2016年03月

2016年03月28日

民進党の成否を分ける「たった一つ」のポイント

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「何故、野党は分裂する理由」を克服できるか否か、ということ

自民党は滅多なことでは分裂しない、そして野党時代であったとしても自民党は分裂してきませんでした。翻って、民主党を中心とする現野党は与党・野党時代を問わず分裂を繰り返してきました。

そして、現在のところ、民進党は「分裂の原因」について全く考察することなく、むしろ「全く同一の失敗を繰り返している」といっても過言ではありません。

筆者は何も小難しい話をするつもりもありませんし、世間一般で当たり前に行われていることが行われていないので、野党は組織がバラバラになっていくのだと感じています。そして、特に今回の合併を主導する岡田代表は「根本的な分裂原因」をまったく意に介しておらず、民進党は長く持たないことは明らかだと思います。

「党内ガバナンスの欠落」こそが野党分裂の原因である

政党がバラバラになるとき、政策的な路線の違いであるとか、〇〇議員が嫌いとか、色々な分裂理由が述べられるものですが、実際のところ政党が分裂する理由はそのようなものではありません。

上記の程度のことが組織分裂の理由になるなら「自民党は一瞬で解党している」し、政党ではない「一般企業でも組織としての体を成すことは難しい」でしょう。

政党が無くなるor分裂する際、党内で起きている問題は「納得感が欠落した意思決定の常態化」です。つまり、組織として行動しているはずなのに、その組織の構成員として意思決定の一端に加わった納得感がない、という状況が生まれているのです。

自民党は政調部会によるボトムアップ型の意思決定が形式的に存在しています。国会議員は意思決定のプロセスを体験することができますし、自分の意見が反映されなくても部会で発言することで自己の立場を保つこともできます。自民党のシステムは物事が決まる瞬間のプロセスが明らかになっており、なおかつガス抜きを行うこともできる優れたシステムと言えるでしょう。

一方、野党側は「安倍政権を倒す」ということで一致しただけであり、合併決定・民共共闘などの重要な意思決定を行うに際し、所属国会議員や地方議員のボトムアップ型の承認プロセスを経たとは言い難いものがあります。(維新の党は形式上代表選を行って合併・解党を決めましたが、極めて外形的な話に過ぎなかったと思います。)

政党トップの意向で民進党(実質的に民主党)所属になった地方議員の方も多く存在しており、現在トップダウン型意思決定の成果は「政権を取るまで」or「参議院議員選挙まで」の時限的な野合としてしか持たないと思います。

野党だからこそ「意思決定プロセスが大事」だという認識の欠落

与党は最低限の意思決定プロセスが存在している場合、多少無茶なことがあったとしても簡単には分裂しないものです。前回の民主党政権は意思決定プロセスが極度に煩雑になりすぎたことで、些細なことの積み重ねが大きな軋轢として臨界点を超えて噴出したのではないかと推察します。

しかし、野党となると話は全く別物であり、党内の意思決定プロセス、つまり納得感を生み出す仕組みが無ければ長くはもたないことは言うまでもありません。党のトップが政権奪取の旗を掲げて政策を示して所属国会議員がお互いに我慢しながら選挙に取り組むことは、2009年に一回行った失敗の焼き直しでしかありません。まして、今回は民主党単独ではなく共産党までくっ付いているのだから目も当てられません。

自民党以外の政党で長く存続している政党は公明党や共産党などの組織政党しかありません。これらの政党は組織として成り立つための仕組みを有しており、構成員同士が多少いがみ合ったとしても全体としては納得感を醸成するシステムが存在していると言えるでしょう。

ここまで書くと何か凄い仕組みを作ることが必要という印象を与えるかもしれませんが、組織人として当たり前の仕組みづくりに取り組むことが必要だと述べているだけです。そして、それをやるなら選挙前ではなくて少なくとも1年前からスタートすべきだと思います。

ここまでの民進党の成立プロセスを見ていると、属人的な意思決定と選挙ファクターによって生まれた政党であり、数年以上あった猶予期間で民主党としても維新の党としても「正常な意思決定システム」を創る気が無かった人々の野合にしか見えません。選挙まで、政権奪取まで、個々の議員が我慢できれば良い、という問題ではありません。

民進党が生まれ変わるかどうかは、自党の中に「意思決定の仕組みが必要」という当たり前のことを考えて実行できる人がいるかどうかです。その点について注目してみていきたいと思います。


 

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yuyawatase at 17:58|PermalinkComments(0)国内政治 

2016年03月27日

トランプ外交で日米安保・TPPはどうなるのか?

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ドナルド・トランプ氏が大統領になる可能性が出てきた途端に・・・

筆者は昨年からドナルド・トランプ氏の共和党予備選挙優位を一貫して主張してきましたが、最近になってようやくトランプ大統領の可能性を認める日本人有識者の言説が出てくるようになりました。

しかし、大半の有識者は「トランプが大統領になる!」とは、コレッポチも想定していなかった人ばかりであり、極めてその場しのぎのいい加減な論考が目立っています。特に、日米関係についての外交方針に関するものなど、トランプ氏の発言に振り回されているだけでモンロー主義がどうのこうの、という解説しか世の中にはないわけです。

そこで、本稿では、ドナルド・トランプ氏が大統領になった場合の東アジア・東南アジア政策についての分析を行ってみたいと思います。在日米軍が撤退するとか、TPPから撤退するとか、などのトランプ氏の発言の真意に迫りたいと思います。

