2016年05月

2016年05月31日

選挙争点は「三党合意を行った政党への不信任」である

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他人事のような民進党(元民主党)の人々の言葉

「消費税増税できないアベノミクスは失敗だ!」と民進党が意気揚々としています。しかし、直近の景気低迷はアベノミクスが失敗したからではなく、「三党合意によって決まった消費税増税」が経済不況を招いたことにある点は明白です。

自民・公明・民主の三党合意した消費税増税が失敗であったことを棚に上げて、鬼の首を取ったかのようにはしゃぐ民進党議員らには国民として疑問を持たざるを得ません。

小選挙区制度を採用している我が国では与党と野党第一党が選挙前に談合した場合、国民から事実上選挙における選択肢を奪うことができます。

民進党議員は国民から増税以外の選択肢を無くしておいて、その増税による経済失政が実際に発生させた上で、その経済失政を槍玉に挙げて批判する姿を見て、国民が白けた目線を注いでいることに気が付くべきでしょう。

アベノミクスは「そもそも意味が無かった」という正しい認識

そもそもアベノミクスが盛んに叫ばれていた時期は「リーマンショックからの回復期」でしかありません。各種経済指標の改善はリーマン以前の状況に徐々に戻ってきただけのことです。ドルベースの株価の上昇率も米国と比べても特別高いわけでもありません。

そして、安倍政権が誇る雇用増の大半も、民主党時代から変わらない「社会保障費の垂れ流し額」が更に増加し、福祉職の雇用が毎年膨れ上がっているだけのことでしかありません。御用アナリスト・経済学者は言わないと思いますが、数字を確かめれば普通に分かることです。

つまり、アベノミクスなどというものは最初から効果が希薄であり、民主党政権末期から兆しがあった円安が安倍政権になってから進展したことで為替差益が増加し、大企業の帳簿上の収支が改善しただけです。

したがって、経済政策の本質は民主党政権の頃と大差ないのではないかと思います。アベノミクスによる変化とは、日銀による国債ファイナンスによって日本円の信用が大きく毀損したことくらいです。

そのため、仮に民進党が政権を担っていたとしても、消費税3%増を上回る効果がある経済政策を実行できていたようには全く思えませんし、そのような政策が実行できると本気で思っているなら民進党の経済センスを疑わざるを得ません。

「三党合意を行った政党への不信任」、国会議員の選民主義から民主主義を守る

今回の国政選挙においても「三党合意」よろしく、与党と野党第一党が消費税増税の先送りで一致しています。
彼らは選挙の度に与野党で「増税で一致」「見送りで一致」という行為を繰り返すつもりでしょうか?

口では何とでも言えますが、所詮大企業・大労組に支えられた似たより寄ったりの政党なので、重要な経済政策の問題では行動が常に一致しているわけです。

完全に「民主主義を舐めている」わけであり、「国民は寝ててね。あとは国会議員、官僚、タックスイーターで決めるから」と言っているに等しい行いです。これで立憲主義やら何やらを語るなど馬鹿にするにも程があります。

民主主義の根幹である「税金」の問題から国民を蚊帳の外に置く政治が許されるべきではありません。今回の選挙は「現在進行形」で「民主主義を破壊している」与党と野党第一党への不信任になるべきです。

国民はエスタブリッシュメント政党である自民党・公明党・民進党の三党以外に投票することが望まれます。この3つの政党は確固たる組織票があるため、あなたが一票投じなかった程度で動じるような政党ではありません。したがって、積極的に上記3党以外の政党に投票すべきです。

選挙争点は「日本の民主主義を国会議員の選民主義から守ること」です。現状の選挙制度では難しいことは確かですが、自公民の3党を過半数割れにすることができれば日本の政治は確実に変わります。そして、それは一人ひとりの投票で可能なことなのです。

1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済
野口 悠紀雄
東洋経済新報社
2010-12-10


 本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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2016年05月29日

「外交音痴」のためにオバマ大統領・広島訪問を解説する

20160513192036

「オバマ大統領・広島訪問」を単独で理解する愚
 
オバマ大統領による被ばく者の方々との面談は、素晴らしい歴史的な人道上の成果でした。

しかし、オバマ大統領の広島訪問に関するマスメディアにおける論評は「オバマ演説の字面」、「核廃絶の意義」、「謝罪の有無」というような表面的もしくは情緒的なものばかりでした。

そうではなく、今回のオバマ大統領の広島訪問は、日米関係と対中国外交について踏み込んだ内容を伴うものだということを認識すべきです。

外交活動は一連のプロセスを踏まえて行われており、「オバマ大統領・広島訪問」を単独で取り上げて喜んだり訝しんだりすることは感情論としては肯定しますが、核廃絶のような絵空事ではなく現実的に引き起こされる目の前の外交問題について向き合うべきです。

オバマ大統領も安倍首相も馬鹿ではないので、今回のオバマ大統領・広島訪問は両者が一国の元首に就任して以来の一連の流れの中で行われたものとして捉えて、その意義について理解する必要があります。

「中国による戦勝国外交を封殺」したオバマ大統領・広島訪問というシナリオ

安倍政権は政権誕生以来「セキュリティダイヤモンド構想」などの対中包囲網を形成するための外交政策を継続してきています。

米国議会での自由主義的な演説、インドとの巨額援助を引き換えにした安全保障協力の深化、慰安婦問題での韓国との突然の妥協、ロシアへの領土問題に絡めた一方的な経済支援など、安倍政権は対中包囲網形成のために「戦略的忍耐」を繰り返してきています。

そして、今回の「オバマ広島訪問」への見返りとして、安倍首相による「真珠湾訪問」が実質上内定していることが予測されるため、日米間に存在する過去の歴史問題にケリをつけるきっかけとなるでしょう。

一連の行動のねらいは、中国の戦勝国外交による日米離間の防止です。オバマ大統領の広島訪問に、日米間の出来事に中国が異常な反応を見せていることはこれを証明しています。少なくとも安保法制に対するそれより遥かに強烈な反応です。

対中限定戦争への外堀が埋まっていく日中関係
 
オバマ大統領の広島訪問を「世界が平和に近づいた」と理解している人々は外交音痴です。

オバマ大統領は現在進行形で中東において戦争を継続している大統領である、という基礎的な事柄すら忘れているのではないか、と疑わざるを得ません。

オバマ大統領・広島訪問は「第二次大戦の戦勝国クラブである米中が歴史観で袂を分かった出来事」であると理解すべきです。つまり、第二次大戦は過去の出来事として日米間では処理されることになり、米中間の戦勝国としての歴史的な共通項は意味を成さないものになるのです。

したがって、オバマ大統領と安倍首相は客観的な外交的事実関係として、中国との歴史観を今後は共有しないことを宣言したわけです。

筆者は日本が屈辱的な外交状況から脱却しつつあることに共感しますが、それ以上にオバマ大統領の広島訪問が東アジアの安定を壊す可能性について注目すべきだと思います。

第二次大戦に由来する歴史観の解消は米中衝突に向けた地ならし(しかも日本を巻き込んだものになる)と看做す必要があり、「東アジアの安定は崩壊に向けた一歩を確実に踏み出した」と言えるでしょう。

オバマ政権と安倍政権の焦りが産み出したオバマ大統領・広島訪問の実現
 
オバマ大統領の「政権のレガシーを残したい」という意図を安倍政権が巧みに利用し、対中包囲網形成に向けた外交的な一歩を米国に踏み出させた安倍政権の外交手腕は見事です。

