2018年01月
2018年01月23日
米国は一体いつ北朝鮮と戦争するのか?(笑)
米国と北朝鮮の戦争が日本国内で喧伝されて久しい状況となっています。しかし、ご案内の通り、実際には米国と北朝鮮の間の戦争は昨年中には発生しませんでしたし、年明けからは平昌五輪もあって両国の間は一時的に緊張が緩和しつつある状況となっています。
昨年から国内では北朝鮮との戦争を喧伝するほうが世間の耳目を引くため、多くの有識者とされる人々が北朝鮮有事を煽ってきました。「〇月開戦説」「クリスマス開戦」など、様々な開戦時期が宣伝されてきたものです。日本政府関係者も北朝鮮有事を煽ったほうが支持率向上に繋がるからなのか、それらと繋がりがある方々は関係者の話を真に受けて「〇月が怪しい、なぜなら・・・」という話をされることが多々あります。
筆者はヘッジファンドなどのアドバイザーを務めており、昨年中お客様から北朝鮮有事の可能性を質問される度に「全否定」してきました。たしかに、北朝鮮に対する緊張の度合いは高まっていますが、米国には開戦に至るまでのインセンティブは存在せず、東アジア地域で戦争を実行するだけの戦力が揃っていかなかったからです。
米軍の朝鮮半島周辺に常駐している空母数は横須賀港に寄港している1隻のみとなっています。イラク戦争当時に動員された空母数は6隻であり、イラクよりも軍事的リスクが高い北朝鮮との有事を想定した場合、米国は対イラク並みまたはそれ以上の戦力を投下する必要があります。したがって、最低でも3~4隻の空母は必要であり、または病院船も含めた戦闘態勢の準備が欠かせません。しかし、昨年はトランプの東アジア歴訪時以外にそれだけの戦力が十分な形で揃うことはありませんでした。
また、米国内では大枠としての北朝鮮への軍事行動への支持は高まりつつあるものの、米軍単独での軍事行使への支持は必ずしも高くありません。したがって、米国が実際に軍事行使を行う前提として周辺国との協力関係を構築することが重要となります。しかし、韓国の文大統領は親北朝鮮姿勢を鮮明としており、そして戦争の一歩手前の措置となる海上封鎖による臨検についても日本は現行の安保法制では協力できません。まして、中ロについては米国の意図通りの行動を行う可能性は極めて低いものと思われます。米国は徐々に歩を進めつつありますが、軍事行使には超えなくてならないハードルがまだまだ残っています。
米軍の戦力投射能力に話を戻すと、米国が軍事的正面を構えることができる地域は、現行ではおそらく世界で一地域のみであり、その上で東アジアよりも中東や南米のほうが米国にとっては緊急度が高い地域となっています。特に一旦は判断が見送られた形となっていますが、イランとの核合意の見直しが5月以降に本格化した場合、彼らの外交・安全保障上の関心は中東地域に集中し、東アジア地域は後手に回ることは明らかです。したがって、平昌五輪明けの外交・安全保障上の焦点が北朝鮮に集中するかどうかも現段階では断言できません。
米国の外交・安全保障戦略は世界戦略であるため、日本人のように日米関係、米朝関係、米中関係のように二か国間関係でモノを考えることはほぼありません。全世界を相手にしている米国は、地球全体での各地域のバランスを見ながら、その地域内での勢力バランスに配慮し、その上で各国での対応を決めるという思考プロセスに基づいて対応を決定します。
したがって、米朝関係は、中東・南米・東欧・その他の地域も含めた全体戦略の一部に過ぎず、米国の対北朝鮮に関する発言や日本政府に対する発言のみを切り取って物事を理解する従来の日本人の感覚では彼らの思考枠組みについて行くことは困難です。米朝関係は世界全体の外交・安全保障の全体感に基づいて決定されるものであり、独立した変数として決定されるものではないのです。
少なくとも昨年「〇月が危ない」という話をしていた方々は「米国の思考枠組みについていけていないか」、または「北朝鮮有事を商売にしている」に過ぎず、現実にシビアな判断が求められるヘッジファンドなどのアドバイザーとしては通用しないレベルであることは明らかでしょう。
2018年01月22日
政治家の「家業化」を禁止するTerm Limits(任期制限)