ジャパン・ハンドラーズとドナルド・トランプ氏の関係について

米国側には知日派という対日政策の専門家(ジャパン・ハンドラーズ)が存在しています。日本のニュースなどでも時折目にすることがあるリチャード・アーミテージ氏やマイケル・グリーン氏などがその代表的なメンバーです。

日本の親米派の国会議員が渡米する際には、これらのジャパン・ハンドラーズに詣でることが通例です。(私が以前に米国を訪れた際もたまたま渡米中の国会議員たちがジャパン・ハンドラーズの私邸で飯を食べに行ってました。)これらのネットワークは日本の与野党を超えて存在しており、親米派の国会議員とはジャパンハンドラーズと仲が良い国会議員であると言い換えても良いでしょう。

実は、このジャパン・ハンドラーズは対トランプ氏についての立場を鮮明にしていません。トランプ氏の外交・安保姿勢を外交安全保障の専門家が連名で批判したことは有名ですが、その中に上記のジャパン・ハンドラーズは名前を連ねることがありませんでした。(最終的には外部圧力によって同連名に加わる可能性もありますが・・・)

つまり、ジャパン・ハンドラーズはトランプ大統領誕生に備えて政権でのポスト獲得のために態度を保留している、またはトランプ氏に対日政策について進言するチャンスを待っていると言えるでしょう。

日米安保とTPPは「偉大な米国」(ただし、非覇権国)にとって都合が悪い政策

トランプ氏は「交渉の達人」と呼ばれています。その観点から見ると、ドナルド・トランプ氏からは日米同盟とTPPは極めて不合理な条約として目に映ることでしょう。なぜなら、これらの条約は米国の最大の切り札である軍事的なコミットメントを明示的・暗黙的に行うものだからです。

東アジアからの米国への民間投資額の大半及び米国債の購入の約35%は日本によるものであり、新たに構築されるTPPは成長著しいアジア太平洋地域の果実を日米で分け合うことを合意するものです。そして、これらの果実を得ることの前提として、米国は同地域に軍事的なコミットメントを行っている状況があります。

特にオバマ大統領はTPPの安全保障上の重要性について、昨年ホワイトハウスにキッシンジャーなどの国務長官経験者、元安全保障担当補佐官経験者、米軍トップなどを招集して大いに語ったと言われています。つまり、TPPは単なる経済条約ではなく安全保障のための側面を強く持った条約なのです。

しかし、本来、米国にとっては虎の子の軍事的なコミットメントをさせられることは極めて不本意なはずです。なぜなら、米国が一定の権益を持つことで軍事的コミットメントを実質的に保証した場合、東アジア・東南アジア諸国は「米国が離反する可能性を気にせず、競争相手である中国との関係を深めることができる」からです。

現在、日本は米国の軍事的なコミットメントにフリーライドする形で、中国からの軍事的・政治的な圧力を撥ね退けつつ、自らの経済的な利益を追求することができています。TPPはその領域をアジア太平洋全域に実質的に拡大するものと言えるでしょう。

世界中で最大限の影響力を維持しようという覇権国であれば上記の政策は価値があるものと思われます。しかし、トランプ氏が目指そうとしている「偉大な米国」は明らかに従来までの覇権国とは異なるものです。

米国にとって東アジア・東南アジアの優先順位は極めて低く、同地域の国々に軍事的にフリーライドされ続けることはコストばかりで益が無いと判断するのも論理的な判断と言えるでしょう。

米国からの武器購入圧力が高まることが予想される日本の脆弱な立場

上記のような状況の中で、トランプ大統領の下で日本に求めることは「米国製兵器の大量購入」ということになるかと思います。

現在の安倍政権下でも円安にも関わらず高価な米国製兵器を購入するカモそのものですが、トランプ政権下では安全保障面でのコミットメントの対価として従来以上に商売のターゲットになることは間違いないでしょう。そして、対日政策の担当者は引き続きジャパン・ハンドラーズが踏襲するということになります。

そもそもジャパン・ハンドラーズと呼ばれている人々は、米国にとっては数ある外交相手国の一つの担当者に過ぎず、最近の米国政権の中で主導的な立場にあるとは思えません。日本から見た場合の交渉窓口がそこしかなかったので、外交力が欠落した日本の官僚・国会議員が日参しているに過ぎないのです。

そのため、トランプ大統領の下で、ジャパン・ハンドラーズが対中政策を含めた東アジア政策などを実行できるわけもなく、日米間に横たわれる従来の利権の拡充に力を入れるのが関の山ではないかと思います。

むしろ、個人的にはジャパン・ハンドラーズには米国内でもう少し力を持ってほしいと思いますが、日本自体の経済力・影響力が急速に凋落していく現状では難しいことなのかもしれません。

したがって、日米安保は現状の延長線上となることが予測されます。

そして、トランプ大統領の下で日米同盟は維持するけれども、基地のための費用だけでなく軍事的・非軍事的な高額商品・サービスを米国側から購入させられることになるでしょう。さらに、ディールが不調に終われば何時でも中国カードで揺さぶりをかけられるようになる可能性すら考慮すべきだと思います。

TPPについては米国の国内批准がうまくいかない可能性も・・・

そもそもTPPとは民主党のオバマ政権下のレガシーに過ぎず、オバマ政権のアジア回帰を象徴する政策として位置付けられてきたものです。トランプ大統領がTPPにこだわる政治的な理由は特に無いため、今までの経緯を無視すればTPPから米国が抜ける可能性すらあります。

TPPは日米安保と違って現状を変更する条約です。何事でも現状を変更することにはエネルギーが必要です。日本国内でもTPPに対する反対運動が存在しているように、米国にもTPPに対する反対運動が存在しています。両国の中に渦巻く利権構造が現状変更を阻止する方向で働き続けているのです。そして、政治的な力学としては何もしない方が楽なのです。

