2017年07月29日

オバマケア・国境税調整、既得権に屈服したトランプ政権

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Drain the swamp(ワシントン政治の沼掃除)の夢は潰えた

オバマケア見直し・廃止法案、そして縮小版のスキニー法案も、トランプと敵対する大富豪のコークの支援を受けるフリーダムコーカスと事実上民主党員と同じ行動を行うRepublican In Name Only(名ばかり共和党員)の抵抗にあって、連邦上院の採決で頓挫することになりました。

連邦上院は共和党52議席対民主党系48議席ではあるものの、スーザン・コリンズ上院議員に代表される名ばかり共和党員が多数存在しているため、実質的に共和党は過半数ギリギリの議席を確保しているだけに過ぎません。そのため、名ばかり共和党員らが数名反旗を翻すだけで、Drain The Swmp(ワシントン政治の沼掃除)を求める共和党保守派の夢は潰えることになります。

共和党保守派にとっての悪夢は、オバマケアの廃止・見直しの道が途絶えたこと、そして税制改革案から国境税調整が排除されることで、法人税や所得税の恒久的な大規模減税を求める財源は消滅することになったことです。つまり、当初トランプ大統領が15%、共和党保守派が目指した20%の法人税率を実現することは不可能となり、約27~28%程度の減税(大企業の多くは既存制度を利用して既に達成)に留まり、事実上の意味がほとんど無くなることになります。

また、国境税調整という一律のルールによる財源が無くなることで、恒久的な税制改革を実施するためには、各産業への個別の細かい課税案の議論が必要となり、腐敗したロビーによるワシントン政治ビジネスは益々活発化することになるでしょう。個別の業界団体との交渉は政治腐敗の温床であり、トランプ政権を奪取するにあたって共和党保守派が米国政治から一掃することを狙ったものでした。

トランプ政権は、ウォール街から連れてきた財務長官・国家経済会議議長、企業と癒着するミッチー・マコーネル上院院内総務らの主流派、大富豪のコーク氏による巨額の費用をかけたキャンペーン、に取り込まれてワシントン政治の沼の一員となりました。

共和党保守派とトランプ政権の全面戦争が始まる可能性が発生

トランプ政権は元々共和党保守派が支持したことで生まれた政権です。しかし、トランプ大統領は彼らが最も重視するオバマケアの廃止・見直し、減税政策などの税制改革案で完全に共和党保守派の願いを裏切る形となりました。(コーク財団の影響下にあるリバタリアンも報道などで保守派と表現されますが、この場合はレーガン保守系の他団体を指すものとします。)

本来はトランプ大統領が主導権を発揮することを通じて、両法案が議会で承認される可能性もあったわけですが、トランプ大統領は最後まで様子見を決め込んだ上、両案ともに不成立・骨抜きという結果に終わりました。その上、ワシントン政治にすっかり取り込まれた姿を共和党員に対して見せています。

トランプ政権下における米国政治の改革は、完全に骨抜きになった、と言えるでしょう。

共和党保守派の人々は「民主党政権ではなく共和党政権である」という消極的理由でトランプ政権を支持してきました。その結果がトランプ政権の支持率の40%前後での下げ止まりという形となって表れていたわけです。

形式だけの骨抜きの成果を保守派の人々が評価するとは思えず、今回の主要政策の公約に関する裏切りによって、今後は共和党員からの支持も瓦解していく可能性が出てきました。トランプ大統領の首を共和党保守派が本気で取りに行くのか、それとも同大統領の下で我慢をさせられるのか、いずれにせよその過程でトランプ大統領は共和党保守派からの本気の反抗を目にすることになるでしょう。

最後に、減税幅の縮小は、来年2018年の米国経済の腰砕けに繋がる可能性もあり、共和党が中間選挙で敗北した場合、トランプ大統領のロシアゲート問題が再燃していくことになります。トランプ大統領は目の前の政治的な困難に屈服して重要な決断を失敗した、と言えます。




本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。



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