2015年12月

2015年12月31日

2016年に起きる世界的なリスクの可能性を展望する

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2015年も大晦日を迎えたため、2016年の世界情勢について展望して新年に突入したいと思います。特に来年に危機が高まるであろう国際政治の要素を10個ほどまとめてみました。

<東アジア・東南アジア>

(1)中台関係の悪化

来年1月の台湾の総統選挙において、与党・国民党の朱立倫氏、野党・民進党の蔡英文女史の争いは後者の勝利となり、焦点は民進党の立法委員選挙での過半数確保に移っています。馬英九政権がシンガポールで行った中台の首脳の接触など中国傾斜を深める中で、今年夏に訪米した際に穏健化を主張した台独派民進党の蔡英文女史の支持が広がった形です。

民進党政権でも中国との関係が急速に悪化するということは無いと思いますが、米国の東アジアの安全保障の専門家の中には中国の南シナ海への進出は偽装であり、本丸は台湾海峡にあるという意見も根強く存在しています。そして、実際に中国にとっての真剣な脅威は民主主義・台湾であり、軍事大国化した中国の核心的な利益に触れる問題は台湾海峡によって発生する可能性が高いものと思います。

(2)北朝鮮の政治混乱

米国世論調査でも北朝鮮問題は中東のISの次に来るほどの危機として認識されており、日本人にとっては常態化した北朝鮮の異常な行動も世界から見ると深刻な脅威として認識され続けています。日韓の慰安婦問題についての「最終的かつ不可逆的な合意」も米国が北朝鮮情勢について深刻な懸念を持っていることの裏返しであり、2016年党大会における新方針など同国の動きは注目し続ける必要があります。

特に同国内における中国の経済的な影響力が強まる反面、同国に対する北朝鮮の国粋派による反感が強まって大国による制御不能な状況に陥ることが懸念されます。金正日体制からの体制移行後による粛清の嵐によって政権内の一体感が弱まっていることも政治混乱の引き金になる可能性があります。

(3)日本の対中包囲政策

安倍政権誕生以来、日本はセキュリティーダイヤモンド構想などの対中包囲網を敷く外交方針を継続してきました。その結果として、米国には米国議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題の妥協、インドやオーストラリアとの軍事交流強化、南シナ海問題でのASEAN各国との連携強化、中央アジア・東南アジアへの大型の円借款、ロシアへの北方領土問題のアプローチなどが進んでいます。

その結果として、安倍政権は対中政策について強いポジションを持てる国際環境が形成されつつあり、日中両国の間で何らかの小規模な紛争が発生する可能性が増しています。日本にとって外交安全保障関係が強化されることは望ましいことですが、それによるリスクも同時に高まっていることも認識されるべきです。

(4)中国経済の国際化に伴う懸念

IMFのSDRに元が採用されたことなど、中国経済の規模拡大に合わせて国際化は急速に進みつつあります。しかし、中国の国内経済は新常態と呼ばれる中成長状況に減速し、シャドーバンキングなどによる不良債権問題は依然として片付いておらず、中国経済に致命傷を与える問題は臭いものに蓋をしたままです。

中国経済が国際化することは、昨年のバブル崩壊時に見せたような証券市場への強権的な対応などに対し、国際的なルールに従うことを求める圧力がかかることになり、政治力による金融・資本市場への統制に綻びが生じる可能性があります。経済混乱の結果として、中国の政治体制への影響や日本経済への影響も懸念されます。

<中東・中央アジア>

(5)ISの世界的な拡散に伴う危機

米国におけるホームグロウン・テロのようにSNSネットワークを通じた個人のテロリスト化はISの世界的な拡散の一つの事例となりました。また、IS占領地に存在していた大量の白紙のパスポート及びパスポート製造機によって世界中へのテロリストへの自由な移動を確保する実態が生まれています。ISの機関紙を見る限りでは日本への関心も高まっており、伊勢志摩のサミットなども厳重な警戒が求められます。

従来までは水際対策を講じられてきたテロリストへの対策が事実上不可能になる中で、各国政府は国内のリアル・ネット上のセキュリティーの強化を行う必要に迫られています。しかし、それは同時に欧米先進国で守られている人々の自由に対する侵害行為であり、自由を基調とする欧米先進国にとって社会的な自由が後退することはそれ自体が敗北であるというジレンマが生じています。

(6)サウジアラビア危機と中東の動乱化

原油価格の低下によってスンニ派の盟主であるサウジアラビアの政治経済体制に綻びが生じつつあります。王政の代替わりによって発生した権力の集中問題も問題を複雑化させています。特にサウジアラビアの東部では民主化圧力も高まりつつあり、政治体制の安定性に懸念が生じています。

また、イエメン隣接地域における反政府勢力との戦闘における敗北など、王政に忠誠を誓う軍隊の脆弱さが露呈しており、ISやアルカイダがイエメンで勢力を拡大し、中東全体ではイランが主導権を握らんとまい進する中で、サウジアラビアの安全保障面・治安面での危機が強まりつつあります。しかも、原油価格低下と終わりなきイエメンでの戦争により、サウジの16年度予算は10.5兆円の赤字となり、補助金見直しや付加価値税導入を検討する有様です。

バラマキ政策が限界をむかえつつあり、隣国との戦争が泥沼化し、国民と王族内の不満が高まりつつあるサウジアラビア。この国が混乱に陥った場合、中東地域は収拾不能な動乱に陥ることになります。そして、それは我が国が石油の三割を輸入している国を喪うと言う事を意味しているのです。

(7)中央アジアのIS化の可能性
 
タジキスタンの行方不明になっていた治安警察のテロ担当司令官がISの一員として同国大統領に宣戦布告のメッセージを伝えるなど、中東地域での激しい戦闘から逃れたIS勢力が中央アジアで新たな勢力を築く可能性が出てきています。

また、ISは9月に中国人の誘拐・殺害を行った上で、新疆ウイグル自治区に戦闘員を帰還させて蜂起を促すなど、同地域の不安定化に力を注いでいます。中国側が同自治区への弾圧を強化するほどIS側は勢いづくことは間違いなくイタチごっこの状況です。