そして、上記の通り、安全保障としての側面を持つTPPは既に戦争で疲弊した米国にとっては看過しがたい負担となることは明白です。アジア回帰を訴えてきたオバマ政権がその実ほとんどアジア太平洋地域にはコミットできなかったことからも、米国の軍事的な限界が如実に表れていると言えるでしょう。

その上で、トランプ氏はTPPから脱退するとは口にしていませんが、TPPについては激しく交渉内容について批判を行っています。トランプ氏の政治的な発言は「有権者ではない人々(≒自分に投票しない層)を攻撃する」ことに特徴があり、TPP参加国の国民は有権者ではないのでトランプ政権下での政権運営上は無視できます。

TPPは今年2月に参加国による署名式が行われましたが、米国内において実質的な国内批准の議会審議が始まる時期は来年の新大統領就任後となるでしょう。2016年段階でもTPPに関する影響評価などが公開されることになるため、同条約に関する議論は続くことになると思いますが、その重要性に鑑みてレームダック化するオバマ大統領の任期中に国内批准が決まるとは考え難いです。

したがって、同条約は日米のどちらかが脱落すると実質的に発効ができない内容であるため、TPPについては破棄される可能性が相当程度あると看做すべきです。

日本外交は「カモ」から「白鳥」になることができるのか?

ここまで長い文章を読んで頂いた方々は、トランプ大統領と対峙した場合、従来までの日米関係の思考の延長線上では「カモ」になることがお分かり頂けたと思います。

従来まで日本をカモにし続けてきた人々(ジャパン・ハンドラーズ)が今まで以上にカモりに来るのがトランプ政権であり、ジャパン・ハンドラーズに頭が上がらない既存の親米派国会議員に対米外交を任せていると、一気に身ぐるみ剥がされて太平洋を漂流する島国になる姿が目に浮かびます。

そして、アジア太平洋地域における日米共同権益のシンボルであるTPPが危機に瀕することで、日本は中国・米国について戦前のように政治的に挟まれた状況に回帰することになるでしょう。

TPPとは満鉄の共同経営を日米で行うことを持ちかけたハリマン提案のようなものであり、同提案を断った後の日本が戦前に辿った運命は皆さんご承知の通りだと思います。万が一TPPから米国が抜けてしまった場合、中長期的にアジア太平洋地域の安全保障バランスの不安定化は避けられないものになるでしょう。

日本人は従来までの対米外交チャネル以外の交渉チャネルを持ち、日米中の衝突の危機が高まる中で本気で生き残るための道を模索する段階がきています。外国に金をばら撒き続けて人気取りを行う呑気な外交をやっている場合ではないのです。

日本人の政治的な知力が問われる正念場であり、カモが白鳥になれるかどうか、もしくは、カモが丸焼きになるかどうか、がかかっています。トランプ大統領とは「日本人の実力」が問われる大統領なのです。

ドナルド・トランプ 300の言葉
ドナルド・トランプ
2016-03-08







本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。 


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yuyawatase at 15:24|PermalinkComments(0)米国政治 | 国内政治

2016年03月22日

公正取引委員会が「保育園」制度の閉鎖性に激おこ状態だった件

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公正取引委員会が「保育園」に関する制度の閉鎖性に激おこ状態だった件

(平成26年6月25日)保育分野に関する調査報告書について

という保育園の閉鎖性について問題点を指摘する報告書が提出されています。簡単に中身を要約すると、

「既存の社会福祉法人らが行政と癒着して株式会社の参入ができない仕組みを作っているので、本来供給されるべき株式会社による子育てサービスが供給されてない」

ということです。つまるところ、保育園業界の腐敗について堂々と指摘したものということが言えるでしょう。公正取引委員会もなかなかの男っぷりを発揮しています。

上記の平成26年の公正取引委員会の指摘を受けて、平成27年4月1日から規制緩和で株式会社立の保育園を原則自治体は受け入れざるを得なくなったものの、目に見える制度的な障壁、目に見えない非制度的な障壁が株式会社立の保育園によるサービスの供給量を鈍らせている状況です。

株式会社立の保育園は2015年4月以来順調に増えていますが、従来までは待機児童問題が散々叫ばれる中で株式会社の参入を拒む自治体と保育園がそれらの子育てサービスを必要とする家庭を自分たちの利権のために見殺しにしてきたとも言えるかもしれません。

経営的な体力がある株式会社が参入しやすい体制を整備が必要

そもそも現状の社会福祉法人主体の保育サービスの提供は、中小・零細事業者中心の保育園運営または何らか他の福祉系事業の付帯としての事業運営を前提としています。

したがって、十分に体力がある事業者が新規にガンガン参入して子育てサービスを提供するような環境がありません。また、一般的な中小・零細事業者と同じように社員に十分な給与を払ったり、将来に渡るキャリアパスを示しづらい環境があります。

このような状況は一定規模のスケールメリットを見込んだ株式会社が参入することによって、本来は改善されていくことが想定されますが、現状では上述の公正取引委員会が指摘した「癒着」による制度の不均衡によって、株式会社と社会福祉法人の競争条件に著しく差が存在しています。(社会福祉法人には原則非課税・設置補助金有など)

保育士の待遇・キャリアパス改善は保育チェーンが参入して雇用・キャリアの目途がつけられるような事業者がいて初めて成り立つものであり、保育園経営者らは保育士の待遇改善を真に願うなら株式会社の新規参入を認めることを積極的に推進するべきでしょう。

