2016年05月

2016年05月06日

トランプ勝利はトランプ支持者に対する思想差別が産み出した

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トランプ支持者の結束が強固な理由は「知識人による思想的差別」の結果だ

トランプ氏が予備選挙で支持率1位に立って以来、トランプ氏に対するメディアと知識人によるバッシングは度を超えるものが多数ありました。そして、彼らによるトランプ氏へのバッシングはトランプ氏自身を飛び越えて、トランプ氏を支持する有権者に関する劣悪な分析の報道・発表に至るようになりました。

トランプ支持者は、白人の低所得者や低学歴層、、思いやりが足りない、人種差別主義者、権威主義者、ポピュリズムに踊らされた大衆、その他諸々の表現(基本は「馬鹿で人でなし」ということ)で予備選挙期間中散々に罵倒されてきたわけです。

メディアや知識人というものは普段何も話したこともないような人々に対して様々な名称をつけて罵る天才だなと思うわけですが、これらのメディアや知識人によるレッテル貼り、つまり「知識人による思想差別」はトランプ支持者の強固な結束を生み出したと思います。

筆者も「そりゃそうですよね」と思うわけです。彼らは単純にトランプ氏を支持しただけで、トランプ氏の政敵であるメディアや知識人から「人間失格の烙印」が押されるのだから怒りを感じて当然でしょう。まして、全然関係ない日本人などの世界中のメディアと有識者からも突然に「馬鹿扱い」されてさぞ驚いたものと思います。

トランプ氏やトランプ支持者に対する既存の権威からの分析は「分析の体裁を取った感情の吐露」ばかりで、筆者も定期購読しているThe Wall Street Journalの論説内容が酷すぎてげっそりしました。

それらの思想差別の結果として、トランプ支持者が「自分たちを馬鹿扱いする奴らを見返してやりたい」というモチベーションを強くしたことを想像することは簡単です。

有力政治家からのトランプ不支持はトランプ氏への支持率によって変わってしまうものだ

さて、メディアや有識者による「無知な大衆は俺らに従うべきだ」という論理展開をトランプ氏の予備選挙当確によって米国の民衆が退けたわけですが、その後の展開はどのようになっていくでしょうか。

早速トランプ氏に対して共和党の重鎮らが不支持または支持保留を打ち出していますが、これらは今後のトランプ氏の行動による支持率の変化によって大きく変わっていくことになるでしょう。

政治家というものは日本の政治を見ても分かるように「自分が政治的に生き残るために役に立つか」という観点から物事を判断する人々だと言えます。つまり、トランプ氏の支持率が上昇することになれば、前言撤回で態度を翻してトランプを支持することになります。政治家の悲しい性とはそういうものです。

一方、トランプ氏に対するメディアや有識者のバッシングはおそらく最後まで止むことは無いと思います。彼らはトランプ氏が勝利することは自らの存在意義が社会によって否定されることを意味しているからです。

これらのトランプ氏に対するバッシングはトランプ氏にとっては追い風になるでしょう。単純にメディア露出が増加するだけではなく、一度でも自らがバッシングの対象になったと認識した有権者は「強固なトランプ支持者」に変わっていくからです。

サンダース支持者はヒラリー・クリントンという妥協の選択肢を選ぶことができるのか

一方、民主党はヒラリーがエスタブリッシュメント陣営であるため、サンダース支持者の大衆がヒラリー支持にあっさりと転ぶかというと疑問です。

サンダース支持者は自らの信念に基づいてサンダースを支持しており、サンダースの支持率に関わらず彼を支持しているはずです。つまり、共和党の政治家とは違ってサンダース支持者は簡単に妥協することはできないものと思います。

今後、仮にサンダースが予備選挙を継続していく中で、メディアや有識者がサンダースを叩き始めるとサンダース支持者の反ヒラリー姿勢は硬直化していくことになるでしょう。(まあ、サンダースは知識人と共通の左派なのでトランプほどは叩かれないでしょうが・・・)

共和党と民主党の構図を見ると、政治的に妥協できるエスタブリッシュメントではなく、大衆レベルでの分裂は共和党と民主党の双方ともに深刻な状況だと言えます。特に民主党側の分裂はこれから更に深刻になることが予想されるため、ヒラリーが何事もなかったように穏便に指名を受けられるかすら疑問です。

トランプ支持者に対する不当な思想的・社会的差別は止めるべきではないか


トランプ氏及びトランプ支持者についての罵倒を念頭に置いた分析はそろそろ止める段階に入っていると思います。米国内では党派的な対立があるために難しいのかもしれませんが、遠く離れた日本での分析はトランプ氏への感情的な拒否感を乗り越えて冷静に行われるべきでしょう。