ただし、筆者はその背後にある両者の焦りこそが「東アジアの安定」に危機をもたらすものと推測します。オバマ大統領はアジア回帰の具体的な成果を残すことに躍起であり、安倍政権は急速に逆転しつつある東シナ海・南シナ海での日中の力関係に焦燥感を覚えているはずです。

両者の焦りは十分な準備がないままに「第二次大戦の歴史観を清算する」という結末を生み出し、「砂上の楼閣」でしかない外交上の成果が安倍政権の外交政策の過信に繋がることに懸念を持っています。

筆者は、フィリピン、タイ、ラオス、インドネシア、豪州などで親中政権が誕生し、安倍政権が意図した対中包囲網に穴が開いて現実的なバランスオブパワーが崩壊しつつある中で、それらを軽視してイデオロギー的な正統性の確保に邁進する安倍政権の外交政策を深く憂慮しています。

無謀な外交的冒険主義に至る「平和ボケした日本人」の未来を憂う
 
「オバマ大統領・広島訪問」という事象を単独で取り上げた外交的評価は不毛です。そして日本人は安倍政権の政策プロセスが進むことによる日中の限定的な衝突が近づいていることに危機感を持つべきだと思います。

筆者は1945年以降の屈辱的な歴史を良しとする者ではありませんが、安倍政権の無謀な外交的冒険主義によって日本人の生命・財産、そして東アジアの安定が損なわれることには全く賛同できません。

間もなく国政選挙が近づく日本においては、同プロセスの進行を止めることができるような「マトモナ野党」が存在せず、冒険主義に加担する心情右翼や平和を唱えるだけの念仏左翼が蔓延っています。

オバマ大統領・広島訪問を「核廃絶に向けた未来への展望を示した」としか理解しない「平和ボケした日本人」の未来について深く憂慮しています。



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2016年05月19日

トランプをレイシストだと罵る人に不都合な真実

USMuslimCandidateSupportin2016PresidentialPrimary

トランプは実は共和党系のムスリムから最も人気がある予備選の候補者だった

2016年の大統領選挙において数か月前に一部のメディアで報道されたムスリムの投票傾向に関するデータの一つを紹介したいと思います。

上記のグラフはCouncil on American–Islamic Relations(CAIR)という在米のイスラム教徒の団体が今年3月に行われたスーパーチューズデーに際して、イスラム教徒1850人にアンケートを実施した結果です。(アンケート結果はこちら

アンケート結果からも分かる通り、ムスリムのうち民主党系ムスリムが67%と過半数以上を占めている状況ではありますが、共和党系のムスリムも18%存在しており、回答者の約5人に1人は共和党系ムスリムという比率だったことが分かります。


USMuslimPoliticalPartySupportin2016PresidentialPrimaries

一方、冒頭のグラフでも示した通り、トランプは共和党の予備選挙候補者の中では圧倒的な人気を誇っており、他候補者の追随を許さずにムスリム教徒からの圧倒的な支持を受けていました。米国在住ムスリムの10人に1人以上はトランプを支持しているということになります。

ヒラリーは有色人種対策に熱心であるためにサンダースよりもかなり高い数字を獲得しています。トランプ氏はレイシストだのなんだと誹謗中傷を受けることが多いのですが、下記のアンケート結果でいくとフロリダではサンダースとの支持率の差は僅か3%しかありません。同州ではサンダースはレイシストとして批判されるトランプとほぼ同じ程度しかムスリムから支持を獲得できていないということになります。

USMuslimSupportforCandidatesbyState

トランプがムスリムから人気の理由は「経済に強そう」だから

では、トランプ氏が共和党系のムスリムから支持を受けた理由を推察するためには、同アンケートで共和党系ムスリムが予備選挙で「経済」を最も重視する要素として取り上げていることに注目すべきでしょう。したがって、共和党系ムスリムからトランプは「経済に強そう」という理由で支持されていたことが分かります。

MostImportantIssuetoUSMuslimRepublicansin2016PresidentialPrimary

一方、民主党のムスリムはイスラム蔑視を最も重要視した人が多かったことが確認されています。ただし、関心事項1位のイスラム蔑視が27%、2位の経済が19%ということで1位と2位の差は僅か8%しかありません。つまり、民主党系ムスリムであったとしても「ムスリム蔑視」(レイシストの問題)を最重要視している人は約4人に1人ということになります。

MostImportantIssuetoUSMuslimDemocratsin2016PresidentialPrimary

「TIME」が取材したトランプに投票したムスリムの実像について

スーパーチューズデー後にTIME誌がトランプ氏に投票した3人のムスリムの実像について取材をしています。いずれの人々もトランプの反イスラム発言については深刻に捉えておらず、米国の住民として安全保障や経済問題などの観点からトランプ氏に投票していることが分かります。

Meet Three Muslims Voting for Donald Trump(TIME)

筆者は彼らがトランプ氏がレイシストであると主張して集会などで大声で抗議するような人々よりも極めて知的な回答を行っている印象を受けます。トランプ氏の発言を大人の目線で冷静に捉えており、自分自身が
ムスリムだからといってナイーブに騒ぎ立てるような印象はありません。

もちろん、筆者自身はムスリムではありませんから、彼らの心中については想像するしかありません。しかし、公表されたデータからは当のムスリムが全員一丸となって反トランプではないことが読み取れます。

 「トランプはレイシストだからムスリムからは支持されていない」は間違っている

米国の大手メディアの大半は反共和党かつエスタブリッシュメント寄りであり、トランプ氏とその支持者は安易なステレオタイプ化の被害者となっています。そして、米国のメディアに情報を依存する日本メディアと日本人有識者らによって、日本人は単純化された解像度の低い米国大統領選挙の報道を消費させられています。

しかし、現実は「共和党の予備選挙候補者でムスリムから最も支持されていた候補者はトランプだった」ということは動かしがたい事実です。
 
在米のムスリムが彼らへの差別を感じていることは事実だと思います。しかし、殊更にそのことを重視するか否かは共和党系・民主党系ムスリムで異なるとともに、両者に共通する問題は経済であり、さらに共和党系ムスリムは「経済に強そう」という理由で予備選挙でトランプ氏に投票しているのです。

街頭・集会でデモをやったり抗議をしたりする類いのニュースにしやすい情報は日本にも入ってきます。そして、それを煽り立てる偏ったメディアや知識人が多いため、私たち日本人の目には在米ムスリムは「反トランプ一色」に見えしまいます。しかし、現実はちょっと違うみたいです。

トランプ氏をレイシストだと煽り立てる人々にとって不都合な真実は今後もフィルタリングをかけられて葬り去られていくでしょう。今回は備忘録的に書き留めておきたいと思います。

プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く
アンソニー プラトカニス
誠信書房
1998-11-01


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2016年05月16日

トランプは米国の「破壊者」ではなく「救世主」だ!