市場の力を生かした保育環境の改善を積極的に進めていくべきだ

福祉の話になると、何でもかんでも補助金増やせ、給与増やせ、という議論になりがちですが、それは大前提として「まともな競争環境」があることが重要です。

公正取引委員会に指摘されている点などについて、株式会社と社会福祉法人の間のイコールフッティングなどの条件面の整備をしっかりと改善に取り組んだ上で、保育園サービスの在り方についての議論が行われることを望みます。




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yuyawatase at 09:53|PermalinkComments(0)国内政治 | 社会問題

2016年03月21日

子ども一人・年間で約500万の税金がかかる保育園運営の実態

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都心で保育園に0歳児を預けると「年間・一人で500万円弱」の税金がかかる

保育園落ちた日本死ね、というブログを発端として様々な議論が巻き起こっています。筆者は保育園に子どもを預けるために必要な税金を計算することが議論の前提として必要と感じています。

一つ事例を挙げると、新宿区で公立保育園に0歳児を1か月間預けた場合、月額で約40万円・年額で500万円弱の経費がかかるものと推計されます。私立保育園の場合、0歳児の保育には約31万5千円、年額約375万の経費がかかっていることになります。(公立は事業費・人件費を受け入れ児童数で年齢別に割付(人件費は年齢別配置基準から按分)、私立は事業費中の年齢別給付反映・その他費用は児童数で割付をして推計、*平成26年度決算)

ざっくりとした推計結果として、新宿区で0~1歳児童を保育園に預けると約700万円の税金がかかることになります。0~5歳までの全ての期間を保育園に預けた場合、子ども一人に投入される税金は1300万円ということになります。本来はこれらの数字に区職員の保育部門の人件費を加えるために、更に多くの人件費が費やされることになるでしょう。

家庭で子どもを育てることの経済的価値を評価する社会を作っていくべきだ

国税庁が昨年度発表した民間給与所得実態調査によると、日本人の平均年収は414万円です。東京都内であればもう少し年収が高いことを想定しても、0歳児を保育園に預けた場合の税コストが非常に大きいことが分かります。

したがって、従来までの日本では家庭内で子育てを行ってきたことで、政府が子育てサービス提供に必要とする社会的なコストを著しく軽減してきたことが分かります。そのため、ケースバイケースの部分もありますが、各家庭が保育園に子どもを預けて働きに出ることは社会的コストの観点から常に肯定されるわけではありません。

子育てを各家庭から国営化(公立保育園)・半国営化(私立保育園)に移行させた場合に発生する社会的コストを意識し、家庭内での子育てをレスペクトした上でコストを抑える工夫を行うことが大事ではないかと思います。

保育園に「入れる・入れない」という不平等こそが是正されるべき社会的な課題

現在起きている問題をもう少し別の見方で捉えると、個別の家庭が保育園に預けることで得られる金銭的な便益が大きすぎるため、財政難の日本の状況では保育園のパンク状態が発生しているということができます。

コストを忘れて思考停止したまま、保育園の増設を訴え続けてみたり、保育士の給与を引き上げるように求める人が多いことも事実です。世代間格差の是正を求めることは大事ではありますが、人口推移や投票率の観点から若い世代への支出拡大を闇雲に訴えても勝ち目は少ない上に、高齢世代のタックスイーターと同じ穴のムジナみたいなことを述べることも気が進みません。

むしろ、私たちの世代が考えるべきことは、まずは若い年代の中での平等というポイントです。上記の通り、都心の地方自治体では保育園に入れたか否かで、税金から受けられる便益が6年間で約1300万円も変わります。1300万円という数字は庶民にとっては一財産であり、それらの便益を受け取る人々に対して受け取れない人が怨嗟の念を持つことは当然です。「日本死ね」と毒づきたくなる気分も分かります。

そこで、必要なことは、保育園経営者・保育士という子育てサービスの供給主体への補助金ではなく、子どもを持つ家庭への子育てクーポン(ヴァウチャー)への切り替えだと思います。同制度を導入することで全ての子どもを持つ家庭が等しくサービスを受け取ることで、若い世代内での子育てサービスに対する公正さが担保されることになるでしょう。

まして、最近でも保育園の道義的に不適切な支出問題などがニュースになったばかりです。税金で運営される施設というものがブラックボックス的な経営になるのは保育園であったとしても何ら変わりありません。保育園への補助金を保育クーポン制度に変更することで、家庭に支出先の選択権が移ることで非効率な経営を行っている保育園があるならば淘汰されていくことになり、子どものために良質な保育サービスを提供している保育園が増えていくことになります。

むしろ、「保育園」ではない「ソリューション」を創ることに知恵を注ぐべきだ

むしろ、高度経済成長期の残滓のような保育園というソリューションの限界性について社会的に議論がされていくべきではないでしょうか。一部には田中角栄内閣の人材確保法などを引き合いに出す向きもあるみたいですが、保育園という仕組み自体の問題にそろそろ本格的に向き合うべきです。

現代の日本において政府が供給しているサービスはあらゆる分野で制度疲労を起こしており、子育てサービスであったとしても根本からあり方を見直すべきときが来ていると思います。

たとえば、米国では下記のようなベビーシッターのマッチングアプリの企業が資金調達を行って保育サービスのマッチングを行っています。

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このようなマッチングサービスが普及することによって、保育園経営者などによる中間費用を削減し、サービス利用者が保育士(ベビーシッター)にダイレクトに対価を渡せる環境を整えることが大事です。