(Term Limitsに署名した候補者署名)
最近の首長選挙では多選自粛条例や多選否定の公約を掲げながら平然とそれらを破って出馬する事例が存在しています。米国において多選は腐敗の温床と考えられており、多選を重ねる首長・議員を落選させるべく「Term Limits」(任期制限)をさせる活動が広く普及しています。
どのような人間であったとしても「権力は必ず腐敗する」という原則から逃れることは困難です。人間の通常の心理として長期政権の長に対しては、誰もが首を垂れるのは必然的なことと言えるでしょう。そして、権力者の指示に意見する人がいなくなるだけでなく、様々な忖度が自然と行われていくことになります。その結果として、政府が肥大化していくことになり、人々の監視が行き届く小さな政府から腐敗と隠ぺいが伴う大きな政府に変質していくのです。したがって、多選は民主主義を国民の手から手放す結果を実質的に生み出すことに繋がります。
日本の多くの多選自粛違反の「言うだけ番長」を生み出してしまう理由は、「首長や議員が自ら多選自粛を宣言するだけ」であり、「有権者が自ら候補者に対して課した約束」ではないからです。
米国には「The Term Limits(任期制限運動)」というものが普及しており、国民による政治家の多選自粛を求める運動が展開されています。地元に利益誘導を行って自らの富を蓄積する「政治屋」を排除するため、予め任期制限を自ら約束する候補者を応援するための署名運動です。政治家の任期を、下院3期(6年)、上院2期(12年)を基準とし、それ以上を多選と看做すという内容です。そして、州レベルでも同様の活動が実行されています。
議員たちは自らの選挙区に多選禁止を求める有権者がどの程度存在しているのかを知ることができるため、自らの政治行動に関する強烈なプレッシャーを感じることになります。そのため、自らTerm Limitsの趣旨に賛同して署名を公表する、更には任期制限を憲法に盛り込むために議員連盟を発足させる人々も存在しています。普通は苦労して権力を得た議員がこのような活動に積極的に賛同することはないため、主に利益誘導政治に反対する共和党保守派の小さな政府を求める議員が中心となって活動しています。
国会議員の家業化は日本では常態化していますが、それ以上に地方の首長・議会の多選状況は深刻なものとなっています。国会でも地方議会でも期数を重ねた人々、または親から地盤を引き継いだ人々が権力確立または容易に権力を手にしています。もしかしたら、当該選挙区の多選候補者の割合は政治腐敗の指数として見ることも妥当かもしれません。来年は統一地方選挙ですが、日本でも有権者が自ら政治を変えるための運動が起きてくることに期待します。
2018年01月21日
トランプ大統領・エルサレム首都認定の3つの実態
第一に、米国内においては連邦議会議員がトランプ大統領の決定を歓迎しています。元々エルサレム首都認定と米国大使館の移転はクリントン大統領時代に1995年に連邦議会が通過させた法案を根拠としています。そして、それ以降クリントン・ブッシュ・オバマの3代の大統領は同法案の半年間の執行を延期する権限を使って決定を先送りしてきました。トランプ大統領も2017年6月に一度見送りを決定しています。しかし、その際、連邦議会上院で<a href="https://www.congress.gov/bill/115th-congress/senate-resolution/176?q=%7B%22search%22%3A%5B%22senate+resolution+jerusalem+50%22%5D%7D&r=2">、A resolution commemorating the 50th anniversary of the reunification of Jerusalem</a>という決議がなされており、共和党・民主党も含めた全会一致(90対0)で、トランプ大統領に首都認定と大使館移転を行うように求めています。つまり、米国政界は12月のトランプ大統領の決定を促し、それらを支持していることになります。