Donald_Trump_August_19,_2015_(cropped)
Wikipediaより引用

米国の破壊者は「ドナルド・トランプ」ではなく「ヒラリー」と「サンダース」である

筆者は昨年から主に選挙キャンペーンの観点から大統領予備選挙においてトランプ勝利を明言し、現在もトランプがヒラリーに大統領選挙本選で勝利することを予測しています。

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由(2016年5月5日)
数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)
何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)

一方、「なぜ、トランプ現象が起きたのか」ということについて、メディアや知識人が経済格差やスピーチ力などの様々な理由をつけて説明しています。しかし、それらの大半は極めてポピュリズムな観点に基づく分析が多いことを残念に思っています。なぜなら、トランプ現象は米国に深く根差した政治思想の観点から説明することが可能だからです。

政治学者ルイス・ハーツが指摘するように、米国は封建制度を経験していない建国以来の自由主義国家です。

米国では王族や貴族が存在していないことによって反革命もなく、小資本家・農民・プロレタリアートも含めて民衆がプチブルジョワの心性を共有しているために社会主義に傾倒することもありませんでした。

米国=アメリカン・ドリームという思想は「誰もが成功することができる」という信念に支えられた社会風土の中から生まれたものです。米国の支配的な認識の下では、生まれながらの貴族階級も無ければ絶望した底辺の貧困層も存在していませんでした。米国は努力すれば誰もが成功を手にすることができる国、自由主義を国是とする国家とされてきました。

つまり、「絶対化された自由主義思想」こそが「米国の自己イメージ」ということになります。

そして、共和党は絶対化された自由主義思想の体現者であるとともに、民主党であったとしても思想的なベースを変更することなくプラグマティックな対応を行う政党であることに変わりはありません。

多くの日本人は日本国と180度異なる発想で建国された米国という国家を理解することができていません。そして、近年では米国でも大学などで左派的な教育を受けた知識人はその国是を失いつつあるのかもしれません。

米国という国家への無理解の結果が「トランプは米国を破壊する」という不可思議な言説の氾濫に端的に現われていると思います。米国を破壊するのは「トランプ」ではなく「ヒラリー」と「サンダース」なのです。

米国に生まれた「貴族=ヒラリー」と「社会主義者=サンダース」という異分子

ヒラリー・クリントンはイェール大学のロースクールを修了した才女で政治的なキャリアの色が強い法律家として華々しいキャリアを誇っています。

彼女は夫であるビル・クリントン大統領の政治的な影響力を背景に医療保険改革問題特別専門委員会委員長に就任する前代未聞の猟官ぶりを発揮した上に、ホワイトハウスにはファーストレディーのオフィスだけでなく、大統領執務室があるウエストウイングにも特別にオフィスを構えていました。

そして、「ビラリー」(ビル+ヒラリー)または「共同大統領」と呼ばれるほどに権勢を振るい、その後もファーストレディーとしての経歴を利用して上院議員選挙に出馬・当選、大統領選挙予備選挙でオバマに敗れるまで、夫の名声を嵩にきてやりたい放題の振る舞いを繰り返してきています。

まさに、閨閥の威光を利用するエスタブリッシュメント(貴族)としての道を爆進してきた人であり、現在は米国初の「夫婦で大統領になる」という政治の私物化とも言えるようなプロジェクトに挑戦しています。ヒラリーは「大統領になって何がしたいか分からない」と批判されますが、彼女は貴族として立候補しているのだから大衆との約束が無くても当然でしょう。

一方のサンダースは、ポーランド系ユダヤ人で大学卒業後にイスラエルのキブツで過ごした後に格差の少ない社会が良いという思想に染まったバリバリの社会主義者で実兄ラリーがイギリスの緑の党の政治家という人物です。

若いころから米国で超少数勢力であった労働ユニオン党から連邦議員・州知事選挙に何度も立候補するも惨敗を繰り返し、無所属で出馬したバーリントン市長選挙で初勝利。その後、再び下院選挙に立候補するも落選、しかし不屈の闘志で再度立候補して下院議員になった筋金入りの社会主義者です。

おまけに、70年代・80年代に138回爆破テロを起こした、FALNというマルクス・レーニン主義のプエルトリコテロリストグループの主犯格の釈放をオバマに直訴したトンデモ・エピソードも保守派から指摘されています。

上記の経緯からサンダースは民主党に必ずしもシンパシーがあるわけではなく、米国の中では珍しいであろう極端に左派的な経歴を持った政治家だということが言えます。(無所属議員として民主党と院内会派を結成)

両者の特徴はビジネス経験は全く存在せずに政治を利用して台頭してきたキャリアの人物ということになります。つまり、ヒラリーもサンダースも米国の伝統である「絶対的な自由主義」という観点からは逸脱した存在なのです。

現在の状況は米国には建前上存在しないはずの「貴族」と「社会主義者」が現れて、民主党という政党を利用して「米国を乗っ取ろうとしている」状況だと言えるでしょう。

トランプ現象が起きた理由は「米国の伝統が脅かされた」ことに原因がある

一方の共和党側でも昨年段階ではブッシュ家というエスタブリッシュメントがクリントン家ばりに大統領職を私物化しようと画策している状況でした。しかし、結果は読者も知っているようにブッシュは惨敗し、エスタブリッシュメントの「アンチ・トランプ」キャンペーンは全く効果を発揮しませんでした。(ブッシュ以外の予備選挙候補者もフィオリーナを除いてビジネス経験がほぼ皆無の人々でした。)

筆者は昨年からトランプ氏の選挙キャンペーンの巧みさを指摘してきましたが、同時にトランプ現象については「米国の伝統」を背景とした米国人の根源的な危機意識の表れと捉えています。

トランプ現象の解説として一般的に述べられる「経済格差を背景とした白人下層の盛り上がり」という説明では説明不足なのです。なぜなら、経済格差の単純な是正を求める人々は、共和党ではなく民主党、そしてサンダース支持者になっているはずだからです。

ドナルド・トランプ氏は不動産ビジネスで財を成した人物であり、その人生についてもまるで映画のような浮き沈みを繰り返してきた人物です。ビジネスを通じたアメリカンドリームの体現者であり、まさに米国が絶対視してきた自由主義に基づく人生を送ってきました。彼は経済格差の是正と凡そ親和性があるような候補者ではありません。

そのトランプ氏がガサツに語る言葉や振る舞い、そして背景にある強いビジネスへの信望感こそが「米国が米国であること」そのものなのです。ヒラリーやサンダースらの「米国の伝統の破壊者」に対し、「米国の大衆が拒否意識を持った」ことによって生まれた存在が「トランプ」なのです。

ドナルド・トランプは「米国の破壊者ではなく救世主」である

したがって、現時点において、トランプは米国を破壊するどころか、米国の伝統を守る「救世主」である、ということができると思います。トランプの出現・台頭は現在の米国の政治シーンにおいては必然のことであり、米国を破壊しようとする人々に米国の本能が牙を剥いたものと理解するべきです。

米国の「絶対的な自由主義」は場合によっては独善的な思考を生み出すことにも繋がります。筆者はトランプ氏の選挙用のセンセーショナルな発言も「米国の伝統」に対して相容れない対象に対する根源的な反発を背景としたものであるように感じます。

米国は自由主義を国是とした生まれた国であり、封建制に虐げられてきたアジア人や欧州人には到底理解できないイデオロギーによって作られた国です。従来までの彼らなら特権階級の存在を受け入れることもなければ格差による絶望を受け入れることもないでしょう。

このような「米国の伝統」を理解せずにトランプ現象を語ることはそもそもできないのです。



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yuyawatase at 15:37|PermalinkComments(0)米国政治 