保育サービス利用者及び保育士が両者の都合が良いときにマッチングが行われることによって、利便性の高い保育サービスが提供されることになるとともに保育士の苛酷な労務環境も改善されることになります。この仕組みであれば現在休職中の保育士の有効活用を行うこともできるようになるでしょう。

徒に保育園増加や保育士給与アップを訴える行為は、子育てサービスの消費者ニーズに即した環境づくりを阻害する可能性もあり、供給者都合の主張ということも言えるかもしれません。

保育園や保育士給与を増額して問題対処しようという政治家は、会社経営で言えば巨額のコストに見合わない投資を推進するダメ経営者です。むしろ、費用対効果を明示して、情報技術を利用可能にする規制改革を行い、事業者に新事業の創設を働きかけ、新しい日本の子育て・働き方を提起する人物が現代日本の政治家に相応しいでしょう。
 
健全なコスト感覚と新しい発想を持ったオピニオンリーダーが登場する子で、政治の場に20世紀の発想・ソリューション以外の選択肢が国民に提示されていくことを期待しています。



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yuyawatase at 20:21|PermalinkComments(0)国内政治 | 社会問題

2016年03月10日

トランプ台頭と格差問題を結びつける言論は大間違いだ

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ドナルド・トランプの台頭を「格差問題」と結びつけて語る言論誘導に辟易する

トランプ氏の政治的台頭を格差と結びつけて語る識者が多すぎて辟易します。既存の識者の単純な左翼志向で米国政治、特に共和党予備選挙を考察することは全くの間違いだと言えるでしょう。

共和党の根底には自由主義が根付いており、結果の平等を問題とする「格差問題」が大きなムーブメントを引き起こすわけがありません。むしろ、共和党員は「機会の平等」に重きを置く人々であり、競争を始める最初の前提がおかしい場合、それを正そうとする傾向がある人々です。

共和党の候補者が誰か一人でも格差を問題にしたでしょうか?そのようなことは無いと思います。したがって、白人ブルカラー層が経済格差を問題としてトランプ氏を支持しているなど、左翼識者やジャーナリストらの妄想空間の中だけの話です。せいぜい共和党員が叩くことは「縁故資本主義」によって政治が作り出す経済格差(機会の平等への侵害)であり、結果の平等を求めるなら共和党員ではなく民主党支持者になっています。

したがって、「政治問題を見つけると格差問題に誘導する」マルクス思想を21世紀に垂れ流し続けるのはやめてほしいものです。

現在、共和党予備選挙で問われていることは「不法移民」に対する政治姿勢である

トランプ氏の発言は、原則的に選挙に勝つために非常に合理的に設計されていますが、そのメッセージには一貫性が存在しています。それは「国境」に関する機会の平等を求める「不法移民」に対する強硬姿勢です。

トランプ氏が「メキシコとの間に壁を築く」と主張して世間を驚かせましたが、共和党員の多くは不法移民について厳しい考え方を持っています。国籍取得に対して厳しい条件を課す米国に「不法な形」で入国して居座り続ける不法移民は「機会の平等」を侵害する存在です。一方、トランプ氏を含めた共和党員は「正式な移民」については積極的に受け入れる姿勢を崩していないことから、単純な排外主義者ではないことは明らかです。

正式な手続きを踏んで移民資格を取った人々にとっては不法移民とはルール違反の存在です。日本のように地続きの隣国が存在しない場所ではピンとこない問題かもしれませんが、それらのルール違反を黙認するか否かということが「共和党予備選挙」にとっては重要な争点となっています。

更に言うと、同じヒスパニックであったとしても共産政権から逃れてきたキューバ系は生活のために入国してきたメキシコ系よりも共和党支持者が多い傾向があります。ヒスパニック内でも自由や平等の考え方が出自によって異なるということが言えるでしょう。

したがって、仮に白人ブルカラー層がトランプ氏を支持していたとしても、それは格差問題というよりも「不法移民」というルール違反で自分たちの仕事を取ろうとしている存在への怒りと理解するべきだと思います。

「小さな政府」「社会的保守」「不法移民」の3軸を問われる共和党の候補者たち

共和党予備選挙では、マルコ・ルビオ氏が非常に苦しい立場に追い込まれており、15日のフロリダ州予備選挙で敗北することがあれば撤退を余儀なくされるものと想定されています。

マルコ・ルビオ氏は元々保守強硬派によって選出された連邦議員ですが、移民問題で不法移民に柔軟な姿勢を示したことから「Gang of Eight」と呼ばれて保守派から激しい批判にさらされた結果、保守派から穏健派に鞍替えした経緯があります。

そのため、共和党員が候補者に求める3つの条件である「小さな政府」「社会的保守」「不法移民」の3要件のうち、「不法移民」に対しての対応が甘くなり、それが支持の大幅な低下を生み出している状況となっています。

一方、保守派のテッド・クルーズ氏は上記の3条件を満たしているため、安定的な強さを誇る状況となりつつあります。トランプ氏と比べてクルーズ氏の売りは「小さな政府」「社会的保守」の2点であり、伝統的な保守主義運動層からの支持は圧倒的に高い傾向があります。

つまり、「小さな政府」「社会的保守」ならクルーズ氏、「不法移民」ならトランプ氏、という形でマーケティングが分かれた結果、3要件の全てに中途半端な対応を示しているマルコ・ルビオ氏がマーケティング上の敗北を帰したということが言えるでしょう。

トランプとサンダースは全く別物であり、両者を同一視して語ることは不可能である

巷ではトランプ氏とサンダース氏を同一視して白人下層階級の怒りとして表現する俗論があります。しかし、マルクス思想に染まった頭を捨てて、トランプ氏とサンダース氏の両者の人生は180%真逆であるとともに、支持者層も全く異なるという当たり前の話を直視するべきだと思います。