中央アジアの不安定化に対応するため、対テロ戦争に中国が本格的に関与することが求められるようになり、国際政治の基本的な構図に変化を及ぼす可能性があります。

<欧米>

 (8)米国の指導力の低下

2016年は米国大統領選挙の年であり、レイムダック化したオバマ大統領の外交指導力が低下するため、大規模な国際環境への変化への米国の対応力が低下します。米国は既に世界の警察官としての役割を放棄し、世界中で頻発する問題に選択的介入を行う十分な能力を持っていない状況です。

米国大統領選挙は内向き志向を強める候補者らと対外関与の必要性を訴える候補者の路線闘争の状況を呈してきておりますが、オバマ大統領ではなくとも今後の指導力の低下は避けられないものと思われます。米国の同盟国は自国の外交・安全保障の在り方について再検討を行う必要性が生じています。

(9)欧州分裂・移民問題の危機 
 
人道上・経済上の問題から継続・拡大されてきた移民問題が深刻化しています。特にフランスの同時多発テロやシリア難民の増加は各国の右派政党の台頭に繋がっており排外主義の台頭が起きています。また、イギリスがEU離脱の国民投票を行う旨を発表するなど、EUの屋台骨自体が危機にさらされつつあります。

欧州は充実した社会保障制度を持っているために、自国民への社会保障を維持するために新たに受け入れる移民への反感が強まっているという、ケイジアン的な発想による新しい排外主義の形が出現しています。EU分裂や移民問題の危機は、政治経済体制の新しいパラダイムを見出す上で注目に値します。

(10)サイバー空間における攻撃の深刻化
 
サイバー空間における米中の摩擦が深刻化しており、実質的な紛争状態になりつつあります。特に、米国共和党は中国からのサイバー攻撃に非常に大きな懸念を示しており、共和党が大統領選挙に勝利することになれば同問題は大きな外交テーマとして取り上げられていくことになるでしょう。

また、日本はアノニマスによって厚生労働省や首相HPがダウンさせられるなど、サイバーセキュリティー環境が極めて脆弱であり、来年の伊勢志摩サミットに際して何らかのサイバーセキュリティー上の問題が発生する可能性が高く、セキュリティー体制の早急な強化が必要です。今後は、大規模な国際会議などの開催国の要件としてサイバーセキュリティーへの対応力などが一層求められることになるでしょう。





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東京都が自立した都市国家を目指すべき理由

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2015年も年末なので東京の経済的な戦闘力についてまとめてみました。このように考えてみると、東京及び首都圏は一国並みの力があるため、日本政府からの政治的・経済的な自立を果たしていくことは自然なことだと思います。(統計データは主に「東京の産業と雇用就業2015」から引用)

一国に匹敵する人口規模・経済規模を有する巨大都市

東京の人口は約1320万人であり、首都圏まで入れると約3600万人の世界最大の都市圏です。巨大な人口と事業所の集中からもたらされる経済活動の厚みが東京経済の最大の特徴と言えます。

GDPについてもメキシコ、トルコ、韓国などに並ぶ水準であり、一人当たりGDPも国内の他都市を大きく引き離した水準に到達しています。日本全体の一人当たりGDPはOECD参加34か国中20位ですが、東京単独の一人当たりGDPであればルクセンブルク、ノルウェー、スイスに続いて34か国中上位4位にランクします。東京に関しては日本全体という括りから分けて考えることが妥当です。

東京には日本の金融機能・情報通信機能が集中しており経済をけん引しています。金融機能については日本の預金33.1%、貸出金41.8、手形交換高71.7%が集中し、世界最大規模の証券取引所も存在しています。また、情報通信業の32.4%が集積し、同産業の付加価値額54.9%が産み出されています。

近年は情報通信業の専門分化が進むとともにライフサイエンスなどへの投資額が増加しており、日本50%以上も集中する弁理士などを活用して国際特許数も増加し続けるなど、膨大な知的付加価値が産み出され続けています。

つまり、日本の中長期的な経済的な競争力を生み出す機能は東京にほぼ大半が存在しているのです。巨大な国土を持つ先進国は、比較的経済の中心となる地域が分散している傾向がありますが、日本は東京都という先端地域で資源が集中して運用されています。

成熟した金融基盤をベンチャー投資に振り向けて産業構造の転換を

VCに関しては圧倒的なプレゼンスを持つ米国以外としては純金額ベースでは一定額が行われています。しかし、対GDP比などの観点から考えると投資額が圧倒的に不足している状況です。強みである情報通信業の集積はあるものの、それらは受託事業を中心としたビジネスが多く、新たな市場を形成する自社コンテンツへのクリエイティブな投資が十分ではありません。

従って、上記の問題を解決し、東京都が持つ潜在力を最大限に解き放つことが重要です。具体的には、東京都への全国一律の規制適用などを廃止し、新事業が創造しやすい環境を積極的に構築していくことは必須です。その上で、時代の変化に対応してリスクが取れる若手世代への投資の促進が行われることが望ましく、東京都独自のエンジェル税制などの税制優遇策を設けることが望まれます。規制緩和や減税などのやらなければならないことが山積みです。

日本の他地域と東京は金融産業・情報通信産業の集積力がまるで異なるため、日本全体の産業構造を変えていくような事業は東京からしかほぼ生まれてこないと言っても過言ではありません。世界を相手にビジネスをやるなら日本国内では東京を選択することは必然です。

そのため、東京都は単なる地方自治体ではなく、新規事業の創出に関する様々な障壁を取り除き、中央政府に対する防波堤として、新産業を創造する積極的な政策提言や中央省庁の新事業への干渉の排除に死力を尽くすことが望まれます。

毎年7兆円以上が東京都から流出するという「金の卵」を割る政策を停止せよ

最後に、東京都は地方への巨額の財政移転という足枷を背負った状況にあります。たとえば、東京よりも人口規模が少ないスウェーデンは高福祉または中福祉国の見本とされることが多いと思いますが、それはスウェーデンが独立した国家であり、EUの他地域への強制的な財政移転が限定的なものに留まっているから実現されているものです。(スウェーデンはODA・約6000億円、EU拠出金・約5000億円が域外への資金流出です。)