2016年05月14日

舛添知事の温泉旅行を合法にする方法

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東映アニメーションから引用

舛添知事の「家族との温泉旅行」を合法的な活動にする方法

「政治資金規正法」の目的は、「政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与すること」と定められています。しかし、実際のところ、「政治活動とは何か」ということ、については、何ら明らかにされているわけではなく、極めて恣意的な解釈が可能になっています。

今回の温泉問題は「家族との温泉旅行」を「会議費」としていたことが追及されていますが、実際のところ「会議費」の定義すら曖昧なわけですから、「殺ろうと思えば何でも殺れる」法律が政治資金規正法だということです。

たとえば、今回のケースで言えば記載内容を「親族懇談会」にすれば政治資金規正法上はOKなわけです。後援会の幹部などは家族や親族が務めているケースも多く、それらの人々と正月早々出かけた場合はどうなるのか?など、この法律の運用について議論することが不毛極まりないと思います。

「もう次の東京都知事は一休さんで良いよ」と思う記者会見

上記の通り、政治資金規正法とは「トンチ」のゲームみたいなものなので、「政治資金規正法」に強いことが東京都知事の条件になるなら「一休さん」を都知事にしたら良いと思います。

舛添知事の子どもとの温泉旅行は「自分は大臣経験者・現職東京都知事の貴族階級であるから、子どもに世襲させるために正月早々温泉で帝王学のレクチャーを行ったのである」的な話なら普通に政治活動になるわけです。道義上の責任はともかく、家族だけの旅行であったとしても十分に会議として成立しています

舛添知事の政治団体の政治活動なので、「何が政治活動なのか」を決める人物は舛添知事しかいないわけですから、世間に迎合せずに貴族として堂々と振舞えばそれで良かったわけです。下手にお茶の間について配慮するから「会議には家族と別の人もいた」みたいな言い訳になるのです。

政治資金規正法上の違法性の責任を問われるのか、それとも政治家としての道義上の責任を問われるのか、はともかく、一休さんなら政治資金規正法上の違法性の責任は確実に免れるでしょう。

政治資金規正法の「虚偽記載」という民主主義の自殺装置について

さて、上記の通り、政治資金規正法の「虚偽記載」の罪がくだらないものだと分かったと思います。

どれほど有力な政治家であったとしても、陸山会事件のように「ほぼ何もないところから罪を作る」ことを可能にする同罪は、まさに民主主義の自殺装置であると言えるでしょう。

なんせ政治家を葬りたいと思ったら、政治活動の解釈が問われる項目を見つけて難癖をつければ良いだけにですから簡単です。選挙という事前審査で敗北した陣営は当選した人物の政治資金報告書を調べ直すだけで選挙を無かったことにできるのです。

元々は今回のようにくだらないことに税金を使っていたら、何かの拍子で疑惑が発覚した場合、その政治団体に資金が集まらなくなるだけの話でした。舛添知事のようなケースは、本来であれば政治資金マーケットという市場が淘汰するべきものだと思います。

しかし、国民の血税である政党助成金が政治団体の運用に使用されていることで、本来の簡単な話の筋が違ってきてしまっています。要は本来は「恣意的にしか決めることができない」政治活動の定義に「社会的な制裁」を加えることができるようになっています。これは民主主義を継続するにあたって由々しき問題だと言えます。

「何が政治活動か」ということは定義がないため、今後も「虚偽記載が問題になる」事例が頻発するでしょうから、それによって民主主義は「小さな善意」の積み重ねで自殺していくことになるでしょう。

筆者は「政党助成金を廃止して」「ダメな政治家は」「政治資金マーケットで」「自然淘汰されるべき」だと思います。



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2016年05月12日

日本外交、大丈夫?高校生に揶揄される日本の有識者って・・・

トランプを外した人

トランプの支持率が急上昇中でヒラリーと接戦州(スイングステート)でほぼ互角に

米国大統領選挙、トランプ氏の支持率が急上昇してヒラリーに肉薄するようになってきました。筆者は昨年からトランプ氏の予備選挙勝利、その後の支持率の上昇を予測して記事にしてきました。そのため、トランプ氏の支持率上昇については驚いていませんが、その上昇ペースについては予測よりも早く始まったなと思っています。(下記拙稿の一部)

数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)
「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」(2016年5月10日)

接戦州のフロリダ、ペンシルヴァニアでは僅か1%差、オハイオではトランプが4%差で勝利しています。全国的な差もヒラリーが僅か6%リードしているに過ぎません。トランプ氏と共和党の連携が完全に出来上がっていない状態ですらこの状況です。以前から数字の上ではサンダースのほうがヒラリーよりもトランプに有利に戦える数字が出ており、サンダースが予備選挙から降りない強気の理由はこの数字にあるのでしょう。

トランプVS

テレビで的外れな解説を続けて「高校生に揶揄される米国通の有識者」って・・・

ところで、上記にも書きましたが、昨年からトランプ氏が予備選挙で勝つと言い続けてきた身としては、日本の外交力、そして有識者のレベルって本当に大丈夫なの?と思う次第です。

下記はテレビなどで大統領選挙の解説員として良く見かける慶應大学の中山俊宏教授です。外務省や内閣府の米国政治に関するレクチャーを務められている方でもあり、国内外の様々なシンポジウムで大統領選挙の見通しについて発表されてきました。

で、その中山氏が自分のTwitterで下記のようなコメント。そりゃ、あれだけいい加減な情報をお茶の間に流してれば高校生にも揶揄されるってものです。

トランプを外した人

筆者はこの方は好きではありません。なぜなら、米国の保守派の人々に対して十分な理解もなく無思慮な発言を繰り返しており、今回の大統領選挙も自分の偏見と思い込みで「国民に偏った情報ばかり」を伝えてきた人物だからです。(かなり前のことですが、筆者も茶会運動についてメディアで適当な発言をされて迷惑した思い出があります。)

そして、5月4日の毎日新聞の取材のレベルの低さに驚きました。この記事内容は完全にただの思い込みですよね。冒頭にも示した通り、トランプ氏の支持率も急上昇中だし、早々に共和党のエスタブリッシュメントらも妥協始めてますが・・・

16年大統領選 共和党内団結遠く 中山俊宏・慶応大総合政策学部教授(米国政治外交)の話

今回の大統領選挙でも「ブッシュ⇒マルコ・ルビオ⇒挙句の果てには、ケーシックに注目してました!⇒トランプ氏の敗北は確実とは言えない」など次々に変節。この期に及んで更に取材する「毎日新聞」の取材先を選ぶ能力を疑うレベルですね。

中山氏は共和党保守派最大の集会であるCPACには今年初参加(要は素人みたいなもの)だったという話。トランプが予備選挙の期間中に支持率1位を維持し続けていましたが、彼は何を見てたんでしょうか?