トランプ氏はNYでも移民が約半数のクイーンズ生まれのガサツな坊ちゃんであり、不動産業という切ったはったの世界で生きてきた人物です。そして、不動産ビジネスでMBAを取得したエリートであり、巨万の富を築いた立志伝中の人物です。メキシコ系やイスラム教徒からの反発は強いかもしれませんが、その他の人種からはそれほど反発が強いようには感じません。

一方、サンダース氏はブルックリン生まれのユダヤ人で白人の学校に通い、その後白人でほぼ人口が占められているバーモント州で議員をやってきた人物です。そのため、白人層以外との交流が薄いため、黒人票の取り合いなどでヒラリーに圧倒的に敗北している状況です。ヒラリーと比べてサンダース氏は白人の危機意識を代表している存在と言えるでしょう。

また、トランプ氏の支持者は全年代に満遍なく存在していますが、サンダース氏の支持者は若者に完全に偏っています。このことからトランプ氏の問題提起は全年代に幅広く浸透するものであり、サンダース氏の問題提起は若者の学生運動のノリだということ言えるでしょう。

つまり、トランプ氏とサンダース氏を同一視する人は、あまりにも解像度が低すぎる顕微鏡で見ているから、全然違うものが同じものに見えているに過ぎません。犬と猫が四足歩行の哺乳類だからといって同じものとして分類するくらい無理があります。

少なくとも米国共和党を「格差問題」から語るということは滅茶苦茶な論説であると理解すべき

米国共和党が持っているイデオロギーは、半社会主義経済に染まった日本人には極めて理解しにくいものであり、分からないものを無理やり自分が知っているツールで切ろうとすることは慎むべきでしょう。

たしかに、米国でもメディアにおいて格差の文脈からトランプ現象を語るメディアはあります。

しかし、それは「メディアが左派だから」です。そして、共和党とは「左派のメディアと戦ってきた政党である」という基本的な理解がなければ、それらの言説をそのまま受け取ってしまうのも無理はありません。特に日本の米国識者はメディアや大学の英語情報をそのまま翻訳してきただけの人達なので、共和党の説明をマルクスが行っているような滑稽な光景が繰り返されているのです。

ということで、馬鹿の一つ覚えのように「全ての事象を格差問題と結びつける」ことは止めるべきです。そして、日本国内でも同じことが言えるのではないかと思う今日この頃です。




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yuyawatase at 20:23|PermalinkComments(0)米国政治 

2016年03月09日

クルーズVSトランプ、「レーガンの遺産」というキーワード

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共和党予備選挙は、クルーズVSトランプという「次代」を争う対決に

共和党の大統領選挙予備選挙では、クルーズVSトランプ、という対決の構造になりつつあります。

フロリダ州でマルコ・ルビオ氏が苦戦しており、あわや撤退かという自体に陥っていることから、上記2人に勝負が絞り込まれそうな状況です。むしろ、ケーシック氏はオハイオ州でトランプ氏と競っており、場合によってはケーシックが残ってルビオ撤退という可能性すら存在しています。

CPACのSTRAWPOLLにおいてもクルーズ大統領・ルビオ副大統領という保守派の意向が強く表明されており、マルコ・ルビオ氏が撤退表明することは時間の問題となったと言えるかもしれません。

筆者はマルコ・ルビオ氏がトランプ氏に最終的に挑戦する候補者になるかと想定していたため、クルーズ氏が大きく代議員獲得数を得ていることはかなり意外な印象を受けています。しかし、個人的にはテッド・クルーズ氏に最もシンパシーを持っているために喜ばしい出来事だと考えております。

キーワードは「レーガンの遺産」を継承するか否かということ

クルーズVSトランプという構図になった場合、予備選挙で問われることは「レーガンの遺産」について評価ということになります。

従来までの米国共和党における予備選挙は、穏健な中道路線を掲げる共和党主流派と「レーガンの遺産」を尊重する急進的な保守派の対立構造によって行われてきました。そして、1990年代から連邦議会においては保守派が圧倒的な影響力を持ち、大統領選挙では両派閥による激しい対決構造が表面化してきました。

「レーガンの遺産」とは小さな政府を始めとした保守派が掲げる政治理念のことであり、米国保守派の会合では金科玉条のごとく繰り返されるものです。それだけ彼らにとってはレーガン大統領という存在が残した功績は大きなものであったということができるでしょう。

保守派は主流派をRINO(Republican In Name Only:名ばかり共和党員)として批判し、主流派は保守派を過激な政治思想を表現する活動家グループとみなしてお互いに対立を続けてきました。

一方、トランプ氏は共和党主流派からも怨嗟の対象として強烈な批判を受けている状況にあるとともに、「レーガンの遺産」を気にかけない態度を取り続けています。トランプ氏は共和党保守派の人々と会話すると必ず触れるゴールドウォーターやレーガンの価値観についてほとんど触れることがありません。

マルコ・ルビオ氏が撤退した場合、主流派VS保守派、という一つの時代が終わり、予備選挙の構造には、保守派VSアウトサイダー、という歴史的な変化がもたらされることになります。従来までは主流派を攻め立てる立場にあった保守派がトランプ的なアウトサイダーからの攻撃にさらされる逆転の構造が生まれているのです。

これこそが現在の共和党で起きている政治構造の地殻変動の正体であり、本人たちが自覚的か否かに伴わず、共和党の時代が次の段階に進もうとしているということが言えるでしょう。

トランプ旋風の後に残る政治的な要素とは一体何なのか?