第二に、現在、中東地域におけるパレスチナ問題は最も大きな政治問題ではなくなっています。近年はイスラム国の台頭から壊滅への急転、そしてサウジアラビアとイランの対立が深刻化しており、パレスチナ問題は中東の緊急の課題とは言えなくなっています。特に中東におけるスンニ派諸国の盟主を自称するサウジアラビアは、イランとの対決姿勢を強めており、敵の敵は味方という状況で反イランのイスラエルとの無用の対立を避けるようになっています。したがって、トランプ大統領はサウジアラビアの中東版NATO構想を支持しており、同国の政情不安な情勢下でもいち早く現政権の支持を打ち出しています。それらの前にとっては首都認定及び大使館移転は些事と言えそうです。
第三に、トランプ大統領が実際に本格的な大使館の移転を行う時期は相当に先送りされるということです。トランプ大統領は12月の発言後に再び大使館の移転を先送りする指示を出しました。これは名目上は大使館移転のための準備のためとなっていますが、本格的な大使館の移転には数年の月日を要する可能性が高い状況となっています。その間は意思決定が事実上保留された状況となっており、外交上・安全保障上の変化及び交渉の進展によって幾らでも意思決定の変更の余地が残されています。
つまり、トランプ大統領の発言は米国内のユダヤ社会、そしてキリスト教保守派に対する指示を獲得するための象徴的な行為であり、そして外交安全保障上も状況を冷静に見据えたギリギリの中で意思決定であると推量されます。
トランプ大統領は昨年8月のシャーロッツビルでの白人至上主義者団体と極左アンティファなどとの衝突時に、白人至上主義団体に反ユダヤ団体が混ざっているにも関わらず喧嘩両成敗のような発言を行った結果、ユダヤ社会からの猛反発を受けて政権基盤が危うくなった経緯があります。その際、ユダヤと距離が遠いバノンが更迭されるとともに、イスラエルに対する大統領の特使であったアイカーン氏も辞職しました。そして、ユダヤ系が影響力を持つ経済関連の大統領の諮問会議などが解体されるとともに、同じユダヤ系のコーン国家経済会議議長、ムニューチン財務長官にも辞職圧力が強まりました。これらの政権運営にとって致命的な失点を取り戻すためのエルサレム首都認定と米国大使館の移転の意思決定であることは明白です。
日本人はトランプ大統領を取り巻く状況、そしてその意思決定の内容について理解を深めることが必要です。
やっぱり政府閉鎖、その元凶は誰にあるのか?
(CNN)
保守強硬派とされる共和党保守派が下院で妥協したことにより、連邦下院で暫定予算が通過した状況となっています。ただし、共和党が上院での暫定予算案に対する議事妨害を乗り越えるためには100票のうち60票が必要となります。そのため、共和党は民主党側から最低9人、共和党から3名の造反が予測される現状では民主党から12名の造反票を必要としています。
しかし、最近の世論調査では民主党員はDACA(ドリーマーズに対する特例措置)が政府閉鎖回避よりも価値があると考えている人が多く、共和党員は政府閉鎖回避がDACAよりも重要と考えている人が多い状況です。共和党側のほうが政府機関閉鎖を回避するモチベーションが高く、民主党側はドリーマーズへの対応がなければ政府閉鎖も辞さない態度をとっています。
政府閉鎖が行われた場合、米国経済に一時的な影響があるものの、トランプ減税の影響も含めたプラス傾向が継続することで好景気を維持されることが想定されています。そのため、今回の政府閉鎖は中間選挙に向けた政治的な印象操作を狙って安全に実行することができる特殊なシチュエーションが生まれています。
具体的には米国主要メディアによって「実際には民主党による『何でも反対』によって政府閉鎖に陥ったとしても、その責任はトランプ大統領と共和党にある」という印象操作が実行されることになるでしょう。それらのメディアはリベラル派に著しく偏っており、民主党議員がトランプ発言を引用して必要以上に騒ぎ立てたことなども含めて、既に政府閉鎖に向けた世論形成の地ならしが始まっているとみなすべきです。(The Urban Folks読者には政府閉鎖が起きた場合の米国報道とそれを丸写した日本メディアの予定調和ぶりを生温かく見守ってほしいと思います。)