東京都は毎年の15兆円以上の地方交付税の相当分を負担していますが、地方交付税総額の根拠となる基準財政需要額は合理性を偽装したバラマキに過ぎません。その上、人口等の財政需要を計る指標に上限が設けられるなど、都は需要の不合理な割落としを受けています。つまり、地方交付税とは東京からお金をむしり取ることを見かけ上合理化した制度に過ぎず、東京都民はそもそも算出根拠すら疑わしい請求書に黙って盲目的に資金拠出を行わされ続けているのです。

さらに、本来は東京都に入るはずの地方税についても不当な扱いを受けています。法人事業税に地方法人特別税という不公平な税制度が導入されて東京都に入るはずの税収のうち平成20年から毎年2000億円前後、累計1兆2300億円、地方交付税の交付財源原資化によって900億円が不当に召し上げられている状況です。そして、平成28年からは毎年3800億円が中央政府に奪われていく見込みであり、消費税10%になると没収額が5000億円以上となる可能性があります。

また、近年では都内から企業を流出させるために、各種地方への優遇税制(東京23区から地方に移転した場合の追加税制優遇など)が創設されており、東京都を衰退させるべく東京からの企業流出を仕掛ける中央政府によって狙い撃ちにされている状況です。

オリンピック予算が2兆円程度の増額云々という話がありましたが、上記の東京都への異常な迫害ともいえる不当な扱いを止めれば簡単に資金捻出が可能なのです。

東京都を都市国家として「日本から自立した存在」に昇華させる段階に来ている

上記のように、「東京」に敵対的な日本の中央政府による税を通じた不当な収奪によって、東京都は「金の卵」としての高い潜在力を生かし切れていない状況になっています。

仮に、東京都が日本の中央政府から経済的・政治的自由度を手に入れることができれば、経済成長と高福祉を両立した高度な能力を有する都市国家に生まれ変わることは明らかです。

毎年10兆円以上の財源(つまり、ほぼ都庁一個分の運営費)が東京都民の手に戻ってきた場合、現在でも世界最高水準の都市インフラを更に拡充し、都内企業及び都民への大幅な減税政策を実行することで経済成長を実現していくことができます。所得は大幅に増加して豊かな生活ができる、世界に冠たる都市・東京が創生されます。

そして、日本全体では巨額の積み立て不足で破綻必死の公的年金や医療制度などの社会保障制度も、東京都に限定すれば維持していくことが可能です。また、都市からの福祉財源の流出によって疎外された、若い都市部住民にも不妊治療や保育環境などの子どもを持つことの権利が守られる環境が作られます。

東京都は実質的な税負担に対する十分な議席数を国政において与えられていません。そのため、国政の場において上記のような極めて不当な扱いを受けています。まさに「代表無くして課税なし」の原則に照らし合わせれば、「代表少なくして搾取あり」の状況に置かれています。

従って、東京都が日本から自立していくことは自然な流れであり、東京都民は自らの置かれた不当な立場への怒りを形にして表明するべきです。私は「東京都」が日本から自立した都市国家になっていくことは、東京都民の当たり前の権利であると考えます。

リー・クアンユー、未来への提言
ハン・フッククワン
日本経済新聞出版社
2014-01-24



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yuyawatase at 00:50|PermalinkComments(0)国内政治 | 東京独立

2015年12月29日

なぜ、新党大地は野党統一候補に協力しないのか?

鈴木宗男
Wikipediaより引用

北海道新聞が報道した安倍首相と新党大地・鈴木宗男氏の会談の意図

新党大地・鈴木代表、首相と意見交換 来年の選挙に向け(北海道新聞)という地味なニュースが報道されました。しかし、これは今後の政局だけでなく、日本の針路を決める決定的な会合の一つになるものと思います。報道内容は下記の通り。

「安倍晋三首相は28日、首相官邸で新党大地の鈴木宗男代表と約40分間会談し、来年4月の衆院道5区(札幌市厚別区、石狩管内)補欠選挙や来夏の参院選などについて意見交換した。関係者によると、首相は鈴木氏に「北海道では大地が影響力を持っている。鈴木氏はキーマンだ」と述べ、大地の動向を注視していく考えを示した。」

「これに対し鈴木氏は、共産党が加わる野党統一候補の擁立は支持しない考えを伝えた。日ロ関係やシリア情勢でも議論した。鈴木氏は会談後、記者団に「来年は参院選の年でもあり、首相は自身の考えを披露された。私は聞き役だった」と述べた。」

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

北海道衆議院小選挙第5区における新党大地の集票力は約24,000票と推定されます。この数字は新党大地が2013年参議院議員選挙で同選挙区から比例票を獲得した票を基に算出しています。

直近の小選挙区選挙の結果は、

町村信孝 (自由民主党)131,394票、勝部賢志(民主党)94,975票、鈴木龍次(日本共産党)31,523票であり、単純な票の出方で考えると、野党連合候補者にとっては新党大地24,000票は勝敗を左右するレベルのものだと言えるでしょう。

実際には与党側は町村氏が娘婿への代替わり、野党側は共産党との協力の是非という難しい問題を孕んでいるため、上記の数字の通りの結果にはならないでしょうが、それにしても新党大地の力は無視できないものでしょう。

北海道衆議院小選挙第5区、新党大地の得票力は勝敗を左右する影響力あり

ところで、野党連合候補者が来年予定されている補欠選挙で、反安保というピンとがずれた選挙争点を掲げることが予想されるため、安倍政権側にとっては新党大地が野党連合候補者に協力しないことは、最後の詰めの一手に過ぎないものと思います。また、従来までの新党大地の動向に鑑みるに、安倍政権と協力する理由も特に見当たりません。

新党大地に対して提示した安倍政権の真の狙いは北方領土問題の解決ということになるでしょう。それに伴い北海道経済は対ロ関係で大きなメリットを得るものと思います。安倍政権は「中国以外」の全ての周辺国との間で「手打ち」を行うことで、対中関係に関して強硬姿勢を取れる環境を構築しています。

米国には米国上下両院議会演説・安倍談話・安保法制、韓国には慰安婦問題への妥協、東南アジアは援助と引き換えとした南シナ海での東アジアサミットでの懸念表明、インド・中央アジア諸国への巨額の円借款などの援助など、安倍政権は中国包囲網を形成するための外交努力を行ってきました。その仕上げがロシアとの北方領土問題解決と平和条約の締結ということになります。