明確に申し上げますが、中山氏の大統領選挙に関する論説は米国のエスタブリッシュメントの噂話を代弁しているだけで分析と呼べるようなものではありません。自分は学会のヒエラルキーとか関係ないんで遠慮なく言わせてもらいます。

筆者は選挙は流動的なものだと思うので大統領選挙の予測が外れることは非難しません。しかし、定量的な裏付けがない無根拠な噂話を真実のようにメディアで語ることは論外だと思います。

日本政府とメディアは「数字で議論することができる解説員や説明者」を登用すべき

さて、政治や外交というものはブラックボックスに包まれているため、「いい加減な人々」が専門家然とすることができるものです。

しかし、解説員や説明者を務める方々は、社会科学を扱う人間の基礎的な素養として「公開されている数字や情報を分析できること」は最低条件と言えるでしょう。彼らが検証可能な情報に従って分析した結果が間違っていても構わないわけですが、社会科学的な検証不能なオカルト情報をメディアで垂れ流すことは慎んでいくべきでしょう。

現代社会では米国のメディア報道や統計情報についてネットでアクセスすることが可能であり、なおかつ米国の政治・行政にコネクションを持つ人物も大学関係者・政府関係者以外にも随分と増えてきました。そのため、従来のように「どうせ日本人には分かんねえだろ」的な解説は「嘘」だと一発でバレます。

今後、海外情勢に関する分析などは「米国政治」のような低い解像度ではなく、「米国共和党の選挙」「大統領選挙の世論調査」くらいの最低限のレベルまでは掘り下げた人々によって解説されるようになるべきです。

従来までのような「英語ができれば専門家」という時代は終わっており、今後は独自の専門性を持った人々による分析が行わていくことを期待します。





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2016年05月11日

何故、舛添要一は東京都知事として相応しくないのか

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舛添知事の豪遊批判、政府に渡した税金がまともに使われると思う方がおかしい

筆者は舛添知事を擁護するつもりも支持するつもりもありません。ただし、政治資金疑惑のスクープも「あっそう」ってレベルであり、都民の血税で豪華な外遊をしてきたことも「ふーん」ってぐらいにしか思いません。

税金を私物化することは古今東西の政治家の常であり、「政府に渡した税金がまともな使い方をされると思っている人」がお花畑だという認識です。それが嫌なら最初から「減税」することで、彼らに渡す金額を減らすしかありません。

東京都の予算は一般会計だけで7兆円、特別会計と公営企業会計まで入れると13.7兆円にもなり、「舛添の豪遊ごとき」の税金の無駄遣いは「山積」しています。たとえば、1000万円を適当にムダ金としてばらまいても「全予算の137万分の1」ということになります。こんなものを適切に使ってるかを把握できると思う方が非現実です。彼らにこのまま税金を渡し続けたら「海外」どころか「月面」に視察に出かけかねないですよ?

そのため、今回のように個別具体的な事業なんて気にしていたら「全ての個別事業を精査する度に東京都知事に辞任してもらう必要がある」と思います。都庁の事業で無駄が見つからない事業なんてものは皆無だからです。

一連の舛添問題は、舛添氏個人の問題ではなく、東京都知事の椅子を巡るパワーゲームが始まっていることを意味しているだけです。正直言って、誰が東京都知事になっても都庁の予算規模が変わらないなら「同じように無駄が繰り返させるだけ」です。都庁の利権を誰が手にするかなんて「くっだらねえ」話だなという感想しかありません。

舛添知事が辞めるべき理由は「東京都知事としてのプライドが無い」から

ということで、巨大利権の複合体を渡された舛添知事が税金をちょろっと私物化したくなるのも分からなくもないです。しかし、それでも筆者は「舛添要一は東京都知事に相応しくない」と思うわけです。

理由は簡単。「他の道府県知事に舐められる都知事はいらない」ということです。

舛添知事の海外での豪遊が批判されたとき、他の都道府県知事から「それはおかしい」みたいなコメントが沢山寄せられました。たしかに「舛添氏個人の行動」は問題ですが、他の都道府県知事が「自分の外遊規模を念頭に東京都知事をディスる」ことは更に論外です。

東京都以外の全道府県は「地方交付税の交付自治体」であり、なおかつ「国庫補助負担金にも財政依存」しています。要は東京からの財政移転で地方政府の運営は成り立っているのが現状です。

東京都民は地方への財政移転として地方交付税などで「一人頭毎月45482円、年間545,791円(平成25年度)を搾り取られて」います。この数字は国庫補助負担金による財政移転は含んでいないので更に数字は嵩むはずです。(東京都民に課される毎月45,482円「東京税」を知ってますか?

ところが、舛添知事はこのような状況にも関わらず、他道府県知事に批判されたことに対して都知事として毅然とした反論もせず、つまらない理屈を振り回して更に論敵を調子づかせただけでした。

「実質的に財政破綻している」知事が外遊に出かけることのほうが論外だ

舛添知事を批判する以前の問題として、東京からの財政移転で成り立つ道府県知事が「外遊」に出かけていること自体が元々おかしいのです。

「実質破綻した会社の社長が経費で海外旅行している」ことのほうが論外なんですよ。そんなムダ金があるなら「東京都に金を返せ」というのが東京都民としての率直な感想です。

「経済衰退」と「人口減少」を繰り返して予算が不足し続けている自治体運営しかできていない「他の道府県の知事」に文句を言われる筋合いなど1ミリもありません。

むしろ、地方交付税を貰う(≒単独では財政破綻している)自治体の首長は「給与」すら受け取るべきではないと思います。それが民間の当たり前の感覚です。どこの世界に現実的な再建予定も無い企業のトップに多額の報酬を払い続ける企業があるんですか?

東京都知事には「本件は都知事と都民の問題だ。地方交付税を受け取ってきた知事は自分の自治体運営を猛省してカップ麺でも食ってくらせ。」と言い放つくらいの人物がなるべきなのです。

筆者は石原都政は問題も多かったと思いますが、東京都知事として中央政府と他自治体に言うべきことを言ってきたと評価しています。

東京都の最重要課題は東京都外への巨額の財政流出のストップであり、中央政府や他道府県に対して強い態度を取れない都知事は百害あって一利ありません。したがって、舛添知事には辞めてもらって「東京都民の利益」を代弁できる人物に交代すべきだと思います。

東京一極集中が日本を救う (ディスカヴァー携書)
市川 宏雄
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015-10-22


本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

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2016年05月09日

「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」を提案します

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Twitterでタコスを食べながらヒスパニック大好きとコメントしたトランプ氏

「トランプ発言」から「外交的な意図を読み解く」不毛な作業をやめましょう

ドナルド・トランプ氏の発言は何かと物議を醸してきていますが、筆者は一貫して「トランプ氏の発言は選挙用」であり、その都度反応することの意味が無いことだと言及してきました。(下記は拙稿の一部)

何故、反イスラム発言でもトランプの支持率は落ちないのか(2015年12月11日)
「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由(2016年5月5日)

トランプ氏が予備選挙勝利のプロセスで他陣営の参謀をM&Aしながら中道寄りに発言を修正していく、ということも予測通りのことです。

共和党予備選挙という「限定された有権者の枠で争う選挙」では、リベラル寄りとみなされるトランプ氏が過激な発言を繰り返すことで保守派の一部から強固な支持を集めてきただけに過ぎません。そのプロセスの中で、ヒスパニックを中心とした不法移民、イスラム教徒、その他諸々色々な人々が彼の攻撃の対象となってきました。

トランプは滅多に「投票権を持つ有権者を傷つける発言」を行うことはありません。上記の批判の対象になった人々も「共和党予備選挙では絶対に投票しない人々」であることがポイントです。つまり、彼の発言は「その時に必要な有権者から支持を集めるためのもの」だと理解するべきです。

そのため、上記の記事でも書いたようにトランプ氏の発言は「大統領選挙本選用」に急速に中道旋回し始めている状況です。

トランプ氏、富裕層への増税を主張 「私は中間層寄り」(5月9日)