昨年の債務上限の引き上げ交渉の時のように、トランプ大統領には危機的状況下に陥る中で民主党側と直接交渉する可能性が残されていました。大統領が自ら大幅に譲歩した場合、民主党が申し出を袖にすることは国民からの同党の印象が悪化する可能性があるため、同党議員らは徹底した大統領へのネガティブキャンペーンを実施して距離を取っています。そのため、ほぼDACAに関する合意に至ろうとした会議でのトランプ大統領の非公式発言が「問題を解決することよりも問題を深刻化することを望んだ民主党議員」によってクローズアップされました。
米国民主党側はトランプ政権下での好調な経済状況を良いことに、政府閉鎖による社会的混乱をかえりみることなく政局上の危険なゲームを楽しんでいます。米国政界関係者の全ての言動は今年に予定されている「中間選挙のため」であり、米国で起きる政治的な出来事は選挙を理解しなくては読み解くことはできません。
政府閉鎖は東アジアや中東情勢における米国の活動にも支障が生じるために同盟国にとっても極めて迷惑な行為であり、米国民主党が良心をもって上院での暫定予算を通過させることに協力することを期待します。
2018年01月19日
2022年問題、多摩地域の生産緑地の宅地化を進めるべきだ
(東京都HPより引用)
改正生産緑地法が1月1日に施行したことで、従来までは生産緑地として固定資産税などの優遇を受けてきた農地の適用下限面積が500平方メートルから300平方メートルに引き下げることができるようになりました。それを受けて都内約20市で下限面積の引き下げを意図し、更に小規模な農地が同制度の適用を受けられるように条例改正が行われようとしています。
1992年に改正された今回の再改正前の法律による生産緑地は指定から30年するまで宅地転用ができない、という優遇措置に対して農作業を義務付ける仕組みが組み込まれていました。その結果として、2022年に同法による期限が切れるために2015年の東京都調査では約4分の1の生産緑地が宅地転用される可能性が指摘されています。東京都内には東京ドーム・約700個分の生産緑地が存在するため、その4分の1である約175個分が宅地として供給される見通しです。
ただし、改正生産緑地法では市町村が指定し、10年間の期間延長を実施することができるため、農地持ち主の意向との利害衝突が発生する可能性もあります。さらに、改正生産緑地法では、農地の作物を利用する形でレストランの運営などが可能となっており(国家戦略特区での検証済)、農地の付加価値を高める工夫を実施することが可能となっていますが、レストランなどは固定資産税の減免措置を受けるわけではないので、どの程度まで効果があるかは未知数となっています。
筆者は、このような生産緑地への優遇政策は必ずしも必要がなく、限られた土地利用の付加価値を高めるために、生産緑地を廃止または適用面積下限を引き下げることなく、できるだけ多くの土地に適正な固定資産税の課税を実施するべきであると考えます。
たしかに、生産緑地が地域に対する住環境面でプラスになるという指摘も理解できます。しかし、現実には2011年に江戸川区で問題になったように税制優遇を受けているにも関わらず、労働力不足を理由に無断で耕作放棄をしていた事案も存在しています。都市部で農業を維持することを前提とした土地利用に無理がある可能性が高く、それであれば有効な土地利用を阻害する規制措置を設けることは間違いです。
生産緑地に指定されている土地が正規の固定資産税の課税対象となると、地主層がそれらの税負担を回避して売却または有効利用を行うように転換します。
その結果として、大量の宅地開発の候補地が提供されることを通じて、東京に新たに住もうという人々のための家が生み出されます。これは住宅コストの引き下げにつながるために非常に有意義なことです。
また、生産緑地を多く抱える多摩地域はニュータウン時代のツケによる急速な高齢化を迎えつつあります。生産緑地を新たな宅地として転換することは、若年世代の生活環境改善を重視する政策を打ち出すことで人口構成を反転させるきっかけになります。子育て事業者の参入規制緩和や子育て世代に対する政策減税の実施など、生産緑地の宅地化による固定資産税増加を有効に利用することを併せて検討すべきです。