米国大統領選挙に関する言説をウォッチしている身としては罵倒的な論説やコメントに食傷気味で、日本人のメディアや有識者には第三国の人間としてもう少しまともな読み物を生産してほしいという切なる願いを持っています。正直言って、知的な刺激も欠片もないものが多すぎる気がします。

我々は米国人ではないのでトランプ氏やトランプ支持者をバッシングしたところで一円にもならないし、自分自身の知識人としてのポジションを守るための言論はやめましょう。特定人物に対する政治的な支持の有無によって思想的に差別をす良識に欠ける言論空間が是正されることを望みます。

知識人と社会主義 (勝田吉太郎著作集)
勝田 吉太郎
ミネルヴァ書房
1992-10




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yuyawatase at 14:52|PermalinkComments(0)米国政治 | 社会問題

2016年05月04日

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由

ダウンロード
wikipediaより引用

だから、昨年からトランプが指名獲得するって言ってきたでしょうに・・・

最近は日本国内でもトランプ指名獲得を受け入れる方向が出てきていますが、昨年段階では「トランプ勝つかも?」というと、国会議員や有識者の皆さんから「頭悪い子扱い」されてきましたが、実際にはどっちが馬鹿なのかがすっきりして良かったと思います。

何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)

筆者に対して、ニヤニヤしながら、スコットウォーカーが来るって言ってた国会議員や僕らのコミュニティではブッシュと言ってた有識者の皆さんは息してますか?彼らも仕事なので何事も無かったように今後はトランプについて語り始めるんだろうなと思いますが・・・。

自分は心情的にはクルーズを応援していたので彼の撤退は残念ではありますが、これで共和党側のトランプ指名は確実になったものと思います。そのため、今回は大統領選挙本選での予想を述べて行きたいと思います。

大統領選挙本選でトランプはヒラリーに勝利することになるだろう

日本の大半の人は、取材不足のメディアやピント外れの有識者のコメントに毒され過ぎていて、「トランプVSヒラリーならヒラリーが勝つでしょう」みたいな見解を持っていると思います。

そのような見解を持たされていることは恥じるべきことではなく、むしろ米国大統領選挙について積極的に情報を収集している証拠とも言えるでしょう。

しかし、残念ながら、ヒラリー・クリントンは大統領にはなりませんし、ドナルド・トランプ氏が大統領になることはほぼ確定しています。

断言しますが、「ヒラリー・クリントンが大統領になる」という予測をしている有識者は「麻雀で安パイを切り続ける思考と同じ」で、「自分自身への保身で大統領選挙への見解を述べている」だけの人々です。現状のまま大統領選挙が終わって流局することを願っていることでしょう、まあ彼らは選挙に関して素人さんなので仕方がありません。

「トランプがヒラリー・クリントンに勝つ」5つの理由とは・・・

現在、トランプVSヒラリーという世論調査を行った場合、現状では「ヒラリーがトランプに勝つ」という数字が出ています。では、そのような状況でトランプがヒラリーに勝つと言える根拠は何でしょうか?

<第一に、「トランプ氏はまだ大統領本選モードではない」ということです>

ヒラリーは昨年から民主党側の指名確実であったため、最初から大統領本選モードで予備選挙を戦ってきました。したがって、ヒラリーの伸びしろはほとんど残っていないと思われます。

一方、トランプ氏は名実ともに共和党予備選挙を戦ってきたわけです。そのため、中道寄りの発言は原則として難しいため、現在までの米国全体での支持率はヒラリーよりも劣っています。(トランプ自身は共和党内で最左派と言えるくらいにリベラルです。)

しかし、今後はトランプ氏も大統領本選モードのイメージ戦略に切り替えていくことになるため、共和党の主流派を取り込むことに成功することでしょう。さしあたって、副大統領候補者を誰にするのか、ということでイメージが大きく変わることになります。

その結果として、トランプVSヒラリーの支持率は拮抗していくことが予想されます。つまり、今までは違うレースをやっていた人同士を同じ尺度で比べることがそもそも間違っているということです。

<第二に、「トランプ氏は共和党の選挙リーソスにアクセスできるようになった」ということです>

米国では共和党・民主党の支持率は元々拮抗しており、足元の選挙マシーンの実力も同程度とみなして良いと思います。トランプ氏が指名を獲得する形になったことで、トランプ氏は従来まで不足していた選挙運動のための足腰を手に入れることになりました。

共和党の予備選挙において、トランプ氏は徒手空拳によるメディア・コントロールのみで勝ち残りました。他候補者が選挙のための組織・ネットワークを十全に固めていた中での快挙と言えるでしょう。

トランプ氏の指名が確実になったことで、トランプ氏の下に初めて真面に選挙を行うための体制が整備されることになります。したがって、今後は共和党から支援を受けつつ選挙戦を展開することになるため、極めて組織だった強力なキャンペーンが行われることになります。

