
アウトサイダーを支持する層に既存の穏健派・保守派からのメッセージは伝わりにくく、逆に既存の穏健派・保守派の候補者が撤退した場合にドナルド・トランプ氏に支持が流れるかは不透明な状況です。
「トランプ・カード」ドナルド・トランプ包囲網という明確な構図が出現することの意味
既に予備選挙から撤退したスコット・ウォーカー・ウィンスコンシン州知事(保守派)のリズ・マイアー女史(共和党元広報担当者)がドナルド・トランプ氏を予備選挙から落とすための運動「トランプ・カード」を組織することの必要性を提唱しており、米国保守派もドナルド・トランプ氏の保守派との質的な相違に気が付き始めたようです。
しかし、この取り組みが必ずしも功を奏するかはまだ疑問です。なぜなら、穏健派&保守派VSアウトサイダーという構図が出来上がってしまうことで、むしろアウトサイダーのトランプ支持を強固にする可能性があるからです。
アウトサイダーはそのような既存の政治キャンペーンの在り方への不信感を持っているため、トランプ支持の熱狂が強まることも否定できないでしょう。逆に、トランプ氏が「反ワシントン」のメッセージを出し続けることで、保守派が切り崩されていくことも十分に有り得る状況です。
日本の米国研究者に聞いても「トランプは馬鹿、保守派も馬鹿、米国共和党は大丈夫か?」というような感想ばかりが返ってくると思いますが、その理由は米国内部に出現している新たな政治構造を理解できていないからということになります。(総資産1兆円を築いた経営者が馬鹿なわけがありませんので、そのくらいの常識を持つべきだと思います。)
ドナルド・トランプ氏との対決を制する人物はマルコ・ルビオ氏なのか
現在、穏健派及び保守派の両方から一定の支持を集めつつある候補者はマルコ・ルビオ氏であり、本ブログではドナルド・トランプ氏とマルコ・ルビオ氏の対決に最終的に収斂していくのはないかと予測しています。(米国政治も一寸先にはどのようなスキャンダルが生じるか分からないため明確なことは言えませんが・・・)
以上のように、日本の米国研究で主流の穏健派視点の米国共和党の分析がいかに周回遅れであるか、そしてドナルド・トランプ氏の支持者の質的な相違について分析しました。今後、大統領選挙が近づく中で米国政治への興味関心が高まっていくことを祈念します。
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yuyawatase at 21:00│Comments(0)│米国政治
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