先日の記事(日中限定戦争への道、慰安婦合意の真意を探る)で安倍政権の慰安婦合意について筆者の推測を書きましたが、安倍政権の外交政策及び憲法改正への段取りは最後の詰めの段階に入ったと言えます。

安倍政権は良い意味でも悪い意味でも政局・内政・外交がリンクした優れた戦略的な政権運営を行っている強靭な政権です。従来までの日本の政権とは全く異なる政権であるという解釈を行った上で、その政権運営の是非を論じることが重要です。時代遅れの右派・左派の双方の論評は論壇の座を退くべきだと思います。




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2015年12月28日

日中限定戦争への道、慰安婦・日韓合意の真意を探る

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日韓の不可解な慰安婦に関する合意、突然の年内決着の思惑とは何か

タカ派で知られる安倍政権が年の瀬に突如として実行した岸田外相の訪韓と慰安婦問題における大幅な妥協は何を意味するのでしょうか。そして、慰安婦問題の立ち合い人として米国を据えた意味はどこにあるのでしょうか。

安倍政権の日韓合意に込めた意図は米国などの国際世論に「日本の正当性」をアピールすることにあります。

同政権は米国議会における演説などでも歴史修正主義的な内容を一切含まず、夏の談話についても文言を工夫して戦後民主主義・自由主義陣営に属するイメージづくりに励んできました。そして、従来までの慰安婦に関する政府主張を顧みない今回の日韓合意は安倍政権の対外的なイメージを決定付けるものです。

安倍政権が国内から一定の失望を受けながらも国際的にタカ派のイメージを放棄する理由は何でしょうか。能あるタカは爪を隠すという諺もありますが、筆者は安倍政権の真の狙いは全く別のところにあると予測します。

真の目的は「日中限定戦争」のための環境整備ではないのか?

筆者は安倍政権の真の目的は、日中限定戦争のための環境整備、ではないかと推測します。国際的な世論環境において、発足当初の安倍政権は中韓の宣伝によって非常にタカ派色が強い政権として認知されていました。

しかし、安倍政権の対米配慮姿勢の徹底、そして中国を取り囲むような対外援助増加を実行してきた結果、安倍政権に対する国際的な世論の風当たりは弱まり、むしろ中国の海洋覇権主義に対する懸念が高まりつつあります。

米国本国は東アジア・東南アジアの政治情勢、特に対中関係は関心が強くない状況ではありますが、全体的な空気感として米国の中国側に傾いていた国際世論の流れをかなり押し戻したものと思います。

仮に日中による尖閣諸島などで限定的な戦争(紛争)が発生した場合、日本が中国に対して優勢な状況を形成できれば米国が日本側で仲裁に入る環境が既に整備されてきています。その中で今回の日韓合意によって日中が限定的な戦争状態に突入するためのツメの作業に入ったと言えるでしょう。

憲法改正のための限定戦争という本末転倒な事態が発生する可能性

筆者が日中が限定的戦争またはそれに近い状態に突入する可能性が高いと見ている理由は、安倍政権の政策目標が「憲法改正」にあると看做しているからです。

大規模な金融緩和や消費増税の先送りなどの経済政策は支持率上昇のためのものであり、安倍政権にとってはそれ以上のものではないものと推測します。そのため、第三の矢である最も重要な規制緩和は現在までほとんど実施されておらず、円安による株高誘導や企業業績のかさ上げなどのモルヒネ的な経済政策が実行されている状況があります。

安倍政権が長期政権を目指す場合、安倍首相が本年行われた日本会議に送ったビデオメッセージの内容通り、憲法改正を政治日程に組み込むことが自然な流れとなります。

来年の参議院議員選挙において、消費増税の先送りを掲げて民主党などの改憲反対勢力を一掃した上で、日中の限定戦争ないしそれに近い状態を創り出すことができれば、憲法改正に向けた世論環境を創り出すことができます。

戦争というものは憲法が改正したから発生するものではなく、両国の指導者が意思を持って軍事力を行使することで始まります。来年11月米国大統領選挙の後の2017年が極めて危険だと思います。

筆者は上記の状況が発生することを支持するものではありせんが、安倍政権の一連の不可解な外交政策の積み重ねを総合的に鑑みるに、一つのシナリオとして十分な妥当性があるものと予測します。




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「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ

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日本の出生率の低下の原因は価値観の変化などによる「晩産化」にある

出生率の低下の主要因は、国民の価値観の変化による晩産化にあります。

1980年代と比べて現在は、30代の合計特殊出生率は増加していますが、20代の合計特殊出生率は約2分の1まで低下しています。

平成26年人口動態統計月報年計(概数)の概況(合計特殊出生率について)*厚生労働省

その結果として、女性の第一子の出産年齢が30代となることによって、第2子を産むための時間的な制約が発生し、結果として日本全体の人口が減少していく状況が発生することが予想されます。

上記のような変化は、人生設計に関する自由な価値観が普及したポジティブな要素と非正規雇用による雇用環境の不安定化などのネガティブな要素の両方が働いた結果と生じています。

政策ターゲットを間違えた「子育て支援」は少子化への効果が薄いという実態

「出生率」の改善を政策目標として据えた場合、既存の子育て支援策は「政策ターゲットを間違えた」「時代遅れ」の政策となっています。代表的な子育て支援策は、児童手当と保育所整備の2つということになりますが、いずれも少子化対策としては十分な効果を発揮していません。

なぜなら、上記の政策は団塊の世代が出産適齢期に入った1970年代に本格的に整備が開始されたものであり、「既に子どもが生まれた家庭」からの政治的圧力によって形成されたものだからです。

児童手当は1972年に第3子がいる家庭に支給が開始された家計への補助政策です。その後対象が第2子、第1子と拡大しつつ、その支給金額が増額し続けています。平成27年度予算は国・地方・事業主負担・公務員分を合わせて2兆2300億円という巨大な支出に膨らんでいます。(平成27年度における児童手当制度について

しかし、児童手当は出生率の改善についてはほとんど効果が無いという会計検査院からの研究レポートが提出されています。児童手当の支給を通じた所得増による子どもを持つインセンティブと現在の子どもへの教育インセンティブが子どもを新たに産むことに対して各々プラスとマイナスの効果を及ぼして相殺されます。その結果として、児童手当の出生率に対する政策効果は微小となり、「子ども1人を増加させるために年1億円の児童手当」が必要とされています。(子育て支援策の出生率に与える影響 会計検査研究第38号・2008)

