2017年06月09日

トランプ、ロシアゲート、補選、パリ協定、司法長官について

トランプ

トランプ大統領、コミ―証言の本質的な問題とは何か

トランプ大統領を取り巻くロシアゲートの正念場・第一弾のコミ―前FBI長官の上院情報特別委員会での公聴会が実施されました。

トランプ大統領にとって、有利なことは「トランプ氏自体はFBI捜査対象になっていないかった」点、不利なことは「大統領は自分に忠誠を誓うよう強要し、マイケル・フリン前大統領補佐官への捜査を打ち切るように示唆した」点です。後者は特に司法妨害として政敵が問題を複雑化させる可能性がある内容でした。

元々決定的な証拠が出ることは期待されていなかった公聴会であるため、実はコミ―証言は大したものではないと言えます。では、今後重要になる要素は何か、それはトランプ大統領と共和党の上下両院議員との間の信頼関係です。

ロシアゲートの問題を左右する共和党議員からの大統領への信任

トランプ大統領を捜査する機関は、モラー特別検察官、リチャード・バー議員が率いる上院情報委員会、マイク・コナウェイ及びとデビン・ニューネス両議員が率いる下院情報委員会、チャック・グラスリー議員率いる上院司法委員会、ジェイソン・チェイフェッツ議員率いる下院政府改革委員会など、非常に多岐に及んでいます。

今後、上院情報委員会だけでなく他組織による調査などが実施されていくこと、トランプ大統領の腹心である娘婿のジャレド・クシュナー上級顧問や既にロシアとの濃厚な関係が指摘されているカーター・ペイジ外交アドバイザーなどへの公聴会への追及が進む可能性があること、など、コミ―氏の証言を凌ぎきっても政治的には依然としてピンチが続くことは間違いありません。

ただし、いずれの場合もトランプ大統領は上院・下院で過半数を占めている共和党議員からの信頼を固めることができている場合、余程の証拠が出てこない限りは安泰な状況が続くものと思います。

共和党議員及び共和党員からの支持を繋ぎ止めるための一連の行動

トランプ大統領は最近になって急速に保守派回帰を選択するようになりました。

元民主党員のクシュナー上級顧問、ムニューチン財務長官、コーン国家経済会議議長などを重視し、オルト・ライトの顔であったバノン首席戦略官を遠ざけ、レーガン保守派とも距離を取りつつあった方針を見直し、元々の自らの政権基盤を固める動きを強めています。

その最も象徴的な事案が「パリ協定からの脱退」であり、貿易不均衡などの問題をフォーカスする一連の大統領令の連発やTwitterを利用した入国禁止令(当初)を褒める発言や改めて壁の設置を確認する発言でしょう。外交的にも対イラン・ISIS強硬姿勢は共和党支持者を喜ばせるものだと言えます。

これらは崩れかけた共和党、特に保守派からの信頼を回復することで、自らへの弾劾機運を回避するため、共和党議員及び共和党員からの支持を繋ぎ止めようとしていると見ることが妥当です。

トランプ大統領の直近の試練は、ジョージア州の補欠選挙の行方である

トランプ大統領と共和党連邦議員の関係は、トランプ大統領が政策的に共和党議員と同じ方向を志向していることは当然のこととして、何よりも2018年の中間選挙でトランプ大統領が共和党議員を勝たせてくれる存在か否かということにかかっています。

各省長官などの任命によって発生した補欠選挙において、カンザス州やモンタナ州で行われた選挙結果は長官を輩出するほどに共和党有利の州でありながら比較的苦しい選挙結果となりました。

そして、6月20日に予定されているトム・プライス厚生長官の選挙区で予定されているジョージア州の補欠選挙では、民主党候補者が共和党候補者を世論調査で上回っている状況となっています。共和党の目玉政策であるオバマケアの廃止・見直しを所管するトム・プライスの地元で番狂わせが発生した場合、その衝撃は共和党全体のトランプ政権への信任を揺るがすものになる可能性があります。

また、トランプ側近であるジェフ・セッションズ司法長官が辞意を漏らしたと報道されるなど、トランプ大統領を守ろうとするインセンティブを持つ人たちの士気が十分に回復していないことが示唆される状況となっています。

共和党関係者はトランプ大統領を表面的には支持している状況ではあるものの、トランプ大統領が選挙が弱いことが明らかになりつつある現状に鑑み、本音レベルではペンス副大統領の大統領昇格を望む気持ちもあることは確かでしょう。

地雷原を歩き続けることになるトランプ政権

トランプ大統領は極めて党内基盤が弱い大統領であり、共和党主流派とは当初から対立状態または是々非々、共和党保守派は敵の敵は味方という消極的支持、という状況でした。

政権発足から約150日程度経とうとしていますが、トランプ大統領の曖昧な態度によって、共和党各派との関係は深まることはなく一層混迷を深めている現状と言えるでしょう。

また、本来は2018年の中間選挙は共和党にとっては民主党が上院で大勝した年の選挙区が対象になるために有利な環境があるのですが、上院だけでなく下院すら厳しい状況となりつつある今、万が一連邦議会での過半数割れが発生した場合、トランプ大統領の問題は人気期間中蒸し返され続けることになるでしょう。

トランプ大統領の命運は、共和党連邦議員及び共和党支持者からの支持にかかっている状況となっており、トランプ大統領は今後一層選挙戦を意識した政権運営を行うことが求められることになるでしょう。



本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。


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yuyawatase at 23:25│Comments(0)米国政治 | 社会問題

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