生産緑地の適用面積の下限を引き下げて固定資産税減免と引き換えに土地利用を制限することは、生産緑地が存在している地域への新興住民の流入を抑制することに繋がるために都市としての発展を阻害することになります。
2022年、住宅の大量供給による供給過多が予測される未来において、若年人口を惹きつける魅力ある都市づくりの重要性は更に増すことでしょう。宅地開発による空き家懸念などについては宅地開発を制限することによる事前規制ではなく競争力がある子育て施策の実施などの前向きな施策によって対処すべき問題です。
ノーベル平和賞・ICANは日本で北朝鮮の核廃止を訴えるべき
最近のノーベル平和賞は「近年で最も爆弾を投下した大統領」であるオバマ大統領にノーベル平和賞を送ってしまったことなど、もはや実態と外面が剥離した状況となってしまった例も存在しています。
そのノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が日本政府に対して核兵器禁止条約に参加するように働きかけています。筆者は日本も同条約に参加することは検討に値するとは思うものの、今回訪日時の同氏の主張する「北朝鮮側に偏ったように見える主張」は非常に残念です。
北朝鮮は核兵器禁止条約に賛成していますが、自国の防衛のために核兵器の保有が必要であると訴えています。一方、日本政府は現実の安全保障環境のため核兵器禁止条約には不参加であり、自国は核兵器を保有していません。両国の表面的な立場は捻じれているわけですが、北朝鮮の核兵器禁止条約への賛同は検討する価値もないほどに欺瞞であることは明らかです。
フィン氏は日本のソフトパワーを毀損する発言を繰り返すばかりで、現実の問題解決には何の役にも立ちません。それどころか、日本での北朝鮮や中国のような核保有をしている独裁国側を擁護するかのような発言は、正常な感覚を持った日本人からの賛同を得ることは難しいでしょう。むしろ、彼らが北朝鮮の核実験の時のように北朝鮮の核廃絶を訴えることは日本人からの賛同を得るようにアプローチすることが妥当だと思います。
日本におけるICANのパートナー団体は、同団体のHPからのリンクを見る限り、ヒューマンライツナウ、ピースボート、反核医師の会、プロジェクトナウ、広島県医師会ということです。一部の団体は北朝鮮への抗議を行っている団体も存在していますが、是非ともICANの方針に従って、今後も北朝鮮への抗議活動を日本国内でも大々的に行っていただきたいと思います。
日本国内で核廃絶の機運を本当に盛り上げたいならば、核兵器を保有していない日本政府を批判するのではなく、日本と一緒になって北朝鮮の核保有に抗議する活動を展開するべきです。
2018年01月18日
それでも仮想通貨は終わらない
直近1週間ビットコイン及び主要なアルトコインの相場が崩壊し続け、「仮想通貨バブルも終わった」「本来価値は0円だからな」「バブル崩壊で価値は1000分の1になってもおかしくない」などの各種コメントがネット上を賑わせました。
一連の相場の崩壊は韓国、中国、ドイツなどの規制当局者や中央銀行関係者らが規制を匂わせる発言をしたことに起因しているようです。法定通貨の関係者にとっては仮想通貨のような自律分散型のシステムが無秩序に発展することはある種の脅威であり、「投資家保護のための規制を作るために投資家に大損させる規制を作る噂を流す」という暴挙に出るのも然もありなんという状況です。
これらの規制はおそらく全面的な禁止というよりも投機を煽る現状を諫め、決済手段として利用される可能性が高い通貨を事実上認定していく方向で動くものになると推測されます。つまり、政府としても仮想通貨の流れを止めることは非現実であり、現状を実質的に追認していくことになると思います。
人類史は政府や一部の独占に対して分散型ネットワークが挑戦し、その都度一時的な勝敗はあるものの、結果として「自由」を増進する勢力が勝利をおさめてきました。そのため、今回のブロックチェーン技術を応用した仮想通貨は法定通貨の相対化を促し、近い将来経済の形、つまり社会の形を根底から変えていくものと想定されます。