一方、保育所は元々明治時代の民間で運営されていましたが、戦後直後の段階では経済的に困窮している家庭用の救貧政策として法制化されました。その後、高度経済成長期には女性の社会進出との関係で保育所づくり運動が展開された結果、保育所整備が開始されました。

ただし、その後も政府内には子どもは家庭で育てるものという意識の中で供給制限・サービス制限が存在し続けたため、認可外保育所などの女性の更なる社会進出に対応したサービスが増加し続けることになりました。現在では更にエンゼルプラン・新エンゼルプラン、東京都による認可保育所整備などの共働きが標準化した社会向けのサービスが展開されており、今後は一層の規制緩和や民営化などを通じた効率的な施設整備が望まれているところです。

しかし、上記の会計検査院の研究レポートによると、待機児童を解消するまで保育所を整備した場合の出生率への改善効果は0.02ポイント、効果が高い都市部で0.1ポイントの改善効果が見込まれますが、保育所の整備を促進しても出生率の劇的な回復には至りません。

そもそも保育所の整備は、子どもがいる女性の社会進出などの社会変化に対応したものであり、晩産化などの出生率の改善を元々意図したものではないからです。

既存の子育て政策の大きな柱を構成してきた、児童手当と保育所整備の共通点は「既に子どもがいる家庭向け」の政策であり、日本の人口減少問題を解決するための出生率改善へのダイレクトな効果は薄いものと言えます。

「子育て」から「結婚・出産」への政策のパラダイムシフトへ

私たちは既存の「子育て支援」のための政策が「出生率の改善」に効果があると過大な期待をしてきたのではないでしょうか。それらの政策の効果は極めて限定的であり、出生率改善のためには既存予算を見直して根本的な政策転換を実行することが必要です。

出生率改善のための政策コンセプトは「子育て」から「結婚・出産」への転換です。既に子どもがいる家庭から未婚・未出産の人々に対する結婚・出産支援に政策をシフトさせるべきです。

そこで、出生率低下に影響を及ぼしている要因を晩産化と未婚率の増加にあるとした場合、これらに対応した集中的な政策投下を行うことが重要となります。

「晩産化」という価値観の変化に対して過去の価値観を強制することは人権侵害でしかなく、20代だけでなく30代・40代での出産を安心・安全に行えるように不妊治療・産婦人科サービスなどの強化に取り組むべきです。特に多額の資金が必要とされる不妊治療に関しての重点的な予算投入が重要です。

「未婚」の状況は男性側の非正規雇用の増加の影響が大きく経済環境・雇用環境の改善が必要です。そのためには、20代・30代向けの所得税減税を通じて、未婚・未出産者を含む若手世代全体の手にお金が残る環境を整えるとともに、企業側から見た若手世代を雇用する経済メリットを強化することが望まれます。根本的には産業関連の規制緩和を実施して、労働生産性を高めながら新規雇用増や雇用の多様化を進めるべきです。

上記の政策のための予算は児童手当2兆2300億円の削減によって捻出していくべきです。晩産化の影響から一定の所得を有する30代の子育て世帯も増加することが予想されるため、児童手当による家計支援を通じた出生率改善は益々効果が薄れていくことが予想されるからです。

出生率の改善にほとんど効果が無い児童手当から「結婚・出産」へのダイレクトな支援に切り替える、という大胆な決断を実行することが望まれます。

 「子育て支援」を優先するなら「移民による人口補充」を視野に

既存の子育て支援策では出生率の改善を見込むことはほぼ不可能であるため、「子育て支援」の必要性を訴えるタックスイーターを重視した政策を継続し続ければ深刻な人口減少から抜け出ることは困難です。若手世代から高齢世代への過重な所得移転を止める必要はありますが、その分を子育てタックスイーターに予算を割いても意味がないのです。

そのため、現状のように「子育て支援」を重視して「結婚・出産」を軽視する政策を実行する場合、日本の人口減少を補うために大規模な移民受け入れ政策を実行することは必然となります。移民の受け入れはダイレクトな経済効果がもたらされるとともに、移民は若年世代が多いことが予想されるので日本の出生率は大幅に改善していくことになるでしょう。

現在の財政難の状況にある日本では、何でもかんでも予算を増額することは極めて難しく、特にシルバーデモクラシーが深刻化する中で、若手世代への予算配分増を求めることはほぼ無理だと判断するべきです。そのため、限られた予算をどのように使用するのか、という知恵が重要となります。

高度経済成長期に形成された既存の子育て政策という時代遅れな政策に予算投入を増やしたところで効果はなく、現代社会に合わせた政策を展開することで出生率を改善していくことが望まれます。




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金子恵美議員の「晩産」は男性議員の育休よりも重要だ

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本当に重要なことは、宮崎謙介議員の「育休」よりも金子恵美議員の「晩産」である

宮崎謙介議員による育休宣言について色々と考えてきましたが、宮崎議員の無責任なパフォーマンスよりも奥様の金子恵美議員が妊娠されていることが少子化対策のシンボルとして重要だと思い直しました。

金子議員のコメントはメディア上には出てきませんが、本ブログが身重な金子議員の産休・育休に関して賛成していることは言うまでもありません。

そして、男性議員の育休よりも金子議員の37歳のいわゆる「晩産」の意義を取り上げるほうが日本の少子化問題という視点から極めて強いメッセージ効果があるものと思います。

直近の日本の出生率の改善は30代以上の出産増による寄与度が大きい

2006年から日本の合計特殊出生率は改善傾向にありましたが、その要因としては30代以上の出産が増えたこと、つまり日本の晩産化が進展したことによる寄与が大半を占めています。

2005年に1.26であった合計特殊出生率は2012年には1.4を上回るまでに回復していますが、30代女性の出産が増加したことが数字の変化の理由です。社会構造の変化を背景として、女性の価値観が変わったことで、20代での出産は減少しており、30代での出産が増加しているのです。

日本では昔から高齢出産はあたり前に行われてきた状況ですが、近年の20代出産の激減によって高齢出産の重要度が相対的に増しています。本件を通じて本来あるべき政策論議は、この女性の価値観の変化による晩産化への対応策に優先順位をつけて臨むことだと思います。