トランプ氏の「タコス&ヒスパニック大好き」というTwitter投稿のように、ヒスパニックについても「予備選では必要ない有権者」でしたが、彼らは大統領選挙本選において「フロリダ」「ニューメキシコ」「コロラド」「ネバダ」などの重要州での選挙に勝つために必要です。そこで、予備選挙も終わったのでヒスパニックに対して融和的なメッセージを出すことに切り替えたということでしょう。トランプ氏の同Twitter投稿は「10万いいね」がついているので炎上しながらもイメチェン中なのでしょうか?うーむ(笑)

以上のような視点に立てば、トランプ氏の外交面での発言も「大統領選挙に勝つための発言」としての文脈から読み解くことが重要であることが分かります。なぜなら、現在、彼は現役の大統領ではなく「選挙を戦う大統領候補者」だからです。

選挙を知らない米国通とされる有識者の皆さんにはトランプ氏を解説することは不可能であり、世の中にはどうでも良いトランプ外交論が溢れかえっている状況です。

なぜ、トランプは同盟国を軽視してロシアを重視する発言を行っているのか

トランプ氏は報道されている通り、同盟国の日本に対する駐留米軍などの大幅な負担増・関税の引き上げに言及する一方、ロシアなどの潜在的なライバル国に対して対話重視の姿勢を示しています。

これらの一連の発言はトランプ氏がタフネゴシエーターであることを国民に印象付けるためのものです。したがって、これらの発言にイチイチ右往左往する米国関連の有識者・ジャーナリスト・メディアのコメントを相手にする必要がありません。むしろ、それらの発言について外交的な意味合いで真面目に言及する人々は「米国政治」を分かっていない人々だと思います。

米国の大統領選挙に対して影響を与える国際政治のプレーヤーは「ロシア」です。ロシアの東欧や中東における一挙手一投足は米国の外交政策の成否に直結するものです。オバマ大統領はロシアのプーチン大統領に対して常に後手に回らされており、米国の威信は大いに傷つけられることになりました。

そして、大統領選挙直前に外交的アクションを起こして選挙へのインパクトを与えられる存在もロシアだけです。「ロシアが更なる軍事的威嚇を行うこと」または「ロシアがトランプと対話の準備があると発言する」だけでオバマ外交=民主党の外交は失敗だと言えます。トランプ氏にとって現在のロシアに対するスタンスは選挙上の得点はあっても失点が生じることはありません。

一方、日本を始めとする同盟国は「米国の軍事力を必要」としており、何を言われても「文句を言う程度」で大統領選挙に影響を与えるインパクトを与える行動を行うことはできません。したがって、トランプ氏にとっては日本や韓国のような同盟国は「ボコボコに叩いても良い対象」となり、現在のように言いたい放題の状況を許すことになってしまうのです。

当然ですが、日本人には「米国大統領選挙の投票権」はありませんし、在米日系人もまとまった投票行動が苦手(しかも民主党寄り)であるため、トランプ氏にとっては日本を叩いても選挙上のプラスはあってもマイナスはありません。したがって、誰もが印象として知っている「日本の輸出=自動車」批判というステレオタイプで話題作りをしています。(トランプ氏は馬鹿ではないので日本車の多くが現地生産であることくらい当然理解しているでしょう。本当に馬鹿なら共和党の予備選挙で勝利することはありません。)

トランプ氏が同盟国に対する日本への厳しい発言を続ける理由はそんなところでしょう。そのため、本来はトランプ氏の外交的な発言を分析対象として取り上げることが不毛だと思います。

なぜ、トランプ氏は「一度認めた日本の核容認」を撤回したのか

上記で概観した通り、トランプ氏の発言は全て大統領選挙に勝つためのものであり、外交に関する発言もその例外ではありません。むしろ、外交的発言だけを特例扱いする根拠は全くないものと思います。

トランプ氏は徹底した合理主義者であり、日本に対して「良好な発言を引き出そう」と思うならば、「日本が大統領選挙にインパクトを与える発言」をするしかないわけです。

筆者は日本外交のヒントになる2つの出来事があったことを指摘しておきます。1つ目は「タコス&ヒスパニック大好き」発言、2つ目は「日本の核武装を肯定した発言を修正したこと」です。

トランプ氏、日韓の核保有容認の可能性示唆 NATO批判強める(2016年3月28日)
トランプ氏“日本の核保有容認はうそだ”(2016年4月12日)

タコス&ヒスパニック大好き発言は大統領選挙本選に向けたトランプ氏のヒスパニックに対する対応変更から生まれたものです。では、なぜトランプ氏が「日本の核武装容認から否定へ」と意見が変わったのでしょう。

トランプ氏はニューヨークタイムズやワシントンポストが「嘘をついた」と述べましたが、発言修正の真意は違うのではないかと思います。真の理由は「日本側の核保有に対する反応が思ったよりも大きかった」と理解するべきです。

同発言を受けて日本が本気で核武装を行う方向に流れた場合、民主党の選挙戦略上でトランプ氏は「外交的に決定的な失敗を犯した」というレッテルを貼られることになるでしょう。そのため、同発言が外交問題に発展する可能性を未然に塞いだものと推測します。

そして、日本側からの反応(賛否も含めて)が大きかった同発言の火消しを図ったトランプ氏の姿にこそ「対トランプ」の有効な手段の手がかりを見出すことができるのです。

情けない日本の外交に「トランプに『梅干し』を食べさせる方法」を提案します

日本の政治家からは外交通とされる石破氏のように「日米安保条約」や「NPTの意義」の再確認を求めたるという何とも腰が砕けた意見しか出てきません。

上記の「核武装論の一瞬の盛り上がり」が一段落してしまったあと、トランプ氏にとって再び「殴りたい放題の日本」という位置づけにすっかり逆戻りしてしまいました。日本の政治家はトランプ氏に苦言を述べるなら「大統領選挙に影響を与える発言」でなければ何の意味もないことを理解していないと言えるでしょう。

筆者は日本の政治家の才覚では「トランプに梅干しを食べさせることすら」できないと思います。

日本の政治家がトランプの発言に対して本気で影響を与えるためには「日本は米国が安保条約の義務を果たさないなら、中国も含めた安全保障環境の見直しを行う可能性がある」と発言するくらいの大胆さが必要です。

民進党もせっかく日本共産党と選挙協力しているのだから、有力議員が訪米した際に「日本共産党とは連立を組みません」というポチぶりを発揮せず、「日本共産党の政権入りもあり得る」と本当のことを述べて米国側をビビらせたら良いのです。

それらが無理なら、上述の核武装論について議論を盛り上げていくだけでもトランプ氏の発言を修正していくことができるでしょう。

これらのアイディアは非現実&望ましいことではありませんが、日本の政治家から発言が実際に行われた場合は「トランプ外交の失敗」として「大統領選挙に影響を与えるインパクト」をもたらすことになります。

その結果として、日本との関係修復が選挙戦略上の必須事項になり、「トランプ氏は梅干しを食べながら日本大好きだ!」と発言してくれることが期待されるでしょう。

トランプ氏が日本を好き放題に叩きまくれる理由は「日本の政治家が舐められている」からであり、散々罵られても「日米安保条約を読んでください」という程度のポチのような発言しかできないことに原因があります。トランプ氏の発言は「日本の政治家が主体的な外交を行ってこなかった」ことの証左です。