筆者はトランプ氏を非常に理知的で合理的な人物であると看做しており、彼を危険視したり馬鹿にしたりする風潮とは一線を画しています。むしろ、彼はレーガンの遺産を継承しない新しい共和党員の代表であり、かつ選挙戦においては極めて合理的な戦略を実行しています。

たとえ、トランプ氏が予備選挙・本選挙で勝たなかったとしても、トランプ氏によって掘り起こされた政治的な層は何らかの形で米国社会に残ることになるでしょう。つまり、トランプ氏という強烈なキャラクターを持った人物がいなかったとしても、誰か他の人物がその受け皿になっていたことは間違いないのであり、「レーガンの遺産」VS「トランプ的な何か」の対立こそが共和党の新しい政治テーマになるのかもしれません。

そのため、トランプ氏をトランプ氏個人の現象として捉えるのではなく、新しく巻き起こりつつある政治的な潮流として再認識する必要があるものと思われます。





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yuyawatase at 03:53|PermalinkComments(0)米国政治 

2016年03月05日

トランプのCPACドタキャンで予備選挙の流れが変わるだろう

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(CPAC主催団体のマット・シュラップACU会長)

トランプ・CPACドタキャンという前代未聞の選挙戦術を実行、結果は如何に・・・

全米から保守派運動家が集まるCPACをトランプ氏がまさかのドタキャン。そもそも4日の参加予定を5日早朝に変更した上に、何もかもすべてをドタキャンした状況です。大統領予備選挙に与えるCPACのインパクトは絶大であり、全ての大統領予備選候補者が出席することは通例となってきました。(ちなみに、昨年はトランプ氏も参加して演説しています。)

先日、CPACへの出席をマルコ・ルビオ氏が渋ってきた結果、予備選挙候補者が一人だけ別日程という形になっていたものの、トランプ氏の場合は4日の出席をキャンセルして5日に変更、しかしCPAC開催中の4日になって5日の予定をドタキャン、という形なので失礼にもほどがある感じです。

とはいうものの、トランプ氏が「あえて他の人物が全員出席する場所をドタキャンして格の違いを見せる」のは、アイオワ州党員集会直前の討論会をボイコットした時にもあるので、これがトランプ氏ならではの話題作りの戦術だと思われるため、欠席は残念であるものの、CPACの現地でトランプ戦術を体感したこと個人的な意味は大きかったように思います。私が以前から指摘している通り、トランプ氏は予備選挙のライバルを片付けた後のヒラリー対策に既に移っているということも言えます。

トランプ・CPACドタキャンが与える政治的な影響は計り知れないものになるだろう

今年のCPACには延べ1万人程度の熱心な保守派運動員が参加費3万円以上支払って参加しており、旅費なども含めると10万円以上かかって参加している人も珍しくありません。しかも、彼らの多くは共和党の地域における選挙運動の足腰を支える役割を果たしています。

CPACでの出席をアナウンスして全米から共和党支持者を集めながら、それをドタキャンした悪印象は相当なものだと推測されます。実際、テッド・クルーズの演説で「トランプは逃げた!」というようなニュアンスで話が展開されると会場では大盛り上がりという状況になりました。

従来までトランプ氏は、共和党の他候補者やおおよそ共和党に投票しない層を叩くことで、共和党支持者の約30%にコアなファン層を形成する戦略を取ってきました。しかし、今回は初めて明確な共和党支持者層に対して悪印象を与えたものと思います。彼らにお金を払わせた上に出演をスポイルしたわけですから、その影響は今までの発言による反響とは違うものになるでしょう。

共和党執行部とトランプ氏の激しい対立は報道されているところですが、共和党保守派についてはトランプ氏への意見は割れた状態であったように思います。トランプ氏はリベラルであるとみなされているため、当初から保守派のイデオロギーが強い層からは敬遠されてきました。しかし、既存政治へのアウトサイダーという位置づけから一部の保守派から人気があることも事実です。今回はその両者の有権者層に対して好ましくない印象を与えたことは確かでしょう。

米国の保守派の人々は誠実な人が多いため、トランプ氏にメンツを潰された形になったことは個人的に残念ではあるものの、彼らが今度の大統領選挙で更に本腰を入れるきっかけになったものと思います。最終日の模擬投票の結果で誰が勝利するのか、各候補者間でどの程度の差がつくのか、非常に楽しみな状況となってきました。




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yuyawatase at 20:57|PermalinkComments(0)米国政治 

2016年03月04日

CPACに起きた「ある異変」が予備選全体に影響を与えるか?

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 共和党保守派の最大の集会であるCPACにスポンサーサイドとして参加しています。共和党大統領予備選挙候補者や保守系団体の幹部の方にお会いしましたが、その話はCPACの実況とともに後々触れていくとして、今回は予備選挙全体にインパクトを与える「ある日付」の話をお伝えしていきます。

CPACの要素として最も重要な大統領選挙の模擬投票

全米から保守派の中心人物が集まるCPACではSTRAWポールという大統領選挙の模擬投票が行われています。この投票は保守派が総体として誰を推しているのかを明らかにするためのものであり、共和党大統領選挙の結果に大きな影響を与えます。(写真は参加者が投票を機械で行っているところ)

2012年は穏健派と見られてきたロムニーが保守PRを繰り広げたことから辛うじて保守派のサントラムにSTRAWPOLLで勝利して、その後の大統領予備選挙の動向に決定的なインパクトを与えました。スーパーチューズデーの結果、3つ巴状態が色濃くなった共和党予備選挙ですが、今回のCPACでは保守派のクルーズ氏に対して、トランプ氏・ルビオ氏が逆転またはどこまで迫れるのかが予備選挙の帰趨を占う上で重要な指標となっています。