出生率を改善した先進国は「晩産化」と「移民」の増加が寄与している

ちなみに、先進国で日本よりも合計特殊出生率が改善している国は「晩産化」による出生率の改善が日本よりも大きく作用しています。30代以上での出産を安全・確実に実行できるようにしていくことが大事であり、価値観の変化による出産年齢の高年齢化への対応を進めていくことが望まれます。

その上で、出生率2以上を求める場合は、移民の増加による出生率の改善も見過ごすべきではありません。移民数及び移民本人・移民2世の出生数は年々増加しており、先進国における人口増加に大きな役割を果たしていることを真剣に考慮すべきです。

ちなみに、日本の子育て予算のGDP比で2倍を使っているドイツは日本よりも出生率よりも低く、他のOECD諸国についても予算の大量投下よりも晩産化や移民増加による出生率の改善の影響が大きいように感じます。子育て予算額の多寡よりも何が必要かという議論を行うべきでしょう。

安易な子育て支援よりも不妊治療などの産みたい年齢で生める医療の充実を

金子議員の妊娠はその晩産化のシンボリックな事例として取り上げられるべきであり、30代後半・40代前半でも安全な出産が可能となるように女性の晩産化に対応した医療サポートなどの充実が注目されるべきです。

近年の動向に鑑み、育児支援、待機児童対策、児童手当などの既に生まれた後のサポートよりも、経済的な余裕が多少ある30代・40代の出産向けの医療サポートに重点を移していくことが検討されるべきでしょう。

会計検査院の過去の検証結果で、待機児童対策や児童手当は政策効果が極めて限定的であることが検証されています。出産後のサポートに力を注ぐことは費用対効果の観点から疑問があります。同じ費用でも相当の改善を行うことが可能であるとともに、そもそもこれらの政策は生活補助や労働政策に属するものと捉えるべきでしょう。

それと比べて、未婚・未出産世帯を含む若い世代での所得を増やすことによって、20代での結婚や出産に踏み切る価値観を再形成することが望まれます。そのため、若年世代への所得税減税によって可処分所得を増やすことも重要です。やはり出産後のサポートよりも、子どもが生まれる前に手元にお金があることが結婚や子づくりを促すことにつながるものと推測します。

男性議員による育休は社会的な雰囲気づくりに寄与する可能性もゼロではありませんが、経済的に余裕がある家庭はベビーシッターを雇うことで育児段階の問題を解決してほしいものです。

結論として「若い世代にお金を残すこと」と「30代・40代での安全な出産」が大事ということ

結論としては、下記4点を確認したいと思います。

(1)男性国会議員の育児休暇よりも37歳の晩産を行っている女性国会議員のほうが社会的重要。したがって、30代・40代での出産を安全に行える医療サポートの在り方などが注目されるべき。

(2)国会議員夫婦が子どもを持てることは金銭的な問題が無いから。子育て支援よりも未婚・未出産の若者世代が子どもを作ろうと思える可処分所得を得られるように所得税減税などを行うべき。

(3)所得が十分にある家庭は育児休暇ではなく、ベビーシッターを雇うことなどを通じて社会的な雇用を積極的に作ることに貢献すべき。

(4)子どもの代わりに子育て予算の増額や規制強化を訴えるタックスイーターを安易に育てることはやめましょう。もちろん、高齢者に異常に偏った社会保障支出の削減は不可避です。



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yuyawatase at 09:00|PermalinkComments(0)国内政治 | 社会問題

2015年12月27日

大人の教科書(23)欧州の出生率向上は「移民」が原因?

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少子化対策と人口問題を結びつける「愚かな発想」は止めましょう

本日は永江一石さんという「超激馬鹿」な有識者もどきを切り捨てたいと思います。本人が、

「国会議員の男性が育児休暇取ると宣言したことで、「税金で給料ははらってるんだから」とか「国会議員やめてからやれ」とか「重要な審議はどうすんだ」とかいろいろアホなことを言ってるじーさんとかばーさん(蓮舫もその口)がいますが、まじで激馬鹿だと思います。日本の現状を分かっていってるのかと思う。まずこういうことを平気で言う人には国会議員はやってほしくない。日本という国の現状認識がないからだ。」

と述べているので、私も彼を超激馬鹿と表現しても良いでしょう。

イクメンだめとか、このままだと45年後の日本の人口はどうなるか、分かってて言ってんの?(永井江石さん)


欧米先進国の人口増加は、移民増によるインパクトと移民による出生率の改善が要因

「日本人が育児休暇を取得する」と「日本の急激な人口減少を解決できる」という論理的な飛躍が蔓延していることは極めて深刻です。感情論としては理解できますが、「現実をしっかりと見てほしいものだ」と思います。

厚生労働省は、主要な先進国の出生率の比較として下記のデータを公開しています。スウェーデン、フランス、アメリカの出生率が高く、日本の出生率が低いという結果が出ています。

各国の出生率
*厚生労働省「平成26年少子化社会対策白書」より抜粋


もう一つ見てほしいのは、先進国出身女性と外国籍・移民女性の出生率の差です。こちらを見れば分かるように先進国出身女性の出生率は1.2~1.8前後の範囲で収まっていることが分かります。特にフランスの場合はフランス国籍の場合でも国籍取得した移民1世・2世に出生率増への寄与率は高いものと推測されます。

移民と出生率

社会実情データ実録から引用

各国の移民の増加割合を見てみると、各国で移民が増加していることが分かります。これらの移民増加国では人口が上昇し続けています。また、英国などでは2011年の出生数の4分の1以上が移民による子どもたちという状況にもなっています。

一方、ドイツは移民割合が横ばいであるために人口増加はほとんどしていません。また、GDP比で日本の2倍の子育て予算を投下していますが、出生率は日本より微妙に高いだけの状態です。


各国の移民割合の推移
社会実情データ実録から引用

子育て政策は「労働環境改善」であり、「出生率改善への影響」を過大評価されている

日本の人口は既に少子化対策で維持・逆転できる状態ではないことは明らかだと思います。先進各国では移民による若年人口の受け入れと出生率のかさ上げを行っていることを認識するべきです。日本出身者だけでは既に1億人を維持するための出生率2以上に引き上げることも困難です。

