The Hope for 2018 by Pacific Alliance Institute自由民権運動を左派ポピュリズムから取り戻す

2018年01月06日

2018年、トランプのアメリカ・習近平の中国

トランプ習近平AP
(写真 AP)

2017年に米・トランプ大統領、中・習近平国家主席の二人の指導者が政権基盤を固めたことにより、米中関係は2018年から従来までとは全くパラダイムが異なる状況に突入することになります。

トランプ大統領は昨年末のアジア歴訪前にランドール・シュバイツァー氏をアジア太平洋を所掌する国防次官補に指名しました。同氏はアジアの安全保障政策を提言するプロジェクト2049の会長を務める反中強硬派として知られており、2017年1月には訪米した台湾の蔡英文総統とも会談を実施した人物です。「2049」とは中国共産党建国100年を意味する数字であり、アジア地域における中長期の対中封じ込め政策の象徴となるものです。また、同氏はこれに絡めてWW2で日本と実際に交戦した中国軍は共産党軍ではなく国民党軍であったことを指摘し、中国共産党の統治の正統性に疑問を呈してもいます。

2018年は安全保障面だけでなく経済面でも対中強硬政策が取られる可能性が高まっています。2018年米国中間選挙はラストベルトと呼ばれる米製造業州が上院改選州となっており、トランプ政権は政治的レトリックとしても対中国貿易に関して強硬姿勢をとる必要性を迫られています。中国側が米国の知的財産権保護に関する要望やサイバー攻撃に対する懸念に対してほぼゼロ回答であることは米政権の対中感情を著しく悪化させることに繋がっています。

年明け早々に米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」が中国共産党の機密文書を公開し、その中に北朝鮮に対する核実験の自制を求めつつも、積極的な支援策を講じた上で石油の禁輸措置も実質的に形骸化させることを約束していたことが暴露されました。これに対して、米国で対朝強硬派で知られるボルトン元国連大使が早速噛みついています。ボルトン氏は2017年の全米保守行動会議(CPAC)においても対外強硬政策を主張する演説を行うなど、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領時代からのタカ派ぶりは健在であり、共和党保守派の安全保障政策のイデオローグとして活躍しています。

トランプ大統領は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げて対中包囲政策を推進する安倍政権とも密接な関係を築いており、日本の用意した外交安全保障政策に乗っかったアジア太平洋戦略を展開する旨を2018年ベトナムで開かれたAPECで表明しました。さらに、12月末に発表された国家安全保障戦略ではロシアに加えて中国を修正主義勢力と名指しし、中国の拡張主義への懸念が表明されています。

以上のように、トランプ政権側は対中包囲網を形成するための準備を推進しており、東アジア地域の米中の緊張関係が高まることが予測されます。北朝鮮問題はその象徴的な事案に過ぎず、米中の鍔迫り合いは安全保障政策・経済政策の両面で激しさを増していくでしょう。

一方、中国・習近平国家主席側も共産党大会で反対勢力を一掃し、政治局常務委員7人中4人に習派を任命し、後継候補者に成り得る明確な候補者を選抜することもありませんでした。習近平国家主席による半ば独裁体制となったことで、中国の対外政策は従来よりも統一的な行動ができる可能性が増しています。

今回の人事では江沢民派の重鎮であり中国東北部や北朝鮮政策に支配権を及ぼしていた序列3位張徳江が退任することになりました。年末に中国を訪問した文在寅・韓国大統領は張氏に面談しており、同氏が北朝鮮に対して持つ強いパイプが健在であることがアピールされていますが、習近平国家主席の影響力が北朝鮮政策にまで拡大できるか注目に値します。習近平国家主席の子飼いである栗戦書が江沢民派から北朝鮮政策の主導権を奪い取ることができるか見物です。

2016年に軍区が戦区に見直された際、山東省が北部戦区に組み込まれたわけであるが、その理由は半島有事の際に沿岸部から北朝鮮に軍を展開するためのものと推量されています。中国は北部戦区に大規模な武装警察部隊だけでなく、陸軍航空隊と特殊部隊旅団を有しており、北朝鮮有事の際には米国に先駆けて北朝鮮の主要部を制圧することができるものと推測されます。

したがって、米軍が対北朝鮮の軍事行動を万が一にも実行する可能性がある場合、米軍主導の地域秩序の再編を懸念する中国が米軍に先駆けて対朝軍事行動に出る可能性もあります。そのためには、習近平国家主席の勢力が完全に朝鮮半島政策と北部戦区の主導権を掌握することが重要となります。

中国の新たな空母建造構想は南シナ海を含めた中国の海洋進出計画とリンクするのです。それは一路一帯構想という中国の影響圏を確立していくプロジェクトの一環でもあります。トランプ政権はインド太平洋における中国の拡張的な動きを抑える政治姿勢を見せはじめていますが、同方面の問題が米中間の本格的なコンフリクトを生み出すにはいましばらく時間を要するものと思われます。米国の戦略も時間をかけた対中封じ込めを志向する可能性が高く、当面の問題として北朝鮮問題が米中の象徴的な事案となっていくでしょう。

上記の通り、米国は東アジア政策全体、つまり対中政策全体の一部として北朝鮮問題を扱っており、その事案のみを独立して扱う考え方は薄いと捉えるべきです。そのため、トランプ大統領と習近平国家主席はお互いの国際的立場、そして国力の状況に鑑み、東アジア地域を舞台に激しい駆け引きを展開していくことになります。

この際、注意すべき点は、米中は激しく対立するものの、必ずしも何らかの妥協を行う余地がないものと考えることは間違いだということです。日本の盲目的な親米保守派は米中対立を諸手を上げて喜ぶと想定されますが、トランプ大統領はそれ以上に強かな戦略を持っていると理解すべきでしょう。

トランプ大統領が駐中国大使に任命したテリー・ブランスタッド大使は習近平国家主席と30年来の知己であり極めて太いパイプを持った人物です。また、共和党上院院内総務のミッチー・マッコーネル氏、そしてその妻のエレーン・チャオ運輸長官は北朝鮮と強いパイプを持った江沢民氏との間に家族ぐるみの友好関係を持っています。さらに、トランプ大統領の娘婿のクシュナーは親中派であり、その娘(トランプ大統領の孫)は漢詩を読み上げるなどで中国では大人気です。また、トランプ大統領のブレーンの一人であったスティーブ・バノン首席戦略官(トランプファミリーとは敵対的だが・・・)は王岐山元常務委員に接触するとともに、中国民主化グループとの関係も活発化させるなど複雑な行動を行っています。

対北朝鮮問題について米朝が急遽協調して対応する可能性も十二分に残されており、その場合に東アジア地域の地政学上のバランスを揺るがす地殻変動が起きることも想定されます。当然、北朝鮮側も米中接近があり得るという前提の下、水面下での交渉も含めてギリギリの対応を継続していくでしょう。2018年以後の東アジア地域は、従来までとは全く異なる異次元の外交安全保障環境に突入しており、既に隣国の韓国は外交崩壊の様相をきたしていますが、日本政府も韓国を他山の石として、自らの生存・繁栄を見据えた行動を選びとなっていくことが重要です。

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yuyawatase at 15:44│Comments(0)米国政治 

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