つまり、「どうせ何を言っても、日本は米国にしっぽを振ってついてくるんだろ」と思われているのです。

「トランプ氏に梅干しを食べさせる」ためには「大統領選挙に影響が持てる国になる」ことが必要です。言いたい放題のトランプ氏を止めるためには、日本側もそれなりの実力を持って対応していくことが重要です。


スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


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2016年05月08日

「ヤンキーの虎」だけではなく「人類」が育つ環境が大事

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最近流行りの「ヤンキーの虎」論の限界を認識するべきだろう

地方の活性化に取り組んでいる人達の界隈で「ヤンキーの虎」というワードが流行りつつあります。

衰退する地方経済の中で残存者としての利益を得つつ、地元密着の様々な事業を経営して逞しく生きる人々。彼らはマイルドヤンキーの雇用主として扱われることで、都市部の有識者らから勝手に「ヤンキーの虎」という称号を得ることになりました。

中央政府、大学、大企業のような象牙の塔での政策論、要は綺麗な世界で生きてきた人たちにはヤンキーの虎はよほど新鮮な存在のように見えるのでしょう。今まで気が付かなくてごめんなさい的な話かなと。

しかし、地方の現場の人々と触れ合えば、以前から頼れる兄貴的な存在としてヤンキーの虎的な人たちがいることは常識で分かります。自分も散々泥臭いことをやってきたので、その中で出会う彼らの漢気は素晴らしいと感じています。

「ヤンキーの虎」は非常に実行力・行動力・決断力に富んでおり、目標を決めて物事を断行するだけの資金力も有しています。中央政府や地方政府の遅々とした動き、審議会などの非生産的な状況に飽き飽きした論客たちが「ヤンキーの虎」に飛びつく気持ちも分からなくもありません。

しかし、だからと言って、「ヤンキーの虎」によって地方が活性化するということは「木を見て森を見ず」の話であり、新たな地方活性化論のためのバラマキネタを霞が関に徒に与えるだけになると思います。

「ヤンキーの虎」は、補助金経済の二次受益者ではないか、ということ

「ヤンキーの虎」の定義にもよりますが、現在のオーソドックスなヤンキーの虎は「地方経済の小さなコングロマリット」のオーナーと位置付けられていると思います。居酒屋、パチンコ、携帯ショップ、ガソリンスタンド、介護施設、産廃、その他諸々の儲かりそうな業種を統合しているプレーヤーというイメージです。

しかし、ヤンキーの虎の事業ドメインは、地方経済の「内需」に属する分野であるため、実態としては補助金経済の二次受益者ではないかと思われます。地方の人口減少の影響を受け続けながら、先細りする都市部からの財政移転の残存利益を合理的に回収しているわけです。

つまり、彼らは社会のビジネスモデル自体を変革するような存在ではなく、あくまでも現実優先の経営判断力を持った存在と言えるでしょう。それは経営者個人の資質として見た場合は素晴らしいことですが、中長期的に地方経済の衰退を食い止める存在ではないと思います。

地方経済が成長していくためには、地域外でも通用する技術やビジネスモデルを持った企業が誕生し、それらの企業が経済全体の屋台骨になって発展していくことが望まれます。

ところが、「ヤンキーの虎」が持つコアコンピタンスは、それらの技術やビジネスモデルの革新を創造する方向とは正反対の力によって構成されているのです。

「虎を頂点とした弱肉強食」ではなく「雑多な環境による適者生存」こそが競争力の源泉になる

「ヤンキーの虎」のコアコンピタンスは、地域社会におけるソーシャルキャピタル、特に縦社会の序列を形成するリーダーシップにあります。このようなリーダーシップは「やるべきビジネスモデルが見えている」場合に最大の力を発揮することになります。

ヤンキーの虎が地域に生息している生物の行動を統率し、次々に新しいビジネスを立ち上げさせて雇用を継続・維持していくやり方は、従来型の地方産業のM&Aや東京からのビジネスモデルの輸入という文脈において圧倒的な強さを示すことでしょう。

ただし、筆者のように東京都心部でVCに投資されて創業されるベンチャー等と触れあっている身としては、上述のようなヤンキーの虎のスタイルでは、地方経済の新たな立役者となる存在は生まれてこない、と感じています。

東京都心部で生まれるベンチャー経営者は、人物に依るものの、表面的にはヤンキーの虎のような漢臭さや覇気を感じない場合も多く、むしろ生き物としての生存が危ぶまれるようなパーソナリティの方もいたりします。

しかし、これらのベンチャー経営者らのビジネスが成功した場合には、社会全体のビジネスモデルが変わるものが多数存在しています。東京という社会的序列がはっきりしない雑多な環境から生まれるベンチャーは、ビジネス環境という生態系自体を作り替える「人類」であると言えるでしょう。

そして、地方経済が中長期的に必要としている要素は、「ビジネス環境自体を変える」または「域外経済においても圧倒的な市場シェアを占める」強いビジネス、そしてそれを生み出す「人類」であることは明らかです。

飼育係に支配された日本国の檻から経済人を開放することこそが重要である

日本の課題は飼育係(霞が関)に支配された日本国から動物たちを開放することです。

日本国の飼育係である霞が関は自身が管理する動物園の中で繁殖していく種族を決定し、それ以外の種族が増えないようにする力を持っています。しかし、彼らは神様でもなんでもないわけですから、生態系が繁栄するための方法を知っているわけではありません。

現在、多くの地方社会は飼育係の支店(地方政府)によって管理されており、大多数の生物は彼らの監督の下で生きていくことが許されている状況となっています。それらの場所では標語としての適者生存・繁殖促進が謳われているだけであり、実際には全ての生物が絶滅(人口消滅)に向かうプログラムが実質的に実行されているわけです。

ヤンキーの虎のような経済的な生態系における新たな発見を喜ぶだけではなく、根本的に日本経済の環境を野性的な状況に戻して活力を取り戻していくことが必要です。多様な生物が氾濫する肥沃な大地を蘇らせることが求められており、既存の環境の中での生存状況を確認だけでは不十分です。

筆者は「ヤンキーの虎」という言葉が「霞が関用語に変換された」上に虎たちに改造手術が施すための訳が分からん予算がつけられて生態系全体のバランスが更に崩壊するのではないかと懸念しています。

中央も地方も経済については介入することなく自然の逞しさに任せておけば良いのです。そして、地方からもビジネス環境全体を変革するような人々が生まれてくることに期待したいと思います。

ヤンキーの虎
藤野 英人
東洋経済新報社
2016-04-15


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2016年05月07日

数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは

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トランプの予備選挙勝利を予測することができない理由は「数字」を見ないから

さて、筆者は前回の記事ではトランプ氏がヒラリーに勝てる定性的な根拠を示しました。

「トランプはヒラリー・クリントンに勝つ!」5つの理由

しかし、筆者が「トランプ勝つかもよ?」と述べても、メディアや知識人などの既存の権威を信じる頑迷な人たちはクリントン勝利を漠然と信じていることでしょう。

でも、よく考えてみてください。みなさんが信じているメディアや知識人はトランプの予備選挙勝利を何ら予測することができなかった人たちです。なぜ、彼らは「専門家」であるにも関わらず予測を外してしまったのでしょうか?