そして、それは政府の形すら大きく変えていくことになり、いまだ地球上に残っている全体主義国家・独裁国家らの基盤を揺るがせる存在として成長していくことになるでしょう。
したがって、東アジアという独裁国家が残る地域において、仮に日本政府が仮想通貨に対して過度な規制を行うにしても過度な規制が行われることは望ましくありません。むしろ、自律分散型の社会構造を積極的に推し進めることによって、アジア地域に新しい政治・経済・社会モデルを構築することによって、他国の政治制度に対して変更圧力を強化していくことが望まれます。
仮想通貨は一時的な投機や決済手段の転換というだけでなく、政治体制の選択を促す重要なパワーを秘めており、日本人はこの新たな力を存分に取り入れて東アジアに残置された20世紀型の政治パラダイムを大きく転換していくことを希望します。
2018年01月17日
米国民主党がトランプ大統領に「人種差別主義者」のレッテルを貼る理由
(Photo: Ron Sachs - CNP/Newscom)
昨年末からトランプ大統領及び共和党の中間選挙における主要なターゲットとしてアフリカ系アメリカ人労働者が明らかに設定されてています。保守系メディアはアフリカ系アメリカ人の雇用状態が改善したことを強調し、キング牧師らの宗教的な背景を持つ運動家が中絶に反対していたことに触れ、そして昨年は全く目立つことがなかったベン・カーソン住宅長官を表舞台に出して盛り上げるようになってきています。これらは唐突に始まったキャンペーンであり、共和党側の選挙戦略上の意図を感じる動きとなっています。
ただし、アフリカ系アメリカ人は伝統的に民主党の強固な支持基盤でWASPを中心とする共和党とは敵対関係にあります。一部の社会的に成功したアフリカ系アメリカ人の中では共和党を支持する人たちもいますが、それらは例外的な人々であり、アフリカ系アメリカ人の血が入ったオバマ政権下では同大統領の鉄板の地盤でした。しかし、セレブ臭がプンプンしていたヒラリー・クリントンが大統領選挙の時アフリカ系アメリカ人から事実上の投票ボイコットにあったことで、上記のアフリカ系アメリカ人=民主党の積極的な支持基盤という図式が変わりつつあります。
アフリカ系アメリカ人は実はヒスパニック系の不法移民らと雇用面では競合関係にある場合も少なくなく、不法移民について必ずしも良い感情を持っているとは限りません。実際、各種世論調査ではアフリカ系アメリカ人が国境管理の問題について関心が高い状況となっています。また、国内の製造業の雇用が外国に工場が移転することによって奪われているとも感じています。つまり、アフリカ系アメリカ人とトランプ大統領の政策イシューの焦点は一致しており、更に本年はベン・カーソン住宅長官が都市部におけるインナーシティ問題に力を入れることで、同層の民主党への支持を共和党に転換または中立化させるための切り崩しにかかることになるでしょう。
民主党側もトランプ大統領と共和党のこれらの選挙戦略を敏感に察知しており、アフリカ系アメリカ人が民主党の支持基盤から剥がれ落ちることを防止することを恐れています。そのため、移民問題に絡めてトランプ大統領に対して「人種差別主義者」というレッテルを貼るキャンペーンを展開しており、「Shithole」発言をめぐる一連のスキャンダルの背景には中間選挙を見据えた両陣営のキャンペーンが既に始まっていると看做すべきでしょう。
2018年は中間選挙の年となりますが、共和党・民主党の勝敗を分ける決定的な要素は、いわゆるトランプ支持者とみなされている白人の低所得労働者ではなくアフリカ系アメリカ人の動向になるでしょう。アフリカ系アメリカ人の投票率が高く民主党に投票するならば共和党の敗北は必至であり、逆に彼らの投票率が低いかまたは共和党に鞍替えするようであれば共和党勝利の可能性が出てきます。今後も世論調査を含めたアフリカ系アメリカ人の動向は要注目です。
2018年01月16日
トランプ大統領は本当に「難民」を排除しているのか?