日本の将来人口の推計
平成25年版高齢社会白書より引用

育児休暇などが出生率の改善に結びつく影響は極めて少ないものとして認識し、その政策の影響力を過大評価するべきではありません。現状の子育て政策は「人口増加」ではなく「労働環境の改善」にこそ効果が発揮されるものだと認識するべきです。

従って、子育て政策と少子化問題を結びつけて議論する人は、その影響が限定的なものであることを前提に議論を行うべきだと思います。少なくとも、育児休暇=人口増、のような短絡志向で「日本の人口問題を語るな」と思うわけです。

また、上記は移民の数字を扱ってきましたが、元々の自国民の価値観の変化による出産年齢の遅れも直近の先進各国の出生率改善の大きな要因です。これは政策とは関係なく文化レベルの発展による価値変化によるものです。従って、20代女性に出産圧力をかけるような政策よりも晩産化に対応した医療技術の高度化のほうが重要です。

日本の人口減少が問題だと思っている人は、先進各国が行っている移民の受け入れの議論を始めるべきでしょう。子育て政策によって日本の人口が維持できるかのような有識者もどきや子育てタックスイーターが述べているプロパガンダを信じず、日本人は本当に必要なことを淡々と議論する段階に入っています。





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大人の教科書(22)政治家はロボットで代替可能か?

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議員の能力の大半は「有権者」の顔と会話の内容を記憶すること

議員の仕事の大半は選挙に受かるための肉体・精神ともにすり減らしながら行う「営業系」の仕事です。有権者の顔を記憶し、誰の紹介で、何の会話をしたのかを正確に覚える仕事といっても過言ではありません。

政治家の名簿記録には、名前、顔写真、住所、家族構成、出身校、所属企業、所属団体、その他諸々、あらゆる情報が記録・整理されており、有権者との円滑なコミュニケーションを実現することに全力が注がれています。そして、最後にあった時から時間が経ち過ぎないよう、地元回りで票田のメンテナンスが実行されています。

現在の人間に投票するしかない仕組みであれば仕方がないですが、この仕事は「人工知能搭載型のロボット」でも十分に可能です。むしろ、瞳紋記録などで全ての情報を紐づけたほうが正確な会話もできますし、陳情処理なども面倒くさがらずに確実にこなすことができます。もうそういう仕事は、それで良くないですか、としみじみ思います。

議会での質疑応答もロボットが行ったほうが正確な対応が可能


更に議会質問についても質問する側も答える側も完全にコンピューターで何の問題もありません。むしろ、事前の質問取りなどの無駄な作業も消滅し、最新のデータを両者がオープンデータとして接続して、タイムリーに正確な情報でやり取りすることが可能です。

「その質問は事前の通告になかったので答えられません」というような不毛なやり取りも消滅し、なおかつ財政データなどについてもイチイチ議員が勉強する必要もなく、確実な将来予測のシミュレーションを基に合理的な政策が立案できます。正直言って、普通の議員よりもIBMが開発したワトソンのほうが遥かに優秀です。
 
中途半端に立法事務費や政務活動費などを支出するくらいなら、まとめて人工知能の開発に費用を注いだほうが余程クオリティーの高い議会運営が可能となるでしょう。

人間にしかできない「議員」としての仕事とは何か

そこで、人間にしかできない仕事について話したいと思うのですが、それは「自由を守る」こと以外には存在しません。

ロボットに任せた場合は最初に設定した幸福の定義に基づく目標を達成するために、人間はロボットが設計した人生を正確に歩むことが求められるようになります。全ての社会システムはロボットによって設計されたものになり、人間は主体ではなく客体としてそれらを受容するだけの存在になるのです。

政府が合理的に社会を設計するとはそういうことを意味しており、政府による人間の家畜化こそがその本質と言えるでしょう。そして、これはロボットがシミュレーションしなくてもロボットよりも質が劣る人間が運営する政府も同一の方向性を有しています。

両親が子どもを生むための環境、生まれた子供が育てられるプロセス、その後結婚して子どもを生みつつ、老齢を迎えたら介護と医療を受けて死んでいく、ところまで、人生のほぼ全てが事前に制度として設計されています。自分の人生の在り方を客観的にみれば、自分が置かれている状況について気が付くと思います。

そして、ロボットよりも能力が低い人間が担う政府の下にあるからこそ人々に一定の自由が残っているに過ぎないことを知るべきです。従って、政府の仕組みが合理的でないから充実・強化して合理的にしようというのは、上記のロボットが決める社会制度に近づけようという議論でしかなく、人生に自由があることを大事だと思うならば決定的な愚かな行為であることが明らかです。

そのため、私は政府に力を与える増税・規制強化を求める人々を倒し、人間の自由を確保していくことが大事であると主張しています。上記のたとえ話で、政治家に必要なことは何か、ということについて、文章を読んだ方に少しでも伝われば幸いです。

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yuyawatase at 09:00|PermalinkComments(0)大人の教科書 

2015年12月26日

安田純平さんの話は半年前からのことなんですが・・・

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海外メディアでは半年前に安田さんがシリアで消息不明になっていることは常識

日本のジャーナリストの安田順平さんがシリアで行方不明になった報道が直近2日間日本のメディアが報道していますが、この話は半年前から海外メディアでは普通に報道されているものです。

国境なき記者団も声明を発表しているため、日本のメディアが知らないわけがないのですが、日本の主要メディアは完全に沈黙してきた話題です。

安田さんは以前にイラクなどでも拘束されていた方であり、「またか」という思いもあるのかもしれませんが、シリアで日本のジャーナリストが行方不明になったことを無視してきた事実はメディアとして信頼性の観点から問題です。

Japanese journalist Jumpei Yasuda feared missing in Syria(CNN 2015年7月)

メディアは「外信が正しい」という情けない状況になって本当に良いのだろうか

国内の報道は政府の統制を受けるため、真実を知るためには外国メディアの情報を見る必要がある、というのは極めて情けない状況であり、権威主義的な政治体制の国にはありがちなことです。

韓国では独裁政権時代には「真実が知りたければ外信を見ろ」という共通認識があったそうです。そのため、今回の産経新聞に対する不当な訴訟に関しては、現在でも同慣習の影響で外信の影響力を恐れている韓国政府の焦りが影響したものと言われています。