既に組織がフル回転で選挙戦に臨んでいるヒラリーやサンダースと比べて、この点においても伸びしろがあるということができるでしょう。

<第三に、「米国民主党内の分裂は極めて深刻だ」ということです>

民主党内の反エスタブリッシュメント層であるサンダース支持者はヒラリーに対する強い嫌悪感を持っています。そして、ヒラリーにとってサンダースの存在は喉に刺さった魚の骨のような形になっています。

ヒラリーはサンダース支持層を取り込むため、予備選開始当初の大統領本選モードのイメージ戦略を微妙に修正して、米国内基準の左派寄りのスタンスを取るようになっています。これはトランプ氏とは逆の方向で選挙戦で展開していることを意味します。

現在、全米での予備選挙ではヒラリーとサンダースはヒラリーが微妙に優勢という状況で、ヒラリー氏が今後の予備選挙で下手を打つと、ヒラリーとサンダースの両者が分裂して本選に出てくることも十分にあり得ます。

ヒラリーはサンダースを取り込もうとすると中間層の票を失うことになり、中間層を取り込もうとすると反エスタブリッシュメント票の行方が怪しくなるというジレンマの中にいます。共和党以上に本当に分裂しているのは「民主党」なのです。

サンダース氏はギリギリまで予備選挙を継続するでしょうから、ヒラリーはトランプ氏と比べて極めて不利な状況で今後の選挙戦を継続することになるでしょう。

<第四に、「選挙争点は「ヒラリーの健康問題になる」ということです>

ヒラリーは様々なスキャンダルを抱えていますが、最も深刻な問題はメール問題やベンガジの対応ではなく、彼女自身の健康問題です。既にトランプ陣営は昨年段階からヒラリーの健康問題を攻撃し始めており、大統領選挙本選も容赦なく同問題を選挙争点にすることが予測されます。

トランプ氏は昨年末自らの健康診断書を公開して壮健ぶりをアピールしました。これは明らかに昨年末段階で対ヒラリーを意識したキャンペーンを始めようとしていた証左です。ヒラリーは公務の期間中に度々失神・転倒・会議キャンセルを繰り返しており、現実問題として大統領の激務が務まるかは極めて疑問です。

ただし、その後トランプ氏は調子に乗りすぎてアイオワ州を軽視したために同州でテッド・クルーズ氏に敗北したことで、しばらく共和党内の予備選挙にリソースを拘束されることになってしまいました。

しかし、共和党の指名を獲得したことで、ヒラリーにとって最も弁明が難しい健康問題に焦点が戻るものと思います。選挙は政策を選ぶわけではなく人物を選ぶものであり、その人物が健康が怪しいという一点突破で、ヒラリーは米国という軍事国家の指導者として相応しくないということになるでしょう。

<第五に、「ヒラリーはトランプ氏に反応せざるを得ない」ということです>

選挙戦の基本として、弱小な勢力が勝つためには有力な勢力に自らの名前を述べさせることが重要です。現状においては優勢であるヒラリーの口から「トランプ」という言葉が発せられる度にトランプの支持率は上がっていくことになるでしょう。

トランプ氏にとってはヒラリーと同じ土俵に乗ることが最初の作業ということになります。そのため、初期段階では徹底的にヒラリーを攻撃するとともに、ヒラリーは終わった人物である、というキャンペーンを行うことになります。前述の健康問題も含めてヒラリーは過去の人という印象を有権者に植え付けようとするでしょう。

本来であればヒラリーはトランプを無視し続けることが有効な戦略となります。共和党予備選挙で失脚した主流派のジェブ・ブッシュ氏やマルコ・ルビオ氏はいずれもトランプ氏の「口撃」に反応したことで支持を失っていったことからも明らかです。

しかし、ヒラリーは現在サンダースとの予備選挙の真っ最中であり、サンダースを事実上支援することになる今後のトランプの「口撃」にコメントせざるを得なくなるはずです。その結果としてトランプ氏が引きあがるとともに、ヒラリーは落ちていくことになるでしょう。


以上、5つの純選挙的な理由でトランプ氏はヒラリーに勝利することになります。今後、日本国内ではヒラリーがトランプに勝つ、という誤った言説が氾濫することでしょうが、それらは11月の大統領選挙が終わる頃には全て間違いであったことが証明されるでしょう。なんせ、それらの言説を垂れ流している人は「トランプが予備選挙に勝つこと」を予想できた人は一人もいなかったからです。

ヒラリーが勝つ可能性は、最近支持率が回復してきたオバマ大統領がサンダース支持層をうまく吸収してヒラリーのサポートに回ることができたとき、ということになります。果たして、オバマ大統領がそれだけのことを実行できる余力を残しているかいなか。トランプ氏の共和党指名確実ということで、米国大統領選挙の行方はますます面白くなってきました。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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yuyawatase at 12:00|PermalinkComments(0)米国政治