<The National Reviewより引用>
年明けからの「Shithole」発言によって、すっかり人種差別主義者としてのレッテルを貼られてしまったトランプ大統領ですが、一般のイメージと違ってトランプ大統領は難民の受け入れを相当する行う計画を用意しています。
トランプ大統領が設定した難民受け入れ上限数を4.5万人に設定しています。この数字はオバマ大統領の2016年受け入れ上限数である11万人と比べて著しく減少したものとして批判されました。
たしかに、トランプ大統領が新たに設定した2018年の受け入れ上限数は1980年以降で最も低い数字となっています。しかし、実際にはジョージ・W・ブッシュ及びオバマ元大統領の2015年までの受入れ許可数の平均は約5万人程度であり、受け入れ上限数が必ずしも実際の受け入れ許可数に完全にリンクしているわけではありません。近年の難民受け入れ数の増加はオバマ政権の無責任な中東政策によるイスラム国の勃興などによる混乱が原因であり、2017年にイスラム国問題が終息したので受け入れ上限数や許可数が減少することも妥当だと考えることもできます。
一方、2017年にはトランプ大統領が不法移民に対して激しく口先介入を行ったことも含めて不法移民の取り締まり強化の動きが始まり、不法移民の流入数自体も減少しています。その結果として不法入国者が前年比25%減少して1971年以来最低の水準となった影響を受けて、トランプ政権下で強制送還された人数も必然的に前年6%減となり、オバマ政権時代に最も低かった強制送還数を下回りました。そもそも不法入国者自体の減少傾向は続いていたものの、これはトランプ政権の無形の不法移民対策の成果と言えます。
つまり、トランプ大統領がオバマ大統領によってザルになった難民政策、管理不能になっていた不法移民対策の現状にストップをかけた形となっています。そのため、トランプ政権下では、受け入れる者は受け入れ、取り締まる者は取り締まる、という極めて一般的な国境管理が厳格化された状況となっています。
また、オバマ大統領は不法移民の子ども(ドリーマーズ)に対する特例措置を実施しましたが、それらは必ずしも法律化されたものではなく法的状態が不安定なままとなっています。トランプ大統領は連邦議会にドリーマーズへの対処を法律化して正規の法による執行プロセスにのせるように求めています。トランプ大統領は当たり前のことを当たり前に行おうとしているに過ぎません。
リベラルなメディアの主張を真に受けてトランプ大統領をイメージで批判するのではなく、実際に大統領職としてどのような行政対応を行っているのかを見極めていくべきでしょう。
2018年01月15日
小池都政による「情報公開」はどこまで進んだか
小池都知事はその政治的意思決定に関して「ブラックボックス」と揶揄されることがありますが、改革の一丁目一番地と位置付けられた都政に関する情報公開はかなり進展している状況となっています。
都政新報によると、小池知事就任前の2016年4月以前は307存在していた審議会のうち公開されていた数は149、一部公開を合わせても66.1%に過ぎませんでした。しかし、それが338審議会のうち207、一部公開は69も含めて81.7%にまで公開されている審議会が増加しました。議事録に関しては公開が70.4%から85.5%にまで増加し、非公開となった審議会でも会議概要が公開する形となりました。また、公文書公開に必要であった手数料1枚10円も電子データの場合は無料となりました。
また、筆者が注目しているものは昨年9月から実行された公金支出情報(一般会計・特別会計)の公開である。実際には昨年7月から遡った数字が1件ごとに担当部署、支払日、件名、金額などが東京都会計管理局HP上に掲載されており、それらは60万件以上の件数に上る見込みとなっています。この改革はかなり驚異的な出来事であり、東京都民が税金の支出内容について調べたければ、その端緒となる膨大なデータがすべてさらされている状況となっています。小池知事による極限的なレベルでの情報公開の成果と言えるでしょう。
欲を言えば、東京都は仕事の基本単位である事務事業の評価結果を徹底して公開し、全政策の費用対効果に関する分析結果を報告するところまで実施してほしいものです。東京都の予算は膨大な規模に及んであり、一つひとつの事業を都民が精査することは現実的ではありませんが、どのように税金が使われてどのような効果が上がっているかを知りたいときに知ることができることは、都民の基本的な権利であると考えます。
むしろ、会派別の復活予算が存在していた都議会の異常な腐敗が払しょくされたことを契機に情報公開を前提とした議会改革を推し進めるべきでしょう。与党である都民ファーストの会も含めた都議会が知事部局に対して、まともな質問を行っていくためには事務事業評価を含めた政策評価の徹底・公開は前提条件です。現在のように都政の政権交代後に知事と最大会派が一致している稀有な状況を生かし、行政と議会の関係を健全な状況に戻すべきです。
既に東京都政に関して情報公開は相当行われた状況となっており、都議会やメディアの仕事は公開された情報を基にして価値ある議論を行っていくことでしょう。年末年始の時期は都議会議員の〇〇の忘年会・新年会に行きました、という活動報告が多いわけですが、それらの日常活動とともに「公開された情報」とにらみ合って価値ある質問をする準備もしっかりとして頂きたいと思います。