日本でも陸山会事件、ライブドア事件、東芝事件などに鑑みるに、重要な内容の報道になると報道機関はまともに事実報道を行うことが難しい状況があると思います。そのため、遠からず国民の認識として外信が正しいという認識が広く定着することになるでしょう。

「報道の自由度ランキング」で日本は、韓国よりも下、香港と肩を並べる日が近づく

日本は一応先進国として自他ともに認識されているのですが、上記の国境なき記者団が毎年公開している「報道の自由度ランキング」(Press Freedom Ranking)では、2015年で61位という情報統制ぶりが如何なく評価されています。

ランキング61位とは、おおよそ旧東欧諸国と同じ程度であり、正直言ってまともな取材環境ではないということを意味しています。特に今年は韓国(60位)よりも下であり、あと少しで中国共産党の影響下にある香港(70位)とも肩を並べそうな勢いです。

この深刻な状況についてもう少し日本人は真剣に考えたほうが良いと思います。先進国としてあまり恥ずかしい国には成りたくないものです。




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yuyawatase at 23:00|PermalinkComments(0)社会問題 

国会議員が国会を休まずに男性の育児休暇を増やす方法

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プロセス(1)お上意識丸出しの精神論から脱却する

国会議員や公務員が率先して育児休暇を取得することで民間企業が育児休暇を取得しやすくなる、という妄想は一体どこから生まれたものでしょうか。実際、産休を取得された女性国会議員は9人目になるそうですが、それでマタハラが無くなったでしょうか?

現実を踏まえずにパフォーマンスを評価する思考から脱却することが大事です。上記のような「お上意識」丸出しの議論は一時的な盛り上がりは生むかもしれませんが、所詮はそれだけのことですから実質的に無意味です。国会議員が率先垂範すると国民がついてくるというのは何時代の話でしょうか?

ちなみに、育児休暇を取得すると豪語された国会議員は「先ず隗より始めよ」と言われたそうですが、この故事の元々の意味は「凡庸な部下に多くの褒章を与えたら、より優秀な人材が集まる」というものです。

つまり、故事通りに解釈すると、凡庸な自民党公認の国会議員に育児休暇を取らせれば、国会議員または自民党に人材が集まる、ということになります。おそらく故事の詳細を学ばず、後の世で意味が転じた後の事しか知らないのでしょう。国会欠席中にもう一度勉強されたほうが良いと思います。

プロセス(2)働く世代の手元におカネが残るようにする、企業が生産性を向上させる

国会議員が国会に出席して他の国会議員に働きかけて実現するべきことは幾らでもあります。育児休暇だけに限定するのであれば、育児休暇を強制的に取得させる法律を作れば良いのかもしれませんが、そのような経済活動の現実を無視した議論は止めましょう。

国会議員が行うべきことは、働く世代の手元におカネが残るようにすること、企業の生産性を向上させること、です。

まず、前者は所得税の減税を実施していくことで現役世代の手におカネが残るようにすることが望まれます。20代・30代の所得税を50%カットする政策を実行しても数千億円~約1.5兆円程度で費用負担で済むはずです。それで1人に付き毎月4000円手元に残るお金を増やすことができます。20~30代も約3300万人の人口数がいますので政治的にも不可能ではなく、高齢者にばらまくお金の一部でも回せば達成可能です。(これをやるなら将来的な人口動態を考慮すると数年以内に実行する必要があります)

また、規制緩和を進めていくことで生産性を上げると同時に産業動態を転換することも必須です。経済の生産性が向上した上で、経済全体が知識産業にシフトしていくことで、長期休暇を得るための環境が整うことになります。企業が価値ある人材を引き留めるために育児休暇制度を創設・活用せざるを得ない状況が生まれることになるからです。

上記の政策は一つの事例ですが、これらを実行していくために国会議員には国会で提案・根回しなどやるべきことは山積みです。「自分が育休取るから国民も取ってね」などという御伽の国で国民は暮らしていません。国民が暮らしている場所は、国会議員らがルールを作っている日本です。くだらないパフォーマンスを実行している暇があるなら、国会議員として規制の一本でも廃止してみろ、と言いたいですね。

プロセス(3)企業選択の基準に育児休暇の有無が問われるようにする

上記の状況を整えた結果、働く世代の手元におカネができること、そして産業側も特定個人の能力を必要とする状況を作ることができます。企業と個人の力関係が逆転するからこそ企業側も喜んで従業員が育児休暇を取得することを奨励する環境ができあがります。

要は、北風と太陽の寓話のようなもので、企業が自発的に育児休暇を設けて活用する環境を整えることが知恵であり、政府が無理やり制度として押し付けてみたり、国会議員が育児休暇を取って見せたりすることは知性の欠如そのものです。

ボスザルが実行したから同じ山に所属しているサルはそれを見習う、という思考は、あまりにも国民を馬鹿にしたものです。仮にあるとしたら、ベビーシッターという具体的な雇用の一つも生み出さず、無意味な休暇で税金や給料を貯め込む姿を真似するだけじゃないですか?

このような発想をする国会議員には自分が裸の王様であることを自覚させて、本来の自分の仕事を行うことを求めるべきだと思います。

企業が自ら育児休暇の有無を提示して働く側が企業を選べる、という力関係の転換を自然と行うようにできる政治が良い政治ということになります。

上記の前提として「経済が分かる実務志向の国会議員を当選させること」が必須

上記の政策を実行していくためには、経済が分かる実務志向の政治家が必要です。

何でも法律を整備して押し付けるような社会主義者やパフォーマンスだけの非実務的な議員は不要です。むしろ、日本の議員たちこの手の経済音痴な人達ばかりだから、微々たる経済成長しかしていないのだなと痛感します。

地元からの陳情、官僚からのレク、業界団体からの要望、毎日のようにタックスイーターばかりと接触しており、税金を負担している子育て・現役世代の声を無視しているから、まともな経済的思考ができなくなってしまうのです。

国民が生活する環境の福利厚生を充実させたいならば、国民の人的付加価値を向上させる政策を実行し、企業と個人の力関係を逆転させていくことが重要です。

納税者の側に立って国政で活躍できる人を応援し、タックスイーターの側に立つ政治家を倒す必要があります。今回の育休を求めた国会議員はどちら側の人でしょうか。その答えは自明のことだと思います。




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