大人の教科書(7)教育原理主義に陥らないこと大人の教科書(8)資本主義は貧乏な人のためにある

2015年11月27日

「奨学金」を返済できる学生を作るための方法

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奨学金を返す・返さない、大学を無償化する・しない、などの議論が喧しい世の中ですが、問題の根本は全く別のところにあると思います。

大学生に働く力が教育されていないということ

そもそも奨学金が返せない理由は「大学生に働く力が教育されていないこと」にあります。奨学金を受けて大学を卒業した学生が十分な給与を得る仕事につけていないというわけです。

現代社会はかつての高度経済成長期ではなく最低限の基礎的な教育が出来ていない学生を採用するほど企業に余裕はありません。そのため、企業は採用抑制や派遣労働者を活用し、職業能力が無い学生を正規採用することを選択しようとしません。

ただし、厳しい競争に向き合っている企業に正社員を無理に雇わせるように労働法制を見直すことは、企業の雇用への意欲を失わせるとともに、企業の競争力自体を衰退させることに繋がって経済全体を痛めることになります。従って、奨学金の貸し倒れ=納税者負担の発生という問題を解決するために、私たちは現実的な回答を探す必要があります。

大学教育の無償化は問題を解決するのか

一つの方法として「大学教育の無償化」という方法が提案されています。欧州の大学教育の在り方を範にとって大学教育自体を無償化することを通じて、奨学金の貸し倒れ自体を消滅させるというソリューションです。

しかし、「大学教育の無償化」を実施しても「就業能力が無い学生」が量産されている現状については何も変わりません。結果として、奨学金が後々返済されないのか、授業料を最初から税負担しているのか、という話になります。両者ともに納税者負担の増加という意味では何も変わりはありません。

むしろ、奨学金の返済という就業に向けたインセンティブが無くなることで、大学時代において就業能力を身に付ける方向性が学生個人からも一層失われます。目の前の学費という問題を全て税負担で片付ければ良いという思考停止はは更なる問題を引き起こします。

民間企業や篤志家による奨学金制度の拡充が必要である

現在の税負担によって実施される教育制度・奨学金制度は「企業ニーズ」を捉えておらず、働く力を身に付ける教育を行っていないということが問題です。

そのため、根本的に大学教育のあり方を見直す必要があります。具体的には企業による奨学金制度を積極的に奨励することです。大学を卒業した学生は企業にとって必要な労働力を提供する人材になるため、そのための教育費用は企業が一部負担することは合理的です。

最新の経済動向・産業動向についても象牙の塔の中の大学よりも最前線で戦う企業は熟知しています。そもそも時代遅れの既存大学の教育を受けて就業できるという発想が間違っています。

そのため、大学における人材育成自体を企業に任せることを通じて、就業能力が高い企業ニーズにマッチした人材を育てるべきです。企業側も丁寧な人材育成を通じて多額の採用コストを抑えるメリットがあります。

国民にとっては就業能力が高い人材を生み出す改革を実現し、更に追加の税負担を避ける二重の効果が発生します。

目的を見失った「政府による奨学金」は一旦廃止を

税金に依存して制度設計の積み増しを行うことは、制度によって恩恵を得るステークホルダーの存在を曖昧にしてしまいます。奨学金は何のために存在しているのか、ということについて今一度問い直すべきです。

現状の制度を追認して何でも税負担を拡大すれば良いという議論を見直し、その制度による受益者が費用を負担するべきという当たり前の感性を取り戻していくことが重要です。






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