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(4日はトランプ、ケーシック、クルーズ、カーソンら予備選候補者の演説日程目白押し)

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(5日の予備選候補者の演説日程ははルビオのみ)

CPACの明暗を分ける4日・5日という演説日程の区分けとは

CPAC自体が本格的に開催されている期間は3月3日~5日であり、この間に各予備選挙候補者はメイン会場で演説を行って、その内容が評価される形で参加者が次々と模擬投票を行っていきます。

演説日程が参加者が最も集まる中日の午後早い時間が有利な時間設定だと思われます。なぜなら、多くの参加者の投票は最終日に至るまで決定しているからです。今回は一人の候補者を除いてほぼ全候補者の演説日程が4日となり、残りの1名の演説日程が最終5日となりました。

一人5日という不利なスケジュール設定をされた人物はトランプ氏ではなくルビオ氏です。ルビオ氏はCPACへの参加を最後まで渋っていたため、CPAC主催団体であるACUと険悪な関係になった結果、大統領候補者の演説が集中(参加者も多い)する4日ではなく、5日の午前の遅い時間が割り振られる状況となっています。

ルビオ氏は保守派への接近を懸念したことから、共和党の予備選挙で決定的なインパクトを与えるCPACへの参加を渋り続けてきました。その結果として、ルビオ氏とACUの関係は表立って報道されるほどにまで悪化しています。

トランプ氏・クルーズ氏との保守派からの得票競争を考えると、ルビオ陣営は共和党エスタブリッシュメント側の顔色を窺い過ぎて戦略上の致命的なミスを犯しました。今回の予備選挙ではエンドースの獲得という戦術面で主流派は功を奏していますが、選挙全体の構図のデザイン力でトランプ・保守派に劣っていると言えるでしょう。

その結果として、ルビオ氏はクルーズ氏を突き放すとともにトランプ氏と互角の戦いになるための重要な機会であるCPACにおける勝利の可能性を実質的に失った状況となっています。

テッド・クルーズに神風が吹いている状況となった予備選挙

3月4日未明現在、クルーズ陣営にとってルビオ陣営の失敗はまさに神風のような追い風となって機能するでしょう。ライバルであるルビオ陣営が自滅して保守派からの支持を失っていく中で、スーパーチューズデーに集中した保守的傾向がある州での勝利と合わせてトランプ氏に対抗できる唯一の候補者のイメージを形成していくことができるからです。

予備選挙で爆走状態を続けるトランプ氏を抑えるためには、共和党内でトランプ氏に対抗する候補者を絞りこむことが必要です。今後は北部のリベラルな州での予備選挙も増加していくことから、対抗馬として最も有力な候補者はルビオ氏と目されてきました。しかし、ルビオ陣営の致命的なミス、もっと言えば「エスタブリッシュメントの優柔不断さ」が露呈した結果、クルーズ氏がルビオ氏を差し切って2着の地位を維持する(つまり、トランプ氏への本命対抗馬としての地位を維持する)ことができるようになりそうです。

今回の予備選挙は「米国政治への怒り」がテーマとされていますが、それ以上に「エスタブリッシュメントの優柔不断さ」というテーマこそが隠れテーマだと感じています。この優柔不断さの間隙を突いて、トランプ氏・クルーズ氏が台頭した状況が生まれているのです。トランプ現象のみを切り取って「怒り」と表現する既存メディアの米国政治関連の報道には飽き飽きします。ジェブ・ブッシュの不発など、全てはエスタブリッシュメントの選挙戦略上のミスによって今回の大接戦が生まれているからです。

トランプではなく米国政治を根本から変える人物は「クルーズ」だ

日本の報道ではトランプ氏の勝利が米国政治を一変させるというものが多いのですが、筆者としてはトランプ・ルビオ・クルーズの3氏の中で米国政治を一変させる可能性が高い人物はクルーズ氏であると確信しています。トランプ氏が政治を変えるという言論を垂れ流している人は、米国政治について良く知らない人か、米国政治を知った上で虚偽を述べている人でしょう。

米国の政治の左右の振れ幅を左から整理すると、サンダース、ヒラリー、トランプ、ルビオ、クルーズという順番であり、実は3氏の中でトランプ氏は限りなく民主党に近い経済政策や社会政策を持っています。そのため、見方によってはトランプ氏は共和党の中では比較的大規模な政策変更を米国に与える可能性が低い候補者であると評価することもできます。

しかし、クルーズ氏は筋金入りの保守派であり、小さな政府の理念を徹底的に追求することは間違いなく、最も大規模な政策変更を実行していくことになるでしょう。そして、そのような大規模な政府機構の改革は世界各国の政治の在り方にもインパクトを与えて、世界の姿を変える一つの軸が提示されることになります。

したがって、米国における既得権層が最大に恐れている人物はトランプ氏ではなくクルーズ氏なのです。CPACにおける演説日程はルビオ氏の苦戦を深刻化させることになり、トランプ氏への対抗軸として機能できるかどうかを左右する重要な要素となるでしょう。まさに政治の要諦は「日程」にこそがあるということは、日本だけでなく米国でも共通の事項なのだなと痛感させられる出来事でした。

*という状況だと思ったら、まさかのトランプ・ドタキャン。元々4日から直前に5日変更依頼し、その上ドタキャンというのは流石に保守派も怒るんじゃないかなと。





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yuyawatase at 15:32|PermalinkComments(0)米国政治