その理由は簡単です。なぜなら、彼ら自身が既存の思い込みから抜け出ることができず、数字的な根拠もなく思い込みを述べていたからに他ならないからです。昨年中のテレビの大統領選挙の解説などで「ブッシュが本命」って何度も聞きましたよね?今となっては公共の電波で根拠が何もない素人以下の見解が垂れ流されていたわけです。

また、大統領選挙について解説する有識者らのトランプ氏を批判することを目的とした「分析の体裁を取った罵倒」に何の意味があるのか、今でもさっぱり理解できません。そこにあるのは知性ではなく冷笑・嘲りなどの知的傲慢そのものだと思います。

そこで、今回はトランプ氏がヒラリーに勝てる根拠を数字で示していくことで、メディアと有識者の皆さんによる米国政治に対するミスリードから読者の皆さんの意識を修正していきます。

トランプがヒラリーに勝てることは数字で予測することができる

アメリカ大統領選挙では各州に割り当てられた選挙人団の過半数を獲得することで勝利することができます。全部で538人の選挙人団が存在しており、そのうち270人以上の選挙人団を確保すればゲーム終了ということになります。

前回のオバマVSロムニーの選挙人獲得数では、オバマ332名とロムニー206名ということで大差でロムニーが敗北しています。実際の得票数はオバマ・約6591万票VSロムニー・約6093万票なので得票割合は極めて競っていましたが、一部を除いて各州勝者総取り方式なので両者の獲得数に大きく差が出た形です。

ロムニーは共和党内では必ずしも良く思われていないモルモン教の信者であり、人気が特別高かったわけでもないので、今回の分析ではトランプ氏の最低獲得選挙人数を基礎票としてカウントするものとします。

ロムニーの選挙人獲得数は206名なので、トランプ氏の獲得選挙人数が過半数の270人に達するためにはトランプ氏は幾つの州で追加の勝利をする必要があるかを考えていきます。

まず、オバマに取られていた選挙区で共和党が取り戻す可能性が高い州は、

・オハイオ州(ケーシックの地盤)18人
・ウィンスコンシン州(スコットウォーカーの地盤)10人

だと推測されます。これで206+28人=234人です

ケーシック氏は大統領候補者になった場合ヒラリーに勝てるという世論調査結果があり、彼が副大統領または要職で迎え入れられた場合、同州での勝利は比較的手堅いものになるでしょう。ウィンスコンシン州は最近の大統領選挙では民主党支持層が厚い状況ですが、予備選挙にも出馬していたスコットウォーカー氏が州知事であり、なおかつ最近では上下両院選挙でも共和党が優勢な状況となっています。

続いて、他のスイングステート(共和・民主の勝敗が入れ替わる州)の状況を見ていきます。それらの州のうち、現在、共和党知事在職&勝率がそれなりに高い州は、

・フロリダ州29人(トランプ予備選圧勝
・ネバダ州6人(トランプ予備選圧勝)
・アイオワ州6人(トランプ僅差負)
・ニューメキシコ州5人(5月7日現在・予備選未実施)

ということになります。これらを合計すると46名になるため、この時点でトランプ氏の獲得選挙人数は280名に到達します。その上で、通常運転では民主党有利&共和党知事がいる下記の州で万が一勝利できた場合、

・ミシガン州16人
・ニュージャージー州14人
・メリーランド州10人
・メイン州4人
 
がトランプ氏の獲得選挙人数に加わることになります。これに加えて、民主党知事が存在する、ペンシルベニア州20名、コロラド州9名、ニューハンプシャー州4人などのスイングステートでの勝ち負けを考慮に入れるなら、トランプ氏が十分に大統領選挙に勝利する可能性があると言えるでしょう。

共和党が渋々トランプ氏名を認めた理由は「予備選挙参加者数の激増」にある

上記のように、大統領選挙のルールを概観した場合、トランプ氏が大統領選挙に勝利できる可能性が当たり前に存在することが理解できたと思います。その上で、読者の疑問はそれらの諸州でトランプ氏は勝利することができるのか?ということに尽きるでしょう。

その疑問に回答する数的根拠は「共和党予備選挙参加者数の激増」を取り上げたいと思います。

実は、2016年の共和党予備選挙は2012年時よりも圧倒的に多くの米国民が参加しています。2012年時の参加者総数は18,973,624名でしたが、今回は5月3日のインディアナ州での予備選挙が終わった段階で参加者総数26,639,737名に激増している状態となっています。理由は言うまでも無く、トランプ氏が新たな共和党支持者を発掘したからです。

上述の通り、米国大統領選挙に当選するための人数は6500~7000万人程度です。したがって、トランプ氏の加入によって共和党予備選挙参加者及び見込み残だけで約45~50%近い人々が今回の大統領選挙で共和党に一定のコミットを行ったことになります。

たとえば、スイングステートであるフロリダ州では、2016年の大統領選挙本選ではオバマ424万票、ロムニー416万票の僅差で共和党は敗北することになりました。

そして、今回のフロリダ州の共和党予備選挙では2012年・167万人から2016年・236万人まで増加しています。一方、民主党は2008年・175万人⇒2016年・171万人と予備選挙参加人数が減っている状況です。共和党は盛り上がっているけれども民主党はそんなでもない、ということを数字が語っています。

前回の大統領選挙本選でオバマ・ロムニーの差が約8万票しかなかったことを考えると、トランプ氏の加入による共和党予備選挙による支持者掘り起し効果が大統領選挙本選に与える影響の大きさが分かりますよね。

もちろんトランプ氏を毛嫌いする層からの得票が逃げ出すことも予想されますが、それを補って余りある数字をトランプ氏が叩き出している状況が現実なのです。

トランプ氏が負けるとする人々はトランプ加入による得票増よりも忌避票が多いと考えています。しかし、トランプ氏による得票増は数字で証明されていますが、トランプ氏に忌避票が実際にどの程度になるかは分からない状況があります。

共和党指導部は当然に上記の状況を理解しているため、トランプ氏を無下に共和党から追い出すこともでき無い状況です。上記の分析から、既存の共和党支持層が我慢してトランプ氏に投票することで共和党の勝利は極めて濃厚だということが言えるでしょう。

日本の米国政治に関する分析は「木を見て森を見ず」の典型だ

筆者はトランプ氏の発言などに一喜一憂するメディアや知識人の様子は、まさに「木を見て森を見ず」の典型みたいなものだと思っています。

米国要人の重要なコメントも価値の低いコメントもごちゃ混ぜ、なおかつ数字もろくに見ない米国通とされるコメンテーターに無根拠な見解を語らせるテレビや新聞の酷さは見るに耐えかねるものがあります。

冒頭にも申し上げた通り、予備選挙で「ブッシュが本命」という誤った無根拠な情報を述べていた人々は何の責任も取らず、いまだに米国政治の専門家然としています。一体何なんでしょうか。

少なくとも今回の大統領選挙がトランプVSヒラリーになった場合、トランプ氏が勝てる可能性は極めて高い、ということは数字で証明できることです。ヒラリー勝利の根拠として援用できる数字は、現在の全米支持率のマッチアップでヒラリーがトランプ氏よりも優位に立っていることのみだと思います。(それはそれで有力な証拠ではありますが。)

以上の通り、今回の記事では数字でトランプ氏がヒラリーに勝てる可能性は十分にあることを論証してきました。トランプ氏は既に共和党の指名候補になることが確定した状況においては、候補者個人のパーソナリティーはもちろん、共和党・民主党の党勢の推移についても注目していくべきでしょう。

スーパーパワー ―Gゼロ時代のアメリカの選択
イアン・ブレマー
日本経済新聞出版社
2015-12-19


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